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第三十五話「故郷のない女」


ウルトラマンゼロの使い魔
第三十五話「故郷のない女」
サーベル暴君マグマ星人 登場



 爆弾騒ぎを引き起こす宇宙人たちを捕らえようと行動を起こしたルイズたちだが、その直後に春奈が、
自分のバッグを持っている人を見たと言って、それを追いかけていってしまったので、ルイズたちは
仕方なく春奈を探すことになった。途中で宇宙人たちの襲撃があったが、ウルティメイトフォースの力で撃退した。
 そして、才人が春奈を発見した場所は劇場前。そこで春奈は、獣耳を生やした女性にバッグを
返してくれるよう懇願していた。その女性の正体とは……。

「そこッ! だらしなく歩かないで! 些細な動きでも、メリハリをつけることを一時も忘れるなッ!」
「は、はいぃッ!」
 劇場内の舞台の上で、獣耳の女性が、歩行の練習をしている才人に厳しく怒鳴りつけた。
その後は、タバサを叱りつける。
「そんな声で観客に聞こえると思ってるの!? 声は腹から出しなさいと言ったでしょうッ!」
「……大きな声を出すのは苦手……」
「言い訳しないッ!」
 その次は、演技の練習中のルイズに矛先を向けた。
「腕はもっと大きく、身体全体で動かす! あなたは身体が小さいんだから、その分他の人より
大きく動かないといけないわよッ!」
「ひ、人のこと小さいって、あんな堂々と……くぅッ……!」
 叱られたルイズは怒りで震えるが、何かを思い直すと、しぶしぶ言う通りに動きを直した。
だが不平は漏らす。
「全く、何だって貴族のわたしが、演劇の役者にならないといけないのかしら……!」
「ごめんなさい……。私のせいで、皆さんを巻きこんじゃって……」
 練習を続けながら、春奈が小声でルイズに謝った。その春奈を、才人が励ます。
「春奈が悪いんじゃないって。あの人、ウェザリーさんが頑固なのがいけないんだよ」
 才人が春奈をかばうと、ルイズは不機嫌になって彼に当たる。
「全く、ハルナにはとことん甘いわね! そもそも、ハルナがバッグなんて持ってこなかったら、
こんなことにはなってなかったのよ!」
「おい! そんな言い方はないだろ……!」
「そこッ! 私語をする暇があるのなら、発声練習をしなさいッ!」
「は、はいッ!」
 ルイズと才人が言い争いになりかけたが、ウェザリーの叱咤が飛んできたので、二人とも
思わず背筋を伸ばした。
 しかしルイズは、懲りずに不平不満を垂れ流し続けた。
「ウェザリーもウェザリーだわ。わたしたちが役者をしないとバッグを返さないなんて、
何考えてるのかしら……!」

 春奈の鞄を持っていた女性の名はウェザリー。今度劇場で舞台を開く劇団の団長だという。
春奈は彼女に、鞄を返してくれるよう説得を試みたのだが、それにより、事態は思わぬ方向に転がった。
 ウェザリーは鞄を、私が拾ったものだから私のものだ、の一点張りで返してくれる気配がなく、
春奈のものだという証拠があるのかと反論してきた。春奈は中の隠しポケットを調べれば分かると
主張したのだが、それをしようにも、ウェザリーは触らせようともさせてくれない。あまりの頑迷さに
ルイズたちが手を焼いていると、ウェザリーは何を思ったか、こんな交換条件を出してきた。
 曰く、ルイズたちが次の劇のキャラクターのイメージにピッタリ合うのだという。それで、
役者として舞台に上がってもらえるのならば、鞄を返してもいいと提案してきたのだ。
 当初、ルイズたちハルケギニアの人間は嫌がった。この世界では、劇団や役者の社会的地位と
信用は低く、貴族がやるようなことではないのだ。しかし、春奈の大切なものが入っているというので、
才人が必死にルイズたちを説得し、どうにか条件を呑んでもらうことになった。
 こうしてルイズ、才人、春奈、シエスタ、それから巻き込まれたキュルケとタバサが、
ウェザリーの鬼のような舞台稽古を受ける羽目になったのだった。

 長時間の厳格な指導がひと段落つき、ようやく休憩の時間がやってくる。だがその直前に、
ウェザリーがルイズを呼んだ。
「ミス・ヴァリエール。休憩の前に一つ話があるの」
「もう、何よ! まだ演技指導!?」
 すっかり嫌気が差しているルイズだが、話の内容はそうではなかった。
「いいえ。ミス・ヴァリエールの知り合いだという方々が、飛び入り参加を希望されてるのだけれど……」
「……知り合い? 誰?」
「わたくしよ。ルイズ」
「俺たちもいるぜぇー!」
 ルイズが聞き返すと、舞台袖から、涼しげな女性の声と、それと反対に暑苦しい男の声がした。
「今の声、まさか……!」
 ルイズと才人は、聞き覚えのある声により、目を見開いた。そして舞台に上がってきたのは……。
「あああぁぁぁぁッ!?」
(アンリエッタ姫さま! それにウェールズ……じゃなくて、グレン!)
 ドレスは着ていないものの、明らかにアンリエッタその人。その後ろには、赤い瞳のウェールズ、
つまりグレンファイヤー。それともう一人、ギーシュをはるかに上回るほどである、非常に美形な男性、
計三人がルイズたちの目の前に現れた。キュルケは早速、三人目に見とれて熱い視線を送る。
 三人目は誰だろうと才人が思っていると、それを察したのか、グレンが近寄ってそっと囁きかけた。
(あいつな、ミラーちゃん)
(ミラーナイトか!?)
 正体を教えてもらった才人は、ミラーナイトに小さく尋ねかけた。
(ミラーナイト、人間に変身したんだな。でも何だって……その……やたらと目立ちそうな顔立ちを
選んだんで?)
(私はエスメラルダに仕える騎士。どんな時も、エスメラルダに恥ずかしくないよう身だしなみに
気をつけるよう心掛けてますので)
(変身も、身だしなみに入るのか……?)
 それに何だか、それだけが理由じゃないような気がする。才人は、ミラーナイトがどういう性格なのか、
ちょっと把握した気になった。
 ルイズたちが目を丸くしていると、アンリエッタがフフフと笑った。
「『お友達』に意外なところで会ったからって、そんなに驚かなくてもいいのに……」
「え、ええと……」
 ルイズは言うべきことに困り、目を泳がせた。才人は今の言葉の意味を考える。
(『お友達』って……つまり、お忍びだって言いたいのか。それにしたって……何考えてるんだよ! 
あのお姫さまは!)
 才人も、こんな場所に国の元首がいることに頭が痛くなった。一方で、ウェザリーが
アンリエッタについて問いかける。
「ミス・ヴァリエールのご友人とは……こちらも魔法学院の生徒? どこかでお見かけしたような気が……」
「ま、魔法学院の生徒ではないのですが、わたしの、幼馴染……というか、親友です」
 ルイズは必死に設定を考えてごまかした。ウェザリーは、特に怪しく思わなかったようだ。
「名前は……聞いた通り「リエッタ」「グレン」「ミラー」でいいんですね?」
「はい。今後、リエッタとお呼び下さい」
「俺も、そのまんまグレンでいいぜ! 堅苦しいのは嫌いだ!」
「私も、どうぞミラーと」
 何のひねりもない名を名乗る三人であった。才人は思わず肩を落とす。
「役者がちょうど三人分足りなかったから、ちょうどよかったわ。それでは、休憩が終わったら、
早速あなたたちにも練習に加わってもらいます。では、一旦解散」
 アンリエッタたちの加入が認められると、休憩に入る。ルイズと才人、シエスタは、すぐに
アンリエッタに駆け寄って密談を始める。
「姫さま! どうしてこんな下賤な場所におられるのですか!?」
 真っ先にそれを尋ねるルイズ。するとアンリエッタは、ルイズの心中とは反対ににこやかに答えた。
「ちょっと事情があって、身分を隠して街へ出てるの。そしたら、ルイズ、あなたが劇団に
入ったなんて話を聞いたものだから……わたくしもやらせてもらおうと思って」
「思ってって……そんな気軽に……。もう少し、ご自身のお立場というものをお考え下さい……」
「もう、そんな固いこと言わないで。お城にも許可はもらっているのよ。上層部からだけだけどね。
それにこうしていると、何だか子供の頃に帰ったみたいで面白いじゃない」
 楽しそうにはしゃいでいるアンリエッタに、ルイズは脱力させられた。
「それと、わたくしがアンリエッタということは秘密よ。劇団にいる間は、普通に接してちょうだいな」
「言われなくとも、承知してますとも……。こんなこと、他言できる訳ないじゃないですか……」
 アンリエッタの指示に、ルイズは頭を抱えてうなずくしかなかった。
 才人は、グレンとミラーの方に質問をする。
「そっちは、どうしてここに?」
 それに他には聞こえないように気を配りながら、ミラーが答える。
「あなた方ばかりに、侵略者の動向を探ってもらうのは気が引けたので、私たちもお手伝いしようと
思って出てきたんです。それで女王様と同じく、あなた方がここにいると知りまして。どうやら
お困りのようでしたので、こうして力を貸しに来たのですよ」
「ヘッヘッ、ちょっと楽しみだな。演劇なんて生まれて初めてだぜ。どうせだから、目一杯楽しもうぜ!」
 グレンが呼びかけると、ジャンボットやゼロが二人を羨ましがった。
『むぅ、人間に変身できるというのはいいものだな……。私にも自由に行動できる身体があったならば、
サイトたちの手助けが出来るのに』
『俺も才人と合体してなくちゃいけない状態じゃなかったら、一緒に演劇に出れるのになぁ~。
なぁ才人、身体はそのまんまでちょっとだけ俺と代わってくれよ』
「何でそんなノリノリなんだよ、ゼロ……」
 真面目なジャンボットは補佐が目的のようだが、ゼロは明らかに楽しもうとしていた。
それで才人はため息を吐く。珍しくボケとツッコミの立場が逆だった。
 話し込んでいると、キュルケがミラーの方へとすり寄ってきた。
「ねぇ~、ミラーさん? アタシともお話ししましょうよ~。アタシ、ゲルマニアのキュルケって言うのぉ。
ミラーさんのこと、色々と教えてほしいなぁ~」
「いいですよ。お話し出来る範囲であればね」
 色香をたっぷりに振り撒いて媚を売るキュルケだが、ミラーは色仕掛けをサラリとかわした。
ギーシュなんかとは異なり、身持ちは固いようだ。
 グレンの方には、アンリエッタがもじもじと頬を赤らめながら近寄る。
「あの、ウェールズ様……いえ、グレン様。よろしければ、わたくしとお話ししていただけますか……?」
「おう、もちろんいいぜ。けど、俺には「様」はいらねぇよ。グレンで結構だ」
「はい……グレン」
 アンリエッタは頬を朱に染めたまま、そっと目を伏せた。

 アンリエッタ、グレン、ミラーの三人を加えて稽古を続行することになったルイズたちなのだが、
すぐにまた新たな問題が発生した。練習数日目に、ひたすらきつい稽古の繰り返しにキュルケが、
嫌気が差したと言って稽古を放り出してしまったのだ。劇場から飛び出していくキュルケを、ミラーが
「説得してみます」と追いかけていった……。

「お待ち下さい、キュルケさん」
 ブルドンネ街の裏通りに入ろうとしていたキュルケを、ミラーが呼び止めた。振り返ったキュルケは、
ミラーの顔を確かめてパッと笑顔を作った。
「あらぁ、ミラーさん。あなたに追いかけてもらえるなんて、アタシ、とっても嬉しいですわぁ」
「キュルケさん、どうして稽古を投げ出すような真似をしたんでしょうか? ウェザリーさんが
おかんむりでしたよ」
 キュルケの媚売りをかわし、ミラーはすぐに尋ねかけた。するとキュルケは肩をすくめる。
「さっき言った通りですわ。アタシ、あんなに地味で苦しいだけの練習ばかりするのは、性に合わなくて」
 と言うと、ミラーに逆に肩をすくめられた。
「ここには私とあなたしかいませんし、嘘を吐く必要はありませんよ」
「え?」
「あなたは稽古を、それほど苦に思ってません。顔を見れば分かりますよ。稽古を脱け出したのは、
別の理由があるんでしょう」
 そう指摘されたキュルケは、驚きつつも素直に認めた。
「鋭いですねぇ……ええ、その通りですわ。ちょっと気になることがありまして、それで」
 キュルケの「気になること」を推理するミラー。
「この先は、爆弾騒ぎの一番新しい現場ですね。もしやキュルケさんは、ルイズたちに代わって
爆弾事件の調査をするつもりではないでしょうか」
「……本当に鋭いですわね。ご明察、正解ですわ」
 当てられたキュルケは、感心したように息を吐く。
「メイドの話じゃ、ルイズったら、爆弾事件を調べに来たはずなのに、ここ数日は舞台稽古に
掛かりっきりでしたでしょう。だから、あの中では出来がいい方のアタシが補ってあげようと思ったんですわ」
「なるほど。しかし、それならそうとルイズたちにはっきり言えばよかったではないでしょうか? 
わざわざ嫌われるような真似をせずとも」
「とんでもない。ルイズのことだから、それを言ったら、自分の仕事なんだから自分でやると言って
聞かないでしょう。それに、部外者のウェザリーにこの話を聞かれるのはよくないと思いますので」
「確かに。キュルケさん、あなたは普段の態度とは違って、とても思慮深い方なのですね」
「うふふ。口説いてるのなら、前半は不要ですわよ」
 キュルケと顔を合わせて微笑し合ったミラーは、彼女に告げる。
「しかし、そういうことならば、キュルケさんではなく私がその役目を引き受けますよ。
私は幸い、筋がいいようなので、キュルケさんよりも打ってつけと言えるでしょう」
「そうですわね。ミラーさんは素人とは思えないと、ウェザリーも絶賛してましたわね」
 ウルティメイトフォースゼロ一の技巧派のミラーナイトは、演劇の腕前も相当なものだった。
体力は戦闘のために鍛え上げているので問題なく、演技力も抜群だった。ウェザリーからも、
基礎稽古が必要ないくらいだと判断された。
「ウェザリーさんに上手く言って、調査の時間を作ってもらいます。ですのでキュルケさんはご心配なく、
練習にお戻り下さい。その方が、みんな喜びますとも」
「お心遣い、ありがとうございます。けど今日一日だけは、あなたのお手伝いをさせてもらいますわ。
あんなこと言ったばかりだから、さすがに戻りづらくって。いいでしょう? ミラーナイトさん」
「おや、私の正体に気づいてたのですか?」
 ミラーナイトは驚いた様子を見せたが、軽い演技だとキュルケには見破られていた。
「またまた。グレンの正体を目の当たりにしたアタシが、あなたの正体に気づけないなんてことは
ありませんわよ。分かりやすすぎじゃないですか」
「ですよねぇ。グレンとともにいる私のことに気づかない訳ありませんよねぇ」
 クスクスおかしそうに笑い合うキュルケとミラー。それからふとキュルケが尋ねかける。
「ところであなたたちがいるのなら、もしかしたらウルトラマンゼロやジャンボットも人間の姿で、
この近くにいるのかしら? 誰がそうか、教えては下さらないかしらぁ?」
「おっと、それは秘密にさせてもらいますよ。誰が聞いてるとも分かりませんので、みだりに
口にすることは出来ません」
「そうおっしゃらずにぃ。ヒントだけでも下さらないかしらぁ?」
「ふふ、いけません」
 キュルケのおねだりをかわし続けたミラーは、自分が調査に出る許可をもらうために、
一旦ウェザリーの下へ戻ることにした。

 キュルケが飛び出した後でも、ルイズたちは練習に励み続けていた。と、その中で、歩行練習中の
アンリエッタがつまずいて転びかける。
「あッ!?」
「おっと、危ねぇ!」
 そこをすかさずグレンが抱き止めた。
「大丈夫か? 女王さ……あぁいや、リエッタさんよ」
「は、はい……! ありがとうございます、グレン……」
 支えられたアンリエッタは頬を赤く染めて立ち上がる。そのまましばらくポーっとしているので、
グレンが心配した。
「おい、大丈夫か? もしかして、熱があるんじゃねぇよなぁ」
「は、はい! 大丈夫です」
 声を掛けられて、アンリエッタは身体をビクリと震わせて我に返った。それから、グレンに向かって
言い訳するように取り繕う。
「ね、熱なんてありません。ただ、今この瞬間に、ウェールズ様に抱き止められたということが
嬉しくて、それで……」
「そうなのか? そういや、ウェールズはあんたの恋人だってことだったな」
 今のウェールズの身体を見下ろしたグレンは、表情を曇らせてアンリエッタに向き直った。
「……すまねぇな。こいつを完全に助けてやれなくって」
「え? ど、どういうことでしょうか」
「リエッタさん、俺にちょくちょく複雑な顔向けてるだろ。それくらい分かるぜ。俺が完全に
ウェールズじゃねぇから、つき合い方に困ってるって感じだ。……こいつの意識が起きてる状態で
助けられてたら、そんな顔しなくて済んでただろうに。ほんとにすまねぇ」
 グレンに謝られると、アンリエッタは慌てて首を横に振った。
「と、とんでもないです。グレンが謝ることなんてありません。確かに、わたくしの知る
ウェールズ様と雰囲気が大きく異なるのには未だ戸惑いがありますが……本当だったら、
そのウェールズ様は死んでいるはずなのです。それを、身を挺して救ってくれたあなたには、
感謝の気持ちしかありません。ですので、どうぞそんな顔はなさらないで下さい。あなたに
悲しまれたら、ウェールズ様がお目覚めになった時に、わたくしが命の恩人に失礼を働いたと
叱られてしまいます」
「そうか? じゃあ、そのお言葉に甘えさせてもらうぜ」
 頼まれたグレンは、あっさりと気分を切り替えた。根はかなり単純なのだ。
「それに、ウェールズ様とこうして一緒に演劇が出来るなんて、今までからしたら考えられないことです。
グレン、どうぞわたくしに、ウェールズ様との素敵な思い出を作らせて下さい」
「よっしゃ、了解だぜ。俺たちで最高の劇にしようじゃねぇか!」
 笑い合って誓いを交わしたアンリエッタとグレンだが、稽古中に雑談しているところが
ウェザリーに見つかり、叱られて泡を食うことになるのだった。

 その日の練習が終了した直後、才人はウェザリーと春奈の二人と一緒にいた。ウェザリーは
キュルケのことを思い出して、はぁと大きなため息を吐く。
「全く、彼女には困ったものだわ。せっかく光るものを持ってるのに、もったいない……」
「ウェザリーさん、そうキュルケを悪く思わないでやって下さい。確かにちょっと軽い性格を
してるけど、あれで結構友達思いのいい奴なんです。ミラーが説得してくれたみたいだし、
明日にはまた稽古に戻ってくれますよ」
 才人がキュルケを弁護すると、ウェザリーはうなずいて応じた。
「私としては、演劇に熱心になってくれるなら、それでいいわ」
 と語るウェザリーに、コップに注いだ水を飲んだ春奈がふとこんな質問を投げかけた。
「ウェザリーさんって、とても演劇に熱心なんですね。そんなに劇がお好きなんですか?」
「む。私が、劇が好きかって……?」
 質問を受けたウェザリーは、ややうつむき気味になりながら、回答を始めた。
「……演劇が好きなのは事実よ。だがそれ以上に……私には、これ以外にまともに生きる術が
ないのでね。それで熱心にならざるを得ないのよ」
「えッ……どういうことでしょうか」
 ウェザリーが打ち明けたことに、才人も春奈も驚きを見せた。ウェザリーは詳しく身の上を語る。
「私はこう見えても、貴族の家の生まれなのよ。だが、家は取り潰しになってしまってね。
一家は離散し、私は路頭に迷うことになった」
「ど、どうしてお取り潰しになんて……」
 予想外に重い話に、才人たちは戸惑う。ウェザリーは自分の獣の耳を指しながら、理由を話す。
「確かめた訳じゃないが、きっとこれが原因でしょう。見ての通り、私は獣人の血が入っている。
父は獣人の母を娶ったのよ。しかし、獣人の血は忌むべきもの。それで貴族の地位を剥奪されたに違いない。
更に私は、この見た目のせいで差別に遭い、ろくに職にありつけなかった。それで仕方なく、多くの
流れ者が行き着く演劇の道に入ったの。この世界で今のところやっていけて、本当に安心してるのよ」
「そうだったんですか……」
 ウェザリーに獣の耳が生えているのは、魔法が現実のハルケギニアならおかしくないものなのかと
思って才人たちは突っ込まなかったが、実際は差別されるものだと知って、彼女に同情を寄せた。
「今回の劇は、なかなか役のイメージに合う役者が見つからなくてね。困っていたら、天の恵みのように、
私の眼鏡に適う君たちがやってきた。是非とも舞台に上がってもらいたいと思って、少々強引な手で
引き受けさせてしまった。そのことについては謝るわ」
「い、いえ、いいんです。ウェザリーさんの生活が懸かってるなら、こちらから協力させてもらいます」
 不意に謝られた春奈は、思わず気が引けてしまった。
「ありがとう。約束通り、舞台が終わったら鞄を返す。それまでは、私のわがままにつき合ってほしい。
……それと、今話したことは、他の皆には内緒にしてちょうだい。貴族が多いからね、こんな気分が
悪くなる話をしたくないのよ」
「分かりました」
 ウェザリーの頼みに、才人と春奈は二つ返事で了承した。

 それからルイズたちは稽古に打ち込み続け、遂に役柄の発表の日がやってきた。ウェザリーの前に、
ルイズたち全員が集まる。
「それでは配役の発表をします。まず、王子ケイン役には……」
「きっとミラーさんね」
 キュルケが顔立ちから予測するが、ウェザリーが呼んだ名前は、
「サイト!」
「あら、意外」
「ほ、ホントに俺でいいんですか?」
 ミラーを差し置いての指名に、才人は思わず聞き返した。それにウェザリーはうなずき返す。
「私が、あなたが一番役に合うと判断したの。自信を持ちなさい」
「は、はい……!」
「私とミラー、グレンは敵国の貴族役よ。それで、ヒロインのノエル王女役なんだけど……」
「……!」
 主役の片割れの発表を、ルイズ、春奈、シエスタ、キュルケ、タバサ、アンリエッタが
固唾を呑んで待つ。そして、呼ばれたのは……。
「ミス・ヴァリエールにお願いするわ」
「わたし……!?」
 ルイズが口を開いて、顔を思い切り輝かせる。が、春奈から声を掛けられると、すぐに我に返った。
「おめでとう、ルイズさん」
「と、当然よ!」
 顔を取り繕って、鼻息荒く胸を張る。その様子をながめて、キュルケが肩をすくめた。
「あ~あ、ヒロインを射止めてルイズを地団駄踏ませようと思ったのに」
「まぁ、決まったものは仕方がありません。与えられた場所で最善を尽くしましょう」
「それじゃ、その他の配役も発表していくわよ。育ての親の老貴族は……」
 主役の二人を発表したウェザリーは、その流れで全員分の役柄を発表した。

 それからルイズたちは本稽古に励み、その努力が実って、素人ばかりの演劇は何とか成功を収めた。
そして春奈は、約束通りにウェザリーから鞄を返してもらうことに成功するのであった。

「ふぅ……。みんな、よく頑張ってくれたわね。劇が大盛況でよかったわ……」
 夜更け、劇の幕が下り、ルイズたちが帰っていった後の劇場の廊下で、ウェザリーが満足げに
息を吐いた。そして、楽屋の前までたどり着くと扉を開ける。
『おぉ、帰ったか。いやぁ、原始的ながらなかなか楽しい演劇だったぞ。俺様も、観客に混じって
楽しませもらった』
「!」
 楽屋には既に人がおり、入ってきたウェザリーに向かって声を掛けた。その相手を見返した
ウェザリーの目が見開く。
 椅子の上にふんぞり返ってウェザリーを待っていたのは、マグマ星人であった。
「……まさか、その姿で中に入ってきたの? 誰かに見られてはいないでしょうね。目撃されたら、
大変なことになるわよ」
『おい、俺様を馬鹿にしてるのか? そんなヘマをするか。当然、ずっと人間に化けてたさ。
誰にも不審に思われてないはずだ』
 明らかな怪人が出迎えたのに、ウェザリーはそのことに全く動じず、それどころか会話を行う。
「それで、わざわざ劇の感想を言うために、私を待ってたのかしら?」
『まさか。大事な報告があるんだよ』
 ウェザリーが問いかけると、マグマ星人はわざとらしく肩をすくめ、椅子から立ち上がると、こう告げた。
『いよいよ計画が最終段階を迎える。最後の攻撃が始まるのさ。お前も準備を整えな』
 それを耳にして、ウェザリーの身体が一瞬強張った。そして、マグマ星人におもむろにうなずく。
「……分かったわ。遂に来るのね。私の家を潰した……トリステインに復讐する時が!」
 と発したウェザリーの目には、冷たい怒りの炎が燃え盛っていた。


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