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第三十一話「体温3000度の対決」


ウルトラマンゼロの使い魔
第三十一話「体温3000度の対決」
超高熱怪獣ソドム 登場



 ハルケギニアの世界にやってきた春奈を学院にかくまってから、早三日目。既に昨日、
ダダとギギのタッグが学院に乗り込んでくるなどと、ルイズと才人の周囲には波乱が起こっている。
 そして今日もまた、新たな異常事態が彼らを襲っていた。
「あ~……あちぃ~……あちぃよぉ~……」
「暑い暑い言ってるんじゃないわよ……。余計暑くなるでしょ……」
「そうは言われても、暑いもんは暑いんだよ……」
 ルイズの部屋では、インナー姿の才人が汗だくで「暑い」と連呼するのを、同じように
汗だくで下着姿になっているルイズが咎めた。普段は日中からはしたない姿を晒すことなど
貴族のプライドが許さないのだが、部屋の気温は彼女の強固な矜持を溶かすほどであった。

 その日、魔法学院は、夏にはまだ早いにも関わらず猛烈な暑さに襲われていた。

 ルイズが才人に尋ねかける。
「今、何度?」
「36.5度」
「それ、あんたの体温じゃないの?」
「この部屋だよ。外は普通だってのに、何でこの学院だけ、いきなりこんな暑くなったんだ!?」
 あまりの暑さに苛立った才人がウガー! と叫ぶと、デルフリンガーがぼやいた。
「この程度の気温の変化に参るなんて、人間ってのは不便なもんだね」
「デルフ、お前は平気なのかよ?」
「俺っちは剣だからな。鉄が溶けるような温度でもなきゃヘッチャラなんだよ」
「今だけは、あんたが羨ましいわね……」
 うなだれたルイズが思わずつぶやいた。すっかりダラ~となっているルイズと才人に、
デルフリンガーが告げる。
「お前さんらより、そこで寝てる嬢ちゃんの方が辛いんじゃねぇの?」
「あッ、そうだった! 春奈、大丈夫か? 脱水症状起こしてないよな?」
 我に返った才人は、慌ててベッドで寝ている春奈の側へ駆け寄っていった。それを目にして、
ルイズがムッとなる。
(もうッ、面白くない! わたしの使い魔のくせに、ハルナのことばかり気に掛けて! あの娘は、
もうどこも悪くないってのに!)
 春奈が仮病を使っていることは、シエスタから聞いた。それを利用して才人の気を引いている
春奈には苛立ちを覚えるが、今は怒りを示す気力も湧いてこない。それほど暑い。
(ハルナには仮病を白状してもらいたいけど、今は先に、この暑さをどうにかしてもらいたいわね……)
 あまりの暑さのせいで、授業は急遽全て休講。教師たちは総出で、異常な高温の原因を調べている。
それまで、多くの生徒は学院の外へ避難しているが、ルイズたちは春奈がいるので、この場から
いなくなる訳にはいかなかった。
 早く原因を突き止めて、気温を元に戻してもらいたい。ルイズは切に願っていた。
「春奈、大丈夫か? ……うわ、すごい汗だ! まぁ、当たり前か……」
 春奈の容態をひと目見た才人は、彼女が自分たち以上に発汗していることに驚愕した。
だが無理のないことだ。ただでさえ高温の室内で、厚手の布団が掛かっているのだから。
「うッ……うーん……み、水……」
「水か? 分かった!」
 苦しそうな春奈のうめきで、才人がコップに水を注いで彼女に飲ませる。だが、その途端に
春奈は咳き込んだ。
「ゴホッ、ゴホッ!」
「春奈!? うわッ、お湯になってるじゃねぇか!」
 暑さのあまり、水は熱湯に変わっていたのだ。
「クソッ! 春奈は安静にしてなきゃいけないのに……こんな暑さじゃ、春奈の身体に障る! 
早くどうにかならないのか……!」
 才人は大きく舌打ちして、事態の早急な解決を願った。才人が春奈のことばかり気にして
自分には目もくれないので、ルイズはますます苛立ちを募らせる。
 そうしていると、才人の願いが天に届いたのか、状況を確認しに出ていたシエスタが戻ってきて、
一番に告げた。
「サイトさん、ミス・ヴァリエール! 教師の皆様が、この暑さの原因を突き止めました!」
「本当!?」
「やった! その原因って何だ? 教えてくれ!」
 ルイズと才人が飛び起きると、シエスタはこう話す。
「それが何と、学院の真下、地下倉庫に怪獣が張りついてたんです!」
「怪獣!?」
 まさかの原因に声を荒げるルイズたち。それから、ルイズが聞き返す。
「でも、怪獣とこの暑さがどう関係するの?」
 その疑問には、シエスタは次のように説明した。
「その怪獣なんですが……体温が異常に高いみたいなんです。推定体温は、何と2500度!」
「2500度!?」
 とんでもない数値に、ルイズも才人も目を見張った。
「その熱が地下倉庫から学院全体に伝わって、こんな猛暑になってるそうなんです……」
 シエスタが額に浮かぶ汗をぬぐいながら伝えた。こんな時でも暑苦しいメイド服を着ているので、
才人やルイズ以上に苦しそうだ。才人はシエスタの苦労を労う。
「ありがとう、シエスタ。けど、2500度も体温のある怪獣なんてな。どんな奴なんだろう……」
 才人が怪獣の正体を推測する。人間の常識を超越した怪獣といえども、そこまで高温なものは
そうそういるものではない。灼熱怪獣ザンボラーか、二日前に出現したグランゴンだろうか?
「それで、先生たちはどうするつもりなのか分かる?」
 ルイズが対策を問いかけると、シエスタはしっかりを調べていた。
「幸い怪獣に暴れる気配はないみたいなので、水系統の教師が中心となって、水の魔法を
浴びせて追い払う作戦が立てられました」
「なるほど。相手が熱いなら冷やせばいいって訳ね」
 納得したルイズは、ひと際大きなため息を吐く。
「早いところ、追っ払ってほしいわ。こうしてるだけでも、溶けちゃいそう……」
「直に作戦が実行されるはずですけど……」
 などと話していたら、急に学院全体が激しい揺れに襲われた。ルイズたちは思わずよろめく。
「きゃッ!?」
「始まったみたいです!」
「わっとッ! 春奈、大丈夫か!?」
 才人は真っ先に春奈のことを案じた。そのことで、ルイズとシエスタは同時にムッと顔をしかめる。
 だがすぐに他のことに気を引きつけられることになる。窓から一望できる、学院を取り囲む
平原の一箇所から、巨大怪獣が土を吹き飛ばして這い出てきたのだ。
「キギョ―――――オォウ!」
 四足歩行の、ゴルゴスのような岩石質の肌を持ちながら、表面が赤く熱せられているという、
見るからに熱い怪獣の出現により、ルイズたちを一層の熱波が襲った。ルイズが思わず叫ぶ。
「あっつ!? 遠くにいるのに、ここまで熱が伝わってくるわ! あいつが犯人で間違いないわね……!」
「あいつは……超高熱怪獣ソドムっていうのか……!」
 才人がすぐに携帯端末で怪獣の情報を調べた。するとルイズが尋ねかける。
「サイト、あれがどういう怪獣なのか、もっと分からないの? もしあいつが凶暴な性質だったら、
学院が危ないわよ」
 それに、才人は否定を返した。
「残念だけど、名前と、体温がすごく高いってことぐらいしか載ってねぇや」
 ソドムは、本来M78ワールドの怪獣ではない。ティガやダイナの故郷、ネオフロンティアスペースの
地球に生息する怪獣だ。ギャラクシークライシスという様々な宇宙の怪獣が多数召喚される事件によって
M78ワールドでも存在が観測されたが、そういう怪獣は生憎と情報が少ないのであった。
「そう。でもまぁ、さっきまで大人しくしてたみたいだし、凶暴じゃないみたいだけど……」
 ルイズがそうつぶやいた矢先に、ソドムはそれを裏切るかのように活動を始めた。
「キギョ―――――オォウ!」
 急に大きく口を開くと、そこから猛烈な火炎を吐き出したのだ! 火炎は学院の方向へと
飛んできて、直撃はしなかったものの校舎全体が高熱に晒される。
「きゃあぁッ! 攻撃してきたわ!」
「魔法攻撃を受けて、怒ってるんでしょうか……?」
 思わず悲鳴を上げるルイズたち。そして火炎を吐いたソドムは、ドスドスと激しく足音を
鳴らして学院へと一直線に向かい始める。
「こ、こっちに来るわよ!」
 窓から覗く光景の中では、地下から慌てて地上へ上がってきた教師たちが、ソドムの接近を
阻止しようと魔法攻撃を飛ばし始める。だが体温の高すぎるソドムの周囲は灼熱地獄なので、
近づくことすらままならず、遠くからでしか攻撃できない。そして、大きく距離を開けた位置から
飛ばす魔法では、ソドムにとっては豆鉄砲に等しい威力しか出ないようで、まるで足を止めることは
叶わなかった。
「このままじゃ、学院が危ないわ! サイト……!」
「あぁ!」
 ルイズの目配せを受けた才人がうなずいて、部屋を飛び出そうとする。ゼロに変身して
ソドムに立ち向かおうというのだ。
「ま、待って平賀くん! どこに行くの!?」
 それを、事情を知らない春奈が即座に呼び止めた。才人は彼女に振り返ると、短く告げる。
「春奈、俺たちがどうにかしてあいつを食い止める。お前はここで待っててくれ」
「ほ、本気!? 危険だよ!」
 血相を抱える春奈だが、才人は安心させるように笑いかけた。
「誰かがやらないといけないんだ。何、心配ないって。危なくなったら、きっとウルトラマンゼロが
来てくれるからな。それじゃ!」
「あ、待って……!」
 もう話している時間はないとばかりに、才人がルイズとともに飛び出していくのを春奈が
追いかけようとしたが、それをシエスタに止められる。
「ハルナさんは、ご病気なのでしょう? 安静にしてないとダメじゃないですか」
「うッ……」
 こんな時にシエスタからとげとげしく言われて、春奈は仕方なく浮かしかけた腰を下ろした。
 そして、ルイズと才人が出ていった扉を、羨ましそうに見つめた。

 学院の上空では、シルフィードに跨ったタバサとキュルケが、教師たちがソドムの進撃を
止めようとして、無駄な抵抗に終わっている構図を見下ろしていた。
「ちょっと、これまずいんじゃない? どうしてこう、立て続けに学院の危機が相次ぐのかしら」
 キュルケが焦った様子でつぶやく前では、タバサがソドムの容姿を観察して独白する。
「……間違いない。あれは、伝説の火竜山脈の古代竜。古文書に描かれた姿にそっくり……」
「え? タバサ、あの怪獣を知ってるの?」
 キュルケが驚いて聞くと、タバサはコクリと頷いた。
「地元の伝説では、火の精霊の怒りを静め、火山の噴火から人々を救うと云われている」
 その説明に、キュルケは疑わしそうに顔をしかめた。
「それ本当? 今の状況と真逆じゃない。それに、どうして火竜山脈の竜がこんな場所にいるのよ」
「そこまでは分からない。伝説は、伝説でしかないから、間違っていることも考えられる」
 正直に答えるタバサ。
「そう。まぁそれは置いといて、今は現実の状況よね。こういうピンチの時は、いつも彼が
来てくれるんだけど……」
 キュルケが噂をすると、果たして青と赤の光がどこからともなくソドムの眼前に降りていき、
それがウルトラマンゼロの姿になった。
「やっぱり! 今回も来てくれたわね。ゼロー! そんな怪獣やっつけちゃってー!」
 キュルケが黄色い声を出して、ゼロの応援をした。

「キギョ―――――オォウ!」
『ソドム! 何が目的かは知らねぇが、ここから先には行かせねぇぞ!』
 才人が変身したゼロは、すぐさまソドムに飛び掛かっていき、身体を掴んで足を止めようとする。が、
『!? あぢぃッ!』
 ソドムの体表に触れた途端に手の平が焼け、思わず手を離した。体温が2500度もあるソドムの皮膚は、
焼けた鉄板そのもの。如何にウルトラマンゼロといえども、触って無事では済まなかった。
「キギョ―――――オォウ!」
 ソドムは離れたゼロに火炎を吐きつける。もろに浴びたゼロは、後ろへ大きく吹っ飛ばされた。
『うぐあぁッ!』
「キギョ―――――オォウ!」
 更にソドムは、滅茶苦茶な方向に火炎を連発し出す。火炎の一部は学院の方にも飛んでいき、
教師たちやシルフィードが慌てて退避した。
『この……! 何つぅ暴れん坊だ! これでも食らいな!』
 ゼロはまず、ソドムから熱を奪うために、手の平を合わせて大量の水を放出し始めた。
ウルトラ水流。ウルトラ一族の技の中では比較的ポピュラーなもので、類する技を
多くの戦士が使用している。
「キギョ―――――オォウ!」
 ウルトラ水流はソドムに頭から降りかかる。それによって水が蒸発して水蒸気になり、
気化熱によってソドムの体温を下げていく。
『よしよし、上手く行ってるぜ。この調子だ!』
 狙い通りになっていることに満足げに頷くゼロだが、異変はすぐに発生した。
「キギョ―――――オォウ!」
『何!? 体温が逆に上がってくだと!? どうなってるんだ!?』
 ゼロの超感覚が、当初は順調に熱を下げたソドムが、突如ぶり返したばかりか先ほどよりも
更に高い熱を発するようになったことを捉えた。その体温、約3000度。あまりの熱に、
水蒸気の中に巨大なソドムの虚像が浮かび上がるという蜃気楼現象まで発生した。
「キギョ―――――オォウ!」
『ぐおおぉぉッ!』
 体温を3000度まで上げたソドムは、またゼロに火炎を浴びせた。それにより水流が止められる。
ゼロをひるませると、ソドムはより激しく火炎をまき散らし出した。
『くっそぉッ! もう勘弁ならねぇぜ! シェアッ!』
「キギョ―――――オォウ!」
 頭に来たゼロは、肉弾戦に切り替えてソドムを叩きのめし出す。ソドムの身のこなしは鈍く、
ゼロパンチにキックが簡単に追い詰める。
『ぐッ……! やっぱ熱い……!』
 しかし一瞬触れるだけでも、ゼロの肌は熱で傷つけられる。打ち込めば打ち込むほどゼロも
追い詰められていく。
「キギョ―――――オォウ!」
『うわッ!』
 そしてソドムは、殴打を食らう最中も口から火炎を吐く。その熱でも、ゼロはジリジリ
苦しめられていき、カラータイマーを鳴らせ始めた。

 ゼロの苦闘を、学院の城壁の外からながめるルイズは、杖を抜いて『爆発』を使用する準備を整えていた。
「ゼロ、危なくなったら、わたしの『虚無』でそいつを吹っ飛ばすわ……!」

 ルイズの部屋からは、シエスタと春奈も戦いの行方を、固唾を呑んで見守っていた。
「ウルトラマンゼロ、負けないで……!」
 シエスタは静かにゼロの応援をするが……春奈はソドムの方に目をやって、ある疑問を抱いた。
「あの怪獣、何か変……。まさか……!」
 そして一つの仮説を立てたところで、ゼロが巻き返し始めた。それで喜ぶシエスタと対照的に焦る。
「駄目……! 止めなきゃ……!」
 とつぶやいた春奈は、反射的に窓から身を乗り出し、ゼロへと力一杯に叫んだ。
「ウルトラマンゼロ! やめてッ!!」
「ハルナさん!?」
 病に伏せっているということになっている春奈が、こんな行動に出たことに、シエスタは
思わず目を見張った。

 窓から身を出して叫んだ春奈の姿を、キュルケとタバサがしっかりと確認する。
「あら? あの娘、一体誰かしら? あそこは確か、ルイズの部屋よね」
「……昨日も見たような……」
 タバサは、窓からシエスタが落下した際に、一瞬だけ春奈の姿を確認したことを思い返した。

『こいつでフィニッシュだッ!』
 ゼロは突き飛ばしたソドムに、とどめのワイドゼロショットをお見舞いしようとする寸前だった。
そこに、春奈の制止の声が掛かる。
「ウルトラマンゼロ! やめてッ!!」
『春奈?』
 遠く離れているが、ゼロの超感覚は春奈の叫び声を聞き止めていた。振り返ると、春奈が
続けて叫ぶ。
「その怪獣、きっと風邪ひいてるのよ!」
『は? 怪獣が……風邪ぇ!?』
 突飛なひと言に仰天したゼロは、ソドムを改めて観察する。叩きのめされたソドムはまだ
ゴホッゴホッと火炎を吐いているが、その勢いはすっかり弱まり、白い煙に変わっている。
「ほら! その証拠に、咳き込んでる! 風邪で苦しんでるだけなんだって!」
『い、言われてみれば……』
 冷静になったゼロは、ソドムの不可解な行動を思い返し、風邪という理由なら説明がつくことに
気がついた。水を浴びせて逆に体温を上げたのは、冷水を浴びて風邪をこじらせてしまったから。
火炎をまき散らしていたのは、あれがソドムのくしゃみなのだ。動きが鈍いのではなく、風邪で
弱っているのだろう。
 そして実際に春奈の仮説は的中しており、このソドムは風邪引きなのだった。ソドムは
火山地帯の熱い地下に住まう怪獣で、マグマによって作られた変成岩を食料としている。
ソドムが変成岩を食べて横穴が出来、そこにマグマが流れ込むことで、火山の噴火の原因の
マグマの圧力が下がる。これが火の精霊の怒りを鎮めるという伝説につながったのだが、
このソドムは変成岩を食べている内に魔法学院の地下へと迷い込み、ソドムからしたら
寒すぎる環境のせいで風邪に罹ってしまったということなのだった。ネオフロンティアスペースの
ソドムも、似たような状況で風邪を引き、スーパーGUTS基地を灼熱地獄に追い込んだのであった。
『怒りに我を忘れてて、真実に気づけなかった……。俺もまだまだ未熟だな……』
 悪意のない怪獣を叩きのめしてしまったことを、ゼロは深く反省した。そこにシルフィードが
そっと近づいてきて、乗っているタバサが教える。
「ゼロ、その怪獣は火竜山脈が生息域。そこに返してあげて。それで解決する」
「ジュワッ!」
 タバサに頷いたゼロは、ルナミラクルゼロに変身。超能力に特化した形態による念動力で、
すっかり大人しくなったソドムの巨体を持ち上げた。
「デュワッ!」
 ゼロはそのまま空を飛び、魔法学院からはるか彼方、ガリアとロマリアの国境まで一気に飛んでいった。
 そこが火竜山脈。ゼロはその中の火山に目をつけると、上空からソドムを火口へとゆっくり下ろす。
『すまなかったな、ソドム。本来の生活場所で、ゆっくり養生しろよ』
「キギョ―――――オォウ!」
 運ばれたソドムは、ゼロにお辞儀をするかのように頭を下げた後、火口の中に飛び込んで
溶岩の中に姿を消した。
 それを見届けたゼロは反転し、魔法学院へと帰っていった。

「えぇッ!? 春奈、仮病だったのか!?」
 ソドムの一件が解決した直後、ルイズの部屋に戻った才人は、寝巻きから制服に着替えた春奈から、
こちら側の真実を伝えられた。全く気づいていなかった才人は驚愕して目をひん剥いた。
「うん。ごめんね、平賀くん……」
「でも、何で仮病なんて……」
 才人が聞き返すと、春奈は申し訳なさそうに目を伏せた。
「最初は本当に具合が悪かったんだけど、平賀くんが優しくしてくれるから、ついそれに
甘えちゃったの……」
「つい、じゃないわよ! お陰でこっちは迷惑したわ!」
 ルイズがぷりぷり怒ると、才人はルイズと春奈の間に割って入って、春奈を弁護した。
「ルイズ、そんなに怒らなくてもいいだろ。春奈も、反省したからこうやって話してくれたんだ」
「サイト! あなた、騙されてたのよ。それなのに、何でまだかばうのよ!」
 まだおかんむりのルイズが問い返すと、才人は春奈を一瞥してから、こう語った。
「だって、春奈は突然見知らぬ世界に放り込まれて、すごく心細い思いをしたんだぜ? 今まで
見たことのない景色の中で、自分を知ってる奴が誰もいない。そんな状況で、ようやく知り合いに
巡り合えたんだ。そりゃ、頼りたくなっても仕方ないだろ。同じく知らない世界にいきなり
放り出された俺は、その気持ちがよく分かる」
「うッ……」
 真剣な面持ちの才人の言葉に、ルイズは怒りが揺らぐ。
「そりゃ、春奈のやったことが褒められないことだというのは分かる。だから、春奈が謝ってるんだ。
許してやってくれないか?」
 才人の弁護で、シエスタは頬を緩ませる。
「……分かりました。サイトさんの言う通りかもしれません。ハルナさんの件は、もう水に流します」
 才人がルイズに視線をやると、ルイズも頬を赤く染めてそっぽを向いた。
「わ、分かったわよ、もうッ! わたしも、ハルナのことを許すわ。それでいいんでしょ!?」
「二人とも、ごめんなさい。そして、ありがとう……」
 許しを得た春奈は、ルイズとシエスタに深々と頭を垂れた。すると才人が、彼女にふと問いかける。
「でも春奈、急にどうして本当のことを話してくれるつもりになったんだ?」
 それに春奈は、次のように答えた。
「さっきの怪獣を見てて、思ったの。仮病で甘えてるのは楽だけど、それが周りに迷惑を掛けてる。
それじゃいけないって。それに、本当に病気で苦しんでる人に悪いしね」
「ああ、そうだな。仮病なんてするもんじゃない。健康が一番だ」
「それと、もう一つ……」
「?」
「病気でいるより、健康でいる方が、平賀くんと一緒にいれるって思ったから」
「えッ……」
 そのひと言で、才人はドキリとさせられた。その様子を目ざとく見咎めて、ルイズとシエスタは
またも機嫌を悪化させた。
「……仮病が分かっても、結局ハルナに構うんじゃない!」
「そうですね……。これはうかうかしてられませんね……」
 仮病は暴かれたが、結局は春奈に嫉妬心と対抗心を燃やす二人なのであった。

 仮病の一件は綺麗に片がついたのだが、ソドムの騒動は一つ、後日談を残していった。
「サイト……今、何度?」
「41.5度。お前は?」
「わたしは40度ちょうどよ……へっくしッ!」
 ベッドの上で布団にくるまっているルイズと才人が、ガタガタ震えながら言葉を交わした。
それから二人して、大きなくしゃみを出す。
 ソドムが去ったことで、学院は元の気温を取り戻したのだが、すさまじく暑かった状態から
一気に気温が下がったので、学院のほとんどの人間はその温度差で体調を崩し、風邪を引いてしまったのだ。
ソドムがくしゃみと咳で風邪菌をまき散らしたのも悪かったのかもしれない。
「悪意がなくても……いなくなった後まで迷惑な怪獣だったじゃない……へくしッ!」
「今更言っても仕方ねぇよ……はっくしぃッ!」
「平賀くん、大丈夫? はい、お水」
 シエスタまで伏せったので、春奈が才人に水を注いだコップを手渡した。彼女は事前に
病気に罹って免疫をつけたのか、数少ない無事な人間になったのだ。
「悪いな、俺たちの面倒なんか見させちゃって……」
「いいの。これくらいしないと、罪滅ぼしにならないだろうし。何より、こんな私でも平賀くんの
力になれるんだもの。こう言うと悪いかもしれないけど、何だか嬉しい……」
「春奈……」
「ちょっとぉ! 罪滅ぼしなら、こっちも構いなさいよ! うッ、ゴホゴホッ……!」
 何だかいい雰囲気になる才人と春奈に怒鳴ったルイズが、大声を出したことで思わず咳き込んだ。
「なーにやってんだか」
 そんなルイズの様子に、デルフリンガーが今日もまた呆れ返った。


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