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第四十話「チュレンヌの繭(前編)」


ウルトラマンゼロの使い魔
第四十話「チュレンヌの繭(前編)」
円盤生物ブニョ
コイン怪獣カネゴン 登場



『マグマ星人どもも、ウルティメイトフォースゼロに敗れ去ったか……』
 空を飛ぶ国アルビオンに建つ、レコン・キスタの本拠地の城の、皇帝クロムウェルの居室。
今は侵略者たちの拠点と化したこの場所で、クロムウェルの姿を取っているヤプールの手下と
シェフィールドが、空間を割ってわずかに顔を見せているヤプール人に謁見していた。
『全く、あまりにも不甲斐ない連中だ。あれだけ手間の掛かる計画を用意し、五機ものロボット怪獣を
くれてやったというのに、結局何一つ成果を上げられなかった』
「全くですな。どいつもこいつも、口だけが達者の役立たずにございます」
 ヤプールが嘆息すると、クロムウェルが迎合した。
「そろそろ宇宙人連合などという、捨て石連中を送り込むのはおやめになっては如何でしょうか。
労力の無駄です。私めに命じて下さいますれば、すぐにも地上を地獄に変え、支配者様に極上の
マイナスエネルギーを献上致しますが……」
 と申し出るクロムウェルだが、ヤプールは却下する。
『まだお前の出る幕ではない。超獣たちが育ち切るまで、もう少し時間が掛かるのでな。
その時になったら、お前が指揮を執るのだ』
「仰せのままに。……しかしでしたら、それまでの間には、誰を刺客に送られますのでしょうか?」
『既に用意している。ちょうど、自らウルトラマンゼロ暗殺を進み出る奴が出たところだ。姿を現すといい』
 ヤプールが命じると、植木鉢の陰から、緑色の小さい円盤形の飛行物体が飛び出てきた。
シェフィールドはそれを目にして、同じ登場をした先日の刺客、円盤生物を思い出した。
それの生き残りだろうか。
 そして円盤は、シェフィールドらの見ている前で、人間の姿に変身した。……が、何故か
まっすぐ立たずに、グネグネ身体を不気味にうごめかしている。
「ヤプール殿。この者は、一体何者でしょうか?」
 人間の姿を取りながらも怪しい雰囲気を纏う正体不明の男について、シェフィールドが尋ねると、
当人が自ら名乗った。
「ブニョって言うのさ。宇宙人なんだ! ウフフフ……!」
 奇怪な動きに合わせるかのように不気味な笑い声を上げる男、ブニョ。今度はクロムウェルが問う。
「えぇい貴様、どうしてそんなに落ち着きがないのだ。支配者様の御前だぞ」
 それにブニョはこう答える。
「悪いけど、オイラは力がなくてねぇ。この星の重力だと、これこの通り、身体を支え切れないんでさぁ~」
 自慢にならないことを堂々と語り、その度にフラフラとよろめくブニョのありさまに、
シェフィールドはすっかり呆れ返っていた。今まで様々な種類の怪獣、宇宙人がハルケギニアに
出現したが、重力に負けるような奴はこいつが初めてだ。果たして、こんな頼りないものが
ウルトラマンゼロへの刺客足り得るのか?
 その疑念は、クロムウェルも抱いているようだった。彼はヤプールに尋ねる。
「支配者様、お言葉ですが、このような力のない者を送ったところで、何になるのでしょうか?」
 するとまたも、ブニョが自らクロムウェルに言い返した。
「力はないが、知恵はある」
「何?」
「今までの連中は、ゼロの変身を許すからいけなかったんだ。その点、オイラは違う。ゼロを
変身できないようにしてから、料理してやりますよ」
「そんなことが出来るのか? その作戦は、既にピット星人が失敗しているぞ」
 釘を刺すクロムウェルだが、ブニョは丸で意に介さず、ヘラヘラ笑いながら請け合った。
「なぁ~に任して下さい。じゃ、さいならッ!」
 言うが早いや、ブニョは再び円盤形態に変身し、窓から脱け出てトリステインへとまっすぐ飛んでいった。
「あいつめ、本当にやる気か……」
 クロムウェルやシェフィールドは正直半信半疑だったが、ブニョを選んだヤプールの手前、
それ以上反対意見は口にしなかった。

 話は変わるが、ブニョが刺客として選ばれた前日、トリスタニアの一地域で、少々奇妙な出来事が発生した。
「どけどけぃ! 徴税官、チュレンヌ様のお通りであるぞ!」
「卑しい平民ども、道を開けい!」
「下にー! 下にー!」
 人々が行き交い混雑している通りを、下級貴族の一団が無理矢理人波を道の脇に寄せながら通行している。
その一団の中央にいるリーダー格は、でっぷりと肥え太り、嫌らしい笑みを顔に張りつけた中年貴族。
 彼の名はチュレンヌ。この周辺区域の徴税官を務めている男であるが、その地位を悪用し、
市民に必要以上の重税を課し私服を肥やす、悪徳貴族の一人だ。しかしそれ以外には
これといった悪行をしていないので、平民にとっては逆に始末が悪い。人に害をなすが、
わざわざ討たれるほどでもない、典型的な小悪党である。
「ふふふ。度重なる怪獣災害と侵略者の攻撃で、一時は不景気のどん底だったトリスタニアだが、
近頃はこの辺りにも活気が戻ってきたな」
 往来を歩きながら、チュレンヌが取り巻き相手に話し掛けると、一人がごますりするように応じた。
「その通りでございますね。女王陛下主導の復興により、壊された街は修復され、人も戻り、
それに伴って金の回りも戻っている様子です」
「つまり、わたしの仕事もまた繁盛するということだ」
 とつぶやくと、チュレンヌは嫌らしい笑みを一層深めた。
「やはり、好景気が一番だ。多少税を水増ししても、平民どもからの不満の声も少なくなるからな」
「チュレンヌ様のお懐も、また温かくなりますな。喜ばしい限りでございます」
 普段から平民を卑しいもの、と馬鹿にするが、その実自分たちが最も卑しい性根をしているチュレンヌたち。
すると、チュレンヌが道路の端の日陰にひっそりと開いている、地面の上に布を敷いただけのみすぼらしい
露店に目を留めた。
「やや、あれは……!」
 即座に取り巻きをゾロゾロ引き連れながら、その露店の前に詰め寄る。そしてローブを
すっぽりと被っていて、顔がよく見えない露天商に呼びかけた。
「おい、そこのお前! 一体、誰の許しを得て露店などを開いている? この付近で商売するには、
このチュレンヌに税を支払わなければいかん決まりであるぞ!」
 チュレンヌが脅すと、「カネィダの露店」との看板を出している露天商は、子供のように
トーンの高い声で媚を売った。
「お代官様、ご勘弁下さいよ。見ての通り、こっちは物乞いに等しい身分です。とても、
お代官様のお許しを頂けるお金は払えません。それがしの命を助けると思って、どうかお目こぼしを……」
 拝み倒すように手をすり合わせるが、チュレンヌは極めつきの拝金主義。金が絡む時には、
一片の人情も見せないのだ。
「駄目だ駄目だ。一人でも例外を認めたら、卑しい平民どもが自分も自分もとうるさくなる。
金を払えないのであれば、どこかよそへ行くがいい!」
「ちぇッ。世知辛いなぁ」
 露天商はぶつぶつつぶやきながら荷物を纏めようとするが、それをチュレンヌが制止する。
「おっと待て。税とは別に勝手に店を開いた罰金を払ってもらわなければならん。金がないというのなら、
商品を代わりに差し押さえさせてもらうぞ」
「えぇッ? そりゃあんまりですよぉ」
 露天商が泣きつくが、チュレンヌは無視して取り巻きとともに商品を見繕う。だが、どれも
ゴミ同然のガラクタばかりだった。
「何だこれは。呆れた。こんなもので商売しようとしていたのか。これでは、取り上げたところで
二束三文にもならんではないか……む?」
 ため息を吐いたチュレンヌだが、商品の中に、珍しい物を見つけた。
「これは……シルクか?」
 つまみ上げたのは、蚕がよく作る繭。東方から輸入される、絹の原料だ。過去の地球のように、
ハルケギニアでも高級繊維で、原料の繭を目に掛かることは滅多にない。
 目の前にあるのは量が少なすぎるので、あまり金にはならなそうだが、代わりのように
中に何か入っているようだった。振ると、チャリンチャリンと貨幣の鳴る音がする。
「中に銅貨か銀貨、いやもしかしたら金貨が入っているようだな。面白いものを持っているではないか。
金運のお守りか何かか。よし、ではこれで手打ちにしてやろうではないか」
 金が入っているという点をいたく気に入ったチュレンヌは、その繭を取り上げることに決める。
すると、露天商はニヤニヤしながら言った。
「やめておいた方がいいですよぉ。お代官様のようなお人だと、大変なことになりますよ」
「何ッ!?」
 それを愚弄されたと受け取ったチュレンヌは激昂し、取り巻きとともに杖を抜いた。
「貴様、このチュレンヌを馬鹿にするか! 貴様を不敬罪で警邏に差し出してやろうか!?」
「おお、怖い怖い。それじゃこの辺で失敬!」
 露天商はおどけた風に荷物を抱えて、風のように逃げ去っていった。
「全く、おかしな奴がいたもんだ……」
 憤懣やるしかたないチュレンヌだったが、奪った繭を耳元に近づけて鳴らすと、たちまち
機嫌を直してにんまり頬を緩めた。

 太陽が沈み、夜が訪れると、チュレンヌは自身の屋敷に帰宅した。
「ふぅ、今日もたんまり稼いだ」
 市民から回収した税金を数え終えたチュレンヌは、寝室に向かう途中の廊下で一人つぶやいた。
違法に財産を増やしてご機嫌顔だが、すぐに顔をしかめる。
「しかし、一番の金づるの妖精亭から巻き上げられなくなったのは痛いな。想定外の出費もしてしまったし……
その分の埋め合わせにはまだほど遠い」
 チュレンヌは先日、『魅惑の妖精』という名前の酒場、というより地球でいうところのキャバクラに
近い店に寄ったのだが、そこでアンリエッタの女官を名乗りながら何故かウェイトレスをやっていた少女に
痛い目に遭わされた。彼女に己の悪行をアンリエッタに報告されるのは非常にまずいので、チュレンヌは
たまらず口止め料まで払って退散した。少女の目がいつなくなるか分からないので、もう『魅惑の妖精』亭から
金を吸い上げることは出来ないといっていいだろう。
 その時に改心すれば、この後の事態も起きなかったのだろうが……生憎、人はそう簡単には変わらないのだ。
「これからは、他のところの税の徴収をより厳しくしないといかんな。それも、あの女官の目に
触れないように……」
 悪だくみしながら寝室の扉を開けて中に入ると……目の前に広がっている光景に、思わず唖然となった。
「な、何だこれは!?」
 何と部屋の片隅を、巨大な繭が占領しているのだ。どうやら、昼に露天商から取り上げた繭が巨大化したようだ。
 普通なら、繭が大きくなるなどあり得ないので警戒することだろう。しかしここにいるのは
守銭奴のチュレンヌ。彼は深く考えずに歓喜した。
「うっほほう! 何故かは知らんが、あの金入りの繭がこれほどの大きさに! もしや、
中の金も増えてるのではないか!? どれ、確かめてみよう!」
 魔法で繭に切れ目を入れて、それを広げて中を覗き込む。
「おお、あるある! 金貨に銀貨がザックザクだ! 素晴らしい! 全部で何エキューになるかな……」
 すぐに中身を取り出そうと考えるが、ここで違和感に気がついた。どれだけ力を入れても、
身体が繭から抜けない。それどころか、不可思議な力でどんどんと中に呑み込まれていくではないか!
「な、何だ!? ひ、引っ張られていくぅ! た、助けてくれー!」
 悲鳴を上げるが、その声は繭のせいでくぐもっていて、衛兵には全く届かなかった。そして、
チュレンヌの肥満体はすっぽりと繭に呑み込まれてしまった。
「ぬわ―――――!!」

 翌日。昼頃の時間に、チュレンヌはベッドの上で目を覚ました。
「……ん? わたしは、いつの間に眠って……確か昨晩は、恐ろしい目に遭ったような……」
 徐々に思い出して、繭のあった方へ目を向けるが、そこに繭は影もなく、いつも通りの部屋の様子があるだけだった。
「夢でも見ていたんだろうか……。そうだろうな……。よくよく考えたら、あんなことがある訳ないか……」
 寝ぼけ眼でベッドから降りると、ちょうどタイミングよく、屋敷のメイドが彼の着替えのために入ってくる。
「旦那様、おはようござ……きゃああああッ!?」
 しかしメイドは顔を上げて自分を見ると、すぐに目をひん剥いて甲高い悲鳴を上げた。
チュレンヌは度肝を抜かれる。
「な、何だ!? 何事か!?」
「か、怪物ぅぅぅぅぅッ!」
 メイドはクルリと反転し、諸手を上げて逃げていってしまった。突然のことにチュレンヌは、
怒りが湧くより呆気にとられる。
「な、何なのだ、一体……。何年も仕えているメイドだというのに、このわたしを見て怪物とは、
どうしたことか……」
 顔に何かついているのだろうかと思って鏡の前に立つと、そこに映っていたのは、普段見る
自分の顔ではなかった。
「な、な、なぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!? 何だこれはぁぁぁぁぁッ!!」
 今の自分の姿は、どう見ても人間のものではない。顔は二枚貝のようで目はカタツムリよろしく
突き出ており、胴体は楕円形で肌は銅貨のように赤光りしている。手でペタペタ顔を触ると、
感触からそれが幻ではないことが分かった。
「わ、わたしの身体は、どうなってしまったのだぁッ!?」
 すっかりパニックになっていると、寝室に衛兵が押し寄せてきた。メイドが呼び寄せたらしい。
彼らも今の姿のものがチュレンヌだと分からずに、彼に槍を向ける。
「か、怪物め! チュレンヌ様をどこへやった!?」
「よもや、食ってしまったのではあるまいな!?」
「化け物めー! 屋敷から出ていけー!」
「ま、待てお前たち! わたしだ! わたしがチュレンヌなんだ! あ痛ッ! 落ち着け! 話を聞けぇー!」
 必死に訴えるチュレンヌだったが、衛兵たちは聞く耳持たず。槍を突き出して、あっという間に
チュレンヌを追い出してしまった。

 昨晩チュレンヌが口にした店、『魅惑の妖精』亭。そこはスカロンというオネェ言葉の中年男性が
切り盛りする酒場であり、多くの美少女たちによる接客が売りである。こう書くといかがわしい店に
思うであろうし、実際そうではないと言い切れない面もあるが、スカロンと従業員の少女たち自身は、
この商売に真剣な気持ちで向き合っている。トリスタニアが怪獣たちに蹂躙されて街から笑顔が消えていた時も、
スカロンが先頭に立って人々を励まし、無償で物資を被災者に配ったのだ。そういう真摯な心根も、
妖精亭が支持されている要因の一つだろう。
 そしてこの店に今、ルイズと才人は厄介になっていた。学院が夏季休暇に入ったある日、
マグマ星人らの陰謀の際に完全に出遅れたことを反省したアンリエッタの命により、平民に扮して
トリスタニアの民から種々の情報や噂話を収集する任務に就くことになったのだが、ルイズが
支度金が足りないと抜かしたばかりに、紆余曲折会って一文無しになった挙句にスカロンに
拾われたのだ。今はルイズが店の女の子の一人、才人が皿洗い兼雑用として面倒を見てもらっている。
「一時はどうなることかと思ったけど、ルイズの任務も順調に行ってるみたいで良かったよ」
 夜に開く妖精亭の開店準備をしている最中に、厨房からルイズの様子をながめた才人が言った。
傍目からは独り言を言っているように見えるだろうが、実際はゼロと会話している。
『そうだな。ルイズも、まだまだぎこちない感じだが、店に馴染んでるようで何よりだ。
結果オーライってとこだな』
 相槌を打つゼロ。ルイズは当初、貴族のプライドからウェイトレスの仕事も任務も中途半端に
なっていたが、才人の説得で思い直し、今は真面目に努力してどちらもこなしている。特に酒場は
人々の噂が集まりやすい、任務に格好の場所なので、結果的にはスカロンに雇われたのは幸運と言っていいだろう。
「さて、本日も頑張りますか」
 腕まくりした才人が気合いを入れて、準備を進めようとする。その矢先に、ボロ布をすっぽり被って
姿を隠した何者かが、羽扉を開いて妖精亭に入ってきた。
「あら、お客様、開店はまだですよ。もうしばらく待っていただけませんでしょうか?」
 それを、スカロンの一人娘で店一番の人気の少女、ジェシカが相手にする。見るからに怪しいが、
こういう店だとそういう人間の来店も時々あるので、慣れた様子だ。
 しかし闖入者はこう答えた。
「ち、違う。わたしは客ではない。どうか、助けてほしいのだ。他に行く宛てがない……」
「え?」
 さすがにこんなことを言われたのは初めてで、さしものジェシカも面食らった。
「と、とにかく中に入れてくれ……」
 闖入者はそのまま店内に入り込もうとしたが、焦っていたせいか、布の端が床に引っ掛かって、
ズルリと脱げてしまった。
 そしてその下の、人外の姿が露わになる。
「きゃああああああああッ!? か、怪物よぉーッ!」
「ま、待て! 騒がないでくれ! これには、事情が……!」
 途端に店の少女たちが絶叫し、怪物がなだめようとするが、騒ぎを聞きつけたスカロンと
杖を持ったルイズに阻まれる。
「怪獣め! 妖精ちゃんたちには指一本触らせないわよ!」
「一体、どこからやってきたのかしら? それはともかく、とっととここから去りなさい!」
「ま、ま、待って下さいぃ! ホント、怪しい者ではないんです! は、話を……!」
 オネェ言葉だが筋骨隆々のスカロンと気の強いルイズはかなりの威圧感を放っている。
怪物は、ルイズの方を見て特に脅えた。
「何だ何だ? どうしたんだ?」
 そこに才人もやってくると、怪物をひと目見て、こう叫んだ。
「うわッ!? カネゴン、カネゴンじゃないか!」
「かねごん?」
 ルイズたちは、カネゴンが何か分からずに才人に振り返る。一方の腰を抜かしていた怪物、
いや怪獣カネゴンは、才人にすがるように這っていく。
「ぼ、坊ちゃんは、この姿が何かご存知なのでしょうか!?」
「あ、ああ……」
 怪獣の顔のアップにやや顔が引きつりつつも、才人はカネゴンの説明をした。
「カネゴンってのは、あー……俺の故郷で、親が子供にするしつけ話に出てくる怪獣だ。
道に落ちてるお金をネコババするくらいの、金にがめつい人間が変身してしまうものなんだって。
その姿、まさしくそのカネゴンだ。俺も、まさか実在するなんて思ってもいなかったよ」
「ちょっと待って。つまり、その怪獣は元人間なの?」
 落ち着いたルイズが尋ねると、カネゴンがすっくと立ち上がって答えた。
「そうなんです! わたしの声に聞き覚えはないでしょうか? 徴税官チュレンヌですよ!」
「えええー!? あのチュレンヌ!?」
 大声を上げて驚いたジェシカを始めとする女の子たちは、その次にゲラゲラ笑い転げた。
「随分哀れな姿になっちゃったねぇ! 金にがめついと変身するって? あんたにピッタリじゃないか! 
あははははは!」
「ううう、うるさい! 平民の身分で、貴族のわたしを愚弄するか!?」
 チュレンヌ、今はカネゴンが怒鳴るが、それだけでジェシカらに何もしようとしない。
それでルイズが問いかける。
「あんた、杖はどうしたの? まさか、魔法が使えなくなったんじゃないでしょうね?」
 カネゴンはうッ、と言葉を詰まらせるが、すぐに返答した。
「実は、そうなんです……。いくら杖を手に呪文を唱えても、何も起こらなくて……。屋敷の者たちも、
わたしがチュレンヌだと信じてくれず、追い出されてしまったのです……」
「なーんだ、じゃあ今はあたしたちと何も変わりないってことね」
 カネゴンが無力と分かり、ジェシカは一層強気になる。
「今まであたしたちからお金を巻き上げてた罰が当たったんだよ。いい気味だね。一生そのままで放浪したら? 
それとも、見世物小屋に就職する方がいい?」
「か、勘弁してくれぇ! わたしは、人間に戻りたいんだよぉ!」
 言葉責めを受け、カネゴンは泣き言を吐く。するとスカロンがジェシカをたしなめた。
「おやめなさい、ジェシカ。ここはあたしたちで助けてあげようじゃない」
「え? いいの!? チュレンヌが今まで何したか、忘れた訳じゃないでしょ」
 意外そうなジェシカに、スカロンは語る。
「確かにチュレンヌさまは、いいお人とは言えないわ。けれど、今は行く宛てもなく、孤独に
苦しんでいる無力な子羊じゃない。見捨てるのは忍びないわ。ルイズちゃんたちと同じように、
あたしたちで面倒見てあげましょう」
「お、おお、何と慈悲深いのだ! 店長、恩に着ますぞ!」
 懐の深さを見せるスカロンに、カネゴンは最早貴族の体裁もなく平伏した。その時、急に腹を押さえて
うめき声を上げる。
「う、腹が……!」
「ちょっと、どうしたの?」
 才人は何事か察して、目を丸くしているルイズに言った。
「ルイズ、この前にこの人からもらったチップがあったよな? それ、借りるぜ!」
 言うが早いや、割り当てられた自分たちの部屋から金貨の入った袋を取ってきて、金貨を一掴み取り出す。
「ほら、こいつでしのぎな」
「あ、ありがたい!」
 カネゴンはすぐに金貨を受け取ると――口の中に放り込んだ! その行為に、周りがギョッと目を見張る。
「お金を、食べちゃった!」
 カネゴンはそのまま金貨をヒョイパクヒョイパクと食べた。すると0になりかかっていた
胸のメーターの数字が増加する。
「カネゴンの食べ物は、お金なんだ。このメーターの数字がなくなった時が、カネゴンが餓死する時なんだよ」
「意外と怖いことなのね、カネゴンになるのって……」
 さすがに命の危険があるとなっては、ルイズたちも見捨てるのが後味悪くなる。ルイズは才人に質問する。
「カネゴンを元に戻す方法ってないの?」
「う~ん……元々がしつけ話だからなぁ。どうやったら元に戻るのかは、全然分からねぇや」
 ウルティメイトブレスレットに目を向けるルイズだが、ゼロも否定を返した。
『俺も、カネゴンなんて見るのは初めてだ。どうすればいいのか、見当がつかねぇぜ』
「困ったわね……」
 すぐに元に戻す方法は分かりそうにないので、先にカネゴンの処遇を決めることにする。
スカロンが告げる。
「とりあえず、当面チュレンヌさま――カネゴンちゃんにはサイトくんと同じく、このお店でお掃除、
お皿洗いでもしてもらいましょう。自分の食べるお金は、自分で稼いでもらわないと」
「う、ううむ、仕方ないか……」
 貴族のプライド故か嫌そうなカネゴンだが、今の状態ではわがままを言っていられない。
しぶしぶと了承した。
「ルイズちゃんとサイトくんは、悪いけどカネゴンちゃんが元に戻る方法を一緒に探してあげてね。
そういえば、近くによく当たる占いのお店が出来たそうだし、そこから当たるのはどうかしら」
「そうさせてもらうわね。図書館とかに行っても無駄でしょうし」
「他のことはおいおい決めるとして、ひとまずはこんなところね。じゃあ、ちょっと予想外のことが
起きたけど、今日も一日張り切ってお仕事しましょう!」
 スカロンの仕切りでカネゴンの処遇が決定すると、ルイズたちは滞っていた開店準備に戻っていった。

 カネゴンの乱入でひと悶着起きた『魅惑の妖精』亭を、外の物陰からじっと観察している者がいた。
冒頭に出てきた、星人ブニョである。
「……宇宙人反応あり! あそこにいるのがウルトラマンゼロで間違いないな」
 ブニョは耳の穴からアンテナを出し、そのセンサーで妖精亭にいる才人がゼロに間違いなしと判断した。
「そうと分かれば、早速作戦の準備だぁ。ゼロめ、せいぜい今の内に人生楽しんでるといいや。
うふふふふッ!」
 ブニョは悪知恵を働かせてゼロ暗殺計画を立てると、その用意のために引き上げていく。
相変わらずフラフラしている身体を引っ張って、トリスタニアの裏通りの暗がりに溶け込んでいった。


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