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第四十八話「潜入者Xを倒せ(後編)」


ウルトラマンゼロの使い魔
第四十八話「潜入者Xを倒せ(後編)」
暗黒星人シャプレー星人
浄化宇宙人キュリア星人
古代暴獣ゴルメデ
友好巨鳥リドリアス
地中怪獣モグルドン
電撃怪獣ボルギルス
核怪獣アルビノ・ギラドラス 登場



「シャプレー星人!」
 使用人に化けて公爵家に忍び込み、キュリア星人ことヤマノに濡れ衣を着せようとした星人の名を、
デルフリンガーを抜いた才人が叫び返した。公爵たちメイジも杖を抜き、平民らも身を強張らせて警戒する。
『フッフッフッ……潜入した先に、宇宙人連合に関わりのない異星人がいたから、利用して
混乱を生んだ隙に目的を遂行しようと思ったのだが……ばれてしまったのなら仕方ないな』
 シャプレー星人は案の定、宇宙人連合の一員のようだ。ヤプールが送り込んだ刺客か、
ブラック星人のように独自で動いているのかは知らないが、何の関係もないヤマノを、
自分の目的への利用のためだけに貶めようとするとは、何と卑劣な奴。才人は義憤をたぎらせる。
『こうなれば、無理矢理にでも目的を果たさせてもらおう。出てこぉいッ!』
 シャプレー星人がひと声叫ぶと、途端にこの場を大きな地揺れが襲った。この揺れ方は、怪獣出現特有のものだ。
「うわッ!」
 才人らが思わずよろけていると、やはり近くの森の中から、土を吹き飛ばして巨大怪獣が出現する。
「グウワアアアアアア!」
 典型的な恐竜型怪獣で、体色は茶色。頭頂部をリーゼントのような一角が覆っているのが特徴的。
才人は素早く怪獣のデータを端末から引き出す。
「古代暴獣、ゴルメデ……! 凶暴な性質の怪獣だ!」
『地底で眠っていたのを発見し、連れてきたのだ! さぁ暴れろ怪獣! 何もかもを、滅茶苦茶に
踏み潰してしまえ!』
「グウワアアアアアア!」
 シャプレー星人の命令に応じるかのように、ゴルメデが地響きを鳴らしながらこちらに接近してくる。
シャプレー星人に直接操られてはいないようだが、元々暴力的な性格の怪獣なので、こんなに近くにいては危険だ。
「むッ、いかん! 皆の者、速やかに退避するのだ!」
「は、はい!」
 公爵の指示で、領民たちが一斉にゴルメデから少しでも離れようと逃げていく。その一方で、
『おっと、その娘は置いていってもらおうか! 持って帰らんといかんのでな!』
 ゴルメデが起こした混乱のせいでノーマークになっていたシャプレー星人が、ルイズに応急手当てを施し
連れていこうとしたメイド二人の足を、光線銃で撃った。
「あぁッ!」
 メイドたちは崩れ落ち、負傷しているルイズも釣られて転倒する。
「わしの娘と使用人に何をするかッ!」
『むッ!』
 怒った公爵の魔法弾によって光線銃が弾かれるが、シャプレー星人は代わりにどこからともなく
剣を取り出し、杖を向ける公爵やエレオノールらに飛び掛かる。
「このッ!」
 魔法攻撃を放つ公爵たちだが、シャプレー星人の動きは風のように速く、易々と魔法をくぐり抜けると、
エレオノールに肉薄して柄で殴り飛ばした。
「あうッ!」
「エレオノール! おのれ!」
 公爵、夫人を目にも留まらぬ動きで撹乱し、倒れたルイズへと接近していく。ルイズは
逃げることが出来ない!
「あぁッ!?」
『娘、一緒に来てもらうぞ!』
「そうはさせるかぁッ!」
 ルイズをさらおうと手を伸ばすシャプレー星人に、才人が横から飛び込んでデルフリンガーを振り下ろした。
だがシャプレー星人はすかさず反応し、跳びすさって剣をよけた。
『お前もいたな。では、お前から先に片づけることにしようかッ!』
「そう簡単にやられるかよッ!」
 シャプレー星人が剣で応戦してきたので、才人はデルフリンガーを振り回して、ぶつかっていくように
剣戟を繰り広げる。
 ガンダールヴの力を引き出し、人間離れした速度と太刀筋を振るう才人。しかし相手は人外。
巨大化する能力は持たないとはいえ、身体能力も剣の腕もガンダールヴの才人と同等であった。
そのため剣の勝負は互角で、ルイズから引き離すので精一杯だった。
「くそ、つえぇ! 太刀筋はワルド並みか、それ以上だ!」
「相棒、ここは娘っ子の家族に援護してもらった方がいいぜ! 時間を掛けすぎると……
いや、もう遅いか……!」
「グウワアアアアアア!」
 デルフリンガーの台詞の直後に、ゴルメデの鳴き声がより近い距離から聞こえてきた。
ゴルメデは既に彼らの目と鼻の先。才人たちを有効射程に収めたようで、口から火炎弾を
吐き出そうとしている。公爵たちがおののく。
「まずいッ!」
 皆の目がゴルメデに向いているので、ウルトラゼロアイを手に取って変身しようとする才人であったが、
『ふんッ!』
 その瞬間にシャプレー星人が口から含み針光線を吐き出し、ゼロアイはそれに弾かれて飛んでいってしまった。
「しまったッ!」
『クハハハッ! そのままゴルメデに焼き尽くされろ!』
 ゴルメデは今にも火炎弾を吐き出そうとしている。公爵夫人が杖を振り下ろそうとした、その寸前に、
「ピィ――――――!」
 空からリドリアスが駆けつけ、ゴルメデに掴みかかった! 首を上に向けられたゴルメデは、
火炎弾を空の彼方に飛ばした。
「リドリアス!」
『何ッ!? くそ、邪魔が入ったか……!』
 才人が驚くと同時に、助かったことに喜び、反対にシャプレー星人は毒づいた。
「ピィ――――――!」
「グウワアアアアアア!」
 リドリアスはそのままゴルメデを押し戻すと、手を放してゴルメデの面前に着陸した。
妨害されたゴルメデは怒り猛ってリドリアスに攻撃を振るおうとするも、
「ピュ―――――ウ!」
「グイイイイイイイイ!」
「モグルドン! ボルギルス!」
 そこに地中からモグルドンとボルギルスも現れ、三体でゴルメデを取り囲んだ。みんな、
カトレアの危機を察知して助けに来てくれたらしい。
 才人はそのままゴルメデを倒してくれるものかと思ったが、事実は違った。リドリアスも、
モグルドンも、ボルギルスも、ゴルメデに向けてしきりに鳴き声を上げる。
「ピィ――――――!」
「ピュ―――――ウ!」
「グイイイイイイイイ!」
「グウ……グウワアアア……!」
 するとゴルメデがひるんだように動きを鈍らせた。リドリアスたちは、一体何をやっているのだろうか?
「あれは、まさか……ゴルメデを説得してるのか……?」
 リドリアスたちの呼びかけで、ゴルメデが妙に大人しくなったので、才人はそう考えた。
それが正解だというかのように、いつの間にか中庭に姿を現していたカトレアもゴルメデに
向かって歩いていき、声を張って呼びかけた。
「大丈夫よ。わたしたちは、あなたを傷つけたりはしないわ。安心して」
「カ、カトレアお嬢さま!? 危ないですよ!」
 泡を食って追いすがるヤマノを手で押し留めて、ゴルメデへの説得を続けるヤマノ。
「あなたは、急に起こされて気が立ってただけなのね。わたしには、分かるわ。感じられるの。
……でも、いい子だから、お帰り。大丈夫、怖がらないで。わたしたちは何もしないわ。信じて……」
「ピィ――――――!」
「ピュ―――――ウ!」
「グイイイイイイイイ!」
 カトレアを応援するように、リドリアスたちもゴルメデに呼びかけ続けた。その結果、
「……グウワアアアアアア」
 ゴルメデは腕を下げ、クルリと振り返ってどこかへと立ち去り始めたではないか! 戦意をなくしている。
カトレアは、怪獣の説得に成功したのだ!
「す、すげえ……ルイズのお姉さん……!」
『あ、あぁ……ビックリしたぜ……』
 才人のみならず、ゼロも言葉を失っていた。ゼロもルナミラクルになれば、猛る怪獣を
大人しくさせることが出来る。しかしそれは光線の効果によるものだ。カトレアのように、
特別な力を用いず、言葉だけで怪獣を安心させることなど、到底出来ない。
 カトレア。まるで、ルナミラクルの力を授けてくれたウルトラマンコスモスのように、
果てなき慈愛にあふれた女性だ。
『宇宙には、こんなすごいことが出来る……いや、こんなすごい人がいるのか……』
 今まで色んな種族、色んな力を持った生物を見てきたゼロだが、今この時ほど驚いたことはない。
慈愛の心とは、これほどまでに奥が深いものなのかと、今回ばかりは脱帽する他なかった。
 しかし、そんな愛の奇跡を認めない者もいた。
『ええいッ! 何だこれは! とんだ期待外れだ! 所詮は野良怪獣か! 肝心なところで役に立たんッ!』
 シャプレー星人だ。ゴルメデが帰っていくのを許さず、怒り狂ってわめいた。
『こうなれば、切り札を出してやる! ギラドラース! ギラドラース!』
「ギギャ――――――アアア!」
 その呼び声に呼応して、更に新たな怪獣が、大地を割ってゴルメデの前方から出現した。
四足歩行でありながら体高は高く、ずんぐりとした体型。大きく裂けた口を持つ顔の周りから、
四本の赤い鉱石のような突起が生えている。シャプレー星人の用心棒怪獣ギラドラスだが、
本来黒い体色がこの個体は、雪のように真っ白であった。
「ギギャ――――――アアア!」
「グウワアアアアアア!」
 白いギラドラスは口から光球を吐き、何とゴルメデを攻撃し始めた! 不意打ちを食らった
ゴルメデが激しく横転する。
「なッ……!?」
「ギギャ――――――アアア!」
 絶句する才人たち。それに関わらず、ギラドラスは執拗にゴルメデに光球を撃ち続けて痛めつける。
「ピィ――――――!」
「ピュ―――――ウ!」
「グイイイイイイイイ!」
 リドリアスたちが慌てて駆け寄り、倒れたゴルメデをかばってもお構いなし。むしろリドリアスたちも
攻撃し、大地に這いつくばらせた。
「や、やめてッ! こんなひどいことしないで!」
 カトレアが叫んで懇願するが、ギラドラスは耳も貸さない。シャプレー星人の生体兵器として
調整された怪獣なので、シャプレー星人の命令しか聞かないのだ。
「おいッ! やめさせろ! 怪獣たちは、俺たちに関係ないだろうが!」
 才人がシャプレー星人を糾弾するが、シャプレー星人は冷酷にせせら笑った。
『フハハハハ! 暴れない怪獣など、何の利用価値のない、でかい生ゴミでしかないわ! 
処分して何が悪い!』
「何だと……!? この野郎ッ!」
「相棒待てッ! 迂闊に飛び込むな!」
 命あるものをゴミ扱いする、一片の良心も持たないシャプレー星人に激怒した才人がしゃにむに
斬りかかろうと飛び掛かるが、シャプレー星人は隠し持っていたもう一丁の光線銃で才人の肩を撃った。
「ぐあッ!」
 それにより、デルフリンガーを落としてしまう。万事休すだ。
『馬鹿めッ! 力を持つ者が、力なき者を踏み潰し、淘汰する! それが世界の掟だ! 貴様らみんな、
このシャプレー星人がねじり潰してやるわぁ!』
 才人が武器を全て失ったことで、シャプレー星人は早くも勝ったつもりになって豪語した。
 そこに、待ったの声を掛ける者が一人。
「力を持つ者が、ですか……。それも真理の一つでしょう。しかし、一つ思い違いをしているのでは
ないでしょうか? そこのあなた」
『何ぃ?』
 水を差されたように感じ、機嫌を害して振り返るシャプレー星人。今の言葉を発したのは、公爵夫人だ。
「そう、たとえば……力を持つ者が、必ず己だということなどとか。踏み潰される側に回っても、
そのようなことを果たして口に出来るのですか」
『……ふざけたことを。このシャプレー星人を、誰が踏み潰すというのだ? もしかして、
貴様のようなひょろい女ではあるまいな?』
 公爵とエレオノールは、何かをひどく怖がるかのように夫人の近くから退散した。しかしシャプレー星人は
それに全く構わなかった。どうせ人間と、高をくくっている。
『笑止! 貴様らメイジの戦闘能力は、調べがついている! どいつもこいつも、所詮我々に及ぶものではない! 
あまりふざけたことを言ってると、その口を切り裂いてやるぞ!』
「わたくしの力が及ぶか及ばぬか……その目で確かめては如何でしょうか」
 脅すシャプレー星人を、むしろ挑発する夫人。才人は彼女が正気かと疑った。シャプレー星人の戦闘力が
常人をはるかに超えているのは、ずっと見ていたではないか。
『ほざいたな! 死に瀕してから撤回するんじゃないぞぉッ!』
 業を煮やしたシャプレー星人がとうとう、夫人に向かって剣を振り上げ、駆け出していく!
「危ない! 逃げろぉーッ!」
 才人の絶叫に反して、夫人は掲げた杖を振り下ろす。立ち向かうつもりだ。
『愚か者めッ! 私の脚力ならば、貴様らメイジの攻撃など、見てからかわすことも余裕だぁッ!』
 夫人を嘲笑し、速度を緩めることなく接近していくシャプレー星人。炎か、氷の矢か、
風の刃か、土の槍か、その程度のものが飛び出てくるだろうと考えている。
 そして、夫人の魔法が発動した。
『なッ……!?』
 飛び出てきたのは……天に届かんばかりの巨大な竜巻だった。予想の全てが外れ、シャプレー星人は
思わず急停止した。
『な、何だこれはぁッ!? こんな攻撃、聞いていないぞぉ!?』
 驚愕しているのは、シャプレー星人だけではなかった。才人も、伝説の虚無魔法は別として、
この世界に来て初めてお目に掛かるほどの大規模な攻撃魔法を目の当たりにして、唖然としていた。
アンリエッタとウェールズの水の竜巻すら、これほどのものではなかったはずだ。
「うおぉぉッ!? 吸い込まれる!?」
 竜巻は、渦の中心に向かう風を生じる。遠巻きにながめている才人にもその影響が掛かり、
慌てて踏ん張ってデルフリンガーとゼロアイを回収した。
「こいつはスクウェア・スペル、『カッター・トルネード』だな! しかし、とんでもねえ威力だぜ!」
 解説するデルフリンガー。才人はルイズのところまで駆け寄り、彼女とメイドたちも吸い込まれないように
押さえながら尋ねかけた。
「ルイズ! お前の母さん、一体何なんだ!?」
 常識外の魔法を扱う夫人の正体を、ルイズが話す。
「母さま、カリーヌ・デジレは、先代マンティコア隊隊長“烈風”カリン! トリステイン始まって以来の
風の使い手といわれる、歴戦の戦士だった人よ!」
 竜巻は遠くの才人にも影響を及ぼすほどの吸引力。そのため、攻撃対象のシャプレー星人は当然、
その影響をもろに受けていた。剣を地面に突き刺して抵抗するが、その剣ごと吸い込まれそうになっている。
『うおおおあああああああああッ!?』
「さぁ、かわして御覧なさい」
 淡々と告げる夫人。その言葉に反して、シャプレー星人は地面から足が離れて、竜巻の中心へと
引き込まれていった。
『うぎゃあぁぁぁぁ――――――――!!』
 竜巻は、『カッター』の名に恥じぬ切れ味を見せ、真空がシャプレー星人の肉体をズタズタに切り裂いていった。
シャプレー星人は暴風にもてあそばれながら、断末魔を上げる。
『こんなことがぁ―――――!! ギラドラァース!!』
 それを最期に、跡形もなく爆散。同時に竜巻もやんだ。
「ふん。世界を少し見ただけで、全てを知った気になっている、どこにでもいるような愚か者でしたわね」
 シャプレー星人を圧倒した夫人は、つまらないことのように言い捨てた。才人は、あまりの急展開に
ただただ呆然としている。
「ギギャ――――――アアア!」
 だがいつまでも呆けてはいられなかった。シャプレー星人の断末魔によって、ギラドラスが
ずっと痛めつけていたリドリアスたちからこちらへと矛先を移し、接近し始めたのだ。
「はッ! あいつを倒さねえと!」
『サイト、変身だぜ!』
 誰の視線もこちらに向いていない内に森の中に飛び込んで身を隠し、ゼロアイを装着。
ようやくウルトラマンゼロへの変身を果たし、ギラドラスの前に立ちはだかった。
「デュワッ!」
「ギギャ――――――アアア!」
 不意打ちの鉄拳が決まり、ギラドラスは押し戻される。このまま追撃を掛けようとするゼロだが、
それより早くギラドラスが首を大きく揺り動かした。
「ギギャ――――――アアア!」
 すると急速に空を厚い黒雲が覆い尽くし、猛吹雪が吹き荒れ出した! ゼロは突風に吹かれて、
バランスを崩した。
『うおッ! 急に天気が……そうか、ギラドラスの能力か!』
 父、セブンから聞いたギラドラスの能力を思い出すゼロ。ギラドラスは元々環境制御用の怪獣であり、
天候を自在に操作することこそがその力の本領なのだ。特にウルトラ戦士は低温が弱点なので、吹雪はその身に応える。
『けど、こんぐらいの寒さでへこたれるかってんだ! うおおおおッ!』
 ゼロは根性で吹雪を突っ切り、ギラドラスへ肉薄しようとする。が、ギラドラスの攻撃の矛先は
ゼロに向いていなかった。
「ギギャ――――――アアア!」
 散々打ちのめされて、動けないでいるリドリアスたちに光球を吐こうとしている!
『何ッ!? くそッ!』
 ゼロは慌ててリドリアスたちの前に回り、ウルトラゼロディフェンサーを張って盾となった。
しかしギラドラスは絶え間なく光球を吐き続け、その場から動けなくなってしまう。
『ちッ! このまま俺の時間切れまで粘ろうって訳か……!』
 毒づくゼロだが、もう罠に嵌まってしまった。このままでは何も出来ずに才人に戻ってしまうが、
命がけで戦ったリドリアスたちを見捨てる訳にはいかない。二律背反に陥り、どうしたらいいかと焦った、その時、
「彼には、我が祖国が何度もお世話になっています。手助けをするのは、貴族として当然のことですわね」
 夫人が杖を振るい、再び竜巻を作り出した。ギラドラスの眼前に。
「ギギャ――――――アアア!?」
 ギラドラスは突如発生した竜巻に激突して、大きく体勢を崩した!
『マジでッ!?』
 仰天するゼロ。夫人の魔法の威力がとにかく桁違いなのは今さっき目にしたが、まさかギラドラスレベルの
巨大怪獣を弾き返すほどだとは。怪獣とは普通、ミサイルが直撃しても平然としているほどの耐久と重量なのに。
 本当にあの人、人間なのかよ、なんて思ったりもしたゼロだが、彼女が作ってくれた好機を
みすみす逃す手はない。光球が飛んでこない内に、ゼロスラッガーを投擲する。
「ジュワッ!」
 ギラドラスの左右から迫ったふた振りのスラッガーが、交差してその首を両断した。ギラドラスの首は
たちまち胴体から離れて落下、切り口からは血液の代わりに、緑色が掛かった鉱石が大量にボロボロと
流れ出て、胴体が崩れ落ちた。
 ハルケギニアで採掘される風石だ、とゼロは気がついた。高エネルギーを秘めていて、
ジャンボットがエメラル鉱石の代わりにエネルギー源としていた。ギラドラスの本来の任務は、
その風石の盗掘だったのだろう。
「デュワッ」
 ともかく、これでシャプレー星人のたくらみは全て粉砕した。ゼロはウルトラ念力で、
集められた黒雲を戻して空を晴れ渡らせると、そのまま飛び立って去っていった。

「うーん……まずいなぁ……」
 ゼロから元に戻った才人は、森の木々の陰に隠れながら、中庭の様子を困り果てながら窺っていた。
シャプレー星人を撃退したのはいいのだが、その騒ぎのせいで公爵たちが集まってしまった。
そしてその中にルイズ。もう彼女を連れて逃げ出せる状況ではなくなってしまった。
「シャプレー星人め、余計なことを……」
「相棒、一旦諦めようぜ。こうなった以上、ほとぼりが冷めてから、娘っ子を奪取する計画をだな……」
 嘆息する才人に、デルフリンガーが提案する。と、その時、才人の頭に影が覆い被さる。
「え?」
「ピィ――――――!」
 ふと顔を上げたら、いつの間にか復活したリドリアスの首が頭上を覆っていた。
「えぇぇー!?」
「ピィ――――――!」
 リドリアスは才人に有無を言わせず、パーカーの襟をクチバシではっしとつまんだ。そして器用に
自分の首の上に放り上げて乗せると、中庭にも首を突っ込む。
「うわぁぁぁ!?」
「リドリアス!?」
 皆が驚いている間に、ルイズも素早く首の上に乗せる。ルイズをキャッチする才人。
「ル、ルイズ!?」
「サイト! これどうなってるの!?」
「リドリアスに聞いてくれ!」
「ピィ――――――!」
 公爵たちが呆気にとられている内に、リドリアスがピョンピョン飛び跳ねながら移動。
街道で待っていたシエスタを、馬車ごと自身の上に乗せた。
「きゃあ! きゃあきゃあ! サイトさん、これ何でしょうか!? わたしたち、どうなっちゃうんですか!?」
「だから、リドリアスに聞いてくれよ!」
「ピィ――――――!」
 三人を乗せたリドリアスは直ちに翼を広げて、天高くに飛び上がった。そして飛んでいく先は、魔法学院の方角。
「こいつ、まさか……俺たちを逃がしてくれるのか?」
 才人の問いには答えず、リドリアスはひたすら空を走っていく。一方で地上は、大騒ぎ。
「あああぁぁぁ! ルイズが行ってしまう!」
「やられてしまいましたね……」
 出し抜かれた公爵は頭を抱えて叫び、夫人も頭が痛そうに手で支えた。エレオノールはカトレアを問い詰める。
「カトレア、あなた! リドリアスに命令したんでしょう! そうでしょう!?」
「あらあら、姉さまったら嫌ですわ。リドリアスはあの子たちに大層懐いてた、それだけのことです」
 カトレアはうふふと微笑んでさらりとかわした。ヤマノは、どちらの味方をしたらいいのかとうろたえている。
「誰か! あれを追いかけろ! ジェローム、すぐ手配を!」
「無理です、旦那さま。とても追いつけません」
 わめく公爵に、さっさと諦めた執事が答える。それを尻目に、リドリアスはもう小さくなっていた。
「ピュ―――――ウ!」
「グイイイイイイイイ!」
 モグルドンとボルギルスが、友の逃走劇の手助けを、はしゃぎながら応援していた。

 こうして見事(?)に公爵領から脱出、逃走を成功させたルイズたち。学院に帰った頃には、
才人とルイズの仲は、才人が想いを打ち明けたことで深まり、両想いに……。
 ……なんてことには、シエスタが余計な茶々を入れたことでルイズが嫉妬を爆発させ、
その結果うやむやになるという、まぁ要するにいつもの展開によってならなかった。
しかしそれは、別の話なのであった。

「ふふ。リドリアス、よくやってくれたわね。いい子よ」
「ピィ――――――」
 全てが終結し、公爵が憮然としながらもルイズの件を諦め、屋敷にひとまずの落ち着きが戻った頃、
ルイズたちを送り届けて帰ってきたリドリアスをカトレアが褒めていた。彼女が首を撫でると、
リドリアスは気持ちよさそうに喉をゴロゴロ鳴らした。
「……それで、ヤマノ先生、お話しがあるなら出てきて下さい」
「気がついてましたか、お嬢さま……」
 背後に振り返ったカトレアが呼びかけると、樹の陰からヤマノがそっと姿を出した。その顔は困惑で
強張っているが、カトレアは反対ににこにこしている。
「ふふッ。お話しの内容はきっと、先生の素性をわたしが気づいてたことについてですね。父さまから聞き及んでます」
「……そのことですが」
 ヤマノは恐る恐ると、カトレアに尋ねかける。
「お嬢さまは、私が人間ではない、別の世界の人間だと分かって……私のことが恐ろしくないのですか? 
この世界は、私のような異星人……別の世界の者たちの攻撃を受け続けているではないですか。
それと同じ私を、どうして……」
 侵略者の脅威と残酷さは、シャプレー星人が十分すぎるくらい見せつけた。それなのに、
カトレアにはヤマノを恐れ、避ける気配がない。その家族たちもだ。
 そのことについて、カトレアはこう語った。
「わたしや父さま、母さまは、人を人種ではなく個人で見るようにしてますわ。エレオノール姉さまは、
ちょっと偏見が強いけれど……父さまたちの決定に逆らうことはしませんもの。だから、わたしの病を
必死に治してくれようとしてる先生を追い出すような真似は、致しませんわ」
「し、しかし……」
 カトレアたちの心優しさに、逆に戸惑うヤマノ。そんな彼に、カトレアは天使のような柔らかな笑みを向けた。
「先生、同じ別の世界の人が悪いことをしたからと、先生が気に病まれないで下さい。先生は、
わたしたちの大事な人……それでいいではないですか」
 カトレアに全幅の信頼を寄せられ、受け入れられたヤマノは、すっかりと呆けていた。
そして無意識の内に、頭を垂れていた。
「……ありがとうございます」
 お礼を告げたヤマノの前で、カトレアは朗らかな笑顔を浮かべ続けていた。


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