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第九十三話「傷だらけの舞踏会」


ウルトラマンゼロの使い魔
第九十三話「傷だらけの舞踏会」
宇宙凶険怪獣ケルビム 登場



「お兄ちゃん、はい! お手紙折ったよ!」
「オッケー。じゃあ次はその手紙を封筒に入れてくれ」
 ……ある日の晩、才人はルイズの部屋で、タバサとともに平民に向けた舞踏会の招待状を
支度する作業に取りかかっていた。と言っても才人はハルケギニアの文字を知らないので、
タバサが書いた例文を、意味を分からずに一枚一枚書き写しているという形を取っている。
 この作業に、リシュも手伝いをしていた。
「はぁ~……それにしても、すごい量を書かなくちゃいけないんだな。この山を見ると、
改めてそう思うよ」
 招待状を書いている途中で、凝った肩をグルグル回してほぐした才人が、長く息を吐きながら
ぼやいた。彼の目線の先には、まだ白紙の手紙が山積みになっている。もう大分書いたはずなのだが、
この分だとまだまだ終わりそうにない。
「しかもこれだけで、学院で働いてる人たちの分だけだろ。この学院って、思ってたよりも
ずっとたくさんの平民の人たちに支えられてたんだな」
 学院で働く平民の多さを実感してため息を吐く才人。その言葉にタバサはうなずく。
「……それだっていうのに、平民を下に見る生徒が大勢いるだなんて。そいつら全員、一度平民に
ボイコットされて、当たり前のように飯が食えるありがたみを知ればいいんだ」
 珍しく苛立った様子で吐き捨てる才人に、リシュが眉を八の字にして尋ねる。
「お兄ちゃん、何か嫌なことでもあったの?」
「え? あ、ああいや、別に怒ってるとかじゃないんだ」
 我に返った才人があたふたと弁解した。
「ただ、舞踏会に反対してる生徒が思いの外多くってさ……ちょっとだけ気分が参っちゃっただけだよ」
 とため息交じりに語る才人であった。
 反対している生徒が思いの外多い、と軽く言ったが、しかしこれが目下の大問題であった。
この反発の声は無視できないほどの大きさであり、ギーシュとモンモランシーが学院内での立場が
苦しくなって才人たちから離反してしまったほどなのだ。二人とも申し訳なさそうにしていたが、
貴族の集まる学院となると、そこでの立場が家名にも影響をもたらす。その影響を考えなくても
大丈夫なのは、ルイズやクリスのような公爵以上の貴族中の貴族クラスか、タバサのような特殊な
立ち位置くらいでないといけない。そういうことで、ギーシュたちは舞踏会賛同派にいられなく
なったのである。
 また、懸念していた事態も遂に起こってしまった。反対派はオスマンのところにまで苦情の
数々を向け、それを受けてオスマン直々から舞踏会の中止を勧告されているのだ。しかしオスマンは
ルイズたちの努力も汲んで、次の虚無の曜日までに反対派を説得できれば舞踏会中止は取り下げる
との猶予を与えてくれた。たった数日の時間の猶予だが、それでも最大限の譲歩であった。
それほどまでに反対の意見は大きいのだ。
 そういうことで、どうにか舞踏会を成功させようと今もルイズとクリスが生徒たちを説得して
回っている。実際の会場の準備をしてくれているシエスタは別として、ルイズたちがこの場に
いないのはそういう理由からであった。
 以上の難関を振り返って眉間に皺を寄せた才人。彼の表情から何を見て取ったか、リシュは
慰めの言葉を掛けた。
「……みんなで舞踏会、出来るといいね」
「ああ……。そのためにお兄ちゃん頑張るぜ! リシュも応援しててくれな……ん?」
 笑顔を作って振り返った才人だが、リシュが畳の上にコテンと横になっているのを目にして、
呆気にとられた。
「すー……すー……」
「ありゃ、寝ちゃったのか。まぁ無理もないかな。もう結構遅い時間だし」
 才人は一旦ペンを置き、リシュをベッドまで運んで寝かせてあげた。
「それにしても寝つきのいい子だな。さっきまで話してたところなのに……」
 独白しながら、リシュの寝顔を見つめてふとつぶやく。
「こんな安らかな寝顔をしちゃって、普段どんな夢を見てるんだろうなぁ」
 リシュの見ている夢を気に掛ける才人。普段の彼なら、そんな何の実りもないことを気にしたりは
しないのだが、ここ最近の自分の夢見が何だか妙なので、つい他人の夢も気にしたのであった。
 最近、どうにも同じような夢を見ているのだ。目覚めた時にはおおまかにしか覚えていないが、
自分が召喚される前のように高校に通っている。それでいて、高校にはこの世界で出会った
ルイズたちがいるという不思議な夢。一度や二度ならそんなこともあるだろうと気にしたりは
しないが、こうも連続すると自分で自分が不思議になる。
(何か俺、心の中に溜まってるものでもあるのかな。それが夢の形で現れてるのかも……)
 そうも思ったが、今はそんなことよりも舞踏会の問題だ。ルイズたちが反対派を説得し、
無事に舞踏会が開催できることを信じて、今は招待状を完成させるのだ。
 そう自身に言い聞かせて、才人は執筆に戻っていった。

 この翌日……学院の側の森に、一人の男子生徒がやや鼻息荒くしながら分け入っていた。
 この生徒は、舞踏会の反対派の中でも特に声が大きい者の一人であった。彼に引っ張られる形で
反対を表明している者もいるほどだ。たとえばこういうのがいなければ、ルイズたちも随分と楽に
なるのかもしれない。
 しかし貴族の子息が何故一人で森の中に入っていくのか。しかも若干興奮した様子で。
「ふふふ……とうとう僕にも春が来たんだ。もうギーシュに自慢させてばかりはさせないぞ。
今日からは僕も彼女持ちだ!」
 生徒はそんなことを口走っていた。そして片手には手紙。内容は、何とラブレター。
 彼は本日、少し席を外している間に自分の教科書にこのラブレターが挟まれているのを発見した。
そこに『今日の放課後、一人で森に来て下さい』と書いてあったので、その通りにここまでやってきたのだ。
 落ち着いて考えれば、いくら何でも告白する場所にわざわざ森の中を指定するのは怪しいが、
何せ生まれてこの方まともに女子とつき合った経験のない身。日頃からギーシュ等を羨んでいて
仕方ないところにラブレターをもらったので、すっかりと舞い上がっているのだ。
 更に言えば、彼は貴族といえども思春期の男子。こと恋愛事となると冷静さを欠く年頃である。
はっきり言えば色惚けした馬鹿なのだ。
「さーて、この辺かな。おーい、誰かいないかー? 手紙に書いてあった通りに、一人で来たぞー」
 とにもかくにも、男子生徒はめぼしいところで立ち止まり、ラブレターの差出人を探して
大きな声を上げた。だが、そうすると、
「えッ? おい、今のどういうことだ?」
「は?」
 近くの樹の陰から、別の男子がひょっこりと姿を出したのだ。お互い、相手の顔を確認して唖然とする。
「お、お前、何でこんなところにいるんだ?」
「そりゃこっちの台詞だよ。どうして森にいるんだ、お前」
「僕は今日このラブレターをもらって、それで……」
 最初の生徒の言葉に、もう一人は目を見開く。
「ラブレターだと? それなら俺ももらったぞ」
「えぇ? み、見せてくれ」
 もう一人が取り出した手紙と、自分のものを見比べる男子生徒。
「ほ、ほぼ同じ内容だぞ」
「どういうことだ……?」
 訝しむ二人。しかしこれで終わりではない。
「お、おい。そこのお前たち、何やってるんだ?」
「その手に持ってるの、まさかラブレターじゃないだろうな?」
「おいおい! これどういうことだよ?」
 辺りから男子生徒がゾロゾロと数人ほど現れたのだ。これにより、全員がどうなっているのかと
呆然としてしまう。
 しかし互いに情報を出し合ったことで、全員がラブレターに導かれるままここに来たのだ
ということがはっきりとなった。ここに至って、どういうことかを全員が理解し、憤然となった。
「何だよ! 質の悪い悪戯だったのか!」
「期待させやがって! 誰がこんなことしたんだ? 馬鹿にして!」
「おい、よく見たらここにいるのって、あの平民向けの舞踏会なんて馬鹿げたことに反対してる
奴ばっかじゃないか」
 誰かがそう言った。その通り、彼らは反対派の中核ばかりであった。
「ってことはつまり、ルイズたちか平民の仕業だってことか?」
「つまらない嫌がらせしやがって! もう勘弁ならないぞ!」
「オールド・オスマンに訴えて、すぐにでも舞踏会なんて中止させてやる!」
 すっかりと機嫌を害した男子たちは、徒党を組んでオスマンに抗議しようと学院の方へ
引き返そうとする。
 が、その時に、空から大きな物体がものすごいスピードで降ってきて、森の中に落下した! 
ドズゥンッ! と激しい地鳴りとともに震動が起こる。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」
 突然何事かと一斉に振り返った男子たちが目にしたものとは、
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
 森の背景にそびえ立つ、頭頂部にゴツゴツした一本角を生やし、手は内側の二本が特に長く
鋭い四本指、長大なモーニングスター状の一歩が目立つ大怪獣の姿だった。
 獰猛な宇宙怪獣、ケルビムだ!
「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」
 目の前に現れた怪獣に恐怖して大絶叫する男子たち。ケルビムはすぐに彼らに目を留め、
鉤爪を振り上げて襲いかかろうとする!
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
「ひぎゃああああああああッ!! お、お助けぇぇぇぇ――――――!!」
 地響きを鳴らして迫りくるケルビムから、男子たちはみっともなく泣き叫びながら必死に
逃げ回り始めた。

 ケルビムの出現、及び生徒たちが襲われていることはもちろんすぐに才人とゼロが感知した。
『才人! 学院の生徒が怪獣に襲われてるぜ!』
「でも、何であんな森にここの生徒が!? 何やってたんだ?」
『そんなことより、そいつらの命が今にもやばい! 助けに行かねぇと!』
「ああ、分かった!」
 才人は即座に人のいないところへと飛び込み、ウルトラゼロアイを装着して変身する。
「デュワッ!」
 変身を遂げたウルトラマンゼロは即座に飛び出し、ケルビムを発見すると巨大化して飛び蹴りを
食らわせた。
「デェェェアッ!」
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
 キックが首に決まり、ケルビムははね飛ばされる。男子たちが踏み潰される、本当にギリギリの
ところであった。
「う、ウルトラマンゼロ様ぁ~!」
 死の恐怖で泣きじゃくっていた男子たちは、危ないところを救ってくれたゼロをぺこぺこと拝み、
次いで全速力で逃げていった。
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
 立ち上がったケルビムは怒りを示してゼロをにらみ、威嚇するように腕を振り上げる。
それに対して宇宙拳法の構えを見せるゼロ。両者戦意にあふれている。
『来いッ!』
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
 激突するゼロとケルビム。学院を背にして、ここに決闘が開始された。
 ケルビムは長い鉤爪の生えた両腕を振り下ろしてゼロに攻撃を仕掛ける。しかしゼロは相手の
懐に飛び込むことで鉤爪をかいくぐる。そこから反撃を繰り出す姿勢だ。
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
 だがそれより早く、ケルビムが自身の首を振り下ろした。ケルビムの頭部には太い一本角が
生えている。動きの制限される懐に入ったのが災いし、ゼロはよけられずに角が肩にヒット。
『ぐッ……せぇぇいッ!』
 ダメージを受けるが、苦痛をこらえて肘打ちからの横拳を食らわせた。ケルビムは悶絶して
よろよろと後退。これでイーブンといったところか。
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
 だがケルビムもめげずに反撃してくる。耳の位置に生えたヒレが斜め上に開いたかと思うと、
口から火球を吐き出してきた!
『! とりゃッ!』
 下手に火球をかわしたら学院に当たってしまうかもしれない。そのためゼロは瞬時にゼロスラッガーを
両手に持ち、飛んでくる火球の連発を片っ端から切り払った。それからスラッガーを投擲して遠距離攻撃を
仕返しする。
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
 が、スラッガーはケルビムの角に弾かれた。ゼロは前に駆け出しながらスラッガーを頭部に戻し、
再度接近戦を試みる。
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
 その時にケルビムの長い尻尾がしなり、ゼロに向かって振り下ろされた。尻尾の先端は
鈍器状となっている。この一撃を食らうのは痛い!
『はッ!』
 しかしゼロは相手の尻尾攻撃を見事キャッチして止める。これでひと安心かと思いきや、
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
 ケルビムはその場で軽く浮上。そして高速回転を始める! 重力を無視した飛行能力を持つ
宇宙怪獣だからこそ出来る荒業だ!
『うおあッ!?』
 尻尾を抑えていたゼロも振り回されてしまい、遠心力で投げ飛ばされた。
『このッ! せぇいッ!』
 エメリウムスラッシュを発射するも、ケルビムの回転する尻尾に撃ち返されて空の彼方へ
弾かれてしまった。
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
 減速して着地したケルビムは、今の技を誇示するかのように腕を振り上げてひと鳴きした。
 ケルビムのトゲトゲした肉体は飾りではない。角と爪は接近戦用の武器、尻尾は中距離戦用の
凶器となり、遠距離だと火球で攻撃してくる。このように、距離を選ばず戦闘できるのが何よりの
強みなのだ。宇宙怪獣の中でも特に獰猛で好戦的な性質が反映された進化の形といえるだろう。
『なかなかに手強いな……。メビウスの奴が手を焼いただけのことはあるぜ』
 ケルビムの隙のない強さを認めたゼロは、下唇をぬぐって意識を一新する。
『だが勝負はここからが本番だぜ! ストロングコロナゼロだぁッ!』
 そして身体を赤く燃え上がらせ、ストロングコロナゼロに二段変身した! 破壊力重視の
怪獣相手ならば、こちらもパワー重視の形態で応戦だ!
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
 ケルビムはまたも火球を吐いてゼロを狙うが、ゼロは腕で火球をはたき落としながら前進。
ケルビムに向かって駆けていく。
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
『おおおおッ!』
 ケルビムは迫ってきたゼロへ角を振り下ろす――が、それに合わせたゼロのエルボーの
打ち上げが、角を粉砕した!
「ギャアアアアアアオウ!?」
 自慢の角を粉々にされて激しく狼狽えたケルビムだが、それでもゼロに反撃するべく尻尾を
伸ばし、回転を始める。再び先ほどの回転攻撃を仕掛けるつもりだ。
 しかし今度のゼロは、相手の尻尾をがっしりと掴むと、怪力でケルビムの回転を食い止めた!
『どおおおおぉぉぉぉぉッ!』
 その上、反対にケルビムの全身をブンブンと豪快に振り回す。ケルビムは抵抗さえ出来ない。
「ピッ! ギャアアアアアアオウ!」
『らぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
 そして十分勢いをつけたところで、思い切り投げ飛ばす! 豪速で地面に叩きつけられた
ケルビムはそのまま爆散した!
「ジュワッ!」
 見事にケルビムを粉砕し、またも学院を救ったゼロは、大空へ飛び上がって森を後にしたのであった。

 怪獣を倒したのはいいのだが、またしても一つ謎が残った。それは、男子生徒たちを偽の
ラブレターで森に呼び寄せたのは何者の仕業なのかということだ。
 被害に遭った男子生徒たちは、ルイズらの仕業だと主張したが、手紙が配られたと推定される
時刻には全員に明確なアリバイがあった。平民が教室に入って不審な動きを取っていたという
報告もない。それに、反対派への仕返しとしては所業が半端。そういうことで、無関係な者の
つまらない悪戯ということで一応片づけられた。
 しかし裏では、小さな女の子が学院内をチョロチョロ駆け回っていたという目撃情報も
上がっていた。それはほぼ確実にリシュだろうが、まさか幼いリシュが色惚けていたとはいえ
魔法学院の生徒を騙せるほど綺麗な字を書けるとは思えない。たまたま部屋を抜け出して
散歩していただけだろう、ということでリシュにはルイズからの注意だけで済まされた。
 それと男子生徒たちが集まったところに、狙いすましたかのように怪獣が出現したことに関しては、
さすがに偽のラブレターを仕掛けた者に怪獣を操れるような恐ろしい力があるはずがない、
ということで単なる偶然と処理された。ゼロだけはどうにも釈然としない様子であったが……。
 だが悪戯で済まされたとはいえ、この件で生徒らの舞踏会賛成派の心象が一層悪くなったことだろう。
関係はないと判断されても、こんなことが起きたのは平民向けの舞踏会を開こうなんて言い出す奴が
いるからだ。そんな理不尽な思考をするのが人間というものだから……。
 説得は余計に難航しそうだと、才人の不安も強まるのだった……。

 そんなことがあった後に、リシュが才人にこんなことを問いかけた。
「お兄ちゃん、どうして舞踏会に反対してる人たちを助けたの?」
「えッ? いや、助けたのは俺じゃなくてウルトラマンゼロなんだけどな……」
 反射的に訂正する才人。リシュはどういう訳か、男子生徒たちを助けたのが才人だと思っている
みたいであった。
「というか、どうして怪獣に襲われたのが反対してる人たちだってこと、リシュが知ってるんだ?」
「えッ? それは……ルイルイたちが話してるのを聞いたの」
 と答えたリシュが、質問を重ねる。
「でも、ウルトラマンゼロが来なかったとしても、お兄ちゃんはその人たちを助けてたんじゃないの?」
「まぁな。さすがに見捨てるなんてことはしないさ」
「どうして? その人たちがいなかった方が、舞踏会をすんなり開けていいんじゃない?」
 幼い故の、無邪気だが残酷な質問だろうか。才人はリシュを諭すように答えた。
「そういうものじゃないさ、リシュ。都合が悪いからって、邪魔だからって、いなくなって
しまえばいいって訳じゃないんだ。人の命はな、そんな軽いものじゃないんだ。それに、邪魔な
相手をいなくさせれば何もかも解決だっていうのがそもそもの間違いだぞ。物事っていうのは、
そんな単純にはいかないものなんだ」
 しかし、リシュは、
「……リシュはそう思わないな」
「リシュ……?」
「……どんなにこっちから言っても、分かってもらえないこととか、相手が分かろうとも
しないことだってあるよ。そんなどうしようもない時には、邪魔な人がいないように
することも……間違いじゃないと思う」
 才人は、幼く無邪気なリシュがそんな難しく、悲しいことを語ったのがとても意外で、
思わず言葉を失った。
 それと同時に、この時のリシュは……幼い少女とは思えない、成熟した女性のようだと
感じたのであった。


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