あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ルイズ!-1

 ジャック・バルバロッサ・バンコランは現実主義者だ。
 仮にもイギリス情報局秘密情報部―――いわゆるMI6所属の人間ならそれは当然である。
 いかなる悪条件・想定外の事態に遭遇しようが冷静に、速やかに対処出来なければ自らの死を招くだけなのだから。
 心霊・悪魔・魔術・超能力など論外。
「ただの人間には興味ありません。宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」
 などと言うファンタジーは妄想の産物でしかない。そんな暇があるなら美少n……ではなく任務をこなす方が彼にとっては重要なのだ。

 ただ、その『現実主義者』もちーとばかし無理があるんじゃないか?と彼の周囲の人間は思っている。

 その原因は彼の(文字通り遥かなる過去から遠い未来まで断ち切りたいにも関わらず断ち切れずにいる)腐れ縁の相手である、つぶれ饅頭の、へちゃむくれの、顔面殺虫剤な一国の国王にある。
 その国王が若くして有能なのは誰もが認めるところだ。齢10歳でありながら大学を卒業し、いくつもの発明をし、ダイアモンドで税金の徴収が必要ないほど国庫を潤わせ、世界一とも言える治安の良さ―――窃盗で死刑とか言う無茶な法律がそれに輪をかけているんじゃないかと思わないでもないが―――を維持し、世界平和の危機には自分の命を賭ける勇敢さも見せるのだ。これで無能なら誰が有能だというのだろうか。
 だがしかし、それでもなお、にもかかわらず、
 夏休みの工作が核爆弾だったり、自国に大量の宇宙人移民が定住していたり、天使と魔王の軍勢の争いに巻き込まれたり、バチカンの国宝を盗んだり、タイムワープ能力があったり、便秘が解消された「反動」で宮殿が大人が溺れるくらい黄金色のブツで満たされたり、体のツボを押すと目玉や耳が数十cmほど伸びたり、電球を咥えると目から映像・耳から音声の出せる映写機になったり、ゴキブリを食べるとあらゆる電波を受信出来たり、一国を挙げて悪霊大戦争をしたり、脱皮したり、『遊星からの物体X』を逆に吸収したり、内臓が気紛れを起こして移動したり、下半身に逃げられたり、etc……
 するとなるとその評価はマイナスどころか1080°ぐらい回転して虚数空間へ向かって11次元を目指して反物質に変異しても足りないくらい下方修正するのが当然じゃないか?
 というか捨てろ常識、さよなら普通の日々、物理法則もあったもんじゃない。つーかどう考えてもここまでいくと非現実と現実が逆転しているだろうに。

 とまあ、そんな天外魔境・魑魅魍魎・空前絶後の化け物であるマリネラ国王パタリロ・ド・マリネール8世にとっての数少ない友人(バンコラン本人は殺してでも否定したい)の癖に、現実主義者なのである。



 だからというか、

「あんた誰?」

 と、いきなり見たことの無い風景、2つの月のある空、そして目の前のコスプレをした(様に見える)桃色の髪の少女を認識したバンコランは、

『またパタリロが何か悪さを仕掛けてきたな』

 だが妙だな、パタリロにしてはやることがあまりにも幼稚過ぎる。いや、そう思わせて何か伏兵を仕掛けているのかもしれん。あるいは目の前の少女が実はタマネギ(マリネラのエージェント)かパタリロの変装だろうか。しかしそれにしては美的センスが云々……としか思わなかった。

「ちょっと、黙ってないで質問に答えなさいよ」
「人に名前を尋ねるのなら自分から名乗るのが筋だろう」
「あんた、平民の分際で貴族の命令に逆らう気!?」
「貴族だというのならそれに相応しい態度を示してから命令してもらおうか」

 パタリロを相手にするなら平静を保つのが肝心だ、と身に染みて思い知っているが故に普段と変わらぬ調子で切り返すバンコラン。ルイズとしては彼の心情を知るわけがないし、そんな態度は腹に据えかねるものだったが、貴族としてのプライドが人一倍高い彼女にとって「貴族らしい態度を示せ」というのは無視できない要求だ。

「……私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」

 平民に言い返されたという屈辱を堪え、努めて冷静に名乗るルイズ。
 一方、名乗られたバンコランは困惑―――ポーカーフェイスなので表情は変わらないが―――していた。いかにパタリロの変装もとい変態・擬態が文字通り変態じみたものとはいえ、目の前にいるのは(CIAの友人が涎を垂らして飛び付きそうな)本物の少女としか思えなかった。パタリロの親戚関係にヴァリエールなどという姓はなかったはずだし、マリネラ王国のエージェントに女性はいないからだ。
 となると、パタリロがどこかの町を買収(絶対に金を払わないだろうから口約束)したか、洗脳(5円玉でエージェントすら洗脳した)したか、ホログラフ(実際に作って部下を騙して遊んでいた)なのだろうか。可能性から考えれば一番妥当なのは買収だろう。だとすればあまり辛辣に当たるのも不憫かというものだ。ここはパタリロの尻尾を掴むまでは相手に合わせるのがベスト……そうバンコランは判断した。

「名乗られたからには答えよう。私はジャック・バンコラン。階級は少佐だ」
「少佐?あんた貴族なの?」
「? 何を言ってるんだ、何故軍属だと貴族になる?」

 それを聞いて今度は逆にルイズが困惑する。少佐ということは目の前の男は衛士?だが何故杖を持っていない?しかも貴族でないとはどういうことだ?

「あなた……まさか、ゲルマニアの人間?」
「ゲルマン?違う、私はドイツ人ではなくイギリス人だ」

 自分達のやりとりを聞いて同じように困惑しているギャラリーの中にキュルケを見つけて思いついた質問にも予想外の答えが返ってきてルイズは更に混乱した。
 げるまん?いぎりす?それにどいつって……私は出身を聞いただけで名前をもう一度尋ねたわけじゃないのに。
 いや、問題はそうではなく。

「ミスタ・コルベール、もう一度召喚をやり直させてください!」
「それはできません。この儀式は―――」
「で、でも平民……かどうかは分かりませんけど、人間を使い魔なんて!」
「どうでもいいが用件は手短に済ませてもらえないかな」
「ほら、幸い彼も君の使い魔になることに異存はないようだし」

 有りまくりである。バンコランは別に同意したわけではなく単純にパタリロの用意したシナリオを見極めたいと思っているだけなのだから。
 はあ、と溜息をついてルイズはバンコランに向き直り、そのままでは届かないので「しゃがんで」と近寄らせる。
 ……よく見たらかなりの美形ね。子爵様ほど若くは無さそうなのが残念だけど、それでも「ナイスミドル!」って感じだからこれはこれでもしかしたらラッキーだったのかも。

「か、感謝しなさいよね。貴族にこんな事されるなんて、普通は一生無いんだから!」



この契約、バンコランにとってはアンラッキー以外の何物でもなかった。
……だってバンコラン菌のベクターなんだもの。

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