あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia-79


モンストラス・センチピードの巨体を一瞬でズタズタにしたエネルギーの炸裂に、驚愕して目を見開く少女達。
そんな中で、ディーキンは冷静に皆に行動を指示した。

「みんな、下がって!」

今回はこのような事態が起こるかも知れないことをあらかじめ想定していたので、動揺は少ない。
皆を庇うようにして前に出ながら、さっと右の手を差し伸ばして、素早くコマンド・ワードを唱える。

「《ドゥーズ・ダイ・ジェダーク 》」

右手の指に嵌めた『指揮官の指輪(コマンダーズ・リング)』の機能のひとつが、合言葉によって起動した。
目に見えない《力場の壁(ウォール・オヴ・フォース)》が自分たちと敵との間に形成されて、通路をそこで完全に封鎖する。

(これでよし、と)

これで、扉の奥にいるのが何者であろうと、ひとまずは安全だろう。
力場の壁はまず破壊されないし、解呪も効かない。
たとえ《分解(ディスインテグレイト)》のような攻撃を使われても、壊れるのは壁だけで、こちらに被害が来る前に対処し直せる。

そうして当面の安全を確保したところで、落ち着いて考えをまとめ始めた。

(今の攻撃は、一体何なのかな……?)

ディーキンには、今の攻撃が何なのかがはっきりとはわからなかった。

もちろん、呪文か何かの超常のエネルギーの炸裂であったのは間違いないだろう。
だが、ムカデの巨体に遮られて扉の向こうが見えていなかったというのもあって、詳細までは把握できなかったのである。

ただ、炸裂した力がひとつではなかったのは間違いない。

ほぼ同時に着弾はしたものの、明らかに複数の種類の異なるエネルギーだった。
炎、電撃、それに凄まじい旋風のようなもの……。

ディーキンの思案をよそに、背後ではキュルケとタバサが、険しい面持ちで杖を構えていた。

「今のは間違いなく呪文ね。まさか、奥にメイジが何人もいるってことかしら?」

「それも、スクウェア・クラス」

ルイズもまた、信じられないというように頭を振っている。

「た、確かに、今のは『カッター・トルネード』だったし、後のは『ファイア・ストーム』や『ライトニング』みたいだったけど……。
 でも、まさかこんな場所で、そんなことなんて……!」

それを聞いたシエスタとディーキンは、困惑したように3人を見つめた。

「そ、それは本当ですか?」

「ウーン……。絶対に、間違いないの?」

非メイジであり魔術には詳しくないシエスタと、本で熱心に学んだとはいえ実際に見た呪文の数はまだ限られているディーキン。
2人には、彼女らが正しいのかどうかの判断がつかなかった。

もし仮に呪文を詠唱しているところを見ていれば、本で得た知識と照らし合わせてディーキンにも判断することができただろうが……。

「少なくとも、『カッター・ストーム』は間違いないと思うわ……、私、何度も見たことがあるんだから」

「火のメイジとして、『ファイア・ストーム』については保証してもいいわね」

「『ライトニング』は私も使える。間違いない」

3人が各々自信を持って断言するのを聞いて、ディーキンはまた考え込んだ。

この秘密の通路には、最近誰かが入ったような形跡はまったくなかった。
それなのに奥に凄腕のメイジが、それも何人もいるなどというのは、おおよそ考え難いことだが……。
すると、これは一体、どういうことなのか?

ディーキンはその答えを確かめようと、不可視の壁の向こう、扉の奥の方に目を凝らした。

ムカデは強力な呪文の三重爆撃でずたずたに切り裂かれ、焼かれて、たちまち“絶命”した。
さすがにその巨体が完全に粉々になったわけではなかったが、召喚対象が倒れた時点で招来呪文の効果は切れた。
ムカデの姿は急速に薄れて消えていき……、その向こうにある、開け放たれた扉の先が見えてくる。

そこには、先程の呪文を放ったと思しき3体の影が佇んでいた。

(ン? あれは……)

その姿形を見て、ディーキンはきょとんとして目をしばたたかせる。

それらは、少なくとも外見的には先程のガーゴイルたちよりもずっと簡素で不格好な、いかにもという感じの魔法人形だった。
大きさ3メイル弱ほどの木製の棒人形に石製の手足を取り付け、武骨な鉄製の鎧兜を着せたような姿をしている。

一方で、それを見たルイズはさらに驚愕していた。

「ゴ、ゴーレム……? まさか、そんなはずは……!」

キュルケとタバサも、困惑した面持ちで顔を見合わせている。

「あいつらも、ゴーレムじゃなくてガーゴイルかもしれないけどね……。
 けど、どっちにしろ……、ねえ?」

「ありえない。ゴーレムであれガーゴイルであれ、魔法を使うことなんてできないはず」

優秀な土メイジならば、人間と見分けがつかないほど精巧なガーゴイルを製作することもできる。

だが、どんなに精巧なものであろうと、魔法を使えるようにはならないはずなのだ。
ルイズもキュルケも、博識なタバサでさえも、魔法が使えるゴーレムやガーゴイルがいるなどという話はこれまで聞いたことがなかった。

しかし、そこでディーキンが首を横に振った。

「イヤ、あれはたぶん、魔法を『使った』わけじゃないの。
 あらかじめ溜め込んどいた魔法を、『解放した』ってだけだと思う」

「え……?」

それを聞いたメイジの少女らが、呆気にとられた様子で彼の方を見つめた。
シエスタもまた、戸惑った様子で問い掛ける。

「せ、先生? あの人形がなんなのか、御存知なのですか?」

「うーん……、ディーキンの考えが間違ってなかったら、だけどね」

そう言って頷くと、3体の魔法人形の方に目を向け直す。

そいつらは事前に受けていた命令に従って侵入者を排除するべく、ズンズンと歩み寄ってきた。
それを見て、キュルケらも慌てて杖を構え直す。

「気になるけど、ディー君の話を聞くのは後ね!
 また魔法を使われる前に、こいつらをなんとかしないと……」

そう言って呪文を唱え始めようとする一行を、ディーキンが手で制した。

「その必要はないよ、ディーキンの考えが正しかったら、あいつらはもう魔法は使えないからね。
 あいつらが一度に溜め込んでおける魔法は、一発だけなんだ。
 もしそれが間違ってたとしても、『壁』を張っといたから急がなくても大丈夫だと思うし……、第一、攻撃してもそこで止まっちゃうの」

「……へっ?」

「ちょっと、わけがわからないわよ! ちゃんと説明――――」

ルイズの言葉が終わるか終らないかのうちに、先頭の魔法人形が不可視の壁にぶつかって、ガツンと大きな音を立てた。

そいつはしばらくの間、強引に前進し続けようとしたが、できなかった。
後続の連中も、そこでつっかえて止まる。

ややあってようやくそこに見えない壁があることを理解すると、彼らは手探りでそれを迂回しようとし始めた。
だが、その壁は通路全体を封鎖しているため、それは不可能である。

すると今度は、それを拳でガンガンと殴りつけて破壊しようと試みだした。
しかし、それも無意味なことだ。
そこに張られている不可視の力場から成る壁は無限大の強度を持ち、いくら殴ろうと絶対に破壊は不可能なのだから。

それでも、彼らは事前に与えられていた命令に従って敵を排除するために、目の前の壁を空しく殴り続ける。
ディーキンは彼らが障壁を突破できないのを確認すると、仲間たちに簡単な解説をした。

「こいつらは、たぶん『盾なる従者(シールド・ガーディアン)』だと思う。
 ディーキンのいたところで使われてる、ゴーレムとかの仲間なの。
 こいつは魔法をひとつだけ溜め込んでおいて、必要なときに解放することができるんだよ」

先程こいつらが解き放ったのは高レベルのハルケギニア・メイジの呪文だというから、おそらく術者はシャルル大公自身だろう。
彼が製法を研究して自作したのか、それとも探索した遺跡でたまたま見つけただけなのかまではわからないが……。
ガーゴイルの集団によって退路を断たれた侵入者たちが慌てて扉に殺到しても、こいつらの呪文でまとめてお陀仏、という段取りか。

開幕早々に3体すべての呪文をぶっ放すのはいささか極端な気もするが、隙を突かれる前に一気に片を付けるのには有効なのだろう。
こいつらはハルケギニアのガーゴイルと違って、主人の細かな命令無しではあまり複雑な戦い方はできないのだ。
それに、ちらりと見えている様子からすると、どうやら扉の向こうは部屋になっているようだ。
室内の貴重品を損壊させないためにも、呪文は敵が部屋の外にいるうちにすべて使うようにと指示してあったのかも知れない。

ディーキンはそれからすぐに、今後の行動方針を思案し始めた。

あまりのんびりとはしていられない。
いくら《力場の壁》が無敵だといっても、《永続化(パーマネンシィ)》をかけていない以上は持続時間には限りがあるのだ。
効果が切れる前に、こいつらをどう処理するか決断しなくてはならない。

もちろん、その気になれば3体やそこらのシールド・ガーディアンを破壊するなど、ディーキンには造作もないことだ。
連中が呪文を撃ち尽くしている以上、ルイズらには離れていてもらえば危険が及ぶこともまずないだろう。

ただ、それはいかにも惜しいような気がした。

こいつらは高価で希少、かつ有能な守護者となってくれる優れた人造なのだ。
単純に叩き壊してしまうよりも、なんとか手に入れることができれば戦力の増強になるはず。
ディーキン自身にとってはさほど魅力的なものでもないが、近接戦闘能力に劣るルイズらに使ってもらえば……。

手に入れられるかどうかはわからない。
だが、試みてみるだけの価値はあるはずだ。

そう結論すると、ディーキンはそのための段取りを手早く頭の中でまとめ、仲間らに今後の行動について説明し始めた……。


仲間たちの賛同を得ると、ディーキンは早速行動に移ることにした。

まずは全員で手をつなぎ、《次元扉(ディメンジョン・ドア)》の呪文を唱えて、先程ムカデが打ち破った扉の向こうへ瞬間移動する。
次に、シールド・ガーディアンたちに気付かれる前に、キュルケとタバサが素早く『念力』を唱えて扉を閉めた。

さらにキュルケが『ロック』をかけて扉を施錠し、タバサが先程ムカデが打ち破った際にできた扉の隙間をがっちりと凍りつかせて固める。
駄目押しに、ディーキンが床に楔を打ち込み、ロープをかけるなどして、より一層開きにくくした。

じきにシールド・ガーディアンたちがガンガンと扉を殴りつける音が響き始めたが、そう簡単に打ち破れはしないだろう。
侵入者に備えるために分厚く頑丈に作られた金属の扉は容易に破壊できないだろうし、これだけ入念に固めれば打ち破るのも難しいはずだ。

これで、奥を調査するための時間は十分に稼げる。

タバサは、扉を殴りつけるやかましい騒音を消すために『サイレント』の呪文を唱えた。
音がしなくなったので、念のため見張りをシエスタに任せておく。
彼女は魔法関係の知識には疎いので、調査は他の者の方が適任だろう。

もし仮に調査の済まないうちに扉が破られそうになったなら……。
その時は、扉の前に《石の壁(ウォール・オヴ・ストーン)》でも張って時間を稼げばよいだろう。
別に今のうちに張っておいてもいいといえばいいのだが、この呪文で出した壁は永久に残って消せないから、後の処理が面倒になるのだ。
必要がなさそうなら張らない方がよいだろうから、今のところは控えておくことにした。

そこまでしてから、ようやく皆は安心して周囲の調査に取り掛かり始めた。

当初の目的である、シャルル大公の立てていたという計画に関わるような品物を探すのは勿論だが……。
ディーキンがそれ以外に是非見つけ出したいと思っているのは、あのシールド・ガーディアンたちと結び付けられたアミュレットであった。

もちろんアミュレットがここにあるという保証はないのだが、ディーキンはその可能性はかなり高いと考えていた。

アミュレットが誰かに奪われたり破壊されたりしたら、大変に困ったことになる。
かといって、あまり込み入った場所に隠すと取り出すのも面倒だろう。
となれば、彼ら自身が守護しているこの場所に置いておくのが、安全さと利用しやすさの両方の面から見ておそらく最も都合がいいはずだ。
本人が常に持ち歩くという手もあるが、シャルル大公が死んだ時にそういったものを身につけていたという話は聞かない。

あれらの人造はそれを所有しているものを主と見なし、その命令に従うので、それさえあれば彼らを味方につけることができる。
本来の所有者であるシャルル大公も、ただ壊すよりも実の娘であるタバサが有効に利用してくれる方が喜ぶことだろう。

(ウーン……、どこに置いてありそうかな?)

さておき、ちょっと周囲を見わたしてみた感じでは……。
どうやらここは、魔法の研究施設兼、秘密の書斎兼、重要な品物の保管庫、といったような場所であるらしかった。

広い室内に、何体もの作りかけのガーゴイルみたいなものが放置されている。
それに、棚に並ぶ奇妙な道具や薬品や装置の類、本棚にずらりと並ぶ書物に、机に散乱する記録用紙の束……。
奥の方には扉がひとつあって、その先は本来はどこかへ続く抜け道だったようだが、通れないように埋められて封鎖されていた。

察するに、元々はここは遥か昔の館の主が作った、大人数の兵を密かに移動させるための地下通路かなにかだったのだろう。
シャルル大公が後にそれを作りかえて、自分だけの秘密の部屋にしたものだと思われた。
おそらくこの場所の存在は、大公本人以外には誰も知らなかったのではないか。

実際、室内には貴重そうな物品が大量に残っており、大公の死後に誰かが何かを持ち出したような形跡はまったくなかった。
希代のメイジだったという彼ならば、土魔法を使ったりガーゴイルに手伝わせたりすれば一人でも十分に改装のための作業をできたはずだ。
ハルケギニアには、土系統のスクウェア・メイジたちが岩から街ひとつを丸々削り出して作ったという事例もあるくらいである。

「すごい……」

タバサは室内を調べながら、亡き父の能力の素晴らしさに感嘆していた。

父は、不世出の天才だった。
十歳の時にはもう銀を錬金することができたし、複数の系統に精通していたと聞く。

自分には、いまだにできない。
土系統は得手ではなく、貴金属の錬金ができるまでには至っていない。
メイジとしてのランクも、トライアングルどまりだ。
何年も、命懸けの任務に身を投じてきたというのに。

それでも同年代の誰にも引けを取ると思ったことはないが、父と比べると自分の非才さを痛感させられる。
覚えたての手品まがいの呪文を父に披露して得意になっていた、昔の自分が恥ずかしい。

だが母も言っていたとおり、父はただの天才ではなかったようだ。
その動機が何であれ、多大な努力を重ねてもいたのだ。

数々の学術書、遺跡から出土した古い時代の品々や書物に、その調査結果をまとめた記録用紙の山、作成途中の魔法人形……。
公務に追われる多忙な日々を過ごしながらも、父はこれほど勉学や研究に励んでいたのか。
こんな秘密の場所で行っていたのだから仕方ないが、娘である自分でさえまったく知らなかった。

「本当にすごいわ……」

研究者である上の姉がこの部屋を見たらなんというだろう、と考えながら、ルイズはあちこちを調べて回った。
自分もかなり勉強しているつもりではあるが、何なのかよくわからない品物や内容を理解できない文書がずいぶんある。

「閉まってる箱とかは無闇に開けないで、ディー君に回した方がいいかもね。まだ罠とかがあるかもしれないし。
 私たちにはよくわからないものも、ディー君やエンセリックなら知ってるかもしれないしね」

キュルケはそんなことをいいながら、高価そうな遺跡の出土品などを検分している。

この部屋には、おそらく学術的に貴重な物が多々あるのだろうし、金銭的にも価値のある品物が眠っていそうだった。
没落しているオルレアン家にとっては、そういった意味でもありがたい発見になるかも知れない。

「うん、変わったものを見つけたらちょっと見せて。
 ディーキンも、わからないものがあったらみんなに見てもらうからね――――」

そう言いながら、ディーキンはまた《隠し扉の感知(ディテクト・シークレット・ドアーズ)》の呪文で室内をざっと調べてみた。
ガーディアンを操作するアミュレットのような重要なものは、秘密の引き出しにでもしまってあるかもしれないと思ったのだ。

「……んっ?」

ひとつ反応があったので、ディーキンはそちらの方に歩み寄った。

保存食やワインの入った木箱をずらし、その下の床を丁寧に虫眼鏡で調べると、ほとんど気付かないような切れ目がある。
そこに爪をひっかけて、秘密の落し戸を開ける……。

「オオ……! あった、あったよ!」

ディーキンが嬉しそうにはしゃいで、中に収められていた品物をひっぱり出した。

お目当ての、シールド・ガーディアンを制御するための首飾り型のアミュレットが3つ。
それに、他にもいくつかの装飾品や宝石、護符などがしまってあった。
どうやら、隠し金庫だったようだ。

ディーキンは他の品物を、それが収められていた箱ごと目の色を変えているキュルケらに引き渡して見立てを任せた。
それから3つのアミュレットを首にかけ、扉を殴っているシールド・ガーディアンたちに攻撃を止めるよう命令する。
忠実な守護者たちはすぐに新しい主の命に従い、扉を殴りつけるのを中止した。

「これで、もう心配はないね」

貴重なシールド・ガーディアンを3体も手に入れられたディーキンは、さすがにほくほくした顔をする。

さて、いつまでも浮かれていないで他の場所の調査に向かおうとして……。
そこでふと、ナシーラの言葉を思い出した。

『秘密の空間の奥にもうひとつ秘密を隠しておくというのも、ごくありふれた手法ね。
 人は一旦秘密を見抜いたと判断したら、それ以上は調べようとしない。
 そういった心理の隙を突くのよ』

(ウーン……、そうだね)

滅多なことはないとは思うが、念には念を入れておいて悪いこともないだろう。
そう思って、先程の隠し扉をもう一度調べてみた。

すると……。

「……オ?」

驚いたことに、もうひとつ隠し扉の反応があった。

いささかできすぎているくらいだが、やはり仲間の助言には耳を傾けておくものだ。
この場にいないナシーラに心の中で感謝しながら、ディーキンは落し戸の底に手を伸ばし、もうひとつ隠されていた秘密の扉を探り当てた。

さあ、この奥には何があるのだろう。
最初の落し戸の中に隠されていた宝物を囮にしてまで隠すほどの価値のある品とは、一体何なのか……?

ディーキンは、内心とてもわくわくしながら隠し戸を開いてみた。

その中にあったのは、目もくらむような眩い輝きを放つ財宝……。
ではなく、一冊の古びた本と記録用紙の束の入った箱、それに奇妙な皮紙の束を綴った文書のようだった。

(……?)

なんだろう、これは。
ディーキンは仲間たちが先程見つけた宝物を熱心に調べているのを確認して、まずは自分で読んでみようとそれらを手に取った……。


「……ねえみんな、ここで調べてたら時間がすごくかかるよ。
 とりあえずあるものを運び出して、残りを調べるのは後回しでもいいんじゃないかな?」

ディーキンは仲間たちが宝物の検分を終えたのを見計らって、そう提案した。

ルイズらにも、特に異論はなかった。
エレオノールの来訪の予定もあることだし、早めに学院に戻った方がよいだろう。
運搬は、いましがた手に入れたばかりのシールド・ガーディアンたちの手を借りれば、ごく短時間で済むはずだ。

「ディー君、お手柄よ!
 さっきのお宝は魔法の品物を抜きにしても、宝石とかだけでまず十万エキューはくだらないわ!
 きっと大公が、オルレアン家の家宝の一部を隠しておいたのね!」

興奮して目を輝かせるキュルケににこやかに応対しながらも、ディーキンはまったく別のことを考えていた。
十万エキューだろうが百万エキューだろうが、そんなものはその後に見つけたものに比べればどうでもよい。

それらは、まだ皆にはその発見を知らせないまま、今はディーキンの背負い袋の中に収められている。

一体、皆にはどう話せばよいだろう。
それとも、いっそ彼女らに対しては隠しておくべきなのだろうか……。

ひとつは、遺跡から出土したものらしい、始祖ブリミルの時代にさかのぼる『虚無』関係の書物。
それも、どうやら呪文などについても詳しく記されているもので、ルイズにとって重要な品になるはずだった。

そして、シャルル大公がその書物について調べ、解読や分析、考察を進めた研究記録。
その中には彼の兄、ジョゼフが『虚無』ではないかという彼自身の考えや、そのことに対する彼の想いなども含まれているようだった。
これもルイズにとっては実に貴重なものになるだろうが、タバサにとっては彼女の知らない父の一面を見せることになるだろう。

だが、そのいずれも、最後のひとつに比べれば大したものではない。

さっさと品物を運び出そうと提案したのも、それに関わる何かが部屋の中で見つかり、皆の目に触れるのではないかと恐れてのことだった。
ディーキンは主としてそれをどう扱うべきか、特にタバサや彼女の母に対してなんといえばよいのかと、ひどく悩んでいた……。


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