あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔の夢-10

『サモン・サーヴァント』で呼び出され、
『コントラクト・サーヴァント』によってルイズの使い魔となった乾巧の朝は早い。 

 水汲み場で洗面器に水を汲む。ルイズの顔を洗う為のものだ。
 ルイズを朝起こすためにも日が昇ってすぐに水汲み場にダッシュし、駆け足で戻らなければならない。
 東京にいた時は早起きなんて滅多にしなかったし、水汲みするなんて機会はまずなかった。
 こんなシンドイ事、よく我慢して毎日続けているものだと自分でも思う。

 こういったことを考えられるようになったのも
 異世界に飛ばされたという環境に慣れて余裕が出来たからなんだろうか。
 それにそうだな、この分だと今日は何事もなく終われそうだか……

 その時、背後から突風が襲ってきた!

 反応するも時既に遅く、大きく吹っ飛ぶ巧。

(こいつは……) 
 何度も喰らってきたのでもう覚えた。
『ウィンド・ブレイク』とかいう風属性の初歩の魔法だ。

「『ゼロ』のルイズの使い魔だな」
 そこには杖を構えた少年がいた。さっきの魔法はこいつが撃った奴か。

 ポケットからファイズフォンを取り出し、フォンブラスターに変形させる。 

『Burst Mode』

 チッ、今日もこんな始まりか。

「で、そいつの相手をしてたから遅れたわけ? 」
「ああ」

 ギーシュとの決闘から早数日。
 学院の生徒達の巧に対する評価は真っ二つに分かれていた。
『あの平民がギーシュに勝てたのは持っていたマジックアイテムのおかげだろう』
『いいや、ギーシュを打ち負かしたのはあの平民自身の実力の賜物だ! 』
 前者は別にいいとして、面倒なのは後者の中にいる一部の連中。
 何でも貴族というヤツは厄介で、強いか弱いか気になるとどうにもならなくなるらしい。
 ギーシュに勝利した翌日から立て続けに巧に決闘の申し込みが相次いだ。
 そこでやんわりと下手に出て断りを入れれば幾つかは回避できた物を、
 直情径行な巧の態度は、彼等の燃え滾る闘志に油を注ぐ結果になってしまった。

「そいつはどうしたの? 」
「杖をなんとか撃ち落とすだけしたら泣いて逃げてった」

 主に巧に挑んでくるのはラインレベルといわれるメイジ達だ。
 この世界の魔法使いは力量によってドット、ライン、トライアングル等、と分けられており
 あれだけ苦戦したギーシュですら最も位の低いドットレベルらしい。
 ワンランク上の奴等は巨大な火球やら降り注ぐ氷の槍やら手加減なしにぶつけてくる。
 あんなもん生身のままで受けたら確実にお陀仏だ。銃一丁でよく凌げているなと思う。
 シエスタの言ってた魔法の使えない平民が貴族を恐れるってのがよく解った。

「大体ね、あんた変身すればあんな奴等一発なんだからベルト持って外出なさいよ! 」
「イチイチ面倒なんだよ」

 ここ最近ルイズの部屋に戻ってくる時、必ず巧はボロボロになって帰ってくる。 
 確かに変身して相手をすればこうも傷つくことなく片がついていることだろう。
 しかし、メイジとはいえ人間相手に変身するのはやはり気が引ける。
 ま、ギーシュの時は状況が状況で、人形相手だったから遠慮をしなかった訳だが。

「身が持たないわね」
「ああ、まったくだ」

 ルイズは巧の顔を覗き込み睨みつけて言った。

「私のね」

 ルイズもまたこの現状には限界に来ているようだ。
 洗濯を頼めばお気に入りの下着もズタズタの布切れにしてきて、
 さっき行った水汲みも砕けた洗面器の欠片を持って帰ってくる始末である。

「次、物壊して帰ってきたら承知しないって言ったわよね? 」
「ああ」

 ルイズはこの上なく冷め切った目で巧に通告した。

「という訳だから、アンタの朝ごはん抜きね」

 使い魔の夢

 広場に寝転がる。見渡すと他の使い魔達の姿がどこにもない、どうでもいいことだけどな。
 こんな目にあうのも何回目になるだろう。
 だが正直、良かったと思っている。空腹より疲労の方が体に堪えていたからだ。
 連日連夜決闘だのこき使われだので幾ら寝ても疲れが一向に取れやしない。
 ルイズもメイジの連中も食事中に巧をどうこうしようなんてことはしない筈だ。
 誰にも邪魔される事なく眠りに付く事が出来る。

 空には燦燦と太陽が輝いていて、見てるとコルベールの事を思い出す。あいつハゲだし。 
 決闘の日の晩、馬小屋にて一月もの入院を余儀なくされるほどの怪我を負った状態で発見されたらしい。
 今のところは老朽化した屋根の倒壊に巻き込まれたという形になってはいるが……
 真相は絶対『あの時のアレ』によるものだ。見つかった場所と時間帯からして間違いない。
 そう考えてみると責任の一端は『アレ』の所有者の自分にあるので
 さすがに詫びの一つでも入れに行ったほうがいいんじゃないかとルイズに相談すると、
『絶対ダメだからね! そんなことをしてホントのことがバレちゃったら、
 諸々があんたのせいで、ひいては主人の私が責任を取る羽目になるでしょうが! 
 ……あんた自身が責任丸々全部受けてくれるっていうんなら行ってもいいけど? 』
 と言われて踏みとどまった。ルイズの言う事ももっともだ。責任を取れる自信はない。
 ま、殺しても死にそうにない奴みたいだからこうも心配する必要はないんだろう。
 放っておく事にする。

 それにしても相当疲れてるはずなのに寝付くことができない。
 遠くから焼きたてのパンの匂いがするからだ。疲れていても体は正直で、空腹には敏感に反応する。
 外で食事をとっている貴族とかでもいるのか、全くいいご身分だな。俺なんて朝飯抜きだぞ。
 足音がすると共に匂いが近くなってきた。見せびらかしにでも来たのか、それとも決闘の申し込みか。
 すぐ近くまで来たのか、足音が止まった。一体何処のどいつだ。
 面を拝んでやろうと顔を上げると、

「タクミさん? 」

 そこにはパンを詰めた籠を下げたシエスタがいた。
 なんだかここの所、こんな形で誰かと会う事が多い気がする。

 差し出されたバケットを一撮み摘んで口に入れる。そういえば……
「給仕の方はいいのか? 」
「ええ、手が空きましたから。それより……ご飯抜きにされたんですか? 」
「ああ」
 巧の横に座り込んだシエスタは窘めるように言った。
「駄目ですよ、タクミさん。ちゃんと朝ごはんは食べないと。
 厨房に寄って下されば、賄いの物で良ければ幾らでもお出ししますから」
「いや、そっちに迷惑がかかるだろ」
「そんなことありませんよ、マルトー料理長も厨房のみんなも
 皆さんタクミさんのファンなんですから」

 俺にとっちゃそっちの方がキッツイんだよ、嫌われている方がまだ気が楽だ。
 乾巧が五百の職を転々としてきた理由の一つは年長者との軋轢が絶えなかったからだ。
 元いた世界では、あの手の親父共とは怒鳴り怒鳴られの関係こそが当たり前だった。
 好意と憧れを持って接してくるマルトー達とどう付き合って行けばいいのかわからない。

「……でしたらまず私に言ってください。私がタクミさんのお料理を用意しますから」
「いいのか?」
「ええ、タクミさんのお役に立ちたいから……、あ」
 急に俯くシエスタ。 
「いいえ、ホントはこんな事言いにきたんじゃないんです。謝りたくって来たのに……、私ったら……」
「謝るって何のことだよ?」
「ギーシュさまとの決闘の時、逃げちゃったことです。
 ごめんなさい、タクミさん私を庇ってくれたのに。あの時、本当に怖かったから……」
「別に気にしちゃいない」
「で、でも……! 」
「いいって」
 シエスタが顔を上げて言った。
「……タクミさんは立派ですね」
「んな大したモンじゃないさ」
「だって、あの時だけじゃなくてこれまでも皆の為に必死で戦ってきたんでしょう? 」
 何でシエスタが知ってるんだ、俺がここに来るまでのことはルイズにしか話していないのに。
「もう一つ、謝らないといけません。
 ……すいません、聞いてしまったんです。ミス・ヴァリエールとのお話」
 何だ、そういうことか。
「私、自分が恥ずかしいです。世の中にはタクミさんみたいに貴族を敵に回してでも
 皆を守ろうって一生懸命戦っている人がいるのに、怯えてばっかりで……」
「だから、大したもんじゃなく「大したことですっ! 」」
 シエスタの顔は真っ赤になっていた。
「タクミさんは私たちに教えてくれました、とっても大切なこと。
 だ、だから、わ、私は……、そんなた、タク、タクミさんが……」
「お話はその位にしてもらえるかしら? 」

 いつの間にやらそこには物凄い形相をしたルイズが立っていた。
 驚きのあまり固まったままのシエスタを一瞥すると、
 巧の首根っこをつかまえて、そのままどこかへと引きずっていった。

「痛いんだよ、放せこのバカ! 」
「バカはアンタの方でしょーが!
 ちょっと目を離したら何、アレは!? 餌がもらえるんなら誰にでも尻尾を振るのね!
 そうね、忘れてたわ。あんた犬だもんね。イヌ・イタクミだもんね! 」 
「変な所で区切るんじゃねぇ! 俺はいぬい・たくみだ! 」
「どっちだっていいわよそんなの! さっさと『ばいく』のある場所に案内しなさい! 」 
「何でだよ!? 」
「今すぐ街に行って買わないといけない物があるからよ! あー、もう時間がないわ!
 詳しい事は道すがら説明するから、早く案内して! 」

 結局、丸一日こいつのお守りか。かったりぃ。

 トリステイン王国の首都トリスタニアにある王立銀行は、
 今日もまた日中にも関わらず厳重な警備体制が敷かれていた。
 賊というものは深夜ばかりを狙う訳ではないと身をもって知ったからである。

 その教訓を教えてくれた怪盗『土くれ』のフーケはトリスタニア郊外の森の中にいた。

「ここまでだ、観念しろ、『土くれ』! 」
「お前にやられたマルコの借りを返させて貰うぞ! 」 
「この人数相手にゴーレムを出して逃げ切れると思うな! 」    

 周りを囲むのは五十人余りもの魔法衛士達。
 前々からの反省を活かして、その数倍にも及ぶ人数を追跡にあてて来た。

 全く、か弱い女一人に大の男どもが寄ってたかって恥ずかしくないのだろうか。
 だが、一部の衛士達が纏うマントは今までに見たことがない代物だ。
 恐らくは自分と同じトライアングルクラスかそれ以上に違いない。
 確かに『錬金』でゴーレムを出した所でこの状況から逃げ切るのは困難だろう。

 まぁいい。
 そんなものに頼らなくても自分にはこれがある。

 右手に持った解放の錠を口にあて、『あの言葉』をそっと囁く。
「ヘンシン」
 知性を持っているであろうその錠から声が聞こえてきた。
『Standing By』

 そして、解放の錠を腰に巻いた『狂乱の環』の窪みに差し込む。

『Complete 』

『狂乱の環』から青白い光が発せられると共に、青色のラインがフーケの体を流れていく。

「な、何だ!?」

 突如、放たれた光の中から現われたのは―――

 黒地に幾重にも張り巡らされた白の線、顔に映えるのは橙色の双眼。

『狂乱の環』が生み出した鎧を全身に纏うフーケの姿だった。   


「クッ、小癪な真似を! 」

 隊長らしきメイジの指揮の元、数十ものマジックミサイルがフーケに向かって飛んでいった。 

 そして、城壁をも打ち破る程の爆発が炸裂した!

「世間を賑わせた『怪盗』の末路としてはあっけないものだったな」

 奴がどのようなマジックアイテムを使おうが、これを喰らって生きては――――

「何をしたって無駄よ、この私の玉のような肌にはね」  

 フーケは平然と佇んでいた。
 身に纏った鎧には何一つ傷がついていなかった。

「じゃ、今度はこちらから行きましょうか」 
 フーケはそこから矢のごとき速さで駆け出すと、 
「グガッ! 」
 一番近くにいた隊員の首を右手で軽くへし折った。 

「モ―リス! モーリス! うわぁぁぁ!  」
「いちいちうるさいよ、一人死んだ位で」
 解放の錠とベルトの右の窪みからできる銃を構えて
「ッ! 」
 亡骸を抱え泣き叫んでいるそいつの眉間を撃ち抜いた。

 惨状を目の当たりにした残りの衛士隊員が次々と雄たけびをあげる。
「き、貴様ァッ! 」 
「殺してやる、この『悪魔』め! 」

「……クックックッ」

 フフッ、『殺してやる』ねぇ……
 何で私は今までこんな簡単な事に気付かなかったんだろう。

 そうだ、逃げるのが困難なら全員『殺して』押し通ればよかったのだ。

「……クックックックッ、アーハッハッハッ、アーハッハッハッハッ! 」

 最後に残った衛士に銃で止めをさし、
 断末魔が森に木霊するのを聞くと共に『ヘンシン』を解除した。
 それにしても血生臭いねぇ、全部自分で殺してきておいて言うのも何だけれど。
 しかしこの『狂乱の環』の力は凄い、今までで一番の当たりクジじゃないだろうか。
 この力さえあればトリステイン王家のボンクラ共は愚か、
 自分を今の境遇に追い込んだ憎っくきアルビオンの連中に復讐することだって夢じゃない。
 今すぐにでもアルビオンに行ってあの忌まわしい王の首を……、

 いや、そんなことをしても何の意味もない。
 例え行ったところでこんな弱い衛士隊をいたぶるのと同じ程度の楽しみしか味わえないだろう。
 どうせならこの力を愉しむに相応しいもっと強い相手と戦ってみたい、勝利してみたい。

 ああ、あの男がいい。
 ミス・ヴァリエールの使い魔のあの男。
 自分と同じような『環』を持ち、虫の好かない貴族の坊やを叩きのめした強者。
 自分にこの『狂乱の環』の使い方を教えてくれた掛け替えのない恩人。

「近いうちにでもちゃんとお礼をしないと……」 

 狂気に満ち溢れたその目は、すでにかっての『怪盗』のものではなかった。

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