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エデンの林檎 六話

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六話 『鍛えるのは歯茎の間違いじゃあるまいか』


 ミス・ロングビルに連れられて、五人が馬車の中にいる。馬車を引いているのはカツ丼だ。

「ミス・ヴァリエール、あのイノシシはあなたの使い魔ではありませんよね?」
「私のペットよ。かわいいでしょ?」
「かわいい? いかついってのが正解じゃない?」
「強そう」
「え~、かわいいですよぉ」

 前のほうでカツ丼がほえる。

「ほら、カツ丼もかわいいがいいって」
「言ってるかしら?」

 フゴフゴと鼻を鳴らしながらカツ丼が馬車を引く。

「もう少し言ったところに小屋があるらしいです。その中にいるとか」
「小屋、ですの?」
「小屋、ねえ」


 森の入り口で馬車を折り、カツ丼には待機を命じる。
 おのおのが杖を、シエスタはデルフを抜き、森の奥へと分け入った。
 少し歩くと眼前にボロボロの小屋。

「あれですわ。あの中に入っていくのを見たとか」
「じゃあ誰が偵察に行く?」
「必要ないわ」
「へ?」

 ルイズは無言でシエスタに手を向ける。
 少し迷った後、シエスタはその手にデルフを乗せた。
 腰のバックに入っていた長い紐をデルフの柄に結びつける。

「じゃあちょっと見てきて頂戴」
「娘っこよう、頼むから戦いに使ってくれえ」
「これもある意味戦いでしょ?」

 そのまま肩に背負うと少し助走をつけて投擲、デルフは窓の中に飛び込んで何かに突き刺さった。
 数秒後、紐を引っ張りデルフを手繰り寄せる。一緒に刺さっていた布切れらしきものを払いのける。

「で、誰かいた?」
「いんや、人っ子一人いねえどころかおめーら以外の気配もしねーよ」
「そう。獣の大筒らしきものは?」
「犬っぽい飾りの付いた筒みたいなのはあったぜ。でもそんなに大きくはなかったな。せいぜい肩に背負うくらい」
「それであってると思いますわ。宝物庫の整理のときにそんなデザインの筒を見たことがありますから」
「じゃあ当たりね。フーケはいないみたいだしさっさともって帰りましょう。キュルケ、タバサと一緒に取りに行ってくれる? 私はカツ丼のところで帰る用意をしてくるわ」
「オッケー」

 ツカツカと歩みよりながら、それでも杖を構えたまま二人を見送ると、ルイズはロングビルに目を向けた。

「ミス・ロングビル、ちょっと思うところがあるの。意見をいただける?」
「は、はあ、何でしょうか?」
「あそこに獣の大筒があるみたいですけど、どうしてフーケは置いていったと思われます?」
「さあ、重かった、とか?」
「ありえないわ。肩に背負うくらいらしいし金で作りでもしない限りもっていけないはずはないわ」
「そう、ですわね」
「加えて持ち出さない理由が不明なのよ。国を出たほうが早いしここにとどまる意味はない、となるとフーケは目的があってあれを置いていったということ」
「そ、それで?」

 ルイズはロングビルに一歩近づいた。

「多分使い方がわからなかったのね、だから教師を乗せようとした。違うかしら? ミス・ロングビル、いや、土くれのフーケ?」

 思わず杖を取り出すロングビル、だがそれが振るわれるよりもルイズの手が肩をつかみシエスタがデルフリンガーをその首に添える方が早かった。

「……どこで気づいたんだい?」
「疑問の一つ目は学園長の部屋ね。片道四時間かかる場所への調査にしては早すぎたってこと」
「勘がいいねぇ。思わぬミスをするもんだ」
「あんたにとって教師が全員名乗りを上げなかったのは意外だったんじゃない?」
「ああ、あたしもあそこまで腰抜けばかりとは思ってなかったよ」
「ミスタ・コルベール当たりは何か考えがあったみたいだけど」

 ククククク、と二人して笑みがこぼれる。

「もう一つはやっぱり潜伏していたってところね。普通ならそのまま国外に逃げたほうが安全だもの。体面があるから学園の国への通報は遅れるに決まってるし」
「ばればれだったのかい……」
「怪しかったからシエスタに見張ってもらったのよ。あなた誰も見てないと思って表情が出すぎよ?」
「次から気をつけるよ」

 ルイズはゆっくりと手を離し、杖をフーケに向ける。

「で、わざわざこっそりやる理由は? あたしを突き出すだけならその剣で何とかするか魔法で何とかすればいい。用があるんだろ?」
「まあね、でもその前にと、シエスタ、フーケの服を全部はいで」
「ええ?」「んな!?」
「残らずね」
「そういう趣味なのかい?」
「馬鹿いわないの」

 シエスタがフーケの服を下着まですべて脱がしている中、ルイズは脱がした服をバサバサとはたく。
 ボロボロと飛び出す各種小物の中から、いくつかのものを引っ張り出した。

「杖が七本も。流石に実戦慣れしてる人は違うわね」
「他のやつがどうかしてるのさ。あたしらメイジは杖がなくなったら終わりだからね」
「確かにね」

 取り上げた杖をすべて自分のマントに差し込む。

「もういいわ、着て頂戴」
「そうかい?」

 ゆっくりと、フーケは下着を取り上げ足を通す。

「ああそうそう」

 ひざまで上がったところでルイズが声をかけた。

「フーケ、その“中”に隠してある杖、使わないほうがいいわよ?」
「……気づかれていたとはねぇ」

 ショーツを引き上げフーケは苦笑を浮かべた。

「で、あたしへの要求はなんだい?」

 服をすべてまとい、フーケは問いかける。できるだけ自分に有利な条件を引き出すように。

「情報よ。あなたが目をつけるマジック・アイテムの情報が欲しい」
「マジック・アイテムの、かい?」
「ええ」

 ルイズの後ろでシエスタがデルフを鞘にしまう。

「珍しい、聞いたこともないようなマジックアイテムの情報が欲しいの。私が欲しい種類のものなら譲ってもらいたいわけ」
「……盗賊に加担かい? それにそれじゃあたしは一方的に大損じゃないかさぁ」
「この状況でプラスを要求? 覚悟が決まってるわねぇ。ならもう一つ、使い方のわからないものを解析してあげるわ」
「そんなことができるのかい!?」
「マジックアイテムならね」

 小屋からキュルケとタバサが筒らしきものを担いで帰ってくる。

「さあ行きましょうか“ミス・ロングビル”」
「ええ、“ミス・ヴァリエール”」


 帰り道の馬車の中、キュルケは獣の大筒の包みを解く。
 その中には真っ白な毛を植えつけられた長めの筒があった。先端は犬か狼のような装飾になっている。オマケのように小さな箱。

「コレが獣の大筒……」
「そんなに大きくないですね」
「貸して」

 その筒を受け取り意識を集中する。頭に流れ込むさまざまな内容。

「へえ~」
「何かわかったの?」

 ルイズはその白い筒を布でくるみなおす。

「これ銃ね。それもゲルマニアの鉄鋼技術でも足りないくらい高度の技術で作られた」
「この筒がぁ?」
「正確にはコレは銃身、発射機構の部分がどっかいって筒しかないから弾を撃つのは無理ね」
「……もしかして壊れてるの?」
「そ。しかもこの筒の部分魔法生物っぽいのよ。でも反応がまるでないってことは死んでるか止まってるか……どちらにせよその技術を再現できない限りガラクタね」
「この先の部分だけじゃ意味はなし、か」


 オールド・オスマンの前、ルイズたちは並んで報告を行っていた。

「そうか、フーケは取り逃がしたか」
「はい、残念ですが」
「いやなに、コレが帰ってきたのなら文句はないわい。よう取り戻してくれた」
「かなり珍しいものかと思われますが」
「コレはワシの命の恩人の遺品での、この筒以外の部分は壊れてしまったんじゃよ」
「そうですか……」
「おおおお、そうじゃった。君たちにはそれぞれ勲章が与えられるでな、ミス・ロングビルとシエスタ君には特別報酬が出る」
「「「ありがとうございます!」」」「わ、わたくしもですか?」「私もですかぁ」
「うむ、今後もしっかり励むと良いぞ」

 道すがら、ルイズは手の中の品を放り投げては受け取ることを繰り返している。横にはシエスタの姿。
 その品は獣の大筒と一緒に収められていた箱の中に多数残されていたもの。かつて大筒があった世界において、それは“ショットシェル”と呼ばれていた。

「もうけものだわ。やっぱり課外授業はしっかり出ておくべきね」
「あの筒から何か?」
「ええ、それはもう」

―まさかあの銃を作った場所に、悪魔の実を“物に食べさせる”技術があるなんて!―

 『獣の大筒』、それはかのワンピースの存在する世界においては“散弾銃”と呼ばれた銃。
 銃身に“イヌイヌの実・モデルレトリバー”を食わせた、とある海軍将校の愛銃であった。


「ところでルイズ、あのすごいブタちゃんの名前“カツ丼”だっけ? あれ由来は何?」
「シエスタの祖父の故郷のブタ料理の名前よ」
「……どおりでおいしそうな名前なのね」


 悪魔の木の下に五人
 三人の茶番劇のお茶会
 二人の勝利の祝杯
 ゆっくりとゆっくりと

 悪魔の木は実を結ぶ

 “食らう”という現象を“喰らって”
 悪魔の木は“喰らう”実を生らす


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