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第十七話「タルブ村の宝物」


ウルトラマンゼロの使い魔
第十七話「タルブ村の宝物」
黄金怪獣ゴルドン 登場



 アルビオンからの帰還後、ルイズと才人はキュルケに誘われて、宝探しの旅につき合うことになった。
しかしどれだけ危険を冒そうと、見つかるのはガラクタばかり。嫌気が差してきたところで、
キュルケは次を最後にするという。その対象はタルブ村の『竜の羽衣』というお宝。それは、何の巡り合わせか、
シエスタの祖父がタルブ村にもたらしたものなのだという。
 だが一行が訪問した時には、タルブ村は壊滅状態に陥っていた。近くの山に怪獣ゴルドンが棲みつき、
餌の黄金を探しに行く際の通り道にされたことで、村が蹂躙されてしまったのだった。
こうなっては『竜の羽衣』どころではない。キュルケはタルブ村を救うために、
自分たちでゴルドンを誘き出すことを提案した。そしてルイズたちは、彼女に押し切られる形で、
ゴルドンの巣穴を探しにシルフィードに跨って飛び立った……。

「見て、あそこ。あんなに大きな穴が開いてる。あそこが巣穴に違いないわよ」
 タルブ村から飛び立ち、ゴルドンが棲みついているという山まで飛んできた一行は、
案外あっさりとゴルドンの巣穴らしき穴を発見した。何せ山のふもとに、大空洞といっても
差しつかえないほどの大きな穴が開いているのだ。あまりに目立つので、見逃すのが難しいほどだった。
「あれだけの大きさなら、シルフィードに乗ったまま中に入れるわね」
「むしろ、降りて入らなくちゃいけないんだったら、僕は帰るところだったよ。自分の足で
怪獣から逃げるような危険な真似は、絶対したくない」
 キュルケのひと言で、ギーシュが情けないため息を吐いた。
 穴は翼を広げたシルフィードが五匹横並びになっても、まだ十分な余裕があるほど広かった。
まぁ、40メイル級の巨大怪獣が掘ったのだから、それで当たり前なのかもしれないが。
「ねぇ、入るといっても、どっちの穴に入るの?」
 ここでルイズがそんな質問をする。何故なら、彼らの見下ろす先にある穴は、二箇所あるからだ。
「ていうか、何で二つもあるのよ」
「別に巣の入り口が一つだけって決まってる訳じゃないでしょ。どっちに入っても、同じ場所に
通じてるんじゃない? だからどっちでも同じよ、きっと」
 ルイズの疑問に、キュルケは適当に答えた。
「そんないい加減な……これから危険を冒すんだから、もっとよく考えた方が……」
「考えたって何も変わらないわよ。さッ、タバサ、シルフィードに穴に潜るよう指示して」
 ルイズの意見を無視して、キュルケが頼む。それを受けたタバサの命令で、シルフィードが
斜め下に降下して穴の中に突入した。
「大丈夫かしら……?」
 ルイズの懸念を置いて、シルフィードが進む。キュルケ、タバサ、ギーシュの三人掛かりの『ライト』で、
広大な穴の中が照らされて、巣穴のどこかにいるはずの怪獣ゴルドンの姿を探す。
 しばらくは、誰もが緊張した面持ちで黙ったままでいる時間が続いた。しかしその内に、
彼らの目に土肌ではない、魔法の光を反射して煌びやかに輝く何かが映った。
「止まって!」
 すぐにタバサはシルフィードを急停止させる。そして視界に映ったものの全貌が、一行の前に露わになった。
「間違いない。こいつがゴルドンだ……!」
 才人が言い放つ。彼らの前に横たわっているのは、黄金色の肌を持つ、才人が写真で見たものと
寸分も違わぬ巨大怪獣、ゴルドンだった。
 しかし今は熟睡して、いびきを立てている。一行がやってきたのにも気づいてない様子だ。
巨大生物のいびきなので音量もそれに見合うほどのものがあり、キュルケやルイズは思わず耳をふさいだ。
「こいつがタルブ村を滅茶苦茶にした奴なのね……。こんな呑気に眠り込んでるなんて、
腹立たしいわ……!」
 ルイズがいら立ちまぎれにつぶやいた。ゴルドンは野生の怪獣なので、タルブ村を踏みにじったことに
罪悪感すら覚えていないのだろう。しかしタルブ村の住人の絶望した表情を思い返すと、
のんびり眠りこけている姿に怒りが湧いてくる。
「でも寝てるんじゃ、誘き出すことなんて出来ないわ。叩き起こしましょう」
「し、慎重にやってくれたまえよ!」
 杖を向けるキュルケに、血相を抱えたギーシュが懇願した。
「分かってるって。『ファイアー・ボール』!」
 本当に分かっているのか、キュルケは本気の火球を撃ち込んだ。だが体表で火球が炸裂しても、
ゴルドンは目を開ける気配すら見せなかった。寝転がったまま、先がハサミのように二又に分かれた
長い尻尾を鬱陶しそうに振ってきたので、シルフィードは慌てて後退した。丸で羽虫を追い払うかのような素振りだ。
「あ、あいつ……! たかが野獣のくせに、わたしたちをハエ扱い!? あったま来た!」
 この所作に、貴族らしくプライドが高いルイズが激昂した。杖を抜くと、先端を寝そべったまま
動こうとしないゴルドンに向けて呪文を唱える。
「『ファイアー・ボール』!」
 キュルケと同じ呪文だが、火球は飛び出ず、爆発がゴルドンの側面に発生する。その威力は、
火球の炸裂の何倍もあった。
「キョーキョキョキョキョ!」
 今度ばかりはたまらず、ゴルドンは飛び起きた。そしてギロリとルイズたちをにらみつけると、
身体の向きを変えてシルフィードに向かってきた!
「! シルフィード!」
「きゅい! きゅいー!」
 タバサが急いで指示を出すと、シルフィードはクルリと反転し、元来た道を引き返し出した。
ゴルドンは逃げるシルフィードを追いかけてくる。
「キョーキョキョキョキョ!」
「うわあぁぁ! 何てことをしてくれたんだねルイズ! 怒らせてしまったじゃないか!」
「け、結果オーライって奴よ! 元々こうやって地上に誘き出す予定だったじゃない!」
 パニックになったギーシュが非難すると、ルイズは開き直った。
 しかし実際、事態はさほど悪くはなかった。ゴルドンは鉱物の金を食べているからかどうかは定かではないが、
移動速度は大して速くはなかった。シルフィードが追いつかれるようなスピードは出せないようだ。
しかも怒りで我を忘れているようなので、地上に誘導されていることにも気づいてない様子だった。
「いい調子だわ。地上に出たら、みんなで精一杯声を張り上げてウルトラマンゼロを呼びましょう」
 キュルケは己の立てた計画が順調に進んでいることに気を良くした。だが巣穴の途中で、
ゴルドンの動きに変化が起こった。
「キョーキョキョキョキョ!」
 急に追いかけるのをやめて、首を振ってけたたましく鳴き声を出し続けたのだ。
「ちょっと、止まっちゃったわよ! ちゃんと追ってきてくれなきゃ困るじゃない! ルイズ、
もう一発ぶちかましてやりなさいよ」
 ゴルドンに合わせてシルフィードも停止すると、キュルケがルイズをけしかけようとした。
その一方で、タバサはゴルドンの行動の変化に、悪寒を覚える。
「まさか……」
 そして彼女の感じた悪い予感は、直後に的中したことが明らかになった。
「キョーキョキョキョキョキョ!」
 シルフィードの背後、つまり地上側の地面がいきなり下から爆発したかのように弾け、
ゴルドンが這い出てきたのだ!
「えっ!!? 嘘!?」
 これに目を見張る一同。何故なら、ゴルドンは既に、彼らの前方にいるからである。
 ここで、ルイズたちが一つ勘違いをしていたことを説明せねばなるまい。彼らは「怪獣」という生物について、
一度に「複数の種」を目にすることはあったが、一度に「同一の種を複数」確認したことは今までに一度もなかったので、
「怪獣が一種につき一体きり」と、そんな誤解を心の奥底で覚えてしまっていた。才人もまた、
実際に同じ種の怪獣が複数いるところを目撃したことがなかったので、その可能性をすっかり失念していた。
 だからこそ、はっきりと明記する。ゴルドンは二体いた! ルイズたちは挟み撃ちにされてしまったのだ!
「じ、冗談でしょう!? 二匹いるなんて反則よ!」
 認めがたい現実を前にして、キュルケが思わずわめいた。だがそんなもので、二体のゴルドンが消えるはずがない。
「まずい……!」
 才人や普段は冷静沈着なタバサも、この状況には顔を青ざめた。二体目のゴルドンの巨体により、
逃げ道が塞がれてしまったのだ。一行は怪獣の巣穴でにっちもさっちも行かなくなった。
「キョーキョキョキョキョ!」
「キョーキョキョキョキョキョ!」
 二体のゴルドンは、前進も後退も出来ず狼狽しているシルフィードにじりじりと近寄っていく。
「き、きゃああああああッ! やめて! こっち来ないでよ!」
「ひぃぃぃぃぃぃ! ぼ、僕たちが悪かった! だから許しておくれぇ!」
 プレッシャーに耐え切れずにルイズやギーシュが悲鳴を上げるが、怪獣に言葉が通じる訳もない。
ゴルドンたちが尻尾を振ってシルフィードを叩き落とそうとするのを、シルフィードは必死にかいくぐってかわす。
 だがいつまでもよけ続けることは出来なかった。尻尾のひと振りが翼をかすめ、その際の衝撃で
シルフィードは地面へ叩き落とされる。
「きゅーい!」
「わああああああああああッ!」
「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 当然騎乗しているルイズたちも転落し、地面に落下したことでほとんどが意識を失ってしまった。
そこに、怒りの収まらないゴルドンたちが容赦なく接近してくる。確実にペシャンコに押し潰すつもりだ。
「くそッ……! そうはさせるかぁッ!」
 だがこの場面で立ち上がる者がいた。才人だ。かろうじて意識を繋いだ彼は、仲間たちを守るため、
延いてはタルブ村をこれ以上蹂躙させないために、ウルトラゼロアイを取り出す。
「デュワッ!」
 ゼロアイを顔に装着し、たちまちウルトラマンゼロに変身して二体のゴルドンの前に立ちはだかった!
「キョーキョキョキョキョ!?」
 突然40メイルの巨人が立ちはだかったことでひるんだゴルドンたちだが、そこは闘争心の塊の怪獣。
すぐに尻尾や長い首を棍棒のように振るって攻撃を仕掛ける。
「ハッ!」
 ゼロは二体の打撃を、腕を盾にすることで弾き返す。ゴルドンは光線や火炎など、特別な攻撃方法を持たない。
重い巨体を活かした直接攻撃しか武器を持ち合わせていないのだ。だが単純な打撃は、ウルトラマンレオに
徹底的にしごかれて強靭な肉体を築き上げたゼロには通用しない。
『くッ……だがこいつは厄介な状況だぜ……』
 しかしゼロの方も、無闇に反撃に転ずることが出来ないでいた。何故なら、彼のすぐ後ろには
気を失ったルイズたちが横たわっているからだ。下手に立ち位置を変えたら、彼らがゴルドンに
踏み潰されてしまうかもしれない。光線技や大技も、巻き込む恐れがある。しかも現在の場所は、
ゼロの巨体には狭すぎる怪獣の巣穴。よってゴルドンたちを別の場所へ引き寄せることも出来ないのだ。
 と言っても、いつまでもこのままでいる訳にもいかない。ゼロのエネルギーはハルケギニアでは
三分しか持たないのだ。三分を越えれば、才人の姿に戻ってしまう。そうなったら結局は全滅だろう。
『こんな狭い場所じゃミラーナイトも呼べねぇし、どうすりゃいいんだ……!』
 圧倒的不利の状況に悩みながらも、ゴルドン二体の攻撃をさばくゼロ。だが打撃をはね返した直後の
わずかな隙を突かれて、一体目の尻尾が首に巻きついてしまった。
「キョーキョキョキョキョ!」
『ぐッ!? しまった!』
 更に二体目の尻尾も首に巻きつけられる。二体に首を絞められて、さしものゼロもたまらずに悶絶した。
「キョーキョキョキョキョキョ!」
『ぐおおおお……! く、苦しい……!』
 怪獣の怪力が首に掛かり、ゼロはその場で膝を突いた。それに気を良くしたのか、ゴルドンたちがもっと力を強める。
『くッ……そぉッ! あんまり調子づくんじゃねぇよ!』
 その時、ゼロが遂に怒りを解放した。ウルティメイトブレスレットを叩くと全身が赤く染まり、
力ずくで尻尾の拘束を振りほどく。超パワーの戦士、ストロングコロナゼロに変身したのだ!
「キョーキョキョキョキョ!」
 尻尾を解かれたゴルドンたちは、代わりのように頭突きを繰り出すが、
『せいッ!』
 その脳天にゼロの鉄拳が炸裂した。頭部に激突した拳の衝撃はゴルドンたちの頭蓋骨を通り抜けて
脳まで伝わり、軽い脳震盪を起こさせる。
「キョーキョキョキョキョキョ……!」
『ふんッ!』
 グロッキー状態になった二体の首根っこを、ゼロがむんずと掴む。そして、
『どぉぉぉりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
 ストロングコロナの怪力の本領を発揮して、二体の巨体を地上へ向けて投げ飛ばした! 
ゴルドンたちはまっすぐ吹っ飛んでいき、巣穴を飛び出して大地に転がった。
『はッ!』
 ゴルドンたちを一旦排除したゼロは、ストロングコロナからルナミラクルゼロに変身し直す。
そして両手で気絶中のルイズたち全員をすくい上げると、精神を集中して、ルナミラクルの得意とする
超能力を発動してテレポートした。
 移動先は、巣穴の外。ゴルドンたちが這いつくばっているのを尻目に、ゼロは山林の中にルイズたちを降ろした。
『よぉし、これで目いっぱい戦えるぜ! ゴルドンども、年貢の納め時だ!』
 窮地を見事切り抜けたゼロは、ルナミラクルから通常の状態に戻った。と同時に、持ち直した
ゴルドンたちがゼロに押し寄せてくる。
「キョーキョキョキョキョ!」
『ふんッ! はッ!』
 相変わらず尻尾や首を振り回して攻撃してくる二体のゴルドンに、ゼロは防御しつつカウンターで
首筋にチョップを見舞う。
「キョーキョキョキョキョキョ!」
 攻撃を繰り出しているゴルドンたちの方が、一方的に痛めつけられる結果となった。
開放されている太陽の下では、ゴルドン側に勝ち目がある訳がないのだ。
「キョーキョキョキョキョ!」
 それでも怪獣の意地なのか、背中は見せない。一体目が先ほどのように尻尾をゼロの首目掛け伸ばし、
二体目は突進して頭部の角を突き刺そうとする。
『同じ攻撃を二度も食らうかよ!』
 しかし尻尾はゼロに易々とキャッチされ、それだけでなく、瞬時に二体目の首に巻きつけられた。
「キョーキョキョキョキョキョ!」
 まさかの事態に目を白黒させた二体目も尻尾をゼロに伸ばすがそれも掴まれて、同じように
一体目の首に巻きつけられた。二体のゴルドンは互いの首を絞め合う形になる。
「キョーキョキョキョキョ!」
「キョーキョキョキョキョキョ!」
 二体ともほどこうともがくが、互いに勝手に暴れ回ることで余計に絡み、もつれ合う。
激しくのたうち回った末にようやく尻尾がほどけると、両者ともひどく体力を消耗してしまった。
「シャッ!」
 この瞬間に、ゼロがゼロスラッガーを投擲した。スラッガーは二体目の首と尻尾の付け根を切断する。
 二体目は綺麗に三分割され、たちまち絶命して大地に転がった。胴体の切断面からは、
砂金が零れ落ちる。
「キョーキョキョキョキョ!」
 これに激怒した一体目は、仲間の仇を取ろうとしているのか、猛然とゼロに突進していく。
「シェアッ!」
「キョーキョキョキョキョ!!」
 しかしその首元にエメリウムスラッシュが撃ち込まれると、爆発とともにゴルドンの命の灯火が消え、
その場に倒れ伏した。タルブ村を踏みにじり、トリステインから黄金を奪っていたゴルドンは二体とも
ゼロによって倒されたのだ。
 戦いに勝利すると、ゼロは森の中に降ろしたルイズたちに視線をやる。
『やれやれ……何とかなったからよかったが、一時はどうなるもんかと思ったぜ。もう下手に
危険に手を出すような真似は控えてもらいたいな』
 主にキュルケに向けて、肩をすくめながら独白すると、空に飛び上がってタルブ村から去っていった。

 後日のことだが、黄金怪獣ゴルドンの死体からは、150tの純金が採れた。その黄金は、
タルブ村とトリスタニア、そしてトリステイン軍の復興資金に充てられた。これにより
復興の目途が全く立たずに途方に暮れていたトリステイン軍は、瞬く間に以前の規模を
軽々と超越するほどまでに復活し、トリスタニアとタルブ村も常識外のスピードで復興が成された。
 このことにより、タルブ村は怪獣に蹂躙された悲劇の村から一転、トリステインに救いをもたらした
「奇跡の村」と呼ばれるようになった。

「あ~……ホント、ひどい目に遭ったわ……」
 そうなることは露知らず、ゼロに救出された後のキュルケは、げっそりとした表情でそうつぶやいた。
無理に虎穴に手を突っ込むような真似をして、危うくゴルドンに殺されかけたことが相当応えたようだ。
「もうあんな、怪獣を甘く見た行動は取らないでよね。次もまた助かるなんて保証はないんだから」
「分かったわ……。あたしだって死ぬのはごめんよ。やっぱり、怪獣は近寄るもんじゃないわね……」
 ルイズが注意すると、キュルケは珍しく素直に聞き入れた。それほど骨身に染みたということだろう。
ルイズと才人は何だかおかしくなって、クスッと笑い合った。
 それはともかく、これでタルブ村は救われたということで、一行は早速シエスタに本来の目的である
『竜の羽衣』の下へ案内してもらうことになった。怪獣が倒されたと聞いたシエスタは感激のあまり、
何故か才人に抱きついて、ルイズの癇癪を招いたのだが、それはまぁいいだろう。
 一行が案内された場所は、タルブ村の近くに建てられた寺院である。この場所は村はずれということもあって
ゴルドンの被害を受けておらず、家を踏み潰された人々が身を寄せていたのだが、もう大丈夫だと知ると
皆村の修復のために大喜びで帰っていった。
 そしてその寺院なのだが、造りをひと目見た才人は驚きを見せた。丸木が組み合わされた門の形。
石の代わりに、板と漆喰で作られた壁。木の柱……。白い紙と、縄で作られた紐飾り……。
それはどう見ても、ハルケギニアの文化には似つかわしくない建築物で、地球の日本特有の祭殿
『神社』だったのだ。
 それだけではない。その神社に祭られている『竜の羽衣』を目にすると、言葉をなくした。
深い緑色の胴体の左右に、鉄板の翼が取りつけられ、前にはプロペラという、ハルケギニア社会では
お目に掛かったことのないものが存在する。シエスタが「壊れている」と言った通り、
一度バラバラになったのを形だけでも元の通り繋ぎ合わせただけでもう飛ぶことは出来ないだろうが、
これが本当に空を飛べたことを、才人は理解していた。
「サイト、どうしたの? さっきから固まってるけど……」
 ルイズが様子のおかしい才人に向けて尋ねかけるが、才人は何も答えず、代わりにシエスタに向き合って
肩をつかんだ。ルイズはムッと顔をしかめるが、気づきもせずに才人が質問する。
「シエスタ、お前のひいおじいちゃんが遺したものは、ほかにないのか?」
 シエスタは頬を染めて、才人の目を見つめ返した。
「えっと……、あとはたいしたものは……、お墓と、遺品が少しですけど」
「それを見せてくれ」

 シエスタは才人の頼みで、村の共同墓地へ連れていった。ルイズも主に二人を監視する目的でついてきた。
 シエスタの曽祖父のお墓は、共同墓地の一画にあった。白い石でできた、幅広の墓石の中、
一個だけ違うかたちのお墓があった。黒い石で作られたその墓石は、他の墓石と趣を異にしている。
 墓石には、墓碑銘が刻まれていた。
「ひいおじいちゃんが、死ぬ前に自分で作った墓石だそうです。異国の文字で書いてあるので、
誰も銘が読めなくって」
 シエスタが呟いた。才人はその字を読み上げた。
「海軍少尉佐々木武雄、異界ニ眠ル」
 才人がスラスラ読み上げたことで、シエスタもルイズも目を丸くした。
「サイト……それが読めるってことは、シエスタのひいおじいさんは……」
 ルイズがシエスタの曽祖父の正体に勘付いた。その一方で、シエスタは驚きのあまり口を両手で覆っている。
「サイトさん……それを読んだということは、サイトさんがもう一つの『竜の羽衣』を
目にすることの出来る人だったんですね……」
「え……?」
 妙なことを口走ったシエスタに、ルイズが振り返る。
「ちょっと、今のどういうこと? 『竜の羽衣』って、もう一つあったの?」
「はい」
 ルイズの問い返しに、シエスタがコクリとうなずく。
「ただ、もう一つの方は、みだりに村の外の人に話すなと口止めされてたので教えませんでした。
けれど、今は別です。ひいおじいちゃんの遺言に、この銘が読める人にその存在を教えて、
それがある場所へ案内すべしとありますから」
 才人は、先に見せられた『竜の羽衣』の正体を知っていた。それは、20世紀の太平洋戦争時に
日本が製造した戦闘機、ゼロ戦だ。それをタルブ村にもたらしたシエスタの曽祖父は、その時代の
日本人ということになる。
 しかし、『もう一つの竜の羽衣』というものは、全く見当がつかなかった。そう何機も戦闘機を
こちらの世界に持ち込むことは出来ないはずだ。一体何なのだろうか?
「もう一つの方は、寺院の裏の山に隠されてあります。ご案内しますね」
 シエスタは、遺言に従って才人をその場所へと案内し出した。

「この洞窟の中です」
 シエスタに連れてこられたところは、神社の背後にある山の、切り立った崖。その一箇所に、
やたらと大きく開いた入り口がある。だが山の陰になる場所にあるので、土地勘のない者は
簡単には見つけられないだろう。
 ルイズも当然の如くついてきていた。シエスタは、ルイズが読んだ訳ではないと同行を反対したが、
「使い魔の権利は主人のわたしの権利でもあるわ!」と強硬に主張し、結局押し通したのだった。
「こっちの『竜の羽衣』の方は、もっととんでもない話なんです。空を飛んだというのはもちろん、
巨人に変身したとか。当然信じてる人はいませんが、『固定化』を掛けてないのに何十年も老朽化せず
そのままの状態を保ってることから、想像がつかないほどすごいものであることには違いないということで、
みんなひいおじいちゃんの言いつけ通り、これを隠して今日まで守ってきました」
 入り口の前で、シエスタが事前説明をする。それを聞いたゼロが、ひと言ボソッとつぶやく。
『巨人に変身……まさか……』
「とても大きくて、さっきのよりおかしな形をしてるので、見ても驚かないで下さいね。
それじゃあ、中に入ります」
 松明に火を灯して、シエスタが先導する。それに続いた才人とルイズの目に、炎の明かりに照らされた
巨大な人工物が映った。
 『もう一つの竜の羽衣』は、あまりに大きくて視界に収まり切らないのではっきりとは分からないが、
全体的に渡り鳥に似た形状をしているようだった。白い下地を、赤い縁取りで彩っている。
ゼロ戦はすぐに分かった才人も、これが何なのかは心当たりがなかった。
 代わりに、ゼロが叫ぶ。
『こいつは!? な、何でこんなところにいるんだよ!』
「きゃっ!? ちょっと、急に大声出さないでよ。ビックリするじゃない」
 ルイズが、ゼロの声はシエスタには聞こえてないことも忘れて抗議した。急に口を開いたルイズに、
シエスタが怪訝な目を向けているのが、構わずにルイズが囁く。
「それで、あなたはこれが何なのか分かったの?」
 ゼロはすぐに答えた。
『ああ……。こいつはスターコルベット・ジャンバード。俺の仲間……つまり、ウルティメイトフォースゼロの
ジャンボットのもう一つの姿だ!』


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