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幕間その七「80の目覚め」


ウルトラマンゼロの使い魔
幕間その七「80の目覚め」



 数百年の眠りから目覚め、才人を主として魔法学院の人々を、才人の記憶から作り出した
夢の世界にいざなったサキュバス・リシュ。その力を利用して百の怪獣軍団を生み出そうという
悪しき野望を抱いたナックル星人。彼らの陰謀は、ゼロと才人、ルイズたちの光によって
くじかれた。ハルケギニアには再び平和が戻ったのだった。
 しかしその勝利には、ゼロとは別のウルトラ戦士の力も加わっていた。それはウルトラマン80。
ウルトラマン先生が自分の担任だったら、という才人の内に秘めた願いをリシュが図らずも叶えた
ことで、遠く宇宙の壁を隔てたM78ワールドから、80の精神が夢の世界にやって来ていたのだ。
これぞアンバランスゾーンの引き起こした摩訶不思議な奇跡といえるだろう。
 そして才人たちが覚醒したのと同時に、80もまた夢の世界からの目覚めの時を迎えていたのであった……。

『……はッ!』
 仰向けに横たわっていた80の双眸に光が灯り、彼は上体を起こした。
『ここは……』
『ああ、80! 目を覚ましたのね!』
 辺りを見回す80の側に立っている女性のウルトラ族が安堵の声を上げた。彼女の名はユリアン。
ウルトラ族の王女であり、かつてガルタン大王に追われて80が守っていた時代の地球に流れ着き、
「星涼子」という名でしばし地球に滞在していた。時に80のピンチに立ち上がり、共闘したこともある。
『ユリアン……』
 80は周りの光景と、ユリアンがいることから、今自分がいる場所がウルトラの星のウルトラ
クリニックであることを悟った。
『すまない、心配をかけたようだね』
『心配してたのは私だけじゃないわ。ウルトラの父も、あなたの様子を見に来てるのよ』
 ユリアンのひと言の直後に、立派な二本の角を頭から生やし、真紅のマントを羽織った
ウルトラマンが入室してきた。
『気がついたようだな、80』
『大隊長!』
 彼の名前は、M78星雲に生きる者ならば知らない者はいない、偉大なるウルトラの父。
宇宙警備隊のトップに立つ大隊長であり、ウルトラの国の人たちをまさしく父のように
温かく見守っているカリスマから、この敬称で呼ばれているのだ。
 ウルトラの父は語る。
『今度は目覚めない時間が長かったから、お前の原因不明の異常が深刻化したのではと思って
見舞いに来たのだ。無事に目覚めたようで、何よりだ』
 この頃80は、突然意識を失い、自然に覚醒するまで何をしても目覚めない異常に見舞われて
いたため、宇宙警備隊の任務を一時離れてウルトラクリニックに入院していたのだ。もちろん
その異常の原因とは、才人の願いに引っ張られて精神が夢の世界に巻き込まれていたことである。
『大隊長、ご心配をお掛けしました。ですが、私はもう大丈夫です。もう昏睡状態に陥る
ことはありません』
 80がそう言うので、ウルトラの父もユリアンもいささか驚かされた。
『ほう? どうしてそう言えるのだ?』
『その原因が解消されたからです。少々不思議な話になりますが……』
 80は簡単に、夢の世界であったことを説明した。普通なら信用されなさそうな話だが、
ここはウルトラの星。多少の不可思議な現象にも理解がある。
『なるほど、ゼロとともに惑星ハルケギニアを救ったのか……。セブンとレオに聞かせたら
喜ぶだろうな』
『そういうことですので、私の身体はもう大丈夫です。任務に戻れます』
『うむ、分かった。しかし万一があってはならない。精密検査を受け、一日の休養の間に
何もないことを確認してから復帰するように』
『大隊長……ありがとうございます』
 ウルトラの父の優しさに胸を打たれ、頭を下げる80。と、その時に、ユリアンが尋ねかける。
『ところで80。あなたが起きたのと前後して、見慣れない女の人が突然出てきたんだけれど、
あなたは何か知らないかしら?』
『え?』
『ほら、そこ』
 ユリアンの示した先は、80が横たわっていたベッドの片隅である。そのウルトラマンサイズの
ベッドの上に、彼らからしたらとても小さい女性がちょこんと乗っていた。
 その正体とは……。
「や、ヤマト先生……ここは、一体……? あなたみたいな人が他に二人も……」
『り、リシュ君ッ!』
 キョロキョロ不安そうに周りを見回すリシュが自分の傍ら――ウルトラの国にいることに、
80はかなり面食らった。

 ウルトラクリニックから場所を移して、宇宙警備隊本部の一室に予定外の来客、リシュは通された。
今もあまり置かれている状況が呑み込めていないのか、呆気にとられているリシュの元へ、80がやってくる。
「お待たせ、リシュ君」
「あッ、あなたは……ヤマト先生? その姿は……」
 80は地球人「矢的猛」の姿を取っていた。しかし夢の世界での若々しいものではなく、
初老の年代の姿である。
「今ではこれ以上若い姿には変身しないことにしてるんだ。かつての教え子よりも先生が
若い外見だとおかしいから、活動に支障がないギリギリの年代のこの姿にね」
「そうなの。それで……ここが先生の故郷の世界なのね……」
 リシュは窓から、ウルトラの国の景色を一望する。
「夢の世界よりも夢のような、幻想的な光景ね……。その中に、あたしが今こうしていることが
何より不思議なことだけど……」
「私も驚いたよ。まさかリシュ君が、ハルケギニアからはるばるこっちの宇宙に移ってきたとは」
 恐らくは、80の精神がM78ワールドに戻ってくる際に、彼にひっついてくることで肉体が
この土地に現出したのだろう。全く不思議なことではあるが。
「しかし、どうしてそんなことが起こったのだろうか」
 疑問に感じる80に、リシュは答える。
「多分、あの人たちがあたしの背中を押したからだと思う……」
「あの人たち?」
「先生の、本来の生徒たちよ」
 それを聞き、矢的は少し目を見開いた。
「あたしはあの時、夢の世界と運命をともにしようとした。でも……」

 夢の世界が崩壊する寸前、塚本を代表として80の教え子たちがリシュの背を80の方へ押しやり、
同時にこう告げていた。
『今度は、君が大事なものを教わる番だ!』

「そうか……みんなが……」
「あなたの生徒は、とても優しい人たちばかりね。ハルケギニアの人間も、皆そういう人だったら、
あたしたちサキュバスも封印されなくてもよかったかもしれないのに……」
 つぶやいたリシュは、矢的へと顔を向け直す。
「それに、先生があたしへ手を差し伸べてくれたこともあると思う。……でも、どうしてあんなに
あたしのことを助けてくれようとしたの? あたしとあなたは会ったばかり、いえ、むしろあたしは
夢の世界に巻き込んだ加害者なのに……」
 理解できないリシュに、矢的はこう答えた。
「確かに迷惑でもあったのは事実だ。……けど、君のお陰で私は、大事な生徒たちともう一度
会うことが出来た。二度と会うことは叶わなかったはずのみんなと……」
 ウルトラ族と地球人の寿命は、天と地ほどの差がある。もちろん、かつて80が受け持った
桜ヶ岡中学一年E組の児童たちも、とっくに天寿を迎えている。80は、そのことには一抹の
寂しさを感じていた。
「私は、もう一度みんなと会わせてくれた君に感謝している。それに……夢の中でも、君は私の
生徒だった」
 矢的=80は初め、才人たちと同様に、夢の世界では現実での記憶を忘れ、与えられた設定を
演じるだけだった。自分がウルトラ戦士だということも忘れていた。記憶が全て戻ったのは、
才人と同時。彼の影響を受けて、自分がやるべきことを思い出した。
 そのやるべきことが――与えられた「設定」でも、自分の「生徒」であるリシュを救うことだった。
「先生はどんな時でも生徒を助ける。それが、私の生涯変わらない信念の一つだ」
 迷いのない強い眼差しの矢的の顔を見つめ、その惹き込まれそうな力強さにリシュは頬が
ほんのり赤らんだ。
「……あ、ありがとう。それじゃあ、お礼と言っては何だけど、先生が望むならまた夢の中で
あなたの生徒たちと会わせてあげましょうか? 夢の住人でも、まぎれもない人間よ」
 そう打診するが、矢的はゆっくり首を横に振った。
「いや。気持ちは嬉しいが、遠慮するよ」
「え? どうして?」
「……望むままの夢を見続けるのは、楽しいことかもしれない。でも、その先の未来には
楽しいだけでなく、大切なものや素晴らしいものが待っている。人は、それを得るために
未来に進まなくちゃいけない」
 80の教え子たちも、亡くなっておしまいではなかった。自分に憧れて教師となった塚本幸夫は
たくさんの児童の未来を導き、彼らがまた次の世代の子供たちを導いていった。大島明男は偉大な
天文学者として名を遺し、後の学者たちに大きな影響を与えている。スーパーとその子孫たちは
実家のスーパーを大きくして、今や世界中にチェーン店を持つ大企業だ。他の教え子たちも、
色んな形で地球の未来に貢献した。彼らを通して、80の地球を想う気持ちは延々と伝えられている。
 80は、自分の生徒たちが支えた地球の未来へ進んでいく姿を見ると、自分のやっていることの
尊さを実感して一層地球と宇宙の平和のために尽力する気力が湧くのだ。
「だから私も、ずっと過去の夢を見たままではいられない。未来へ向けて、この現実を生きていくんだ」
「そう……」
 矢的の言うことは素晴らしいが、リシュは自分の力が不要であると言われている気分になり、
少し寂しく感じた。
 しかし、
「それはリシュ君、君も同じだ」
「えッ……?」
「より良き未来へ歩んでいく権利は、誰にでもある。リシュ君も、これからは閉じた夢の中で
生きようとするんじゃなく、明日を生きるために踏み出してくれ。君の能力も、もっと明るい
ことのために使えるはずなんだ。私と、この光の国と一緒に、これから君の新しい道を探して
いこう。そうすれば、いつか君が故郷ハルケギニアで堂々と生活できる日も来るかもしれない」
 矢的から熱い眼差しを向けられ、心の準備のなかったリシュは少々戸惑いを覚えた。
「で、でも、サキュバスの力を悪用しようと考える人がいるんじゃ、それは……」
「もちろん、すぐには無理だろう。しかし、ハルケギニアもより良き世界になる時が、いつか
きっと来る。人間は明るい明日へと進んでいける。私は地球でそれを学んだ。これは、どの世界でも
同じことのはずだ」
「ハルケギニアが、より良き世界に……。確かにそうなってくれたら、あたしも帰れるわね……」
「ああ。その時を信じて生きるのは、決して無駄なことじゃないさ」
 矢的の説得を受けて、リシュは表情が明るくなった。
「分かったわ、先生! これからお世話になります!」
「ああ! こちらこそよろしく!」
「それじゃあ手始めに、この世界のことを教えてくれないかしら? サイトの記憶にもあった、
チキュウという世界のことも」
「よしッ。まずは、ウルトラの国の成り立ちからだ! 今のウルトラの国の始まりは、二十七万年前に……」
 笑顔でうなずき合ったリシュと矢的。早速、リシュはウルトラの国の歴史について、矢的の授業を
受けるのであった。


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