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第四十九話「秘密文書への挑戦」


ウルトラマンゼロの使い魔
第四十九話「秘密文書への挑戦」
牛鬼怪獣ゲロンガ 登場



 ラ・ヴァリエール公爵領から強引に脱出し、学院に帰還したルイズたち。そのまま遠征軍従軍の日を
待つだけかと思われたが、その前に、学院を突然訪れたアニエスからある役目を頼み込まれた。

「極秘公文書館?」
 ルイズの部屋で、アニエスから聞かされた内容を才人が復唱した。アニエスがうなずく。
「うむ。この学院の地下に、極秘扱いの公文書を保管する場所がある。わたしはそこの資料を
閲覧する許可を、女王陛下から頂いた。ところがオスマン学院長は、「鍵を解除せよという
命令は受けていない」などと言って、入り口を開けることを拒否した」
「姫さまが許可したのに?」
 ルイズが疑問を持つ。
「オスマン氏が言うには、危険だからだそうだ。千年以上昔に造られた施設故、謎が多い。
防犯用の強力な魔法も掛けられているので、不用意に入ると命に関わる。わたし一人が
立ち入ることは認められない……と」
 オスマンの言い分を語ったアニエスは、ギリッと奥歯を噛み締めた。
「わたしは騎士だ! 危険など恐れぬ! それなのにオスマン氏は……!」
 苛立つ彼女に、才人が肝心なことを尋ねかける。
「アニエス、そんなに見たい資料って、何なんだ?」
 それにアニエスは、苦渋の表情で答えた。
「それは……私の仇に関するものだ」
「仇!?」
 才人とルイズの驚く声がそろった。どういうことか、アニエスは語る。
「わたしの故郷、ダングルテールは二十年前、新教徒の反乱を名目に焼き払われた。だが反乱とは、
リッシュモンがでっち上げたものだった。唯一生き残ったわたしは、故郷の敵討ちを支えに生き、
銃士隊の隊長にまでなった」
「でも、リッシュモンはあなたが討ち取ったじゃない。だったら、もう敵討ちは終わったんじゃないの?」
 ルイズの問い返しに、首を横に振るアニエス。
「まだ実行犯が残っている。そいつらの正体だけが、どこを調べても掴むことができなかったのだ。
しかし、トリステインの表に出せぬものも全て保管されているここの公文書館ならば、その記録も
残ってあるはずだ。そこをどうしても調査したい」
「それって、今やらなきゃいけないのか?」
 今度は才人の質問。アニエスは肯定する。
「遠征が始まり、我が軍がアルビオンの港を制圧したら、女王陛下も前線に赴く。当然わたしも
お供することになる。それまでにこの件を片付けておきたいのだ」
「姫さまが前線に!?」
 驚いて声を上げるルイズ。
「数万の兵に命がけの戦いを命じる以上、自分だけ安全な場所にいる訳にはいかぬとのお考えだ」
「姫さま……」
 アンリエッタの豪胆ぶりに改めて驚かされるルイズたち。国の長が前線に出ることは、
兵の士気の向上につながるが、当然危険なので普通は行われないことだ。それなのに、この型破り。
 そういえば、リッシュモンの大捕り物の際にアンリエッタは前にグレンとひと晩語り合っていた。
その時にグレンが何か言って、その影響なのかもしれない。
「ここからが肝要なところなのだが、ラ・ヴァリエール殿、公文書館に入るために一つ、頼みがある」
「な、何?」
 不意に話を持ちかけられ、思わず強張るルイズ。
「公文書館の扉は、厳重な魔法のロックが掛けられていて、わたしではどうやっても解くことが出来ない。
だが、学院の教師たちはオスマン氏が根回ししたのか、誰も協力してくれん。故に、あなたの『虚無』の
力を貸してもらいたい」
「わ、わたしの『虚無』?」
「確かラ・ヴァリエール殿の『虚無』には、魔法の効果を無条件で解くものがあったはずだ。
それを使えば、公文書館に入ることが出来ると思う。どうか、力を貸してほしい」
 アニエスは頭を下げて頼んだ。ルイズは一瞬悩む。
「確かに、『ディスペル』なら魔法のロックも解けるかも……。分かったわ。姫さまの許可もあるし、
上手くいくかどうかは分からないけど、協力する」
「ありがたい。感謝する」
「お、おいルイズ。本当にやるつもりか? 学院長は反対してるんだぞ」
 才人が異論を挟むと、ルイズに言い返された。
「アニエスはわたしたちの仲間よ。そのたってのお願いを、無碍にするのも忍びないじゃない」
「そうだけどさ……」
 逡巡する才人。確かにルイズの言う通りだが、アニエスの目的は言い換えれば、復讐。
それに手放しに協力していいものか……と考える。
 復讐で思い出すのが、ウルトラマンヒカリ。彼は守ろうとした惑星アーブをボガールに
滅ぼされた復讐に取りつかれ、命をすり減らした挙句、一時は本当に命を落とす羽目にまで
なったと歴史で学んだ。アニエスには、そんな修羅の道をたどってほしくはない。
「なぁ、アニエス……もしその実行犯が判明したら、どうするつもりなんだ? 仮にその犯人が
とっくに足を洗ってても、復讐を果たすつもりなのか?」
 才人に聞かれ、アニエスは少し考えてから、こう答えた。
「どうするか……か。そこまでは、まだ考えていない。しかし、必ず何らかの形で我が故郷の無念を
知らしめてやりたいとは思う」
 と言うアニエスを、才人はまっすぐににらんで、はっきりと告げた。
「じゃあ、約束してほしい。もし犯人が、すっかり心を入れ替えてるようなら、不必要な復讐は
しないでくれ。俺は、お前の無念を晴らすことには協力するけど……私怨の殺人には協力できない。
ルイズは?」
「……わたしもよ。いくら姫さまの命令だったとしても、殺人の幇助は出来ないわ」
 二人の要求に、アニエスはしばし黙っていたが、やがてうなずいた。
「分かった……。その約束、騎士の誇りに懸けて守ることを誓おう」
「ありがとう」
 大事な約束を取りつけると、早速ルイズと才人はアニエスに連れられて、極秘公文書館の
入り口のあるところまで移動していった。

 極秘公文書館の入り口は、非常に隠された場所に存在していた。女子トイレの用具入れの壁が
隠し扉になっており、その奥の階段を下りた先にあったのだ。
「すごく手が込んでるんだな……。こんなにして隠すくらいなら、処分しちゃえばいいのに」
 才人がつぶやくと、アニエスはこう返した。
「公文書である以上、みだりに捨てることは出来ん。しかし、万が一にも他者の目が触れてはいけない。
故に普段は政府と無関係で、かつ日常的に厳重な警備が施されている魔法学院の地下に保管されることになったという」
「ふーん……そんなものなのかな」
 アニエスがカンテラで、公文書館の入り口の扉を照らす。それには、三つの魔法のロックを
表すパネルが嵌め込まれていた。
「これだ。ラ・ヴァリエール殿、解除は出来るだろうか」
「ちょっと待って。……三つの魔法が複雑に絡み合うことで強固な鍵になってるけど、魔法自体は
強力なものじゃないみたい。これならどうにかなりそうだわ」
 ルイズが杖を抜き、扉に『ディスペル・マジック』を掛けた。すると簡単にパネルが開き、鍵が解かれる。
「やったじゃん、ルイズ!」
「ふっふーん。このくらい軽いものよ」
「感謝する。ここから先は、わたし一人で行く」
 アニエスはそう言って扉に手を掛けるが、それを才人が呼び止めた。
「いや、俺たちも行くぜ。乗りかかった船だ」
「しかし、危険が……」
「危険があるなら、なおさら一人で行くべきじゃないわ」
 ルイズに説得され、アニエスは感謝の意を示す。
「……すまん」
「構わないさ。じゃあ、行こうぜ」
「どこへ行くんだね?」
 いざ三人で入ろうとしたが、今度は背後から、また別の人間に止められた。
「コルベール先生!」
 振り返ると、いつの間にかコルベールが階段を下りてきた。
「アニエス君に諦める気配がなかったので、気になって見に来たのだ。アニエス君、学院長は反対したはずだ」
「腰抜けどもの指図など受けぬ!」
 コルベールは制止を掛けたが、アニエスはそれを振り切り、公文書館の中へ駆け込んでいってしまった。
「アニエス!」
 それをルイズと才人も追いかけていく。
「君たち! 待ちなさい!」
 コルベールも三人の後を追い、やむなく地下公文書館に入っていった。

「ダングルテールの仇!?」
「はい……」
 公文書館までは、長く暗い通路が延々と続いていた。才人とルイズは道すがら、コルベールに
アニエスの事情を説明した。それを聞いたコルベールは、眉間に皺を刻んでうつむき、黙りこくる。
「先生?」
「ああいや、何でもない。事情は分かったが……アニエス君、そのためにどうしても資料を
確かめたいのかね?」
 顔を上げたコルベールは、アニエスに確認を取る。
「当然だ。そのために苦心を重ねたのだ」
「しかし、公文書館は本当に危険なのだよ……。盗難防止用の魔法がいくつも掛けられてあるし、
他にも地下には牛鬼が出る……」
「うしおに? 先生、それ見たことあるんですか?」
「あッ、いや、それは噂なんだがね」
 才人の聞き返しで訂正するコルベール。アニエスはその話に、失笑を返した。
「そんな下らぬ噂話などで、諦められるものか。わたしは何としても、実行犯の正体を確かめるのだ」
 アニエスの意志が固いことを悟り、コルベールは嘆息した。
「仕方ない……。ただし、わたしも同行するよ。万一の事態のために、目付けが一人はいた方がいいだろう」
「好きにしろ」
 コルベールも加わることになって、しばらく歩いた後に、問題の公文書館に一行は到着した。
「うわぁ……すごいところにあるのね」
「全くだな……」
 公文書館の光景に呆気にとられるルイズと才人。石造りの神殿風の公文書館は広大な空洞の、
一行とは反対側の岩壁をくり抜いた箇所に設けられており、一行との間には底が見えないほど
断崖絶壁が広がっている。一行の場所と公文書館をつないでいるのは、細い石の橋だけ。
間違って落下したら、命はないだろう。
 注意深く橋を渡り切り、館の前にたどり着くと、その門に注意書きらしきものが目立つように
刻まれているのが見えた。ルイズが読み上げる。
「資料の破壊、改変、持ち出し、及びこの場所における一切の魔法の使用を禁止する。規則を破りし者には
死の災厄が降りかかる……死んじゃうの!?」
「気にすることないだろ。この中じゃ、コルベール先生だけ気をつければいい話だ。ルイズは普段
爆発くらいしか使わないだろ?」
「何ですって!? わたしは爆発しか能がないみたいな言い方じゃない!」
「や、やめなさい! 今はまずい!」
 才人が余計なことを言って、ルイズが杖を振りかけたが、コルベールが慌てて止めた。
「とにかく、早く探そう。資料の持ち出しが出来ないのならば、中で確認をするしかないな」
 アニエスが扉を開けると、内部の書架の様子が一行の目に飛び込む。本棚が薄暗い館内に
ところ狭しと並んでいて、その一つ一つに本が隙間なく並べ立てられている。
「うわ、大量じゃないか。この中から探し出さないといけないのか?」
 才人は辟易するが、アニエスはある程度目途がついているようだった。
「ダングルテールの虐殺は二十年前のことだから、この中ではごく最近の分類のところにあるはずだ」
 四人は手分けして、それらしい本棚をしらみつぶしにチェックする。……が、コルベールは
途中何度もアニエスに目を向けていた。
 それに気がついた才人はコルベールにすり寄り、囁きかけた。
「先生、もしかしてアニエスに気があるんじゃないですか? 妙に気にしてるみたいじゃないですか」
「なッ!? ち、違う。そういうことじゃないのだよ……」
「え?」
 コルベールがいやに真剣な顔つきになったので、才人は呆気にとられた。しかし、コルベールは
それ以上何も言ってくれなかった。
「ダングルテール事件……これか!」
 その内、アニエスが目当ての資料を発見した。吹き抜けの二階に続く階段の下に腰を下ろし、
一ページずつ内容を確認する。
「しばらく時間が掛かりそうね……」
 資料を持ち出せるのなら、帰ってからゆっくりと調べられるのだが、それが出来ない以上、
アニエスが目的を果たすのを待つしかない。ルイズが手持ち無沙汰にしていると……。
「……ん? 何か、変な揺れがしないか?」
 不意に才人が、微弱な震動を感知して顔を上げた。
「え? 変な揺れって……」
「ほら、どんどん大きくなってくるような……」
 才人の言う通り、どこか遠くから、ズシン、ズシンと足音のようなものとともに震動が強くなってきた。
それを知ると、コルベールが顔をさぁっと青ざめる。
「ま、まさか!」
「あッ、先生!?」
 館の外へ駆け出すコルベール。才人とルイズが追いかけ、そして「それ」を目の当たりにした。
「なッ、あれは!?」
「う、牛鬼だぁー!?」
「グギィ――――! ブモ――――!」
 断崖絶壁の左手奥から、暗褐色の皮膚を持ち、頭部には偶蹄類のもののような立派な角を
二本生やした40メイル級の巨大生物がゆっくりとこちらへ歩いてきていた。牛のような
鳴き声を上げているのが、牛鬼という名前の由来か。
「でけぇよ! 怪獣じゃねぇか!」
 端末からデータを引き出す才人。牛鬼怪獣ゲロンガと出た。
「お、大きすぎる……。これほどまでに育っていたのか……」
「え? 先生、今何か言った?」
「い、いや、独り言だ」
「見て! あいつ、何故か右側の牙が欠けてるわよ!」
 怪獣ゲロンガを指差すルイズ。彼女の指摘通り、ゲロンガの大きく裂けた口の端から出っ張っている牙は、
片方だけ根本から欠けていた。
「そんなことどうだっていいだろ! それより、あいつがこのままこっちに来たらまずいぞ!」
 才人の言う通り。ゲロンガは人の気配を察知してこちらに近づいてきているのだろうが、
あの巨体ではぶつかっただけで橋が壊され、帰る手段を失ってしまう。早く、ゲロンガが
接近する前に脱出しなければ。
「アニエス君! ここは危険だ! すぐに逃げよう!」
「待て! これだ!」
 コルベールが呼びかけるが、ちょうどアニエスも肝心の実行犯への命令書を発見したところであった。
「命令書。疫病蔓延を防ぐため、ダングルテール一帯の人間を焼却処分せよ。実行部隊にはそんな名目だったのか……」
「アニエス君! 早く逃げなければ!」
「待て! まだ隊長の名前が!」
 コルベールが急かしても、アニエスはまだ動こうとしない。その間にも、ゲロンガはどんどん近づいてくる。
「グギィ――――! ブモ――――!」
 巨体のゲロンガの歩幅は広く、もう橋のすぐそこまで迫ってきていた。アニエスを待っていたら、
間に合いそうにない。
「食い止めるしかないぜ!」
 才人はウルトラゼロアイを取り出し、ゲロンガの正面に回り込んで、その眉間を撃ってひるませようとする。
「グギィ――――!」
 だがそれは逆効果。ゲロンガは怒り、才人に威嚇の咆哮と吐息を浴びせた。
「う、うわぁぁぁぁぁッ!」
 巨大怪獣の吐息は、最早突風。才人は身体をあおられ、橋から落下してしまった!
「サイトぉー!」
「何!? サイト君が!?」
 ルイズの叫びを耳にして、コルベールが駆け戻ってくると、
「ジュワッ!」
 崖の底からウルトラマンゼロが立ち上がり、ゲロンガにがっしりと組みついて進行を食い止めた。
「ウルトラマンゼロ! こんなところにまで来てくれたのか……」
 ひとまずは時間を稼げるようで、コルベールはもう一度アニエスの方へ振り返る。アニエスはまだ
資料に目を通している。
「あった! 疫病対策のため、特殊部隊を編成し、隊長には……!」
 とうとう肝要の部分に行き当たるアニエス。だが……。
「ない!? 名前の部分が破られている! 何故だ!? 一体誰が、こんなことを!?」
「アニエス君! 早くしたまえ!」
「放せ! どこかに、隊長の名前が……!」
「破られているなら、そんなものはもうここにはないんだよ!」
 コルベールは力ずくでもがくアニエスを引きずる。
『うぐッ……! すげぇ力だ……!』
「ブモ――――!」
 一方のゼロも、ゲロンガの怪力に押されて苦戦を強いられていた。単純な力比べなら、
ゲロンガの方に分がある。ストロングコロナになれば別だろうが、今のゼロの真後ろには
簡単に崩れてしまいそうな石橋がある。下手なことは出来ない。
「ゼロ、頑張って! お願い!」
 ルイズは応援しか出来ない。魔法を使えば、逆に状況を悪化させる恐れがあるからだ。
『ぐおぉ……! もう駄目だ……!』
 しかしルイズの願いも虚しく、ゼロはもう限界が近かった。そこにアニエスを連れたコルベールが
館から出てきて、ゼロへ叫んだ。
「ウルトラマンゼロ! そいつの左の牙を切り落とすんだ!」
『えッ!?』
 どうしてそんなことを。だが、うだうだ考えている暇はない。ゼロは言われたままゼロスラッガーに
手を伸ばし、すかさずゲロンガの牙へ刃を走らせた!
 切れ味は見事なもので、一瞬で牙をバッサリと切断する。
「グギィ――――……!」
 するとどうしたことか、ゲロンガはたちまち勢いがしぼみ、よろよろと後退してゼロから離れた。
そしてクルリと反転し、背中を向けて橋から離れていく。
「か、帰っていくわ……」
 その様を、呆気にとられながら見送るゼロやルイズたち。ゲロンガは本来、地底で大人しく
生活しているだけの怪獣だ。このまま放っておいても問題はないだろう。
「……ジュワッ」
 ゼロは変身を解き、才人に戻る。その才人は、橋に手の力だけでぶら下がっている状態だった。
「あ、危なかったぜ……」
「サイト君! 無事だったか!」
 橋から落ちかかっているという風を装って、才人はコルベールに引き上げてもらった。

 ウルトラマンゼロの力で、どうにか危機を脱した一行。しかし、肝心の成果は出すことが出来なかった。
仕方なく、一行は道を引き返して学院へと帰還していく。
「けれど、驚いたわね。まさかこんな地底にまで怪獣が出るなんて」
「ああ。牛鬼の噂は本当だったんだな」
 ゲロンガのことについて言葉を交わすルイズと才人。と、ルイズはあることを気にかけて
コルベールに尋ねかけた。
「ところで先生、よくあの怪獣の牙を折ればいいなんて分かりましたね」
「えッ!? あ、いや、それはだね……わ、分かったという訳じゃないんだよ。ただ、もう一方が
折れてるのが気になって、それで天啓にように思いついただけで……ろ、論理的ではなかったね」
「なーんだ。まぁ、結果良ければ全て良しよね」
 コルベールは妙に慌てていたが、ルイズは特に気にしなかった。
「良しなどではない! 結局、隊長の名前は分からずじまいだった……」
 ルイズのひと言で、アニエスが声を荒げた。それで、才人がふと気に掛ける。
「でも、誰が破いたんだろう? 捨てるに捨てられない資料だから、保管されてるんだろ?」
「当然、見られたらまずい者が我々に先んじて破ったんだろうな。恐らく、その隊長自身だろうが……
どうしてそこまでして名を隠そうとするのかまでは分からん……。どちらにせよ、手掛かりは
なくなってしまった。副隊長はメンヌヴィルという奴らしいが、そいつも今どこにいるものか……」
 悔しそうに歯ぎしりするアニエス。その横顔を一瞥したコルベールは、また険しい表情となった。
(……先生?)
 それを目に留めた才人は、どうしてコルベールがそんな顔を作るのかが分からず、小首を傾げた。

 空の大陸アルビオン。クロムウェルの執務室。
『いよいよだ。いよいよ、アルビオンとトリステインの戦争が始まる』
 ヤプール人が、クロムウェルとシェフィールドを相手にそう告げた。
『その時が、我らヤプールとウルティメイトフォースゼロの最終決戦の時となる。……が、その前に、
後一度だけ刺客を送り込み、連中の抹殺を図ろうと思う。やるからには、徹底的にやらねばな』
「しかし支配者様、お言葉ですが、一つ問題があります」
 クロムウェルがヤプールへ進言する。
「最早、有力な刺客になりそうな者が残っておりません。力のある宇宙人は軒並み敗れ、
残っているものと言えばウルトラマンどもに怖気づく腰抜けばかり。どの星人を刺客に
仕立て上げましょうか」
『そのことなら、心配はいらぬ』
 ヤプールはそう断って、言った。
『刺客の指揮は、我らヤプールが自ら執る』
「何と!? 支配者様自ら……ということは……」
『うむ。「そういうこと」なのだよ……ふふふ……』
 クロムウェルとヤプールは何やらほくそ笑んでいる。一人蚊帳の外のシェフィールドは、
何を言外に話しているのか分からずに呆気にとられた。
『そして肝要の戦力の一部を紹介しよう。入るといい』
 執務室の扉が開き、一人の男が入ってきた。白髪と顔の皺から相当歳がいっているようだが、
肉体はかなり鍛え抜かれている。そして顔には、額の真ん中から左眼を包み、頬にかけて火傷の跡があった。
『この男の名はメンヌヴィル。こいつの率いる部隊が、強襲を掛ける。場所は奴らの隠れ家……
魔法学院だ。メンヌヴィルよ、存分に焼き払うがいい』
 ヤプールの命令を受けると、メンヌヴィルはにぃ、と不気味に笑いながら濁った眼を輝かせた。


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