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ウルトラ5番目の使い魔、第三部-34b


「やっほーっ! 先輩ー、おっそくなりましたぁ」
「ティア、遅刻したのにそれじゃ失礼よ。申し訳ありません、エーコ様、ビーコ様、シーコ様」
「ティラ、ティア!? あなたたち、また来たの」
 広場の入り口から駆け込んできて、三人の前で止まったふたりの少女を見て、エーコたちは肩を落として困った様子を見せた。
 その二人は、年のころはエーコたちと同じか少し上くらいに見えて、二人とも新春の若草のような鮮やかな緑色の髪を持っている。ただ、ぱちりと開いた瞳と整った顔立ちの美少女であったが、なんと二人はまったく同じ容姿をしていた。つまり双子である。
 ただ、見分けられないかと言えばそうでもなく、ティアと呼ばれたほうは髪が肩までと短く、ティラのほうは腰まで伸びている。また、雰囲気もティアのほうがどこかふてぶてしいが、ティラのほうは小さな丸眼鏡をかけていて、少し幼げな様子を感じられた。衣装はふたりとも、ふたりの髪と同じグリーンの光沢を持つ、スリットスカートをしたチャイナドレス風のものを着ていた。
 二人はエーコたちの前に堂々と立つと、困惑している新入りの少女たちに向かって堂々と宣言した。
「はじめまして、わたしはティラ」
「わたしはティア」
「「わたしたちは、エーコ姉さまたちの一の家来です」」
 胸を張りながらそう言ってのけたふたりを見て、集まった少女たちはぽかんとするしかなかった。
 しかしエーコたちはそうはいかない。ビーコが仕方なさそうに、ティラとティアに言った。
「ティラ、ティア、何度も言ってるでしょう? 平民は騎士団には入れないのよ」
「またまたぁ、ケチケチしないで入れてくださいよ。わたしたちとエーコ様たちの仲じゃないですか。ねえティラ」
「そうですわ。わたしたちはエーコ様たちに大きな恩を感じているのです。それとも、わたしたちにはもうお飽きになりましたの? 行きずりの関係だったのですか。うっうううぅ」
「そっ、そんなことないったら。泣かないでティラ、あなたたちはわたしたちの大切な友達なんだから」
「「ほんと! やった、だから大好き! わたしたち、エーコ様たちのためならなんでもやりますわ!」」
「だからわたしはあなたたちには別に……もう、どうしてこうなっちゃったのかしら」
 頭を抱えて、ビーコはどうしたものかと首を振った。
 このティラとティアという姉妹と出会ったのは、今からざっと二ヶ月ほど前にさかのぼる。
 ある日、エーコたちはいつものように工場を見回っていると、騒ぎが起こっているのを耳にした。ただのケンカであれば官憲の仕事であるので触らずにゆくところだが、どうも異端審問だの宗教裁判だのと危険な単語が聞こえてきたので、慌てて駆けつけると、工場の人間たちにティラとティアのふたりが囲まれて、街の神父に弾劾されているところだった。
「ちくしょう、なんでブリミルとかいう奴を褒めなきゃ飯も食えねえんだよ。クソッタレが」
「では両名とも、反省のつもりはないということですね。仕方ありません、ロマリア宗教庁の名の下に君たちふたりを異端者とみなし、死刑を」
「待ちなさい!」
 エーコたちは死刑判決が出される直前で割り込み、神父から事情を聞いた。簡単にまとめると、工場で働いている少女ふたりが昼食時の食堂で神父がおこなう始祖ブリミルへのお祈りに対して暴言を吐いたのが原因だという。
 それが、ティラとティアだった。エーコたちはふたりからも言い分を聞くと、異端審問を中止させてふたりを引き取った。異端は大罪であり、エーコたちのやったことはかなり危険な行為だ。しかし、ティラとティアが身寄りがなく、ふたりだけで働きに出てきていると聞いたとき、エーコたちはとても見捨てて行くことはできなかった。
「いい、あなたたち。どんな田舎から出てきたかは知らないけど、始祖ブリミルへの侮辱は大罪なの。今回は世間知らずということでかばってあげられたけど、次はないわよ。気をつけなさい」
「は、はい。ありがとうございます。はぁ……なんてお優しい」
「うっうっ、人間にも、こんないい奴がいるんだなぁ。決めた! あたしらの星じゃ、恩を受けたら必ず返すのが決まりなんだけど、この命、あんたたちのために使わせてもらうよ!」
 こういう具合に、すっかりと懐かれてしまったのである。正直、ありがた迷惑ではあったけれども無下にすることもできず、簡単なことを手伝ってもらったりしているうちに少しずつ気心も知れてきた。魔法は使えないそうなので平民には違いなく、仕事をまかせてよいかどうかは最初疑問があったけれど、ティラもティアも想像以上に利発で働き者で、たいていの仕事は一度教えればすぐに覚えた。
 これは思わぬ拾い物だと、エーコたちが評価を改めるのには時間はかからなかった。過去はあまり語りたがらなかったが、それは自分たちも同じなので無理に聞くことはしない。それに、ふたりとも少々変わっているところはあっても、変わっていることに関しては自分たち姉妹も似たり寄ったりなので気にしなかった。
「ティラ、ティア、あなたたちすごいわね。まるで学者か医者だったみたい。ほんと、あなたたちみたいな子がなんでこんなところで下働きしてたの?」
「そうですね……実はわたしたちは、ある学者の先生についてこちらに来たんですけど、その先生が亡くなって、それで帰るあてもなくなってしまって」
「そうだったの。よければ送る手はずを整えてあげましょうか? あなたたちはもう充分働いてくれたし、クルデンホルフの名義でなら、ハルケギニアのどこへでも旅券を作ってあげられるわよ」
「いやいや、命を救われたお礼をこの程度でなんてもったいない。帰っても、満足に恩も返せずに帰ったりしたらこっちがどやされますって!」
「でも、ご家族や友人が心配してるんじゃ」
「「まあそう遠慮なさらずに!」」
 うまくはぐらかされてしまったような気がしたが、こうして今日までティラとティアはエーコたちといっしょにこの街で過ごしてきた。やがてエーコたちの姉妹もティラとティアのことを知るようになり、いつしか二人も姉妹の中に入ってきたかのように親しく交流するようになってきた。
 とはいえ、仕事に役に立つかどうかと戦いで強いかは別である。エーコたちが作ろうとしている騎士団は、本気で水精霊騎士隊に対抗するための武道派集団である。魔法を使えるか使えないかということで、どれくらい戦いにおいて違いが出るかということをよく知っているエーコたちは、身分関係なくできた友人を危険な目に合わせたくはなかった。
 そのことは、もう何度もティラとティアには説明した。しかしふたりは聞く耳を持たず、今日まで押し問答が続いている。
「はぁ、しょうがないわね。今さら帰れというのもなんだし、あなたたちは魔法は使えないし。なにか、やりたいこととかある?」
「水泳! わたしたち泳ぐのとっても得意なんです。みんなで泳げばきっと楽しいよ!」
「却下! まだ寒いのにみんな風邪ひいちゃうわよ。もう、どうしようかシーコ?」
 騎士団に参加する気満々で、帰るつもりなどさらさらないティラとティア。ビーコが困った様子で助けを求めると、シーコは少し考えるそぶりをしてから自分のかばんを取り出した。
「んーん……そうだねえ、じゃあ今日は趣を変えて勉強会ということにしようか」
「勉強会?」
「うん、姫殿下が最近『召喚されし書物』を愛読してるの知ってるでしょ? 殿下が読み終わった本を持ってきたから、これをみんなで読みましょうよ」
 シーコがかばんをひっくり返すと、どさどさと本が転げだしてきた。
「悪くないわね。あ、でもリードランゲージはみんな使えるけど、それだとティラたちが読めないんじゃない?」
「それは大丈夫、ティラたちにはわたしが読んであげるから」
「シーコ、あなた最近ティラたちに甘くない? というより最初から二人が来るのを見越してたでしょ」
「えへへ」
 髪の色が同じ緑で似ているからか、末っ子で妹ができてうれしいからなのか、シーコはこのふたりと特に仲がよかった。
 とはいえ、すでに空気が特訓向きではなくなっているのもある。見ると、ユウリやティーナら姉たちも、それでいいんじゃないか? というふうにわくわくした顔をしている。ほかの少女たちも同様だ。召喚されし書物とは、それだけハルケギニアでは贅沢な娯楽なのである。
 そうと決まれば、わっと少女たちは本に群がった。それぞれ好きな本を手にとってリードランゲージを唱え、思い思いに楽しみはじめる。
 本はいずれも絵で物語を追っていくものであったが、作者は異なっているようで内容は様々であった。海賊の少年が世界の海を冒険するものや、メガネをかけた力持ちの少女がむっちゃんこな騒動を起こしていくものなど、どれもハルケギニアではありえないようなストーリーと描写が多感な子供の心をぐっと引き込んできた。
 なお、シーコとティラたちは「せっかくだから見敵必殺の精神が学べるものにしましょう。最近姫様が読んでるこれとか、これなんてどう?」と、三人して吸血鬼や眼鏡のデブや神父が仲良く戦争する本や、妖怪首おいてけや眼帯親父や男女が国捕りする本を熱心に読んでいた。
 読書会の様相となった水妖精騎士団の面々は、笑ったり興奮して叫び声をあげたりしながら、読み終わった本を交換しながら楽しい時間を過ごした。こうした面では、彼女たちも年頃の少女そのものであった。
 その端で、セトラやキュメイラは自分たちも好きな本を読みながら、妹たちに新しい友達が出来ていっていることをうれしく思っていた。たとえ、集まった動機は少々不純でも、若者とは元来そうしたものだ。それに、なんであろうと目標を持ってそのために努力しているというのはすばらしい。
 しかし、姉たちはエーコたちの成長を快く思いながらも、同時に自分たちの教えられることへの限界も感じ始めていた。
「ユウリ、どう、最近のエーコたちの育ち具合は?」
「悪くないよ、もうそこいらのごろつきよりはよっぽど強いんじゃないかな。けど……」
「けど?」
「あたしの戦い方はあくまで我流だからね。ケンカに強くはできても、エーコたちが求めてる騎士団としての戦い方は教えられないんだ。どっかに、実戦経験豊富で集団戦も得意なメイジがいればいいんだが、あたしらにそんなのを雇う金なんてねえし」
「そうね、みんなもそろそろエーコたちに教えられることがなくなってきてるし、これ以上の成長を見込むならプロの誰かに頼むしかないけど、あの子たちはけっこうプライドが高いから、知らない人間に素直に教えを受けるかどうか」
 難しいわね、とキュメイラとユウリはため息をついた。

 それぞれの思惑は異なれど、楽しい時間を過ごす少女たち。だが、そんな彼女たちに、大変な危険が迫りつつあった。
 少女たちの和む広場に、ガチャガチャとうるさい鉄の足音を響かせて入ってくる大勢の影。少女たちがあっけにとられて見上げる前で、無作法な侵入者たちのひとりが嘲るように言った。
「こんにちは、可愛らしいお嬢さんたち。よろしければ、私どもと楽しいお時間でもいかがかな?」
 重い鉄の鎧を着込んだたくましい重装騎士の一団の乱入に、少女たちの間に戦慄が走る。しかし、エーコたちはその騎士たちが身につけている紋章がクルデンホルフのものだということに気づき、目の前に現れた男たちの名を苦々しげにつぶやいた。
「空中装甲騎士団……」

 そして同じ頃、ベアトリスも予期せぬ客を前にして怒りを覚えていた。
「なんですって……? もう一度、言ってみなさい」
「ははっ、我ら空中装甲騎士団一同、ベアトリス殿下の護衛のためにはせ参じました。本日よりは、我らを手足のように使い、存分に大事をなせとの当主様よりのご命令です」
 目の前にひざまづいて頭を垂れる騎士たちを見下ろして、ベアトリスは「お父様め、余計なことを……」と奥歯をこすらせた。
 空中装甲騎士団。それはクルデンホルフ公国の有する竜騎士の大隊で、実力はハルケギニアでも五指に入ると武勇が知れ渡っている。
 当然、ベアトリスにとっても誇るべき勇者たちなのだが、今回は事情が異なる。空中装甲騎士団は確かに強いが、裏を返せばそれだけの軍団であって融通がきかない。護衛にしては大げさすぎるし、権威を示すにしても周り中が貴族だけの魔法学院ならまだしも、この街では平民への余計なプレッシャーになってしまう。
 恐らくベアトリスの父、クルデンホルフ公国王は辺境で努力している娘への親心として空中装甲騎士団を送ったのだろうが、今のベアトリスに必要なのは戦闘集団ではない。様々な事態に柔軟に対処できる小回りのきく人材なのだ。空中装甲騎士団では助力どころか足手まといになってしまうだろう。
「必要ないわ。わたしは今のままでもじゅうぶんに仕事を勤めてる。あなたたちは帰還してクルデンホルフ本国の防衛につきなさい」
 最初が肝心だと、ベアトリスは不要の意思を断固とした口調で伝えた。しかし、相手も壮齢に達した歴戦の騎士団の指揮官、簡単には引き下がらない。
「そのご命令は聞けませぬ。我々は当主様直々のご命令を受けております。常に姫様を警護し、あらゆる脅威からお守りしろとのこと。聞くところによると、姫様は先日暴漢に襲われてお怪我をなされたとのこと、ご心配なさるお父上のお気持ちもお察しください」
 これはもちろんヤプールに騙されていたときのエーコたちの姉妹に負わされた傷のことである。しかしベアトリスは恨みに思ったことはないし、傷自体もすぐに治して口外も避けてきた。しかし、どこからか漏れて本国に伝わってしまったらしい。
「そのことは心配いらないわ。たいした傷を負わされたわけじゃないし、何事をも無傷で済ませられると思うほど子供じゃないつもり。危険に近づくのも勉強のうち、お父様のお気持ちはうれしいけど、わたしは信頼できる部下は自分で集める。お父様の手を借りるつもりはないわ」
「いえ、あなた様はまだお若い。どんな狡猾な輩に騙されるか、まだ世間の厳しさをわかっておりませぬ。しばらくは、忠義に疑いのない我らをお使いくださいませ。姫様につこうとする害虫は、我らがすべて排除いたしまする」
「大きなお世話よ。わたしにはもう、エーコたちが……まさかあなたたち! エーコたちに」
「あのような没落貴族の子弟なぞ、信用がおけませぬ。今頃は、泣き喚きながら化けの皮をはがされておりましょう」
「っ! あなたたちっ! エーコ、ビーコ、シーコ!」
 ベアトリスは惰眠をむさぼっていたことを後悔した。ドアを蹴破るようにして駆け出すが、エーコたちが特訓場所に使っている広場はこのホテルから急いでも三十分はかかる場所にある。
 間に合うか、間に合って! 
 体裁も考えず、ホテルから飛び出して必死に走るベアトリス。その頭上には、ホテルの屋上から飛び立った竜騎士が、どんなに急いでも遅いよとでも言う風にゆっくりと飛んでいた。


 だが、事態はここで誰もが予想もしなかった方向へと進もうとしていた。
 エーコたち、仮称水妖精騎士団に対して、逃げ場を塞ぐように広場の入り口に布陣する総勢三十名の空中装甲騎士団。彼らはエーコたちへの嘲りを隠そうともせず、高圧的に要求を突きつけた。
「つまり、金輪際ベアトリスさまに近寄るな。さもなければ痛い目にあってもらう、ということですね?」
「そうさ、クルデンホルフの財産からこれまでいくらかすめとってきた? あいにくだが、これからは真の忠義を持った我々が姫殿下をお助けする。わかったか、薄汚いこそ泥ども」
 ぶつけられる罵声に対して、エーコたちは表情を変えずに受け止めた。だがエーコ、ビーコ、シーコの心には怒りの炎が激しく燃え始めていた。
 こそ泥? こそ泥と言ったか? ふざけないでもらおう。わたしたちはこれまで、金子を目当てにあの人といたことは一度たりとてない。
 しかし空中装甲騎士団は人数だけでもエーコたちの倍近くもいる余裕からか、エーコたちの心の機微を察しようともせずににやけ笑いを続けている。エーコたち姉妹以外の少女たちは、はじめて体験する恐ろしげな男たちの空気に怯えて後ろで震え上がっていた。
 張り詰める空気。しかしそれを破ったのは、ひとりの少女のせせら笑う声であった。
「ウ、フフフ、クックククク……」
「む? 小娘、なにがおかしい!?」
「ティア!?」
 その場の全員の目が、ふてぶてしく笑う緑色の髪の少女に向けられた。
「笑える冗談ね。あんたたちは自分たちの半分くらいの相手に鎧をつけて現れるような臆病者の軍隊で、わたしたちはハルケギニア最強の軍集団を目標にして集った精鋭たち。肥えた体を包み隠さなくては人前にも出られないようなロートルが、真の忠義とはねぇ」
「な、なんだと小娘! まだ子供だと思って甘い顔をしてたらつけあがりおって!」
 挑発するティアに、いきり立つ空中装甲騎士団の男たち。がしゃがしゃと鎧を鳴らし、鈍器にもなっている杖を握り締めて威圧する。そのプレッシャーに、怯えていた少女たちはさらに縮こまった。
 空中装甲騎士団としては、この威圧だけで女子供の集まりなどたちまち降参してしまうだろうと考えていた。が、その期待は雄雄しい叫びによって打ち砕かれた。
「水妖精騎士団、杖を取りなさい!」
 エーコの凛々しい声が広場に響き渡り、恐怖に怯えていた少女たちの耳も揺さぶった。
「え、エーコさん!?」
「わたしたちが間違ってたわ。水精霊騎士隊をつぶして、ハルケギニア最強の騎士団を目指すなら、こんなところでつまずいてられないもの。わたしたちの目の前に立ちふさがる障害は叩いて潰す! 逃げも隠れもせず、正面から押し潰し、粉砕する! さあ杖をとりなさい! あなたたちは狗か? 豚か? それとも人間か?」
 茶色い髪を振り乱しながらエーコの放った激が、怯えていた少女たちから恐怖心を薄れさせていった。
 そうだ、こんな理不尽な脅迫に屈するわけにはいかない。ここで戦わなかったら、一生逃げたという足かせを引きづったまま生きることになる。仲間たちが戦おうとしているのに逃げたら、もう二度と貴族と名乗れない。
 震えながらも杖をとって前に出た少女たち。年若くても、彼女たちもまた誇り高いトリステイン貴族の血を受け継いでいた。
 ユウリやディアンナたちも笑いながら杖を抜いている。二十人近い少女が臨戦態勢に入り、その恐れを知らぬ様子は歴戦の騎士たちをもたじろがせるものがあった。
 対峙する空中装甲騎士団と水妖精騎士団。空中装甲騎士団は、思ってもみなかった少女たちの反抗に驚きながらも、それでも虚勢を張って杖を向けて通告してきた。
「お嬢さんたち、もう冗談ではすまないぞ。我々空中装甲騎士団に杖を向けたこと、たっぷりと後悔させてやる。泣いて謝っても許さん! 遺言でも考えておけ」
「遺言ね、じゃあせっかくだし先に聞いておいてもらおうかしら? ティラ、ティア」
 杖を向けられたシーコが、ティラとティアを連れて一歩前へ出る。そして彼女たちは空中装甲騎士団に対して、”遺言”を歌うように読み上げていった。

「小便は済ませたか?」
「神様にお祈りは?」
「部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備はOK?」

 これが決定打になった。いきり立って、杖を振り上げてくる空中装甲騎士団。対するは、実戦経験皆無の水妖精騎士団。

「シーコ、なに? 今の台詞」
「さっき読んだ召喚されし書物に載ってたの」
「うん、とりあえず女の子が言う言葉じゃないね」

 呆れた様子のビーコと、いたずらを成功させたように茶目っ気に微笑むシーコも戦闘態勢に入り、ティアとティラもうれしそうに笑う。
「あっはは、ケンカですねケンカだね。楽しくなってきたなあ」
「でもテレポートとかを使っちゃだめよ。さあ、恩返しの絶好のチャンスね」

 そして、騒ぎを少し離れた場所から楽しげに見守っている、黒い服の少女がひとり。
「うっふっふふ、見ものですわ見ものですわ。こんな面白そうなものが見れるなんて、今日はラッキーね。お仕事はこの後にしましょっと」

 事態はひたすらに混迷を深めていく。果たして、最後に立っているのは誰なのだろうか……


 続く



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