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第二十六話「逆転!グレンファイヤー只今参上」


ウルトラマンゼロの使い魔
第二十六話「逆転!グレンファイヤー只今参上」
地底エージェント ギロン人
恐怖の円盤生物軍団 登場



 怪獣。生物の常識を超越した能力を有し、古くから人類を巨体と圧倒的な力で脅かしてきた存在だが、
怪獣とひと口に言っても多種多様な種類がいる。そして中には、複数の種の中で一定の生態上の特徴を
共有するものたちも存在する。
 かつて、才人やウルトラマンゼロの故郷のM78スペースには、「ブラックスター」という
生きた惑星が存在した。その星は「ブラック指令」という人物とともに他の星に侵略の魔の手を
伸ばしていたが、現在はウルトラマンレオにより破壊されたことでもう宇宙の塵となっている。
そのブラックスターは、自身は巨大すぎるために、侵略行為の際には自らの内部で様々な種類の怪獣を
生み出し、ブラック指令からの指示で他星にそれらを送り込むという手段を用いていた。ブラックスターで
生み出された怪獣は皆、目的のためなら手段を問わない冷酷非情な性格をしており、宇宙空間を高速で
移動するために円盤に似た飛行形態を持つという特徴を有している。このことから、ブラックスターが
生み出した怪獣の一群は「円盤生物」という通称がつけられている。
 その極悪非道な円盤生物が、ヤプール人の手により蘇り、ギロン人に率いられて今、
ウルトラマンゼロに襲い掛かる!

『くそッ! 数をそろえりゃいいってもんじゃないぜ!』
 ギロン人も入れて十三体もの敵に包囲されてしまったゼロは、悪態を吐いてゼロスラッガーを投擲した。
しかし左右両方とも、ロベルガーの腕の一振りとブラックエンドの角に弾き返されて戻ってくる。
『馬鹿め! 当然貴様を倒すための訓練を積ませてあるわ!』
『くッ……!』
 スラッガーがゼロの頭に戻ると、ブラックエンドがまたも咆哮を上げた。
「ガアアアアアアァァァァ!」
 どうやらブラックエンドが円盤生物の司令塔のようだ。その鳴き声により、種々の円盤生物が
一斉に攻撃を開始する。
「キィ――――!」
 まずはカブトガニ型のブラックドーム、鳥型のサタンモアが空を滑って突進していく。
ブラックドームのハサミと、サタンモアの鋭いクチバシが前後からゼロに迫る。
『せぇいッ!』
 しかしゼロはハサミとクチバシを、上半身を反らしてかわし、ブラックドーム、サタンモアに
一発ずつ拳を入れて押し返した。
 だがそれ以上の反撃をしている暇はなかった。クラゲ型のアブソーバが怪光線、ヒトデ型の
デモスが溶解泡、貝型のブラックテリナが火花を吐いて一斉攻撃してきたからだ。ゼロは
三体の集中攻撃を、大きく横に跳んで回避する。
「ギャオオオオオオオオ!」
「ギャアアアアアアアア――――――!」
 その直後に別方向から、カエル型のブラックガロンが両腕から火花を、二つの顔を持った
ブリザードが腹部から火炎を噴き出してきた。
『くッ!』
 回避が間に合わず、ゼロは咄嗟にウルトラゼロディフェンサーを展開。火花と火炎を防いだが、
そこに背後からアンコウ型のハングラーが忍び寄る。
「ピギャ――――――!」
『ぐあぁぁッ!?』
 ハングラーが大口を開けて、ゼロの右足に食らいついた。ハングラーは自動車を捕食したことから
分かる通り、鉄を易々と食い千切るほど顎の力が強い。ゼロはその力で右足をひねり上げられて
絶叫を上げた。それでも左足でハングラーの額を蹴りつけ、どうにか右足を引き抜いた。
「ガアアアアアアァァァァ!」
 だが直後に、角や尻尾を収納して丸まったブラックエンドが転がってきて、ゼロを撥ね飛ばす。
『うあぁッ! くそッ、こいつら……!』
 転がるブラックエンドに、ブラックドームが再び向かってくる。二体を迎え撃つために
ゼロがストロングコロナゼロに変身しようと一瞬赤く光るが、
「ギイイイイィィィィ!」
『がぁッ!』
 そこにノーバが両目から光線を撃ってきて、変身を止められた。そしてブラックエンドと
ブラックドームの同時の体当たりを食らい、大きく吹っ飛ばされる。
「キィ――――――――!」
 倒れたところに、ロベルガーが両腕を振るって、ボールを投げるように光弾を乱射し出す。
ブーメラン型の単眼からも大型の光弾が飛び、ゼロに集中砲火を浴びせる。
 ブラックエンドやアブソーバ、ハングラー、ブリザードなどは一斉に火炎放射をした。
他の円盤生物も、それぞれの遠隔攻撃をゼロに浴びせる。
『ぐうおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
 円盤生物軍団の猛攻を一身に食らい、ゼロの絶叫が響き渡り、同時にカラータイマーも点滅し出す。
 普通の野生の怪獣ならば、たとえ何体も群れていたとしても、それぞれが勝手に動くので、
切り崩すのは難しいことではない。だが円盤生物たちは、同じ存在から生み出された兄弟の
ようなものだからか、完璧に統率が取れていた。ゼロは反撃の機会も見つけられず、一方的に
攻め立てられる。
「ゼロが大ピンチだわ! でも……!」
 焦るルイズだが、今の彼女はタルブ村で見せたような大爆発は使えなかった。先ほどの戦闘で
使用した『爆発』で消耗した上に、ウェールズに掛けた『ディスペル』がとどめとなって
精神力がほぼ空になってしまったのだ。今はコモン・マジックすら使えるかどうか怪しい。
「肝心な時に使えないじゃない、『虚無』の魔法……!」
 絶大な効果の『虚無』の欠点を痛感し、歯噛みするルイズ。しかもそんな彼女にも、敵の手が及ぶ。
 サタンモアの下部から、分身のリトルモアが放たれ、ルイズの下へ迫ってきたのだ。リトルモアは
小鳥程度の大きさだが、クチバシの殺傷力は人間の身体を突き破るには十分なほどある。
「きゃあッ!? こ、こっち来ないで!」
 未だ気絶したままのタバサとキュルケやアンリエッタらをかばい、杖を振り回してリトルモアを
追い払おうとするルイズ。しかし円盤生物の分身にそんなものは通用しない。彼女が襲われるのは
時間の問題だ。
 最早自身の力ではどうすることも出来なくなったルイズは、仲間に助けを求めた。
「来て! ミラーナイト!」
 手を伸ばして、指に嵌めた『水のルビー』を突き出す。その瞬間にルビーが光り、ミラーナイトが
リトルモアの群れを薙ぎ払いながら飛び出した。
『はぁッ!』
 宙に舞いながら颯爽と登場したミラーナイトは空中からミラーナイフを乱射し、円盤生物たち
半数を撃ってゼロへの攻撃を止めさせた。
 そしてはるか上空からは、ジャンバードが地上へ向けて急降下してきた。ジャンバードから
ミサイルが放たれて、残る半数に食らわせる。これでゼロに降りかかる攻撃が全てやんだ。
『ジャンファイト!』
 ジャンバードから変形したジャンボットが、軽やかに着地したミラーナイトの隣に並ぶ。
『ゼロ、もう大丈夫です! 私たちが加勢します!』
『ヤプール人の手下め、卑怯な真似をしおって! このジャンボットが成敗する!』
『現れたな、ウルトラマンゼロの仲間め!』
 戦いの構えを取ったミラーナイトとジャンボットにギロン人が振り返り、ハサミを突きつけた。
『愚か者どもが! 円盤生物はこれで全てではないのだ!』
『何!?』
 驚いたミラーナイトとジャンボット双方の全身に、長い赤い触手が素早く絡みついた。
『うわッ!? な、何だ!?』
『しまった! 捕まった!』
 気がつけば、いつの間にか白いクラゲ型の新たな円盤生物が二人の背後に浮いていて、
胴体下部から触手を伸ばして二人に巻きつかせていた。この円盤生物の名はシルバーブルーメ。
地球で最初に確認された円盤生物であり、当時の防衛チーム・MACを全滅させたり地球人を
何百人も虐殺したりと甚大な被害をもたらした凶悪怪獣だ。
『ど、どこから現れたんだ! 私のレーダーに反応はなかった!』
 ジャンボットがうろたえるが、それも無理からぬことだ。円盤生物のほとんどは大きさが、
人が手に持てるほどの小型から大怪獣サイズまで伸縮自在であり、特にシルバーブルーメは
その能力に優れる。ギリギリまで小さくなれば、レーダーをかいくぐることすら出来るのだ。
これが、MACが宇宙基地ごと呑み込まれてシルバーブルーメたった一体に完全敗北を喫した
最大の原因である。
『グハハハハハハ! 奇襲こそが円盤生物の本領! 貴様らがウルトラマンゼロを助けに
来ることなど最初から分かっていた。だからあえてシルバーブルーメを出さずに
潜ませておいたのだ! 貴様らも罠に掛かったという訳だぁ!』
 ギロン人がハサミから針状の光線を放って、防御することも出来ないミラーナイトとジャンボットを狙い撃つ。
『ぐわあああぁッ!!』
 自分たちを捕らえるシルバーブルーメの胴体からは黄色い溶解液が流れ、二人の身体を焼く。
他にもアブソーバの怪光線、デモスの溶解泡、ブラックガロンとブラックテリナの火花が集中した。
ミラーナイトたちまでがなぶられる羽目に陥ってしまった。
『や、やめろテメェらぁー!』
「キィ――――――――!」
 必死に立ち上がったゼロを、上から目の前に降り立ったロベルガーが蹴り上げた。もんどりうったところに、
またも円盤生物たちの攻撃が雨あられと飛んできた。
『うあああぁぁぁぁ――――――――――――!!』
 五体はミラーナイトたちの方へ回ったが、それでもまだゼロを袋叩きにするのに十分な数がいる。
状況は何も変わらなかった。
「そ、そんな……嘘でしょう……?」
 ゼロにミラーナイト、ジャンボットまでが追い詰められ、タルブ村で救った自分も魔法が使えない。
勝算が一切失われた絶望的状況に、ルイズは夢であってほしいと願うほどになってしまった。
『グハハハハハハァ! 無様なりウルティメイトフォースゼロ! 我が支配者の手を煩わせる
までもなかったな! ここでこのギロン人が全滅させてやるわぁッ!』
 勝利を確信したギロン人が豪語した。だがその時、
『ふッ……』
 ミラーナイトが攻め立てられながらも、冷笑を見せた。
『ん!? 何がおかしい!』
 聞きとがめたギロン人が振り返ると、ミラーナイトは攻撃を受けながらも堂々とした声色で告げた。
『そちらが戦力を隠していたように、ウルティメイトフォースゼロも私たちで全員ではないのだッ!』
『何だと!? ま、まさか!!』
 その時、夜空の彼方の一点が紅く光った。その点から紅い渦が発生し、どんどんと大きくなっていく。
よく見ればそれは、空を飛ぶ巨大な火の玉が螺旋を描いて戦場に向かってきているのだった。
『ファイヤァァァァァ―――――――――――――!!』
 火の玉は空中を旋回していたサタンモアに正面から体当たりすると、一瞬で相手の身体を
突き破って木端微塵にした。そしてゼロの前へと降り立ち、八方の炎を散らして彼への攻撃を
全て弾き飛ばした。
『ヘッヘッ、ヒーロー参上! ってとこだぜ!』
 炎が散って、火の玉の心にいた巨人の姿が明らかになった。巨人本体も、紅蓮の炎に負けず劣らずの
赤い体色をしている。顔はミラーナイトと同じく目鼻口がなく、火炎を象った特徴的な形状だ。
巨人が髪をかき上げるような仕草を取ると、頭部から一瞬炎が激しく燃え上がった。何から何まで
炎尽くしの、ある意味とても暑苦しい巨人だった。身体つきも非常に筋肉質だ。
「あ、あれは……!」
 ルイズは炎の巨人の正体が薄々分かっていた。このタイミングで現れ、ゼロを救った彼は、
ゼロたちが捜していた最後の一人……!
『何者だぁ! 貴様はぁ!』
 ギロン人が直接問いかけると、巨人は大仰に肩をすくめた。
『俺を知らないってか? 不届きな奴だぜ! だったら教えてやろうじゃねぇか!』
 巨人は荒っぽい口調と、荒々しい仕草で自身を親指で指し示した。
『俺様はこっちの宇宙に来てるウルティメイトフォースゼロの最後の一人! 燃えるマグマの
グレンファイヤー様よッ!』
『貴様がグレンファイヤー! こ、このタイミングで現れるとは……!』
 既に円盤生物を一体倒され、動揺を隠せないギロン人に、ミラーナイトが言い放つ。
『罠を張っていたのはそちらだけではない! 私たちへの対策があることを考慮して、
まだ存在を見せてなかったグレンファイヤーを控えさせてたのだ! そうとも知らずに、
手の内を明かしたな!』
『そ、そうだったのか! おのれぇ……!』
 見事にミラーナイトの策に引っ掛かり、ギロン人は激しく悔しがった。
『ゼロ、しっかりしな! お前の底力はこんなもんじゃねぇだろ!』
『グレン……! ああ、そうだな……!』
 グレンファイヤーに助け起こされたゼロは、ルナミラクルゼロへ変身。ゼロスラッガーを
六枚に分身させた。
『ミラクルゼロスラッガー!』
 六枚のゼロスラッガーが高速で飛び、シルバーブルーメの触手と本体を瞬く間に滅多切りにして、
爆散させた。それによりミラーナイトとジャンボットが解放された。
『助かりました、ゼロ! これで十全に戦えます!』
『助けに来たはずが助けられるとは、申し訳ない! この失態はすぐに挽回するとしよう!』
 四人そろったウルティメイトフォースゼロに一気に巻き返されたことでギロン人が焦るが、
それを紛らわすように声を張り上げる。
『調子に乗るな! 数の優位はまだこっちにあるのだ! 円盤生物どもッ! そいつらをねじ伏せろぉーッ!』
「ガアアアアアアァァァァ!」
「ギイイイイィィィィ!」
「ギャオオオオオオオオ!」
「ギャアアアアアアアア――――――!」
「ピギャ――――――!」
「キィ――――――――!」
 ギロン人の命令で、生き残りの円盤生物軍団が一斉にウルティメイトフォースゼロに押し寄せていく。
するとグレンファイヤーがひと足早く前に出た。
『遅れて到着した分、活躍させてもらうぜぇッ!』
 グレンファイヤーに一番に攻撃を仕掛けたのはブラックドームだ。飛行しながら巨大なハサミを
振りかざして襲い掛かっていく。だが、
『おらぁッ!』
 グレンファイヤーはブラックドームがハサミを振るうより早く、炎を纏った拳、グレンファイヤーパンチを
叩き込んだ。その一撃でブラックドームの身体を覆う固い甲殻はかち割れ、たちまちの内に全身が
木端微塵に吹き飛んだ。
「ピギャ――――――!」
 ブラックドームを倒したばかりのグレンファイヤーに、ハングラーが高熱火炎を浴びせた。しかし、
『何だぁ!? これが炎のつもりかよ! ちっとも熱くねぇぜ!』
 炎の戦士のグレンファイヤーに火炎攻撃など通用しなかった。彼は平然と火炎放射を受け切る。
『俺が本当の炎って奴を味わわせてやるぜッ!』
 宣言したグレンファイヤーの全身がまた燃え上がり、ハングラーへと突進していく。ハングラーは
大口を開けてそれを待ち構える。
『ファイヤァー!』
 頭からハングラーの口の中へ飛び込むグレンファイヤー。その途端にハングラーは身体の
内側から炎上し、爆発四散。跡にはグレンファイヤーが仁王立ちする。
「ギャアアアアアアアア――――――!」
 炎が効かないなら、とばかりにブリザードが青い方の面から冷凍ガスを噴きつける。
しかしそれもグレンファイヤーにはヘッチャラだ。
『そんな貧弱な冷凍ガスなんかじゃ、俺の炎は消せはしねぇんだよ! ファイヤースティック!』
 両手の中に炎の如意棒を出現させると、それを袈裟に振り下ろした。ブリザードは如意棒に
身体を両断され、大爆発を起こした。
『ちっとも手応えがねぇぞぉ! もっと骨のある奴はいねぇのかぁッ!』
「キィ――――――――!」
 グレンファイヤーが挑発した瞬間に、ロベルガーが走っていきキックを繰り出した。
グレンファイヤーは咄嗟に回避し、ファイヤースティックの突きを繰り出したが、
ロベルガーの手の平に掴まれて受け止められた。
『んッ!? だらぁッ!』
「キィ――――――――!」
 グレンファイヤーとロベルガーが互いの腰部を蹴りつけ、後ろへ下がって距離を取り合った。
『お前はちょっとは出来るみたいだな。そう来なくっちゃ面白くねぇぜ!』
『ウルティメイトフォースゼロ、抹殺』
 ファイヤースティックを引っ込め、ボクシングのようなファイティングポーズを取った
グレンファイヤーに対し、ロベルガーが命令を繰り返した。
 円盤生物は基本的に暗殺が主体で、格闘戦は不得手である。しかしロベルガーはブラックスターが
砕け散った後に、その破片からある存在が尖兵にする目的で作り出した円盤生物なので、例外的に
直接戦闘に特化した能力バランスなのだ。一説では、円盤生物最強と謳われたブラックエンドをも
上回る実力だという。
『うらぁぁぁ―――――!』
「キィ――――――――!」
 グレンファイヤーとロベルガーが拳を交えて、激しい肉弾戦の火蓋を切った。
『はッ!』
 一方では、ミラーナイトがブラックテリナから放出される火花をバク転で回避した。
ブラックテリナは宙を飛び交ってミラーナイトを追いかけ、執拗に火花で狙う。
 しかし何度目かの交差の瞬間に、貝殻の中から飛び出た赤い足を掴まれた挙句に、飛行の勢いを
利用されて地上へ引きずりおろされた。
『やぁッ!』
 その瞬間にミラーナイトは、貝殻の中にミラーナイフを撃ち込んだ。光刃に内臓をズタズタにされ、
ブラックテリナは炎上して絶命した。
「ギャオオオオオオオオ!」
 死亡したブラックテリナに代わり、ブラックガロンが両腕の穴から火花を放とうとする。
だがそれを制して、ミラーナイトがミラーナイフを二発発射した。狙う先は、ブラックガロンの両腕。
 ミラーナイフが両腕の穴の中に入ると、爆発が起こって火花の発射口が潰された。
「ギャオオオオオオオオ!」
『今だッ!』
 両腕が使い物にならなくなって狼狽するブラックガロンへ、一直線に駆けていくミラーナイト。
 だがその瞬間、ブラックガロンの口から長い舌が伸びて、ミラーナイトの首に巻きついた。
『ぐッ!?』
「ギャオオオオオオオオ!」
 ブラックガロンは何と舌の力だけでミラーナイトを持ち上げ、地面へ叩きつける攻撃をする。
したたかに打ちつけられて苦しむミラーナイトだが、その程度で参る彼ではない。
『はぁッ!』
 宙吊りにされた状態からミラーナイフを放ち、舌を半ばから断ち切った。
「ギャオオオオオオオオ!」
 その途端にもがき苦しむブラックガロン。長い舌はブラックガロンの最後の武器であるのだが、
同時に弱点でもあるのだ。結局舌を切断されてバタリと倒れ込むと、そのまま粉々に爆発した。
 ジャンボットはアブソーバとデモスを同時に相手取っている。ロケット弾と溶解泡が
ジャンボットに降りかかる。
『ジャンブレード!』
 ジャンボットは両者の攻撃を、ジャンブレードで切り払いながら前へ突き進む。その先にはアブソーバ。
攻撃の手を強めるアブソーバだが、ジャンボットの剣技には通用しない。
『せぁッ!』
 距離を詰めると、ジャンブレードの一閃が叩き込まれた。アブソーバは斜めに両断され、
爆破して消滅する。
 それを目の当たりにしたデモスは、もう敵わないと見たのか、一人で戦場から逃走しようと
高く飛び上がり出した。だがそこに、ジャンボットのバトルアックスが飛んでくる。
『むんッ!』
 戦斧の刃が突き立ったデモスは地上に叩き落とされ、そのまま爆散した。
『おのれぇ、次々と円盤生物が……! せめて、残ったノーバとブラックエンドでウルトラマンゼロ! 
死にかけの貴様にとどめを刺してくれるッ!』
 悔しがるギロン人が、ノーバとブラックエンドとともに、カラータイマーの鳴り止まない
ゼロへ向き直った。
『なめるなよ! エネルギーが足りなくたって、お前らなんかに負けねぇぜ!』
『強がっても無駄だ! 貴様の技は分析してある! 大技のごり押しも、今は出来んだろう! 
今の貴様にノーバとブラックエンドを破ることなど出来んわッ!』
 ギロン人の言葉通り、エネルギーが切れかかっている今の状態では、ノーバ、ブラックエンド、
そしてギロン人を同時に相手にするのは無理があった。ゼロツインシュートなどの強力な攻撃で
強引に突破することも出来ない。一見すると、手詰まりの状況だ。
 しかしゼロには、一つだけ、とっておきの秘策があった。
『だったら、このハルケギニアに来てから手に入れた新たな力を見せてやるぜ!』
『あ、新しい力!? 何だそれはッ!』
 ゼロのひと言に、ギロン人たちが動揺する。
『行くぜぇッ!』
 そして敵の見ている中で、ゼロが右手を胸の前に伸ばした。
 すると手の平の中から、光り輝く刀身の剣が現れ、柄が握り締められた。
『うおおおッ!? お、俺っちがすげぇでかくなってるぞ!? もう一人の相棒、こいつは
一体全体どういうことだ!?』
『お前はこれから、俺と一緒に戦うんだ! 力を貸してくれ、デルフ!』
 剣から慌てふためいた声が起きた。剣の正体はデルフリンガーだったのだ。ルナミラクルゼロの
超能力により、ウルトラマンエースがザイゴン戦で披露した物質巨大化能力と同じ力を発揮して、
普段の変身中は才人と一緒に自分の中にいるデルフリンガーを自分のサイズに合った大きさへ
変貌させて出したのだ。
『これが、俺がハルケギニアで手に入れた力。新しい仲間の力だぜッ!』
『小癪なッ! そんな原住民の骨董品で、何が出来るものか! やれぇッ!』
「ガアアアアアアァァァァ!」
「ギイイイイィィィィ!」
 ギロン人の命令で、ブラックエンドの火炎放射とノーバの火炎球がゼロに襲い掛かる。
だがゼロはデルフリンガーを薙いで、火炎を切り払いながら前進する。
『俺の仲間を愚弄するなぁッ!』
 デルフリンガーの刃が閃き、ノーバが横に、ブラックエンドが縦に両断された。データにない
ゼロの攻撃を防ぐことが出来なかった二体は、身体がバックリ割れて爆散した。
『なぁぁぁぁッ!? そ、そんな馬鹿なぁぁぁ!』
『アンリエッタの心をもてあそんだこと、怪獣墓場で反省しな! ギロン人ッ!』
 気が動転して立ち尽くしたギロン人も、ゼロの手でZ字に切り裂かれた。
『ぎゃああああああ――――――ッ!!』
 断末魔を上げたギロン人が爆死し、残る敵はグレンファイヤーと殴り合っているロベルガー
一体のみとなった。
「キィ――――――――!」
 孤立無援となったロベルガーだが、単体でも指令を果たすつもりのようだった。宙を浮いて
グレンファイヤーから距離を取り、ウルティメイトフォースゼロへ滅茶苦茶に光弾を放ち始める。
『うおおおぉぉぉッ!』
 グレンファイヤー、ゼロ、ミラーナイト、ジャンボットが光弾の爆発に呑まれて、足を止められる。
しかしグレンファイヤーは、猛攻に晒されながら敵へ向き直った。
『悪あがきはよしな! テメェはもうおしまいなんだぜッ! おおおおぉぉぉーッ!』
 胸を叩くように撫でると、そこにカラータイマーに似た赤い丸が浮かび上がって、グレンファイヤーの
全身が激しく燃え出した。ファイヤーコア。グレンファイヤーの心の力が発揮される時に、彼の感情の
昂りとともに表れるものだ。
『ファイヤァーダァーッシュッ!!』
 炎に包まれながら駆け出し、光弾が命中しても止まることなく、ロベルガーに突進した。
「キィ――――――――!」
 グレンファイヤーの炎が燃え移り、ロベルガーは全身余すところなく木端微塵に炸裂した。
 ギロン人率いる円盤生物軍団は全滅した。戦いを終えると、デルフリンガーを元に戻したゼロは、
勢ぞろいした仲間たちと再会を喜び合う。
『グレン、危ないところを助けてくれてありがとうな。これでウルティメイトフォースゼロ出張組がそろった!』
『へへッ、当然のことだろ! ゼロ、大体の事情はミラーから聞いてるぜ。俺がいない間
大変だったみたいだが、安心しな! このグレンファイヤー様が来たからには百人力! 
ヤプールなんぞ俺がこの星から追い払ってやるとも!』
 大口を叩くグレンファイヤーに、ミラーナイトが肩をすくめた。
『よく言いますね。火竜山脈の中腹に、頭から突っ込んだ姿勢のままずっと気絶してたのは
どこのどなたですか?』
『あぁッ!? ミラーちゃん、それ言わないでって言ったじゃねぇかよぉ!』
 恥ずかしい事実をバラされ、うろたえるグレンファイヤー。そこにジャンボットのお叱りが飛ぶ。
『貴様、こちらはずっと心配していたのに、そんな理由で姿を見せなかったのか! 不甲斐ないにも
程があるぞ!』
『不可抗力だっての~。大目に見てくれよ焼き鳥』
『私の名前はジャンボットだ! 別宇宙に来てまでそれか!』
『ハハハ。やっぱりこうじゃないとな』
 グレンファイヤーとジャンボットのやかましいやり取りをながめて、ゼロがほがらかに笑った。
 しかし、穏やかな空気は長く続かなかった。アンリエッタたちが目を覚ましたのだ。
「ウェールズさま……。ああ……」
 目を覚ましたアンリエッタは、横たわるウェールズの亡骸をひと目見て、顔を両手でおおって
泣き崩れた。我に返って、自分のしでかしたことの重大さを理解したのだ。
「わたくし、なんてことをしてしまったのかしら。わたくしのせいで、多くの犠牲が……。
わたくしは女王失格だわ……」
 反省し、嘆くアンリエッタの様子を、ルイズやゼロたちが一様に、悲しみの混ざった目で見つめていた。
 彼らに怒りはない。アンリエッタに罪がなかった訳ではないが、心の弱さは誰にでもあるもの。
本当に罪があるのは、その弱さに利己心でつけ入る者たちだ。憎むべきは、アンリエッタを
利用した者たちの悪しき心だ。
 そしてアンリエッタが泣いていると……彼女の悲しい、一途な愛が届いたのか……奇跡が起こった。
「……アンリエッタ? きみか?」
 弱々しく、消え入りそうだったが、まぎれもなくウェールズの声がした。皆が驚いてウェールズに
目を向けると、そのまぶたが、かすかに開いていた。
 まぶたの間から覗く瞳には、温かみがある。偽物の命にはなかったものだ。『虚無』が消えていたはずの
生命のともし火にわずかの輝きを与えたのかどうかは定かではないが、確かに本当のウェールズの命が
この時に戻っていた。
「ウェールズさま……。なんということでしょう。おお、どれだけこのときを待ち望んだことか……」
 アンリエッタや、ルイズたちがウェールズの下へ駆け寄る。アンリエッタの目からはまだ涙が
流れていたが、それは悲しみのものではなく、感涙に変わっていた。
 だが、奇跡の再会の時間は短いようだった。ウェールズの胸元に赤い染みが広がる。偽りの
生命によって閉じられていた、ワルドに突かれた傷が開いたのだった。
 アンリエッタは慌てて傷をふさごうと水の魔法を掛けたが、残酷なことに、通用しなかった。
血の染みは大きくなるばかり。
「無駄だよ……、アンリエッタ。一度死んだ肉体は、二度と蘇りはしない。ぼくはちょっと、
ほんのちょっと帰ってきただけなんだろう。もしかしたら水の精霊が気まぐれを
起こしてくれたのかもしれないな」
「ウェールズさま、いや、いやですわ……、またわたくしを一人にするの?」
「アンリエッタ。最後のお願いがあるんだ」
「最後だなんて、おっしゃらないで」
「きみと初めて出会った、あのラグドリアンの湖畔に行きたい。そこできみに約束してほしいことがあるんだ」
 ゼロがこっそり才人の姿に戻った直後に、タバサがシルフィードを引っ張ってきた。一行は
ウェールズを運んでシルフィードの背に乗り、ラグドリアン湖を一路目指した。
 ミラーナイト、ジャンボット、グレンファイヤーもアンリエッタとウェールズの結末を
見届けるために、その後を追いかけていった。

 三人の巨人に見守られながら、ラグドリアンの湖のきらめきを、ウェールズとアンリエッタが見つめる。
うっすらと空が白み始めている。朝が近いのだった。
 ウェールズの時間は、もう残り少ない。彼は最後の力を振り絞って、アンリエッタに告げた。
「誓ってくれ、アンリエッタ」
「なんなりと誓いますわ。なにを誓えばいいの? おっしゃってくださいな」
「ぼくを忘れると。忘れて、他の男を愛すると誓ってくれ。その言葉が聞きたい。このラグドリアンの湖畔で。
水の精霊を前にして、きみのその誓約が聞きたい」
「無理を言わないで。そんなこと誓えないわ。嘘を誓えるわけがないじゃない」
 アンリエッタは、立ち尽くした。その肩が震える。
「お願いだアンリエッタ。じゃないと、ぼくの魂は永劫にさまようだろう。きみはぼくを
不幸にしたいのかい?」
「いや。絶対にいやですわ」
「時間がないんだ。もう、もう時間がない。ぼくはもう……、だから、お願いだ……」
 アンリエッタとウェールズの押し問答を遠巻きに見つめながら、ルイズは声を殺すようにして泣いていた。
「やっとの再会なのに、これでおしまいなんて、あんまりだわ……。ゼロ、どうにかウェールズさまを
助けられないの? あなたには、命を共有する力があるんでしょう? その力でウェールズさまの命を
再生できないの?」
 ルイズは、才人の中のゼロに助けを求める。ゼロは才人との邂逅の際に、誤って死なせてしまい、
そのお詫びに彼の命が再生する時まで、自分の命を分け与えていることは聞いていた。ゼロと才人が
一体化している最大の理由だ。
 しかし、現実は非情だった。ゼロから断られてしまう。
『すまないが、今は不可能だ。もう才人と同化してるからな。ウェールズまで入れたら、
短時間の内ならともかく、ずっとそのまんまだと才人とウェールズの精神が混ざり合ってしまう。
そうなったら、結局誰も報われない結果になっちまう……』
「そんな……」
 ウルトラマンの地球人との一体化は、一度に一人きりと限られている訳ではない。ジャック、
エース、ヒカリは一度に二人の地球人と同化したことがあるし、メビウスに至っては五人同時を
やったことがある。しかしこれらの例の時は、ジャックたちは片方の地球人と完全に同化していたし、
メビウスは戦闘中の短い時間のみだった。だから同化した地球人たちに何の影響も出なかった。
 ウェールズを救うためには、かなりの期間同化しなければいけないことは明白。だがゼロが
それをしたら、才人とウェールズの精神がゼロの中で影響を及ぼし合って、最終的に二人の境界が
なくなる危険が大きい。そして、才人の命の回復はまだ完了していない。
 一度に助けられるのは一人だけ。ウェールズを助けるには、才人を捨てる必要がある。
ルイズにそれが選べるものか。
「奇跡に、二度目はないのね……」
 ルイズが絶望して目を伏せる。才人とゼロも悔しさを顔に浮かべた。ミラーナイトとジャンボットも、
目の前で消えゆく命を救えないことが口惜しくてうなだれる。
 だが、たった一人だけ、グレンファイヤーだけは、諦めてはいなかった。
『らしくないぜ、ゼロ! 俺たちはどんな時も、最後まで諦めねぇ! そうじゃなかったか!?』
『えッ!?』
 ゼロやミラーナイト、ジャンボットが驚いてグレンファイヤーへ振り返った。ジャンボットが問い返す。
『しかし、私たちにあの彼にしてやれることは、何もないではないか』
『何もない? それは違うぜ焼き鳥! このグレンファイヤーには、たった一つだけあいつを
助けられる手段があるんだ! よぉーし行くぜぇーッ!』
 その手段を早速実行に移すグレンファイヤー。ファイヤーコアを再度燃え上がらせると、
ミラーナイトが何かに勘づいたようで、驚きの目を向けた。
『グレン、あなたまさか……!』
『ファイヤァァァァァ――――――――――――!!』
 掛け声とともに、全身が炎に変わったグレンファイヤーが、ウェールズ目掛け飛び込んだ。
炎は先に行くほど縮小していき、人間程度の細さになると、ウェールズの肉体に潜り込んだ!
「うッ!?」
「ウェールズさま!?」
 突然の出来事に、アンリエッタやルイズたちが目を丸くする。炎が全て吸い込まれると、
ウェールズは仰向けにばったりと倒れた。とうとう限界が来て命が消えてしまったのかと、
大きく動揺するアンリエッタ。
 しかしウェールズは、すぐにムクリと身体を起こした。
「ウェールズさま……」
 安堵してほっと息を吐くアンリエッタ。が、
「……よっしゃぁぁぁぁーッ! 成功したぜぇぇぇぇーッ!」
「えぇッ!?」
 ウェールズが唐突に叫んで大きくガッツポーズを取ったので、ガビーンと仰天してしまった。
理知的で穏やかな気質の彼からはとても考えられない行動だ。
「な、何なに? 何が起こったの? 皇太子、どうしちゃったのよ?」
「理解不能……」
 キュルケやタバサのみならず、ルイズに才人も呆けていると、場に人間大の大きさに小さくなった
ミラーナイトが降り立った。彼はすぐに、ガッツポーズを取ったままのウェールズに振り返って、
声を掛けた。
『やっぱり……。グレン、あなたその人の中に入りましたね』
「おう! その通りだぜミラーちゃん!」
「えええええええええ!?」
 ミラーナイトへぐっと親指を立てるウェールズの様子に、ルイズたちは奇声を上げた。
 何と、今のウェールズの意識は、グレンファイヤーのものだった。その証拠に、瞳の色が
本来の碧眼から、ルビーのような紅い、グレンファイヤーの色に変わっている。ウェールズであって
ウェールズでない、グレンウェールズとでも言ったところか。
 グレンファイヤーはゼロに代わって、ウルトラマンの能力である一体化能力を模倣し、
ウェールズと同化したのだ。それにより、今のウェールズの肉体の中に二つの命が宿ることになった。
「いやぁ~、本来俺の能力じゃないし、やったことないから上手く出来るか正直不安だったんだけどな。
けどまぁ無事に成功! 何でもやってみるもんだな!」
 グレンウェールズは、事態が呑み込めずに呆然と立ち尽くしているアンリエッタに向き直って、
ニカッと笑いかけた。それから髪をかき上げる。当たり前だが、グレンファイヤーの時と違って
火炎は出ない。
「えっと、あんたアンリエッタ女王様だっけか? これでもうひと安心だぜ! 俺、グレンファイヤーが
同化したことで、こいつの命はギリギリのとこでつないだ。もう死ぬことはねぇぜ。ほら」
 シャツを開いて胸元を見せると、ワルドに受けた大きな穴が綺麗さっぱり消えていた。
それを見て、アンリエッタはまだ完全に理解した訳ではないが、ウェールズが助かったことだけは
分かってまた感涙した。
「ああ……ウェールズさまを助けてくれたんですね! ありがとうございます! 一体、
何とお礼を申し上げればよいものか……!」
「いいってことよ! 見返りのために人助けしてるんじゃねぇからな!」
 カンラカンラと笑うグレンに、ミラーナイトが問いかける。
『それで、その方、ウェールズさんの意識はあるんでしょうか?』
「おっと、そうだったな。おーい、ウェールズさーん。聞いてたら返事しなー」
 自分に向けて呼びかけるグレン。珍妙な構図だが、まぁいいだろう。しばらく返答を待っていた
グレンだが、残念そうに顔を上げる。
「駄目だな。命の鼓動は確かに感じるんだが、意識は全く感じねぇ。完全に眠ってる状態だな。
まぁ死んでたのが奇跡的に蘇ったんだし、無理もねぇのかもしんねぇけど。命だって超弱々しいしな」
『そうですか……。それだと、彼の意識が蘇るのは、大分時間が掛かるかもしれませんね。
いつになることか……』
 ウェールズの意識は闇に沈んだままと知り、アンリエッタは再度悲しんだが、先ほどまでの比ではなかった。
「まぁ悲観すんなよ。いつかはこいつが完全復活すんのは確かなんだし、気長に待ちな」
「そうですね……。二度目の奇跡なんですもの。贅沢を言っては、始祖ブリミルに怒られてしまいますね」
 微笑むアンリエッタ。その顔からは、大分悲しみが薄れていた。それを見て取り、ルイズたちも
胸を撫で下ろす。
 そしてグレンは、アンリエッタに呼びかける。
「さてと、さっきの誓いはこれでなしだが、その代わりに誓ってはくれねぇか? 女王さん」
「はい! 何なりとおっしゃって下さいまし!」
「もう、悪党どもの誘惑に心惑わされんのはなしにしてくれ。心を強く持って、自分の使命を果たすんだ。
ウェールズも本当は、それをしてほしかったんだと思うぜ」
 グレンの頼みに、アンリエッタは、涙をぬぐって力強い、晴れ晴れとした面持ちで固くうなずいた。
「誓います。わたくし、アンリエッタ・ド・トリステインは、もう迷わずに、トリステイン
新女王としての職務を、全身全霊で果たします。もう……迷いません」
 アンリエッタの高らかな誓約の言葉が、ラグドリアンの湖畔に響き渡った。
 朝日は完全に昇り、闇を払って、アンリエッタやルイズたちの姿をまぶしく照らしていた。


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