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第五十九話「果てしなき復讐」


ウルトラマンゼロの使い魔
第五十九話「果てしなき復讐」
対話宇宙人メトロン星人
洗脳宇宙人ヴァリエル星人 登場



 教会にメトロン星人が持ち込んだ畳の上で、タバサ、シルフィードとメトロン星人、リュシーが
ちゃぶ台を囲んでいる。
 現在のリュシーは、昼間の彼女とはまるで別人というほどに纏う空気が違った。昼の彼女は、
春の陽気のような穏やかで優しい雰囲気であったが、今タバサたちの目の前に座っているリュシーは、
真冬に吹き荒れる吹雪よりも冷え切っている、まともな人間のものとは思えない恐ろしい様相であった。
およそ聖職者の放つ気配とは思えない。
 この百八十度の変貌は、一体どういうことなのか。リュシー自身の口から、真相が語られる。
「もうお気づきでしょう。本当のわたくしは、心の底から神官であったのではありません。
それは世を忍ぶための、偽りの仮面でしかありません。心の底では、復讐の炎が常に燃えたぎっておりました」
 淡々と、リュシーは語る。鬼もかくやという形相の彼女が感情の見えない口調であることが、
シルフィードには逆に恐ろしかった。
「理由は申すまでもないでしょう。オルレアン公派であった、ただそれだけの理由で父を殺し、
家族を散り散りにした王政府への復讐……、それのみです。わたくしはじっと、修道院で機会を
うかがっておりました。艦隊付き神官として、両用艦隊への赴任が命じられたとき、ついに復讐の
チャンスがやってきたと、わたくしは考えたのです」
「……」
「当初は、わたくしに味方などはおりませんでした。そのため全て一人で復讐劇を行うつもりで、
そのための計画も用意しておりました。来るべき日のために必死で習得した“制約”の呪文を使い、
告解にやってきた信者を利用してフネの爆破を起こさせる……そういう計画でした。もちろん、
わたくしに真っ先に疑いがかかることを見越し、鏡を使って己に“制約”をかけることで、昼間は
完璧な神官を装っておりました。復讐など、微塵も感じさせない慈愛に満ちた神官になるように。
何度も、何度も“制約”をかけなおしました……」
 シルフィードは戦慄した。自身に魔法をかけて、自分の心をも変えるなど、正気の沙汰ではない。
しかも身体を突き動かす復讐心を、たった一つの生きがいであろう復讐心をも、魔法によって
抑えつけるなんて……。どれほどの憎しみがそれを可能にするものか、リュシーの心境が
どのようなものだったのか……全く理解の及ぶ世界ではない。
「しかし、計画を実行する寸前になったところで、こちらのメトロン殿がわたくしの前に現れ、
復讐劇を代行してくれることを申し出てくださったのです」
「それじゃあここからは、私の話をしようか」
 リュシーと交代して、メトロン星人が自身について語り始める。
「私は他の宇宙人と一緒に、この星へやってきた。この星には“魔法”という、夢溢れる力を
持った人間たちがいると聞いて、俄然興味が湧いたんだ。そしてあわよくば、戦ってでも
星をいただきたいと、そう思った。……だけどねぇ」
 ハァ、と深いため息を吐くメトロン星人。
「実物を見て、すごく失望したよ。夢なんてどこにもない、実につまらない星だったから、
もう欲しくもない。だからさっき言ったように、私はもうすぐ帰ることにしたのだ」
「つまらない? 何がつまらないのね」
 キッとにらむシルフィード。自分の住む世界を「つまらない」と言われて、いい気分であるはずがない。
 理由を、メトロン星人が述べる。
「この星の人間たちだよ。“魔法”といえば聞こえはいいが、そんなのは扱える人間が威張り散らすための
単なる道具に過ぎない。それを使って世界を良くしこうって気概を持つような人間は、どこを探しても
いなかった。それどころか“魔法”を扱うメイジって人間は、それ以外の人間を踏んづけて、利益を
むさぼることしか頭にない、浅ましい連中ばっかり! 本当にガッカリだよ。貴族だの高貴な血筋だの
言ってるけど、本性はお山の猿と同じだね!」
「お、おねえさまはそんな人じゃないのね!」
 シルフィードがムキになって言い返すが、メトロン星人はため息を吐いた。
「そういうこと言ってるんじゃないよ。君の主人がどうだかは知らないけどね、他のメイジが
そうじゃないって、君は言えるの?」
 そう言われて、シルフィードは言葉に詰まる。彼女自身、口では高貴だの言っておいて、
行動が伴っている者はほとんど知らなかった。
「それ以外の人間だって同じだ。自分らのことしか頭になくて、他のことにはこれっぽっちも
関心のない、無為に寿命をすり減らすだけの低脳だらけ。貴族がボス猿なら、平民はボスに
へいこらするだけが能の子分猿だね。極めつけには、同じ種族同士で殺し合い、奪い合い、
森を伐採して工場から煤煙を撒き散らし、環境を食い潰す! そうまでして生み出すのは、
何の益にもならない一瞬だけの享楽! これならまだ猿の方が利口じゃないか。そう思わないかい?」
「し、知らないのね、そんなこと!」
 何も言い返せないシルフィード。だがメトロン星人は続ける。
「砂漠のエルフって種族も変わりはない。自分たちのことしか見えてなくて、人間のことは
まるっきり見下して理解を示す姿勢すらなく、偉ぶってる割には暴力に暴力で返すだけしか
知らない高慢ちきなお山の大将! 争ってばかりじゃ先に待ってるのは滅亡しかないのに、
だーれも気づきもしない。この世界はどこもかしこも猿ばっかり! ほとほと嫌になっちゃったよ。
だからこの世界には見切りをつけて、自分の国へ帰ることにしたの」
「……だったら、早く帰ればいいのね! こんなところで、何をやってるのよ!」
 メトロン星人の言い分は無性に腹が立つが、言い返すことが少しも出来ない。そのためシルフィードは、
苛立ちをそんな形でしかぶつけられなかった。
「それが帰り支度をしてる時に、このリュシーくんを見つけたんだよ。彼女が力ずくで自分の
とても押し殺せない感情を押し殺してることに気づいて、そうまでして何をしようとしてるのか
不思議に思った。そして話を伺ったら、とてつもなく大きな敵相手に親兄弟の仇を取ろうと
してるじゃないか! 感動したよぉ。その辺の猿どもより、ずっと立派な心がけだ。それで、
帰る前に彼女に手を貸していこう、と思った次第さ」
「感動って……復讐に感動するなんて、おかしいのね!」
 シルフィードには、メトロン星人の心情がさっぱり理解できなかった。復讐が所詮益に
なるものではないというのが、彼女の考えだった。タバサにだって、本当は復讐のために
危険なことをしないでほしいと思っている。彼女の場合は、母親を取り返す目的もあるので、
止めることはないのだが。
 しかし、メトロン星人は、
「何を言うかね。こんな若い身空の子が、家族の無念のために、自分を偽ってでも身を粉にして
頑張っている! これほど立派なことがあるかい?」
「でも、だからって、何の罪もない人を巻き込むなんて……!」
「何の罪もない? この軍港の人間たちがぁ?」
 メトロン星人がせせら笑う。
「彼らは人殺しじゃないか。それも名誉欲や金銭欲なんて欲望を満たすためとか、伝統やしきたりなんて
中身のないものを理由にして思考停止し、見ず知らずの人間を大勢犠牲にしようとうずうずしてる連中だよ。
何か間違ってる?」
 シルフィードは、やはり、何も言えなかった。兵隊というのは、どんなに言い繕おうと、
上の命令一つで人の命を奪う類の人間なのだ。
 戦争を仕掛ける人間というのは、どんな言葉で飾ろうと……人殺しなのだ。
「まぁともかく、私はリュシーくんに協力した。彼女の計画も悪くなかったが、この世界の方法じゃ
騙し切るのは難しいと思って、私の持ち込んだこの世界にない手段を用いた。……けれど、何故か
ことごとく失敗してね。遂には君たちに踏み込まれてしまった。こうなったからには、私は潔く
諦めて退散するつもりだ」
 そこまで語ったメトロン星人は、リュシーを一瞥する。
「リュシーくんには、二つの道を提示してるんだよ。一つは、このままこの世界に留まること。
もう一つは、私とともにこの世界を去ること。二度と帰ってくることはないだろうね」
 とんでもない申し出に、ギョッとするシルフィード。
「な、何てこと言うの!? リュシーさんに、故郷を捨てろだなんて……!」
「別にひどいことじゃないと思うけどねぇ。むしろ、このままこの地に彼女を残らせる方が
ひどいんじゃないかな? この世界に、リュシーくんが幸福に生きていける道が残ってると思う?」
 ぐっ、と言葉を詰まらせるシルフィード。この地にいる限り、リュシーが復讐心を捨てられないのは
明白だ。しかも彼女には、もう誰も家族がいないのだ。
 更にメトロン星人は、タバサにも打診する。
「何だったら、シャルロット姫、君も連れてってあげようか?」
「え!?」
「シャルロット姫、君のお母さんは私が連れ出してあげるよ。治療もしよう。ただし、私と
来ることが条件だけどね」
「そこまで言うなら、ただで手を貸してくれてもいいじゃない!」
「私だって慈善事業家じゃないんだ。何もなしにって訳にはいかないね」
 メトロン星人はタバサに問いかける。
「どうだい。母親が助かるのなら、この世界にこだわる必要もないだろう。低脳で、環境を破壊し、
本当の礼儀ってものも知らない人間たちの間で生きることもなかろう!」
 それに対して、タバサは――。
「――わたしは、」
 その時、この中の四人の誰のものでもない声がした。
「見つけたぞ……」
「!?」
 窓を見ると、いつの間にか開かれていて、見慣れない女が外に立っていた。そして両脇は、
感情の見えないほどの無表情でいる水兵たちが並んでいる。
 同時に扉が開け放たれ、水兵たちがゾロゾロと現れて出入り口を塞いでしまった。シルフィードは、
突然現れた女と異様な様子の水兵たちに不気味さと強い警戒を覚える。
「メトロン星人。散々余計なことをしてくれたものだ」
 女は、線の細い外見とは不釣り合いな低音の声を出してしゃべる。
 メトロン星人は彼女を見て、得心が行ったかのようにうなずいた。
「なるほど。いつもいつもやけにタイミングよく爆破が阻止されるものだと思ったら、君が裏で
糸を引いていたのか、ヴァリエル星人」
 ヴァリエル星人と呼ばれた女をにらみつけたタバサは、次いで水兵たちを見回してつぶやいた。
「あなたが、まだ解けていなかった謎……水兵の異常の犯人」
「えッ!? おねえさま、それってどういうこと?」
 シルフィードが驚いて聞き返すと、タバサが「謎」の意味を説明する。
「水兵たちの協調性の良さは、異常なくらい……明らかな違和感があった。何らかの力が
働いてなければ、あそこまではならない」
 水兵たちが見せた笑顔……タバサの目にははっきりと、不自然なものであることが見えていた。
しかし爆破未遂事件の黒幕が、わざわざ犯行を阻止するはずがない。ずっと不可解に思っていたのだが……
二つの思惑が働いていた、というのが真相だったのか。
「そこまで見抜かれていたならば、お前たちも生かして帰す訳にはいかない」
 女はタバサたちも脅迫する。メトロン星人は彼女へ問う。
「どうして君が人間の味方をしてたのかい? 君は確か、自然を破壊する者が嫌いだったはずだけど」
 それにより、ヴァリエル星人が己の目論見を語り出した。
「人間に味方したのではない。人間同士を殺し合わせて破滅させるための道具を潰されることを阻止したのだ」
「ど、どういうことなのね?」
 ヴァリエル星人とやらは、何をしようとしているのか。シルフィードが冷や汗を垂らす。
「私はこの星の美しい自然を食い潰す人間の存在を許さない。しかし、ウルティメイトフォースゼロと
まともに戦っては勝ち目がない。そこで、人間同士を争わせて自滅させる方法を選択した。人間同士の
争いならば、奴らは立ち入りすることが出来ない」
「ほぉう。私の同族と同じようなことをするね」
 メトロン星人が感心する。
「そのための道具が、この軍隊だ。私は兵士の記憶を消去し、代わりに私の意のままに動くようになる
記憶を植えつけた。既にこのように、軍港の大半の兵士は私の傀儡だ。それが完了した時に、兵士どもを
操ってハルケギニア全土を襲わせる。これが火種となって、世界戦争の始まりだ。そういう筋書きだ……」
 何と恐ろしい計画を考えるのだ。シルフィードは思わず背筋が寒くなった。
 ヴァリエル星人はメトロン星人とリュシーを指す。
「しかし、お前たちのせいで危うく計画が台無しになってしまうところだった。軍艦を破壊されては、
世界全土の攻撃は出来ない。もうこれ以上の邪魔立てはさせん。邪魔者は、全て排除する!」
 突然、ヴァリエル星人の片手に大型の銃が出現し、何の予告もなしにいきなり撃ってきた!
「!」
「おねえさま危ないッ!」
「おっとっと! リュシーくん、こっちに!」
 機関銃の弾丸を咄嗟に回避するタバサたち。リュシーをかばうメトロン星人は、ヴァリエル星人へ尋ねかける。
「全く、乱暴だねぇ。君、そうやって暴力に頼って、本当に上手く行くって自分で思うの?」
「黙れ!」
 メトロン星人を狙って弾丸を発射するヴァリエル星人。メトロン星人はサッとかわす。
「おぉ、危ない。お陀仏は御免だ、逃げさせてもらおうかな。それッ!」
 メトロン星人が扉を塞ぐ水兵たちにぶつかっていき、退路をこじ開ける。その後にリュシーが続く。
「シャルロット様……さようなら」
 リュシーは最後に、その一言だけを告げていった。
 二人が逃げると、ヴァリエル星人はタバサたちの方へ銃口を向けた。しかし、むざむざやられる
タバサではない。既に呪文を唱え終え、反撃に出る。
「『ウインド・ブレイク』!」
 風の魔法で窓のヴァリエル星人と水兵たちを纏めて吹き飛ばす。そして自ら窓より外へ躍り出て、
ヴァリエル星人へ追撃を繰り出す。
「『ウィンディ・アイシクル』!」
 氷の槍がヴァリエル星人にぶち当たった。ヴァリエル星人は槍に押されて教会を囲む雑木林の
中へ消えていったが……。
『グオオォォ―――――!』
 すぐに林から、右肩と両腕が花のような形になっている異形の怪巨人が伸び上がった。
ヴァリエル星人がその正体を露わにしたのだ。
「おねえさま! 早く逃げるのね!」
 シルフィードは人間から翼竜の姿に変化し、タバサを乗せて逃れようとする。だが、ヴァリエル星人は
両腕をしっかり二人へ向けて狙っている。このままでは撃ち落とされる!
 だがその時に、大空の彼方からものすごいスピードでこちらへ飛んでくる巨大な火の玉が!
『ファイヤァァァァァ――――――――!』
 ヴァリエル星人の出現を感知して直ちに駆けつけたグレンファイヤーだった。彼が体当たりしたことで
ヴァリエル星人は姿勢が崩れ、タバサとシルフィードは狙い撃ちから逃れることが出来た。
『グオオォォォ……!』
 グレンファイヤーの体当たりを食らってつんのめったヴァリエル星人だがすぐに体勢を立て直し、
すぐにグレンファイヤーに反撃を行う。
『グオォォォォッ!』
『おっしゃぁー! 来いやぁーッ!』
 夕焼けの日差しに照らされる中、グレンファイヤーとヴァリエル星人の決闘が開始される。
ヴァリエル星人がまっすぐに向かってくるのを、グレンファイヤーは自ら迎え撃ちに駆け出し、
両者は掴み合いになる。
『ウルティメイトフォース! 貴様らは、何故自然の破壊者である人間に味方する!』
 ヴァリエル星人は取っ組み合いながら、グレンファイヤーに詰問した。
『何だってぇ!?』
『人間は愚かな生き物だ! 美しい自然を食い潰す! 助ける価値などない!』
 と主張するヴァリエル星人。確かに彼やメトロン星人の言う通り、科学文明がさほど発達していない
ハルケギニア社会でも、ゲルマニアを筆頭に徐々に工業化が進み、自然破壊の兆候は出始めている。
彼らの言うことも一理あるだろう。
 だがそれに対し、グレンファイヤーは、
『テメェが人間の価値を決めるんじゃねぇッ!』
『グハッ!』
 叫びながら、ヴァリエル星人の顎に強烈なアッパーを入れた。
『俺たちは最後まで人間の可能性を信じる! それだけだぜ! うらあぁぁぁッ!』
 ひるませたヴァリエル星人に猛ラッシュを仕掛けるグレンファイヤー。こちらもパンチを繰り出す
ヴァリエル星人だが、グレンファイヤーはウルティメイトフォースゼロ屈指の肉体派。格闘の実力は
段違いで、あっという間にヴァリエル星人を弾き返す。
『グファアッ!』
 ヴァリエル星人は大きく吹っ飛び、地面に叩きつけられた。グレンファイヤーはそれを追いかけ、
どんどん追い詰めようとするが、
『グファアーッ!』
 起き上がったヴァリエル星人は開いた両手より、ロケット弾を乱射! グレンファイヤーに
猛攻を浴びせる。
『うおおぉぉぉぉッ!?』
 さすがにこれには苦しめられるグレンファイヤー。それでもガッツのある彼は前へ突き進もうとしたが……。
 ヴァリエル星人は次に、肩の花から緑色の花粉を噴出。それを光線のように飛ばした。
『ぐううぅぅぅッ!? こ、こいつは毒か……!』
 花粉を浴びたグレンファイヤーが大きく悶え苦しむ。そう、ヴァリエル星人の花から出る粉は、
猛毒を含んだ毒花粉なのだ。さしものグレンファイヤーも、毒を耐えるのは難しい。
『グファファファファファファ!』
 動けないグレンファイヤーに、すかさず猛攻撃を繰り出すヴァリエル星人! 再び両手から
ロケット弾を乱射。しかも今度は、先ほどの倍以上の量。
『ぐわあああぁぁぁぁぁぁ―――――――――――!』
 ロケット弾の爆発の連続が林の木々を焼き払い、グレンファイヤーを業火に呑み込む! 
絶叫を上げるグレンファイヤーの赤い姿が、火炎の中に見えなくなった。
『グファファファファ……!』
 グレンファイヤーが倒れたと見たヴァリエル星人は踵を返し、木々を荒々しく踏み倒しながら
歩み出す。向かう先には、タバサを乗せたシルフィード。
「こ、こっちに来るのね! 逃げなきゃ!」
 シルフィードは慌てて遠くへ離れようとする。が、しかし、
「待って」
 タバサがそれを止めた。彼女の目は、グレンファイヤーを覆い隠した大火災に向けられている。
 その中から、立ち上がる姿が!
『おい……テメェが、自然を破壊してるじゃねぇか……』
『グファッ!?』
 振り返るヴァリエル星人。その視線の先には、雄雄しく立ったグレンファイヤー!
 ヴァリエル星人のロケット弾攻撃は、実は失策であった。その爆炎が花粉を焼き、毒の効果を
薄れさせていたのだ。その結果、グレンファイヤーは復活した!
『とうッ!』
 グレンファイヤーは合わせた平手から火災を吸い上げ、見事に鎮火せしめた。そして、
『おらッ! お返しするぜ!』
 吸い取った炎を火炎弾にして、ヴァリエル星人に投げつけた!
『グファアァァ―――――――!!』
 それを食らったヴァリエル星人は大ダメージを負う。その隙を突いてグレンファイヤーは
ジャンプで一挙に距離を詰めた。
『とどめだッ! 行くぜぇぇ―――――!』
 ヴァリエル星人の身体をむんずと掴むと、グルリと天地を逆さにする。そして手で足首をがっしり掴んで、
『おうらぁぁぁッ!!』
 脳天から地面に叩きつけた! 大技のグレンドライバーが炸裂した。
『グッファッ……!』
 ヴァリエル星人は短い断末魔のうめきを上げて、爆散。完全に倒された。
『ふぅ……』
 グレンファイヤーがひと息吐いた時……林の中からいきなり、巨大化したメトロン星人が伸び上がった!
『うおッ! お前もやろうってのか!?』
 即座に警戒し、ファイティングポーズを取るグレンファイヤー。
 しかし……メトロン星人は、何故かその場で走るポーズで足踏みするばかり。特に攻撃をしてこない。
『……?』
 不可解な行動に、グレンファイヤーも思わず首を傾げる。
 と、その時、どこからともなく赤い楕円を二つくっつけたような円盤が飛んできて、メトロン星人の
上空で停止した。すると、メトロン星人はグレンファイヤーとタバサたちに背を向けて、円盤の方を向く。
 そしてちょっとだけ振り返ったかと思うと、筒状の腕を振った。別れの挨拶をするように。
『あッ……ああ……』
 つい手を振り返すグレンファイヤー。するとメトロン星人の身体が円盤に吸い込まれていき、
見えなくなった。
 メトロン星人を収めた円盤は、そのまま天高くへと飛び去っていった。そのままこの惑星……
ハルケギニアから去っていくのだろう。
『……』
 グレンファイヤーは、呆然とそれを見送るだけであった。
「侵略者はいなくなったのね……でも……」
 シルフィードが小さくつぶやく。彼女は今、複雑な心境であった。
 侵略者の目論見はくじいた。しかし、今回守られた人間は――メトロン星人の指摘した、
「人殺し」たちなのだ……。

 戦いが済んで、タバサとシルフィードは先ほどの部屋へ戻ってきた。
 そこには、誰もいなくなっていた。メトロン星人はタバサの回答を待たずに帰った。しかし、
リュシーはどうなったのか?
 部屋には畳とちゃぶ台だけが残されていて、その上には、「シャルロット様へ」という書置きが
ポツンと置いてあった。それを手に取り、広げるタバサ。
 書置きには、こう書いてあった。
『シャルロット様、突然ですが、あなたにお別れを申し上げます。もう二度とお会いすることはないでしょう。
 わたくしは、メトロン殿と共に彼の故郷へ旅立ち、この地を永遠に捨てることに致しました。
 生まれ故郷を捨てることに、ためらいがなかった訳ではありません。しかし――やはりこの世界には、
わたくしの幸福はもう残されておりませんので。
 わたくしの中には、絶えず復讐の炎が燃えたぎっております。その炎は、一度や二度の“制約”では
抑えきれないほどの強さなのです。
 わたくしの復讐は、とても困難なもの。絶対に完遂することは出来ないでしょう。しかしこの復讐心は、
どうしても捨てることは出来ません。魔法で一時的にごまかすことは出来ても、時間が経つに連れて
心の底から這い出てくるのです。そのためわたくしは、夜には誰にも会わないように注意しておりました。
 この果てしなき復讐がもたらすものが破滅であることは、理解しております。しかし、
この世界にいる以上は、どうしようもないものなのです。
 そのためわたくしは、生きる世界を全て変える道を選びました。後悔はありません。わたくしが
復讐者でなくなるには、こうするか、死ぬしかないのです。
 もう一度申し上げます。さようなら、シャルロット様。
 心残りがあるとすれば、わたくし以上の復讐の炎を抱えていらっしゃるあなたの行く先が
見られないことだけです』
 ……書置きを読み終えたタバサは、ゆっくりと天を見上げた。
 仮に、メトロン星人が回答を待っていても、自分はこの地を離れる決断はしなかった。
メトロンもそれが分かっていたから、待たなかったのだろう。
 自分は――リュシーと違って、何が何でも復讐を完遂する。この手で。母親も自身の力で救い出すつもりだ。
 それは、自分がタバサになった時の誓いがあるから。命の恩人のファルマガンに誓ったから。
それが、自分とリュシーの違い――。
 ――本当にそうだろうか?
 本当は、リュシーの指摘した通り、彼女よりも強い、果てしなき復讐心がそうさせるからではないか――?
 仮に復讐を終えても、この心の炎はそのまま、自分を燃やし尽くしてしまうのではないか――。
「おねえさまッ!」
 シルフィードに呼ばれて、ハッと正気に返った。
「大丈夫だったの? 顔色が悪かったのね」
 自分を心配しているシルフィードの顔を見返して、冷静さを取り戻すタバサ。
 これ以上考えるのはよそう。まだ終わりの片鱗すら見えないのに、その後を考えても仕方ない。
今は、とにかく母親を取り返すことに専念しよう、と思い直す。
 取り返した後は――とにかく生きよう。メトロン星人はこの世界を、人間を、どうしようも
ないものだとこき下ろした。しかし、自分はそんな大きなことは分からない。自分がそんなことを
決めたって、どうしようもないではないか。
 自分は、この世界で生きていくのだ。なら、自分に出来ることを精一杯やって生きていこう。それしかない。
 ――とにかく、爆破未遂はもう起こらない。極秘裏に洗脳されていた水兵たちも、ヴァリエル星人が
いなくなった以上は元に戻るだろう。これで、この事件は終わりにするのだ。
「ところでおねえさま」
 最後に、シルフィードがこんなことを尋ねた。
「メトロンって奴、この板と机を置いていったのね。これはどうしようかしら?」
 畳とちゃぶ台は、教会の備品ではない。このままでは、他の神官が処分に困るだろう。
 タバサは少し考えて――結論を出した。
「持って帰ろう」


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