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第七十二話「吸血寒村」


ウルトラマンゼロの使い魔
第七十二話「吸血寒村」
こうもり怪獣バットン 登場



 戦争が生じる莫大なマイナスエネルギーによって途轍もなく強大になってしまったヤプール人を
倒す代償として生死の境をさ迷い、長い時間眠り続けていたウルトラマンゼロ。しかしポール星人の
たくらみを破るために勇気を掲げた才人に呼応するように、遂に眠りから覚めて復活した。
 だが彼が眠っていた間にもハルケギニアには怪獣が出現していた。ゼロ覚醒までの間に、
その魔の手から人々を護っていたのは、誰であろうウルティメイトフォースゼロの仲間三人である。
 今回はその三人の今日までの活躍の一部を、以前のように紹介することとしよう。

「お姉さまお姉さま、何の本を読んでるの?」
 青い鱗の風韻竜、シルフィードが背の上の主人、タバサを呼んだ。シルフィードは現在、
上空三千メイルを飛びながらガリア首都リュティスの南東五百リーグの場所を目指していた。
 タバサはシルフィードの質問に、無言で本の表紙を見せることで答えた。
「『ハルケギニアの多種多様な吸血鬼について』ですって? 今度の相手を調べてるのね」
 と言ったシルフィードはぶるぶる震えた。
「お姉さま、吸血鬼は危険な相手ですわ! 太陽の光に弱い点を除けば、人間と見分けがつかないし、
先住の魔法は使うし! きゅいきゅい! おまけに血を吸った人間を一人、手足のように操ることだって
できるんだから!」
 シルフィードがそう語ると、タバサは目を細めてじっと本を見つめた。
 今回のタバサの任務は、サビエラ村という山間の片田舎の村に潜む吸血鬼の退治なのであった。
二ヶ月ほど前に十二歳の少女が全身の血を吸い尽くされて死亡していたのを皮切りに事件が発生し、
犠牲者は既に九人にも及んでいるという。そして九人の被害者の中には、王室から派遣された
ガリアの正騎士まで含まれていた。トライアングルクラスの火の使い手という実力者だったが、
吸血鬼には力及ばなかったようだ。
 そんな狡猾な妖魔が相手なので、タバサはいつも以上に慎重に事を進めるつもりだった。
「……ところでお姉さま、吸血鬼がいるんだから、吸血怪獣なんてのもいるのかしら?」
 不意に、シルフィードがそんなことをつぶやいた
「吸血怪獣がほんとにいたら、それはもう大変なことなのね。何せあんなに身体が大きいのだもの。
何人の血を吸ったところでお腹が満たされず、次々に人を襲うのね! ああ恐ろしい! あッ、でも
吸血怪獣ってちょっとおかしいのね。あの大きさなら、わざわざ血を吸うんじゃなくて丸ごとぱっくり
食べる方がずっとずっと効率的だからね! きゅいきゅい!」
 無駄口を並べるシルフィードの頭をタバサが杖で小突き、先を急ぐように促すのだった。

 サビエラ村から少し離れた場所に着陸するタバサとシルフィード。するとそこに近づいてくる者が。
「見知った風竜が飛んできたと思えば、やはりあなたでしたか、タバサさん。シルフィードさん。
エギンハイム村以来ですね」
「あなたは……」
 それはミラーナイトの人間体、ミラーだった。どうしてここにいるのか、とタバサが聞く前に、
ミラーが口を開く。
「タバサさんはサビエラ村の吸血鬼の事件を解決するためにいらしたのでしょう? 実は私も、
あの村を中心に夜毎に異様な気配を感じるので、調査に赴くところだったのです」
「異様な気配?」
「正体まではまだ分かりません。しかし、強力な負の波動を感じました。これはただごとではありません。
またヤプールが関わっているのでは……と思い、正体を確かめることとしたのです」
 ミラーの台詞を受けて、タバサは一層警戒心を深めた。ただの吸血鬼だけでも厄介なのに、
怪獣や侵略者までが絡んでいるのなら、自分たちの力だけで事件解決を図るのは大変苦しいものとなる。
 そこで協力を申し出たら、ミラーは快く引き受けてくれた。
「ありがとう。早速、頼みがある」
「何でしょう。私に出来ることでしたら、何なりと」
 タバサの頼みというのは、ミラーにマントと自分の杖を持たせて、自らの代わりに王宮から
派遣されてきた騎士を演じてもらうというものだった。自分は騎士の従者役だ。
 こうするのは、村に潜んでいるだろう吸血鬼の目を欺き、油断させるためであった。マントと杖を
持たない者は普通平民なので、敵の虚を突くことが出来るはず。当然杖を側に置かないのには危険が伴うが……
ミラーは超人なので、その危険を減らすことも出来よう。
 当初はシルフィードを人間に変化させる予定だったが、こうした方が断然良い。何故なら、
シルフィードでは騎士のふりをさせるのにいささか不安があったから……なんて言ったら当人が
へそを曲げるだろうから、賢明なタバサは胸の内にしまっておく。
 とにもかくにも、タバサ一行はそれぞれの役どころを決定してからサビエラ村へと足を踏み入れていった。

 サビエラ村は人口三百五十人ほどの寒村。吸血鬼という魔の牙に脅かされている最中だからか、
全体の雰囲気が非常に重く暗い。
 ミラーの美貌から、女性たちは頬を赤らめたりため息を漏らしたりという反応を見せるが、
男性からはかなり批判的な目を向けられた。僻みもあるだろうが、既に王宮の騎士が返り討ちに
遭っているので、本当に吸血鬼を倒せるのか疑念を持っているのだろう。
 ともかく、村を回ってある程度吸血鬼に関する情報を得られた。
 村人たちは、吸血鬼が三ヵ月ほど前にこの村に引っ越してきた占い師の一家であると疑ってかかっていた。
特に占い師のお婆さんは、占いもろくにせずに、病気だからと日中も家に閉じこもっているのだという。
「……どう思う?」
 従者を演じるタバサが、ミラーに意見を求める。
「あからさまに怪しすぎますね。正体を隠すつもりならば、もっと上手くやるはずでしょう。
表に出られないお婆さんがいるのをいいことに、目そらしに利用している可能性が高いです。
……とは言うものの、実際にそのお婆さんにお会いしないことには結論は出せませんね」
 そういうことで、一行は村長にその占い師一家の家の場所を教えてもらった。
 その村長の邸宅では、五歳ぐらいの、美しい金髪の少女がこちらの様子を物陰から窺っていた。
「お可愛い女の子ですね。お孫さんですか?」
 ミラーが村長に尋ねると、村長は否定した。
「いえ、あの子、エルザはわしが預かっておりますが、わしの本当の家族ではないのですじゃ。
一年ほど前、寺院の前に捨てられておったのです。聞けば両親はメイジに殺されて、ここまで
逃げてきたとのことでの。おそらく行商の旅人が、なんらかの理由で無礼討ちにされたか、
メイジの盗賊に襲われたか……。まったく森は、妖魔以外の危険もいっぱいですじゃ。早くに子を
なくし、つれあいも死んでしまったわしには、家族がおらんでな、引き取って育てることにしたんですじゃ」
「そうでしたか……。すみません、お話しづらいことを聞きました」
「いえ、構わんで下さい」
 それから村長は遠い目になった。
「わしはあの子の、笑った顔を見たことがないのですじゃ。身体も弱くて……、あまり外で
遊ぶこともさせられん……。一度でいいから、あの子の笑顔を見たいもんじゃのう……。
それなのに村では吸血鬼騒ぎ。早いところ、解決して欲しいもんじゃ……」
 かわいそうな境遇の女の子だが、タバサはミラーの脇腹を軽く小突いた。ここまで吸血鬼が
血を吸ったことで意のままに操る『屍人鬼(グール)』を探るために、吸血痕を求めて村人たちの
身体を確かめていたが、エルザまでも疑うというのか。
 だがミラーは許可しなかった。
「いくら何でも、あの子は手足にするには小さすぎますよ。グールは、身体能力は人間の時から
変化しないのでしょう? 幼子では、いざという時に頼りになりませんからね。グールではなく、
吸血鬼ならば可能性は大いにありますが……その判断は、占い師の一家を確認してからにしましょう」
 そう言って村はずれのあばら家に行くと、そこでは軽い騒動が起きていた。十数人の村人たちが、
鍬や棒、火の点いた松明を手にあばら家を取り囲んでいるのだ。
「どうやら、血気に逸った方々が早急な判断を下したみたいですね」
 ミラーの言う通り、村人たちは口々にわめく。
「出てこい! 吸血鬼!」
 するとあばら家の中から年のころ四十前ほどの、屈強な大男が出てきて、集まった村人たちに大声で怒鳴った。
「誰が吸血鬼だ! 失礼なことを言うんじゃねえ!」
「アレキサンドル! お前たちが一番怪しいんだよ! よそ者が! ほら吸血鬼を出せ!」
「吸血鬼なんかいねえよ!」
「いるだろうが! 昼だっつうのにベッドから出てこねえババアが!」
「おっかぁを捕まえて吸血鬼とはどういうこった! 病気で寝てるだけだ! 言っただろう?」
 額に青筋を浮かべて男がつぶやく。
「いいからここまで連れてこい! ババアが違うなら、妹がそうじゃねえのか!? 肌が日に
弱いとか抜かしてたが、家に二人も閉じこもってる奴がいるなんておかしすぎだぜ!」
「なんだと!? 妹まで疑うってのか! いい加減にしやがれ!」
 もみ合いになりそうになったところで、ミラーが仲裁に入った。
「まぁまぁ、落ち着いて下さい。この家の検分は私たちがしますから。こうやって疑心暗鬼に陥って、
村の中で諍いを起こすことこそ、吸血鬼の思惑かもしれませんよ」
「あんたはお城からいらっしゃった騎士さま……」
 ミラーの説得と、女性のような美貌からは想像もつかないような迫力で村人たちは大人しくなった。
それから一行はあばら家の中に入り、アレキサンドルという大男の家族を調べた。
 中にいたのは、粗末なベッドに横たわる、枯れ木のように痩せこけた老婆と、その世話をしていた
病的なまでに肌の白い、アレキサンドルの妹という美女。確かに、どちらも吸血鬼らしいといえば
吸血鬼らしい外見。
 しかしこの一家にも、吸血鬼と断じられるような決定打はなかった。吸血鬼は通常時には
人間と見分けがつかないし、グールの決め手となる傷痕も、田舎だけあり、虫や蛭に刺された
それらしい痕が何人もの村人にあるのだ。
 とにかく、昼の内では誰が吸血鬼かなど分かりようがない。そこで吸血鬼の活動時間、すなわち夜を待つ。
 村長の屋敷に、村に残っている若い娘たちを集めてもらい、自分たちは外で見張る。これで吸血鬼が
襲ってきても、すぐに迎撃できることが可能だ。

 そして夜になると、すぐに吸血鬼の襲撃があった。しかし狙われたのは、集めた娘ではなかった。
「……きぃやあああああああああああ」
 一階のエルザの部屋からか細い悲鳴が聞こえ、ミラーとタバサはすぐにそちらへ走った。
 割られた窓から部屋の中へ乗り込むと、片隅でガタガタと震えるエルザの姿があった。
そこに襲いかかろうとしているのは、あばら家の美女。犬歯が異常に伸びて、牙と化している。
「ホホホホホホ!」
 美女はミラーたちの顔を確かめると、高笑いを上げて扉から逃げ出していった。
「待ちなさい!」
 それを追い掛けていくミラー。タバサは怯えるエルザを落ち着かせる。
 ミラーならば、吸血鬼といえども物の数ではあるまい。鏡の力を以てして、簡単に返り討ちに
してくれるはずだ。……相手が『ハルケギニアの吸血鬼』ならば。

 屋敷から外へ逃げ出した吸血鬼を追いかけていくミラー。しかし吸血鬼は村はずれまで
来たところで停止し、ミラーへ振り返る。
「ホホホホホホ!」
 再び高笑いすると、全身から怪光を発してみるみる巨大化、変身していく!
「ギャア――――! ギャア――――!」
 吸血鬼はあっという間に異様に長い牙を口からはみ出させた、コウモリ型の怪獣へと変貌した! 
吸血鬼の正体はこうもり怪獣バットンであった!
「はッ!」
 それを目の当たりにしたミラーは一瞬驚くものの、すぐに意識を切り換えて近くの水たまりを見やった。
すかさずそこへ飛び込み、光の反射をくぐり抜けて変身!
『とぁッ!』
 巨大化したミラーナイトがバットンの前に降り立った。二つの月光が雲の切れ間から寒村を
照らし出す中で、鏡の騎士とこうもりの怪物の決闘が開始される。
「ギャア――――! ギャア――――!」
 先に動いたのはバットンだ。両腕に生えた皮翼をバサバサと羽ばたかせることで突風を生み出す。
『くッ!』
 風の勢いはすさまじく、ミラーナイトはまっすぐ立っていることが出来ずによろめいた。
その隙にバットンが空へ飛び上がり、ミラーナイトへ向けて滑空していく。
 危ない、ミラーナイト! バットンの羽には刃が仕込まれている!
『ふッ!』
「ギャア――――! ギャア――――!」
 殺人暗器が迫る中、ミラーナイトは一瞬にして体勢を立て直して前方に転がった。それでバットンの
斬撃をかわすことは出来たが、バットンは空を自在に飛び回って執拗にミラーナイトを追い回す。
刃で切り裂かれたら、戦況は一気にミラーナイトの不利になるだろう。
『はぁッ!』
 だが黙って逃げ続けるだけのミラーナイトではない。バットンの何度目かの攻撃を素早く
避けたところで、振り向きざまにミラーナイフを放つ。ミラーナイフは見事バットンの皮膜を引き裂いた。
「ギャア――――! ギャア――――!」
 羽をやられたことで飛んでいられなくなったバットンは着地するが、細見の肉体は地上でも
俊敏な身のこなしを実現させていた。即座に放たれた飛び蹴りをミラーナイトはどうにか回避する。
「ギャア――――!」
 だがそこを狙って、バットンの長い耳から針状の光線が発射された!
『うぅッ!?』
 それをもろに食らったミラーナイトは仰向けに転倒した。それを逃さず、バットンが覆い被さってきた。
「ギャア――――! ギャア――――!」
『くぅッ!』
 自慢の長い牙をミラーナイトの首筋に突き刺そうと振り下ろすバットン。ミラーナイトは
首を傾けることでギリギリかわした。
 バットンに噛みつかれると、その魔力によって噛まれた相手も吸血鬼になってしまう。
ミラーナイト、危うし!
『はぁぁッ!』
 しかしミラーナイトはすぐにバットンの腹部を蹴り上げることで、自身から引き離した。
どうにか一番の危機は脱することが出来た。
「ギャア――――! ギャア――――!」
 とはいえこれくらいであきらめるバットンではない。己の頭上を跳び越えて背後に着地した
ミラーナイトを追って、そちらへ耳からの光線を再度撃ち込む。
 だが光線はミラーナイトに当たるとそのままはね返ってきた! ミラーナイトの十八番、
鏡の虚像を利用した分身戦法だったのだ。
「ギャア――――!?」
 自分の攻撃をそのまま食らったバットンは大きくひるむ。攻撃の絶好のチャンスだが、
ミラーナイトはこのままバットンにとどめを刺すことはしなかった。
 バットンは吸血した相手を吸血鬼に変える能力を持つのは先ほど語った通りだが、それはバットンを
ただ倒したとしても治癒しない。バットンの血液から作る血清が必要となるのだ。そこでミラーナイトは、
鏡の細工による注射器を作り出した。繊細な業師ミラーナイトらしい、巧みな芸術であった。
 それから一直線にバットンに駆け寄り、その首筋に注射器の針を突き刺す!
「ギャア――――! ギャア――――!」
『レディなら大人しくしなさい!』
 もがくバットンを抑えつけて採血。これで必要な分の血液を採ることが出来た。
 だがバットンに突き飛ばされて、注射器を地面の上に落としてしまう。
「ギャア――――! ギャア――――!」
 自身の血が詰まった注射器を奪い取ろうと走るバットンだが、ミラーナイトが後ろから掴んで足止めする。
『させませんよ!』
「ギャア――――! ギャア――――!」
 激しく抵抗するバットンだが、ミラーナイトは足を引っ掛けて転倒させた。バットンは注射器に
手を伸ばすものの、指はわずかに届かなかった。
『やぁッ!』
 そしてミラーナイトはバットンの両脚を掴み、後方へ投げ飛ばす! 大きく弧を描いたバットンが
ふらふらと起き上がると、そこにとどめのシルバークロス!
『シルバークロス!』
「ギャア――――!!」
 バットンは十字に切断されて爆散。破片も粉々になって消滅していった。
『ふぅ、後は怪獣の血液から血清を作るだけですか……』
 ひと息ついたミラーナイトは注射器を拾い上げ、それをじっと見つめた。
 村人たちから吸血鬼と疑われていた占い師の一家だったが、本当にその中に吸血鬼が混ざっていたとは。
恐らく、女に化けたバットンがアレキサンドルとその母を操り、家族に扮してサビエラ村に潜入していたのだ。
 だがバットンは今こうして倒した。これでサビエラ村の吸血鬼事件は終わりを迎える……。
『……本当に、これで終わりなのでしょうか……』
 そのはずなのだが、どうしてかミラーナイトは気分が晴れなかった。何か、もやもやとしたものが残っている。
 困惑する彼を、二つの月光は変わらず照らし続けていた。

 サビエラ村の人々は戦いの騒動を聞きつけて目を覚まし、怪獣の姿を見上げて恐れおののいていた。
しかしミラーナイトが退治したことで、今ではすっかりと落ち着きを取り戻していた。
「ふぅ、こんな村に怪獣が出てきた時はどうなるもんかと思った」
「しかし、吸血鬼の正体がまさか怪獣だったなんてなぁ」
「けど、それもやっつけられた。この村は救われたんだな!」
 村人たちはすっかりと安堵して、再び眠りに就こうとそれぞれの家に戻っていった。彼らはこれから、
枕を高くして眠るのであろう。
 そんな中で、ミラーはこっそりと村長の屋敷に戻ってきて、タバサとエルザの元まで帰ってきた。
「タバサさん、エルザちゃんはご無事でしたか?」
 とミラーが尋ねるが、エルザはミラーの顔を見やるとひ! とうめいて毛布を被ってしまった。
彼女はミラーをメイジだと思ったままなのだ。
「ああ、メイジが怖いのでしたね。これは失礼をしました」
 ミラーがエルザの視界から離れて、タバサがエルザをまた落ち着かせる。精神が安定したエルザは、
タバサにこんなことを聞いた。
「おねえちゃん、まだ子供なのに騎士さまのおともしてるんでしょ? えらいなあ。おねえちゃんの
パパとママはなにをしているの?」
 しばらくの沈黙があって、タバサは答えた。
「パパはいない。ママはいる」
「そう。わたしのパパとママはね、メイジにころされたの。わたしが見てる前で。魔法で。
まるで虫けらみたいに……。だからわたしメイジはきらい。おねえちゃんのパパはどうして
死んじゃったの?」
 タバサはちょっと目をつむり……、小さくつぶやいた。
「殺された」
「魔法で?」
「魔法じゃない」
「じゃあママはどうしてるの?」
「寝たっきり」
 そう答えてからじっと黙るタバサを見て、エルザがぽつりとつぶやいた。
「おねえちゃん、人形みたい」
「どうして?」
「あんまりしゃべらないし……、笑ったりしないし。ぜんぜん表情がかわらないもの」
 タバサは無邪気なエルザの目を見つめた。エルザの瞳に、自分の顔がうつっている。
その顔はいかなる感情をも浮かべていない。
「あは、ほんとにお人形みたい」
 タバサの胸にエルザは顔をうずめ……、安心したように目をつむって、寝息をたて始めた。
 その後村長にことのあらましを説明したタバサは夜通しエルザを見守ったあと、やっと眠りについた。
 ……タバサが眠りについてから、エルザはぱっちりと目を覚ました。そうしてタバサの寝顔を
じぃっと見つめた。
 その瞳に映っているものは……。


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