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ゼロのルイズとオラクルレイ 03


 わたしは考える。
 オリコがギーシュのゴーレムをめちゃくちゃにしたって、
 何をしたって新しい朝はやってくるのだ。

「ふふ……お目覚めですか、お嬢様」
「お願いオリコ、背中がムズムズするからそれはやめてちょうだい」

 ちゃっかり使用人の衣装を身につけながらわたしのことを甲斐甲斐しく世話するメイド
 もといオリコは今日も何を考えているのかよく分からない笑みを浮かべながら、
 着替えを手伝ってくれたのだった。

 そんな心地の良い背中のムズムズを感じながら、実はわたしは上機嫌だった。
 なんてたって昨日の活躍っぷりったらなかった。
 剣を持った瞬間ゴーレムを切っては投げ切っては投げ……いや、投げてはいないけど。
 とにかくめちゃくちゃにしてしまったのである。

 これでオリコの評価はルイズの使い魔から、ギーシュに勝った平民ということになり
 その名前は全校生徒に知られることになったのである。
 キュルケ曰く、変なやっかみに付け込まれなければ良いけどということだったけれど
 オリコの戦闘力ならば、多少のメイジ相手でも立ち向かっていけるのではと思う。

 まあ、使用人の衣装に身を包んだ彼女が
 そんな戦闘力を有しているように見えないのはご愛嬌というところだけど。


 彼女は学力面でも優秀だった。
 一度忠告を受けたことはたいていは覚えているし、
 意味はわかっていなくても授業の内容も把握している。
 もっとも実技試験ではわたしと同じく戦力外になってしまうのが悲しいところだけど
 元からメイジではない上に使い魔であるオリコには成績などは関係ない。

 それで食事の時間に慣れば使用人に混じって給仕を開始し、
 平民に嫌がらせをする貴族がいれば、さりげない嫌味攻撃をする。
 彼女の戦闘能力は理解されているから、迂闊に決闘も申し込めない貴族はヤキモキするしかない。

 彼女は平民の間で我らの剣と呼ばれているらしい。
 そんなふうに挙げ奉るのならば給仕をさせるのをやめろと言いたい。
 まあ、オリコの意志でやっているんだろうから仕方ないけれど。
 そうそう特にシエスタという名前のメイドと仲良くなったらしい、
 平民同士お似合いと見るのか、わたしのほうが仲がいいもんねと胸を張ればいいのかは微妙。

 その微妙ついでに言っておくと彼女は使い魔たちとも交流を続けているそうだ。
 言葉の通じない彼らに一体どんなコミュニケートをしているのかは知らないけれど、
 ボディーランゲージで大抵のことはわかるとの事だった、正直その才能は末恐ろしいものがある。



 そんなある日の休日のこと、そういえばオリコに剣を買ってあげようと思いいたった。
 彼女は剣など使ったこともないしと謙遜をしていたけれど
 ズブの素人が剣を振り回してゴーレムを切り裂くなんてことは出来ないはずだ。
 きっと彼女は凄腕の剣士で、いつもはその実力を隠しているのは容易に想像できた。

 オリコを連れてトリステインの城下町までやってきた。
 その名前はブルドンネ街。
 大きな通りを抜けて歩いて行くと、オリコが物珍しそうにキョロキョロと周りを見回している。
 わたしがその様子を面白おかしいものでも見るかのように眺めていると、その頬に朱が差す。

「物珍しい街ね」
「そう? オリコの板世界ではこんな街並みではなかった?」
「ええ、もっと埋め尽くすような人々がいて、高い建物があったわ」

 それはなんとまあ情緒がなさそうなことで。
 スリが多いこの街がオリコの琴線に触れるかどうかはわからないけれど
 ひとまずまあ、気に入ってくれたご様子。

「そういえばルイズ、今日はどこへ行くの?」
「とても良い所よ」
「この街並みが言うところの良い所って言うと、ここから見える宮殿とかかしら」
「女王陛下に謁見してどうするのよ」
「ぜひとも平民の声に耳を傾けてくださいって願うわ」

 それはまあ、なんとも怖い申し出。
 アンリエッタ陛下にそのような言葉を吐いた瞬間首を跳ねられてもおかしくない願い。


 武器屋にたどり着くとオリコは口をあんぐりとした。
 何か想像と違っていたらしく、頻りにここなのルイズって目で言っている。
 私としてはオリコのお眼鏡に適わなかったのは残念だけれど、連れてきたものは仕方ない。

 店の中は随分と暗くランプの光が支配している場所だった。
 正直武器屋なんてわたし自身も縁がないところだからなんとも言えない。
 ただ評判のいい武具を売っているというウワサ話だけで連れてきてしまった。

「評判のいいデザートを売ってそうな雰囲気は何一つ感じられないわね」
「ごめんなさいねオリコ、でも今日はオリコの武器を買ってあげようかと思ってね」
「……武器? 前に振るった剣みたいな?」
「その通りよ、魔法を操るわたしの前線でオリコが盾となって戦うの、いい感じでしょう?」
「うーん……どちらかと言えば近接戦闘よりも遠距離戦のほうが性に合うのだけれど」

 まあ、たしかにオリコが前線で無骨な剣を振るってるよりかは
 後方でメイジみたいに魔法を使っている方が似合っているのかもしれない。

「あ、後方用の武器もあるのよ、弓とか」
「弓ね……確かに武器としては有効かもしれないけれど、私に扱えるかしら?」
「大丈夫よ、剣も振るったのも初めてなんでしょう? 弓だってどうにかなるわ」
「……さすがに耳や胸が削ぎ飛びそうな武器は扱うのに遠慮が居るわね」

 たしかに。
 私も突然武器が性に合っているから弓を使いなさいと言われれば戸惑うかも。

「若奥様、どうです、このレイピアなんかは」

 武器屋の主人に進められて眺めてみる。
 たしかに豪華な装飾があって、何よりオリコに似合いそうな気がした。

「綺麗だけれど、お値段は張りそうね」
「だいじょうびだって! このルイズ・フランソワーズはそうそうのお値段じゃ驚かないわ」
「いや、折ったりした時に申し訳ないという意味でね?」
「おでれーた! そっちのお嬢さんが剣を振るうって? あんたは森の奥で楽器でも弾いているのがお似合いだ!」


 すると突如何処かから声が聞こえてくる。

「な、なに、どこから聞こえてきたの!?」
「ルイズ、どうやらあの乱雑に積まれている剣から声が聞こえるわ」
「剣から……? もしかしてインテリジェンスソード?」
「い、インテリジェンスソード? さすがに聞いたことのない名前ね」

 インテリジェンスソードとは意志を持つ魔剣のこと。
 主に骨董品としての価値が高くて、武器としては扱いに欠ける。

「剣がしゃべっているなんて……さすがはファンタジーね……」
「ふぁんたじー?」
「いいえ、こちらの話」
「ふうん?」

 オリコはよくそのふぁんたじーという言葉でコチラの世界を表現する。
 よっぽどその世界らしいことがふぁんたじーなんだろうか。

「おい、デル公! お客様との相談中に出てくんなって言ってるだろうが!」
「何が相談中だ、無理に身の丈に会わなそうな剣を選びやがって! 使い手をよく見ろい!」
「あはは、なんだか面白そうな剣ね、喋るなんて不思議で面白いわ」

 オリコは何となくその剣を気に入ってしまったらしい。

「ねえ、デルさん? 私は美国織莉子、あなたの本当の名前を教えてほしいな」
「おお、礼儀正しいじゃねえか、俺の名前はデルフリンガー、冥土の土産に覚えておきな!」
「……さすがにこの年齢で冥土参りをするのは勘弁願いたいんですけど……」

 オリコはその剣を軽々しく握り、場所を確かめてから上下左右に振り……

「ルイズ、これにしましょう」
「は? いやいやいや、もっといい剣はあるわよー、このレイピアなんかはおすすめよー?」
「いいのよ、これで、折れたらどうなるか見てみたいし」

 なかなかひどいことを仰る。

 その後も何とかして他の剣を買わせようとするのだけれど、オリコは首を縦には振ってくれなかった。
 ……いやいやいや、どうしてこんなただ喋る剣なんか気に入ったのだろうか?



 そしてある日のこと。
 土くれのフーケという盗賊によって、学園内の宝物が盗まれてしまった。


 騒ぎも騒ぎ大騒ぎ。
 基本的にお祭り騒ぎが大好きな貴族たちは自分の勉強などそっちのけで
 土くれのフーケとはなんなのか、どのように盗んだのかを話題にして持ちきりだった。

 そしてわたしはというと、そんな話題にはまったく興味を示さず……

「ルイズ、昨日も思ったのだけれどあなたの学習効率は良くないわ」

 オリコからお説教を受けていた。

 元からの素養の関係なのか、オリコが特別要領が良いのか分からないけれど
 彼女は数日にしてほとんどの座学を理解してしまっていた。
 書く文字は異世界語なのでまったく理解できないけれど、こうして聞こえてくる言葉は手厳しいものばかり。
 曰く、もっと教師の感情を読めだの、黒板に書かれている筆圧で大事なものを理解しろだの。
 そんなん人間業かー! と怒鳴りたくなってしまった。

「オリコ、でも、筆圧なんてわからないわよ、わたしは先生じゃないんだから」
「そう? よく見ていると、大事そうな場所というのは力が入っているわ、声にも」
「そりゃ、オリコが特別なんでしょうよ……」

 私の中では土くれなんてどうでもよくて、とにかく、オリコの授業から逃れたいその一心だった。


「遊撃隊?」

 わたしは耳を疑った。

「ええ、平民の間で組織されることになったの」
「でも破壊の杖が盗まれてしまってずいぶん経つし、なんで今になって」
「さあね、これ以上の族の侵攻を受けるのも嫌だし、かと言って自分たちでは何もしたくないってところかしら」

 そんな自分勝手な、とペンを走らせながら考えた。
 確かに破壊の杖を盗まれてしまったことは大事件だし
 トライアングルクラスのメイジが簡単に宝物庫に侵入したのも大事件だし
 何もしないって言う訳には行かないんだろうけど。

「先生方は何をしているのよ」
「ミス・ロングビルが先頭に立って遊撃隊を指揮してくれるそうよ」
「教師ですらない……」

 ちなみにミス・ロングビルとはオールド・オスマン学園長の秘書をつとめている女性だ。

「それとオリコが何の関係があるわけ?」
「そりゃあ私も貴族を倒すほどの剣の使い手の平民ですし? 頼りにされてしまえば断れません」
「……まあ、そうなるわね」

 これはわたしも重い腰を上げなければいけないところだ。



 翌日からオリコは私の使い魔という職……職なのかどうかはわからないけれど、
 そこから離れて活動をすることになる。
 ミス・ロングビルの指揮のもと、逃げた土くれのフーケの足取りを追っているらしい。
 しかし相手は神出鬼没で王都でも手を焼いているほどの大怪盗。
 そう簡単に根城や証拠の痕跡など見つかるはずもなく……。

「はぁ、こう都合良くは行きませんね」
「そりゃあ、王立騎士団でも手を焼くほどの怪盗だもの」
「逆にそんなメイジが襲いかかってきたらどうしましょうか」
「……30メイルのゴーレムを呼び出すっていうんだから、いくらオリコでもお手上げね」

 ただ最近何故かフーケの被害は減ってきているとの事だった。
 これを都合よく、破壊の杖によってその身を焼かれただの、実はもう捕まっているだの
 そんなことをいう貴族もいなくもなかったけれど。
 オリコは難しい顔をしながら、宝物庫がある塔を見上げる。

「30メイル以上のゴーレムが力押しで、宝物庫の壁を破った……か」
「なになに? 推理でもしているの?」
「いえ……なぜ土くれのフーケはそんな力押しで壁を破って進入するという手立てを取ったのかと」
「そりゃあスクウェアクラスの固定化が何回もかけられていたからでしょう」

 最もその固定化の呪文がかけられていたはずの場所から侵入されてしまったんだけど。

「土くれのフーケはトライアングルクラスのメイジ……当然スクウェアクラスの固定化には対抗できない……」
「そういうことになるわね、尤もその固定化のほころびから侵入されてしまったけど」
「フーケはその固定化のことも、力押しで壁が壊せることも知っていた……ということは?」
「まさか、内部犯だっていうの?」

 土くれのフーケがどんな人物かまではわからないけれど、
 こと、学園の宝物庫を破る手段を捜査していたのは確実だということになる。
 もちろんそんなことを先生方に言えばバカバカしいと一笑に付されてしまうんだろうけど。

「私の推理で必要なのは、力押しで宝物庫が破れることを知っていた人物……」
「それと、スクウェアクラスの固定化がかけられていることを知っていた人物……」
「「オールド・オスマン学園長?」」


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