あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのルイズとオラクルレイ 02


 翌日。
 そういえば使い魔を召喚したんだっけ、なんてことを考えながら起き上がると、脱ぎ散らかしておいたはずの下着のたぐいが全部なくなっていた。

「……ああ、きっとオリコが気を利かせて洗ってくれてるのね」

 昨日親友の誓いをたてたのにもかかわらず扱いがぞんざいなのではないかと思ったのは、制服に着替えて髪の毛をブラシで梳かしている時だった。
 ……ちなみに、ブラシはオリコが。

「ほんと、ルイズって髪の毛がさらさらね、私なんてくせっ毛で」
「ああ、気持ちが良いわ……ってちゃうねん!」
「え。なにか痛いところでもあった?」

 オリコはキョトンとした瞳でこちらを見る。
 ちょっと彼女は天然が入った部分があるからしっかりと注意しないと。

「……そのまま続けて」
「はい、ご主人様♪」

 楽しげな様子で鼻歌なんかを歌いながら髪を梳いてくれているのを見て、
 それはダメなんだよと注意を出来る人がいるのならば見てみたいものだ。
 あと、ご主人様っていう名称は辞めてほしい。


 オリコと一緒に部屋から出ると、ちょうど左側の扉からキュルケが顔を出す。
 狙っていたのではないかと思うようなタイミングだった。
 さぞかし使い魔を自慢したいに違いない。
 彼女が呼び出したのは火山山脈のサラマンダーだったから。

「おはようルイズ」
「おはようキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・ フォン・アンハルツ・ツェルプストー」
「……なんでフルネームなのよ」

 だってもうサラマンダーらしき生物がもう顔を出しているところだったから。
 できるだけ相手にしたくなかったって気持ちが分かる人って居る?

「あなたの使い魔って、本当に人間だったのね」
「はじめまして、ツェルプストーのお嬢様、私は美国織莉子と申します」
「あらあら、これはご丁寧に」

 お互いに頭を下げ合うキュルケとオリコ。

「って、違うわよ! ここは、あなた人間なんて使い魔にしちゃったんだー! って叫ぶところじゃないのよ!」
「それならそれでも良いけど」
「なんか、彼女を見ていると不思議な圧力があるというか」

 ああ、それは何となく分かる。
 オリコって不思議な威圧感が存在するのよね。
 おっとりとしていても、逆らい難い風圧っていうかなんて言うか。

「あらあら、この火トカゲさんはとても人なつっこいですね」

 ソレでもう使い魔同士は仲良くなっちゃってるし。


 食堂にはオリコの食事など用意されてないことが予測されたので、道中で彼女と別れてキュルケと二人で歩いていると。

「しかし、ルイズが魔法を成功させるなんてね」
「わたしだってたまには成功するのよ、知ってるでしょ」
「ロックとかアンロックくらいの簡単なものだけどね」
「それ、寮でやったら犯罪だから、罰則だから」

 てな話をしながら歩いていると、小柄でメガネを掛けた青髪の生徒が歩いてくる。

「おはようタバサ、相変わらず辛気臭い顔をしているわね」
「……平民を召喚した人間に言われたくない」
「あはは! 使い魔召喚ではタバサが一等賞だったから仕方ないわね!」

 タバサが召喚をしたのはウィングドラゴン。
 つまりはドラゴン。
 ちゃんとしたハルケギニアの生物である。

 オリコはチキューというところの、ゴギョウというところからやってきたらしいから
 ハルケギニアの平民とはちょっと違う立場なんだけど、
 そんなことを説明したところで二人には到底納得してもらえないだろうから黙っておく。

 アルヴィーズの食堂には沢山の食事と使用人が働いていて、
 その中にはオリコの姿もあり、不慣れながらも一生懸命……

「って、なんでオリコまで働いているのよ!」


 食事を終えてから(厳密に言えばオリコの仕事が終わってから)教室までたどり着くと多くの視線がわたしのほうを見た。
 よほどオリコを召喚をしたことが珍しいらしい、まったく暇な輩ばかりだ。

「注目されていますね、私」
「気にしないの、堂々としていればいいのよ」
「使い魔なのに堂々としちゃっていいんでしょうか」

 ……ソレは確かに。
 ただ彼女の雰囲気はなんとも言えないから、楚々とされていても目立ってしまう。
 これは普通に過ごしてもらうしかないのだろう。

「それにしても、授業なんて参加してもいいんでしょうか」
「寝顔を晒したりしなければいいけどね」
「ソレはなに一つ授業を理解していない身としては辛いのではないでしょうか」

 まあ。うん。
 わからないところを教えると言っても、彼女が授業のほぼすべてがわからないのは分かりきっている。実技の授業になればなおさらだ。

 扉が開いて先生が入ってくる。
 ニコニコと愛想が良く機嫌が良さそうなのが目にとれる。

「皆さん春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」

 嫌味か―!
 と、オリコに悟られないように心の中だけで文句をいう。

「おやおや、変わった使い魔を召喚したものですね、ミス・ヴァリエール」

 ほら来た。

「ゼロのルイズ! 召喚できないからってその辺を歩いてた平民を連れてくるなよ!」
「こんなかわいい美少女がその辺歩いているっていうの! マリコルヌ!」
「……いや、そこは論点じゃねえよゼロのルイズ!」

 ちっ、ごまかせなかったか。


 授業の前には一悶着はあったものの、赤土の先生が泥をマリコルヌに放り込んだところで舌戦も騒ぎも止み。
 土系統にこだわりがある先生に長い話を聞きながら、授業は淡々と進んでいく。

 オリコをちらりと見るとノートにペンを走らせながら必死にメモをしている様子だった。
 これならすこしくらいほうっておいても大丈夫そうね。

 その後もキュルケが真鍮のことをゴールドと見間違えたり、スクウェアとかトライアングルメイジのことをオリコに説明をしたりしながら授業は淡々と進んでいく。
 本当に淡々と、こちらは眠気をこらえるのに大変な思いをするくらいに。

 それでもまじめに授業を受けている様子のオリコの隣にいる以上
 主人であるわたしにはちょっとした居眠りをするということは出来ない。
 そう……居眠りなど……ぐぅ。

「ミス・ヴァリエール、そんなに私の授業をは退屈ですか?」

 ちょっとだけカクンと来たところを見咎められる。
 それならあんまりまじめに授業を受けている様子もないタバサとかキュルケとか!

「いえ、ちょっと……」
「ちょっと?」
「お花を摘みに行きたくなってしまいまして」
「さっさとなさい、ああ、ついでにその寝ぼけ眼も何とかしてくるといいですよ」

 生徒たちの笑い声が包まれる中、私はその声を背にトイレへと向かうのだった。


 オリコに魔法に関しての感想を聞くと、
 ひとまずは楽しんで授業を行っているということだった。
 まあ、たしかに魔法もない異世界で体験する出来事というのは
 想像以上に物語のようなファンタスティックな出来事なのかもしれない。

 そんなこんなで昼休み。
 朝食と同じ失敗をしないように、オリコも一緒に連れて行く。
 魔法学院の食事はたくさん作られているからオリコ一人が増えたところで困る心配はないだろう。
 ついでに明日の朝にはオリコの分を用意してもらえばいいし。

 ただオリコときたら何が楽しいのか、目を離すと給仕の手伝いを始めようとするのが困ったところなんだけれども。

「なんだかあなたの使い魔って変わってるわよね」
「言わないでよ」
「いや、悪口じゃなくて、貴族にも平民にも分け隔てなく優しいというか、マイペースというか」

 それ、後の言葉が言いたかっただけなのよね?

「ほら、今だってギーシュが落とした小瓶を拾い上げてるし」
「よく気がついていい使い魔でしょう?」
「いじけないのルイズ、ちょっと自分の言うことを聞いてくれないだけじゃない」

 そうなのだ。
 注意も忠告もハイの一言で済ましてしまうオリコは、マイペースに頼まれた自分の仕事をこなしてしまうので、今もこうして銀食器に載せられたケーキを配っている。

「……ん?」

 その時食堂が静まり返っていることに気がつく。
 なんだなんだと思いながら周りを見回していると

「そうだ! その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分のためだけに調合をしている香水だぞ!」
「それがギーシュの机の近くにおいてあるってことは、つまりお前は今モンモランシーと付き合っている、そうだな!」

 なんだ、またギーシュの浮気グセか。
 などと食事を再開できればよかった。

「軽率に香水の瓶を拾い上げたおかげで二人のレディの名誉が傷つけられた、どうしてくれるんだね?」
「あらあら、それは大変申し訳ありませんわ、お詫びはどうしたらよろしいのかしら」
「そうだな……この食堂の床に顔を擦り付けて、申し訳ありませんギーシュ様、今後はこのようなことはないように致します、とでも宣言してくれるかな?」
「お断りいたしますわ」
「そうかそうかやってくれるか……え?」
「お断りすると申し上げました、元はといえばギーシュ様がお悪うございますし、それを平民の小娘に八つ当りするなど……貴族にあってはならないことなのではないですか?」

 まずい! 
 わたしは急いでパンを飲み込んでオリコの元へと寄っていく。

「平民ごときに貴族としての礼儀を教えられようとは……この生意気な平民に処罰を与えてもいいのではないか!」
「そうだ! やっちまえギーシュ!」
「貴族を貴族と思わないような奴には命で償わせろ!」

 わたしがオリコの近くに寄って今すぐにでも謝るように説得する。
 でも彼女はそっとを首を振るばかりでその場を動こうとしない。
 ああ、もうまったくマイペースなんだから!



「僕はメイジだ、だから魔法を使って戦う、異論はあるまいね?」
「ええ、構いませんとも、その泥人形で一発でも攻撃を当ててご覧なさいな」
「後悔するなよ平民!」

 ワルキューレがオリコに向かって走りだす。
 その攻撃はオリコの体に当たったかのように思えた。
 が、しかし。
 攻撃は彼女の身体を捉えることはなく通り過ぎて行く。

「避けたか、だが!」

 ギーシュがワルキューレに指示を出してどんどんとオリコへと向かわせていく。
 しかしその一つ一つの攻撃はオリコの身体を捉えることはなかった。
 身体を前後左右に揺り動かしている彼女はまるでダンスでも踊っているかのように飄々として掴みどころがない。

「避けるだけが能か! 平民!」
「一発でも当てられたらその文句はお聞きしましょう」
「舐めるなよ、ワルキューレたち、一斉攻撃で生意気な平民を殺してしまえ!」

 しかしワルキューレたちの攻撃は一度も当たることはなく、
 その上オリコは息を一つ切らした様子も見えない。


「すごいじゃないの、オリコ! あんな身のこなしができるなんて!」
「ええ、ええ、すごいけれど、なんで一発も攻撃しようとしないのよ!」
「そりゃあ、殴ったら痛いからじゃないの?」
「……そうか!」

 わたしはキュルケの言葉を聞いて思いつくことがあった。
 オリコは武器を持っていない、攻撃をしようにもただの殴り合いでは青銅には何の効果もない。

「だ、誰か彼女に武器を! 平民がメイジに楯突くための武器をちょうだい!」
「……ルイズ、あなた!」
「オリコは負けないって言った、わたしはその言葉を信じる! だから、決着を付けさせるためにも武器を!」

 プライドなんかそっちのけだった。
 今はオリコに勝ってほしいとその思いから。
 武器を持ってそうな誰かに向かって話しかける。

「ルイズ、君はあの平民を味方するつもりなのか」
「わたしの使い魔なのよ! 大事にしない訳にはいかないでしょうが」
「わかったよルイズ、この青銅のギーシュが、平民に武器を与えよう」
「ギーシュ!」


 オリコは自分に向かって投げられた青銅の剣を見てもしばし呆然としているばかりだった。
 話は聞こえていたはずなのだからその剣を手にとってワルキューレたちに反撃をすればいい。
 私はそう思ってプライドをかなぐり捨ててまでお願いをしてきた。
 ……なんだけど。

「私、こういう武器は持ったことがないんですけど」

 オリコは困ったように苦笑いをするばかりだった。
 そんなことわたしが知るわけがないんじゃないのよぉ―
 と、頭を抱えたくなってしまった。

「平民、君にも腕が付いているんだ剣をふるうくらいはできるだろう、もっともワルキューレはそれくらいでは倒せないけれどね」
「平民平民うるさいですね……まったく」

 そう言いながら与えられた剣を持ち振るう。
 最初から重みを感じませんでしたと言わんばかりに軽く軽く。
 オリコもその自分の体の変化に驚いている様子だった。

「えい」

 軽い一言ともに戦闘態勢に入ってなかったワルキューレを真っ二つにする。
 ……え?

「な、な、どこにそんな力を隠していた、卑怯だぞ平民!」
「それが私にもさっぱり……」
「ええい! 手加減は無しだ! 僕の全技術を持って君を叩き潰す!」

 そういって何体ものゴーレムがオリコを取り囲む。
 しかしそのゴーレムたちは難病かもしないうちにオリコによって全て倒されてしまった。
 まるでバターでも切るかのような動きで真っ二つになるワルキューレたち。

「ギーシュの負けなのか……?」

 誰かがそう言うとオリコは恥ずかしそうに俯いた。
 どうやらワルキューレを呆気なく倒してしまったのが恥ずかしいらしい。
 このいっちょまえに照れちゃって!

「すごい、すごいじゃないのオリコ!」
「この力……なんなんでしょう?」
「なんでもいいじゃないの! オリコはギーシュに勝ったのよ!」
「……そうですね」

 なんとなく釈然としない様子のオリコだったけれど、ふうと一息吐いて
 こちらに向かって笑顔を向ける。

 などと大活躍を見せたオリコではあったが、その次の食卓でも給仕の手伝いをしていたので、ギーシュにはたいそう嫌な顔をされたと言っておく。




新着情報

取得中です。