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第十三話「ミラーナイト参上!」


ウルトラマンゼロの使い魔
第十三話「ミラーナイト参上!」
分身宇宙人ガッツ星人
極悪宇宙人テンペラー星人
暗殺宇宙人ナックル星人 登場



 他世界宇宙、マルチバースというものをご存じだろうか。我々が暮らす星、地球が宇宙に存在するのは常識だが、
その宇宙も一つだけではない。宇宙に地球以外の星が数多にあるように、宇宙も無数に存在する。
この多数の宇宙を内包する超空間がマルチバースと呼ばれている。
 本来なら滅多なことがない限り干渉し合うことのない別宇宙だが、ある時、未だ謎の多い怪獣墓場から
違う宇宙へと迷い込んだ存在が現れた。その存在――邪悪なM78星雲人、ベリアルは別宇宙、アナザースペースを
たちまち蹂躙し、巨大帝国を築き上げて恐怖で支配した。ベリアルの力はアナザースペースに生きる者の力を
超越していたため、外来種が在来種を駆逐してしまうように、その侵略は歯止めが掛からなかったのだ。
 アナザースペース最盛の惑星、エスメラルダを乗っ取り、皇帝を自称するようになったベリアルは、
自分が宇宙間を漂流する羽目になった最大の原因、故郷M78星雲に復讐をするため、エスメラルダに存在する
莫大なエネルギーを秘めたエメラル鉱石を悪用して宇宙の壁を越える侵略兵器を造り出し、元いた宇宙へと送った。
そしてその侵略兵器の襲来により、別宇宙での事態を察したM78星雲の光の国は、一人の若き勇敢な戦士を
アナザースペースへ旅立たせた。これが、ウルトラマンゼロとアナザースペースに生きる者たちとの出逢いである。
 ゼロは恐ろしいほどに力を強めてしまったベリアルとその軍団に何度も苦戦しながらも、
結果的にはその悪しき野望を粉砕した。しかしベリアル軍団が全滅した訳ではなく、
アナザースペースには悪の種が残っていた。そのためゼロはアナザースペースの平和を護るため、
故郷の宇宙のものとは違う新たな宇宙警備隊を結成した。
 その新宇宙警備隊、ウルティメイトフォースゼロを構成する5人のメンバーの一人が、
元よりエスメラルダを守護していた巨人の戦士。鏡面世界に存在する鏡の星の二次元人と
エスメラルダ人のハーフであり、たった今ゼロを救うためにアルビオンに降り立った鏡の騎士、
ミラーナイトである!

 唐突にニューカッスル城前に出現してナックル星人、ガッツ星人、テンペラー星人の三大宇宙人を退けた
ミラーナイトの姿に、ルイズたちも侵略者たちも釘づけになっていた。
「な、何だあの巨人は!? 怪人どもを攻撃したが……僕たちの味方なのか!?」
「ルイズが嵌めてる指輪から出てきたように見えたんだけど……それにしても、ほれぼれするほど美しい姿ね……」
 ミラーナイトの素性を知る由もないギーシュが騒ぎ、キュルケはその麗しき容姿に見とれていた。
そんな中、宇宙人たちの会話の内容が聞こえていたルイズは、呆然としながらつぶやく。
「あれが、あの人が、ミラーナイト……ゼロの言ってた、仲間……!」
 一方、ナックル星人たち宇宙人連合は、ミラーナイトの存在におののいていた。
『ミラーナイト……ウルティメイトフォースゼロだとぉ!?』
『何ということだ。ウルトラマンゼロにこんな仲間がいたとは……! しかも、このタイミングで現れるとは……!』
 宇宙人連合がやってきたのは、ウルトラの星が存在するM78ワールド。彼らがアナザースペースの住人である
ミラーナイトやウルティメイトフォースゼロのことを知らないのは、当然であった。
 そして当のミラーナイトは、息も絶え絶えの状態で倒れ伏しているゼロに手を貸して、助け起こした。
『ミラーナイト……! 助かったぜ……!』
『随分探しましたよ。遅くなって申し訳ありません。今、エネルギーを分け与えます』
 ミラーナイトが右手をゼロのカラータイマーにかざすと、手の平からエネルギーが放出され、
カラータイマーに吸い込まれた。そのお陰で今にも消えそうだったカラータイマーが青色に戻り、
ダメージはまだ残りながらもゼロに活力が戻った。
『いよっしゃぁッ! こうなったからには、さっきまでのようには行かないぜ、汚ねぇ侵略者ども!』
『もちろん、私もともに戦います。さあ、どこからでも掛かってくるといい、卑怯者たちめ!』
 そうして、朝陽が完全に昇り切った時には、ゼロとミラーナイトの二大戦士が並び立って堂々と侵略者と対峙した。
 ゼロに加勢したミラーナイトに敵愾心を向けたのは、テンペラー星人だ。
『フハハハ! 面白い! 元々死にかけの奴をいたぶるのは趣味ではないのだ! ウルトラマンゼロの仲間とやら、
このテンペラー星人が仕留めてくれるわぁッ!』
 テンペラー星人が足音を踏み鳴らして突進してくると、ミラーナイトはゼロから離れて
一対一の勝負へ持ち込むことにした。
『奴はテンペラーに任せるとしよう。我々は予定通りウルトラマンゼロを討つ! エネルギーが回復したとはいえ、
さっきまで死にかけだったのだ。このまま押し切るぞ!』
『了解した! このガッツ星人の真の力を見せつけてくれよう!』
『へッ! 来やがれ!』
 ナックル星人とガッツ星人は依然とゼロを狙う。ゼロは下唇をぬぐうと、二人の敵を同時に迎え撃つことになった。

 ゼロとミラーナイトが宇宙人とぶつかり合う間に、キュルケが改めてルイズに『レビテーション』を掛けて引き寄せた。
「ほらルイズ、モタモタしてないで、下がるわよ。ここにいたんじゃ、流れ弾で吹っ飛ばされるわよ」
「で、でも、ゼロが戦ってるのに!」
 自分の言うことに従おうとしないルイズに、キュルケは呆れたように息を吐いた。
「何言ってるのよ。あんたや私たちがあの戦いに割り込んで、何が出来るっていうの? 文字通り、
足手纏いになるのがオチだわ」
 キュルケの言う通りだとルイズは分かったので、悔しく思いながらも、ぐっと言葉を呑み込んだ。
「ほら、分かったら避難するわよ。歩くくらいのことは、自分でしてよね」
「……」
 ルイズは無言で、キュルケに従って後退する。彼女の様子が気に掛かったキュルケだが、
ボヤボヤしていたら本当に危険なので、さっさと退避していった。
(ゼロ……どうか、頑張って……)
 そしてルイズは、ゼロが無事に逆転勝利することを祈ることしか出来ずに、キュルケの後についていった。

『せいッ! はッ!』
 ミラーナイトはテンペラー星人に肉薄し、その身体にチョップやキックを入れる。しかし、
対するテンペラー星人は丸でびくともしない。
『何だぁ!? それが攻撃のつもりか! 片腹痛いわぁッ!』
『ぐッ!?』
 テンペラー星人がミラーナイトの顎を殴り飛ばす。弓なりに宙を舞うミラーナイトだが、
空中で身体を反らすと両手の甲よりミラーナイフを放つ。
『ふんッ! こんなもの効かぬわッ!』
 だが連射した光刃も、テンペラー星人の肉体に軽々と受け止められる。
『シルバークロス!』
 着地したミラーナイトはクロスした両腕を振るい、十字の巨大な光刃を発射した。彼の十八番である
強力な必殺技、シルバークロスだ。
『ぬるいわぁぁッ!』
 だがこれも、テンペラー星人の肉体を突き破ることが出来ず、粉々に砕け散ってしまった。
『むッ……!』
『ぐはははははははは! 脆弱! これが貴様の全力か!? とんだ期待外れだなぁ!』
 テンペラー星人の身体に傷も負わすことが出来ないミラーナイトを、テンペラー星人が見下して嘲笑する。
 ミラーナイトは鏡に関わる、他の者には真似することの出来ないような特殊な能力を持っている。
しかしそのためか、本人の基礎的な攻撃力は優れているとは言えないのだ。その上テンペラー星人は
宇宙きっての武闘派種族。地球で最初に記録された個体は、スーパーパワーを誇るウルトラマンタロウの
必殺技が直撃しても何ともなかったほどの防御力を見せつけたのだ。
『わしに手傷を負わせられないのでは、貴様には到底勝ち目などないッ! とっとと引っ込んでもらおうかぁ!!』
『くッ!』
 吠えたテンペラー星人が両手よりビームウィップを伸ばし、それの乱打を見舞ってくる。
ミラーナイトは鏡のバリアー、ディフェンスミラーでその攻撃を防ぐしかなかった。

 また、ミラーナイトによってエネルギーが回復したウルトラマンゼロも、ガッツ星人とナックル星人に
二人掛かりで攻撃されてまた窮地に陥っていた。
『食らえッ!』
『ぐああッ! くッ!』
 ガッツ星人のアイビームを食らって、苦しむゼロ。素早くゼロスラッガーを飛ばして反撃するが、
ガッツ星人は分身してかわした上に背後へ回り込む。
『くそ……! ちょこまか動き回る上に増えやがって……! どれが本物だ……?』
 ゼロはガッツ星人の分身と高速移動を駆使した幻惑戦法に惑わされていた。そして逡巡していると、
ナックル星人が飛び掛かってくる。
『隙ありぃッ!』
『ぐお!?』
 背後からヤクザキックを食らって倒れかける。すぐに後ろ蹴りを打つが、その時にはナックル星人は下がっており、
代わりに正面からガッツ星人の分身からの破壊光線が飛んでくる。
『ぐああああ!』
 手が出せずに追い詰められるゼロを、ナックル星人とガッツ星人が嗤う。
『クハハハハハハ! 先ほどは焦らされたが、何のことはない。貴様の戦闘データは握っているのだ! 
エネルギーが回復した程度では、こちらの優位は崩れん!』
『貴様の父親、ウルトラセブンが結局は破れなかった、我がガッツ星人の分身戦法! これがある以上、
貴様に勝機など微塵もないのだぁ!』
 両者とも既に勝った気になって豪語する。だが、それに対してゼロは、
『ふッ……!』
 冷笑を見せた。
『ん!? 何がおかしい!?』
『こいつ、とうとうおかしくなったか!?』
 想定外の反応に硬直したガッツ星人とナックル星人に、ゼロは下唇をぬぐいながら言ってのける。
『戦闘データを握った……何を勘違いしてやがる。俺がいつ全ての力をお前らに見せたと言ったんだ?』
『何!? まさか……!』
『俺の底は、ブラックホールよりも深いんだぜ! はぁぁぁッ!』
 ゼロが掛け声を上げると、ウルティメイトブレスレットと全身が青く光り輝き、たちまち青い体色へと変身した!
『ルナミラクルゼロ!』
 変身を完了したゼロが、自身のことをそう宣言した。

「あの姿は!」
 離れた場所から戦いの行く末を見守っていたルイズは、ゼロの変身を目の当たりにして、
アルビオンに到着するまでの空路で目にしたストロングコロナゼロを思い出した。
しかし、今のゼロの姿はあの時のものとも違う。
「まだ能力を隠し持ってたのね……」
 ゼロの変身に勝機を見出しながらも、ルイズは同時に、いくつも力を持っているゼロのことを激しく羨んだ。
(わたしには、見てるだけしか出来ないのに……)
 それでも戦いから目を離さずに、ゼロたちの命運を見届けることに決めた。

『食らえぇぇぇぇぇぇぇ!』
 ミラーナイトとの戦いを続けているテンペラー星人は、最大の攻撃であるウルトラ兄弟必殺光線を発射した。
破壊光線にもなる強力な光線技だが、ミラーナイトは軽やかに跳躍し、テンペラー星人の頭上を跳び越えて
背後に回った。
『ちぃッ! すばしっこさだけは一人前だな!』
『はぁぁッ!』
 テンペラー星人が毒づいて振り返ったのと同時に、ミラーナイトが十字型の鏡を大量に作り出し、
それでテンペラー星人の周囲を取り囲んだ。
『何ぃ!? 鏡だとぉ!?』
『シルバー……クロスッ!』
 そしてミラーナイトは、開いている上部からシルバークロスを投げ込み、テンペラー星人にぶつけさせた。
『ぬぅんッ!? 馬鹿が! 効かないというのが分からんのか!』
 その一撃はテンペラー星人の身体に弾かれ、あらぬ方向へ飛んでいく。……と思いきや、
周りの鏡に反射されてテンペラー星人へと戻ってきた。
『何!?』
 戻ってきたシルバークロスはまた弾かれるが、360度を覆っている鏡に反射されて、再びテンペラー星人へ戻ってくる。
それを何度も繰り返し、様々な方向からテンペラー星人に激突する。
『ふんッ! 下らん小細工をしおって!』
 テンペラー星人は縦横無尽に飛び回るシルバークロスを捉えられないが、所詮ダメージは受けないと考えて、
身をかがめて受け続ける。ミラーナイトはその様子を上から覗き込んで、シルバークロスを目で追う。
『ククク……そろそろ反撃と行こうか……!』
 しばらく受け続けた後に、シルバークロスの速度が弱まってきたと判断して背を伸ばすテンペラー星人。
そしてウルトラ兄弟必殺光線の発射準備に入ったその時、
『ぐはぁッ!?』
 背後から飛んできたシルバークロスが、肩に突き刺さって前面へと貫通した。
『馬鹿な……何故ぇ……!?』
 ミラーナイトの攻撃は自分には全く通用しなかったはず。それなのにどうして……。
その理由を薄れゆく意識の中で考えたテンペラー星人は、一つだけ可能性に行き着いた。
『まさか、同じ場所に……正確にぃ……!』
 シルバークロスは縦横無尽に飛び回っていると見せかけて、その実テンペラー星人の肉体の一箇所にのみ
集中して当たり続けていたのだ。したたり続ける水滴がいつかは石に穴を開けるように、わずかな傷しか与えられない
小さな攻撃も連続すればどんな鎧も貫く。
 これは、かつてミラーナイトの出身地である宇宙で戦った、テンペラー星人と同じように
鋼の強度の肉体であらゆる攻撃をはね返した強敵アイアロンを破ったのと同じ戦法である。
ミラーナイトは鏡の能力だけでなく、敵の虚を突いてそのまま打ち崩すトリッキーな戦い方と
それをなし遂げる抜きん出た技巧と頭脳も持ち味としているのだ。
『脆弱なのはお前の方だ!』
 ミラーナイトが言い渡すと、バッタリと倒れたテンペラー星人は跡形もなく爆散した。

 ガッツ星人とナックル星人は、ハルケギニアでは今まで見せたことのなかった変身を遂に見せたゼロに、
驚愕を禁じえなかった。
『ル、ルナミラクルゼロだとぉ!?』
『おのれ……! まだ能力を秘めていたのか……!』
 普段とは異なり、どこか冷静で神秘的な雰囲気を醸し出しつつたたずむゼロを前に動揺していた
ガッツ星人だが、すぐに気を取り直す。
『ふんッ! こけおどしだ! たとえどんな姿になろうと、我が分身戦法は破れはしないわぁッ!』
 自らに言い聞かせるように叫ぶと、ゼロを取り囲む全ての分身から光線を発射する。
 しかしゼロは、ガッツ星人並みの滑るような高速移動を行い、光線を全て回避した。
『な、何だとぉ!?』
『速いッ! 速すぎる!』
 ガッツ星人もナックル星人もゼロの動きを目で追うことが出来ず、先ほどまでとは真逆に翻弄される。
『……はッ!?』
 ナックル星人が気づいた時には、自身のすぐ横にゼロがいて手の平を差し向けていた。
『レボリウムスマッシュ!』
『うがぁぁぁー!?』
 手の平から発せられた衝撃波によって、ナックル星人が弧を描いて吹き飛ばされた。
『ナックル! おのれぇッ!』
 ガッツ星人は更に分身を作り出し、ゼロに対抗しようとする。そうするとゼロは、ガッツ星人の動きを
集中して観察し、分身の一つに腕を向ける。
「セアッ!」
 その腕からパルス状の光線が発射され、ガッツ星人に当たるとその身体を麻痺させる。
同時に分身が全て消え去った。
『がぁッ!? な、何だとぅ!?』
 ガッツ星人は絶対の自信を持つ分身能力が破られたことに激しく狼狽する。しかし、分身が破られたのは
歴史上これが初めてではない。ウルトラマンメビウスもメビュームピンガーという光線技でガッツ星人の分身を攻略している。
今の攻撃はそれと同等の技なのだ。
 そしてゼロはふた振りのゼロスラッガーを飛ばすと、それがゼロの前で円を描くように動きつつ六枚に増えた!
『ミラクルゼロスラッガー!』
 増殖したゼロスラッガーは、身動きの取れないでいるガッツ星人を瞬く間に切り裂く!
『ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
 ガッツ星人は断末魔を上げ、完全に爆死した。
『ガッツ!! ち、ちくしょうがぁ……!』
 ガッツ星人が倒されたことでうろたえるナックル星人。ちょうどその時にテンペラー星人も倒され、
ミラーナイトがゼロの隣に着地する。
『なッ、くッ……! お、覚えてろッ! このままじゃすまさんぞぉ!』
 最早勝ち目はなくなったことを悟ったナックル星人は、背を向けるとなりふり構わずに
アルビオンの奥地へ向けて逃走していった。
『待て! ……ぐッ!』
 追いかけようとしたゼロだが、一歩踏み出すとカラータイマーが再び鳴り出して倒れかける。
そのためミラーナイトが咄嗟に支えた。
『ゼロ、今の状態での深追いは危険です。悔しいですが、今回のところはあなたが助かっただけよしとしましょう。
今のあなたの命は、あなただけのものではないようですし』
『そうだな……その通りだ。すまねぇ』
 ミラーナイトは、ゼロが才人と一体化していることを早くも見抜いていた。冷静さを取り戻したゼロは、
ミラーナイトの忠告に感謝する。
『私がいない間のことは、後ほど伺います。だから今は、あの可愛らしいお嬢さん方の下へと戻ってはどうでしょうか?』
『ああ、そうするぜ。……ありがとな、ミラーナイト』
『あなたのためでしたら、これくらい』
 最後にそう言葉を交わした二人は、空に飛び上がってニューカッスルを後にした。

 ゼロとミラーナイトが立ち去った後で、キュルケやギーシュがほっと息を吐いた。
「はぁ~……一時はもうダメかと思ったけど、ゼロが助かってほんと良かったわぁ。あの急に出てきた
緑色の巨人って、やっぱりゼロの仲間なのかしら?」
「そうに違いないだろうね。ただ、敵が一人だけ逃げていったのが気に掛かるが……」
「いいじゃない、あんな図体だけデカい臆病者のことなんか。寄ってたかってゼロをいたぶってたくせに、
一人になった途端にすごい勢いで逃げていったわよ」
 キュルケがナックル星人の無様な姿を思い出して笑いつつ、ルイズとの三人で元いた礼拝堂の前まで戻っていく。
するとちょうどその時、才人がフラフラとおぼつかない足取りで姿を現した。
「! サイト!」
 ルイズたちは慌てて駆け寄り、ギーシュが才人を支える。
「ダーリン! もう、どこ行ってたの! どこにも姿がなくて心配だったのよ!」
「君、ひどく衰弱してるじゃないか! もしやさっきのウチュウ人にやられたのかい!?」
「ま、まぁ、そんなとこかな……けど、ゼロに助けられたから、心配しなくても……」
「あぁもう、しゃべらなくていいよ。今は安静にしていたまえ」
 途切れ途切れに語る才人をギーシュが制止した時、遠くから軍隊の鬨の声が聞こえてきた。
「! いけない、貴族派の兵隊だわ! 宇宙人がいなくなったから、改めてニューカッスルを攻めるつもりね! 
早く脱出しないと!」
 ルイズの台詞に、キュルケが聞き返す。
「何が何だかよく分からないんだけど……ワルド子爵はどこ行っちゃったの?」
「ワルドは……詳しいことは後で説明するわ。任務は一応達成したから、早く逃げましょう。
サイトも休ませないと」
「分かったわ。早く戻らないと、待たせてるタバサに悪いしね」
 キュルケとギーシュ、才人がヴェルダンデの開けた穴に潜ろうとするが、ルイズだけは
彼らに少しの間待ってもらい、斃れたウェールズの下へ向かう。
 この時には、ウェールズは完全に事切れていた。
「皇太子……お守り出来なくて、申し訳ございません」
 ルイズはひと言謝り黙祷を捧げてから、せめてアンリエッタに形見を持っていこうと、
指に嵌まっている風のルビーを外して懐にしまった。
「ルイズ、早く!」
 キュルケの急かす声で、ルイズは最後に一礼した後、キュルケたちに続いて礼拝堂から脱出した。

 ヴェルダンデの掘った穴はアルビオン大陸の真下に通じており、ルイズたちは帰りを待っていた
シルフィードに受け止めると、すぐに魔法学院に向けて羽ばたいた。
「サイト……」
 ルイズはシルフィードの尻尾の付け根の辺りで、体力の限界が来て気を失った才人の頭を膝に乗せている。
他の三人は、シルフィードの背びれを背もたれにして前の方に腰掛けていた。
「娘っ子、妙に相棒に優しいじゃねえか。膝枕までしてよ」
「うるさいわね……わたしだって、労をねぎらうくらいのことはするわよ」
 才人に代わってルイズが背負っているデルフリンガーがからかうと、ルイズは小さく言い返した。
普段なら少しからかわれただけで大袈裟なほどに反応するのだが、今は彼女の心の中に様々な思いが駆け巡っていて、
そんな気分にならなかった。
 たった半日にも満たない時間の中で、たくさんのことがあった。まさかのワルドの裏切り。
かつて心から憧れた人の背信は、非常にショックだった。そして才人のお陰で一時は無事に
助けられたと思ったウェールズの死。アンリエッタに何と言えばいいのか……。極めつけは、
無敵の存在と信じていたウルトラマンゼロの窮地だ。あの時は、心が絶望で塗り尽くされかけた。
 何よりルイズにとってショックだったのは、自分が何の力にもなれなかったことだった。
ゼロは結局、ミラーナイトという彼の仲間が救った。自分は、今回も見ていただけ。
才人も必死になってワルドと戦ったのに、自分は護られてばかりだ。
(サイト……)
 ルイズは膝の上の才人の顔を、その中のゼロを見つめる。その顔を見ていると、妙な胸の高鳴りを覚えるのだが、
今はそれ以上に無力感が湧き上がってくる。悔しい思いは「ゼロのルイズ」と呼ばれる度に味わってきたが、
今この瞬間に感じる辛さはそれとは比べものにならないほど大きかった。
(わたしに出来ることは、何一つないっていうの? 本当に『ゼロ』のルイズでしかないの? 
……嫌。わたしにも何か出来ることが欲しい。……サイトとゼロのために……力が、欲しい……)
 ルイズは人生で一番、力の渇望を覚えていた。すると、彼女の指に嵌まる『水のルビー』が、
キラリと、ミラーナイトが出現した際の光とはまた違う輝き方をした。


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