あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第37話 人形




 「え、それ、どういうこと?」

 いきなり『ただ一人の人間』扱いされて混乱するなのは。

 ただでさえいきなりそんな事を言われたのに加え、必然としてその場の全員の注目を集めてしまっているため、さしもの彼女とて落ち着いていろという方が無理な話である。
 そんな場を納めるかのように、ジョゼフが再び語り始めた。

 「なに、実際の所、その理由は大したものではない。彼女は今この場でただ一人、このハルケギニアに生まれついたものではない、ただそれだけの事に過ぎん」
 「という事は、逆に言えば、あなたの言う『人形』とは、このハルケギニアの大地に生まれた人すべてを指しているのですね」

 ヴィットーリオが確認するようにジョゼフへと問いかけた。
 それに対して頷くジョゼフ。

 「その通りだ。おまえ達はくだらない狂人の妄想と思うだろうが、そこのタカマチナノハのような『外』の存在から見れば、我々は人というのもおこがましい人形の群れにすぎんのだ。まあ、それでも六千年ほどかけて、少しはましになってはいるのだがな」
 「六千年……というと、それは始祖と何か関係が?」
 「さすがに完全には判らん。だが、少なくとも間接的にはあっただろうな。それに関してはおそらくこいつが知っているはずだが、禁忌に触れるとかで教えてはもらえなかったが」

 ジョゼフはそう言って、彼の背後に控えていた人物を前に出した。
 かぶっていたフードが外され、その顔が遠目ながら明らかになる。
 若い男らしい事がどうにか見える程度の大きさであったが、それでもはっきりと見て取れる一つの特徴があった。
 人にはあり得ない、長くとがった耳。

 「エルフ……」
 「エルフ、だと……」

 それに気がついた兵士達の間にざわめきが走る。そんな中、なのはの口から、小さなつぶやきが漏れた。

 「ビダーシャルさん」
 「知っているのですか?」

 それを聞いたヴィットーリオがなのはに聞く。

 「はい、一度戦った事があります。ご主人様と、その友達数名と。そのときは何とか勝ちましたけど……」

 その瞬間、ヴィットーリオだけでなく、ウェールズをはじめとするなのはの周りにいた人物全員が目をむいて驚いていた。

 「あ、貴方達は、それだけの人数でエルフに勝ったというのですか!?」
 「馬鹿な……いや、虚無故にか……」

 周りからの驚愕の声を受け、ルイズは今更ながらにエルフと自分たちの実力差を思い知ったが、ふと気がつくと我が使い魔がなぜか非常に憤っているのを感じた。

 「なのは?」

 思わずそう言ってしまったルイズを、珍しくなのはが無視した。そして、そもそもルイズに声をかけられた事に気がついていなかったかのように、彼女はヴィットーリオをはじめとする周りに異様なまでのプレッシャーをかけていた。
 教皇聖下と将軍クラスは何とか耐えているが、それ以下の人々が明らかにビビっている。
 そしてなのはは、その激しい怒りとは裏腹の、平静そのものの声で言った。

 「……ビダーシャルさん、です。エルフ、じゃありません」

 それを聞いてルイズにはすぐその意図する意味が理解できたが、周りには今ひとつ伝わっていないようであった。
 ルイズは必死に考え、何とかその思いを翻訳する。

 「あの、ですね、皆さんの言い方は、ビダーシャルさんを含むエルフの人々を、オークなんかと同じように『エルフ』という枠に押し込めてしまっている、と、なのはは言っているのです」
 「……? その、すまぬ、ミス・ヴァリエール。意味がよく分からないのだが」

 ウェールズ王子についていた副官の一人が、やや申し訳なさそうに質問してくる。
 ルイズはうまく説明できない自分に憤りつつも、何とかわかりやすい言葉にしようと努力した。

 「えと、その、エルフにだってあのビダーシャルみたいに私たちと敵対した人も、ティファニアのお母さんみたいにわかり合えた人もいるのですから、
 女を見れば襲いかかってくるオークみたいなのとエルフを一緒くたにしたような物言いは、なのは的には間違っているんじゃないかと」
 「……何となくですが、理解できました」

 相手も今ひとつ納得はできていないようであったが、ぎりぎり何とか理性的な判断はできたようだった。

 「要は、相手を知性ある、たまたま敵対しているだけの人と同じ一族としてみるのか、言葉を交わす事もできない蛮族、いや、魔獣として見るのかと言うことですね」
 「あ、そんな感じだと思います」

 ウェールズがまとめた意見に乗るルイズ。
 そんなやりとりを見て、なのはの怒りも沈静化してきたようだった。

 「あ、すみません、少し熱くなってしまったみたいで」

 そう言って頭を下げたなのはに、むしろほっとした雰囲気が周りに流れる。

 「お気になさらずに。どうやら我々はあまりの長きにわたってエルフと敵対しすぎたようです」

 ヴィットーリオが取りなすように言う。

 「それより、話を本題に戻しましょう。あちらも動くようです。



 なのは達が下で少しもめているのと同じくして、甲板上でもビダーシャルがジョゼフを責めるような目で見つめていた。

 「王よ、なぜ我々をここで止める。滅ぼすべき仇敵を前にして、なぜ制止をかけようとするのだ」
 「約束だぞ。舞台は作ると言った。だが、その決行は俺の命を待てとな」
 「しかし……」
 「なに。撃つか撃たぬかは判らぬが、本気で殺しにかかってきたなら、即座にお前達は退避しろ。俺が落ちた後、あのタカマチナノハをどうするかはもはや俺の知ることではない。せいぜい殺し合うがいいさ」
 「なにを考えている、お前は」

 怒りと不安の入り交じった顔でジョゼフを見るビダーシャル。

 「私と他の船に乗る同胞の戦士の力があれば、多勢に無勢であってもあのシャイターンは討ち取れるだろう。その後我々がこの軍勢につぶされようと、それはかまわぬ。
 ……だが、それ以上に気になるのは、お前の意図だ。
 確かに我々はお前に禁忌は語らなかった。だが、おそらくお前はもう推測しているのだろう? 我々が禁忌としたことの中身を」
 「ああ」

 小さく一言つぶやきつつ、ジョゼフは頷く。

 「書庫の記録をあさり、各地の異端審問官に金をつかませて押収した禁書を調べ、さらにはシェフィールドの力や我が虚無の魔法までも駆使して残されている限りの資料を集め、分析し、検討し、再構成した。そして何とか筋道の行く結論は出せたよ。
 まあ、所詮は資料からのもの。元が間違っていればすべては妄想に過ぎないわけだがな」
 「結論だけ言ってみよ。この際だ。禁忌を語ることは許されていないが、貴様の妄言が的を射ているかどうか教えるのは禁忌ではない」

 ジョゼフは、少し気を引かれたようであったが、それを押しとどめた。

 「いや、答え合わせは後にしよう。あちらもそろそろ良さそうだからな」

 ジョゼフが前方を見れば、少しもめているようだったなのは達の注目が、再び自分に集まっているのが見て取れた。



 「さて、何故余が我々を、このハルケギニアの大地に生きるものを人形と呼ぶのか……それはこの世界の創世そのものに関わることだ」

 いきなり飛び出した大言壮語に、思わず唖然となるアルビオン側。

 「い、いきなり大きく出たわね……」
 「でも、それなりに根拠はある様子ですね」

 ルイズとなのはは、思わず顔を見合わせながらそう語る。
 ジョゼフはそんなこちらの様子を気にはせず、言葉を続けた。

 「一つ問おう。そちらにいるものの中で、始祖の時代……約六千年前、始祖が降臨して我々に魔法をもたらす前の世界について知るものはいるか」

 それは一見たわいもない質問であった。だが……意外なことに、誰一人それに答えられるものはいなかった。
 そしてジョゼフもまた、それを予見していたようであった。

 「で、あろうな。おそらく教皇聖下ですら、それは知るまいて。いや、むしろ決して教皇には教えられまい。
 その情報は、すべて禁忌として闇に葬られるものであるからな」
 「先に言った、私が教皇だからこそ知ることのできない知識ですね」

 ヴィットーリオが確認するようにジョゼフに言う。
 ジョゼフはそれに対して肯定の意を返した。

 「そうだ。この件に関する知識の取り扱いには二通りある。教皇のみに伝えられるか、教皇には決して伝えられないか。そして我らの先人は後者を選んだ。守り抜かねばならない禁忌故に、表の顔たる教皇には決して知られてはならない、と。
 それ故この件に関わる情報は、ほとんど文字通り消され、闇に葬られてきた。
 だが、組織は腐敗する。この知識が、教皇に対しての武器になると思い違いをしたものが、ごくわずかに記録を残した。余は……いや、正確には余の先祖達は、それを入手したのだ。
 最も断片的であり、また、あまりにも現在の常識・知識とはかけ離れているが故に、ごく一部を除いてはまともに理解できるものではなかった。余ですら無能と誹られるほどにこちらに時間を費やしても、形にするまでに十年以上の時をかけたわ。
 まあ、幸い虚無に目覚めた後は、使い魔のミョニズトニルンととある虚無の魔法のおかげで、一気にはかどったがな。
 そうそう、念のため、もしそちらの担い手のうち誰かが生き延びられたときのために、その魔法を教えておこう。魔法の名は『記録(リコード)』。古き物品に宿った記憶・記録を読み取る魔法だ。
 覚えられれば、余が語ったことが妄言かどうかの検証はたやすいであろう」
 「そんな魔法もあったのですか」

 ヴィットーリオがジョゼフのことを見つめながら言う。確かに、そのような魔法があったのならば、古き文献や物品を介して、過去の歴史を紐解く事の難易度は格段に下がるであろう。
 この世界には、固定化の魔法のおかげで古いものもかなり残っているし、何より魔法で読み取られた知識には虚偽がない。文献資料は記載されたことが虚偽であることがままあるため、単純にそれを信用するとひどい目に遭うこともあるのだ。

 「まあそれはさておき、虚無の魔法まで駆使して余が掴んだ過去の真実。それは、この世界が、エルフ達の間で『大いなる者』と称される何かによって、とある目的の下に作られたというものであった。
 まあ、我々の目から見ても、その『大いなる者』は、始祖の上に属する『神』と称しても間違いではあるまい。
 ……もっとも、エルフが信仰するものであることからしても、我々からすればどちらかというと『邪神』という方がふさわしい神でもあるがな……ちょっと待てビダーシャル。今のは言葉の綾だ。お前達を貶めたわけではない」

 少し余計なことまで言い過ぎたのか、甲板の上でビダーシャルの手刀がジョゼフの首に突きつけられていた。

 「意図が判らないわけではないが、大いなる者を貶めるような発言は控えてもらいたい」
 「判ってはいるがお互いの立場ゆえやむを得んだろ! 悪意があるわけではないから何とか流せ!」
 「……確かにやむを得んな」

 手刀を引くビダーシャル。それを眺めていたアルビオン側は、しばし言葉も出なかった。

 「……少し話がそれたな。『大いなる者』の正邪については置くとして、彼の者が文字通りこのハルケギニアの大地をはじめとする、すべてを創造したことは間違いない。その点では我々にとって仮に邪神であったとしても、我々は彼の存在に感謝せねばならない。
 だが、問題なのは、彼の者が我々を生み出した理由なのだ」

 そこで『判るか』とでも言いたげに言葉を切るジョゼフ。
 その挑戦を受けたかのように、ルイズが、ウェールズが、ヴィットーリオが、そしてその他の人々も皆その答えを考え始めた。

 「……あなたの様子からすると、彼の存在は我々を何かに利用するために生み出したと言いたいのですね。だから我々は『人形』だと」

 そしてはじめに答えたのはやはり、この手の思索になれている教皇聖下であった。
 それに対して狂王はにやりという言葉の似合う笑みを浮かべる。

 「惜しいな。間違いではないが正解と言うには少し違う。何かに利用するために生み出される者など、別に神々の世界でなくともいくらでも存在している。
 我々のような、人の上に立つ者にとっては、ある意味臣民ですらそういう存在といえよう。その程度のことなら、余は狂ったりはせん。
 我が憤る理由、それは文字通り、『人形』という言葉の中にあるのだ」

 先ほどの笑みを憤怒に一転させるジョゼフ。その様子に、一同は思わず恐れおののいてしまった。
 なのはですら。

 「道具として生み出されるのはかまわない。それが道具でありながら意思ある人であるというのも、それが必要なら甘受しよう。だが……求められたのが」

 そこで一旦言葉を切り、大きく息を吸い込むジョゼフ。
 その様子に、この後にこそ狂王の怒りの源が来ると、身構える聞き手達。
 そして狂王を狂わせた、呪いの源泉が彼の口から放たれた。







 「生き、暮らし、人としての営みを完全にこなしながらも、その生きる者の意思を全く無視した、ただ特定の役割を果たすためにだけ存在する人形であれと定め」

 そこで大きくのけぞり、天を見るジョゼフ。

 「しかもそれが永遠にその様を保てと、恋する相手も、生まれてくる子供も、その未来の生き方さえ、すべてを『シナリオ』という名の呪縛の元に縛り付け、それから逸脱することを許さず、いや」

 一転して今度は地を睥睨する。

 「そもそも自分たちが、そんな『生まれてから死ぬまで、ただ特定の筋書きをこなすことだけに存在する』、ということさえ知らぬまま、毎日をただ同じように繰り返すことに生きることを定められ、しかもそれに対して疑問を持つことすら許されない」

 そして、その視線はなのはの元を向き、

 「そう、生まれる前、存在を定められた時より、息をする舞台装置として、人に見える駒として、数千年間にわたってひたすら同じ毎日を繰り返すことを定められて生まれるモノは、『人』といえるのかっ!
 答えられるか、タカマチナノハ。この地において異邦に生まれ、ただ一人、その一切の呪縛に縛られぬ、『真に自由に生きる者』よ!
 ……繰り返そう。始祖の存在するときより前、我々は数千年の長きにわたり、常に同じ毎日を過ごしていたのだ。それを全く異常だとも思わずにな。
 彼らにとっては、昨日と同じ今日が来て、明日もまた同じであることが当たり前だったのだ」







 さすがになのはといえども、すぐに答えを返せるわけがなかった。







 「それって、毎日の習慣とか、事件がないから同じになるとか、そういう『おんなじ』じゃないんですか?」

 しばしの沈黙の後、なのはから飛んだのはそんな疑問。
 ジョゼフは、それを予想していたかのように、あっさりとそれに答えた。

 「違う。一つ聞くが、おまえは『ロールプレイングゲーム』という物を知っているか?」
 「え? 一応、テレビゲームの物くらいなら……」

 なのは達にとっては常識レベルの知識である。なのは自身はコンピューターなどの電気・電子機器に関しては、カメラなどのギミック的な物の方に興味を持っていたので、仮想的なゲーム系の知識はほぼないと言ってよかった。
 特に齢九歳にして魔法を知ってからは、その手のゲームなどに向く中二的欲求が、すべて魔法というリアルファンタジーに取って代わられてしまったため、ゲームのような仮想現実的存在に対する興味をほぼ完全に失ってしまっていた。
 それでもゲームなど全くやらないお母さん達でも、四十代くらいまでなら某DQのような国民的タイトルの存在と、その概要くらいは知っている。
 なのはの「ロールプレイングゲーム」に対する知識はせいぜいその程度の物だった。
 むしろロールプレイと言われると、カウンセリングや教導などで使われる方の『役割を演じる』という本来の意味が先に立ってしまう。
 実際なのはの脳裏に先に浮かんだのはそちらの意味であったのだが、『ゲーム』と言うからには、先の方の意味なのだろうとなのはは考えたのだ。

 「それを知っているのなら話は早い。余にはよく理解できない物であったが、その手の遊戯においては、主役が訪ねる町の人間は原則特定の場所にいて、主役との受け答えをするためにのみ存在しているであろう?
 タカマチナノハ、我々はそなたから見たら、その『町の人間』でしかないのだ」

 なのはは昔見たテレビゲームの画面を思い出す。画面の中に作られた町の人間。確かに彼らは、ゲームの主人公キャラが接触しなければずっと特定の行動を繰り返す。
 店員などは主人公が話しかけるまでいつもずっと同じ場所に立っている。
 そんなゲームでは当たり前の光景が現実に適用されたところを想像し、その様子とジョゼフの言葉が脳内で結びついたとき、なのはは思わず叫んでしまった。



 「ちょ、ちょっとそれって、この地が生み出されたのって、ゲームを体感するため? でもゲームと現実は違うから、ゲームのために現実をゲームみたいにねじ曲げた?」



 あわあわと彼女にしては珍しく慌てふためき、まとまらない言葉を叫ぶようにがなる。
 やがてそれの意味することが整理できたのか、不意になのはは下を向き、黙り込む。
 そしてその顔が上げられたとき、浮かぶのは紛れもなき怒り。

 「それって、許されることじゃないと思う。人としてそんなこと、しちゃいけないと思う」

 なのはの言葉を聞き、大いに同感だというように首を縦に振るジョゼフ。
 だが。

 「まあそうであろうな。当たり前の良識を持っていればそう思うのは当然だ。だがそれがほしいと思ったとき、大いなる者は作ったのだよ。
 人と同じ形と体を持ち、人にしか見えない、思えないのに人ではないもの。
 そう、彼らはそんな下位の創造物として、一つの世界を丸ごと作り上げたのだ。
 それがこの地、我々の住む世界、我々が『ハルケギニア』と称する大地だ」

 なのはの怒りに対し、まるでその罪を告発するかのように、ジョゼフは告げた。
 そしてそのまま顔を横に向け、ビダーシャルに対して言葉を発する。

 「さて、間違っていたかな? エルフ――いや、世界の管理者よ」
 「それをお前以外に告げることは禁忌に当たる」

 ビダーシャルは、一切表情を変えることなく、ただ、そう答えた。
 それが答えだと言わんばかりに。



 ――はい。我々は『大いなる者』から、世界の管理を司るよう定められた存在です――

 なのはは、かつてビダーシャルと戦ったとき、ルイズの言葉に対してそう答えた彼の姿を思い出していた。
 そう、確かには彼は言った。

 「ビダーシャルさん」

 なのはは問う。

 「以前、あなたと戦ったとき、あなたは確かに言ったわ。自分たちが世界を管理する存在だって。でもそれって、それを言うのって禁忌なの? ならなんであのときそれを教えてくれたの? ご主人様の質問に答えてくれたの?」

 ビダーシャルは答える。

 「それはあなたがいたからだ」

 そのままルイズとなのはを遠くからでありながら間違いなく見つめてくる。

 「この地に生きる者に対しては、それは禁忌である。だが、例外が二つある。『大いなる者』の存在を知るものと、外から来たる者、およびその人物と強い関わりのある者に対しては、この禁忌は適用されない。
 そして今、外から来たる者であるそなたの問いにより、この場にいるすべての人間に対して、今禁忌が解かれることとなった」
 「あ、それがつまり、なのはに強く関わるって言う意味なのね」

 ルイズは今のやりとりから、禁忌の制限を見て取った。
 そしてそれと同時に、なぜかジョゼフが突然大声を上げて笑い出した。

 「こ、これは予想以上だ。よくやった、タカマチナノハ」
 「は?」

 笑いながらの賞賛に、思わず呆けるなのは。
 だがそんな彼女の様子など気にもせずに、ジョゼフは言葉を続ける。

 「今、俺たちの言葉は拡声の魔法によって、末端の兵士達すべてにまで伝わるようにしている。そんな場で、まさかエルフの禁忌解放が伝えられるとはな。これだけでも俺がここまでの乱を起こした価値があるというものだ」
 「えっ? それが目的だったんですか?」

 思わず聞くなのはに、今度は首を横に振るジョゼフ。

 「いや、それは本来の目的ではない。だが、本来のそれに匹敵する成果だ。これで俺の目的は、間違いなく果たされそうだ」
 「……何なのですか、それは」

 今ひとつ理解不能だったジョゼフの目的らしきモノが見えたので、そこに切り込むなのは。

 「俺の目的か」

 ジョゼフの言葉は、いつの間にか崩れていた。『余』という自称が『俺』になるくらいに。
 そしてその目的は、至極あっさりと彼の口からこぼれ出た。







 「なに、たいしたことじゃない。俺はただ、歴史を進めたいだけだ」







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