ウルトラマンゼロの使い魔
第十五話「ひきょうもの!シエスタは泣いた(後編)」
冷凍怪人ブラック星人
雪女怪獣スノーゴン
ねこ舌星人グロスト 登場
第十五話「ひきょうもの!シエスタは泣いた(後編)」
冷凍怪人ブラック星人
雪女怪獣スノーゴン
ねこ舌星人グロスト 登場
「ま、また宇宙人! しかも今度は、貴族の屋敷の中に潜り込んでるなんて!」
執事風の老人から正体を現したブラック星人に、ルイズたちは驚愕を禁じえなかった。
まさかトリステインの貴族社会の中に、既に侵略者が潜り込んでいたとは。
『ちぃッ! よもや、こんなことで正体がバレてしまうとは!』
毒づくブラック星人に、ウルトラゼロアイの銃口を突きつけたままの才人が、反対の手で
通信端末からブラック星人のデータを引き出してから詰問する。
「お前もザラブ星人の言ってた、宇宙人連合って奴の一員か!? 貴族のお屋敷に入り込んで、何が狙いだ!」
その問いかけにブラック星人は、正体を暴かれて開き直っているのか、包み隠さず回答する。
『如何にも、私も宇宙人連合の一人だ。しかし私はわざわざウルトラマンゼロに挑んで散っていった
脳の足りん馬鹿どもと違って、独自に動いてるのさ。侵略の足掛かりとする前線基地用の奴隷を
確保することを目的にな!』
「奴隷ですって!?」
ブラック星人の吐いた言葉にルイズなどが身を強張らせ、才人はやはりと胸中で舌打ちした。
ブラック星人はかつて地球侵略を狙った敵性宇宙人の一つで、土星に前線基地を築くという
大掛かりな前準備を行っていた。しかし基地の労働力が足りなくなったために、観光地に遊びに来た
地球人の若いカップルを誘拐して、奴隷にする子供を産ませるという計画を立てたのだ。
今回も似た事情で、今度はハルケギニアの民を奴隷にしようとしていたのだろう。そのために
このモット家に使用人として潜り込んで、裏から操っていたに違いない。
『この家の主人は、実に役に立ったぞ。何せ、無理矢理に女どもを連れてきても誰も怪しまんし、
止められんかったからな。女を獲り放題だったわ! グワハハハハハハ!』
何とも下卑た高笑いを上げるブラック星人に、ルイズを始めとした女性陣は強い不快感を表す。
「最低ね! 女の敵だわ!」
「全くね。これ以上女性を家畜みたいにされてたまるもんですか!」
ルイズやキュルケの怒気をその身に受けても、ブラック星人は平然としている。
『ふんッ! 奴隷にしか使えんような下等種族がほざくな! よもやこんなことで我が正体が
露呈するとは想定外だったが、知られたからには貴様ら全員帰す訳にはいかん! 貴様らも捕獲して、
奴隷を産ませる母体にしてくれるわッ!』
ブラック星人が腕を上げると、モット伯を始めとして、屋敷の兵士たちがルイズたちを
取り囲んで武器を向けてきた。モット伯に突き飛ばされたシエスタは慌てて才人の下へ駆け寄る。
「サ、サイトさんッ!」
「くッ……!」
シエスタをかばう才人やルイズは、モット伯の軍団を前にしてひるんだ。彼らは操られているだけなので、
倒す訳にはいかない。しかし既に完全に取り囲まれ、逃げ場はどこにもない。一体どうすればいいのか……。
と考えていたら、
「『ファイアー・ボール』!」
「『ウィンド・ブレイク』」
キュルケとタバサが火炎と風で兵士たちをバッタバッタと薙ぎ倒し出した。それにルイズは
思わず肩を落として、すぐさま抗議する。
「ち、ちょっと何やってるのよ! その人たちは操られてるだけなのよ!?」
するとキュルケはこう反論してきた。
「でも、自分の命には代えられないでしょ。それにモット伯は元から似たようなことして
女性を何人も悲しませてたそうだし、つき従ってた兵士たちも共犯みたいなものだわ。
ちょっとくらい痛めつけても、自業自得ってもんよ」
「いや、だからって……」
「うるさいこと言いっこなしよ。ちゃんと手加減はしてるからさ」
「結構派手に吹っ飛ばしてるように見えるんだけど……?」
ルイズのツッコミはさておき、さすがは魔法学院でも指折りの実力者のコンビ。瞬く間に兵士を全滅させて、
甕の水を操って攻撃してこようとしていたモット伯も、キュルケの炎に軽くあぶられるだけで卒倒し、無力化した。
「なーんだ、丸で見かけ倒しだったわね」
『お、おのれ……よりによって、弱点の熱を操る奴がいようとは……』
「? 今何か重要なことを……」
タバサが向き直ると、ブラック星人は己の失言に気づいて慌てて口をつぐんだ。
『ふ、ふんッ! 今のは軽いお遊びに過ぎんわ。こいつさえいれば、貴様らを纏めて氷漬けに
することなど容易いことだからな!』
ブラック星人の言葉とともに、彼につき従っている和装の女性が前に出た。
『やれ、スノーゴン! 奴らをカチンカチンにしてしまえぃッ!』
そして命令によって、口を開くとそこから吹雪と見紛うほどの冷凍ガスを噴出し始めた!
「きゃあああああ!? な、何! あの人、人間じゃないの!?」
「こ、これはたまらないわ! 外に逃げましょう!」
冷凍ガスの勢いはすさまじく、キュルケの炎すら押し返し、あっという間にエントランスホールを極寒地獄に塗り替えた。
『馬鹿め! 易々と逃がすものか!』
すぐに扉から外へ避難しようとするルイズたちだが、スノーゴンと呼ばれた女性が追ってくる。
しかしその足を才人が撃ち、文字通り足止めする。
「みんな! ここは俺が食い止める! 早く逃げるんだ!」
「そ、そんな!? サイトさんだけ残して逃げることなんて出来ません!」
シエスタは才人の指示に応じられずに立ち止まるが、ルイズがその手を取って引っ張る。
「今はサイトを信じて! ここに残ってたら、確実に助からないわよ!」
「でもッ!」
「も、もう限界よ! ダーリンの心意気を無駄にしないためにも、早く逃げるのよ!」
キュルケもシエスタの腕を掴み、二人掛かりで引きずっていった。そしてタバサが『レビテーション』で
気を失ったモット伯たちを連れて脱出すると、ブラック星人が一人残った才人に呼びかける。
『やはりお前が最後に残ったな、ウルトラマンゼロ! 我々を倒して奴らを救おうというつもりだろうが、
そうはいかんぞ! 返り討ちにしてくれるわ! こちらにはその準備がある!』
「へッ……どうかな? ゼロなら、お前らの用意なんて簡単に破ってくれるぜ」
才人はウルトラゼロアイを開き、変身の構えを取った。
『それが出来るかどうか、試してやろうじゃないか! スノーゴン、真の姿となるのだぁッ!』
「望むところだ! デュワッ!」
ブラック星人の命令で、女性の身体が巨大化、変身していくのと同時に、才人もゼロアイを装着した!
執事風の老人から正体を現したブラック星人に、ルイズたちは驚愕を禁じえなかった。
まさかトリステインの貴族社会の中に、既に侵略者が潜り込んでいたとは。
『ちぃッ! よもや、こんなことで正体がバレてしまうとは!』
毒づくブラック星人に、ウルトラゼロアイの銃口を突きつけたままの才人が、反対の手で
通信端末からブラック星人のデータを引き出してから詰問する。
「お前もザラブ星人の言ってた、宇宙人連合って奴の一員か!? 貴族のお屋敷に入り込んで、何が狙いだ!」
その問いかけにブラック星人は、正体を暴かれて開き直っているのか、包み隠さず回答する。
『如何にも、私も宇宙人連合の一人だ。しかし私はわざわざウルトラマンゼロに挑んで散っていった
脳の足りん馬鹿どもと違って、独自に動いてるのさ。侵略の足掛かりとする前線基地用の奴隷を
確保することを目的にな!』
「奴隷ですって!?」
ブラック星人の吐いた言葉にルイズなどが身を強張らせ、才人はやはりと胸中で舌打ちした。
ブラック星人はかつて地球侵略を狙った敵性宇宙人の一つで、土星に前線基地を築くという
大掛かりな前準備を行っていた。しかし基地の労働力が足りなくなったために、観光地に遊びに来た
地球人の若いカップルを誘拐して、奴隷にする子供を産ませるという計画を立てたのだ。
今回も似た事情で、今度はハルケギニアの民を奴隷にしようとしていたのだろう。そのために
このモット家に使用人として潜り込んで、裏から操っていたに違いない。
『この家の主人は、実に役に立ったぞ。何せ、無理矢理に女どもを連れてきても誰も怪しまんし、
止められんかったからな。女を獲り放題だったわ! グワハハハハハハ!』
何とも下卑た高笑いを上げるブラック星人に、ルイズを始めとした女性陣は強い不快感を表す。
「最低ね! 女の敵だわ!」
「全くね。これ以上女性を家畜みたいにされてたまるもんですか!」
ルイズやキュルケの怒気をその身に受けても、ブラック星人は平然としている。
『ふんッ! 奴隷にしか使えんような下等種族がほざくな! よもやこんなことで我が正体が
露呈するとは想定外だったが、知られたからには貴様ら全員帰す訳にはいかん! 貴様らも捕獲して、
奴隷を産ませる母体にしてくれるわッ!』
ブラック星人が腕を上げると、モット伯を始めとして、屋敷の兵士たちがルイズたちを
取り囲んで武器を向けてきた。モット伯に突き飛ばされたシエスタは慌てて才人の下へ駆け寄る。
「サ、サイトさんッ!」
「くッ……!」
シエスタをかばう才人やルイズは、モット伯の軍団を前にしてひるんだ。彼らは操られているだけなので、
倒す訳にはいかない。しかし既に完全に取り囲まれ、逃げ場はどこにもない。一体どうすればいいのか……。
と考えていたら、
「『ファイアー・ボール』!」
「『ウィンド・ブレイク』」
キュルケとタバサが火炎と風で兵士たちをバッタバッタと薙ぎ倒し出した。それにルイズは
思わず肩を落として、すぐさま抗議する。
「ち、ちょっと何やってるのよ! その人たちは操られてるだけなのよ!?」
するとキュルケはこう反論してきた。
「でも、自分の命には代えられないでしょ。それにモット伯は元から似たようなことして
女性を何人も悲しませてたそうだし、つき従ってた兵士たちも共犯みたいなものだわ。
ちょっとくらい痛めつけても、自業自得ってもんよ」
「いや、だからって……」
「うるさいこと言いっこなしよ。ちゃんと手加減はしてるからさ」
「結構派手に吹っ飛ばしてるように見えるんだけど……?」
ルイズのツッコミはさておき、さすがは魔法学院でも指折りの実力者のコンビ。瞬く間に兵士を全滅させて、
甕の水を操って攻撃してこようとしていたモット伯も、キュルケの炎に軽くあぶられるだけで卒倒し、無力化した。
「なーんだ、丸で見かけ倒しだったわね」
『お、おのれ……よりによって、弱点の熱を操る奴がいようとは……』
「? 今何か重要なことを……」
タバサが向き直ると、ブラック星人は己の失言に気づいて慌てて口をつぐんだ。
『ふ、ふんッ! 今のは軽いお遊びに過ぎんわ。こいつさえいれば、貴様らを纏めて氷漬けに
することなど容易いことだからな!』
ブラック星人の言葉とともに、彼につき従っている和装の女性が前に出た。
『やれ、スノーゴン! 奴らをカチンカチンにしてしまえぃッ!』
そして命令によって、口を開くとそこから吹雪と見紛うほどの冷凍ガスを噴出し始めた!
「きゃあああああ!? な、何! あの人、人間じゃないの!?」
「こ、これはたまらないわ! 外に逃げましょう!」
冷凍ガスの勢いはすさまじく、キュルケの炎すら押し返し、あっという間にエントランスホールを極寒地獄に塗り替えた。
『馬鹿め! 易々と逃がすものか!』
すぐに扉から外へ避難しようとするルイズたちだが、スノーゴンと呼ばれた女性が追ってくる。
しかしその足を才人が撃ち、文字通り足止めする。
「みんな! ここは俺が食い止める! 早く逃げるんだ!」
「そ、そんな!? サイトさんだけ残して逃げることなんて出来ません!」
シエスタは才人の指示に応じられずに立ち止まるが、ルイズがその手を取って引っ張る。
「今はサイトを信じて! ここに残ってたら、確実に助からないわよ!」
「でもッ!」
「も、もう限界よ! ダーリンの心意気を無駄にしないためにも、早く逃げるのよ!」
キュルケもシエスタの腕を掴み、二人掛かりで引きずっていった。そしてタバサが『レビテーション』で
気を失ったモット伯たちを連れて脱出すると、ブラック星人が一人残った才人に呼びかける。
『やはりお前が最後に残ったな、ウルトラマンゼロ! 我々を倒して奴らを救おうというつもりだろうが、
そうはいかんぞ! 返り討ちにしてくれるわ! こちらにはその準備がある!』
「へッ……どうかな? ゼロなら、お前らの用意なんて簡単に破ってくれるぜ」
才人はウルトラゼロアイを開き、変身の構えを取った。
『それが出来るかどうか、試してやろうじゃないか! スノーゴン、真の姿となるのだぁッ!』
「望むところだ! デュワッ!」
ブラック星人の命令で、女性の身体が巨大化、変身していくのと同時に、才人もゼロアイを装着した!
「だから! 戻っちゃダメだって! 危険すぎるわ!」
「放して下さい! サイトさんが死んじゃうッ!」
屋敷の外では、無理矢理連れ出されたシエスタが抵抗するのを、ルイズとキュルケが必死に押しとどめていた。
「もう! 貴族の言うことが聞けないっていうの!?」
「今は貴族とか平民とか関係ありません! サイトさんを助けなくちゃ!」
ルイズの言いつけにも、頭に血の上っている今のシエスタには通用しなかった。ほとほと手を焼いていると、
問題の屋敷が彼女たちの目の前で、内側から爆発したかのように砕け散った。
「な、何!?」
「パオオオオ! パオオオオ!」
そして半壊した屋敷の中から、一本角を生やした狼の首にシロクマの胴体を合わせたような
巨大怪獣が出現した。ルイズはこの怪獣に見覚えがあった。以前にゼロにウルトラの星の歴史を
見せてもらった際に、ビジョンの怪獣軍団に混ざっていた一体……。
「デュワッ!」
「あッ! ウルトラマンゼロだわ!」
ルイズたちの眼前に現れた怪獣の正面に、ウルトラマンゼロが降り立つ。すると、どこからか
ブラック星人の高笑いがする。
『グワッハッハッ! これがスノーゴンの本来の姿だ! 今から貴様らには、スノーゴンが
ウルトラマンゼロをバラバラに処刑するところを見せつけてやるわ!』
「あッ! あんなところに!」
キュルケが指差した先、スノーゴンの背後で、ブラック星人はこちらに向けて叫んでいた。
ルイズは豪語するブラック星人に叫び返す。
「そんなことあるはずがないわ! そんな怪獣一体、ゼロの敵じゃないわよ!」
『そいつはどうかな!? 今に見せてくれるわ! スノーゴン、ウルトラマンゼロを仕留めるのだぁッ!』
「パオオオオ! パオオオオ!」
ブラック星人の命令で、スノーゴンが攻撃を開始する。両手の平を合わせると、その間と口から
先ほどと同等の冷凍ガスを噴射し出した。
『うおッ!?』
そのガスを浴びせられたゼロは、腕で顔面をかばいつつ苦しみ出す。相当ダメージを受けている様子に、
ルイズは衝撃を受けた。
「ど、どうしたのゼロ? あれくらいの攻撃で……」
困惑していると、ブラック星人が理由を説明し出した。
『グハハハハハ! ウルトラ戦士の故郷、光の国には冬がない! だから寒さに耐性がない!
つまり冷気がウルトラ戦士の弱点なのだぁッ!』
「そ、そんな弱点があったなんて……!」
無敵の戦士に思われるウルトラマンゼロの意外な弱点を初めて知り、ルイズのみならず
キュルケやタバサも驚きを禁じ得なかった。
『そのまま氷漬けにしてやれ! スノーゴンッ!』
「パオオオオ!」
スノーゴンが冷凍ガスの勢いをますます強める。だが、
『くッ……セアッ!』
「パオオオオ!?」
気合いを発揮したゼロがエメリウムスラッシュを放ち、スノーゴンの口の中に命中させた。
それにより、冷凍ガスが途切れる。
『何!?』
『へッ……確かにウルトラ戦士の弱点は寒さだ。けどこの程度の寒さで、この俺に勝ったつもりに
なるんじゃねぇぜッ! だぁッ!』
ゼロが掛け声とともに熱を放出し、身体に付着した霜を溶かした。これにルイズたちはほっと安堵の息を吐く。
『今度はこっちの番だ! 覚悟しな、ブラック星人!』
スノーゴンがまだもがいている隙に、ゼロが攻勢に出ようと一歩踏み出す。
だがその瞬間、背後から冷凍ガスを浴びせられた!
『ぐあッ!? 何ぃ!?』
「え!? どこから攻撃が……!」
たった今の冷凍ガスは、正面のスノーゴンからのものでは当然ない。ゼロとルイズたちが振り向くと、そこには、
「ギイイイイイイイイ!」
青い鳥人間に似た奇怪な形をした氷像のような、ゼロたちと同等の身長の怪物がいつの間にか現れ、
右腕から冷凍ガスを噴き出していた。
「て、敵はまだいたの!?」
新手の出現に驚愕するルイズたち。それとは対照的に、ブラック星人が哄笑する。
『グワッハッハッハッハッハッ! 準備があると言っただろう! そいつはグロスト星系JA52番星の宇宙人、
通称グロスト! 計画を遂行する上で、侵略した領土を山分けする条件で手を組んでいたのだ!』
怪物の正体は、かつてウルトラマンタロウと相まみえた侵略者グロスト。冷凍ガスが武器の他にも、
催眠光波で人間を操る能力を持つ。ルイズたちは知らないが、モット伯を洗脳して手駒にしていたのは、
このグロストだったのだ。屋敷と同化して身を隠していたのだが、本来の姿を現してスノーゴンに
加勢してきたのだった。
「ギイイイイイイイイ!」
『うおおぉぉッ! くッ、こいつはやべぇ……!』
グロストの冷凍ガスもすさまじく、スノーゴンと同等か下手したらそれ以上だった。
更には背後から攻撃されていることもあり、さしものゼロも耐え難かった。
「パオオオオ! パオオオオ!」
しかもまだ戦況は悪化する。スノーゴンが持ち直し、攻撃を再開し出したのだ。前後から
冷凍ガスの挟み撃ちにされ、ゼロは大幅に苦しめられる。
『うおああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』
「ゼロッ!!」
身体を抱えるゼロのカラータイマーが赤く点滅し出す。彼の危機に焦ったルイズは、ブラック星人を罵る。
「卑怯者! 男なら正々堂々と、自分の力で勝負しなさいよ!」
だが挑発をされても、ブラック星人は平然と厚顔でいる。
『何とでも言えぃ! たとえ自ら手を汚さずとも、何人で掛かろうとも、勝利こそが全てだッ!
手段など選んで敗北する奴など、愚かでしかないのだぁッ!』
そう豪語した瞬間に、ゼロを追い詰めているグロストに楔形の光弾が連続ヒットして、
冷凍ガスを途切れさせられた。
「ギイイイイイイイイ!」
『な、何事だ!?』
ブラック星人やルイズたちが驚いていると、半壊した屋敷の陰から、銀と緑色の巨人がおもむろに登場した。
『では、こちらも二人になっても文句はありませんね?』
「ミラーナイト!!」
ルイズが感激して名前を呼ぶ。緑色の巨人は、アルビオンで絶体絶命のゼロを救った
ウルティメイトフォースゼロの一員、ミラーナイトであった。ゼロのピンチを察知して、
屋敷のステンドグラスを通ってここにやってきたのだ。
『な、何ぃ!? ウルトラマンゼロに仲間がいたのか……!』
一方、ブラック星人はハルケギニアに降り立ったばかりのミラーナイトのことはまだ知らなかったようで、
ショックを受けていた。スノーゴンとグロストも動揺して攻撃の手を止めている間に、ミラーナイトは
ゼロと背中合わせになる。
『ゼロ、あの宇宙人の方は引き受けました。あなたは怪獣の方をお願いします』
『ああ……また助けられたな、ミラーナイト』
『当然のことじゃないですか。それより、来ますよ!』
ミラーナイトとゼロが言葉を交わしている間に、スノーゴンとグロストが再度襲い掛かり始める。
「パオオオオ! パオオオオ!」
「ギイイイイイイイイ!」
『ふ、ふんッ! まだ数が同じになっただけだ! スノーゴン! グロスト! お前たちの恐ろしさを
見せつけてやれぇッ!』
スノーゴンは再び両手と口から冷凍ガスを噴射する。するとゼロは、下手に逃げようとせず、
前に飛び出して自分から冷凍ガスへ突っ込んでいった。
『だぁッ!』
それによって無理矢理ガスを突破し、スノーゴンの懐に入ることに成功する。そして胸部に横拳を叩き込んで、
ガスの噴出を止めさせた。
「パオオオオ!」
『うらッ!』
よろめいたスノーゴンに掴みかかるゼロだが、スノーゴンも手を伸ばし、両手と両手で掴み合いになる。
『ぐッ……ぐぅぅぅ……何つう馬鹿力だ……!』
「パオオオオ! パオオオオ!」
だがゼロの腕の方が、スノーゴンにひねられていく。スノーゴンは冷凍ガス攻撃も強力だが、
腕力も氷漬けにしたウルトラマンジャックの身体を素手でバラバラにするほど優れている。
遠距離でも、近距離でも強い、顔つきに似合わないほどのかなりの強敵怪獣なのだ。
「パオオオオ! パオオオオ!」
『うおおぉぉッ!』
やがてゼロはスノーゴンに突き飛ばされ、すぐに起き上がったものの三度冷凍ガスを浴びせられて
悶絶する羽目になった。
「ギイイイイイイイイ!」
『くぅッ!? ま、まるで嵐のような冷凍ガスを……!』
ミラーナイトの方も、グロスト相手に大苦戦を強いられていた。グロストの猛烈な勢いの冷凍ガスを前に、
得意の俊敏な動きを基にした撹乱戦法が取れずにいる。ディフェンスミラーで防御しようにも、何と鏡まで
凍ってしまって砕ける始末だった。
『ここにグレンがいれば……楽に勝負を進められたのでしょうが……』
極低温を武器にする敵に、仲間のグレンファイヤーに思いを馳せるミラーナイト。炎と熱の戦士である
彼ならば、今の敵たちに有利を取れたのだが、いないのだからどうしようもない。
ゼロもミラーナイトも苦戦しているのを見せられたルイズたちの内、キュルケが我慢ならずに
杖を手に取った。
「このままじゃまずいわ! 援護するわよ! タバサ、手伝って!」
タバサはうなずくが、ルイズが二人のことを案じて尋ねかける。
「で、出来るの?」
「敵は氷を武器にしてるわ。だったらあたしの炎が少しは役に立てるはずよ。タバサの協力があれば尚更だわ。
さぁタバサ、力を合わせるわよぉ!」
「分かった」
キュルケがグロストへ杖を向けると、先端から激しい火炎が噴射する。その炎は、タバサの起こす
旋風によりもっと勢いを増して、炎の竜巻になって巨大なグロストへ飛んでいく。
「ギイイイイイイイイ!」
するとどうだろうか。炎の竜巻を受けた途端、グロストの身体の突起が崩れ、溶けていくではないか。
「嘘!? すっごい効いてるわ!」
これには、攻撃を仕掛けたキュルケが驚かされた。せめて足止めになればという程度にしか
考えていなかったので、あの巨大生物の身体を破損させるほどに通じるとは思ってもいなかった。
というのも、理由がある。グロストは熱がほとんど存在しない超極寒の環境の星に生きる生命体であり、
体組織が氷に限りなく近い。そのため冷気攻撃は怪獣界の中でも強烈だが、熱と炎には丸っきり耐性を持たない。
何と焼き芋の熱でひるんだことがあるほどなのだ。それが、キュルケとタバサの作り出す炎の竜巻に
耐えられる訳がなかった。
「まッ、効くんだったらそれに越したことはないわ。このままガンガン攻めるわよ!」
勢いに乗ったキュルケとタバサは、そのまま炎の竜巻を食らわせ続ける。それにより、
高熱に晒されたグロストの身体は瞬く間にドロドロに溶けていき、冷凍ガスの勢いも
見る影がないほどに衰えた。
「ギイイイイイイイイ……!」
『! 今です! シルバークロス!』
それによって持ち直したミラーナイトは、すかさず必殺の十字の光刃を放った。シルバークロスは
グロストの身体を四つに分断し、地面の上に転がす。その破片も、ミラーナイフで粉々に砕かれた。
『ありがとう、ゼロの友人たちよ。あなたたちのお陰で助かりました』
ミラーナイトは助けてくれたキュルケたちにガッツポーズを見せ、感謝の気持ちを表現した。
「きゃあ! あのミラーナイトっていう戦士、あたしたちにお礼を言ってるみたいよ!」
その気持ちはちゃんと伝わり、キュルケははしゃいで喜んだ。
「パオオオオ! パオオオオ!」
『うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
だが喜んでばかりもいられなかった。スノーゴンと戦っていたゼロは、冷凍ガスに全身を覆われて
その姿が見えなくなった。
「!? ゼロぉッ!!」
『グハハハハハ! グロストがあんな役立たずとは思わなかった! だがウルトラマンゼロの方は、
我がスノーゴンがカチンカチンに凍らせてやったぞ!』
ルイズが絶叫し、ブラック星人はもう勝ったものと思って豪語した。が、
『なーんてなッ!』
『何ッ!?』
するはずのないゼロの声が響き、驚愕させられる。そして冷凍ガスが晴れると、そこにあったのは、
『た、盾だとぉ!?』
青と赤、銀色のゼロのカラーで彩られた盾が宙に浮いていた。これはウルトラゼロランスと同じく、
ウルティメイトブレスレットの機能の一つ、あらゆる攻撃を遮るウルトラゼロディフェンダーである。
かつてのスノーゴンは、これの前身であるウルトラディフェンダーが決め手となって
ウルトラマンジャックに敗れ去ったものだ。
しかし盾で身を守ったはずのゼロの姿がない。スノーゴンが左右を見回していると、頭上から呼び掛けられた。
『こっちだぜ!』
ゼロはスノーゴンの頭上で、ウルトラゼロキックを仕掛けるところであった。
『フィニィッシュッ!!』
「パオオオオ!!」
最早スノーゴンにかわす手立ても防ぐ手立てもなく、必殺の飛び蹴りをもろに食らった。
火達磨になったスノーゴンは弧を描いて飛んでいき、地面に激突したと同時に爆散した。
『な……あ……ひええぇぇぇぇぇ!』
グロストとスノーゴン、双方を倒されたブラック星人は、傲然とした態度をかなぐり捨てて
一目散に逃走しようとした。しかしゼロがこんな極悪非道な侵略者を見逃すはずがなかった。
「シャッ!」
『あぎゃああああ―――――――――――――!!』
緑色の光弾、ビームゼロスパイクの一撃を撃ち込まれ、ブラック星人はあえなく爆死した。
これでモット家に巣食っていた魔の手は一掃された。
「ジュワッ!」
「ハッ!」
敵がいなくなった以上、ゼロとミラーナイトがこれ以上留まる必要はない。彼らは空中に飛び上がると、
二人並んで空の彼方へ去っていった。
悪は去った。しかし、助かったというのにシエスタだけは、その場にしゃがみ込んでほろほろと涙を流していた。
「ああ、サイトさん……私のせいで、犠牲になって……ごめんなさい、ごめんなさい……」
どうやらシエスタは、才人が自分たちを逃がす際に死亡したものと思っているようだった。
そこにルイズが、おずおずと声を掛ける。
「あ、あのね? 泣くのは早いんじゃない? 何も、サイトが死んだと決まった訳じゃないんだから……」
というより、死んだはずがないのだ。だってたった今まで、そこで元気に戦っていたのだから。
だがそれを知る由もないシエスタの説得は無理だった。
「いいえ! あの状況で助かるはずがないじゃないですか! それこそ、奇跡でも起こらない限り……」
「おーい、みんなー!」
言葉の途中で、当の才人が屋敷の瓦礫を踏み越えて、ひょっこりと姿を現した。
「あッ、ダーリン! 無事だったのね! 信じてたわ!」
「不死身……」
「いやぁ、危ないところをゼロに助けられたんだ。今回ばかりは肝を冷やしたぜ。寒かっただけに。なーんて」
つまらない冗談を言っている才人の姿をまじまじと見たシエスタは、ポカーンと口が開いていた。
「そうだシエスタ! そっちこそ無事だったのか? モット伯、っていうか宇宙人たちに
ひどいことされなかっただろうな?」
才人が呼びかけると、固まっていたシエスタは、いきなり才人に抱きついた。
「わぁぁぁッ!? シ、シエスタ!?」
「サイトさーん!! ご無事でよかったですぅぅぅぅぅ! 奇跡が、奇跡が起こったんですねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
シエスタが抱きついたことに、ルイズは目を白黒させて、そして真っ赤になって怒り出した。
「こ、こらメイドぉッ! あんた何しちゃってるのよぉ! さっさとサイトから離れなさいよッ!」
「嫌ですッ! もう離しません! サイトさんをどこにもやったりしませんから!」
「な、何言ってるのあんた!? サイトッ! あんたこそ離れなさい! 早くしないと百回鞭打ちの刑だからね!!」
「そ、そんな理不尽な!!」
ルイズが怒鳴り散らし、才人が悲鳴を上げる構図を目にして、顔を見合わせたキュルケとタバサは
呆れて肩をすくめた。
「放して下さい! サイトさんが死んじゃうッ!」
屋敷の外では、無理矢理連れ出されたシエスタが抵抗するのを、ルイズとキュルケが必死に押しとどめていた。
「もう! 貴族の言うことが聞けないっていうの!?」
「今は貴族とか平民とか関係ありません! サイトさんを助けなくちゃ!」
ルイズの言いつけにも、頭に血の上っている今のシエスタには通用しなかった。ほとほと手を焼いていると、
問題の屋敷が彼女たちの目の前で、内側から爆発したかのように砕け散った。
「な、何!?」
「パオオオオ! パオオオオ!」
そして半壊した屋敷の中から、一本角を生やした狼の首にシロクマの胴体を合わせたような
巨大怪獣が出現した。ルイズはこの怪獣に見覚えがあった。以前にゼロにウルトラの星の歴史を
見せてもらった際に、ビジョンの怪獣軍団に混ざっていた一体……。
「デュワッ!」
「あッ! ウルトラマンゼロだわ!」
ルイズたちの眼前に現れた怪獣の正面に、ウルトラマンゼロが降り立つ。すると、どこからか
ブラック星人の高笑いがする。
『グワッハッハッ! これがスノーゴンの本来の姿だ! 今から貴様らには、スノーゴンが
ウルトラマンゼロをバラバラに処刑するところを見せつけてやるわ!』
「あッ! あんなところに!」
キュルケが指差した先、スノーゴンの背後で、ブラック星人はこちらに向けて叫んでいた。
ルイズは豪語するブラック星人に叫び返す。
「そんなことあるはずがないわ! そんな怪獣一体、ゼロの敵じゃないわよ!」
『そいつはどうかな!? 今に見せてくれるわ! スノーゴン、ウルトラマンゼロを仕留めるのだぁッ!』
「パオオオオ! パオオオオ!」
ブラック星人の命令で、スノーゴンが攻撃を開始する。両手の平を合わせると、その間と口から
先ほどと同等の冷凍ガスを噴射し出した。
『うおッ!?』
そのガスを浴びせられたゼロは、腕で顔面をかばいつつ苦しみ出す。相当ダメージを受けている様子に、
ルイズは衝撃を受けた。
「ど、どうしたのゼロ? あれくらいの攻撃で……」
困惑していると、ブラック星人が理由を説明し出した。
『グハハハハハ! ウルトラ戦士の故郷、光の国には冬がない! だから寒さに耐性がない!
つまり冷気がウルトラ戦士の弱点なのだぁッ!』
「そ、そんな弱点があったなんて……!」
無敵の戦士に思われるウルトラマンゼロの意外な弱点を初めて知り、ルイズのみならず
キュルケやタバサも驚きを禁じ得なかった。
『そのまま氷漬けにしてやれ! スノーゴンッ!』
「パオオオオ!」
スノーゴンが冷凍ガスの勢いをますます強める。だが、
『くッ……セアッ!』
「パオオオオ!?」
気合いを発揮したゼロがエメリウムスラッシュを放ち、スノーゴンの口の中に命中させた。
それにより、冷凍ガスが途切れる。
『何!?』
『へッ……確かにウルトラ戦士の弱点は寒さだ。けどこの程度の寒さで、この俺に勝ったつもりに
なるんじゃねぇぜッ! だぁッ!』
ゼロが掛け声とともに熱を放出し、身体に付着した霜を溶かした。これにルイズたちはほっと安堵の息を吐く。
『今度はこっちの番だ! 覚悟しな、ブラック星人!』
スノーゴンがまだもがいている隙に、ゼロが攻勢に出ようと一歩踏み出す。
だがその瞬間、背後から冷凍ガスを浴びせられた!
『ぐあッ!? 何ぃ!?』
「え!? どこから攻撃が……!」
たった今の冷凍ガスは、正面のスノーゴンからのものでは当然ない。ゼロとルイズたちが振り向くと、そこには、
「ギイイイイイイイイ!」
青い鳥人間に似た奇怪な形をした氷像のような、ゼロたちと同等の身長の怪物がいつの間にか現れ、
右腕から冷凍ガスを噴き出していた。
「て、敵はまだいたの!?」
新手の出現に驚愕するルイズたち。それとは対照的に、ブラック星人が哄笑する。
『グワッハッハッハッハッハッ! 準備があると言っただろう! そいつはグロスト星系JA52番星の宇宙人、
通称グロスト! 計画を遂行する上で、侵略した領土を山分けする条件で手を組んでいたのだ!』
怪物の正体は、かつてウルトラマンタロウと相まみえた侵略者グロスト。冷凍ガスが武器の他にも、
催眠光波で人間を操る能力を持つ。ルイズたちは知らないが、モット伯を洗脳して手駒にしていたのは、
このグロストだったのだ。屋敷と同化して身を隠していたのだが、本来の姿を現してスノーゴンに
加勢してきたのだった。
「ギイイイイイイイイ!」
『うおおぉぉッ! くッ、こいつはやべぇ……!』
グロストの冷凍ガスもすさまじく、スノーゴンと同等か下手したらそれ以上だった。
更には背後から攻撃されていることもあり、さしものゼロも耐え難かった。
「パオオオオ! パオオオオ!」
しかもまだ戦況は悪化する。スノーゴンが持ち直し、攻撃を再開し出したのだ。前後から
冷凍ガスの挟み撃ちにされ、ゼロは大幅に苦しめられる。
『うおああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』
「ゼロッ!!」
身体を抱えるゼロのカラータイマーが赤く点滅し出す。彼の危機に焦ったルイズは、ブラック星人を罵る。
「卑怯者! 男なら正々堂々と、自分の力で勝負しなさいよ!」
だが挑発をされても、ブラック星人は平然と厚顔でいる。
『何とでも言えぃ! たとえ自ら手を汚さずとも、何人で掛かろうとも、勝利こそが全てだッ!
手段など選んで敗北する奴など、愚かでしかないのだぁッ!』
そう豪語した瞬間に、ゼロを追い詰めているグロストに楔形の光弾が連続ヒットして、
冷凍ガスを途切れさせられた。
「ギイイイイイイイイ!」
『な、何事だ!?』
ブラック星人やルイズたちが驚いていると、半壊した屋敷の陰から、銀と緑色の巨人がおもむろに登場した。
『では、こちらも二人になっても文句はありませんね?』
「ミラーナイト!!」
ルイズが感激して名前を呼ぶ。緑色の巨人は、アルビオンで絶体絶命のゼロを救った
ウルティメイトフォースゼロの一員、ミラーナイトであった。ゼロのピンチを察知して、
屋敷のステンドグラスを通ってここにやってきたのだ。
『な、何ぃ!? ウルトラマンゼロに仲間がいたのか……!』
一方、ブラック星人はハルケギニアに降り立ったばかりのミラーナイトのことはまだ知らなかったようで、
ショックを受けていた。スノーゴンとグロストも動揺して攻撃の手を止めている間に、ミラーナイトは
ゼロと背中合わせになる。
『ゼロ、あの宇宙人の方は引き受けました。あなたは怪獣の方をお願いします』
『ああ……また助けられたな、ミラーナイト』
『当然のことじゃないですか。それより、来ますよ!』
ミラーナイトとゼロが言葉を交わしている間に、スノーゴンとグロストが再度襲い掛かり始める。
「パオオオオ! パオオオオ!」
「ギイイイイイイイイ!」
『ふ、ふんッ! まだ数が同じになっただけだ! スノーゴン! グロスト! お前たちの恐ろしさを
見せつけてやれぇッ!』
スノーゴンは再び両手と口から冷凍ガスを噴射する。するとゼロは、下手に逃げようとせず、
前に飛び出して自分から冷凍ガスへ突っ込んでいった。
『だぁッ!』
それによって無理矢理ガスを突破し、スノーゴンの懐に入ることに成功する。そして胸部に横拳を叩き込んで、
ガスの噴出を止めさせた。
「パオオオオ!」
『うらッ!』
よろめいたスノーゴンに掴みかかるゼロだが、スノーゴンも手を伸ばし、両手と両手で掴み合いになる。
『ぐッ……ぐぅぅぅ……何つう馬鹿力だ……!』
「パオオオオ! パオオオオ!」
だがゼロの腕の方が、スノーゴンにひねられていく。スノーゴンは冷凍ガス攻撃も強力だが、
腕力も氷漬けにしたウルトラマンジャックの身体を素手でバラバラにするほど優れている。
遠距離でも、近距離でも強い、顔つきに似合わないほどのかなりの強敵怪獣なのだ。
「パオオオオ! パオオオオ!」
『うおおぉぉッ!』
やがてゼロはスノーゴンに突き飛ばされ、すぐに起き上がったものの三度冷凍ガスを浴びせられて
悶絶する羽目になった。
「ギイイイイイイイイ!」
『くぅッ!? ま、まるで嵐のような冷凍ガスを……!』
ミラーナイトの方も、グロスト相手に大苦戦を強いられていた。グロストの猛烈な勢いの冷凍ガスを前に、
得意の俊敏な動きを基にした撹乱戦法が取れずにいる。ディフェンスミラーで防御しようにも、何と鏡まで
凍ってしまって砕ける始末だった。
『ここにグレンがいれば……楽に勝負を進められたのでしょうが……』
極低温を武器にする敵に、仲間のグレンファイヤーに思いを馳せるミラーナイト。炎と熱の戦士である
彼ならば、今の敵たちに有利を取れたのだが、いないのだからどうしようもない。
ゼロもミラーナイトも苦戦しているのを見せられたルイズたちの内、キュルケが我慢ならずに
杖を手に取った。
「このままじゃまずいわ! 援護するわよ! タバサ、手伝って!」
タバサはうなずくが、ルイズが二人のことを案じて尋ねかける。
「で、出来るの?」
「敵は氷を武器にしてるわ。だったらあたしの炎が少しは役に立てるはずよ。タバサの協力があれば尚更だわ。
さぁタバサ、力を合わせるわよぉ!」
「分かった」
キュルケがグロストへ杖を向けると、先端から激しい火炎が噴射する。その炎は、タバサの起こす
旋風によりもっと勢いを増して、炎の竜巻になって巨大なグロストへ飛んでいく。
「ギイイイイイイイイ!」
するとどうだろうか。炎の竜巻を受けた途端、グロストの身体の突起が崩れ、溶けていくではないか。
「嘘!? すっごい効いてるわ!」
これには、攻撃を仕掛けたキュルケが驚かされた。せめて足止めになればという程度にしか
考えていなかったので、あの巨大生物の身体を破損させるほどに通じるとは思ってもいなかった。
というのも、理由がある。グロストは熱がほとんど存在しない超極寒の環境の星に生きる生命体であり、
体組織が氷に限りなく近い。そのため冷気攻撃は怪獣界の中でも強烈だが、熱と炎には丸っきり耐性を持たない。
何と焼き芋の熱でひるんだことがあるほどなのだ。それが、キュルケとタバサの作り出す炎の竜巻に
耐えられる訳がなかった。
「まッ、効くんだったらそれに越したことはないわ。このままガンガン攻めるわよ!」
勢いに乗ったキュルケとタバサは、そのまま炎の竜巻を食らわせ続ける。それにより、
高熱に晒されたグロストの身体は瞬く間にドロドロに溶けていき、冷凍ガスの勢いも
見る影がないほどに衰えた。
「ギイイイイイイイイ……!」
『! 今です! シルバークロス!』
それによって持ち直したミラーナイトは、すかさず必殺の十字の光刃を放った。シルバークロスは
グロストの身体を四つに分断し、地面の上に転がす。その破片も、ミラーナイフで粉々に砕かれた。
『ありがとう、ゼロの友人たちよ。あなたたちのお陰で助かりました』
ミラーナイトは助けてくれたキュルケたちにガッツポーズを見せ、感謝の気持ちを表現した。
「きゃあ! あのミラーナイトっていう戦士、あたしたちにお礼を言ってるみたいよ!」
その気持ちはちゃんと伝わり、キュルケははしゃいで喜んだ。
「パオオオオ! パオオオオ!」
『うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
だが喜んでばかりもいられなかった。スノーゴンと戦っていたゼロは、冷凍ガスに全身を覆われて
その姿が見えなくなった。
「!? ゼロぉッ!!」
『グハハハハハ! グロストがあんな役立たずとは思わなかった! だがウルトラマンゼロの方は、
我がスノーゴンがカチンカチンに凍らせてやったぞ!』
ルイズが絶叫し、ブラック星人はもう勝ったものと思って豪語した。が、
『なーんてなッ!』
『何ッ!?』
するはずのないゼロの声が響き、驚愕させられる。そして冷凍ガスが晴れると、そこにあったのは、
『た、盾だとぉ!?』
青と赤、銀色のゼロのカラーで彩られた盾が宙に浮いていた。これはウルトラゼロランスと同じく、
ウルティメイトブレスレットの機能の一つ、あらゆる攻撃を遮るウルトラゼロディフェンダーである。
かつてのスノーゴンは、これの前身であるウルトラディフェンダーが決め手となって
ウルトラマンジャックに敗れ去ったものだ。
しかし盾で身を守ったはずのゼロの姿がない。スノーゴンが左右を見回していると、頭上から呼び掛けられた。
『こっちだぜ!』
ゼロはスノーゴンの頭上で、ウルトラゼロキックを仕掛けるところであった。
『フィニィッシュッ!!』
「パオオオオ!!」
最早スノーゴンにかわす手立ても防ぐ手立てもなく、必殺の飛び蹴りをもろに食らった。
火達磨になったスノーゴンは弧を描いて飛んでいき、地面に激突したと同時に爆散した。
『な……あ……ひええぇぇぇぇぇ!』
グロストとスノーゴン、双方を倒されたブラック星人は、傲然とした態度をかなぐり捨てて
一目散に逃走しようとした。しかしゼロがこんな極悪非道な侵略者を見逃すはずがなかった。
「シャッ!」
『あぎゃああああ―――――――――――――!!』
緑色の光弾、ビームゼロスパイクの一撃を撃ち込まれ、ブラック星人はあえなく爆死した。
これでモット家に巣食っていた魔の手は一掃された。
「ジュワッ!」
「ハッ!」
敵がいなくなった以上、ゼロとミラーナイトがこれ以上留まる必要はない。彼らは空中に飛び上がると、
二人並んで空の彼方へ去っていった。
悪は去った。しかし、助かったというのにシエスタだけは、その場にしゃがみ込んでほろほろと涙を流していた。
「ああ、サイトさん……私のせいで、犠牲になって……ごめんなさい、ごめんなさい……」
どうやらシエスタは、才人が自分たちを逃がす際に死亡したものと思っているようだった。
そこにルイズが、おずおずと声を掛ける。
「あ、あのね? 泣くのは早いんじゃない? 何も、サイトが死んだと決まった訳じゃないんだから……」
というより、死んだはずがないのだ。だってたった今まで、そこで元気に戦っていたのだから。
だがそれを知る由もないシエスタの説得は無理だった。
「いいえ! あの状況で助かるはずがないじゃないですか! それこそ、奇跡でも起こらない限り……」
「おーい、みんなー!」
言葉の途中で、当の才人が屋敷の瓦礫を踏み越えて、ひょっこりと姿を現した。
「あッ、ダーリン! 無事だったのね! 信じてたわ!」
「不死身……」
「いやぁ、危ないところをゼロに助けられたんだ。今回ばかりは肝を冷やしたぜ。寒かっただけに。なーんて」
つまらない冗談を言っている才人の姿をまじまじと見たシエスタは、ポカーンと口が開いていた。
「そうだシエスタ! そっちこそ無事だったのか? モット伯、っていうか宇宙人たちに
ひどいことされなかっただろうな?」
才人が呼びかけると、固まっていたシエスタは、いきなり才人に抱きついた。
「わぁぁぁッ!? シ、シエスタ!?」
「サイトさーん!! ご無事でよかったですぅぅぅぅぅ! 奇跡が、奇跡が起こったんですねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
シエスタが抱きついたことに、ルイズは目を白黒させて、そして真っ赤になって怒り出した。
「こ、こらメイドぉッ! あんた何しちゃってるのよぉ! さっさとサイトから離れなさいよッ!」
「嫌ですッ! もう離しません! サイトさんをどこにもやったりしませんから!」
「な、何言ってるのあんた!? サイトッ! あんたこそ離れなさい! 早くしないと百回鞭打ちの刑だからね!!」
「そ、そんな理不尽な!!」
ルイズが怒鳴り散らし、才人が悲鳴を上げる構図を目にして、顔を見合わせたキュルケとタバサは
呆れて肩をすくめた。
とまぁ最後はドタバタしたものの、モット伯の件はこれで丸く収まった。後日判明することだが、
モット伯は操られていた時の記憶がおぼろながら残っており、それがトラウマになって
女性恐怖症の後遺症が残ったのだとか。まぁそのお陰で、彼の悪癖がなりを潜めたそうだから、
雨降って地固まるといったところか。
「ルイズ、本当にありがとうな。お陰でシエスタを救うことが出来たよ」
そして学院の寮に帰ると、才人はルイズに一連のことの礼を述べた。それにルイズは
そっけない風に返答する。
「別にいいわよ。ご褒美代わりって言ったでしょ? それに、結局あんまり役には立てなかったし……
ほとんどキュルケやゼロたちが解決したようなもんだったしね……」
「そんなことないさ。お前が最初に協力してくれなかったら、あの屋敷に入ることも出来なかったかもしれないんだから」
悔しそうなルイズを励ますように告げる才人だが、それでもルイズの気持ちは軽くならなかった。
何故なら、自分のやったことは「他の者にも出来たこと」なのだから。
(たとえばキュルケでも、わたしのやった屋敷の中に通すことは出来たはずだわ。けど、
キュルケのやったことでわたしに出来たことはない。……キュルケとタバサ、あんなに
強力な魔法が使えていいな……どうしてわたしには、何の魔法も使えないんだろう……)
魔法の使えない自分と比べて他のメイジを嫉妬したことが何度もあるルイズだが、今回ばかりは、
純粋にキュルケたちの才能を羨ましがった。
その指に嵌められた『水のルビー』が、誰にも知られることなく、キラリと輝きを放った。
モット伯は操られていた時の記憶がおぼろながら残っており、それがトラウマになって
女性恐怖症の後遺症が残ったのだとか。まぁそのお陰で、彼の悪癖がなりを潜めたそうだから、
雨降って地固まるといったところか。
「ルイズ、本当にありがとうな。お陰でシエスタを救うことが出来たよ」
そして学院の寮に帰ると、才人はルイズに一連のことの礼を述べた。それにルイズは
そっけない風に返答する。
「別にいいわよ。ご褒美代わりって言ったでしょ? それに、結局あんまり役には立てなかったし……
ほとんどキュルケやゼロたちが解決したようなもんだったしね……」
「そんなことないさ。お前が最初に協力してくれなかったら、あの屋敷に入ることも出来なかったかもしれないんだから」
悔しそうなルイズを励ますように告げる才人だが、それでもルイズの気持ちは軽くならなかった。
何故なら、自分のやったことは「他の者にも出来たこと」なのだから。
(たとえばキュルケでも、わたしのやった屋敷の中に通すことは出来たはずだわ。けど、
キュルケのやったことでわたしに出来たことはない。……キュルケとタバサ、あんなに
強力な魔法が使えていいな……どうしてわたしには、何の魔法も使えないんだろう……)
魔法の使えない自分と比べて他のメイジを嫉妬したことが何度もあるルイズだが、今回ばかりは、
純粋にキュルケたちの才能を羨ましがった。
その指に嵌められた『水のルビー』が、誰にも知られることなく、キラリと輝きを放った。