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第三十話「ダダVSギギ」


ウルトラマンゼロの使い魔
第三十話「ダダVSギギ」
三面怪人ダダ
三面異次元人ギギ 登場



「『ファイアー・ボール』!」
「『ジャベリン』!」
 キュルケが火球を、タバサが氷の槍を放ち、自分たちを取り囲んだギギXY08と09を攻撃する。
「ギギッ!」
 しかしギギたちは足を全く動かさないで、高速で横にそれて二人の攻撃を回避した。そのまま
07と合わせて、五人の周囲を旋回して翻弄する。
「速いッ!」
 キュルケたちは、アルビオンで自分らを軽くあしらったガッツ星人を思い出した。その時と全く同じ、
慣性すら無視した超高速移動だ。しかも今回は、三人もいる。
「これじゃ、こっちから手が出せないわ……!」
 ルイズの杖先が大きく迷う。ギギの動きが速すぎて、狙いを定めることが出来ないのだ。
彼女の爆発は強力だが、狙いの精密性は低いので、こういう敵相手には不利。下手をしたら、
味方に当たってしまうかもしれない。
「ギギギギギ!」
「ルイズ、危ない!」
 戸惑っているルイズの背後から、XY07が光線銃を撃つ。そこに割り込んだ才人がデルフリンガーで
レーザーを受け止めるが、
「うわあッ! あ、相ぼおおおぉぉぉぅ……!」
「デルフ! デルフまで!」
 レーザーは魔法ではないので、デルフリンガーも吸収することは出来ずに豆粒ほどに小さくされてしまった。
剣を失った才人は、代わりにガンモードのウルトラゼロアイを取り出す。
「こっちだ、縞々お化け!」
「ギギギギギギ!」
 才人は威嚇射撃を行いながら、07を引き寄せてその場から離れていった。
「サイトぉ!」
「ルイズ、危ないわよ! ぼさっとしないで!」
 追いかけようとしたルイズだが、そこに08の目から黄色い光線が放たれたので、慌てて
倒れ込むようにかわした。08はキュルケの炎を回避して、ルイズから離れる。
 才人の方は、ルイズたちのところから遠く離れつつ、自分を追ってくる07にゼロアイの
光線を発射する。だが07の動きはやはり速く、当てることが出来ない。
「ギーギギギギギギ!」
「! しまった!」
 気がつけば、背後を取られていた。今からではレーザーをかわすことは出来ない。
「デュワッ!」
 咄嗟の判断でゼロアイを開き、顔に装着した。それとレーザーを浴びるのが同時だった。
「シェアッ!」
 一瞬才人の身体が縮むが、ゼロの姿に変身すると、レーザーを振り払って元の等身大の大きさに戻った。
『ウルトラマンゼロッ!』
『ギギ! 何でお前らが侵略者どもに荷担する! お前らの種族は、凶悪な気質じゃないはずだ!』
 ゼロは07に指を突き立てて詰問した。ギギは元々、他の種族を積極的に攻撃する敵性異次元人ではない。
かつてウルトラマンコスモスの宇宙であるコスモススペースの地球に侵入したのは、それまで生活していた
次元が崩壊の危機に瀕したため、移住場所を探すためだった。現在は新しい住居となる次元を発見したので、
もう侵略行為に出る必要はないはずなのだ。
 そのことに関して、07が答える。
『それは腰抜けの科学者たちだけの話だ! 我らギギ軍人は、軍部の完璧な移住計画を妨害し、
派閥の地位を貶めた地球人とウルトラマンコスモスに報復を行う! だが住居の次元では、
科学者どもが目を光らせていて準備を進められない。それ故に、奴らの監視の目を逃れる土地が
必要なのだ!』
 要するに、軍部の地球を新天地にする計画が頓挫し、手柄をギギ科学者たち穏健派に取られたことを
逆恨みしての、派閥争いの延長線上の凶行のようだった。
『そんな身勝手な理由で、ハルケギニアの人々の土地を奪い取ろうってのか! この大馬鹿野郎どもがッ! 
何が論理的で完璧だ! 丸っきり反対だぜ!』
『ほざけ! 邪魔者は誰であろうと排除する! 我らの完璧に傷を入れる者は許さん!』
 ゼロに光線銃を向ける07だが、その瞬間にゼロは腕をバツ字に組んで、ウルトラ念力を発揮した。
「ジュワッ!」
「ギギィッ!?」
 念力によって光線銃からボン! と音が鳴り、黒い煙が立ち昇った。07が引き金をカチカチ鳴らすが、
もうレーザーは出ない。故障した光線銃をかなぐり捨てた07は、来た道を引き返してゼロから逃げていく。
『待てぇッ!』
 すぐにゼロが駆け出し、それを追いかけていった。

 元の場所では、依然としてルイズたちが08と09に苦戦していた。
「ギギギギギギギギギ!」
「くッ……! さっきからギギギギうるさいわね……!」
 嘲笑うように鳴き声を上げるギギたちに、キュルケが苛立って舌打ちした。とそこを、
コルベールに突き飛ばされる。
「危ないミス・ツェルプストー!」
「きゃッ!」
 キュルケの頭があった位置を、09の赤い光線が通りすぎていった。キュルケをかばった
コルベールは杖を構えると、敵の動きをよく見据え、杖の先から炎の鞭を飛ばす。
「ギギギィッ!」
 炎の鞭は08、09を同時に打ち据え、動きを止めた。
「当たった!?」
「意外……」
 喧嘩を一度もしたことがなさそうな見た目のコルベールが、タバサも捉えられなかった
ギギの動きを見切ったことに、ルイズたち三人は驚かされた。
 だがそのコルベールに、舞い戻ってきた07が目から光線を撃とうとする。
「先生ッ!」
『おらぁぁッ!』
 コルベールの危機を、ゼロが流星キックで07の頭部を蹴り飛ばすことで救った。07は吹っ飛び、
青い光線は天井に当たる。
「ウルトラマンゼロ! ありがとう……」
『礼はまだ早いぜ、先生。奴ら、立ち上がってくる』
「先生って知ってるんだ……」
 キュルケがツッコんでいると、起き上がったギギたち三人は高速移動でゼロを翻弄しようとする。
「シャッ! セアッ!」
 だがゼロはその動きを見切り、背後に光線が三方向に分かれるワイドゼロショット、言うなれば
スリーワイドゼロショットを撃った。
「ギギギギィッ!」
 光線は見事ギギたち三人に同時に命中し、大きく弾き飛ばして壁に激突させた。

 ダダの待機している教室では、再びモニターが点き、マグマ星人が命令を飛ばした。
『ウルトラマンゼロだ! 迎撃しろ!』
『了解! ウルトラマンゼロを倒すダダ!』
 命令を受けたダダは、腕に力を込めてガッツポーズを取ると、透き通るようにその姿を消した。
 そして直後に、学院の外に巨大化した状態で出現した。
「ダ―――ダ―――――!」
「ゼロ! 敵が外に!」
『分かってるぜ! デュワッ!』
 窓から外のダダを指差すルイズ。ゼロはテレポートをすると、巨大化してダダの後ろに出現した。
「ダ―――ダ―――――!」
 振り返ったダダはゼロへと走っていき、殴りかかる。だが腕を掴まれて、綺麗な一本背負いを
食らって大地に転がった。
「ダ―――ダ―――――!」
 悶えるダダだが、その姿が急に消える。直後にゼロの背後に、髭の生えたような顔のダダが
現れて羽交い絞めにした。
「さっきのと顔が違うわ! あいつも複数いるの!?」
 塔から中庭に飛び出したルイズたちは、ダダの顔を見て疑問を抱いた。しかしそれは違うことを
ゼロは知っていた。
『つまらねぇ真似はよせ! 本当は一人だけなんだろ!』
 ダダを振り払いながら突きつけるゼロ。ダダには顔を三パターンに変える能力があり、
複数いるように見せかけて敵を欺く戦術を得意とする。だがタネが割れている手品など、
何の意味もない。
『ぜああぁぁぁぁッ!』
「ダ―――ダ―――――!」
 三つ目の顔に変わったダダに瞬時に接近し、ボディに連続パンチを入れると、横拳を入れて
大きく殴り飛ばした。ダダは格闘戦に優れてはいないようで、ゼロに一方的に押される。
 その時、学院から新たな敵が飛び出して大地の上に立った。
「ギギギギギギギ!」
「! あれは、さっきの奴じゃない!」
「顔が三つになってる……!」
 新たな敵は巨大化したギギだった。しかし、ただ巨大化しただけではない。三人が重なり合って
合体することで、首の三方向に顔面を持った、プログレスという状態になっている。
『邪魔だ、どけぃ!』
「ダダッ!」
 巨大化、合体したギギは倒れているダダを蹴飛ばして、ゼロへ悠然と近づいていく。ゼロは
その足元にビームゼロスパイクを撃ち込む。
「ギギギギギギ!」
 だがギギは巨大化しても損なわれていない高速移動能力で光弾を回避し、ゼロの周囲を
旋回して翻弄する。背後に回ったところで、正面の顔から青い光線を発射して攻撃した。
「ゼアッ!」
「ギギギギギギギギギ!」
 ギギの左側に逃れるゼロだが、相手の左後方へ回ると、黄色い光線が飛んでくる。反対側へ
転がっていったら、赤い光線を撃たれる。三方向に顔面を持つギギは、直立したまま全方位へ
攻撃することが出来るのだ。360度に隙がなく、ゼロを寄せつけない。
『だったら真上はどうだ!?』
 しかし頭上だけは唯一の死角。それを見抜いたゼロが上から攻撃しようと飛び上がる。
「ギギッ!」
 だがその瞬間にギギが三人に分離すると、07が素早くゼロの後方に回り込み、三人同時に
顔から光のロープを発して左腕、右腕、両足を縛り上げた。
『何!? ぐッ、ぐおおおぉぉぉぉ! 身体が、引き千切れる……!?』
『我らの切り札、重力制御光線グラビトンビーム。このままバラバラにしてくれる!』
 ゼロを空中に持ち上げたギギたちが、グラビトンビームで締め上げる。ゼロは光線から
逃れようともがくが、光線はきつく締めつけて離れない。
『だったらこうだ! うおおおぉぉぉッ!』
 捕まった状態でストロングコロナゼロに変身するゼロ。しかしストロングコロナの怪力を以てしても、
グラビトンビームは振りほどけない。
『無駄だ! どんな力があろうと、これから逃れることは出来ない! お前は最早死を待つのみだ!』
 豪語する07。が、ゼロは動じなかった。
『ロープが千切れないんなら……根元のお前らを引っこ抜くッ! おおおおおぉぉぉぉぉッ!!』
「ギギィ!?」
 ゼロは勢いよく大空へ飛翔。それによりギギ三人がビームに引っ張られて持ち上がり、
アメリカンクラッカーのように衝突し合う。そして、
『だりゃああああぁぁぁぁぁぁ――――――――!!』
「ギギィーッ!」
 大空からゼロが急降下したことにより、三人とも大地に激しく叩きつけられた。根元のギギたちが
大ダメージを受けたことにより、グラビトンビームは消滅した。ギギたちがストロングコロナの
パワーに抗えている訳ではない点を突いての攻略法だった。
「ギギギギギギギ……!」
 それでもしぶとく立ち上がったギギたちは再度合体して、プログレスに戻った。敵が完全に
再起する前に、ゼロがとどめの一撃を繰り出す。
『でりゃああああああああッ!』
 赤く燃え上がるウルトラゼロキックが、ギギの頭上に迫る。しかしギギはその瞬間に頭上に
バリアを展開し、ゼロキックを受け止めた。以前に頭頂部の弱点を突かれたことでコスモスと
地球人に敗北を喫した反省から生み出した対抗策だ。
 バリアはストロングコロナのキックすら止めた。が、ゼロの方はそれで止まらなかった。
『メビウス! 技を借りるぜ! うおおおおおぉぉぉぉ――――!』
 飛び蹴りの姿勢のまま、高速きりもみ回転を始めるゼロ。それにより足の炎は再燃し、
バリアがゴリゴリ削られていく。ゼロの先輩となるウルトラマンメビウスが、あらゆる光線を
はね返す身体を持つリフレクト星人を攻略するために、レオの課した特訓を乗り越えて開発した、
摩擦熱でキックの破壊力を高める技、スピンキックだ。
 果たしてスピンキックはバリアを突き破り、ギギの頭頂部に突き刺さった。
「ギギギギギギィ――――――――――!」
 頭頂部から火花を噴いたギギはガクリと崩れ落ちて、大爆発を起こした。
「ダ……ダ―――ダ―――――!」
 元の顔に戻ったダダはギギの敗北を目にして、やけくそ気味にゼロに向かっていく。だが同じく
通常状態に戻ったゼロのエメリウムスラッシュを顔面に食らって大火傷を負った。
「ダ―――ダ―――――!」
 きりきり舞いしてまたも倒れたダダが、テレポートで姿を消した。ゼロは周囲を警戒するが、
ダダは現れる気配を見せなかった。

 それもそのはず、ダダは等身大の大きさで教室に戻っていた。そしてほうほうの体でモニターの
スイッチを入れて、マグマ星人に報告する。
『駄目だ……ウルトラマンゼロは強い……!』
 それを聞いたマグマ星人はしかし、冷酷に命令を下すだけだった。
『速やかに任務を完了させろ! 急げ!』

「シエスタさん……外の状況は、どうなってるんですか……?」
「だ、大丈夫です。すぐにゼロが敵をみんなやっつけますよ」
 ルイズの部屋では、ベッドの上の春奈がシエスタに尋ねかけていた。二人とも、学院に
異常が起こっていることと、外でゼロが戦い始めたことはすぐに気づいた。しかし春奈は
激しく運動させられない状態。そのため、ずっと息を潜めていたのだ。
『シエスタ、危ない! 敵だ!』
「え? きゃあッ!?」
 だが、この場所をダダに突き止められてしまった。いつの間にか部屋の中にダダが侵入し、
火傷を負った顔で光線銃を向けている。
「は、ハルナさん!」
 シエスタは春奈を抱えながら、窓際へと追い詰められていく。窓を開放してギリギリまで
ダダから逃れるが、落ちればどっちにしろ助からない。
 にも関わらず、シエスタと春奈は足を滑らせて窓から転落してしまった。
「きゃああああああああああ!?」
「見て! シエスタと、誰かが落ちてくる!」
 キュルケがそれに気づいて叫んだ。タバサが杖を握り直したが、それより早くゼロが動く。
『うおおおおおッ! 間に合えぇッ!』
 ヘッドスライディングするように二人をキャッチ。静かに地面の上に降ろしたので、ルイズたちは
ほっと息を吐いた。
 長く変身しているのでカラータイマーが鳴るが、構わずにルイズの部屋の中のダダを見下ろすゼロ。
それに脅えたダダは、光線銃をバンバン叩いてから引き金を引く。
 故障の直った銃から光線が放たれ、ゼロに浴びせかけられるが、ゼロはそれを振り払うように跳んだ。
と同時に、ダダが部屋の中から消える。
『あだッ!』
 ゼロは光線の効果で人間大まで縮小され、部屋の中に転がった。代わりに、再度巨大化した
ダダが三つ目の顔で外に仁王立ちする。
『こんなもの……デュワッ!』
 身長差を逆転されたゼロだが、気合いを入れて身体を光らすと、元の大きさに一瞬で戻った。
ミクロ化機の効果まで通用しないとなって、ダダはとうとう根を上げたか、透明化して戦場から逃げ出す。
 しかしゼロに、宇宙人連合の刺客をみすみす逃がすつもりはなかった。両目から空へウルトラ眼光を
発すると、空を飛んで逃走しているところのダダの姿を暴き出す。そこに本気のワイドゼロショットを撃ち込んだ。
「ダ―――ダ―――――……!」
 撃たれたダダは黒い煙を立ち昇らせながら墜落。野原にぶつかると、爆発四散した。
 敵を全て倒したゼロだが、まだやることは残っている。ルナミラクルゼロに変身すると、
自分から小さくなってルイズたちの下に立った。
「わッ!? ゼロ!」
『宇宙人たちに小さくされた奴らはそこだな』
 コルベールが運んできたケースを地面の上に降ろすと、ゼロが超能力でギギの使っていた
光線銃を手元に召喚し、更に復元して故障を直した。それから銃の側面のダイヤルの向きを
反対にし、小さくされた者たちにレーザーを照射した。ギギの光線銃は、ダイヤルを逆にすることで
機能が逆転するのだ。
「わああああッ!」
「ふう、元に戻れたぜ。もう小さくなんのはごめんだ」
 すると小さくされた人たちはデルフリンガーも含めて全員、元の大きさに戻った。一気に
元に戻したので、中庭が一気に埋まってしまったくらいだ。
 皆を元に戻すと、ゼロは光線銃を握り潰して改めて破壊した。こんなものがあったら、
また騒動の種になる。
「デュワッ!」
「ありがとーう、ウルトラマンゼロー!」
 何もかもを元通りにしたゼロは、ようやく空へ飛び立って去っていく。それをコルベールら、
助けられた人たちが手を振って見送った。

 さて、学院の侵入者が退治されると、学院はその事後処理を行うことになり、生徒たちは
一旦寮塔に戻ることとなった。才人たちはそのどさくさに紛れて、春奈をルイズの部屋へと連れ帰った。
「よいしょ……春奈、大丈夫だったか?」
 才人がお姫さま抱っこした春奈を、ベッドに戻して寝かせた。その様子を、ルイズがイライラした
様子でながめていて、シエスタはそのルイズに戦々恐々としていた。
「うん……。落っこちた時は怖かったけど、平賀くんのお陰で怪我一つないよ」
 気遣われた春奈は才人に頬を赤く染めながら笑顔を向ける。それで才人は釣られて笑った。
「はは。俺が助けたんじゃないよ。みんなゼロがやってくれたことさ」
「それでも、平賀くんも私のために戦ってくれたんでしょ? 嬉しいな……」
「春奈……」
 才人と春奈が見つめ合っていると、ルイズがわざとらしく咳払いして、注目を自分に集めた。
「サイトだけじゃなくて、わたしも一緒だったんだけど? わたしの方には、何かお礼はないのかしら?」
「えッ、えっと……」
 春奈が言いよどむと、才人が顔をしかめてルイズを咎める。
「やめろよルイズ、そんなきつい言い方して。春奈は病人なんだから、もうちょっと気遣ってやれよ」
 と言うと、ルイズはますます不機嫌さを募らせる。
「何よ、随分親切にするじゃない。そこまでハルナが大事なのかしら?」
「何言ってるんだよ、病人なんだから大事にするのは当たり前だろ。もう、そんなに大声出してたら、
春奈の身体に障るかもしれないじゃねえか」
 才人の物言いに、ルイズは更に腹を立てた。
「何よそれ! いくら病人だからって、わたしのことはどうだっていいっていうの? 大体、
わたしには、そんなに優しくしてくれたことないじゃない……」
「だってお前、いつも元気じゃんか。それとも病気になりたいのか? 変な奴」
「変って何よ変って! そういうことじゃないわよ! もう、馬鹿なんだから」
 ブツブツ不平を漏らしていると、春奈がキッと目を吊り上げてルイズを睨んだ。
「いい加減にしてください」
「ッ!」
「平賀くんは、別にルイズさんの道具ではありません。それは一番ルイズさんが知っているはずでしょ?」
「あ……あんたに、そんなこと好き勝手に言われる筋合いはないわよ! それに、何よ! 
病気病気って、そんなに病気が偉いわけ? サイトなんて知らないんだから!」
 春奈に逆上したルイズは、そのまま部屋を飛び出していってしまった。
「あ、おい、ルイズ!」
 追いかけようとする才人だが、シエスタがそれを止めて申し出た。
「わたしが行ってきます。今はサイトさんよりは、わたしがお話ししたほうが良いと思いますし。
サイトさんは、ここで待っててください」
 と才人を部屋に留めると、シエスタも部屋を出ていった。

 部屋から飛び出したルイズは、塔の空き部屋で一人自省をしていた。
「……なに考えてるのよ、わたし。自分でもわけ分かんない。そもそもサイトは悪くないのに……
あんなこと言っちゃって」
 一人つぶやいていると、シエスタが追いついて中に入ってきた。
「ミス・ヴァリエール。ここにいたんですね? 探しましたよ」
「シエスタ……。な、何の用よ」
「サイトさんは、部屋に残ってもらいました。ここにはわたしとミス・ヴァリエール、それと
ジャンボットさんだけです。他の誰にも話は聞かれません」
「へ?」
 急にそんなことを言うシエスタに面食らうルイズ。シエスタはそのまま続ける。
「ミス・ヴァリエール。お気持ちは良く分かります。今のサイトさんは、ハルナさんが現れてから、
彼女のことしか考えていない……。いえ、それは言い過ぎとしても、今はハルナさんのことを
一番に考えてます。もちろん、それはサイトさん本来の優しさであることは、わたしも分かってるつもりです」
「……」
「ハルナさんはどうみても、サイトさんに気があると思って間違いないでしょう。このままでは、
サイトさんはハルナさんに取られてしまいます。いえ、それだけならまだいいのですが……
最悪、時が来たらハルナさんと一緒に元の世界に帰っていってしまうかもしれません」
『それで良いではないか。サイトが故郷に帰るのは、至極当然の権利だ』
「ジャンボットさん、今は黙ってて下さい。これは女の話なんです」
 ジャンボットが口出しすると、シエスタにたしなめられた。その声音に言い知れぬ迫力が
あったので、ジャンボットは思わず閉口した。
「ミス・ヴァリエール、率直に言います。今の間だけ、手を組みませんか?」
「あんたの言い分は分かったわ。でも、平民がわたしに指図をするなんて、どうかと思うわ」
 素直にシエスタの申し出を受け入れられないルイズを説得するシエスタ。
「ミス・ヴァリエール。あなたの信条に口出しする気はありませんが、今はそんなに甘い状況ではありません。
ハルナさんはサイトさんと同じ世界の人です。サイトさんは口にはしませんが、きっと、今も故郷が恋しいはずです」
 セーラー服の騒動を思い出すルイズ。才人があんな行動に出たのは、故郷を懐かしんで
という理由もあったのだろう。
「そんなサイトさんにとって、ハルナさんは故郷なんです。きっと、サイトさんはハルナさんに、
特別な感情を持ってるはずです。しかも悪いことに、ハルナさんもサイトさんに故郷を感じています。
そして、それを利用しようとしています」
「り、利用!?」
「たとえば、ハルナさんの病気。触った時分かりましたが、あの時にはもう熱は下がってました」
「え、本当?」
『それは確かだ。私もバイタルチェックをしたが、少なくとも今は自力で立てない状態では
決してない。それなのにサイトに甘えるので、奇妙には感じていた』
 ジャンボットも口添えした。
「……それじゃ、なに? あの娘は、仮病を使ってサイトの親切心につけ込んでるってわけ?」
「そうです。正直もので、優しくて、だまされやすいサイトさんは、それに気づいていません。
ハルナさんは、サイトさんをより占有する方法として、仮病を使ってきました。きっと、
わたし達とサイトさんの関係を見て、勝負をしかけてきたと思われます。このまま放置していたら、
ハルナさんの思うつぼです」
「ふ、ふふ……。わたしの部屋で、そんな真似が許されると思われてたとはね……。ずいぶんと
舐めたことをしてくれるじゃないの」
 怪しい感じに笑ったルイズは、その気になってシエスタに向き直り、固い握手を交わした。
「いいわ。あの性悪女をやり込めるまでの間だけ、休戦といきましょう」
「では、同盟成立ですね。頑張りましょう。サイトさんのためにも!」
「サ、サイトはどうでもいいのよ。ご主人様のこと、ぜんぜん考えてくれないし……。あの
バカ使い魔のことなんか……」
 あくまで意地を張るルイズ。その様子を端から見ていたジャンボットは、はぁとため息を吐いた。
『何やらおかしなことになってきたな……。やはり、有機生命体はよく分からない。私も、
ジャンナインのことをまだまだとやかく言えないな……』


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