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第十二話「ウルトラマンゼロ朝焼けに死す」


ウルトラマンゼロの使い魔
第十二話「ウルトラマンゼロ朝焼けに死す」
凶悪宇宙人ザラブ星人
分身宇宙人ガッツ星人
極悪宇宙人テンペラー星人
暗殺宇宙人ナックル星人 登場



「ザ、ザラブセイ人!?」
「こいつが、宇宙人!」
 ジェームズ一世に化けていたザラブ星人が正体を現すと、ウェールズとルイズは再度驚愕した。
二人とも、名前だけは耳に挟んでいたが本物の宇宙人を初めて目にして、言葉を失う。
 しかしウェールズが一番に立ち直り、ザラブ星人に詰問する。
「貴様! 本物の父上はどうしたというのだ!」
 するとザラブ星人は、丸で何でもないことのように答えた。
『万が一、本物と出くわしたら面倒なことになるのでな。昨晩の内に始末して入れ替わったわ。
何、構わんだろう? どうせ今日の内に死ぬつもりだったのだから』
 その台詞に、ルイズは言葉をなくした。
 それ以上に、ウェールズは怒りで震え、ザラブ星人に杖を向けた。
「許さん貴様ぁぁぁッ! 我が魔法で塵に帰してッ……!」
 しかし言い終わらない内に、ワルドの『エア・ニードル』で胸を貫かれた。怒りで気がザラブ星人に
それた隙に、持ち直したのだった。
 ウェールズの口から、血の塊が零れ、斃れた。
「殿下ぁー!!」
 ルイズが絶叫する中、ワルドは残った右腕で杖を振り、宙に浮いた。
「何だか分からぬが、巻き添えを受けない内に退散させてもらう。目的の一つは確実に果たせただけでよしとしよう。
どのみちこの状況では、どちらとももう助かるまい。使い魔ともども灰になるがいい!」
 捨て台詞を残したワルドが、壁に開いた穴から逃げていった。その後で、ザラブ星人がルイズに目を向ける。
『ついでだ。お前も始末するとしようか』
「ど、ど、どうして宇宙人がここに……何でサイトを……」
 ルイズが腰を抜かしておびえながら問いかけると、ザラブ星人はルイズを見下しながら答えた。
『それは当然、あの小僧がウルトラマンゼロだからだ! 奴の存在は我々の侵略計画の大きな障害となる。
だがまともに戦ってはこちらの勝ち目が薄いほど、ウルトラマンゼロは強い。だから変身する前の状態の時に
致命傷を与えるために、貴様らがこの大陸に来てからずっと機会を窺っていたのだ! そしてたった今、
この国の人間の姿で油断を誘い、近づいて不意打ちを仕掛けた。ククク、手間を掛けた甲斐があったというものだ』
「そのためだけに陛下を……許さない! 卑怯者!」
 ルイズがどうにか気力を振り絞って杖を向け、爆発を起こすが、ザラブ星人に軽くかわされてしまった。
『下等生物に何と言われようと、何も感じんなぁ! さて、お前のような小娘と遊んでる暇もないのだ。
とっとと、王とそこの王子と同じようになってもらおうか』
 ザラブ星人が微塵の情けもなく、ルイズに向かっていく。
「やめろバケモンが! 娘っ子にまで手を出すんじゃねえ――ぶッ!」
 途中、才人の手から離れて床に横たわったデルフリンガーが怒鳴ったが、ザラブ星人に蹴飛ばされた。
 そしてザラブ星人は、ルイズに腕を向ける。ルイズは恐怖が限界に達して、ギュッと目をつぶった。
 だがその瞬間に、ザラブ星人の肩にウルトラゼロアイの光線が命中した。それによりルイズへの攻撃は阻止される。
『ぬうッ!? まだ動けたのか……人間のくせにしぶとい奴だ』
 ザラブ星人が振り返ると、ウルトラゼロアイを手にした才人が、今にも死にそうな顔になりながらも立ち上がっていた。
「許さねえぞ、ザラブ星人……テメェのせいで、皇太子まで……デュワッ!」
 怒り心頭した才人がウルトラゼロアイを装着し、等身大のウルトラマンゼロに変身した。
『俺が目的なら、相手してやるよ! このウルトラマンゼロがなぁッ!』
 ゼロは速攻でエメリウムスラッシュを撃つが、ザラブ星人によけられる。ゼロはすぐに追撃しようとするが、
『ぐッ!?』
 不意に胸を抑えてふらついた。
「ゼロ!?」
『フハハハハハ! 変身する前の状態のダメージは、そのまま貴様に引き継がれる。私の光線は効いただろう!』
 ゼロの苦しむ様を見て、ザラブ星人が哄笑を上げた。
『今の貴様なら、私一人で倒せる。他の連中にわざわざ手柄を分けてやる必要もない! 
ウルトラマンゼロを仕留めるのはこのザラブ星人だ――がはぁッ!?』
 言い終わらない内にザラブ星人は、高速で接近してきたゼロに顔面を殴り飛ばされた。
『何か言ったかテメェ? よく聞こえなかったな』
『な、何故そんなに早く動ける!? それだけのダメージを受けて――ごふぅッ!』
 ゼロがまた拳を入れ、どんどんと激しく殴りつけていく。
『この国の王様やぁ! ウェールズ! ルイズが受けた痛みと比べれば! こんなもん何ともねぇんだよ馬鹿野郎がぁッ!』
『がッ! ぐふッ! はがぁッ!』
 ゼロと、才人の叫びをぶつけられながら、ラッシュを食らい続けるザラブ星人は壁に叩きつけられた。
『うおおおおおおお―――――――――ッ!』
 そしてゼロはゼロスラッガーを両手に持ち、光る軌跡が残るほどの速さの太刀筋で振るう技、
ゼロスラッガーアタックでザラブ星人の全身を斬りつけた。
『うぎゃあああ――――――!』
 それにより、ザラブ星人は瞬時に爆発して絶命した。
「や……やった……」
 ルイズが放心しながらつぶやいた直後に、彼女の横の地面が盛り上がり、ぼこっと床石が割れ、
茶色の生き物が顔を出した。
「えッ? な、何よ一体……きゃああッ!?」
 その茶色の生き物は、モグモグと嬉しそうにルイズの体をまさぐってきた。その行動で、
ルイズは正体を理解する。
「あなた……巨大モグラのヴェルダンデ!? ギーシュの使い魔の!」
「こら! ヴェルダンデ! どこまでお前は穴を掘る気なんだね! いいけど! って……」
 直後にヴェルダンデの掘った穴から、ギーシュが顔を出した。そして状況を確認して、ギョッと目を見開く。
「ウルトラマンゼロ!? どうしてこんなところに!? しかも何か小さいし!」
『うるせぇッ! 小さいって言うんじゃねぇ!』
 小さいという言葉に過敏に反応するゼロ。まぁそれは置いておいて、ルイズがギーシュに問いかける。
「ギーシュ、なんであなたがここにいるのよ!」
「いやなに。『土くれ』のフーケとの一戦に勝利した僕たちは、寝る間も惜しんできみたちのあとを追いかけたのだ。
なにせこの任務には、姫殿下の名誉がかかっているからね」
「ここは雲の上よ! どうやって!」
 それには、ギーシュの隣から出てきたキュルケが、顔についた土をハンケチでぬぐいながら答えた。
「タバサのシルフィードよ」
「キュルケ!」
「アルビオンについたはいいが、何せ勝手がわからぬ異国だからね。でも、そのヴェルダンデが、
いきなり穴を掘り始めた。後をくっついていったら、ここに出た」
 ヴェルダンデは、フガフガとルイズの指に光る『水のルビー』に鼻を押しつけている。
「なるほど。水のルビーの匂いを追いかけて、ここまで穴を掘ったのか。僕の可愛いヴェルダンデは、
なにせ、とびっきりの宝石が大好きだからね。ラ・ロシェールまで、穴を掘ってやってきたんだよ、彼は」
「それはいいから、何とかしてちょうだいよ!」
 ヴェルダンデに迫られるルイズは、その鼻を押しのけた。そうしていると、キュルケが状況の説明を求める。
「それより、これは一体どうなってるの? ダーリンがいないで、何でウルトラマンゼロがここに?」
「そ、それよ! たった今大変なことが起きて……」
 我に返ったルイズが説明を始めようとした、その時、
『ザラブ星人、愚かな奴だ。欲をかいて功を焦るとは』
「!?」
 突然、この場にいる誰のものでもない声が礼拝堂に鳴り響いた。
『しかし、こちらとしては都合がいい。競争相手が減ることは、侵略した領土の取り分が増えるということだからな』
 皆が声のした方に振り返ると、そこにはいつの間にか、オウムのような丸い頭をした怪人が立っていた。
「な、何!? あの変な動物は!」
『変な動物ではない!』
 キュルケが思わず叫ぶと、怪人は激怒して訂正した。
『私は如何なる戦いにも負けたことのない、無敵のガッツ星人だ!』
「ガッツセイ人!? また、宇宙人が……!」
 ルイズが驚いて叫ぶが、ガッツ星人は彼女やギーシュ、キュルケらの存在をまるっきり無視して、
ウルトラマンゼロに向き直る。
『ウルトラマンゼロ、我々の挑戦はまだ終わりではない。お前を倒すために、私を含めて
四つの種族が協同して作戦を練り上げたのだ。ククク、この星の守護者たるお前が倒れれば、
ハルケギニア人はたちまち降服することだろう。我々が労せずにこの星を手に入れるために
役立ってもらうぞ』
『お前らのような卑怯者が、俺を倒すだと……? 冗談も休み休み言いやがれッ!』
 怒りを覚えたゼロがゼロスラッガーを飛ばすが、その刃はガッツ星人の身体をすり抜けた。
『何!?』
 そして次の瞬間にはガッツ星人の姿が掻き消え、別の場所に出現した。それにゼロもルイズたちも目を見張る。
『分身か! そういえば親父が言ってたな。せこい真似しやがるぜ……!』
『クハハハ! 無駄だ。貴様の能力は既に、怪獣二体を使って分析済みだ。貴様の攻撃は、
このガッツ星人には当たらん』
『なるほどな……何か妙だと思ったら、あの怪獣たちはお前らの差し金だったのか……。
怪獣にだって命があるんだ! 命を利用して、テメェらは何様のつもりだッ!』
 ゼロは、敵としてぶつかった怪獣たちのために怒った。だがガッツ星人はそれを冷笑する。
『命だと? 下らん。所詮怪獣など、戦いの道具だ。用が済めば、ゴミも同然よ!』
『! 命をもてあそびやがって……そんな奴らを、俺は許さねぇぞッ!』
 冷酷なガッツ星人に啖呵を切るゼロなのだが、それとは裏腹にカラータイマーが点滅をし出す。
『うッ……!』
『許さないだと? 自分の状態と相談してから物を言え。ザラブ星人の攻撃は効いたようだな。
その大きさでも、お前のエネルギーは既に切れかかっている。手負いでエネルギー切れ寸前の
ウルトラ戦士など、怖くも何ともないなぁッ!』
 ガッツ星人がゼロに向けて足を踏み出す。その時、キュルケとギーシュが杖を抜いた。
「援護するわ、ゼロ! ゼロの攻撃は見切れても、私たちのはどうかしら!?」
「よく分からないが、そいつは敵なのだろう! いつも君にはハルケギニアを助けてもらってるんだから、
今度は僕たちが君を助けよう!」
「わ、わたしも!」
 キュルケの『ファイアー・ボール』とギーシュのワルキューレ、そしてルイズの爆発が飛んでいく。
 しかし、ガッツ星人は残像が残るほどの超スピードで移動して魔法をかわし切った。
「は、速い!」
「何てスピード!? ありえない……」
『貴様らハルケギニア人など、相手にならん』
 ガッツ星人はいつの間にか、キュルケたちの背後に立っていた。三人の顔から一気に血の気が失せる。
『伏せろぉッ!』
 ゼロが声を上げて、ルイズたちが咄嗟にしゃがむと、エメリウムスラッシュが彼女たちの
頭上を越えて地面を薙ぎ払った。だが肝心のガッツ星人は、また高速移動をして逃げる。
『クックッ、焦るな焦るな。ここでお前と戦うつもりはない』
『何ぃ?』
 ガッツ星人がうそぶくと、ゼロが怪訝な顔をした。
『言ったはずだ、お前が倒れることでハルケギニア人を降服させると。そのためには、もっと大勢が見ている前で
勝負をする必要がある。そら、私の仲間が表に現れるぞぉ』
 その言葉の直後に、礼拝堂を突然の大きな揺れが襲った。同時に、外から巨大な何かが降り立った轟音も鳴り響いた。

『ウルトラマンゼロ! 出てこぉぉぉぉぉぉいッ!』
 朝焼けに照らされるニューカッスル城の前に突如現れた青い肌で金色のマントのようなものを羽織った、
大柄な巨大宇宙人に、城を包囲している貴族派の軍隊と、城を警護している王党派の兵たちの両方が驚愕した。
その場にいる誰もが、天にそびえ立つような異形の巨人を目にしたことなど、生涯に一度としてなかった。
 この宇宙人の正体は、かつて同族がウルトラの国の爆破を目論んだり、伝説のウルトラ六兄弟を
たった一人で窮地に追い込んだりとウルトラ一族を大いに苦しめた恐るべき極悪宇宙人、テンペラー星人である。
「な、何だ!? あの巨大な怪物は!?」
「あれが噂の、カイジュウという生き物か!?」
『出て来なければ、ここにいる人間どもを全員灰にしてしまうぞぉッ!』
 テンペラー星人は人間たちの動揺を完全に無視すると、彼らに向けていきなり、両手のハサミから
灼熱の火炎を放ち始めた!
「ぎゃああああああッ!?」
「うッ、うわあああああああああ! 退却! 退却だあああッ!」
「助けてくれええええええ――――――――!」
 火炎は貴族派も王党派も関係なく襲い掛かり、兵士数十人を纏めて火達磨にする。一気に恐慌状態となった
貴族派は隊列をそろえるどころではなく、てんでバラバラになって退却していき、逃げるところのない王党派は
水のメイジを中心に必死に消火活動に当たる。
『ぐははははは! 恨むならウルトラマンゼロを恨めぇッ!』
 無関係な人を次々に焼き殺しながら、テンペラー星人は傲然と言い放った。

『な、何てことを……!』
 その様子を超感覚で捉えたゼロが絶句した。そこにガッツ星人が、嘲笑混じりに宣告する。
『私も外で待っているぞ。一人でも助けたいんだったら、早く表に出ていくことだな』
 そう言い残して消えるガッツ星人。
『くそッ! 許さねぇぞ、侵略者ども……!』
 ゼロはすぐに礼拝堂を飛び出していこうとするが、そこをルイズが思わず呼び止めた。
「ま、待って! そんな状態で戦うつもりなの!?」
『……』
 ルイズたちに振り返ったゼロは、短く告げた。
『お前らは早く逃げろ! 俺のことは……心配するなッ!』
 そして青く輝く光になると、ステンドグラスを抜けて礼拝堂の外へと飛んでいった。
「ゼロ……」
 キュルケとギーシュが急展開についていけずに言葉をなくしている中、ルイズはゼロの身の心配を
ぬぐうことが出来ずに、ひと言つぶやいた。

「デュワッ!」
 礼拝堂を抜けた光は、49メイルの大きさまで巨大化したゼロの形に戻って、テンペラー星人の目の前に着地した。
するとテンペラー星人は、人間たちへの放火をやめてゼロに向き直る。
『出てきたな、ウルトラマンゼロ! この浮遊大陸が貴様の墓場となるのだぁ!』
『ゴチャゴチャうるせぇ! テメェら絶対……この俺がぶっ倒してやる!』
 啖呵を切ったゼロが速攻でワイドゼロショットを発射する。しかしテンペラー星人はそれを、
正面から平然と受け切った。
『ぐははははは! 効かんなぁ!』
『何ッ! くそぉ……!』
 先ほどからカラータイマーが鳴りっぱなしで、エネルギーが残り少ないというのに、
テンペラー星人に必殺技が通用しない。この事実に、ゼロはたじろいだ。
『今度はこちらの番だ! 食らえ! ウルトラ兄弟必殺光線!』
 テンペラー星人のハサミから放たれた光線が、ゼロの身体を焼く!
『ぐあああああああッ!』
『ウワハハハハハ! この光線はウルトラ一族の貴様には、地獄の苦しみだろう!』
 ウルトラ兄弟必殺光線は、テンペラー星人がウルトラ戦士を打倒するために作り出した切り札。
ウルトラ一族の肉体を破壊する凶悪な効果があり、ウルトラ六兄弟もこれに苦しめられた。
ゼロもまた、この光線で大ダメージを受ける。
『ぐぅぅ……はぁッ!』
 しかしそこはゼロ、やられっぱなしではない。横に転がって光線から逃れると、素早く
ゼロスラッガーを飛ばしてテンペラー星人のハサミをはね飛ばした。
『ぬぐッ!? やりおるわ!』
『そんなもんで、この俺を倒せると思うなぁッ!』
 ゼロが吼え、ウルトラ兄弟必殺光線を恐れずに向かっていこうとする。
 だが足を踏み出したその時に、背後から破壊光線を浴びて止められた。
『うぐぁッ!?』
『クックックッ。私もいるのを忘れてもらっては困るな』
 背後から攻撃したのは、ゼロと同様に巨大化したガッツ星人だった。ゼロはテンペラー星人と
ガッツ星人に挟み撃ちされる形となる。
『ガッツ星人! 手柄を横取りする気か!』
 テンペラー星人が責めると、ガッツ星人は飄々とした様子で返す。
『ふん。こういうことは自由競争、早いもの勝ちだッ!』
 そしてゼロは、ガッツ星人の目から放たれる拘束光線と、テンペラー星人のハサミからの
ビームウィップを同時に食らうことになる。
『うぁッ! ぐッ! ぐあああああああッ!』
 縛られて身動きを封じられてから、ビームウィップで繰り返し殴られ、ゼロは耐え切れずに絶叫を上げた。
 しかし地獄は、まだ終わりではなかった。

「逃げろおおおお! 化け物どもに踏み潰されるうううッ!」
「誰かお助けをぉぉぉぉぉぉぉ!」
 貴族派の兵士たちは、大暴れする宇宙人たちにすっかり恐れをなして、我先にと逃げ出している。
「おい待て! 勝手に持ち場を離れるな! 敵前逃亡になるぞ! 戻ってこんか、平民どもがッ!」
 しかし、この状況下でも指揮官役のメイジが、戦場から兵がいなくなるのを良しとせずに止めようとしている。
すると、彼に声を掛ける者が現れた。
「いや。今きみのすべきことは、全軍を後退させて安全を確保することだよ」
 と言ったのは、鷲鼻に碧眼の聖職者風の格好の男。球帽からはカールした金髪が覗いている。
この男の顔を目にしたメイジが、ギョッと驚いた。
「クロムウェル閣下! どうしてこのような前線へ?」
 聖職者風の男、貴族派『レコン・キスタ』総司令官のオリヴァー・クロムウェルは、当然といったように答えた。
「こんな大事態になって、余が何もしない訳にはいかなかろう。さぁ、状況は把握してる。
早く兵の諸君を誘導して下がらせるといい。もちろんきみもだ」
「し、しかし……敵の前からいなくなるなどと……」
 メイジが逡巡していると、クロムウェルは彼を諭した。
「こんなことになって、敵だの戦争だの言っている場合ではない。余にとって死者はともだちだが、
さすがに炎に焼かれたり踏み潰されたりして欠片も残らなくなっては、ともだちとは呼べなくなる。
さぁ、状況は虚無の担い手である余自身が監視するから、きみは皆の命を大切にするといい」
「か、かしこまりました。閣下のお気遣いにはまことに痛み入ります。どうかお気をつけを!」
 説得されて、メイジは直ちに全軍の避難誘導を行いに下がっていった。それを見送ったクロムウェルは、小さくつぶやく。
「……そうとも。早くいなくなるといい。たとえ虫けらでも、万が一歩く邪魔になられては迷惑なのでね」
 そう言うと、誰の目も周りになくなったことを確認してから、両腕を胸の前で交差する。
するとクロムウェルの身体が瞬く間に膨れ上がっていき、テンペラー星人らと同等の身長の、
全身に赤い球体のついた細身の宇宙人へと変貌した。同族がウルトラマンジャックを
肉体的にも精神的にも極限まで苦しめた、宇宙切っての卑怯者と名高い、ナックル星人である。
 何と、『レコン・キスタ』の総司令クロムウェルは、ナックル星人に取って代わられていたのだ。
だが何の目的で? それを考えている暇は、今はない。ナックル星人は腕をブラブラ揺らしながら、
必死に二大宇宙人の攻撃から逃れたゼロへと近づいていく。
『なッ!? テメェはナックル星人……!』
 接近に気づいたゼロの顎を、ナックル星人が殴り上げる。
『ぐあああああああッ!』
 殴り飛ばされたゼロは、その先でビームウィップにはね飛ばされ、更にガッツ星人に蹴り飛ばされる。
エネルギーが残り少ない状態で、二人相手でも防戦一方だったのに、三人に増えたことで、
最早身を守ることも叶わなくなる。
『くそぉッ! 太陽エネルギーが足りねぇ……こんな奴らに負ける訳にはいかねぇってのに……!』
 ウルトラマンゼロはエネルギーの補充が必要だ。だが、今のゼロには、朝陽のエネルギーでは
あまりに光線が弱過ぎるのだ。
 そしてゼロは、ガッツ星人の腕からの破壊光線、テンペラー星人のウルトラ兄弟必殺光線、
ナックル星人の目から怪光線の集中砲火を受ける。
『うわあああああああああああああああああああああああッ!!』
 朝焼けに照らされるニューカッスルにゼロと、中の才人までもの絶叫がこだました。

 ルイズはデルフリンガーを抱えて、キュルケとギーシュとともに城の外に出た。その彼女たちは、
ゼロが袋叩きにされてなぶり倒される様子を目にすることとなった。
 悪夢の光景だった。それまで、如何なる敵もどんな力を持った怪獣も、圧倒的な能力で
粉砕してきた無敵のウルトラマンゼロ。それが今、三人の宇宙人たちによって完膚なきまでに
叩きのめされているのだ。
「! 卑怯者!」
 状況を見るなり、ルイズが叫んだ。ただでさえ弱り切っているゼロを、三人掛かりで
執拗に痛めつける侵略者たちの姿は、到底許容できるものではない。キュルケとギーシュも
激しい憤りを感じるが、だからといって身長二メイルにも満たない彼らに何が出来るのだろうか。
「ゼロ! 今助けるわ!」
 しかしルイズは、杖を抜いて前に出ると、ナックル星人へと先端を向けた。
 これまで、何の関わりを持たないはずの自分たちを助けるために、はるばる遠くの世界からやってきて
戦ってくれているウルトラマンゼロ。その恩を今返さなければ、いつ返すというのか。
(フーケを追いかけた時、怪獣を爆発させたのはわたしなのよ。あの時と同じ呪文を唱えれば、一人くらい……!)
 と自分に言い聞かすが、今はあの時と違い『青い石』が手元にないことが一抹の不安となる。
しかしルイズはそれを振り払う。大丈夫、上手く行く。自分に虚無の力が眠っているのならば、
今目覚めないでどうするというのか。必ずゼロを助けるんだ……!
「『爆発』!」
 懸命な願いを込めて、あの時口に突いて出たのと同じ呪文を唱えた。
 ……しかし、現実はルイズの万感の想いを裏切った。発生したのは、いつもよりも少し規模が大きいという程度の、
とても宇宙人を倒すには至らない爆発。それを脚に受けたナックル星人は、姿勢を崩すだけだった。
「そ、そんな……」
「ルルル、ルイズ! 何をやってるんだい! 怪人がこっちに振り向いたじゃないかぁ!」
「まずいわ! こっちに来るッ!」
 ナックル星人はルイズを凝視し、ゼロの包囲から抜けてそちらへ足を向ける。
『や、やめろッ! ルイズたちに手ぇ出すんじゃねぇ……ぐわぁッ!』
 止めようとしたゼロは、テンペラー星人に殴られて張り倒された。
『虫けらが悪あがきしやがって! しかしお前は、この星でウルトラマンゼロと一番親しい間柄なのだったな。
ならば貴様を潰せば、ウルトラマンゼロの絶望もより深くなるだろう』
 ナックル星人が迫ってきて、キュルケとギーシュは慌てて逃げ出す。だがルイズは、その場に立ち尽くしたまま動かない。
「娘っ子! 何してんだ! 早く逃げろ! このままじゃほんとに踏み潰されちまうぞ!」
 デルフリンガーの叫びも、今のルイズの耳には入らない。
 ルイズが逃げないのは、以前みたいにプライドからでも、怖気づいて足が動かない訳でもない。
今逃げることは、ゼロを見捨てることに思えてしまうからだ。今にも殺されてしまいそうな彼に
背を向けることは、今から殺されると分かっていても、ルイズには出来なかった。
「どうして……どうして、何も出来ないの? ゼロを、サイトを助けなきゃいけないのに……
今必要なのに、奇跡を起こせない……わたしには、何も出来ない……」
 ルイズの心には、悔しさを通り越して、悲しみしか湧いてこなかった。ワルドとの戦いの時も、今も、
何の力にもなれない。そう思うと、涙が瞳からあふれ出てくる。
 指に嵌まる『水のルビー』に目を落とす。ゼロはどんな命にも掛け替えのない価値があると言った。
しかし今はそれが何かの役に立つのだろうか? 自分は、ゼロの戦いに立ち入ることすら出来ない。
人間は、ウルトラマンに守られていないと、所詮強大すぎる侵略者に踏みにじられるしかない存在なのか?
「うっ……ううぅ……うぅ……」
 ナックル星人が、巨大な足を振り下ろしてきても、ルイズは泣きじゃくるだけ。やがて涙がひと粒、
偶然『水のルビー』に落ちた。
『泣かないで、お嬢さん』
 するといきなり、どこからかルイズを慰める、優しくて爽やかな、全く聞き覚えのない声が聞こえてきた。
「えッ?」
 思わず顔を上げて辺りを見回すが、それらしい人影は見当たらない。当然デルフリンガーの出した声でもない。
 そうしていたら、突然『水のルビー』がきらびやかに輝き出し、銀色の十字の紋様が浮かび上がってきた!
『ゼロは、私が助けます』
「な、何!? 何なの!?」
「こいつは何事だぁ!?」
 依然響く声に、ルイズもデルフリンガーも面食らう。しかしルイズは、十字の紋様に見覚えがあることに気づいた。
そう、見たのはごく最近。夢の中で……。
『はぁッ!』
 そして紋様から、巨大な握り拳が突き出てきて、今にもルイズを踏み潰そうとしていた
ナックル星人を殴り飛ばした。
『ぐわあああああああああッ!?』
 完全に不意打ちをもらったナックル星人は、大きな弧を描いて吹っ飛んでいった。これに
テンペラー星人もガッツ星人も驚愕する。
『な、何が起きた!?』
『誰か出てくるぞぉ!?』
 そして紋様からは、拳の持ち主が全身を現して、両腕を肩の位置よりも高くまっすぐに伸ばし、
脚をたたんだ独特な姿勢で宙に舞った。しかし頂点の高さに来ると、両腕を下に向け、
手の甲のクリスタルから光刃を何発も飛ばす。
『ぐぎゃああッ!』
『ぬおうッ!?』
 光刃はガッツ星人が転倒し、テンペラー星人を後ずさりさせて、痛めつけられていたゼロを救った。
「あ、あの巨人は……!?」
 ルイズが、『レビテーション』で彼女を引っ張ろうとしていたキュルケが、ギーシュも、
新しく大地に立った巨人を呆然と見やる。体色はゼロと異なり、緑色と銀色。身体のラインは細く、
巨大だが華奢なイメージを受ける。そして一番目を引く点だが、顔には目鼻などのパーツがなく、
代わりに黄色に輝く十字のクリスタルが張りついている。
 一体何者なのか? あの、朝焼けの光の中に立つ影は!
『貴様! 宇宙人連合の者ではないな! 何者だッ!』
 テンペラー星人が問い詰めると、新しい巨人は、堂々と名乗った。
『ウルティメイトフォースゼロのメンバー、ミラーナイト。知らなかったかい?』


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