あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るろうに使い魔-39


「それじゃあ皆に紹介するわね。ルイズちゃん、どうぞ~~!!」
「ル、ルルル…ルイズです。よよよ…よろしくお願いなのです」
 怒りと羞恥でふるふる震えながら、ルイズは皆におじぎをした。その姿は先程の地味なワンピース姿ではなく、きわどく短いキャミソール姿だった。
 あの後…、スカロンが経営しているお店『魅惑の妖精』亭に連れてこられたルイズ達は、そこでどんな仕事をさせられるのかを尋ねた。
 曰く、この『魅惑の妖精』は、一見はただの居酒屋ではあるが、可愛い女の子が際どい服装で飲み物を運ぶことで人気のお店であるらしかった。
 つまり、ルイズの可愛さを見初めたスカロンが、ぜひ給仕にと招き入れたのだ。
「あんな際どい格好で…?」
とルイズは信じられないような眼差しで給仕の女の子達を見ていた。
「…確かにきわどいでござるな…」
 幕末時代の感覚を持つ剣心も、最初は彼女達の短いキャミソール姿に抵抗があるような風で見ていたが、だからといって特にそれ以上があるわけではない。
あくまでやっていることは注文を受け取ったり料理を運んだり、たまに客の愚痴を聞いてあげたりするぐらい。別に危ないことをされるわけでもなさそうだった。
 それに居酒屋だったら、情報収集には事欠かない。お客の愚痴や噂話に、そう言った重要な話はあるかもしれない。拠点にするならうってつけだ。
「どうするでござる? ルイズ殿」
 あとはルイズの気持ち一つ。とは言っても、今は選べる立場ではない。これを断ったらもう野宿するしか道は無いのである。
 ルイズは暫くう~~、と唸った後、渋々といった具合で決めた。
「……………やるわ」



 ということで今、そのあられもないキャミソール姿でルイズは会釈している訳である。プライドが高いルイズにとって、平民に頭を下げるなど許せない事であったが、これも使命のため…と必死に自分に言い聞かせていた。
 ぎこちない笑みにぎこちない姿勢。それでもルイズからしてみれば頑張っている方である。何せいつ爆発して杖を抜いてもおかしくは無いのだから。
「それじゃ、さっそく開店よ~~~!!」
 スカロンの声と共に、扉が開きどっと客が押し寄せてきた。



          第三十九幕 『魅惑の妖精』



「しかし、凄い人入りでござるなぁ」
 すっかり繁盛している『魅惑の妖精』亭。その裏で剣心は皿洗いに勤しんでいた。
剣心だってここに泊まる以上は働くつもりだ。なので今、雑用の一つであるこの仕事を任されたのである。
 まあ、神谷道場に居着いてからは主夫のように身の回りの家事はこなしていたので、これくらいはまだ余裕があった。
 しかし、それでも皿の数が一向に減らない辺り、相当繁盛しているようだ。
「おっ、精が出てるねぇ」
 そんな時、後ろから声が掛かった。
振り向いてみると、ストレートな黒髪の派手な女の子がやって来たのだ。
「あたし、ジェシカ。あんたでしょ? 今日来たっていう新人は」
「ああ、緋村剣心でござるよ。よろしくでござる」
「ケンシン? 変わった名前ねえ」
 軽く自己紹介すると、珍しい名前にジェシカが首をかしげた。すると今度は興味津々といった目で、剣心に近寄ってきた。
「ねえねえ、ルイズと兄妹って嘘でしょ」
「……イヤ、セッシャトルイズドノハキョウダイデゴザル」
「んなカタコトにならなくていいって。どう見たって兄妹の要素全くないじゃん」
 ここに来る前、スカロンに「二人はどんな関係?」と聞かれたところ、取り敢えず『兄妹』という設定にすることにした。
スカロンはそれで納得したようだが、流石にジェシカには騙し通せるものではないようだ。
 はぁ…とため息をつく剣心を見て、ジェシカはアハハと笑った。
「別にいいよ。ここにいる子は皆ワケありなんだから。他人の過去を詮索する奴なんかいないわよ。安心して」
 そう言いつつも、兄妹じゃないと知れてジェシカはますます興味を惹かれたようだった。
「ねえねえ、でもあたしにだけ教えてよ。本当はどういう関係よ。何であんたとルイズはそんなに雰囲気違うのさ?」
 その人懐っこい目に、剣心はかつて京都で世話になった『葵屋』の人達を思い出した。思えば彼らも、本当の素性が知れた後でも自分を家族の様に扱ってくれたっけ…。
ふとそんな風に昔を思い出しながらも、剣心は優しく言った。
「仕事の方は大丈夫でござるか? いつまでもここにいるとスカロン殿…じゃなくて、えっと…」
「ミ・マドモアゼル?」
「そうそう、そのミ・マドモアゼル殿に怒られるでござるよ」
 スカロンは、この店で働いている時は自分の事をそう呼ぶように言われているのだった。ジェシカは面白そうにクスクス笑いをすると、衝撃の事実を剣心に告げた。
「あたしは特別よ。だってスカロンの娘だもの」
「……え?」
 ……空気が凍りついた。剣心は皿を手に持ったまま目を丸くして立ち尽くしており、そしてまじまじとジェシカを見つめた。
「ま、やっぱり皆そういう反応するのよね」
 いたずらっぽい笑顔を浮かべながら、ジェシカは言った。
 成程、世界というのは広いものだ。魔法があったり幻獣がいたり、空に城があったり…久しぶりにそういった驚きを剣心は経験したのだった。
 そんな時、ガシャンと大きな音が酒場から聞こえてきた。それに次いで怒鳴り声が聞こえてくる。
「何すんだ、このガキ!!」
「このげげげ、下郎! あああ、あんたわたしを誰だと思ってんのよ!!」
 聞いたことのある声に、剣心はガックリと肩を落とした。別にこの展開を予想できなかったわけではないのだが。まあ逆によくもったほうだろう。
「この、おおお、恐れ多くもわたしはこうしゃくけ―――」
「ごぉめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
 遅れて何かを吹き飛ばすような音を立てながら、スカロンの声が聞こえてきた。
「いけない、ワインで濡れちゃったわね。ほらルイズちゃん、新しいワインをお持ちして! その間このミ・マドモアゼルがお相手を務めちゃいま~~~す!!」
 その後直ぐに悲鳴やら何やらでお店の方は騒がしくなっていった。その一部始終を見ていたジェシカは、哀れむような目で剣心を見た。
「取り敢えず、弁償お願いね。お兄さま」
 はぁ…。と剣心はこれ以上ない大きなため息をついた。



「えー、ではお疲れ様!!」
 すっかり夜だった空が白み始めた頃、ルイズ達の仕事は終わりを告げた。既にルイズはグッタリとした様子で、足はフラフラと覚束無い状態だった。
 それを気にせず、スカロンはニコニコ顔で給仕の皆にこう言った。
「今日はみんな、一生懸命働いてくれたわね。今月は色つけておいたわ」
 どうやら今日は、ちょうど給料日のようだった。給仕の女の子やコックたちに、それぞれ給金を配り始める。
 一通り配り終えたあと、今度はスカロンはルイズの方へと向き直り、一枚の封筒を渡した。
「はい、ルイズちゃんも」
「え、わたしにも貰えるの!?」
 と一瞬だけ顔を輝かせたルイズだったが、封を切って出てきたのは一枚の紙切れだった。
そこに書いてある内容を見て、ルイズは首をかしげた。
「あの…これは?」
「請求書よ。ケンシンくんは頑張ってくれたんだけどねぇ…それを差し引いてもルイズちゃん、あなた一体何人のお客さんを怒らせたの?」
 真顔になってスカロンは言った。その顔にはさっきまでの笑みが消えている。
 ガクッと気落ちするルイズを見て、スカロンは励ますような感じで続けた。
「いいのよ。誰でも最初は失敗するもの。これから一生懸命働いて返してね!」


 身も心も疲れはてたルイズは、剣心に引っ張られる形で連れて行かれた。しかし、彼女の気苦労はまだまだ絶えない。
 二人に与えられた部屋は、二階に登って更にはしごを使った先にある屋根裏部屋なのだが、これがまた汚い。
 薄暗い空間の中、埃やらクモの巣やらが辺り一面に広がっているそこは、もはや部屋というより物置だった。
 一応、タンスやベット等、それらしい家具は置いてはあるが、どれもやっぱり埃まみれ。特にベットの方は、ルイズが座ると足が折れてドスンと傾いた。
「何よこれ!!」
「ベットでござろう」
 剣心は、使いやすいようにクモの巣を払ったり埃を叩いたりした。同居人のクモやコウモリが、それに驚いてコソコソと逃げていく。
「何よ、貴族のわたしをこんなとこに寝かせる気!」
「愚痴ってもしょうがないでござるよ」
 折れたベットの足を立て直して、それなりに使えそうな形に剣心は取り繕った。
「朝は早いでござるよ。ルイズ殿は夕方からお店の掃除でござろう?」
 そう言って、どこか適当な木箱を見つけると、それに寄っかかってあぐら座りをする。いつもの剣心の寝る体勢だった。
「う~~、あんたは何でそんなに順応が早いのよ……」
「流浪人の頃は、よくこんな感じで野宿とかしていたでござるよ」
 ルイズはそれでも納得できないのか、悶々とした様子で悩んでいたが、それで状況が変わるはずもないので、渋々、本当に渋々といった具合でベットで横になった。
 暫くそうして時間が過ぎていったが、やはり布団が変わって眠れないのか、何度も目を開いたりしながら恨めしそうに天井を見上げた。
 そして心細くなったのか、起こすのを承知でルイズは剣心に声をかけた。
「ねえ、ケンシン。ちょっとこっち来てよ。寝れないの」
 ルイズに声をかけられるまで、ずっと目を閉じていた剣心だったが、眠りが浅かったのか、すぐに目を開けてルイズの方を向いた。
「寝れない、でござるか?」
「そうよ、こんな時ぐらい一緒にいてくれてもいいでしょ?」
「けど、流石に一つの布団に男女で一緒というのは…」
「いいからこっちに来る!!」
 半ばキレ気味のルイズの声に、剣心はやれやれと首を振りながらも、それでも起き上がって今度はルイズのベットを背にもたれかかった。
「これでいいでござるか?」
「…まあ、いいわ」
 少し不満はあるが、今は妥協しよう。そういった感じでルイズ再び横になって、もたれかかっている剣心の背中に顔を寄せた。
 こんな汚い部屋で一夜を過ごすなんて…普通だったら考えられないものだった。
でも、ここでは一つだけ良い点がある。それは胸だけは立派なバカメイドやキュルケ、そして最近妙に気になっているあのタバサがいないことだった。
全く、三人共こんな使い魔のどこがいいのか…まあ、何となく理由は分からないでもないけど、それでもどこか釈然としない。
…そう言えば、学院でも剣心と親しむような人はいても、嫌うような人はそんなに見ない気はした。…やっぱり私の知らないとこで交友を作っているのかな…。
 それでも、他に剣心に好意以上のものを持っている人はいないっぽい。それだけは素直に安心できる点だった。

(わたしは…ケンシンのこと…別に好きでもなんでもないけど…)

 それでも幸せそうに、気付けば頬を朱に染めていた。そして、この長期休暇ぐらい、もっと構ってもらうんだから…と無意識に、小声でそう呟いた。
それと…街の噂もちゃんと報告しなきゃ。黒笠っていうのも気になるし…でもケンシンは何か知ってそう…後でちゃんと問い詰めなきゃ…。
 忙しいことになりそうね…そう思いながら、ルイズはゆっくりと眠りに入っていった。


 ルイズが安らかな眠りについた、その一時間後だろうか、剣心は唐突に目が覚めた。
起こさないようゆっくりと立ち上がって、手に持つ逆刃刀を腰に指した。
 剣心は一度、ルイズの寝顔を見た。すやすやと寝息を立てながら、どこか嬉しそうな顔をしている。
「…大丈夫そうでござるな」
 唸されて眠れずに起き上がってくるのを心配していたが、今の彼女を見るにその様子はなさそうだった。
 安心した剣心は、そのまま足音を立てずに屋根裏から降りていった。
「あら、どこへ行くの?」
 梯子を降りて、廊下を歩いていると、スカロンとバッタリ会った。丁度閉店の準備が終わったのだろう。
 不思議そうに聞いてくるスカロンに対し、剣心は当たり障りしないような返答をした。
「少し用事が。まあ家庭の事情でござる。昼の仕込みには戻るでござるよ」
「あらそう、大変ねぇ…ルイズちゃんも貴方も」
 スカロンもスカロンで、特に気にする風でもないようだった。それからニッコリと微笑んで剣心を見つめた。
「何か困ったことがあったら遠慮無く言いなさい。できる限りの事なら力になるわ」
「う~ん、そうでござるなぁ…」
 それを聞いて、剣心は思わず頬を掻いて考え込んだ。正直ルイズの事が気がかりで仕方ないのだ。
 これから剣心は、続けて『黒笠事件』の真相を追うつもりだった。無論自分ひとりで。もしこれが剣心の予想通りなら、ルイズには余りにも荷が重すぎるのだ。
 奴は、恐らく自分をおびき寄せる為に、このような事件を起こしてまわっているのだろう。そうだとするなら、いつも隣にいるルイズに真っ先に危険が及ぶのは自明の理だ。
 ルイズに自分の身の上を、話そうかとも考えたが、彼女のことだ。それを聞いたらまた何かしらの無茶をしかねない。ルイズというのは、そういう娘だ。
 だから今のルイズには、何処か隠れ蓑になる拠点は必須だった。連れて歩けばそれだけ危険が増える。大抵のことなら守ってあげられる自信はあるが…それでも避けられる危険は避けておきたい。
全財産すったのは予想外だったが…それだけに相手側も彼女がここで働いているなんて思いもよらないだろう。彼女自身が狙われる心配は取り敢えずないはずだ。
 あるとすれば、自分との接触があるかないか。それぐらいだろう。
だから剣心は、なるべくルイズや『魅惑の妖精』亭には近づかないようにと考えていた。

ルイズだけではなく、関係のないここの人々にまで迷惑を掛ける。それだけは絶対に避けなくてはならない。

長く居ればそれだけ危険が降り掛かる。彼等も一生懸命に今を生きている人たちなのだ。それを自分たちの都合で巻き込むわけにはいかない。
 だからルイズにはここで大人しく情報収集に専念してもらいたいのだ。


「けどなぁ…」
と剣心は、昨夜のルイズの働き振りを思い出す。彼女のプライドの高さは知っていたが、あの時点で既にスカロン達にとっては迷惑極まりないものであるのは確かだ。
ルイズを頼む。というのは自分勝手な押しつけではないだろうか?
 追い出されるなら、それはそれで考えなければいけない。少し心配になった剣心は、ルイズの働きをどう思っているのかを聞いてみた。
 それを聞いたスカロンは、それで可笑しそうな声を上げた。
「安心なさいな。確かに色々なっちゃいないとこはあるけど、それは充分に修正してあげればいいわ。昨日の出来事ぐらいじゃ追い出したりしないわよ」
「じゃあ…ルイズ殿を任せても良いでござるか?」
「はいはい、でも貴方も気を付けてね。最近は物騒だから。特に貴族を殺して回っているっていう奴がいるそうじゃない…ああ危ないわねぇ。ウチでも護衛を雇ったほうがいいかしら?」
 『黒笠事件』そのものは、結構平民の間にも広まっているようだった。貴族の威信に関わることだから、詳細までは知らないようではあるが、人の口に戸は立てられないものだ。
 剣心は、少しホッとしたような顔をすると、最後にペコリと頭を下げた。
「どうもかたじけないでござる。何から何まで世話になって」
「いいのいいの。困ったときはお互い様よ」
 それから剣心は、手伝いに来るときは必ず裏側の扉から利用すること。余り自分達のことは言いふらさないで欲しいこと(この点は、『家庭の事情』ということで納得してもらった)。
 その注意をスカロンに言い含めた後、ゆっくりと裏口から外へ出ていった。
朝日が昇り、建物の影が大きく写る中、剣心の姿は歩く人々の姿に紛れて消えた。



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