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ゼロのしもべ第3部-9

9話

 翌日。
 お日様も充分高くなって後、全員で湖に向かうと水の精霊はすでに準備万端で待ち構えていた。
 というか朝からそこにいたりした。吉田照美が裸足で逃げ出すぐらいやる気満々だ。
「遅かったな。単なるものよ。」
 遅くねーよ!、と全員が心の中で同時に突っ込む。約束の時間よりもまだ1時間も早いのだ。水の精霊の機嫌を損ねては一大事
なので誰も口に出さないだけである。
「水の精霊よ。もうあなたを襲うものはいなくなったわ。」
「ご苦労。まだなのか、我が愛しい方は?」
 襲撃者が二の次になっている水の精霊。自分の身体の一部なのにいいのだろうか?
「慌てるな。」
 バビル2世が一歩前に出た。
「もう、来ている。」
 その宣告と同時に、巨大な鉄の巨人が姿を現した。体長およそ30メイル。堂々たる体躯の、巨人であった。それが、膝までしかない
水路から姿を現した。三つのしもべの一つ、海のしもべポセイドンだ。
「おお、愛しき方よ。」
 水の精霊の声が弾み、女のものになる。表情に甘えが混じり、しぐさがいちいち色っぽくなる。
「いったいどこへ行かれていたのですか。我がなにか粗相をしでかしたというのでしょうか。」
 憂いを帯びた声。上目遣い。精一杯ポセイドンに媚を売る水の精霊。
 だがポセイドンは微動だにしない。大地を両足でしっかりと踏みしめたまま、悠然と水の精霊を見下ろしている。
「あいかわらずクールでストイックでございますね、我が愛しき方。」
 あばたもえくぼ、という言葉がある。惚れた人間のあらゆる部分を、好意的に見てしまうという意味のことわざだ。別にポセイドンは
クールでストイックなわけではない。ロボットなだけである。会話機能なく、意思疎通は目の光を点滅させた、発光サインで行うのが
普通だ。それもバビル2世や他のしもべ、バビルの塔ぐらいしか理解できるものはいない。
 そのときも、チカチカと目が明滅をした。モールス信号とは違う独自の発光サインでバビル2世にこう語りかけた。
『ご主人様、無事到着いたしました―周囲に敵影なし―』
 信号を読み取りポセイドンに以上がないことを確認したバビル2世の横で、水の精霊が歓喜の声を上げた。
「おお、我が愛しき方。また会えて嬉しいと。そのように言うて下さるとは。嬉しく思います。」
 通じていない気がするのは気のせいだろうか。
「ポセイドン。この精霊との関係を教えてくれるか?」
 ポセイドンはバビル2世の問いにすぐさま答え、目を明滅させる。
『問いに含まれる情報が不十分―バビル2世の横にいる生物は、この湖に生息する知的生命体の一種―構成成分H2O 99%―その
他元素 0.5%―周囲を遊泳しているところを何度か確認―記録情報は以上―』
「いま、愛しき方からも説明があったが。つまり我と愛しき方は、愛を誓い合った仲じゃ。」
 ぜんぜん違う気がするのは気のせいだろうか。
「ポセイドン。なら質問方法を変えよう。この精霊と、ポセイドンとの恋愛における関係状態を知りたい。」
 チカチカとさらに点滅が行われる。
『関係状態―無関係―』
「愛しい方…そのようなことをはっきりおっしゃるとは、恥ずかしゅうございます…。たしかに我は永遠の愛を誓いましたが、愛の軌跡
をそこまで赤裸々に語られては……いやん♥」
 似合わぬ言葉を吐いて身悶えする水の精霊。そんなことを言っていないような気がするのだが。
「水の精霊の愛しい方って、ビッグ・ファイアのしもべだったの?」
 我にかえったルイズがようやく声を上げた。
「なんで使い魔が、こんなすごい使い魔を2匹も持ってるのよっ!あのゼロのルイズの使い魔でしょ!?エルフってそういうものなの?」
 まだエルフだという噂は根強いらしい。どこにそれを信用する材料があるのだろうか。
「おお!すごいゴーレムじゃないか、これは!ぜひコルベール先生発明のえれきてるを装着させたいな!」
 驚嘆の声をあげるギーシュ。えれきてる、とは先日ギーシュがルイズに説明した発電装置というか、モーターのことである。もっと
すごい動力でポセイドンは動いているのだが。
「2人ともお熱いのね。微熱の二つ名を持つアタシが、中てられちゃいそう……」
 なまめかしい視線をバビル2世に送るキュルケ。あくまでルイズをからかうことが目的の挑発だ。
 タバサはいつものように本を読んでいる。稗田礼二郎なる人物が作者の、「花咲爺論序説」である。小脇には宗像伝奇なる人物の
「白鳥処女説話」という論文が。おまけに室井恭蘭の「妖魅本草録」まである。どこで入手したんだ!?
 セルバンテスはポセイドンと水の精霊を見比べつつ、己のあごを撫でている。
 まるでポセイドンが何を言っているのか理解しているかのように、苦笑いを浮かべている。
「さて。とにかく、あなたのいう愛しい方とは、ポセイドンでいいんですね?ならば約束どおり身体の一部をいただきましょう。」
 水の精霊はバビル2世には見向きもせず、身体の一部を水滴にして飛ばしてきた。それを慌てて持ってきていたビンで受け止める。
「これで約束は果たしたことになる。さあ、湖の水位を戻してもらおう。」
「わかった、単なるものよ。水の高さを下げておこう。」
 ものすごーくぞんざいに言う水の精霊。今話しかけるな、と言わんがばかりである。
「さて材料も手に入れたし、帰ろうか、みんな。」
 ポセイドンに合図をすると、ポセイドンがそれに従い動き出す。湖から飛び出たロプロスが、岸に腹ばいになってうずくまる。そこを
目指してぞろぞろ移動を始めるバビル2世たち。
「すこし!少し待て、単なるものよ!」
 慌てて水の精霊がバビル2世を呼び止める。
 振り返ると焦りと怒りと悲しみと困惑で顔がごちゃごちゃになった水の精霊が、あたふたとポセイドンとバビル2世立ちの間を往復
していた。
「い、愛しい方が!愛しい方がまたどこかへ行ってしまうではないか!ああ、お待ちください!単なるものよ、愛しい方に何をした!
愛しい方、我はあなたをこうまで思っているのに!単なるもの!」
 ポセイドンとバビル2世に同時に話しかけているので話がごちゃごちゃである。
 しょうがなく、ポセイドンと自分との関係を簡単に説明してやるバビル2世。ポセイドンが忠実なしもべであること。バビル2世の身を
守るため、常に周囲にいて身を潜めていること。水の精霊に好悪の感情を持っていないこと。うむうむ、と妙に素直に聞いていた水の
精霊は、話を聞き終えるとない膝をポンと叩いて、
「わかった、単なるものよ。我もついていけばよいのだな。」
 意味不明なことを言い出した。
「我が愛しき人を、単なるものは有している。我と愛しい方は一心同体の関係であるゆえ、我もついていくべきであろう。違うか?」
 絶対に違うと思う。どう考えればそうなったのか。
 どうやら水の精霊は、ポセイドンは自分を愛しているが、主従の掟ゆえ泣く泣く離れなければならないのだ、と解釈したようだ。
なんて都合のいい解釈!そんなことをバビル2世は一言もいっていない!都合の悪いことなど聞いちゃいないらしかった。
「よし!そこまで言うならば仕方がない。我を連れて行くがよい。」
「ちょ、ちょっと待って!」
 ものすごく簡単について行きそうになっている水の精霊を見て、モンモンが怒ったように口を挟んだ。
「あれだけ苦労してついてきてもらって、でもプライドを傷つけちゃって、そのおかげで貧乏になったうちの立場はどうするのよ!」
 聞けば領地の干拓のために、苦労して招いたものの、父の不用意な発言が元で水の精霊を怒らせて事業を大失敗したのだという。
 しかし水の精霊は荒木飛呂彦のように「ああそんなこともあったね」と舌を出しただけであった。
「そんなこともあったね、じゃないわよ!」
 水の精霊に掴みかからんばかりのモンモンを必死に押さえ、なだめるギーシュ。酷い話だが他人事なので笑い話である。
「こんなにホイホイついてくるなら今までのうちの苦労はなんだったのよー!」
 大泣きを始めるモンモン。酷い落ち込みようだ。慰めようもない。
「細かいことを気にするな、単なるものよ」
 さらに神経を逆なでする水の精霊。素敵過ぎる。
 そんな風にモンモンが水の精霊に噛み合わぬ口撃を受けていたところで、湖に異変が起きた。
 はるか対岸に、白い水柱が起こった。
 しかもその水柱は猛烈な勢いでこちらに近づいてくるではないか。
「ポセイドン、なんだあれは?」
 全身から音波や電波を発して、近づいてくるなにかを分析するポセイドン。やがて答えが出たのか、目が点滅する。
『1名、覆面をかぶった男が、こちらに近づいてきます―』
 水柱をあげてやってきたのは変態仮面白昼の残月ことウェールズ王子であった。
「パカランパカランパカラン。一休殿ー!」
 新衛門さんの声真似をしながら水面を走りよってくる残月。擬音まで口に出すな。というかどこで見たんだ、あのアニメを。
 水面を蹴って飛び上がると、残月は無駄に回転をしながら着地した。
「ポセイドン様をお見かけしたのでもしやと思い駆けつけると、そこにおられるのはやはり我らがビッグ・ファイア様!」
 『ポセイドン+泳ぐ』で不吉な目に遭いそうな残月がピシッとポーズを決める。口には長いキセルを咥えている。
「ショウタロウ老人の件、一件落着です。お咎めなしどころか、報奨金が出ることで決着いたしました。ふふ、記念にシエスタ嬢の名前
入りの杖を新調してしまいましたよ。見てください!とても杖とは見抜けないでしょう!」
 ぷかーと、煙をふかし、くるくるっと鉛筆のように指でキセルをまわす残月。そのキセルのせいでさらに変態仮面として熟成した気がし
てならない。
 そんな残月を手招きして呼ぶバビル2世。
「残月。少し聞きたいことがある。」
 さっと傍に駆け寄り直立不動する残月。そこまでされると、畏まられたほうが恥ずかしいから不思議だ。というか周囲が退いてしま
っているではないか。
「その、残月はいつここに来た?」
 むむ?と首を捻る残月。
「たった今ですが。コウメイ様に報告をしたところただちにラグドリアン湖に向かえと命じられましたもので。」
「ふむ。昨日の夕方、その覆面を外してこのあたりを散策したりしなかったか?」
「いえ。ですから、先ほど到着したばかりでして…。」
 心を読むバビル2世。嘘をついてはいない。つまりルイズの見たウェールズは、ウェールズではないということだ。
 では一体何者なのか。ただの空似なのか。
「いやな予感がするな。」
 超能力の一つ、予知能力がバビル2世に事件の発生を告げる。
「嫌な予感、ですか。わたしは嫌な人物に出会ってしまいましたが。」
 こそこそと目を伏せる残月。その先には、やはり怪しいおっさんであるセルバンテスがいた。
「わが国はかなりの融資をあそこにおられるかたから受けていまして…。この姿ではばれることはないといっても、やはり……。」
 セルバンテスは残月の心中を知ってか知らずか、優雅に自己紹介を行う。ギクシャクと自己紹介を行う残月。
「ところで孔明の命令といったな。なぜここに来た?」
 思い出したように残月に問うバビル2世。残月は懐から書類を取り出した。
「わたしはラグドリアン湖についたら、適当なところでこの書類を開けよ、という命令をうけておりますが。」
 書類を開く残月。そこには孔明の直筆が書かれていた。
 そこに書かれていた文章を読んで、思わず「げぇっ!」と声が上がった。
『バベル2世様へ。アンリエッタ女王に誘拐の危機。ただちにラ・ロシェールまでの街道を急ぐべし。孔明。』
 そこにはこう書かれていたのだった。
 この誘拐事件こそ、梁山泊が全力を挙げて決行するバビル2世抹殺計画、通称「ドミノ作戦」の最初の一手であった。

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