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第十九話「ナックル星人の逆襲」


ウルトラマンゼロの使い魔
第十九話「ナックル星人の逆襲」
用心棒怪獣ブラックキング
暗殺宇宙人ナックル星人
カプセル怪獣アギラ
カプセル怪獣ウインダム
宇宙ロボット キングジョー 登場



 ゲルマニア皇帝、アルブレヒト三世と、トリステイン王女アンリエッタの結婚式が三日後に迫ったその日、
トリステイン艦隊旗艦の『メルカトール』号は新生アルビオン政府の客を迎えるために、艦隊を率いて
ラ・ロシェールの上空に停泊していた。
 後甲板では、艦隊司令長官のラ・ラメー伯爵が正装して居住まいを正している。その隣には、
艦長のフェヴィスが口ひげをいじっていた。
「やつらは遅いではないか。艦長」
 ラ・ラメーがいら立って呟いた。アルビオン艦隊は、約束の刻限を超えても姿を見せないのだ。
「自らの王を手にかけたアルビオンの犬どもは、犬どもなりに着飾っているのでしょうな」
 そうアルビオン嫌いの艦長が呟くと、檣楼に登った見張りの水兵が、大声で艦隊の接近を告げた。
「左上方より、艦隊!」
 なるほどそちらを見やると、雲と見まごうばかりの巨艦を先頭に、アルビオン艦隊が静静と
降下してくるところであった。
「ふむ、あれがアルビオンの『ロイヤル・ソヴリン級』か……」
「あの先頭の艦は巨大ですな。後続の戦列艦が、まるで小さなスループ船のように見えますぞ」
 艦隊を率いる『レキシントン』号をまじまじと観察して、ラ・ラメーとフェヴィスが言葉を交わした。
ラ・ラメーは鼻を鳴らす。
「ふむ、戦場では会いたくないものだな」
 しばらく降下してくるアルビオン艦隊をじっとながめていた二人だが、後続の戦列艦の、
更に後ろについてくる飛行船の列が見え、怪訝な顔になる。
「おや? 列がまだ続いている。後ろの船は一体……」
 先に聞いていた隻数より明らかに多いことに気づいて、戦列艦の背後の飛行船をよく見た途端に、
ラ・ラメーとフェヴィスのみならず、トリステイン側の艦隊の兵たちは全員が唖然となった。
「な、何だと!? あれはまさか……『円盤』ではないかね!?」
 アルビオン艦隊の後尾を構成する飛行船は、大きさこそ『レキシントン』号には劣るが、
それとは別の意味で「異様」としか言いようのないものだった。
 材質は木材ではなく、どう見ても金属製である。それだけでもハルケギニアの技術を大きく越えた
代物であるが、全体的な形状も、羽のついた帆船ではなく、ラダーつきの平べったい箱型と、
地球の戦闘機に近いものであった。当然、ハルケギニアの人間には馴染みのないものだ。
 そしてこのような金属製の飛行物体は、宇宙人連合の最初のハルケギニア攻撃の際に、
ラ・ラメーらは目にしている。侵略者「ウチュウ人」の戦艦で、「円盤」と呼称されるものだと、
いつの間にか流れていた噂で知った。
「しかし何故、アルビオンの連中がウチュウ人とともに行軍しているのだ!?」
 滝のように脂汗を流すラ・ラメーの疑問に、アルビオン軍は何も答えない。その代わりに、
アルビオン艦隊の後尾についている円盤群に動きがあった。
 円盤の一機が機体を地表と水平を保ったまま一気に降下すると、底部からスポットライトのような
光を照射する。そして、どうやって積み込んでいたのか全く分からないが、円盤から身長が60メイルを
超える大怪獣が円盤の体積を無視して出現し、地上にドスン! と地響きを鳴らして着地したのだ。
「グルルルルル……!」
「ひッ!? か、怪獣まで!」
 円盤から現れて、牙を剥いてうなり声を上げているのは、容貌だけで強者の貫録を漂わせている怪獣だった。
筋骨隆々の全身の体色は暗闇を想像させるほどに真っ黒で、胴体も四肢も蛇腹状になっている。頭頂部には
前に折れ曲がった金色の角が生え、背中にも同じ色のトゲが四本、横に並んでいる。装飾が少なく割とシンプルな
外見だが、その分理屈抜きの「力強さ」というものが見て取れる。
 これは、工廠でボーウッドが目にした巨大怪獣と同じ個体だった。名前は、ブラックキング。
ナックル星人の誇る戦闘用の大怪獣だ。
「グアアアアァァァァ!」
 ブラックキングは上を向いて首をトリステイン艦隊の方角へ向けると、口から紅蓮の熱線がほとばしった。
熱線は猛烈な勢いではるか上空まで伸びてきて、艦隊を構成する戦艦が一隻、一瞬で爆散して粉々になった。
「は……!?」
 ラ・ラメーもフェヴィスも、完全に絶句した。怪獣が常識を超越した、恐るべき生物で
あることは聞いている。しかしまさか、地上に仁王立ちしたまま上空の戦艦を狙い撃ちにして、
たった一撃で玉砕するなど、実際に見せつけられてもにわかには信じられなかった。
 だが、攻撃してくるのはブラックキングだけではなかった。アルビオン艦隊側の円盤も
光線を照射し、更にはアルビオン艦隊までもが砲撃の雨を降らせてきたのだ。
「な、何が起きているのだ! 向こうの艦隊はどうしたというのだ!?」
 怪獣と円盤、そしてアルビオン艦隊に攻撃されている事実が認められず、ラ・ラメーが
狂ったようにわめいた。部下に事態の説明を求めるための信号を送らせるが、アルビオン側は
砲撃を繰り返すばかり。
 これでラ・ラメーもフェヴィスも悟った。アルビオンは親善訪問に来たのではない。侵略に来たのだと。
 ようやく応戦するトリステイン艦隊。だが、ただでさえアルビオン側にも艦数と大砲の
性能差で負けているのに、そこに円盤と怪獣の攻撃まで加われば、勝ち目など微塵もなかった。
ものの数分の内にトリステイン艦隊は跡形もなく消し飛ばされ、生存者は一人も出なかった。

『クハハハハハ! 原始人の玩具の群れにしては、持った方じゃないか! ブラックキングの
準備運動くらいにはなったか!?』
 アルビオン艦隊の後尾についている円盤の一隻の内部で、ナックル星人が哄笑を上げた。
 この戦闘とも言えない一方的な虐殺は、ナックル星人の立てたハルケギニア侵略計画、
そしてウルトラマンゼロへの逆襲計画のほんの序章に過ぎなかった。これからクロムウェルの姿で
配下に置いたアルビオンの兵とともに、トリステインの全土を焼き払って陥落させるつもりなのだ。
『それにしても、事態を呑み込めずに恐慌していたトリステインの人間どもも愚かだが、
こっちの連中はそれに輪を掛けて愚かだな。さすがは下等種族だ』
 ナックル星人はモニターに映る、アルビオン艦隊の兵士たちの様子を見やり、侮蔑の嘲笑を送った。
ボーウッドと、お飾りに過ぎない司令長官のジョンストンに代わって実質の指揮と執るワルド以外の
全員が、「アルビオン万歳! 神聖皇帝クロムウェル万歳!」と唱えて諸手を上げているのだ。
 彼らは異星人と怪獣とともに侵略行為を働くという異常事態を、クロムウェルに化けたナックル星人の
「彼らは私の虚無の力により、アルビオンの盟友となった」というどう考えても無理のある虚言を
疑うことすらせずに信じ切った。ボーウッドとワルドだけは疑念を挟んでいたようだが、二人とも
特に反論を示すことはしなかった。
『無知蒙昧とはこのことだ。奴らは知性を持つ人間とも呼べん。都合のいい現実という、
与えられた餌だけが全ての犬畜生だな』
 散々見下されているとも知らずに万歳を繰り返すアルビオン兵をこき下ろすナックル星人。
本来なら、こんな連中の後に続くだけでも我慢がならないほど腹立たしいが、今度の
ウルトラマンゼロに復讐する計画には、「人間」の存在がどうしても必要なのだ。
だから蹴散らしたい衝動をぐっとこらえて、地上のブラックキングに指示を送る。
『ブラックキング、前に進め! 最初の行き先は、原住民のちんけな集落、「タルブ村」だ!』

「グアアアアァァァァ!」
 ナックル星人のテレパシーによる指令を受けたブラックキングは、足を前に出し、行進を始める。
大地に散らばったトリステイン艦隊の残骸や、森の木々を薙ぎ倒して、タルブ村へ向けて進み出した。
 その後ろ姿をアルビオン艦隊が追いかけて、それとともにナックル星人の円盤群も進んでいく。
怪獣と円盤、そして侵略者の言いなりと化した誇りなき軍隊は、トリステインの領空を不躾に犯していった。

 ルイズたちの一行は、『竜の羽衣』を発見したことで宝探しの旅を終わらせ、魔法学院に
帰還することになった。ただシエスタだけは、アンリエッタの結婚式の祝祭が近いので、
休暇の名目でタルブ村に留まることになった。
 ゼロ戦の方の『竜の羽衣』は、佐々木武雄の遺言により才人に進呈されることになった。
時代は違えども自分と同じ故郷の人間の遺物に妙な感慨を抱いた才人はありがたく譲り受けると、
ギーシュの父のコネで竜騎士隊を借り受け、彼らにゼロ戦を運んでもらった。
 しかし、べらぼうに高い運送料までは考慮していなかった。いざ魔法学院の中庭まで運んでもらってから
どうしようかと困っていたら、意外な人物が立て替えてくれた。
「なるほど! この風車を回転させて、風の力を発生させるのか! この翼も、羽ばたくようには
出来ておらんが、揚力を得るのに理想的な形状をしている! いやよくできておるな! まことに
素晴らしい!」
 その人物が中庭に鎮座したゼロ戦をしげしげと見て回り、才人からの説明の一つ一つに感心した。
ミスタ・コルベール。御年四十二歳である。
「プロペラを回すには、ガソリンという油が必要なのか。それは『錬金』で調合すれば、
何とかなるだろう。機体も完璧に直さねばな。この継ぎ接ぎのままでは、飛ぶ前に
プロペラの風で分解してしまうだろう。やることは多いが、是非実際に飛んでいるところを
見たいものだ!」
 コルベールは、運ばれてきたゼロ戦をひと目見ただけで、ただの奇妙な物体などではないことを見抜き、
空を飛ぶ機械だと聞いた途端に年甲斐もなく大はしゃぎした。今はゼロ戦を元の飛べる状態にしようと、
あれこれ算段を立てている。
 彼は火の系統のメイジだが、破壊と攻撃を至上とするのが常識のメイジ仲間とは大きく異なり、
火の魔法を生活や建設的なことに活かそうと日々研究している、いわば「変わり者」だった。
そんな彼が、魔法の力に依らずに空を飛ぶ「飛行機」に興味を抱かないはずがなかった。
彼は才人からゼロ戦を預かると、すぐさま修理のための研究をするために、研究室に駆け込んだ。
 才人の方は、エアロヴァイパーに撃ち落とされ大破したゼロ戦を、元の通りに直してもらいたいという一心で、
コルベールに預けた。佐々木の遺言には、才人に向けての「なんとしてでも『竜の羽衣』を陛下にお返しして欲しい」
というメッセージがあった。だがそれは今となっては、到底叶わぬ相談だ。何故なら、彼の属した「大日本帝国」は
はるか昔に無くなったからだ。だから、いつかゼロ戦を返す日を夢見て必死に形だけでも直したであろう
佐々木の無念に少しでも応じようと、完全な修理を頼んだのだ。

 それから時間が経過し、アンリエッタの結婚式の予定日の三日前となった日。才人はルイズの部屋で、
ゼロに話しかけた。
「なぁゼロ、俺、ジャンボットが過去のハルケギニアに到着してたことも驚きだったけど、
シエスタのひいじいさんが日本人だったことはもっと驚いたよ」
『そうだな。お前以外にも、この世界に迷い込んだ地球人がいたんだな』
 相槌を打ったゼロが、今までのことを思い返す。
『思えば、スパイダーを持ち込んだ科学特捜隊員や、人じゃないけどキュルケの家の家宝になってた
本とかあったな。このハルケギニアと地球は、意外なところでつながってるのかもしれないな』
 当たり前だが、別の宇宙同士は通常の方法では往来など不可能だ。しかし世界は広いもので、
宇宙と宇宙をつなぐ時間と空間を超越した「場所」もない訳ではない。かの「怪獣墓場」がその一例で、
あそこには様々な宇宙から怪獣の魂が行き着くという。地球とハルケギニアも、そういう超常的な
「通り道」がどこかにあるのかもしれない。
『そうでもないと、三人も地球人がこの世界に迷い込むなんてことが説明できないもんな。
もしかしたら、他にもこっちに来てる地球人がいたりしてな』
「他にもか……。今までの人はもうお亡くなりだったけど、まだ生きてる人もいるかもしれないってことだな」
『もし出会ったら、俺はどうしようか……。当然地球に連れて帰すべきだろうが、任務があるからなぁ……』
「ちょっと! そこうるさいわよッ! 人が考えごとしてる時に!」
 机に向かってうんうんうなっていたルイズが振り返って叱ってきた。彼女は式がもう目と鼻の先なのに、
まだ祝詞を完成させていなかった。色々案は出しているが、どうも納得できないらしい。
『ハハハ。大変だな、お互い……』
 ゼロが思わず笑ったが、次の瞬間には声が強張る。
『ん何ッ!? 怪獣の鳴き声だ!』
「えッ!? また現れたのか!」
 途端に才人とルイズが色めき立つ。だが次のゼロの言葉で、ますます驚愕することになった。
『それだけじゃねぇ! 一緒に円盤の飛行音もする! しかも何機もだ!』
「それって、また宇宙人連合とかいうのの攻撃!?」
 トリスタニアでの円盤群の攻勢と、アルビオンの四大宇宙人を思い出すルイズ。どちらも
ゼロたちに撃退されたが、性懲りもなく三度攻めてきたのか。
『違いないな。場所はラ・ロシェール……いや、タルブ村だ!』
「タルブ村だって!?」
 瞬時に青ざめる才人とルイズ。既にゴルドンの被害に遭ったというのに、あの村はまだ苦しめられるのか。
それだけではない。あそこにはシエスタが残っている!
『やべぇ! もう攻撃は始まってる! 今から飛んでったら間に合わねぇぜ! こういう時は……
ミラーナイト! 来てくれ!』
 ゼロが姿見に向かって叫ぶと、直ちにミラーナイトの姿が現れた。
『状況はこちらも把握してます。すぐに転送しますよ! じっとしてて!』
「相棒! 俺っちを忘れるんじゃねえぞ!」
 存在を主張したデルフリンガーを才人が掴み、ルイズは『始祖の祈祷書』を抱きかかえると、
ミラーナイトが鏡の中から他者を自分のように鏡面を通じて移動させる光線技、ナイトムーバーを使用した。
 才人とルイズはミラーナイトのシンボルの十字の光に包まれると、一気に姿見の中に吸い込まれ、
部屋から姿を消した。

 次の瞬間には、タルブ村の側の森の中に、水たまりを出口にして転送された。
「わッ! ホントに一瞬ね。すごいわ」
『すみませんが、私はジャンボットが今、手を離せない状態なので、しばらく救援には行けません。
ゼロ、タルブ村の人々をお願いします!』
『分かってるぜ! 行くぜ才人! ルイズ!』
「ああ!」
 才人とルイズはすぐに森から飛び出し、タルブ村へ駆けつける。そこで、地獄絵図を
目の当たりにすることになった。
「グアアアアァァァァ!」
「ひ、ひどい……!」
 円盤群と混成しているアルビオン艦隊は、上空からタルブ村に砲弾の雨を降り注いでいる。
円盤もまた、光線を照射して民家を焼いている。そしてブラックキングが、熱線を吐き散らして
草原を火の海に変え、家を踏み潰す。ゴルドンの脅威がなくなり、家々の建て直しの着手が
されたばかりのタルブ村が、炎と煙に包まれて灰燼へと帰していく。住人たちは焦熱地獄の中から
必死に逃げ回って村から脱出していくが、ほとんどの者は火の手に逃げ道を塞がれて
苦しみもがいていた。
「助けてくれええええ!」
「誰かぁぁぁぁ!」
「おお、始祖ブリミルよ! 我らをお助け下さい!」
「えーん! お母さーん!」
 爆音とブラックキングの鳴き声に混じって、村人たちの悲鳴が休みなく上がる。顔から
血の気が失せたルイズは、空に浮かぶ最も巨大な戦艦を見上げた。
 あの船には見覚えがある。アルビオンに赴いた際に、浮遊大陸の周囲を監視していた飛行船だ。
名前は『ロイヤル・ソヴリン』……いや、レコン・キスタに奪われて『レキシントン』号となったとか。
「あれはアルビオン軍!? どうしてアルビオンが宇宙人たちに荷担してるの!?」
「今はどうだっていい! 早く侵略者どもを追い払って、タルブ村を救わないと!」
 才人がすぐにウルトラゼロアイを取り出すが、変身をゼロが制止する。
『待て才人! 今俺が出ていったら、奴らは今以上に激しく暴れるだろう。そうなったら
タルブ村の人たちがますます戦火に巻かれちまうぜ!』
「けど、それじゃあどうするんだよ!」
 焦る才人に、ゼロが指摘する。
『忘れたのか? 俺たちにはこういう時に力になってくれる、頼もしい仲間がいるだろ!』
 ゼロの言わんとするところを、才人はすぐに理解した。
「そっか! カプセル怪獣だな!」
 そうと分かるとすぐに小箱を取り出し、カプセルを二つ手に取った。そして右手を振りかぶり、
燃えていくタルブ村へ向けて投げ飛ばした。
「行け! アギラ、ウインダム!」

「お姉ちゃーん! 助けてー! 苦しいよー!」
 半壊していたシエスタの生家は、村の者たちの努力により、とりあえず寝泊まりは出来る程度には
修復されていた。しかしアルビオン軍の襲撃により、家は炎に包まれて崩壊してしまった。しかも
倒れた柱に、幼い妹が下敷きになっている。運の悪いことに父母は用事で家を離れており、シエスタしか
助けられそうな者がいない。
「頑張って! すぐに、お姉ちゃんが助けるから!」
 懸命に励ますシエスタだが、所詮女の細腕では、倒れた柱をどかすのは不可能だ。それでも
持ち上げようと力を振り絞っているシエスタの周りに他の弟たちがしがみついている。
 しかし、危険もかえりみずに妹を救おうとするシエスタの兄弟愛を嘲笑うように、冷酷な現実が突きつけられる。
「グアアアアァァァァ!」
「!? きゃあああああああ!」
 天井が崩れて外と内の境界がなくなったシエスタの家に、ブラックキングが迫る。足を振り上げ、
シエスタたちを虫けらのように踏み潰そうとしている。太陽光と明日を遮る影が自分たちを包むと、
シエスタは目をつぶって弟たちを抱きしめた。
 しかし、彼女たちの命が踏みにじられることはなかった。
「キギョ―――――ウ!」
「グアアアアァァァァ!?」
 シエスタたちが踏み潰される寸前、前に細長く伸びた頭部の額に、前に突き出た一本角を生やした
恐竜型の怪獣が突っ込んできて、ブラックキングに体当たりしたのだ。虚を突かれたブラックキングは
仰向けに倒れる。
「えッ!? な、何が起きたの!? 新しい怪獣!?」
「キギョ―――――ウ!」
 恐竜型の怪獣は、ブラックキングとシエスタたちの間に立ち、起き上がるブラックキングに
エリマキトカゲのような赤い襟巻きを逆立てて威嚇する。しかし目つきは眠そうに半開きに
なっているのが、どことなく愛らしい。
 この怪獣こそ、三体のカプセル怪獣の最後の一体、アギラなのである。
「グワアアアアアアア!」
 アギラと一緒に召喚されたウインダムの方は、額のランプからレーザーを空に向けて撃って、
戦艦と円盤を牽制する。両者とも撃ち落とされては敵わぬと言わんばかりに上昇し、結果タルブ村への
攻撃の手を止めさせられた。
「シエスター! 大丈夫かー!」
「えッ!? さ、サイトさん! ミス・ヴァリエールまで!?」
 アギラがブラックキングとにらみ合っている間に、才人とルイズはシエスタの下へ駆けつけた。
二人の姿を確かめて、シエスタは仰天した。
「ど、どうしてここに!? 学院に帰ったんじゃ……」
「説明は後だ! 今はすぐにここから避難するんだ!」
 シエスタの言葉を遮った才人は、すぐに状況を確認。彼女の妹が柱に押し潰されて動けないことを把握した。
「相棒、俺を使いな! 木の柱なんか、軽く真っ二つよ!」
「おっし! でりゃあああッ!」
 デルフリンガーを引き抜いた才人は、その刃でシエスタの妹にのしかかる柱を分割した。
それにより、妹は自由になる。
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「お礼は本当に助かってからにして! さぁ、早く避難するわよ。シエスタも手伝いなさい!」
 ルイズはシエスタの弟たちを誘導して、焼け崩れた家からの脱出を促す。シエスタも妹を背負って
逃げようとするが、才人が留まっているのに気づいて振り返る。
「サイトさん! 何してるんですか!? 早く逃げましょう!」
 と急かすと、振り返った才人は、ひと言告げた。
「先に行っててくれ。俺は、あいつらと戦うよ」
「ええッ!?」
 シエスタは、才人の言葉が信じられなかった。
「そんな、無茶です! あの悪魔のような軍勢相手に、一人でなんて! サイトさん、命を
粗末にしないで下さい!」
 事情を知らないシエスタは懸命に説得するが、そこでルイズに手を掴まれて引っ張られる。
「早くしなさい! 妹背負ってるんでしょうが!」
「あッ、ミス・ヴァリエール!?」
 シエスタがルイズに引っ張られていなくなると、才人はカプセル怪獣たちへの指示を飛ばし始めた。
「アギラはブラックキングを、ウインダムは円盤と戦艦を村から追い出すんだ! 頑張ってくれ!」
「キギョ―――――ウ!」
「グワアアアアアアア!」
 命令を受けたアギラとウインダムは、それぞれの敵に挑んでいく。アギラはブラックキングに突進し、
ウインダムはレーザーを振りまいて空の敵を下がらせる。
「グアアアアァァァァ!」
 ブラックキングは、正面から向かってくるアギラに熱線を吐き出した。だがアギラは跳躍して
足元に当たった熱線を跳び越えると、素早い身のこなしでブラックキングの懐に入り込む。
「キギョ―――――ウ!」
 そして相手の両足に自分の足を引っ掛けると、力の限りを込めて足払いした。
「グアアアアァァァァ!」
 大怪獣のブラックキングも、足の支えがなければ立っていることは出来ない。今度は前のめりに倒れて、
うつ伏せの状態になった。
「キギョ―――――ウ!」
 ブラックキングを転倒させたアギラは尻尾を掴み、ズリズリ引きずっていく。ブラックキングは
瞬く間に村から森へと運ばれていった。
「グアアアアァァァァ!」
 ようやく尻尾からアギラを振り払い、起き上がる。そしてアギラを叩きのめそうと腕と尻尾を振り回すが、
アギラは俊敏な身のこなしで打撃をかわし続ける。
 アギラはウインダムのような遠隔攻撃も、ミクラスのような怪力も持っていない。だがその代わりに、
その二体にはない敏捷性がある。怪力自慢のブラックキングに正面から立ち向かって敵う訳がない程度の力量だが、
回避に徹すれば、重量級なのが災いして動きのとろいブラックキングを足止めすることは問題なく出来るのだ。
 才人は、敵が離れていくことで村人たちが避難する時間が出来ていることを確認した。
「いいぞアギラ、ウインダム! 後ちょっとでみんなの避難が完了する!」
 タルブ村の人々の避難が終われば、ウルトラマンゼロは気兼ねなく戦うことが出来る。
アギラとウインダムは、ゼロの戦いの場を作るために尽力し続けた。

 カプセル怪獣に侵略部隊が翻弄されていることに、ナックル星人が苛立ちを見せていた。
『ブラックキングめ、何をやっている! あんなチンケな雑魚怪獣なんぞに振り回されやがって! 
どれだけの手間暇をかけて貴様を育て上げたと思ってるんだ!』
 アギラを捉えることが出来ないでいるブラックキングに罵声を飛ばすが、それで戦況が変わったりはしない。
大きく舌打ちすると、次の手を打つことを決定した。
『仕方ない……ウルトラマンゼロが現れるまで取っておくつもりだったが、アレを加勢に出すとする!』

「キギョ―――――ウ!」
「グワアアアアアアア!」
 アギラとウインダムのお陰で、逃げ遅れている人はもうわずかになった。そろそろ変身する時かと、
才人が改めてウルトラゼロアイを取り出す。
 だがここで異常が発生した。いきなりアギラが、どこからか飛んできた怪光線に撃たれたのだ。
アギラは激しく横転する。
「キギョ―――――ウ!」
「何!? 誰が撃ったんだ!?」
 位置的に考えて、ウインダムが牽制している円盤からの攻撃ではない。才人が怪光線の
飛んできた方向を見上げると、その方角の空に、四機の不揃いの形状の円盤が新たに出現していた。
『なッ! あ、あの円盤は!』
 ゼロが声を荒げると、円盤が地上へと降下し出した。まず二つの円柱をくっつけたような円盤が
森の中に着陸すると、最も円盤らしい外観の円盤が、あろうことかその上に乗っかり、アンテナを収納。
次に前面を埋め尽くすほどの面積の二つの電光パネルを持った円盤が更に上に乗り、最後に残った
腕を持った円盤がジョイントした。
 気がつけば四機の円盤は、一機の巨大ロボットに変わっていた。ロボットはグワアッシ、グワアッシと
駆動音を鳴り響かせながら、森の木々を踏み潰す。
「あ、あのロボットはッ!!」
 驚愕する才人。円盤が合体して出来上がったロボットは、通信端末を使わずとも名前を知っている。
ゼロも、その脅威を父親のセブンから聞いていた。
 宇宙でも指折りの科学力を有するペダン星人が築き上げた、かのウルトラセブンが自分一人の力では
勝てなかったほどの恐るべきスーパーロボット、キングジョーだ!

『フハハハハハ! 行け、キングジョーよ! その雑魚どもを蹴散らせ!』
 円盤の中で、キングジョーを繰り出したナックル星人が哄笑した。
 あのキングジョーは、ペダン星人のオリジナルではない。ナックル星が鹵獲した機体を解析、
逆利用するために造り上げた模造品なのだ。だがその性能は、決してオリジナルの引けを
取るものではないとナックル星人は自負している。
 セブンを散々に苦しめたキングジョーが、セブンから授けられたカプセル怪獣に襲い掛かる!

「グワアアアアアアア!」
 キングジョーはウインダムの方へと、一定の足取りで向かっていた。ウインダムはレーザーで
先制攻撃を仕掛けるが、キングジョーは直撃を受けてもびくともしない。
 逆に、キングジョーの両目から放たれた怪光線を食らって吹っ飛ばされる結果になった。
「グワアアアアアアア!」
 もんどりうったウインダムにキングジョーが接近し、頭部を片手で鷲掴みにすると起き上がらせ、
すさまじい握力で握り潰し出す。
「グワアアアアアアア!」
 ウインダムの悲鳴が上がる。アギラの方も、倒れたことでブラックキングの尻尾に滅多打ちにされ、
蹴飛ばされた挙句に熱線を食らう。
「グアアアアァァァァ!」
「キギョ―――――ウ!」
 ウインダムとアギラが一気に追い詰められたことに、才人は泡を食った。
「まずい! 戻れ!」
 これ以上二体が痛めつけられる前に、カプセルの状態に戻す。黄色と赤のカプセルが手の平の中に
飛び込んできた。
「グアアアアァァァァ!」
 ウインダムとアギラがいなくなったことで、せっかくタルブ村から引き離したブラックキングと
円盤、戦艦が、キングジョーまで加わって押し寄せてくる。
 しかし、カプセル怪獣たちの奮闘は無駄ではない。彼らが敵を引きつけてくれたお陰で、
タルブ村の住人の避難はほとんど完了した。これなら、ゼロが万全の状態で戦える。
「デュワッ!」
 才人は満を持してゼロアイを装着し、変身を行う!

 ……実はこの時、才人の身を案じたシエスタが、単身舞い戻って来ていた。しかし反対方向を
向いていた才人はそれに気づかなかった。
「サイトさん! 早く逃げ……きゃあッ!」
 シエスタが駆けつけるのと、才人が変身を行うのは、ほぼ同時だった。急に才人の身体が光り輝いたので、
シエスタは思わず目を背ける。
 そして目を開けた時には、才人の姿は目の前になく、代わりにウルトラマンゼロが天高く仁王立ちしていた。
「ええぇッ!? ど、どういうことですか……!? 何でサイトさんがいなくなって、ウルトラマンゼロが……。
まさか、サイトさんが……?」
「こ、こらー! 勝手に戻るんじゃないわよ! 危険でしょ!? さぁ早くこっちに! 
……何も見てないわよね!?」
 呆然としているところに、シエスタを探しに来たルイズに手を掴まれて、また引っ張られていった。

「グアアアアァァァァ!」
 ゼロがタルブ村に登場すると、再び村に踏み入ったブラックキングが身体を揺らして威嚇し、
キングジョーは相変わらずグワアッシ、グワアッシと駆動音を鳴らして前進し続ける。
大怪獣とロボット怪獣相手に、ゼロが攻撃を仕掛ける。
「ゼアッ!」
 頭に両手を添えてゼロスラッガーをキングジョーへ放り、振り向き様にブラックキングへ
エメリウムスラッシュを発射した。
「グアアアアァァァァ!」
 しかし、ゼロスラッガーはキングジョーの装甲に呆気なく弾き返され、エメリウムスラッシュは
ブラックキングの交差した腕に防御された。
『くそッ、やっぱ一筋縄じゃ行かねぇか……!』
 ブラックキングを操ることと、円盤の形状からして、黒幕はナックル星人。逆襲に来たのだろうから、
易々と倒せるような手下を連れてくるはずがない。
 キングジョーとブラックキングに挟まれているゼロだが、そこに更に円盤群が一斉に光線を
発射して攻撃してきた。
『ぐぅッ!』
 咄嗟に腕で顔をかばうゼロ。光線が四方八方から襲い掛かる上に、キングジョーの怪光線と
ブラックキングの熱線まで飛んできて、集中攻撃を浴びる形になる。攻撃は途切れる様子がない。
『ちぃッ……! このまま動きを封じようって腹か!? せこい真似を……!』
 集中砲火を食らうゼロは、防御に手一杯で身動きを取ることが出来ない。そうやってエネルギーが
切れる時を待つつもりであることは読んだが、だからと言って反撃に転じられる訳でもなかった。
『くぅッ! どうするか……!』
 このままではジリ貧。無理をしてでも反撃に出ようかと考えたその時のことだった。
 空の彼方から一発のミサイルが飛んできて、円盤を一機爆破して撃墜した!
『! 今のはッ!』
 突然のゼロへの支援攻撃に、敵の攻撃の手が一旦止まる。ゼロの方も、ミサイルの乱入に驚きを見せていた。
 科学技術が中世レベル止まりのハルケギニアに、ミサイルなんてものが存在する訳がない。
つまり今のは、ハルケギニア外の技術。そしてミサイルを扱う自分の味方に、ゼロは一人だけ
心当たりがあった。
 ミサイルの飛んできた方向、『もう一つの竜の羽衣』が鎮座する洞窟のある山脈へ首を向けたゼロは、
山の向こうから、紅白の鳥の如き宇宙船が大空へ上昇していくところを目撃した。
『ジャンバード! 遂にお目覚めだな!』
 『もう一つの竜の羽衣』ことジャンバードは、ブースターの火力を強めて急加速。一気に
円盤群と艦隊に接近していくと、ビームエメラルドで円盤をまた一機撃墜。それで開いた
戦列の隙間に突っ込んで、高速飛行が起こす風圧で隊列を乱した。
『ジャン! ファイト!!』
 掛け声とともに宙返りを行うジャンバード。すると機首が上下に反転したかと思うと、
本来の下部から五本指の手が現れ、機首の小さなウィングが畳まれる。次に主翼が変形して
脚部に変わっていき、尾翼が本体から分離してその下からもう一本の腕が現れ、離れた尾翼は
その肩に接合して盾となった。そして胴体の首になる部分が開くと、中から兜を被った
騎士のような頭部がせり上がり、黄色の目が光り輝いた。
 ジャンバードは一瞬で、鋼鉄の武人の形態への変身を完了した! この巨大ロボットこそ、
ハルケギニアの平和を守るための、遠い星からの贈りもの、ジャンボットである!
『はぁぁぁぁぁッ!』
 背面のブースターから火を噴かせるジャンボットは、ジャンバード時の加速に乗ったまま、
キングジョーにショルダータックルを決めた。それにより、キングジョーの4万8000tもの
超重量の機体が放物線を描いて吹っ飛んでいき、森の中に仰向けに倒れた。
『ジャンナックル!』
 振り返ったジャンボットは握り拳を作った左腕を発射する。
「グアアアアァァァァ!」
 左腕はブラックキングの腹部にめり込み、地面に水平に殴り飛ばした。ブラックキングもまた、
森の中に逆戻りして倒れ込んだ。
 登場してすぐに二大怪獣を薙ぎ倒したジャンボットは、ゼロの左隣に着地する。
『ゼロ、すまない。私としたことが寝坊してしまったようだ。この過ちは、これからの戦いの中で償おう!』
『いいってことよ! 無事に復活して何よりだぜ!』
 反対側、ゼロの右隣には、ミラーナイトが遅れて着地した。
『ミラーナイト! やってくれたんだな!』
『ええ。どうにか修理が間に合いました。ジャンボットはもう問題ありませんよ』
 ミラーナイトの報告を聞き、ゼロの心に活力があふれてきた。
『よぉしッ! グレンファイヤーがまだいないが、ウルティメイトフォースゼロ、出撃だぜ! 
ナックル星人の大軍団をぶっ飛ばすぞ!』
『おう!』『はい!』
 ゼロの掛け声にジャンボットとミラーナイトが応じ、三人がそれぞれ別の方向へ、自分たちを
取り囲む敵に対して構えを取った。

 南の森の中へ避難をしたタルブ村の住民たちは、空を駆るジャンバードの勇姿を目にすると、
口々に叫んだ。
「あれは、『竜の羽衣』じゃないか!?」
「本当に空を飛んでるぞ! あんな鉄の塊が!」
「羽を羽ばたかせることもなく、火を噴いて! 信じられない!」
 そしてジャンバードがジャンボットに変形すると、興奮は最高潮になった。
「『竜の羽衣』が、巨人の姿になった!」
「ササキの話は本当だったんだ! 巨人になって、人知れず村を助けたって!」
「俺たちのことを、助けてくれるのか!?」
 周りが騒然としている中、シエスタは呆然とひと言つぶやく。
「ひいおじいちゃんのお話……嘘じゃなかったんだ……」
 一方で唯一事情を知るルイズは、ジャンボットの復活とゼロ、ミラーナイトの三人で並び立つ姿を見やって、
力強い表情になる。
「ゼロ……ミラーナイト……ジャンボット……! 必ず勝って……!」
 ギュッと『始祖の祈祷書』を握り締めながら、勝利を願った。

『ほう……鏡の巨人に加えて、ロボット戦士まで出てくるとは……。キングジョーを吹っ飛ばすとは大したものだ……』
 円盤の旗艦の内部で、並び立ったゼロたちをながめたナックル星人がつぶやく。円盤が二機落とされ、
自慢の二大怪獣がどちらも倒れ伏したという、傍目から見れば旗色の悪い流れなのだが、その声音に
焦りの色はない。
『ククク……浮遊大陸の時はみっともない姿を晒したが、今度はそうは行かんぞ。たとえ何人増えようと、
相応の準備をしてきているのだからなぁ……。せいぜい今の内に調子づいてるがいい。直に、貴様らの方が
慌てふためくようになるさ……クハハハハッ!』
 まだ奥の手を隠し持っているらしいナックル星人は、モニターの中のゼロたち三人に
不気味な嘲笑を浴びせかけた。


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