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ウルトラ5番目の使い魔、第三部-25


 第25話
 狙われたサハラからの使者

 ロボット怪獣 ガメロット 登場!


 このハルケギニアと呼ばれる世界で、六千年の昔に大きな戦争があった。
 それはエルフの伝承では大厄災と呼ばれ、一度世界中を完膚なきまでに破壊しつくしたと言われ、恐れられている。
 しかし、それほどの大戦争がなにが引き金になったのか、何者が引き起こしたのについては今なお謎が多い。
 時間軸を遡り、六千年前の過去に飛ばされてしまった才人はそこでヴァリヤーグと呼ばれていた光の悪魔を目の当たりにした。怪獣を次々と凶暴化させてしまうこのヴァリヤーグによって、世界が滅亡への道を辿ったのは間違いない事実であろう。
 それでも、謎は残る。
 六千年前、ヴァリヤーグという存在によって大厄災が引き起こされた。しかし、その前はどうなのかはほとんどの記録が沈黙している。
 大厄災が起きる前のハルケギニアはどんな土地だったのか? どんな人々が住んでいたのか? どんな文化があったのか? 翼人のような亜人はどうしていたのか? エルフはどうだったのか?
 不思議なことに、どんな記録や伝説を見ても、六千年前以前の歴史は切り落とされたかのように消滅しているのである。失われた古代史……エルフや翼人は、大厄災の混乱で記録が消失してしまったのだと結論づけているものの、いくつか残された古代の遺跡にも大厄災以前についての記述だけはないのだ。

 だが、唯一六千年前より以前からハルケギニアで生き続けてきた水の精霊だけは、その秘密を知っていた。
 当時、わずかな人間たちしか住んでいなかったラグドリアン湖に前触れもなくやってきた奇妙な異邦人たち。彼らは最初こそ友好的な態度を示したが、やがて本性を表した。
 異邦人たちの目的は、自分たちの勢力拡大のための戦争に使う生きた駒として住民を利用することだった。
 苦痛だけ与えられて、勝敗のつかない堂々巡り。そんな茶番劇が延々と続くと思われたが、これは悪夢の序章に過ぎなかった。
 カトレアが語るのをためらい、キュルケでさえ聞いたことを後悔するような所業。それを水の精霊は見てきたのだという。

「こんなこと、絶対に世の中に知られちゃいけない。けど、このハルケギニアって世界は、いったい……」

 話のあまりの重さに苦悩するキュルケ。だが、運命の潮流は彼女に迷っている時間を与えてくれなかった。

 迷い込んだ墓地で突然襲ってきた亡霊たち。そして、続いて現れた、キュルケの見知らぬ砂漠の民の女。
「アディール? ネフテス? それって確か、ルクシャナの言っていたエルフの国の都と政府のこと? あなたが、エルフの国の使者だっていうの?」
「声のでかい蛮人だな。だが、あの変人学者のことも知っているならなお都合がいい。連中のいる場所までの案内を重ねて要請する。わたしはネフテスから全権を預かってきた者である」
 警戒心を隠しもせずに睨みつけるキュルケと、尊大に命令するもう一人の女。しかし、この誰も予想していなかった邂逅が、彼女たちにとってもハルケギニアにとっても極めて重大な意味を持つことを、まだ彼女たちも知らない。


 そして、墓場での戦いから十数分後、招かざる配役を交えて物語は再開される。


 がたん、ごとんと馬車の車輪が道を踏み、車内の椅子に心地よい振動を伝えてくる。
 しかし今、馬車の中は一種異様な空気が充満していた。
「なんであなたがわたしたちの馬車に乗っているかしら? ミス・ファーティマ」
「気にするな。命を救ってやった貸しを親切で安く取り立てているだけだ。正直歩き疲れていたのでな、乗り物が見つかったのはちょうどいい」
「あらあら、まあまあ」
「え? なに? なんなのこの眺め。シルフィーがお昼寝してるあいだに何があったというのね?」
 まるで、鉢合わせしたドラコとギガスのように一触即発の空気。唖然としているシルフィードの目の前で、視線の雷がぶつかりあって見えない大戦争を繰り広げている。
 キュルケと相対して、殺伐とした空気を振りまいている招かれざる同乗者の名はファーティマ。フルネームはファーティマ・ハッダードといい、元はエルフの水軍の少校を勤めていた。
 もしここにティファニア本人がいたならば、喜んで歓迎の意を表しただろう。しかし、ティファニアの従姉妹だといい、エルフの評議会からの使者だというファーティマをキュルケは信用できないでいた。どうしてかといえば、確かに容姿は目つきの鋭さを除いてティファニアにそっくりではあるけれど、ティファニアや、百歩譲ってルクシャナと比べても、ファーティマの人間に対する蔑視は露骨であったのでキュルケも不快を禁じえなかったのだ。
「あなた、本当にテファのご親戚なの?」
「そう言っている。血統書でも見せなければ満足できんか? いいから黙ってあの娘たちのいるところへ連れて行け。それがなによりの証明になるとなぜわからん」
「怪しい相手を友人の下に連れて行くバカがどこにいるっていうんですの?」
 そもそも、エルフの国からティファニアの元へと使者が送られてくるということ自体がキュルケにとっては寝耳に水だった。むろん、ティファニア個人に対してではないが、想像もしていなかったのは事実である。
 なぜなら、才人たちが東方号ではるか東方の地のサハラへの遠征をしているちょうどその頃、キュルケはガリアに囚われて幽閉され、外部の情報からは完全に隔離されていたからである。だから東方号のことや、アディールで起こったヤプールとの一大決戦についても何も知らなかった。対してファーティマは、キュルケがそれらについてティファニアやルクシャナの知り合いならばわかっているだろうという前提で話しているので、両者が噛み合うはずがなかった。
 キュルケは、図々しくも馬車に同乗を決め込んできたファーティマを苦々しく睨んでいる。シルフィードはあまりの空気にどうすることもできずにいて、カトレアだけが物珍しげに笑顔を浮かべていた。
「こんなところでお友達を連れてらっしゃるなんて、キュルケさんの交友関係はとても広いのですね」
「ミス・カトレア、わたくしは友人は選んで付き合っているつもりですのよ。と、いうより今日初めて会ったばかりの、こんな横柄なエルフを友人にする趣味なんて持ち合わせていませんわ」
「エルフエルフとうるさい女だ。サハラもハルケギニアも変わらぬと言いにきたのは貴様らだったろう。なら、エルフのわたしがどこにいてもそれは自然の摂理というものだ」
「それならば、海の上とか火山の噴火口でとかをおすすめしますわよ。サラマンダーと輪舞をなさるなら、極上のお相手を紹介いたしますわ」
 互いに相手を牽制しあい、歩み寄りの気配など微塵もなかった。ファーティマに対し、キュルケは始めから機嫌が最悪だったこともあり、考えたいことがほかに山ほどあって、この無礼なエルフに対してとても愛想よくする気にはなれなかったのだ。
 ファーティマは、どこへ向かっているのか聞いてもいない馬車に揺られながらも、特に焦ってはいないように見えた。大方、どうせ案内させることになったら方向転換させればいい、とでも思っているのであろうが、その図々しいまでの神経の太さだけは感心に値した。思えば、エルフが一人で堂々とハルケギニアに乗り込んでくることなど正気のさたではない。ルクシャナにしても、当初は念入りに正体を隠していたのだ。
 人間のエルフへの恐怖はそれほど深く、同時にエルフの人間に対する侮蔑もまた深い。このふたりの対立は、まさに人間とエルフという二種族の縮図ともいえた。
 しかし、その一方でキュルケの心の片隅では、先ほどカトレアから語られた伝承が消えずに繰り返されていた。あの伝承が正しいとすれば、その人間とエルフの対立自体、まったく意味のないものになるのではないだろうか。気に入らない女だが、そう思うと少しだけキュルケにも冷静さが戻ってきた。
「とりあえず、先ほど助けられた恩義だけはありますから、借りは返したいけれど……はぁ、まったく、乗ってきたものは仕方ないとしても、ミス・ファーティマ、わたしにはあなたを悠長にエスコートしている時間はないんですわよ」
「時間がないなら作ればよかろう。お前の用がなにかは知らないが、わたしの用より重要だとは思えん」
 できるだけ柔和にお断りの意志を伝えてもファーティマはにべもなかった。そういえば、水軍の士官だと名乗っていたなと思い出した。軍人ならば居丈高な態度も納得できるというものだが、だからといって要求にこたえてやるわけにもいかないのも事実だ。
 今の自分たちにはタバサを救うという大切な使命があるのだ。余計なことに関わっている時間はないと、キュルケは焦っていた。
 すると、そんなキュルケのいらだちに気づいたのか、カトレアが両者をなだめるように、キュルケの抱いている疑問を代わりにファーティマに尋ねた。
「まあまあ、お二人とも。そんなに自分の意見ばかりを主張しては始まりませんわ。ところでファーティマさん、わたしは少し前にあなたのお国にお邪魔したお転婆娘の姉なのですが、よろしければそのときのことを少しお聞かせ願えませんか? お土産話を楽しみにしていたのに、あの子ったらとても忙しいらしくって」
 カトレアの柔和な表情と声が、馬車の中の張り詰めた空気をやや解きほぐした。しかしなぜ彼女がこうした質問ができたかといえば、アンリエッタを通して以前のルイズたちの活躍をすでに知っていたからであった。
 ファーティマは、カトレアの温和な空気に少し毒を抜かれたようで、軽く息を吐くと以前のアディールでの戦いを語って聞かせた。
 サハラの地にやってきた人間たちの船『東方号』。人間とエルフの和睦を目指してやってきた彼らと、それを妨害せんとするヤプール。そしてアディールでおこなわれた大怪獣軍団との決戦。結ばれた、人間とエルフの間の確かな絆。
 それらのことを、キュルケやシルフィードはこのときはじめて知ったのだった。
「ルイズやテファたちが、そんなことを……!」
「シルフィたちが捕まっているあいだに、あのちびっこたちすごいのね!」
 このときの彼女たちの心境を地球流に表現すれば、浦島太郎というほかなかったろう。ほんの何ヶ月か牢の中にいただけだというのに、まるで何十年も時間が経ってしまったかのように思えた。とても信じられなかったが、つこうと思ってつけるような嘘ではないことは確かだった。
 すると、ファーティマのほうもようやくキュルケたちとの意識の差を理解した。
「呆れたものだな。トリステインから来た蛮人たちのことは、今やサハラで知らない者はいないぞ。それなのに、こちらでは民はおろか連中の友人たちすら知らぬとは、どうなっているのだ」
「わたしたちは、少々込み入った事情があるんですのよ。ミス・カトレアはこのことを?」
「ええ、聞き及んでおります。しかし、事が事だけに、公にするにはいましばらくの用意がいると姫様からはうかがっておりましたが」
 エルフに対して、悪鬼の印象を植え付けられているハルケギニアの民に、その意識を百八十度転換させるには上からの押し付けではとても無理なことをアンリエッタも理解していた。そのため、周到に根回しを進めていたのだが、まさかそれを始める前にこんなことになるとは予想だにできなかったことだろう。
 キュルケとシルフィードは、自分たちが留守にしているうちに世界がめまぐるしく動いていたことを知った。ルイズや才人たち、クラスメイトや友人たちは自分がいないあいだにも世界を救おうと必死に努力していたのだ。
 だが、引き換え自分はどうか、こんなところでつまらない問題につき合わさせられている。まあ、事情を最初から知っていたとしても、このファーティマというエルフは気に食わなかったであろうが、心の中の嵐が静まってくると、キュルケはある思いを持ってファーティマの顔をじっと見た。
「なんだ? わたしの顔になにかついているのか」
「いえ、失礼いたしました。そして、どうやらあなたのおっしゃることは正しかったようですわね。無礼を、お詫びいたしますわ」
 相手はエルフ、ハルケギニアでの恐怖の象徴。しかし、今のキュルケはそのエルフを恐れる気持ちにはどうしてもなれなかった。
 人間とエルフは不倶戴天の敵。しかしそれは宇宙が始まったときからの法則に記されているわけではなく、後年の誰かが勝手に決めたことだ。そしてその起源は……あの伝承が確かだとすれば、根底から無価値だったということになる。
 ファーティマは、怪訝な様子で押し黙ってしまったキュルケを見ている。しかしその瞳には、侮蔑や傲慢とは違った光が少しだけ隠されていた。
”おかしな女だ。怒ったと思ったら急に沈みこんだり。しかし、素直に謝罪の言葉が出るとはなかなかできた人物ではあるようだな。少なくとも、少し前のわたしにはできなかったことだ”
 内心で自嘲したファーティマは、それまでキュルケたちに見せていた傲慢な態度とは裏腹な感想を抱いていた。
 そう、一見して人間を見下している態度に徹しているかのように見えているファーティマだが、その本心ではかつてティファニアが命を懸けて灯した友情の炎が消えずに灯っていたのである。
 が、ならばなぜファーティマはキュルケをあおるような態度を続けるのだろうか? いや、それはエルフが人間と変わらない心を持つ生き物だということをかんがみれば、察することもできると言えよう。そして彼女は、実はずっとキュルケたちを観察していたのだった。
”ものわかりの悪い女だが、わたしの素性に確信がいくまでテファに会わせまいとするあたりは情のある人物ではあるようだな。不満は残るが、ようやく信用に足る人物を見つけられたか”
 重ねて述べるが、トリステインはエルフにとってはいまだに敵地である。そこへ踏み込み、特定の任務を果たすためには一時の油断も許されないのだ。
 実際、ここに来るまでにファーティマは誰も信じられない孤独な旅路を送っていた。ルクシャナの百倍は生真面目な彼女が、人間に対する態度を硬化させたとしても仕方がないであろう。
 本当にキュルケたちを見下していたのであれば、キュルケに案内の役が務まらないことを知った時点で馬車を去っていればいい。しかしそれをしなかったのは、任務遂行の使命感と、かつて自分を救ってくれたティファニアを忘れていなかったからだ。
 ただし、それらとは別に、彼女には使者としてのほかに、もうひとつ隠された目的があった。
”魔法学院とやらで連中の行方を聞いても、どうにもわからず行き詰まっていたが助かった。しかし、この国をざっと見てみたが、やはりテュリューク統領やビダーシャル卿は変わり者だ。あのときやってきた連中はまだしも、まだ蛮人たちの大半は大いなる意思の加護も理解できず、この国も国内すら統一しきれていない。こんな連中と接触したところで、我々に害をなすだけではないのか? だがまあ、任務は任務だ、もうひとりの女は多少は話がわかるようだし、わたしの運もまだ尽きてはおらんだろう。ともかく、これをあの連中に渡すまで、万一のことがあってはいけない”
 ファーティマは心の中でつぶやき、懐の中に忍ばせた”あるもの”を確かめた。
 それは、彼女がサハラから来るに際して、テュリューク統領とビダーシャルから厳命された任務だった。
「よいかね、ファーティマ上校。君にはネフテスの名代として人間たちの国へと向かってもらう。道筋は、以前ルクシャナ君の記したものがあるから海から回ってゆくとよいじゃろう。本来なら、ビダーシャル君にまた行ってもらいたいが、あいにく今は彼を欠いては蛮人、いや人間世界に詳しい人物がおらなくなってしまうからのう。君には苦労をかけるが、使者としてティファニア嬢と血縁関係にある君以上の適任がいないのじゃ」
「先のオストラント号の件で、歴史上はじめて人間がネフテスに来て以来、多くの者が人間と接触はした。だが、まだ大衆はあの船の人間だけしか知らず、ハルケギニアの人間の大多数が我らを恐れていることへの実感が薄い。今のうちに理想と現実の差を埋めておかねば、後で大変なことになるのは目に見えているからな。それから、使者としても当然だが、君に預けるそれは、恐らく今後の世界の命運を左右する可能性を秘めている。必ず、あの船の人間たちに届けてくれ」
「はっ! 鉄血団結党無き後、水軍を放逐されていておかしくなかったわたしに目をかけてくれた統領閣下方のためにも全力を尽くす所存です。ご安心ください」
 ネフテスから人間世界への使者へと、もうひとつ、東方号へと、ある重要な物品を届けることがファーティマに課せられた使命であった。それを果たすまでは、些事にこだわって余計な遠回りをするわけにはいかない。
 しかし、任務の重大さとは別に、ファーティマ自身はこの任務に必ずしも乗り気ではなかった。なぜなら、ファーティマは以前に才人たちがサハラに乗り込んだとき、反人間の過激派組織である鉄血団結党の一員であり、その手によってティファニアの命が脅かされたこともある。現在は鉄血団結党は解体したけれど、ファーティマ自身人間への偏見を完全に忘れたわけではないし、自分の素性を知っている向こうにしても少なくとも好んで顔を見たい類の相手ではないであろう。
 ただし、今はそんなことまで口にする必要はない。ファーティマは、相手の警戒心を解くために、現在のサハラが今どうなっているのかを語った。それによれば、現在のサハラは先のヤプールとの決戦で甚大な被害を受けたアディールを一大要塞都市に作り変えて、反攻のために戦力を整えている。そして、そのリーダーシップをとっているのが、先の戦いで信望を深めたテュリューク統領なのだとキュルケたちは聞かされた。
「エルフは完全に戦うつもりなのね。それなのに、わたしたち人間ときたら、いまだに各国の意思の統一すらできていないんだから、うらやましい限りだわ」
「当たり前だ。我々砂漠の民は、滅ぼされるのを待ち続ける惰弱の民ではない。過去の人間たちとの戦い同様に、侵略は断固として迎え撃つ。しかし、先の戦いで敵の戦力がお前たちと戦うよりずっと強力であることがわかったのでな。お前たちのようなものでもいないよりはマシだろうと、来るべき決戦に参加させてやりにわたしが来たまでだ」
「そういう態度をこちらでは手袋を投げつけに来た、と言うのよ。けど、実際に的を射ているから頭が痛いとこなのよね。まったく、せめてジョゼフさえいなければねえ」
 エルフの世界に比べて、ハルケギニアのなんというガタガタ具合かとキュルケは呆れたようにつぶやいた。
 ベロクロンの戦いの後、現在のアンリエッタ女王はヤプールの侵略に対して各国で協力体制を作るよう呼びかけてきたが、それは一年以上経った現在でも成し得ていない。アルビオンとは友好国であるし、ゲルマニアは信頼関係こそ乏しいがアルブレヒト三世が現実主義者であるため同盟国という立場はとれている。ロマリアは立場上中立としてもいいが、問題はガリアであった。アンリエッタがいくら呼びかけても、のらりくらりと回答をかわして、今に至ってもまともな関係は築けていない。それがどうしてかというならば、キュルケにはもうわかりすぎるくらいわかっていた。
「ジョゼフがいる限り、ハルケギニアの一体化を邪魔し続けるでしょうね。しかしそれにしても、あなたみたいなのが使者に遣わされるなんて、統領さんはなにを考えているのかしら」
 と、キュルケがつぶやくと、ファーティマはつまらなさそうに答えた。
「知らん。だが、とにかくわたしは自分に課せられた使命には忠実でいるつもりだ。お前たちに危害を加えるつもりならば、とうの昔にやっている。わたしがこの地に出向いてきた、テュリューク統領の意思は平和と友好のふたつにこそある」
 そう言いながら、ファーティマは自分が言ってこれほど白々しい言葉もないなと自嘲していた。ほんの半年ほど前の自分には夢にも思わないことだ。あの頃の自分だったら、いずれ水軍の大提督になって人間世界へ攻め込むことを夢見ていただろう。
 人間のことが気に食わないのは今でも変わっていない。しかし、あの頃の自分は今思えば血塗られた夢に酔っていたのかもしれない。砂漠の民の力があれば、蛮人など鎧袖一触と無邪気に思い込んでいた無知な自分。ただエスマーイルの言葉に踊らされて、鉄血団結党の一員であることに有頂天になっていた。それでいい気になって蛮人どもを襲撃したら、軽く返り討ちにあったあげくにその相手に助けられているのだからざまはない。
 そして、奴らのひとりはこう言った。お前だけが不幸だなんて思うなよ、あんたみたいな復讐者は何人も見てきたと。あのときほどの屈辱は、それまでになかった。おまけに、あのシャジャルの娘ときたら、まったく心底自分の器の狭さを思い知らされた。
 しかし夢は夢、覚めてしまえば夢は過去へと流れていく。表面は蛮人に対してとげとげしく取り繕って、内心では心を許せないもどかしさを感じていたファーティマだったが、その葛藤は意外な形で晴らされることになった。

「まあ、まあまあまあ! 素晴らしいですわ。ファーティマさん、私、小さいときからいつかエルフの国へ行ってみたいと夢見てましたの。エルフと人間の友好、こんなにうれしいことはありませんわ」

 カトレアの、喜びに満ちた声が馬車の中のよどんだ空気を吹き飛ばし、思わずカトレアを見たキュルケとファーティマの目に、カトレアの満面の笑顔が太陽のように映り込んで来た。
 驚いて、とっさの言葉が出てこないキュルケとファーティマ。しかし、カトレアは立ち上がってファーティマの手をとると、優しげに口を開いた。
「慣れない土地での旅、ほんとうにご苦労様でした。こうしてここであなたとめぐり合えたのは、始祖のご加護と、あなたには大いなる意思のお導きがあったからなのでしょう。これほど祝福された出会いはないと思いませんか?」
「あ、ああ、出会いに感謝を。このめぐり合わせは偶然ではない。正しきことを後押しする大いなる意思の見えざる手が導いてくれたのだ」
「でしたら、もっとうれしそうな顔をしましょう。あなたが正しいことをしにはるばる参られたのなら、わたくしたちは心から歓迎いたしますわ。さっ、あなたたちもこっちにいらして」
 そうして、カトレアは唖然としているキュルケとシルフィードを呼び寄せると、彼女たちの手をとってファーティマの手に重ねた。
「今はわたくしたち四人だけですけど、エルフと人間と、韻竜も、こうして手を結び合うことができるのだと証明されましたわ。ファーティマさん、手を繋げばどんな種族でもこんなに近い。とてもすばらしいことですね」
「う、うむ。い、いや! 形は形だ。実際の交渉や同盟が、そんな甘いものではないことくらい承知している」
 カトレアの優しすぎる笑みに、思わず納得してしまいそうになったファーティマは慌てて現実を盾に取り繕った。また、キュルケやシルフィードも、異なる種族がそう簡単に近くなれるものではないと、額にしわを寄せている。
 だが、カトレアはわかりあうことへの抵抗を除けないでいる三人の手を両手で包み込むと、諭すように語り掛けた。
「では、まずはここにいる四人から友情をはじめていきましょう。すてきだと思いませんか? ハルケギニアがどんな種族でも仲良く生きられる世界になる第一歩をわたくしたちの足で踏み出すんですよ」
 カトレアの言葉に、三人はしばらく呆然とするばかりだった。腹の探りあいと、どうしてもぬぐい得ない不信感をぶつけあっていたのに、カトレアの笑顔にはひとかけらの濁りもなかった。
 この人は、いったい? 返す言葉がとっさに浮かんでこない三人。そのうちのキュルケが、どうしてそんな無防備な笑みができるのかと目で尋ねているのに気づいたカトレアは、そっとささやくように答えた。
「キュルケさん、あなたの言いたい事はわかりますわ。けれど、思い悩んだところで生まれを変えられる者などいません。わたしも、何度も自分の存在が世界にとってあっていいものだったのかを思い悩みました。でも、その度に思い出すことがあるんです」
「思い出す、こと?」
「ええ、皆さん、わたしは実は昔、大病をわずらって長くは生きられないと言われていました。でも、ともすれば自ら命を絶ってもおかしくなかった日々で、わたしを支えて生かしてくれた友達は、必ずしも人間ではありませんでした」
 そう言うと、カトレアはシルフィードのほうを見た。するとシルフィードははっとして、いまさらながら気づいたように言った。
「そういえば、カトレアお姉さまからいろんな生き物のにおいがするの。こんなにたくさんの生き物のにおいを持ってる人、これまで見たこともないのね!」
 驚くシルフィードにカトレアは語った。自分の住むラ・フォンティーヌ領では、多くの動物や、中には怪獣までもが仲良く住んでいることを。
 シルフィードはそれで、自分がカトレアに対して不思議な安心感を持てていたわけを悟った。自分が鈍いからと言うだけではない、それほどに多くのにおいを持つカトレアは、人生のほとんどを自然の中で生きてきたシルフィードにとって、まるで故郷に帰ってきたかのように安らげる空気の持ち主だったからだ。
 そう、カトレアにはラ・フォンティーヌ領で世話をしてきた数え切れないほどの生き物のにおいが染み付いている。それも、そのすべてがカトレアに対して好意を持っていることを示す香りであったために、シルフィードは疑問に思うことすらもなかったのだ。
「最初は、思うように動けない自分の代償のつもりだったかもしれません。けれど、病気が治った後も、彼らはずっとわたしの友達でいてくれました。そして気づいたんです。生き物が生きていく上で、共に生きるべき相手は必ずしも同族でなければいけないということはないということに」
「きゅい、シルフィも誇り高い韻竜だけど、人間とは仲良くしたいと思うの。ねえ赤いの、前にお姉さまといっしょに、人間と翼人を助けたのを思い出さないかね?」
「そうね。あれは、タバサとわたしたちでやった初めての冒険だったわね。もう、あれからずいぶん経つのねえ」
 懐かしそうに、キュルケは思い出した。
 エギンハイム村での、翼人と人間のいさかいから始まったあの事件のことは忘れない。軽い気持ちでタバサの手助けをしようとして、そのまま宇宙人と怪獣を交えての大決戦にまでなったあの事件では、人間と翼人の両方が力を合わせなければ勝てなかった。そしてその後誕生した人間と翼人の夫婦の幸せそうな顔。思えば、自分たちは一度すでにいがみあっていた異種族をつなげることに成功している。増して、ルイズたちは自らエルフの首都に赴いて帰ってくるという前代未聞な冒険を成功させているではないか。
 異種族が共存することは、決して不可能ではない。その前例は、すでにたくさんあった。キュルケは、そのことを知っていたはずの自分を恥じて、しかしそれでも納得のいく答えを求めてカトレアに視線を移した。
「あなたにも、忘れてはいけない大切なことがあったのですね。ねえキュルケさん、さきほどの話の後で話そうと思っていたことがあるんです。ファーティマさんとシルフィードちゃんも聞いてください。確かにこの世界では、人間とそれ以外の生き物でバラバラに別れています。そして、わたしたちはそれぞれに簡単に相手を信用することのできない理由も抱えているでしょう。けれど、だからこそそのしこりをわたしたちの代で消し去っていこうと思うのです」
「しこりを……消し去る?」
「そうです。事はわたしたちだけの問題ではありません。わたしや、キュルケさん、ファーティマさん、シルフィードちゃん、それにあなたたちの知っているすべての人の子供や孫の世代にも関わっていくのです。率直に聞きますが、皆さんがいずれ子供や孫を持ったときに、友達を残してあげたいと思いますか? 敵を残してあげたいと思いますか?」
 その答えは決まっていた。キュルケもシルフィードも、ファーティマでさえ言葉には出さなくても顔には同じ答えを浮かばせている。
「確かに世の中には、どうしても理解しあえないような卑劣で邪悪な相手もいます。けれども、人間やエルフの多くの人はそんなことはないということを、あなた方はもう知っているでしょう?」
 カトレアの言葉に、三人はじっと考え込んだ。世に悪人は間違いなくいる。しかし、毎日を正しく一生懸命に生きている人はそれよりはるかに多くいることに。
 かつて、ウルトラマンタロウは言った。少ない悪人のために、多くのいい人を見捨てることはできないと。カトレアも、数多くの命と向き合ううちに、本当に邪悪な相手はほんの一握りだと思うようになっていっていたのだ。
「わたしはこれまで、多くの生き物の生き死にを見てきました。動物の寿命は、人に比べればとても短いものもあります。けれど、そんな彼らも世代が進んで仲間が増えていくごとに、生き生きと力強く生きるようになっていくのです。それで思うようになりました。わたしたちはみんな、次の世代に幸せをつなぐために生きているのだと」
「次の、世代に……?」
「そうです。過去になにがあったにせよ、わたしたちの後に続く人たちが平和に楽しく暮らせる世の中が来るのならそれでよいではありませんか。そうして積み重ねていけば、大昔のことなんか笑い話ですむ時代がいずれやってきます。その一歩を、わたしたちの手で進める。この上ない名誉と幸福だと思いませんか?」
 どこまでも純粋で優しいカトレアの笑顔を見て、三人はそれぞれ自分の中での葛藤を顧みてみた。だが、三人共に共通していたのは、いずれも今の自分たちのことしか考えていなかったということだった。
 対して、カトレアは次の世代のそのまた先。十年後、百年後、いいや千年後まで視野に入れて考えている。三人は、それぞれ思うところは違いはしたけれど、カトレアの思う生き方に比べたら、自分たちのこだわりが笑えるほど小さなものに思えて口元がほぐれてきてしまう。
 ただ、現実にハルケギニアの異種族同士はわかりあえずに六千年を過ごしてきている。それを忘れてはならないという風に、ファーティマは言った。
「お前の理想論、険しいという言葉では済まされない道だぞ」
「わかっています。今日初めて会ったばかりの相手を、すぐに信用できなくて当然ですわ。けど、今ここにいる四人はこれからきっといいお友達になれます。大丈夫ですよ、だってほら、誰の手のひらにも同じようにあったかい血が流れているんですから」
 カトレアの重ねた四人の手からは、ゆっくりとそれぞれの体温が相手に伝わっていった。それは、熱くも冷たくもない、生きているものの発する生命の暖かさ。人間もエルフも韻竜も、魔物でも幽霊でもないことを示すぬくもりを感じて、キュルケ、シルフィード、それにファーティマは、言葉に表すことは難しいけれど、自分の中でのなにかが変わっていっているような不思議で、しかし快い感触を覚えていた。
 人は、大きなものを見据えることで小さなこだわりを捨てることができる。そして、人と人は小さなこだわりを捨てることで友情を結ぶことができる。大自然の中で自由に心を育んできたカトレアの思いが伝わって、重なり合った手のひらに誰からともなく新しい力が加わっていった。


 けれども、カトレアは豊かな心を持っていても、無知な野生児ではない。キュルケやファーティマが持っていた警戒心が薄れたことを確信すると、その瞳に鋭い知性の光を宿らせてファーティマに問いかけた。
「ところでファーティマさん。聞けば、先ほどはキュルケさんが亡霊に襲われて危ないところを助けていただいたとか。しかし、キュルケさんには亡霊などに襲われる所以はありませんし、そもそも亡霊などというものに早々お目にかかれるとは思えません。もしかすると、本来亡霊に追われていたのはあなたなのではないですか?」
 その瞬間、ファーティマの背筋がびくりと震え、表情に明らかな動揺が見えた。
「そ、それは……」
「それに、最初から気になっていたのですが、サハラからトリステインへの大事な使者であるにも関わらず、あなたはたった一人でここまで来られたのですか? いくらエルフが人間に比べて強いとはいっても、普通なら水先案内や護衛のために、あと数人はいっしょにいておかしくないはず。ひょっとしてファーティマさん、あなたには他にまだ隠している役目があるのではないですか?」
 ファーティマはすぐに肯定も否定もしなかったが、その短い沈黙だけでもシルフィードはまだしもカトレアやキュルケは過不足なく察することができた。
 再び馬車の中に緊張が走る。しかし、対峙する姿勢に入りかかったキュルケとファーティマをカトレアはすぐに抑えた。
「落ち着いてください。キュルケさん、ファーティマさん。わたしは尋問をしようとしているわけではありません。ですがファーティマさん、わたしたちは今、大事な目的を持って旅をしています。もしかすると、この世界の行く末を左右するかもしれない重大な意味を持つ旅です。正直に言って、あまり時間はありません。けれども、できればあなたの望みもかなえてあげたい。ですからお互いに、隠し事はやめて打ち明けあいましょう。そうすれば、もっとあなたの助けにもなれるかもしれません」
 カトレアに諭すように告げられて、ファーティマは金髪を伏してじっと考え込んだ。カトレアはキュルケとシルフィードに視線を移し、話してよいですかと目で尋ねた。キュルケは一瞬躊躇したけれど、意を決して自分から旅の目的をファーティマに語って聞かせた。
 タバサのこと、ジョゼフのこと、異世界への扉を求めてラグドリアン湖に向かおうとしていることなどを、キュルケはすべて包み隠さず話した。そしてファーティマの反応をうかがうと、ファーティマは驚いたようではあったが、ふうとため息をついてからキュルケやカトレアを見返して言った。
「異世界へ、か。どうやら、わたしがお前たちとめぐり合ったのは本当に大いなる意思の導きらしい。わかった、わたしも全てを話そう。わたしのもうひとつの使命は、ある物をお前たちの仲間に届けることなのだ」
 ファーティマは、懐から小さな小箱を取り出して、その中身を見せた。
「なんですの? 見たことない形の、カプセル……かしら?」
 それを見てキュルケは首をかしげた。小箱の中身は、手のひらに収まるくらいの楕円形の金属でできたカプセルで、表面には焼け焦げた跡があった。
 しかし、よく見てみると表面には細かな文字でなにかが書いてあり、それに汚れてはいるけれど、文字の上にはなにやら紋章のようなものが描かれていて、キュルケはふと既視感を覚えた。
「先日、我らの聖地の近辺で発見されたものだ。そのときは、もっと大きなケースに入っていたのだが、すでに何者かに攻撃された形跡があった。ともかく、その字を読んでみろ」
「ううん、かすれてて見にくいけど……あら? このマーク、どこかで同じものを見たような。それに、この文字は……えっ!」
 キュルケは、カプセルに書かれていた文字を読んで愕然とした。それは、つたないトリステインの公用語で書かれていたが、その中に記されていた固有名詞や人物の名前は、キュルケにとってとてもよく知っているものだったからである。
「思い出したわ! この翼のようなマークは、確かタルブ村で……」

 だが、キュルケが記憶の淵から呼び戻してきたそれを口にする前に異変は起こった。

 突如、爆発音とともに激震が馬車を襲い、中にいた四人はもみくちゃにされた。頭をぶつけたシルフィードが悲鳴をあげ、馬車を引いていた馬の悲鳴もそれに重なって響く。
 高級馬車の車軸でも吸収しきれない揺れにより、車内のランプが落ちて割れ、灯油がぶちまけられて刺激臭が鼻をつく。だが、そんなものに構っている者は一人もいなかった。それぞれが多寡は違えども戦いの中を潜ってきた経験を持つ者たちである、今の不自然な揺れと爆音が、自分たちを危機へと追い込む悪魔の角笛だということを理解していたのだ。
「なに! 今の爆発音は、まさか」
「そ、外なのね! うわっ! 森が燃えてる。きゅいぃぃぃ! みんな、空を見てなのね!」
 頭のたんこぶを押さえながら窓から外を見たシルフィードの絶叫。続いて窓を開けて空を見上げた三人の目に映ってきたのは、空に浮かぶ三十メートルはあろうかという巨大な鉄の塊だったのである。
 なんだあれは!? 異様すぎる浮遊物体の巨影に、キュルケやシルフィードは唖然とし、まさかジョゼフの放った刺客かと身を固めた。
 しかし、それはジョゼフの刺客などではなかった。百メートルほど上空にとどまり、こちらを見下ろしてくるような鉄塊を見て、ファーティマが忌々しげに吐き捨てたのだ。
「くそっ! もう追いついてきたのか!」
「なに? あなたあれを知ってるの」
「今の話の続きで話そうと思っていた。サハラを出てからこれまで、ずっとあいつに付け狙われていたんだ。共にアディールから出た仲間はみんなあいつにやられた! まずい、攻撃してくるぞ、飛び降りろ!」
 その瞬間、鉄塊に帯状についている無数の赤いランプが断続的に輝き、ランプからそれぞれ一本ずつのいなづま状の赤い光線が馬車に向かって発射された。七本の光線は一本に集約して馬車に直撃し、馬車は火の塊になって飛び散る。
 だが、ファーティマの警告が一歩早かったおかげで、馬車から飛び降りた四人は間一髪で無事だった。
「きゅいいい、し、死ぬかと思ったのね」
「あと一瞬逃げ出すのが遅れてたら、わたしたちは丸焼けだったわね。ミス・カトレア、大丈夫ですの?」
「ご心配なく、こう見えて野山を駆け回るのが日課ですから。それよりも、ファーティマさんにお礼を言わなければいけませんね」
「勘違いするな。せっかくの大いなる意思の導きを台無しにしては冒涜だからだ。だがそれも、生き延びれたらの話ではあるが……下りてくるぞ! 気をつけろ」
 燃える馬車の炎に照らされる四人の前に、空飛ぶ鉄塊がゆっくりと下りてきた。敵意を込めて、鉄塊を睨みつける四人。その眼前で、鉄塊は真の姿を現していく。

 まず、上部の穴から頭がせり上がってきた。洗面器を裏返したようなツルツルの表面に、かろうじて目と口だと見えるくぼみが三つついている。
 続いて、左右から腕が生え、下部から足が生えて地面に着地した。その胸元には、先ほど破壊光線を放ってきたランプが赤く輝いている。この人型の巨大ロボットこそが鉄塊の正体だったのだ。

「きゅいい! で、でっかい人形のおばけなのね!」
「なんて大きさ。こんなガーゴイルがこの世にいたなんて」
「いえ、これはガーゴイルじゃないわ。きっと、以前にトリステイン王宮を襲った機械竜と同じもの。そして、あのときの亡霊といい、そんなことができるものといえば」
「そういうことだ。こうなったらお前たちも一蓮托生だ。奴の思うとおりにさせたら、砂漠の民も蛮人もすべて滅び去る。だから知らせねばいかんのだ。ヤプールが再び動き出したのだということを!」

 聞きたくなかった忌まわしい侵略者の名が吐き捨てられ、巨大ロボットは電子音と金属音を響かせながら動き始めた。

「モクヒョウヲカクニン。ケイコクスル、タダチニコウフクシテ、ソノソウチヲアケワタシナサイ、サモナケレバ、キミタチゴトハカイスル」
「断るわ!」

 シルフィードがドラゴンに戻り、キュルケ、カトレア、ファーティマが魔法攻撃の体制に入る。
 燃える馬車の炎に照らされ、逃げ去っていく馬の悲鳴を開幕のベルとして戦いが始まった。


 だが、その一方で、始まったこの戦いを離れたところから見守っている目があった。
「あれはガメロット……確かあれはサーリン星のロボット警備隊に所属するロボット怪獣だったはずだが、やはりロボットだけでは星を維持できなくなってヤプールの手に落ちたか。しかし、このシグナルに従って来てみたが、リュウめ、相変わらず荒っぽい作戦を思いつくやつだ」
 彼の手には、激しいシグナルを発し続けているGUYSメモリーディスプレイがあった。そして、ファーティマの持つカプセルにもまた、メモリーディスプレイに記されているのと同じ翼のシンボルが描かれていたのだ。


 続く



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