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ウルトラ5番目の使い魔、第三部-26


 第26話
 魂のリレー

 ロボット怪獣 ガメロット 登場!


 異世界ハルケギニアを舞台にした、ウルトラマンAと異次元人ヤプールの戦いが始まって、一年あまりの月日が流れた。
 その戦いを顧みてみて、エースは苦しい戦いを、多くの人々の助力を得て乗り越えてきた。
 そう、ウルトラマンといえど限界はある。圧倒的な闇の力に対抗するためには、仲間の力が欠かせないのだ。
 ヤプールを倒すため、ハルケギニアの人々は勇敢に立ち向かい、さらに地球と光の国からもエースを救うべく勇者たちが立ち上がった。
 だが、次元を超えて地球からハルケギニアへと渡ろうとしたCREW GUYSの試みはヤプールによって妨害され、亜空間ゲートは完全に封じられた。
 その後、才人たちは地球からの援軍を失ったことで苦戦を強いられながらも、エルフの都アディールでの決戦で、なんとかヤプールの怪獣軍団を撃退することに成功した。
 しかし、ヤプールがこのまま黙っていると思う者は誰もいなかった。遠からず奴は、さらなる恐ろしい力を持って攻めてくる。そのときまでに、どれだけ戦力を整えていられるかで勝敗は決まる。
 怨念と執念を込めてハルケギニアを滅亡せんと狙うヤプール。対して人間たち、エルフたちもいずれ必ず襲ってくるヤプールとの戦いに備えて、可能な努力を惜しまずに進めた。

 だが、来るべき時のために最大限の努力を傾けているのはハルケギニアの民やヤプールだけではなかった。
 忘れてはいけない。道を閉ざされたとはいえ、次元の向こう側には悪を許さない勇者たちがいることを。

 時をさかのぼり、才人たちが東方号でネフテスからハルケギニアへと帰還の途にある頃。
 この時、地球からさして離れていない宇宙空間でCREW GUYSが一発の大型ロケットを打ち出していた。
「超光速ミサイルNo.9、軌道に乗りました。弾頭内の各発信機、自動追尾シグナル、オールクリア! このままウルトラゾーンの亜空間断層へと突入します」
「ようし、時空を越えて行ってきやがれ。一個でいい、あの世界に届くんだ!」
 リュウ隊長の見守る前で、GUYSの希望を乗せたロケットは異次元空間へと消えていった。行く先は宇宙の墓場・ウルトラゾーン。GUYSも一度だけ突入したことがあるが、命からがら脱出してきたほどの宇宙の難所だ。
 その不安定な時空に彼らは賭けた。非常に不安定な時空の果てがどうなっているのか、生きている者で確認できた者はいない。しかし、このロケットにはGUYSのテクノロジーの粋を集めた、数千にも及ぶ”ある装置”が詰め込まれていたのだ。

 超光速ミサイルはウルトラゾーンのかなたに消え、やがて自爆して搭載されていた”装置”をばらまいた。
 それらのほとんどは無駄となり、永遠に時空のはざまをさまよい続けることになる。だが、たった一個の奇跡が、すべてを変える大いなる大樹の種となった。


 それから時は流れて、舞台は再び時空のかなたへと戻る。


 ”それ”が、彼らの手に渡ったのは、まったくの偶然といってよかった。
 事の次第はある日のこと、エルフたちの国ネフテスにおいて、海上哨戒中の水軍が嵐と遭遇したことがきっかけだった。
 アディール近海……ヤプールの手に落ちた竜の巣、聖地を望むその海は今や地獄と化していた。
「艦長! 船体傾斜率が三十度を越えました。残念ですが、これ以上竜の巣に近づいたら、艦が持ちません!」
「おのれ、竜の巣はもう間近だというのに。特別に訓練した、この鯨竜を持ってしてもだめだというのか」
 激しく動揺し、なにかに掴まっていなければ立っていることもできないほど悲惨な状況にある鯨竜艦の艦橋で、艦長が悔しげに吐き捨てた。
 海は天を貫く巨峰のような波が無数に逆立ち、風はマストに掲げたネフテスの旗を引きちぎっていきそうなほど強い。
 以前の戦いで、壊滅的打撃を受けた水軍。それからようやく立ち直りかけ、手塩にかけて育て上げた鯨竜と乗組員で竜の巣の詳細を偵察してこようともくろんだ艦長の狙いは、想像をはるかに超えた嵐の前に打ち砕かれてしまった。
 むろん、これは自然の嵐ではない。竜の巣を手中におさめたヤプールが、近づくものを排除しようと人工的に起こしているものである。その威力は絶大そのものであり、空からは暴風雨によりいかなる飛行獣も飛行船も近づけず、かといって海中も水流がでたらめに渦巻いているので、潜ればバラバラにされてしまうだろう。残る、わずかに危険度の少ないと思われる海上からの接近さえ、比較的近くに寄ることが精一杯というありさまであった。
「艦長、鯨竜が疲弊しています。このままここにとどまったら、海中に引きづりこまれて一巻の終わりです!」
「くそっ、止むを得ん。進路反転百八十度、この海域から離脱する!」
 悲鳴のように叫ぶクルーの声に、艦長は悔しさをかみ締めつつ撤退を命令した。
 鯨竜は、帰ることのできるのを認められて喜ぶようにひと吠えすると、くるりと進路を来た方向に変えて泳ぎ始めた。竜の巣から離れるごとに波と風は弱まっていき、沈没の恐怖におびえていた艦橋にもやっと安堵のため息が流れるようになっていた。
「どうやら、危機は脱したようです。しかし、艦内はもうひどい状況です。このままアディールの水軍司令部に帰還します」
「仕方があるまい。くそっ、もっと我々に大きくて強い船があれば、こんな屈辱を味わわずにすむというのに」
 艦長は、割れた窓から吹き込んできた風雨でぐっしょりになった軍服を揺すって、自らの非力を嘆いた。周りでは、同じようにずぶ濡れになったクルーたちが無言で職務に勤めている。いずれの顔にも疲労の色が濃かった。
 情けない。艦長は心底そう思った。我らネフテスの水軍は、水の上にあっては最強なことを誇りとしてきたはずなのに、たかが嵐に勝つことさえままならないとは、偉大な先達の方々に合わせる顔がない。
 彼は、以前アディールにやってきた人間たちの船を思い出した。オストラント号と名乗っていた、あの巨大船を見たときの衝撃は忘れられない。
「あれほどの船を、我らにも作れれば」
 蛮人たちはどうやったのかはわからないが、とてつもない巨艦を建造して我々の防衛網を突破し、歴史上初めてのアディールに立った蛮人たちになった。これまでの蛮人たちの船ときたら、風石ばかりを無駄に食う浮かぶ標的のようなものだったというのに。
 しかし、このような評価をコルベールが聞いたら、過大評価だと顔を真っ赤にするだろう。自分たちも、異世界の技術を流用したに過ぎないのだと。
 ただ、勘違いであるとはいえ、東方号の与えた衝撃はエルフたちにも多くの影響を残していたことは間違いない。
 今に見ていろ、誇り高き砂漠の民がいつまでも蛮人の後塵を拝すなどあっていいはずはない。我が人生のすべてを懸けてでも、あれに負けない船を作り上げて無敵水軍の復興を果たす。同じように空軍も再建に血眼になっているが、負けてはいられない。
 屈辱は人を奮起させる。負けたときにそこから這い上がろうとする意思の力は、時に爆発的な進歩をもたらす。かつて地球でも、我が物顔で暴れる怪獣や宇宙人たちに対抗しようする人々が作り上げた新兵器の数々が、現在のGUYSのメテオールの原型になっているし、ウルトラマンジャックやウルトラマンレオも、敗北から血のにじむような特訓を経て新技を編み出して勝利してきた。そして、エルフたちも同じように、今自分たちの進歩のために殻を破ろうとしていたのだ。
 と、そのときであった。悔しさを噛み締めて窓の外を凝視していた艦長たちの目に、空を横切る一筋の流星が映ったのは。
「なんだ? いまのは」
「見張り所より報告します。左舷後方、竜の巣の方面から発光体が飛来、左舷前方、推定三千メイルに着水しました」
 見ると、確かに左舷前方の海上になにやら光るものが浮いているように見える。荒れる波間に漂っているので、見えたり隠れたりを繰り返しているが、明らかに自然のものではない強い輝きを放っており、艦長以下艦橋にいたクルーたちは怪訝な表情をした。
「なんでしょうね。かなり小さなもののようで、遠見でも正体が判別できませんが、敵の攻撃にしてはお粗末です」
「ええ、砲弾の破片でも、燃えた岩の欠片でもないようです。しかし、風に乗って流れてくる気配がないですし、少なくとも生き物ではなさそうです」
「海流に乗って流されていきます。なににしても、本艦に危害が加わることはないでしょう。ま、この嵐の中、すぐに沈んでしまうでしょうが」
 クルーたちは、目立つ輝きを発しながらもしだいに遠ざかっていく飛来物への興味をなくしたように口々に言った。いずれも、敵地のど真ん中であるこの海域を早く抜け出したくて、触らぬ神にたたりなしといった風に意図的に無視しようとしている。
 しかし、彼らと同じように光る飛来物をじっと睨んでいた艦長は驚くことを言い出した。
「進路取り舵、第一戦速! あの発光物に接近しろ」
「ええっ!? か、艦長、何をおっしゃるのですか。暴風圏は抜けたといえ、まだ本艦は危険な状況にあります。一刻も早く、この海域を抜けなければ」
 せっかく拾いかけた命をまた危険に晒すのは嫌だと、艦の副長ほかクルーたちは皆反対した。だが、艦長は反論を許さないという風に断固として言った。
「ダメだ! 大口を利いて出てきた以上、なにもなしに引き上げたのでは水軍の面子に関わる。ここはなんとしてでも何かを持ち帰らねばならん。速度を上げて接近し、あれを回収するのだ。これは命令である!」
 クルーたちは腹立たしさを覚えたが、軍人である以上は上官の命令に従わねばならない。ぐっとこらえて、鯨竜に進路を変えるように指示すると、鯨竜はしぶしぶといったふうにゆっくりと進路を光る飛来物のほうへと向けた。
 風雨の中を縫って前進し、接近すると速度を絞ってそばに船を静止させるには大変な手間と繊細さを必要とした。しかも、荒れる海の中で人の背丈ほどの大きさもない浮遊物を回収するのはいくらエルフでも難解を極めた。万能に近い先住魔法を操れる彼らであったが、強烈なマイナスエネルギーに支配されたこの海域では精霊の加護をほとんど得ることができずに、手作業に頼った回収がやっと終わったときには溺死者を出さなかったことが奇跡と思えるくらいに、作業に関わったクルーはずぶ濡れで疲弊しきっていた。
「報告します。飛来した物体の回収と収容が完了しました」
「うむ、ご苦労」
「はっ、次いで報告いたしますが、飛来物は一抱えほどの大きさの、金属製の丸い容器のようなものでした。光っていたのは、それにつけられていたランプだったようです」
「容器? ということは、なにかを収納しておくためのものだというのか?」
「わかりません。形からして入れ物なのは確かのようですが、中身が危険物であったときのために、回収すると同時に船倉にしまってしまいましたので。ただ、落雷にでもあったのか破損してはおりましたが、容器の作りは我々ネフテスでは見たことのないものでした」
「わかった。あとは持ち帰って専門家に渡そう。ようし、全速力でこの海域を離脱する!」

 しかし、離脱していく彼らを背後から憎悪をこめた眼差しが見守っていることも、このとき誰も知るよしはなかった。
「おのれ、エルフどもにあれを回収されてしまったか。まだ力が完全に戻っていない今、連中にこの世界に来られるのはまずい。エルフどもにはあれは使えまいが、確実に始末しておかねば……」

 その後、持ち帰られた謎の飛来物は、トリステインで言えば魔法アカデミーに相当する機関に運び込まれて調査された。
 内容物は、一見、サハラの民からすれば価値を持っているようには見えない金属製の小さなカプセル。しかし、そこに書かれていた文字を解読したとき、明らかになったその意図と機能は報告を受けたテュリューク統領を驚愕させるに充分なものだった。
 彼は即座にビダーシャルを呼び寄せると、秘密を明かして協力を要請した。
「ビダーシャルくん、忙しいところを呼びつけてすまんの」
「構いません。私もこの時節、統領閣下が戯れに呼びつけたとは思っておりませんので。それで、要件とは」
「うむ、重要な事柄じゃ。結論から簡潔に伝えよう。先日水軍の船が竜の巣近海から持ち帰ったカプセル。あれは、異世界からやってきたものじゃった。しかも、ヤプールと対立する勢力が我々に向けて送ったものなのじゃよ」
「なんですって! いえ、なるほど……考えられなくも無いですね」
 ビダーシャルは驚いたものの、すぐに冷静さを取り戻して考えた。
 彼らの言う竜の巣、忌み名をシャイターンの門というそこは、伝説では悪魔たちが降り立った地とされ、現在なお製作者不明な武器や用途不明な道具がしばしば発見されることを一部の者たちには知られている。そこで見つかる道具は、明らかに人間でもエルフでも作れないような高度な製法で作られているものばかりで、それらの事象をかえりみたとき、その地の持つ意味を理解できぬほどエルフは愚かではなかった。
「君もわかったようじゃの。シャイターンの門の先には異なる世界が広がっている。ヤプールがなにを狙ってシャイターンの門を奪ったのか、目的はいまだはっきりせんが、奴は門の力を利用しようとしているのは間違いない。しかし、まだ門を制御するにはいたっておらんようじゃ」
「このカプセルが紛れ込んできたのが、その証明というわけですね。これがカプセルにつけられていたメッセージの写しですか。うん? この名は確か……なるほど、信憑性は高いと私は判断します。これに成功すれば、我々は大きな力を得れることになりますね。ですが、肝心の使い方が書いていないのが気になりますが」
「それは恐らく、悪用を防ぐためと、我々の力ではそもそも使いこなせないからじゃろうよ」
「念のいったことです。しかしそのためには、我らの中の誰かが蛮人の国まで出向かねばなりません。なにより、我ら砂漠の民がまたしても蛮人に頼ることになるというのはいかがなものでしょう?」
「ふうむ。確かに、他人の力を借りることには腹を立てる者も多かろうの。正直、わしも悔しい思いがしないでもない。君の言う事も一理あるが……本音はそうではあるまい?」
「当然です。シャイターンどころか、我々は想像だにしていなかった悪魔の脅威に今現在さらされているのです。ここは、誰に頼ることになってもまずはネフテスを守ることが重要でしょう」
 ビダーシャルはあくまで現実思考を前に出して言った。一度は撃退に成功したものの、ヤプールの恐ろしさをビダーシャルは忘れてはいない。再軍備は進めているものの、エルフだけで勝てると思うほど彼は楽観主義者ではなかった。
「ふむ、敵の敵は味方か、人間たちの言葉じゃったのう。まあよい、どのみちそろそろあの船の人間たちには連絡をとろうと思っておったことじゃし、ちょうどよい。しかし、我々の中に蛮人の国の奥深くまで使者として行けるような骨のある者が君以外におったかのう?」
「適任がおります。元より血の気の多い者ですから、汚名返上のために力を尽くすことでしょう。何より、かの地にはその者の親類がおります」
「なるほど、言いたいことがわかったぞ。それに、行く当てがなくて軍に引き取った鉄血団結党の者たちにもよい刺激になるじゃろう。きゃつらの中には、まだ愚かな夢を捨て切れん者もおることじゃし、党でなかなかの地位にあった彼女がその目で人間世界を見てきて話せば、心変わりをする者も出るであろうよ。よろしい、ビダーシャル君、多忙なところをすまんが急いで準備してほしい。わしの責任で、彼女にはできるだけの待遇を与えてやってかまわんのでの」
 こうして、テュリューク統領とビターシャルの即決によってトリステインへと使者を送ることが決定した。
 その代表として、罪は許されたものの水軍で兵卒として一からやり直していたファーティマが急遽呼び出され、上校待遇を与えられて使命を託されたのだった。

「頼んだぞ、ファーティマ・ハッダード。必ず、その荷をトリステインのサイト・ヒラガの元へ届けてくれ」
「はっ! この身命に換えましても、ご期待にそえてご覧に入れます」

 ファーティマは使命感に燃えて、ネフテスを幾人かの役人や護衛とともに旅立った。
 選んだ道は海路。陸路でゲルマニアやガリアを越えるルートは、十数人のエルフがいっしょに行動する上でトラブルが起こる可能性が高く、かつ時間がかかるということで、外洋を北周りに迂回して直接トリステインを目指すルートをとることになった。

 だが、ネフテスから海上に出てしばらく後、ファーティマたちの乗った船が襲われた。
「空を見ろ! 何かが近づいてくるぞ」
「なんだ、船じゃない。巨大な、鉄の、塊か?」
 空から現れた巨大な鉄塊は、船の上に影を落として静止した。そして、驚き戸惑うエルフたちの頭上から、片言の電子音で作られたエルフの言語が話しかけてきたのだ。
「ケイコクスル、キミタチノハコンデイルソウチヲアケワタシ、タダチニヒキカエシナサイ。サモナクバ、キセンヲゲキチンスル」
 突然の一方的な要求はエルフたちを困惑させた。しかし、誇り高いエルフたちが脅しに屈するわけはない。彼らは戦いを即座に決意したが、これは無謀というほかはなかった。
 宙に浮かぶ鉄塊からの破壊光線によって船は一撃でバラバラに粉砕され、エルフたちも海へと放り出された。むろん、軍属である以上は彼らは水泳の心得があったが、鉄塊は水面に浮かんでこようとする者には容赦なく光線を浴びせかけて沈めてしまう。
 情け容赦のない残忍な攻撃。仲間たちが次々と消されていくのを目の当たりにして、彼らは悟った。
「これはこの世のものの力ではない。ヤプールだ! 奴が我々の目的を知って邪魔をしにきたんだ!」
 エルフたちは水中呼吸の魔法を使うことでなんとか深く潜って耐え忍び、イルカを呼んで掴まることでかろうじて難を逃れた。
「生き残ったのは、たったこれだけか……」
 命からがらトリステインの海岸にたどり着いたとき、残っていたのはファーティマのほかはたった数名でしかなかった。
 だが、船もなくして帰る術も失ってしまった彼らには引き返す道はなかった。案内役もいなくなった今、ファーティマをリーダーに、右も左もわからないトリステインで、使命を果たすべく彼らはさまよった。
 けれども、そんな彼らを、ヤプールが見逃すはずはなかったのである。
「なんだ、どこからか、誰かに見られているような気がする……?」
 自然の気配に敏感なエルフたちは、いつからかねっとりと自分たちから離れない不気味な視線を感じていた。しかし、いくら探せども姿を確認することはできず、彼らはただじっと不快感に耐えて旅を続けるしかなかった。
 だが、その視線は決して夢でも幻でもなかった。監視されているような視線に導かれるように、あの巨大鉄塊が再び現れたのだ。
「うわぁ! また来たぞ」
「散れ! バラバラになって、ひとりでも多く生き残るんだ!」
 鉄塊の攻撃を受けるたびに、エルフたちは櫛の歯が欠けるように命を落としていった。
 どこへ逃げようと、どれだけ離れようとわずかな時間稼ぎにしかならない。その中で彼らもようやく、自分たちを監視している目が敵を引き寄せていることと、その正体に気づいて愕然とした。
 それは、死者の霊が悪の念動力によって蘇って操られるシャドウマン。ようやくその姿を認めることはできても、霊であるために実体がなく、一切の攻撃が効かないシャドウマンにはさしものエルフの戦士もなす術がなかった。何回かは、霊体の出所と思われる墓地などを丸ごと破壊して追撃を絶ったが無駄だった。なぜなら、墓場や古戦場などを含め、死人を出したことのない土地などあるわけがない。シャドウマンはまたどこからか現れてエルフたちに付きまとった。
 振り払うことはできず、かといって止まれば鉄塊に追いつかれる。しかも、敵はしだいに亡霊を使うことに慣れてきたのか、監視にとどまらずに直接シャドウマンが襲ってくるようになり、ファーティマの持つカプセルを奪い取ろうとしてきた。
 しかし、同時に彼らは確信した。ここまで執拗に追手がかかってくるということは、このカプセルはそれほどまでにヤプールにとって不利益になるものであるということだ。
 そして、ついに鉄塊に追われてファーティマが最後の仲間を失ったとき、彼はファーティマに向かって最期に言い残した。
「行け! ファーティマ・ハッダード。お前の肩にネフテスの、いや、全世界の運命がかかっているんだ」
 彼はそう叫んで、怪光線の爆発の中に消えた。
 ファーティマはひとり生き残り、仲間の犠牲を無駄にしないために、今日まで旅を続けてきたのだった。


「あと少しというところで、しつこい奴め。だが、わたしの命に換えてもこれは渡さん!」
 ファーティマは、眼前でロボット形態になり、こちらを見下ろしてくるガメロットを睨み返して叫んだ。
 使命を果たすまで、自分は絶対に倒れるわけにはいかない。ネフテスの運命のために、なにより自分に託していった仲間たちのために、やられるわけにはいかないのだ。
 だが、はやるファーティマをカトレアが優しく諭した。
「お待ちになって、ミス・ファーティマ。世界の運命を背負っているのは貴女だけではありませんわ。国はその民のものですが、世界は誰のものでもありません。焦らないで、貴女は私が守ります」
「なに、お前!」
 ファーティマは、臆した様子もなく巨大ロボットの前に立ったカトレアを見て唖然とした。
 この女はいったいなんなのだ? 先のことで、多少頭が切れるのは認めてやってもよいが、これほどの怪物を目の当たりにしても平然としているばかりか、こともあろうに蛮人が砂漠の民である自分を守るだと? この国で見てきた蛮人たちは、たまにエルフであることを明かすと、命乞いをするか襲い掛かってくるかであったというのに。
 差別というものをしないカトレアの器の広さと、ヴァリエールの血を引く者の胆力をファーティマは初めて見た。
 そして、ヴァリエールが立つ以上はツェルプストーも負けてはいない。
「あなたもお待ちになって。ルイズのお姉さんに怪我でもさせたら、あの子に合わせる顔がありませんわ。というよりも、ルイズに貸しを作ってやるチャンスねえ。そういうわけで、ミス・カトレアはわたしが守ってさしあげますわ」
「あら? それは心強いですわ。ですが、わたくしもお母さまの手ほどきで戦いには些少の心得があります。心配はいりませんことよ」
「わかりましたわ。では、烈風の愛娘の実力のほど、間近で拝見させていただきましょう」
「シ、シルフィもがんばるのね! おねえさまと冒険をともにしてきたシルフィはもう、そんじょそこらの竜なんか目じゃないのね!」
 キュルケに続いてシルフィードも気勢をあげる。
 彼女たちの歩んできた戦いの道を知らないファーティマは唖然とした。
 なんなんだこの蛮人たちは? 我ら砂漠の民の戦士団すら全滅に追い込まれた相手を見ているというのに、この余裕はなんなのだ? バカなのか? いや、もしかしたらこいつらも、あの船に乗ってきた奴らと同じ……ならば、こちらも腹をくくるのみ!
「ずいぶんと威勢がいいな。まあ、どのみちもう逃げようもないようだし。足手まといになるなよ、人間ども!」
 ファーティマが叫んだ瞬間、戦いが始まった。

「コウフクノイシナシトハンダン、タッセイモクヒョウヲセンメツニヘンコウ」

 ガメロットが金属音を鳴らして動き出し、無機質な目がファーティマたちを見据える。殺戮兵器としての本分を目覚めさせて、感情のこもらない死刑宣告を投げかけてくる。
 奴は、こちらを皆殺しにする気だ! ガメロットの胸のランプが赤く輝き、破壊光線が襲い掛かってきた。だが、ガメロットのランプが光った瞬間、彼女たちは四方へバッタのように飛びのいていた。
「ひゅう、すごい威力ね。地面にでっかい穴が空いちゃったわ。ミス・カトレア、ご無事ですの?」
「ご心配なく、こう見えて山野を駆け回って足腰は鍛えてありますの。では、出し惜しみをする余裕もないようですし、最初から全力でいくといたしましょう」
 カトレアは、ドレスを爆風ではためかせながら杖を掲げて呪文を詠唱した。温和だった表情が凛々しく引き締まり、杖を振り下ろした瞬間にカトレアの足元の大地が脈動して、みるみるうちにガメロットとほぼ同等の大きさを持つゴーレムへと変貌、カトレアをその肩に乗せて雄雄しく立ち上がったのだ。
「ひゃあ! ロン……いえ、以前に見たフーケのゴーレムの倍はあるわね。これは確実にスクウェアクラス以上……けど、土ゴーレムは大きくはできるけれども、どうしてももろいのが弱点。それで、あの鉄の人形とやりあうつもりですか?」
 キュルケの言うとおり、ゴーレムは確かに怪獣じみた大きさで作ることができ、そのパワーは絶大ではあるが、しょせんは土であるために非常にもろく、格闘戦にはまったく向いていない。これまでにハルケギニアには数多くの怪獣が現れたけれども、どこの軍隊もゴーレムで怪獣を迎え撃たなかったのはそのためだ。小型のゴーレムであればギーシュのワルキューレのように金属に錬金して強度を高めることもできるものの、大きさに比例して消費される精神力もまた膨大になるために、数十メイルクラスのゴーレムを金属に変えることは現実的に不可能と言っていい。
 しかしカトレアは、心配無用と言う風に微笑むと、ぐっと握りこぶしを作ったゴーレムのパンチをガメロットのボディに叩きつけた。轟音が鳴り、なんとガメロットの巨体が押し返されてよろめいたではないか。
「効いた! なんでよ?」
「このゴーレムは、鉄とはいきませんが鉛くらいには硬くしてあります。それでも硬さではかないませんが、重さを活かせばこれくらいはできるのですよ」
「ゴーレムに、『硬化』の魔法をかけたのね。けど、そんなことをすれば精神力があっというまに無くなって……」
「わたくしは少々、人より精神力の持ち合わせが多いようなのですの」
 こともなげに言ってのけ、ころころと笑うカトレアを見てキュルケは唖然とした。
 冗談じゃないわ、スクウェアクラスと見積もったけどとんでもない。四十メイルクラスのゴーレムに『硬化』をかけて、なお平然と維持するなんて、もはや人間技じゃないわ。これが、あの『烈風』の娘の力……
 ケタが違う……と、キュルケは戦慄を覚えた。天才だとかそういう次元の話ではなく、自分の貧弱な”常識”などというもので計れるメイジではない。これがヴァリエールの、ルイズの姉さんの力。巨大ゴーレムの放った一撃の威力には、ファーティマやシルフィードですら驚きを隠せずに固まってしまっていた。
 しかし、カトレアとてこれほどの力を何もなしに天から授かったわけではないのだ。
「ヤプールのお人形さん、あなたが命も心もない殺戮の道具だというのなら、わたしも容赦はしません。もう、誰もわたしの目の前で無為に死なせたりしないために」
 カトレアのまぶたの裏には、以前に自分を守って命を散らせたリトラの最期が薄れずに焼きついている。
 自分に、もっと力があればあのときに誰も死なせずにすんだのに。その自責の念から、カトレアはあれ以来戦いの鍛錬も重ねて、母譲りの魔法の才能を何倍にも引き上げてきたのであった。
 命を大切にせず、他人の命を奪おうとするものには容赦はしない。誰よりも優しいカトレアだからこそ、悪を決して許すまいとゴーレムの攻撃がガメロットのボディに打ち込まれる。
 だが、強固な宇宙金属でできたガメロットの体はほとんど損傷を受けてはいなかった。ガメロットの動きは少しも鈍らず、反撃に振るわれてきたパンチ一発でカトレアのゴーレムの片腕がもぎ取られてしまい、きしんだ音を立てながら殴りかかってくる度にゴーレムの体が削り取られていく。奴のボディはウルトラマンレオの攻撃をまともに受けてもビクともしなかったほどの強度を誇り、パンチは一発でレオを吹き飛ばしたほとのパワーを持つのだ。
 窮地に陥らされるカトレア。しかし、それを傍観できないとキュルケが杖を振って助太刀に出た。
『フレイム・ボール!』
 抱えるほどもある大きな炎の玉がキュルケの杖の先から撃ち出される。だが、あの頑強な鉄の塊にそんなものが通じるかとファーティマは苦い表情を見せた。
 けれど、キュルケは無謀はするけど馬鹿ではない。フレイムボールは最初からダメージを狙って撃ったものではなかった。炎の玉はガメロットの頭部に命中すると、そのまま燃え上がって顔面を覆いつくしたのである。
「わたしの情熱の炎も、無粋な鉄人形のハートはあっためられないわよねえ。けど、恋は盲目っていうのを軽く教えてあげるわ。熱くね」
 そう、キュルケの炎はガメロットの装甲ではなく目を狙ったものであったのだ。魔法の炎は魔法力を燃料にしているために、魔力が残っている限り燃え続ける。キュルケはこのフレイムボールには、ちょっとくらいでは燃え尽きないほどに多めの魔法力を注ぎ込んでいた。
 顔面を炎に覆われたガメロットはガシャコンガシャコンと、まるで古びたビデオデッキのようにやかましい機械音を鳴らしながらもだえている。確かにキュルケの炎はガメロットにダメージを与えるには届かなかったが、ロボットにも人間と同じように目はあり、その依存度は人間以上だ。高感度センサーも炎に覆われては使い物にならず、文字通り完全な盲目状態へと陥らされたガメロットのコンピュータはパニックを起こして、その隙にカトレアはゴーレムを元の形に再生することができた。
「ありがとうございます、キュルケさん」
「どういたしまして。ふふ、タバサの戦い方を見てるうちに、いつの間にか移っちゃったようね。こんなスマートじゃない戦い方、国のお父さまたちに知られたら叱られちゃうかもしれないけど……あら、怒らせちゃったかしら?」
 炎を燃やしていた魔法力が尽きて、頭部の火災が鎮火したガメロットの無機質な目がまっすぐにキュルケを見据えていた。そして奴のコンピュータは、キュルケを優先して始末せねばならない目標と見なして、胸のエネルギーランプを光らせて破壊光線を撃ちはなってきた。
 赤い稲妻が宙を走って大爆発が起こり、土と岩が撒き散らされる。しかし、キュルケはその爆発をすました顔で真上から眺めていた。
「ひゅう、いいタイミングじゃないシルフィード。さっすが、タバサから風の妖精の名前を贈られただけのことはあるわね」
「えへへ、その名前はシルフィの誇りなのね。だから、おねえさまが戻ってきたら、もうおねえさまが危ない目に会わないでいいくらいにもっと強くなるのね!」
 滑空して、キュルケを乗せたシルフィードはガメロットの破壊光線の照準を狂わそうと挑発的に飛ぶ。ガメロットの破壊光線は、かつてレオが相手をした個体が言ったことによれば、地球を破壊しつくすことも可能なほどだそうだが、当たらなければどうということはないのだ。
 体勢を立て直したカトレアのゴーレムが再度ガメロットを狙い、対してガメロットも一発が二万トンの威力を誇るというパンチを繰り出してカトレアのゴーレムを砕く。しかしガメロットは目の前をシルフィードがちょこまかと飛ぶので照準を絞り込めず、一番狙われたら恐ろしいカトレア本人はいまだ無傷である。
 その戦いの様子を、ファーティマはなかば呆然とした様子で見守っていた。
「なんなんだ、この人間たちは……」
 あの悪魔のような鉄人形と互角に渡り合っている。最初は、多少相手の注意を逸らしてくれれば上出来だとくらいにしか思ってなかったのに、我らネフテスの戦士たちですら敵わなかったあの相手と、どうして戦えるのだ?
 奴らには恐れというものがないのか? しかし、彼女たちも決して恐れ知らずに戦っているわけではないことを、漏れ聞こえてきた彼女たちの会話は示していた。
「キュルケさん、シルフィちゃん、もっと離れて飛んでください! そんなに近いと、あなたたちが撃ち落されてしまいます」
「だめなのね! シルフィだって怖いけど、シルフィが離れたらカトレアおねえさまのほうが危ないのね。大丈夫なのね、シルフィはおねえさまから、怖いのを我慢したら強くなれるってことを教わってきたのね」
「シルフィードの言う通りよ。わたしだって、かすっただけで殺されるこんな相手と戦うのは恐ろしいわ。けど、ヤプールがわたしたちよりはるかに強力な力を持ってるのは最初からわかってること。それでも恐れたら、ヤプールの思う壺になるだけ。だったらわたしたちに残った武器は、恐怖を乗り越えるための、この”勇気”しかないじゃない!」
 勇気……ファーティマは、キュルケの発したその言葉を、反芻するかのように口の中でつぶやいた。
 そうだ、思えばあの船に乗ってきた連中や、ティファニアもそうだった。無茶・無理・無謀の三重奏が大音量で流れているような惨劇の戦いを、奴らは臆することなく立ち向かって、多くの民の命を救ってくれた。我ら砂漠の民に比べたら、わずかな力しかない弱者のくせに……いや、それは間違いか。
「我らとて、あの悪魔の前では弱者に過ぎないのだな。ならば、わたしのやるべきことも、また、ひとつ!」
 ファーティマは覚悟を決めた。鉄血団結党がなくなって以来、自分はなんのために生きていて、なにをすべきなのかをずっと探していた。いまだにそれは見つからないし、正直自分には世界を救いたいという意思も、守りたいと思う誰かもいないけれども、それでも自分にもあんなふうに前を向いて戦うことができるのならば。
 そのとき、ガメロットのランプが発光し、破壊光線がシルフィードをかすめてカトレアのゴーレムの半分を吹き飛ばした。
「うあぁぁぁっ!」
「カトレアさん!」
 ガメロットはしびれを切らし、とうとうシルフィードごとカトレアを仕留めにきた。カトレアのゴーレムは半壊して、すぐには動くことはできない。ガメロットの破壊光線の威力からしたら、粉々に粉砕されていてもおかしくはなかったけれど、ゴーレムがしょせんはただの土の塊であったことが衝撃を緩和してくれたようだ。
 しかし、ガメロットの冷たい電子の頭脳は目の前の戦果よりも目標を優先して、ためらわずにゴーレムの上で身動きができなくなっているカトレアに照準を定めた。硬い鋼の拳が、サンドバッグに一撃で風穴を空けるボクサーのパンチのようにカトレアを狙って振りかぶられる。
 やられる! だが、カトレアはゴーレムの維持と操作にほとんどの力を裂いていたのですぐには別の魔法を使えない。シルフィードとキュルケも、爆風にあおられて助けにいくことができない。
 そのとき、乾いた金属音を鳴らすガメロットの背後から枝葉のこすれるざわめきが響き渡った。
「森よ、鎖となって我の敵をからめとれ!」
 周辺の木々の枝や幹が動物のようにうごめき伸びて、ガメロットの四肢に巻きついた。全身を拘束されてガメロットの動きが止まる。カトレアは、寸前のところにまで来て止まった鉄の拳に肝を冷やしつつもゴーレムを再生させながら後退し、シルフィードも爆風からやっと持ち直している。
 そして、彼女たちは今の魔法の主を悟り、視線をその金色の髪をなびかせた勇姿に向けた。
「どこを見ているデク人形。お前の欲しい宝はわたしが持っているぞ」
「ファーティマさん!」
「勘違いするな。お前たちに死なれたら案内役がいなくなるからな。それにわたしの肩には、わたしに希望を託して散っていった同胞たちの期待がかかっている。彼らの無念、晴らさせてもらうぞ」
 そう、今の自分に言えることはそれだけだとファーティマは決意した。今の自分を後押しするのは、死者たちの遺言だけ。ところがそこへ、シルフィードとキュルケの浮かれた声が響いてきたではないか。
「やったーっ! エルフの人が仲間になってくれたのね。これでもう、百万人力なのね」
「いい援護だったわ。この調子でよろしく、ガンガンいくわよぉ!」
「なっ、お前ら! わたしは別に、お前たちの仲間になったわけでは」
「いいのいいの、あなたみたいな子をわたし知ってるんだから。照れなくてもいいのよ、仲良くやりましょ。わたしたちはあんな鉄人形とは違って、熱い血が流れてる仲間ですもの。ねえ? ミス・カトレア」
「ええ、そうです。ヤプールに勝つには、人間の力だけでも、エルフの力だけでもだめだということはあなたももうわかっているでしょう。あなたが否定しても、わたしたちはもうあなたを仲間だと思っています。あとは、あなたが認めるだけ。さあ、誰でもなく、ファーティマさん、あなたが最後に決めてください」
 カトレアの言葉を受けて、ファーティマはぐっと心に重い石を飲み込んだ。
 自分で決める。これまで、自分の進む道は、使命は、いずれも与えられたものを歩んできた。それを自分で、蛮人に向かって差し出す手を出すか否かを、自分で選べというのか?
 いや、考えるだけ愚問だったとファーティマは自嘲した。なぜなら、彼女の従姉妹は、ティファニアは自分よりずっと弱いのにそれをやったではないか。どうせ一度は捨てた命、ならば古いファーティマ・ハッダードはあのときに滅んだ。今ここにいるのは、あのときとは違う新しいファーティマ・ハッダードなのだ。
「まったく、蛮勇しか知らないド素人どもが、仮にも水軍の上校にむかって偉そうに。だがおもしろい、どうせわたしも外れ者のはしくれ。なら、なってやろうじゃないか、お前たちの仲間にな!」
 そう叫び、吹っ切れたような笑みを浮かべたファーティマに、キュルケたちは皆うれしそうな笑顔で答えた。
「ようっし! 歓迎するわ。わたしのことはキュルケって呼んでね。さあ、カーニバルの時間よ!」
「お祭りなのね! 人間とエルフに韻竜も集まったら、あんなポンコツのひとつやふたつは目じゃないの」
「ええ、わたしたちはひとりひとりは弱いけれども、力を合わせれば百万の軍団をもしのぐでしょう」
「お前ら、よくそれだけの大言壮語が出てくるものだ……フッ、ならこの際ついでだ。ヤプールよ、お前はもう勝ったつもりだろうが、たったひとつミスを犯した。それは、わたしというこの世で最強の戦士を敵にまわしたことだ!」
 意気を最大に高め、空からはシルフィードとキュルケ、敵の正面からはゴーレムに乗ったカトレア、後背からはファーティマを配して戦いは再開された。
 むろん、ガメロットは相手の士気などには関係なく、ただひたすら機械的に役割を果たすために動き出す。木々の拘束を怪力で引きちぎって活動を再開し、怪力のパンチでカトレアのゴーレムを削り取り、破壊光線で周辺を火の海に変えた。
 対して、キュルケたちはそれぞれに連携して、考えられる限りの方法でガメロットを攻撃したものの、目に見えて効いたと思えたものはひとつもなかった。心意気は高くても、相手はエルフの部隊を全滅に追いやった相手である。最大に火力を高めたキュルケの炎も、カトレアやファーティマの物理的な攻撃も通用しない。なんとか動きを封じようと試みても、ロボット宇宙船と異名を持つガメロットは高い跳躍力や浮遊能力で軽々と回避してしまい、効果がなかった。
 それでも、彼女たちはあきらめていなかった。あきらめたらすべてが終わる。奇跡は、最後まで全力を尽くしたやつのところにだけ輝くということを、才人やタバサが教えてくれたではないか。
 そして、彼女たちの負けない闘志は届いた。しかし、それは神ではなく現世から声になって返ってきた。

”ガメロットの弱点は頭と腹だ! そこだけは装甲が薄い!”

 突然、彼女たちの頭の中に響いた男の声。幻聴とするにはあまりにはっきりとしたその声に、カトレアやファーティマは戸惑った。
 いまの声は、誰? しかしその中で、キュルケだけは敏感に反応できていた。そう、今の声は、先に墓場で死霊たちに襲われたときに警告してくれたものと同じ声。あのとき、警告どおりに自分は襲われて、指示に従ったおかげで命拾いすることができた。ならば、今回も……迷っている時間は、ない!
「頭と、腹!」
 キュルケは決意し、不死身を誇るかのように身を守る気配も無く進撃してくる巨大ロボットを睨みつけた。

 果たして、人間の力でウルトラマンレオも苦戦したガメロットを倒すことが可能なのか。
 いや、無理と言い切れば可能性は途切れる。
 キュルケたちとガメロットの戦いを森の中から仰ぎ見て、声の主である男はナイトブレスに寸前まではめ込んでいたナイトブレードを下ろして思った。


 続く



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