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第五十三話「コスモスペースから来た男女」


ウルトラマンゼロの使い魔
第五十三話「コスモスペースから来た男女」
巡礼怪獣ニルワニエ
共生宇宙生命体ギラッガス 登場



 地球人、平賀才人がハルケギニア人ルイズに召喚されたのと時を同じくして来訪して以来今日まで、
人々に牙を剥く怪獣、宇宙人を驚異の超パワーで粉砕してきた我らがヒーロー、ウルトラマンゼロ。
 しかし、ハルケギニアを守るスーパーヒーローはゼロだけではない。彼の率いるチーム
『ウルティメイトフォースゼロ』の仲間たち――ミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤーに、
一時はウルトラマンガイアが時空を超えて駆けつけたこともあった。
 今回はいつもと趣向を変えて、そんなゼロ以外のヒーローが直面した事件と、その中での活躍の一部を紹介しよう。

「もうッ! お姉さまったら、大人しすぎるのね! そんな風だから、あの小憎たらしい従姉姫に、
あんな好き放題されちゃうのよ!」
 ここはトリステイン……ではなく、ガリア王国のアルデラ地方。ゲルマニアとの国境沿いを埋め尽くす
“黒い森”と呼ばれる鬱蒼とした大森林に覆われた土地の上空を、シルフィードがタバサを乗せて飛んでいた。
今の台詞は、シルフィードが発したものだ。
「そりゃ、お姉さまの境遇はこのシルフィも理解はしているのね。でもね! ちょっとは文句とか
つけてよね! わたしはあのバカ従姉姫にいじめられるお姉さまを窓から眺めて、鬱っているのね! 
ちょっとはやりかえすのね! きゅいきゅい!」
 ここでタバサの現状を少しばかり説明しよう。以前にも語ったが、タバサの正体はガリア王族のシャルロット姫。
しかし伯父ジョゼフの戴冠と前後して父シャルルが暗殺。それが不幸の始まりとなり、シャルロットはそれまでの
日常を全て奪われてしまった。今は紆余曲折あってガリアの裏組織『北花壇警護騎士団』の第七号『タバサ』となり、
いずれ心を狂わされた母を取り返す、そのためだけに仇敵ジョゼフの配下となっているのである。
 ジョゼフは己の娘イザベラを通してタバサに、まるで挑戦をしているかのように様々な難事件の解決を命じ、
タバサはその都度ガリアの領土を飛び回っている。今回もその一環。それだけならまだいいが、シルフィードが
怒っているのは、そのイザベラのタバサへの仕打ちだ。
 イザベラは魔法の才能に恵まれたタバサと反対に、魔法の腕が低い。メイジの世界で魔法の実力は絶対であり、
イザベラは昔からタバサへの強い嫉妬心を抱いていた。そして王女となって優位を得た途端に、嫉妬心を剥き出しにして
呼び出す度にタバサを虐待するのである。今日は侍女にゴミを投げつけさせるという、あまりに屈辱的な仕打ちを働いた。
……が、『タバサ』となって以来感情を失ってしまったかのようなタバサはそれにすら何の感情も示さず、ひと言の
文句もなかった。シルフィードがイザベラの所業より、そのタバサの振る舞いに頭を痛めるくらいであった。
 ちなみに使い魔シルフィードの正体は、人々の間では既に伝説となった古代の幻獣、人間並みか
あるいはそれ以上の知能を有する風韻竜イルククゥである。しかしそれを明かすと色々とまずいことになるので、
タバサはこの子供の韻竜に風の精霊の仮の名を与え、人前でしゃべらないよう厳重に言い聞かせている。
他人に聞かれてしまった時には、ガーゴイルということにしてごまかすことにしている。
 話を戻そう。シルフィードがいくら文句をつけようとも、やはりタバサは表情一つ変えない。
遂にはシルフィードが根負けした。
「……まぁいいのね。それより、次はどんな厄介事を言い渡されたの?」
 シルフィードが質問して、ようやくタバサは口を開いた。
「翼人の退治」
「翼人って、シルフィと同じ“精霊の力”を扱うあの翼人? それはまた大変な役目を押しつけられたのね」
 任務の詳しい内容は、以下の通り。
 アルデラ地方にあるエギンハイム村は、主に切り倒したライカ欅という木で生計を立てるきこりの村だ。
しかし近頃、森に原住する亜人、翼人との仲が急速に悪化し、既に衝突も何度か起こっているという。
戦況は一進一退で、タバサはもちろん村人側の応援として派遣されるのである。
 そこまで聞いて、シルフィードは一つ疑問を挙げた。
「一進一退って……魔法の力を持たない人間じゃ、翼人に太刀打ち出来ないと思うんだけど」
「わたしもそう思う」
 翼人はメイジの魔法とは異なる先住魔法――彼らの言うところだと『精霊の力』を扱う。
自然そのものを操作する術で、周りの環境に左右されるものの、基本的にメイジの魔法よりも
様々な部分で優れている魔法だ。よほど対策を練らない限り、魔法自体使えない平民では
勝てるものではない。
 なおかつ、翼人が一人や二人ならまだしも、集団だという。エギンハイム村側には、どうあがいても
勝ち目はないだろう。
「それなのに、その村は一体どんな手を使ってるのかしら?」
「行けばわかる」
「それもそうなのね。それじゃ、スピードを上げるのねー!」
 いささか奇妙なところのある今回の任務。だがタバサに断ることは出来ないのだ。ならば少しでも
早く終わらせてあげようと、シルフィードは飛行速度を上昇した。

 さて、エギンハイム村の離れ、ライカ欅の森の入り口へと到着したタバサとシルフィードが目にしたものは、
まさしく『戦場』であった。だが自分たちの知る『戦場』とはあまりに異なるので、タバサらは思わず目を見張った。
「撃て撃てー! あの鳥どもを一匹残らず撃ち落とせー!」
「皆殺しにしろー!」
 きこりであろう男たちの武器は、斧や弓矢……ではない。銃口からレーザー光線が飛び出る拳銃であった。
しかもハルケギニアで一般に流通している火縄銃のような武骨な外観ではなく、どんな技術で製造したのか
わからないほどに綺麗に磨かれていた。ハルケギニアに次の言葉はないが、『近未来的』という言葉がよく似合う。
 そして名前の通り鳥の如き翼を生やした亜人、翼人側の攻撃も、風や樹木を操る先住魔法ではなく、
レーザーを発する鋼鉄の棒で行っていた。両陣営はそれらの武器で撃ち合いをしているのだ。
 魔法が存在するファンタジー世界のハルケギニアだが、この一画だけSFの世界のようであった。
「な、何なに!? これは何事なの!?」
 木々の間に隠れて様子を窺っているシルフィードは、当然混乱していた。目の前に広がっているのは、
予想の斜め上を行き過ぎる光景だ。
「彼らの武器……」
 タバサも声もなく驚いていたが、比較的冷静に状況を分析していた。
 まず注目したのはもちろん、両者の武器。あれらと同じものはハルケギニアのどこにも存在しない。
……いや、今は似たものがハルケギニアとは『別の場所』から持ち込まれて存在するようになった。
それはすなわち、才人が使っている変な銃だ。ならば両者の銃は……。
 そしてもう一つ。両陣営に、それぞれの味方を鼓舞……と言うより焚きつけている者が一人ずついた。
「そこだ! 左下を飛んでいる奴の動きが悪い! そこから切り崩すんだ! 鳥類に人間の力を思い知らせるんだ!」
「負けてはダメよ! 返り討ちにしてあげなさい! 地面を這いずり回る虫に負けるなど、あってはならないことよ!」
 村人側は、首に青いスカーフを巻いた男。翼人側は、黒い短髪の女の翼人だ。
 タバサは争い合っている二つの陣営の、その二つの共通点を気に掛けた。
「うッ!? くそッ!」
 ほどなくして、争いに変化が起こった。村人側の指揮者らしき男の銃がカチッカチッと
音を出すだけで光線を撃たなくなった。弾切れのようだ。
「おい、誰か新しい銃を……うわッ!」
 男は新しい銃を求めるが、振り返った折りに運悪く木の根につまづいてしまい、バッタリと転倒した。
大きな隙を晒した敵を、翼人の一人が撃ち抜こうと狙う。
「うわぁぁぁッ!」
「あの人、危ないのね!」
 思わず声を荒げるシルフィード。タバサが反射的に身を乗り出したが……それより早く
戦場に飛び込んだ何者かが男を引っ張り、光線から逃れさせた。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ……」
 男を救った麗しい顔立ちの青年に目を留めるタバサとシルフィード。二人は青年に見覚えがあった。
ウェザリーの劇団に参加した美青年ミラー……その正体はミラーナイトだ! それがどうしてこんな場所に?
「ふッ!」
 ミラーは懐から取り出した楔形の手裏剣を複数飛ばし、今にも光線を撃とうとしていた者の手より
武器を弾き飛ばした。人間、翼人関係なく。
「な、何するんだ!」
 助けられた男が思わず声を荒げる。両陣営は驚いてミラーに注目し、戦いの手を止めた。
「私は旅の者です。近くを通りすがった際、この騒ぎを聞きつけて駆けつけました。一体あなた方に
どんな事情があるかは知りませんが、こんなに激しい争いごとは感心できません。今のところは、
私に免じて戦いをやめてもらえないでしょうか」
 ミラーはそう説明して両陣営に停戦を勧告した。普通なら突然割り込んだ者の意見など
聞き入られないだろうが、ミラーは静かながらかなりの迫力を全身から放っていて、
人間も翼人も思わず気圧されていた。
「何だ、あんたは! いきなり乱入して勝手なことを……!」
 ただ一人だけ、村人側で戦いを駆り立てていた男が異を唱えようとした。が、ミラーの姿を
よく見つめると、その口が急につぐむ。
「なッ……!?」
「おや……どうかされましたか?」
 ミラーが視線を返すと、男は気まずそうに顔をそらした。何故か、翼人側の女も同じ反応を示していた。
「その人の言う通りよ! これ以上争わないで!」
「みんな、お願いだ! 武器を下ろして!」
 ミラーの意見に賛同する者がそれぞれの陣営に現れた。翼人側は亜麻色の髪の美しい少女、
村人側は線の細い少年だ。
「アイーシャさま!」
「ヨシア!」
 翼人たちと村人たちは、それぞれをそう呼んで困惑した。そこでようやく、タバサが場に割って入る。
「わたしはガリア花壇騎士、タバサ。ここは、わたしが取り仕切る」
「お城の騎士さま!?」
「騎士さままでいらしたのか!」
 混乱を起こしていた村人側は、タバサの鶴の一声で武器を収めた。それにより翼人も撤退し、
争いは一旦中止された。

 その日の夜、タバサは村長の家の一番の客間で、ミラーと向かい合って対話をした。まずはミラーから話し出す。
「まさか、こんな場所でタバサさんと会うとは思いませんでした。偶然ですね」
「わたしは、『シュヴァリエ』としてこの村の問題を収めに来た。あなたはどうして?」
「実はこの付近で怪光を見たという目撃談が相次いでいることを、グレンが巷の噂で聞きつけてくれましてね。
侵略者がまた何かの陰謀を張り巡らしているのでは、と私が調査に来たのですよ」
 説明したミラーは、ふぅとため息を吐く。
「しかし、この村は大分厄介なことになっているようですね……。同じ土地に住む人間同士で抗争なんて」
 村人から聞いた話によれば、翼人がきこりの仕事を邪魔するようになって木材が取れなくなってしまったという。
そうなれば、生計を木材の出荷に依存するこの村はおしまいだ。その理由なら、村人が翼人に攻撃するのも分からなくはないが……。
「翼人は亜人。人間と呼ぶのは、変」
 タバサが突っ込むと、ミラーは肩をすくめた。
「そうでしょうか? 私からしたら、両者にそれほど違いがあるとは思えないのですけれどね。
何せウチのチームは、二次元人やロボット、燃える人間が同居してますし」
 などと冗談を言っていると、タバサはドアの向こうに人の気配を感じ、そちらへ尋ねかけた。
「だれ?」
「ぼ、ぼくです……。ヨシアです」
 昼間に戦いに割って入った少年だ。すると、ミラーが席を立って自分からヨシアを招いた。
「ちょうどよかった。君にいくつか話を聞かせてもらおうと思っていたんです。さぁ、どうぞ入って。
タバサさん、いいですよね?」
「構わない」
「え、えっと……あなたは?」
 快く迎えられたヨシアは逆に及び腰になり、タバサと対等に話すミラーが何者か尋ねた。
「私はそちらの騎士さまの友人です。それより、君に質問があるんです。答えてもらえますか?」
「は、はい……! ど、どうぞ、何なりと」
 部屋の中に通したヨシアに、ミラーが質問を始める。
「まず、この村の皆さんは翼人の方々との争いが、向こうが仕事の妨害をするからだと説明してましたが、
それは正確なのでしょうか? 比較的冷静な君の意見を知りたいのです」
 すると、ヨシアは熱を込めて語り出した。
「それは大嘘です! 今までは翼人と上手く折り合いをつけてたんですけど、みんなが彼らの住まいのところの
木を奪おうとし出したから、あんな争いが始まったんです……」
 うつむき加減になって、下唇を噛み締める。
「本当、みんな馬鹿だよ……。せっかく春先の問題が解決したのに、また争いを自分たちから起こして……」
「春先の問題? それはどういったものでしょうか」
 興味を示したミラーに、ヨシアが順序立てて答える。
「翼人は季節ごとに巣を作る木を替えるんです。特に春は家族が増える季節だから、幹の太い
ライカ欅を選ぶんですけど、村のみんなは翼人の選んだ欅が高く売れそうだって、取り合いに
なりかけたんです。他にも木はたくさんあるのに、みんな欲張りで恥ずかしいです……」
「なるほど。ではその時は、どのように解決したんでしょうか?」
「それが摩訶不思議なことなんですけど……一触即発になりかけた時に、突然樹木みたいな
怪物が現れまして。こんな見た目です」
 ヨシアが取り出した木のレリーフには、太い前脚はあるが後ろ足はない、大柄な怪獣の姿が彫られていた。
 この場の誰も知らないことだが、この怪獣の名はニルワニエという。詳しいことは何も明らかになっていない、
4メイルほどの中型怪獣である。
「翼人も正体を知らないこの怪物を、初め俺たちは不気味がって追っ払おうとしたんですけど、
怪物はどれだけ攻撃を受けても全然反応しないで、ライカ欅のところにたどり着いて一体化したんです」
 ヨシアの脳裏に当時の光景、ニルワニエが村を横断してライカ欅の元にひたすら向かう姿が描かれた。
「そしたら不思議なことに、欅が何本も急成長して林みたいになったんです! 俺たちが十分な量を
伐採しても余るほどになったんですよ。信じられないかもしれないけど、本当にあったことです」
「それで、翼人も巣を作る場所を確保できたんですね」
「はい。お互いこの怪物を、ブリミルさまのしもべの救い主とか“大いなる意思”の遣いとか
呼んで崇めるほどになりました。なのに……あの行商人が来てからおかしなことに……」
 話は核心に近づいたようだ。ミラーが先を促す。
「あの行商人というのは、スカーフを巻いていた人ですね。彼は雰囲気がこの村の人とは
大きく違いましたが、何者なのでしょうか?」
「詳しくは分かりません。行商人とか言うあいつは、突然フラリと村にやってきたと思ったら、
ライカ欅をもっと伐採すれば、村は一層繁栄すると演説を始めました。みんなが、
翼人と無用な争いを起こしたって勝てないし仕方ないと言うと、あいつははるか東方の
武器だという妙な銃を配って、それさえあれば翼人にも勝てると主張しました……」
 語るヨシアの表情がどんどん暗くなっていく。
「実際、あいつの持ってきた銃はとんでもない威力でした。それでみんなもすっかり乗せられて……
こんな風になってしまったんです……」
「ありがとう、あの武器の出所がよく分かりました。しかし、翼人もまた妙な武器を使っていましたね。
そちらの事情はご存知でしょうか?」
「それについては、わたしがお答えします」
 急に窓の向こうから、人の声がした。振り向くと、窓の外に一人の翼人の少女が浮遊している。
「アイーシャ!」
 窓を開くヨシア。彼女はヨシア同様、戦いを止めた翼人の少女アイーシャであった。
 随分と仲睦まじい二人。聞けば、二人は恋仲だという。そのことを祝福するミラー。
「それは素晴らしい! 異なる種族で愛情の絆を結ぶのは、とても良いことです。が……今の状況は、
あなた方には心苦しいでしょうね」
「おっしゃる通りです……」
 アイーシャは翼人側の経緯を、ミラーとタバサに伝える。
「人間たちが変な銃を手に攻撃してくるようになったのと前後して、翼人の同胞がわたしたちの元に
舞い込んできました」
「激励を飛ばしていた女性ですね」
「ええ……。彼女は、人間が恐ろしい武器を持って私たちを滅ぼそうとしている、私は対抗できる
武器を持ってきた、これで欲深な人間を返り討ちにしましょうと主張して……。わたしは反対してるのですけど、
みんな子育ての大事な時期に今更巣は変えれないからと、彼女の言うままに……」
 ヨシアと同じく悲嘆に暮れるアイーシャ。そして二人は、ミラーとタバサに必死に頼んできた。
「お願いです! 無理を言うのは承知しますが、どうにかわたしたちの争いを止めて下さい! 
争いは日々激しくなって、既に怪我人が続出してます。このままじゃ、大変なことになってしまうと思うんです!」
「俺からもどうかお願いします! お礼できることなんて何もないけど……この通りです! どうかッ!」
「……少し、相談させて」
 タバサは断りを入れて、ミラーと囁き合う。
「どう思う?」
「やはり、よそからやってきた行商人という男性と翼人の女性が怪しいですね。森に囲まれた小さな村で、
ハルケギニアにない武器を気前よく配り、戦いを煽る男性。それと同時にどこからともなく現れ、
徹底抗戦を叫ぶ女性。……両者には確実に裏があるでしょうね」
 と話し合っていると、ドアの外から人の足音と呼び声が聞こえた。
「ヨシア、どこだー!? すいません騎士さま、ウチの馬鹿がお邪魔してないでしょうか?」
「いけない、サム兄さんだ! アイーシャ、早く逃げて! 兄さんに見つかったらまずい!」
「え、ええ」
 慌ててアイーシャを窓から逃がすヨシア。窓を閉めた直後に、戦いで村人の中心を果たしていた男、
サムがドアをノックし、ミラーに迎えられた。
「どうも、夜分遅くに失礼します。……あッ、ヨシア、こんなところにいやがったか! 騎士さま方に
失礼を働いてねぇだろうな!?」
「そ、そんなことないよ。俺は春の出来事をお話ししてただけで……」
「いいから、とっとと消えな! 俺はこれから騎士さまと話があるんだ。お前は邪魔だ!」
 ごまかしたヨシアを追っ払ったサムは、タバサたちにこう告げた。
「騎士さま……実は、さっき行商人が夜の森の中に忍び込んでいきました。すいませんが、
奴の後を追跡して正体を確かめてきてもらえないでしょうか?」
 その頼みに、タバサもミラーもやや驚かされた。
「あなたは、村の中心でしょう? どうしてそんなことを……」
「奴に怪しいところが多いこと、奴が来てから村がおかしくなってるってのは俺にも分かります。
けど、俺は村長の息子だから、村人たちの味方にならなくちゃならねぇんです。それで、
弟の恋路も応援できねぇで……」
 サムは一見荒くれ者のようだが、実際は聡明で心優しい人間であるようだった。
「あんなすげぇ武器を持ってきた、やばい奴だ。こんなこと、他の人間には頼めない。どうか、お願いします」
 深々と頭を下げたサム。ミラーはタバサと目を合わせ、コクリとうなずいた。
「分かりました。私たちが、この争いの真実を暴き出しましょう」

 そうしてミラーとタバサは、行商人が入っていったという入り口から森の中へ忍び込んでいった。
シルフィードは目立つから留守番だ。
「こっちから、人の気配がしますね……」
 ミラーが超感覚を発動して気配を探り、タバサを先導する。二人が草木をかき分け進んだ先に、
二人の男女がいた。問題の行商人と、翼人の女だ。彼らは空を見上げて、視線の先の大きな
発光体に向かって口を開く。
「……もうやめにしないか? 争いは十分に大きくなった! これ以上続けても、変わるものはないだろう」
「実験はこの辺りで終わりにして、次の実験に移りましょうよ」
 発光体は強烈な光を放っていて、その正体は見通せないが、男女へ言葉を返す。
『馬鹿を言うな! 徹底的にやらねば、十分なデータは取れん! 実験はどちらか片方か、
もしくは両方が全滅するまで続行するのだ!』
「な、何もそこまでする必要は……」
『黙れ黙れぇ! もしや貴様ら、あんな蛆虫と羽虫どもに情が湧いたのではあるまいな!? 
だからそうかばうのか!』
「そ、そんなことはないわ」
 慌てて目をそらす女。
「やはり彼らはつながっていたようですね。しかも、後ろで別の何者かが糸を引いている」
 ミラーがタバサに囁いた。
『ともかく、実験の中断は認めん! 言っておくが貴様ら、妙な気は起こさないようにすることだ! 
帰る場所をなくした貴様らが我々を裏切ればどうなるか、分からんとは言わせんからな!』
 一方的に告げた発光体の光が徐々に消えていき、空に何もなくなった。男女は大きく肩を落とし、
踵を返してそれぞれ村と森の奥へ帰っていこうとする。
 その時にミラーとタバサは、彼らの前に躍り出た。二人の姿を認めた男女はギョッと目を剥く。
「お、お前たちは!」
「まさか、今のを見てたの!?」
「ええ」
 きっぱりと肯定するミラー。そうしたら、男女は殺気を剥き出しにした。
「知られたからには仕方ない……死んでもらうッ!」
 男と女の姿が一瞬光り輝き、全く別の姿に変貌を遂げた。
 男の方は胸に大きな傷跡を持つ、青みのかかったマネキンのような無機質な容姿の怪人。
女の方は、鋼鉄の羽と尾だけが構成パーツという実に奇妙な怪物となった。
『はぁぁぁッ!』
 怪人は腕から、羽の怪物は飛び回りながら模様より光線を放ち、それぞれミラーとタバサを狙った。
だが予測していた二人は身を翻して攻撃をかわす。
『ふッ!』
 ミラーは等身大のミラーナイトの姿に変わり、ミラーナイフで怪人に反撃した。怪人は足に
ナイフがかすめてガックリ膝を突く。
『ぐぅッ!』
 羽の怪物は木々の間を素早く飛び回ってタバサを撹乱するが、ミラーナイトには通じずに
同じようにミラーナイフを食らった。よろめいてスピードが落ちたところにタバサの冷気を受け、
羽の先端と光線の発射口が凍りついて不時着する。
『くそぅッ、強い……!』
 毒づいた怪人をミラーナイトが取り押さえ、尋問を行う。
『案の定、この星の人間ではありませんでしたね。しゃべってもらいましょう。あなた方は何者ですか?』
 観念した怪人は、かすれた声で自分たちの正体を吐露した。
『俺たちはギラッガス……。宇宙をさすらう種族の、追放処分を受けた身だ……』


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