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ルイズと無重力巫女さん-65




 蝉達の合唱が聞こえている。鼓膜を少しだけ揺らす程に鳴いている。
 お前が再び目を開けた直後に聞いた音は何かと問われれば、間違いなくそう答えているかもしれない。
 霊夢はそんな事を一人思いつつも未だに重い瞼をゆっくりと上げ、博麗神社の社務所の中から夏の空を見上げた。
 まる巨人がそのまま雲に包まれたかのような入道雲が、清流の様に真っ青な空と同居している。
 そして空と雲より近くに見える緑の木々と真っ赤な鳥居が、青と白のモノクロカラーに鮮やかさを足していた。

 気温が上がり、幽霊を瓶詰にして昼寝をする季節には必ず見るであろう景色であった。
 霊夢本人としては見慣れてしまった光景だが、何処かのスキマ妖怪曰く「失われた日本の原風景」の一つらしい。 
――そんなに珍しいのなら、見物代くらい取れそうね。まぁ、誰も払わないだろうけど…
 ずっと前に呟いた冗談を思い出した彼女は、瞼を半分ほど開けた状態で苦笑いを浮かべた。
 声は出ないが自分の口元がにやけていると知った後、彼女はふと視界の端に映る振り子時計を目にする。
 小さな壁掛けタイプのそれの長針と短針が、丁度゛ⅩⅡ゛の時刻を示していた。
―――あぁ、もうそんな時間かぁ…時間って意外と早く進むものなのね
 霊夢は一人そんな事を考えながらも、随分前から自分に付きまとうようになった小さな百鬼夜行の事を思い出す。
 こんなにも外が暑そうなのだ、きっと涼みにくるついでに自分の所で昼飯を頂くことは容易に想像できる。
 以前に起った異変を解決してから、自分に関わってくるようになった鬼の笑顔を思い出しつつ、ふと「あと一人くらいは来るかも…」と呟く。
 春夏秋冬、四六時中。神社に押しかけてはお茶やお菓子、挙句の果てに酒と食事も強請ってくる自称゛普通の魔法使い゛だという、黒白の少女。
 夏真っ盛りだというのに、何処の誰よりも暑そうな服装でこの時期を過ごす彼女の姿を思い浮かべる。

―――今日は機嫌が良いし、折角だから三人分作ってやろうかしら?

 一眠りして機嫌が良いせいか、いつもの自分らしく無い提案が脳内に浮かび上がってくる。
 別にやましい理由があるワケではない。ただ単に誰かと食べたいという気分に陥っただけである。
 特に今日の様な、どこまでも続くような夏の青空の下ならば、そういう提案が出てきてもおかしくはない。
 そう結論付けて一人納得した彼女は、今日の昼食は何を作ろうかと考えつつ上半身に力を入れて体を上げようとする。
 味噌が余分にあるから冷汁でも良いし、そこにご飯ではなく妖怪退治の報酬で貰った大量の素麺をぶち込んでも良い。

―――でも素麺だと冷汁じゃなくて、ただの味噌素麺になっちゃうわね…
 いい加減食べ飽きた白い麺の束を一網打尽にするか、定番のご飯を入れるべきか…という二つに一つの選択。
 ある意味くだらないとも言えなくない選択に霊夢が悩もうとした。そんな時であった。

「あら、もう起きたのね。…相も変わらず飯時には早い事で」

 ふと背後から、自分のモノではない女性の声が聞こえてきたのは。
 その事に気づいた霊夢が「…え?」と呟いた直後、再び背後から謎の声が聞こえてくる。

「いっつも思うんだけどさぁ…アンタのソレも、所謂゛酷いくらいに冴えた勘゛ってヤツなのかしら?」

 まるで最初から自分を観察していたかのように、声の主は落ち着いた様子で話しかけてきた。
 多少呆れているかの様な喋り方が癪に障るのだが、生憎それに反論できる程今の霊夢は落ち着いていなかった。
 突然自分の死角から聞こえてきた声のせいで、起き上がろうとした彼女の体はピタリと止まり、その目がカッと見開いてしまう。
 次いで一センチほど浮いていた上半身が再び畳に着地し、すとん…という静かな音が彼女の耳に入り込んでくる。
 その時に少しだけ後頭部を畳にぶつけてしまったが、今の霊夢にはそれを気にする程暇ではなかった。
 今の彼女が優先的に気にするべき事―――それは自分の背後から聞こえてくる゛声の主゛が、誰なのかという事だ。
 霊夢が知っている限り人の神社、それも社務所にズカズカと上がり込む輩には、身に覚えがある。
 それも一人だけではない。文字通り゛掃いて捨てる゛程の人妖が、挨拶も遠慮も無くいきなり声をかけてくる事があるのだ。
 しかし…それ程までにいる「無礼な連中」の中に、後ろから聞こえてくる声を持つ者はいない。
 ではいったい誰なのか?体を動かすことを忘れた霊夢が、そこまで考えた時であった。
 ふと視界の端に、見たことは無いが自分と同じ゛紅白の巫女服゛を着た゛長い黒髪の女゛がいるのに気が付いた。
 霊夢よりも一回り体が大きく、腰まで伸ばした黒い髪は夏の日差しに照らされて艶めかしく輝いている。
 紅白の巫女服は霊夢が身に着けている服と比べシンプルさが強く、何処か大人びた雰囲気を漂わせていた。
 それでいて服と別離した白い袖だけは同じであり、それを横目で見た霊夢は親近感というモノをつい抱いてしまう。
 生憎ながら顔の方は前髪に隠れており、どれ程の美貌を持っているのかだけは確認できない。
 その一方で、声を出さずに観察していた霊夢の事など露知らず、目の前の女性が再びその口を開く。

「でもそれだけで巫女が務まるワケないし…ホント、あいつの強情さには困ったものね」

――は?何ですって?
 何処の誰かも知らぬ女にそんな事を言われた霊夢は、ついつい顔を顰めてしまう。
 「巫女が務まる…」という部分に反応した彼女であったが、他人が思うほど怒ってはいない。
 何せ幻想郷を作った妖怪曰く、今までいた博麗の巫女の中でも断トツで「グータラなうえに怠け者」らしいのだから。
 その妖怪以外にも、知り合いの魔法使いや妖怪たちからもソレをネタに色々とからかわれている始末だ。
 故に霊夢自身それに軽く怒った事はあれど、そこまで本気になるような事は滅多に無い。
 精々相手に文句を言ったり突っ込み気分で叩いたりと、俗にいう「スキンシップ」程度の事で済ませてきた。

―――どこの誰かは存じぬけども…赤の他人にしてはちょっと言いすぎよね
 だから今回の事も、姿を見せぬ不届き者の頭を引っ叩いてやろうと考えていた。
 叩いた後に何か言ってくれば言い返せば良いし、逆上して襲い掛かってこようものなら返り討ちにすれば良い。
 もはや言われた方が加害者となってしまうような物騒な事を考えている霊夢であったが、ふとその思考が止まってしまう。
 別に畳のトゲが背中か臀部に刺さったという事ではなく、ましてや足を攣ってしまったという緊急事態に陥ったわけでもない。
 ただ目の前で佇み、前髪越しにこちらを見下ろしていた女の体が、動いたのである。

「どんなに力や才能があっても、ある程度心が図太くないと博麗の巫女なんて…まともに出来っこないのよ」
 事実、私には少し荷が重いし…。まるで自嘲するかのような言葉を吐き出した女が、その場に腰を下ろす。
 一つとして乱れの無い動きで座った彼女と、その足元にいた霊夢との距離がより一層近くなる。
 それに驚き思考が停止してしまった霊夢であったが、それで終わりではなかった。
 一歩間違えれば口づけをしてしまうかもしれない距離で見つめ合う最中、再び女が口を開く。

「でも心が強いって事考えると…やっぱりアイツの言う通り、アンタには適性があるのかも…」
 先程の言葉を聞いたせいか、その声に悲しそうな雰囲気が纏わりついていると錯覚してしまう。
 それと同時に、突如現れた巫女服姿の女が、どうして自分に語り掛けてくるのか考えようとする。
 何を言っているのかイマイチ分からないが、言い方から察して自分を哀れんでいるのだろうか?
 それとも妖怪か何かが変化の術でも行使して、自分を誑かそうとしているのか?
 未だ落ち着きを取り戻せぬ霊夢がそんな事を考えていた直後。一陣の風が社務所の中へと入り込んできた。
 混乱し始めた彼女の頭を冷やすかのように、真夏の風が彼女の顔をやや乱暴に撫でていく。
 それと同時に艶やかな黒髪や、その身にまとう衣服とリボンが風にあおられパタパタ…ヒラヒラ…と波打っている。
 彼女の前に腰を下ろした女も例外ではなく白い袖に紅い服が波打ち、ついで顔を隠していた前髪もサッとかきあげていった。
 そして、それだけが目的であったかのように風はあっという間に社務所を抜け、何処へと去っていく。

 風が通り過ぎた後…仰向けに寝転がっていた霊夢は、ここで初めて女の顔を目にした。
 その時…彼女がどんな事を想い抱き、どんな感想を心の中で出したのかは誰も知らないし、彼女自身それをすぐに喋れない。
 ただその目を見開き、予想だにしていなかったモノを見た時の様な表情を霊夢が浮かべようなど、誰も想像しないであろう。
 それ程までに前髪に隠れていた女の素顔は、霊夢は驚かせるのに十分な価値が秘められていたのだ。

「でも大丈夫よ、霊夢。貴女は巫女をやる必要なんてない…すぐに何とかしてみせるわ」
 黒みがかった赤い瞳に悲しみを湛えた女は、霊夢の顔をジッと覗き込みながら一人呟く。
 そんな事を言われ、驚愕したまま落ち着きを取り戻せぬ彼女が考えていたことはただ一つ。

 目の前にいる女性は、きっと未来の自分なのだろうか。
 薄れていく意識の中でそう思える程に目の前の女性の顔は、霊夢と瓜二つであった。



 馬の嘶きと通りを行き交う人々の雑踏が、苛立つくらいに鬱陶しい。
 安っぽいベッドの上で目を覚ました霊夢が最初に思った感想は、どちらかといえば批判に近かった。

 ここは?と思いつつシーツの中で体を軽く動かすと、彼女を乗せたベッドがギシギシと悲鳴を上げてしまう。
 安い材木で作られたそれはもう寿命が近いのか、軋む音自体に何か不吉なものが感じられる。
 良くこんな所で安眠できたものだ。自分の運の良さを多少は喜びつつ、霊夢は上半身を起こそうとした。
「――…ッ!?」
 体を持ち上げようとした所まではうまくいったが、頭の方から強烈な痛みが襲いかかってくる。
 まるで金槌で叩かれたような激痛に、彼女は顔を顰めて勢いよく倒れてしまう。
 より一層鋭い悲鳴を上げるベッドをよそに、霊夢は自分の頭に何かが巻かれている事に気が付く。
 ザラザラとした粗い触感のソレが何なのかと思った時、ふと横のテーブル置いてある手鏡が目に入る。
 所々汚れているソレを右手で手にした彼女はサッと鏡を自分の顔に向け、次いで何が巻かれているのかが分かった。
 自分が横になっているベッドや手にしている手鏡より安いであろうソレの正体は、白い包帯であった。
 恐らく巻いた相手が素人だったのか、まるで頭だけが死後数十年物のミイラになったかのような状態である。
 それでもちゃんと出来ている方なのか、不格好だが形そのものは崩れていなかった。
「まぁ、形が崩れてても別におかしくもない巻き方だけど…」
 一人呟きながら頭の包帯を撫でていた霊夢であったが、ふと何かを思い出したかのような表情を浮かべる。
 次いで辺りを見回し、左の方に窓がある事に気が付くとそこから外の景色を見やる。

 窓から見える景色は、幻想郷では到底お目に掛かれぬ中世ヨーロッパ風の街並み。
 亀の歩みよりずっと遅い速度で空を上っていく初夏の太陽に照らされている光景は、平和そのものである。
 ずっと以前…魔理沙が見せてくれた本の中に、似たような景色を描いた絵画が掲載されていた事を思い出す。

 レンガ造りの建物に三角屋根の家、狭い通りを行き交う人々と栗毛や黒毛の馬たち。
 煙突から絶えず煙を吐き出すパン屋や血生臭い肉屋には、大勢の人々が訪れている。
 当時、憧れはしなかったがいつかは見てみたいと思った「欧州の昔」が、霊夢の上半身程度しかない大きさの窓から見えていた。
 そして彼女は知っていた。ここから見える風景――否、街の名前を。

「そっか…今の私は、トリスタニアにいるんだっけか」
 思い出したかのように呟いた時、霊夢は昨日起った出来事を全て思い出した。
 そう…買い物だけだと思っていた外出が、予想だにせぬ相手との戦いにまで発展したという事を…
 彼女の記憶には、自分の偽者に致命傷を与えた事は覚えていた。無論、自身も盛大な「お返し」を貰った事も。
 頭に強烈な一発を貰った後にルイズたちと何か話したような気がするものの、詳しい事までは覚えていない。
 あの時は頭がグワングワンと揺れていて、ジンジンと脳内を回っているかのような強烈な痛みで、まともに話すことは出来なかった。
 ただ耳に入ってくる三人の言葉に、思いつける限りの返事だけを口から出していたのだけは記憶に残っていた。
「思い出そうとしてみたけど…何も記憶に残ってないわね………あっ、そうだ」
 無意識に首を傾げた彼女はそう言って、ふと自分の頭にいつも付けていた筈のリボンが無い事に気が付く。
 思い出したかのように辺りを見回すのだが、目に入るのは安っぽくて質素な造りの部屋だけだ。
 きっとこの部屋の中では自分の次に目立つであろうリボンはテーブルや椅子の上、出入り口横のコートラックにも掛けられていない。
 部屋を一通り見回したところで目に入らなかったというところで諦めた霊夢は、軽いため息をついた。


 まぁ今の状態ではリボンなんて付けられないだろう。包帯も外すことは出来ないし…
 一人納得するかのような思いを心の中で吐露しながら、霊夢はまた何かを思い出すかのような表情を浮かべる。
「部屋に無いとするとルイズたちが持ってそうだけど……そういえば、あいつ等は何処に行ったのかしら?」
 先程まで見ていた夢の事もあって今更なのだが、自分が今どんな状況にいるのか霊夢は知りもしなかった。
 今いる部屋も初めて見るような場所だし、近くにいるはずであろうルイズや魔理沙…そしてあのキュルケの姿が見当たらない。
 まぁ部屋自体が狭いしどこか別の所にいるのだろうが、それ以前にここがどういう場所なのかもわからなかった。
「せめて誰か傍にいてくれたって良かったのに」
 特にすることもできずにいる彼女は背中をベッドに預けたまま、何となく呟く。

 それから二分程度が過ぎた頃だろうか。
 見慣れぬ天井を見つめ続けている内に、今度は先程まで見ていた夢が何なのかとという疑問を感じた。
 あんな夢を見るのは初めてであったし、それにあの女性の顔が自分とよく似ていたというのも気にはしている。
 今思い出すと多少大人びていた雰囲気があったものの、数年後の自分だと言われれば納得するかもしれない。
 髪も今より長かったし、リボンだってその時には付けているかどうか分からないのだから。
 夢の内容を暇つぶし程度に思い出していた霊夢であったが、突如その顔にハッとした表情が浮かぶ。
 それは今考えている事よりも、ある程度優先して気にしなければいけない事であった。
「そういえば、私の偽者はどうなったのかしら?」
 夢に出てきたもう一人の自分(?)を思い出した彼女は、少し慌てた様子で呟く。
 最後の一撃を入れた時に確かな手ごたえを感じ、直後に強力な一撃をお見舞いされたのは覚えている。
 しかしその後すぐに意識がなくなったせいか、今日まで続いているであろう厄介事の元凶がどうなったのかを確認していなかった。
 あれで死んでいればそれで良いし、もしくはルイズや魔理沙たちが片付けてくれていればそれもまぁ結果オーライというものだ。
 しかしあの一撃で死なず何処かへ逃げていれば厄介だ。最悪、また戦う羽目になるのは確実だろう。
(まぁ次出てこようものならば、三度目を許さず二度目で完膚なきまでに退治するまでよ)
 とりあえず悪い方のケースを想定し、決意した彼女は、ふと左手の甲に刻まれたガンダールヴのルーンを見やる。
 手の甲を上げたその先に目にしたのは、目を瞑らせる程の激しい光を放つ…ルーンではなかった。
 この世界ではある程度特殊な―――少なくとも複製ぐらい出来そうな――使い魔の印が、刻まれているだけであった。
 別段光っていることも無く、それと連動して頭の中に性別不明な声が流れ込んでくることは無い。

「ガンダールヴのルーン…いつの間に光らなくなったのかしら?」
 昨日まで何とかしようと考えていた霊夢が不思議そうに呟いた。その直後だった。
 彼女の目から見て右にある部屋の出入り口越しに、人の気配を感じたのは。
「おい、目を覚ましたのか?」
 それに気づいた霊夢が顔を向けようとする前に、ドアの向こうから女の声が聞こえてくる。
 力強く、しっかりとした雰囲気を感じられるその呼びかけに、霊夢は「まぁね」と短く返す。
 するとドアの中央より少し上の部分が耳に触る嫌な音を立てつつ左にずれたかとおもうと、そこから何者かが覗き込んできた。
 どうやらそこの部分だけ覗き窓になっているらしい。今になって霊夢は気づく。
 それと同時に、部屋を開ける前にそんな事をしている相手を見て思わず目を細めてしまう。
(薄々感じてはいたけど…やっぱり昨日の面倒事は全部終わって無さそうね)
 ルイズや魔理沙が近くにおらず、見覚えのない部屋にいる。二つの疑問を結びつけ、そんな結論を出した時だ。
 再び耳をイラつかせるような音がひびいて覗き窓のスライド版が右にずれ、こちらを覗く女の視線が消える。
 その後、ドア越しにカチャカチャと弄るような音が響いたたかと思うと、あっという間にドアの方から鍵が開く音が聞こえてきた。
(外から鍵を掛けるなんて驚きね。…というか、昨日よりもずっと厄介そうじゃないの)
 何処か心をスッキリさせてくれるような音はしかし、ベッドに横たわる霊夢の心を更なる不安に陥れる。
 少なくとも、ドアの向こうにいる相手がこのまま学院に返してくれる事は無いだろうと覚悟していた。

 覗き窓付きというプライバシー皆無のドアが開くと同時に、一人の女性が遠慮なく部屋へと入ってきた。
 薄い茶色の鎧を身に着けた彼女は、鎧と同じ色のロングブーツを履いた足で霊夢の方へと近づいていく。
 一方の霊夢は頭だけを女の方へ動かし、それと同時に相手がそこら辺にいるような人間ではないという感想を抱いた。
 女性らしい細身の体は魅力的ではあるが、女とは思えた程に目が男らしい輝きと、その体から近寄り難い雰囲気を放っていた。
 魔理沙や紫と比べやや薄い金髪を短めに切りそろえており、それが女らしさを打ち消す原因の一つとなっている。
 歩き方自体も男らしさが出ているせいか、ドレス姿を見せられても「番犬の頭にピンク色のリボン」という、変な感想しか口に出せない。
 そして何より霊夢の目を惹かせるのが、腰に差した一本の鉄剣であった。
 この世界では「貴族に抵抗する平民の牙」と揶揄されるソレからは、女性と同じ重苦しい気配が漂っている。
 恐らく黒い鞘に収まったソレは文字通り゛血を吸った゛のだろう。そうでなければあんなにも近寄り難い゛何か゛を感じる理由が無い。
(妖夢だともっと詳しく分かりそうだけど…まぁその前に縮こまっちゃうかも)
 幻想郷にいる知り合いの内一人である半霊半人の事を思い出した直後、すぐ傍までやってきた女が口を開く。
「…一目見た感じでは大丈夫そう…には見えないが、立てるか?」
 少々の鋭さを見せる声は、腰に携えた獲物と同じ様な…聞いた者を怯ませる何かを漂わせている。
 しかしそれにたじろ博麗の巫女ではなく、少し気難しそうな表情を浮かべた霊夢はとりあえずの返事を口に出す。

「さっき起き上がろうとしたけど…頭がズキッとしたわね」
 そう言った後、もう少し何か口に出せば良かったのでは、という浅い後悔の念を抱く。
 咄嗟に出た言葉の所為か、相手に聞こうとした質問をしゃべる事が出来なかった。
 ここは何処のなのか、今の私はどういった状況にいるのか、私の近くにいたルイズたちはどうなったのか…
 そして、自分はこれからどうなるのか…そう言った質問が頭に浮かんでくるが、口に出すことが叶わないもどかしさ。

 目の前の少女がそんな気持ちを抱いているとも知らずに、衛士姿の女はベッドに横たわる彼女を頭の先から足の爪先まで観察する。
 最も下半分は白いシーツで隠れているの為実質目にしたのは頭の包帯部分だけであろうが。
「そうか、じゃあこれを飲んでみろ。一流品じゃないが鎮痛作用ぐらいはある」
 懐を漁りながら喋る女が取り出したのは、掌サイズの瓶に詰められた無色透明の液体であった。
 水と比べほんの気持ち程度粘り気がありそうな液体入りのソレを見て、霊夢は首を傾げる。
「何よコレ?タダの水って感じじゃあ無さそうだけど」
「安いポーションだ。さっき言ったように痛み止めの効果があるが…どうやら信じてないようだな」
 丁度自分の掌と同じサイズの瓶を見た霊夢は、信じられないと言わんばかりに目を細めている。
 女の言葉に霊夢は当たり前よと返しつつ、そのまま喋り続けた。

「いきなり見ず知らずのアンタに薬だ飲め、って言われて飲めるわけ無いじゃない。
 第一、ここが何処なのかも私には皆目見当がついてないのよ。教えてくれない?今の私がどういう目にあってるのか」

 とりあえず今言いたいことをついでにぶちまけた後、霊夢は軽く一呼吸する。
 肺に残っていた僅かな空気を喉を通して口から出していくと、突っつくような痛みが頭を無駄に刺激する。
 それに顔を顰めて耐えている彼女であったが、そんな彼女を見下ろしていた女が、ポツリと呟く。
「何だ、口数少ないヤツと思っていたが…案外喋れるんだな」
 どこか感心したような言葉を述べた後、突如右手に持っていた瓶の蓋を抜いた。
 ワインのコルクを抜いたときの様な音が部屋に響いたかと思うと、次いでその瓶をゆっくりと傾ける。
 丁度飲み口から液体こぼれ落ちるところに空いている左の掌を添えて、慎重に右手を動かす。
 やがてほんの少し粘性があるともないとも言える液体が飲み口から二、三滴こぼれ、女の左掌の上に落ちた。
 それを確認してから傾けていた瓶をスッと上げたかと思うと、女は液体の付いた掌を自分の口元へと運ぶ。
 そして霊夢がアッと言う前に、女は何の躊躇いもなく掌の上の液体を自分の下で舐めてしまった。
 ソフトクリームの表面部分だけを軽く舐めるように舌を動かし、それを吟味するかのように口をもごもごと動かしている。
 ほんの数秒程度の動作に何も言う事ができなかった彼女は、女の口から言葉が出るのを待っていた。

 それから五秒ほどが過ぎた後、口の動きを止めた女が喋り出す。
「毒薬だと思ってたろ?ホラ、私の体にどこもおかしな所は無いぞ」
 疑い深い巫女に教えるかのように、女はそう言って両手を横に広げた。
 単なる勘ぐり過ぎだ。そんな事を言われたような気がした霊夢は少しだけムッとした表情を浮かべるも、右手を女の前に差し出す。
 その意図を察してか、女もまた何言わずに飲み口が開いたままの瓶を彼女へと手渡した。
 受け取った霊夢はほんの数秒間を瓶の中身を見つめた後に、ゆっくりと口の方へ近づける。
 そして覚悟を決めたのか、軽い深呼吸をしてから一気に無色透明の液体を景気よく飲み始めた。


 喉を鳴らして飲んでいく彼女が最初に思ったことは、瓶の中身は思った以上に冷たかったということであった。
 まるで半分液状化したソフトクリームのように、喉越しの良い冷気が口の中を包み始めている。
 味の方は良くわからないが、少なくとも自分の体に致命的な害を成す物ではないという事が今になって分かった。


 小さな瓶の中身は飲み始めてすぐに無くなり、あっという間に霊夢の体内へと入り込んだ。
 飲み干した事に気が付き、すぐに瓶を口元から離した彼女は、ホッと一息つく。
 そして空になった瓶を右手に握る瓶を弄りながら、思っていた以上に良い物を飲めたことに多少の喜びを感じた。
(ふぅ…思った以上に飲みやすくて……ん?―――――…ひゃっ!!?)
 だがしかし、その喜びを女の前でアピールする暇もなく、彼女の口を唐突で過剰的な゛清涼感゛が襲った。
 まるでペパーミントの葉を数十枚口の中に入れて噛みしめたかの様な清涼感は、もはや痛みに近い。
 以前魔理沙と一緒に飲んだハシバミ草のお茶ほどひどくは無いが、それとは別にこの薬も人体に対し強烈だ。
「……うっ……!?うぅ…!」 
 程よいと思っていた冷たさがブリザードを思わせる過酷な冷気となり、口内を縦横無尽に暴れまわっている。
 そんな風に例えるしかない予想外の事態に顔を歪ませている霊夢を見て、女はため息をついた。

「安物のポーションだからな。メープルでも入ってると思ってたか?」
 明らかに子ども扱いしている言葉に対し、ハッキリとした怒りの表情を浮かべる。
 確かに自分と同じ薬を口にして顔色一つ変えないのはスゴイと思うが、子ども扱いされるのだけは不服であった。
 そんな思いを目から飛ばしているが、そんな事知らんと言わんばかりに自分を見つめ続ける女に、更なる怒りが溜まっていく。
 今は無理だしまだ名も知らないが、いつかこの借りは耳を揃えてキッチリ返させて貰おう。
 口の中に充満する殺人的清涼感に悶えつつも、霊夢は決意した。


 それから五分くらい経過しただろうか。
 先程までベッドに横たわっていた霊夢は、自分がいた部屋の前で女衛士と佇んでいた。
 味はとんでもなかったが鎮痛効果はしっかりしていたのか、包帯を巻いた頭は殆ど痛まなくなっている。
 完治したというワケでもないが、ひとまず立って歩くことぐらいはできるようになった。

「とりあえず、薬を飲ませてくれた事はお礼を言っておくわね。え~と…名前は?」
 さっきと比べ回復した体に満足している巫女がお礼ついでに女の名を尋ねてみる。
 衛士の女はそれに対し嫌悪や不快といったモノを感じないのか、そっけない表情を浮かべて名乗った。
「アニエスだ」
「そう…アニエスね?覚えておくついでにお礼も言っとくわね」
 靴の中で足の指を動かしながら礼を述べると、霊夢は「で、色々聞きたいことがあるんだけどさぁ」と質問してみる。
 それに対しアニエスは右手を腰に当てて、相手が何を聞いてくるのか待ち構えていた。
 我に返答の意思あり。彼女の様子を見てそう解釈した霊夢は、一呼吸おいてから喋り出す。
「私が今いる場所は何処なのかしら?少なくとも街の中ってのは理解してるけど…」
「そうだな。ここはトリスタニアのブルドンネ街の中にある衛士の詰所本部、と言っておこうか」
 お前とその仲間がいた場所から歩いて一時間だ。聞いてもいない事をついでに喋ってから、アニエスは口を閉じる。
 意外にもハッキリとした答えをくれたアニエスに感心しつつも、霊夢は首を傾げた。
「衛士?ということは…ここって街の治安を守ってる連中の寝床かしらん」 
 この世界に来て初めて聞く名前を耳にして、ふと頭を上げて廊下を見回してみた。

 それほど目新しくないやや濁った乳白色の壁は何回も塗装し直しているのか、壁全体がペットリとしている。
 木造の廊下はちゃんと整備されており、その場で足踏みしてもあの部屋のベッドみたいに軋む音を上げたりはしない。
 日差しを入れる窓も廊下と同じく念入りに磨かれていて、不快感を催す汚れやシミなどは見当たらない。
 しかし…室内灯が魔法で動くカンテラではなく普通の燭台であり、彼女たちより少し上に設置されたソレに明りは灯っていない。
 その所為か日差しが入っているのに関わらず、廊下全体が少し薄暗く物々しい雰囲気を放っている。

 一通り廊下の風景を目に収めた巫女は再び女衛士に視線を戻してから、一言呟いた。
「なるほど…そんなに物騒な所なら、街の雑踏から隔離されていても不思議じゃないわね」
「そんな物騒な所で働いている私から見れば、外の方が随分とおっかないけどな」
 相手の言葉にアニエスはそう返すと窓の外を一瞬だけ見やり、それから踵を返して霊夢に背を向けた。
 どうしたのかと一瞬だけ思った霊夢であったが、すぐにアニエスが「ホラ、ついて来い」という言葉を口にした。
「ついて来いって…そりゃ歩ける様にはなったけど、いきなり過ぎない?」
 それを聞いた彼女が苦々しい表情を浮かべてそう返すと、アニエスは背中を見せたまま淡々と言葉を続ける。
「お前が目を覚ましたら、すぐにここから出せという命令が出ているんだ」
「命令?…何か只事じゃなくなってきてるわね……というか、それって誰が出したのよ」
 彼女の口から出た予想外の言葉に目を丸くした時、霊夢の頭にルイズの顔が浮かび上がる。
 もしかすると彼女が色々としてくれたおかげで、今の自分がいるのではないのだろうか?
 そんな疑問を過らせた霊夢は聞いてみようと考え、女の背中に声を掛けた。
「ねぇ、その命令したヤツってさ…もしかすると、ルイズっていう名前の女の子かしら?」
 巫女の言葉に対しアニエスは「嫌、違うぞ」と首を横に振りつつ短い言葉で返した。
 しかしそれを聞いた霊夢が何かを―――言葉を出すか、表情を変えるか――をする前に、彼女はこんな事を口にした。

「…確かに怪我をしたお前の傍にいた魔法学院の生徒二人、それと三人ほどの少女をひとまずここへ連れてきた。
 しかし、今から一時間程前に来たんだよ。お前を含めた少女たちをここから出せと命令した、とんでもない御方からの使いが…」

「御方…?」
 戦いのみを職業とし、生きてきたような女衛士の口から出てきた言葉に霊夢は怪訝な表情を浮かべる
 それに、ルイズと魔理沙やキュルケ以外にも二人程誰かが一緒に連れてきたという事も気になってしまう。
 意識があった段階でいたのは三人だけであったし、周囲には自分たち以外誰も見なかったのは記憶に残っている。
 じゃあその二人とは一体誰の事なんだろうか?ますます深まっていく謎に霊夢が首を傾げようとする…その直前であった。


「―――――レイム!もう大丈夫なの!?」 
 突如前の方から、悲鳴にも近い叫び声を上げて何者かが早歩きで近づいてきた。
 木造の廊下をしっかりと磨かれたローファーで蹴飛ばしつつやってくるのは、ピンクのブロンドが眩しい小柄な少女だ。
 背中に付けた黒のマントをたなびかせて走ってくる彼女の顔には、精一杯゛何か゛を我慢しているような苦しげな表情が浮かんでいる。
 貴族やメイジ達が命に次に大事と豪語する杖は腰に差しており、その両手には何も握られてはいない。 
 ただギュッと握り拳を作っているその手には顔に浮かべた表情と同じく、堪え切れぬ゛何か゛を必死に抑えているようにも見える。
「…イム、レイム!……アンタ、アンタ…!」
 音を鳴らして歩いてる少女は衛士の後ろにいる巫女の名を呟きながら、二人の方へ近づいている。
 流石に何かおかしいと感じたのか、アニエスも怪訝な表情を浮かべて近づいてくる少女に警戒し始めた。

 五メイル、四メイル…そして後三メイルというところで、名を呼ばれている霊夢は本能的に後ろへ下がった。
 彼女は感じ取ったのだ。自身の身に迫りつつある更なる危機を。
 それは正に、怪我を負った狼が怒り心頭のマンティコアと対面した時のような予期せぬ絶望。
 ただでさえ叶わないうえに傷ついた体でどうしようもない時に降りかかる、更なる恐怖。
 百戦錬磨の霊夢はそういう風に例えられる気配を感じ取ったのだ。自信よりも背丈の低い少女から。

「レイム!アンタ…どんだけ人に心配させれば気が済むのよっ!?」
 いつもから刺々しく、そして一度怒らせればどうしようもない少女―――ルイズがそう叫びながら、飛びかかってきた。
 一メイルという近い場所まで来た彼女はローファーを履いた足で今までよりも力強く床を蹴り上げる。
 そして握り締めていた両手をひらいて霊夢達へ向かってくる姿は、正に獲物を見つけて襲い掛かる肉食幻獣そのものであった。
 小柄な体つきながらも食欲旺盛で凶暴なマンティコア――――そう例えられるぐらいに今のルイズは怒っていた。
「わっ…ちょっ…!」
 突如物凄い勢いで迫ってくる相手に怪我を負った霊夢が避けられる筈もなく、このままでは酷い目に遭うであろう。
 しかし、始祖ブリミルの微笑みはこの場にいる三人の内、異世界の巫女に向けられていたのかもしれない。

「おい、おい!こんな所で暴れるなよ、暴れるな!」
 霊夢の前にいたアニエスがすぐに慌てて様子で突進してきたルイズを、その右腕で受け止めたのである。
 柔らかい物同士がぶつかったような曇った音が聞こえてきたと同時に、霊夢の眼前をルイズの左手が通り過ぎていく。
 思っていた事ができなくてせめてもの抵抗か、まるで猫じゃらしを弄る猫の手の様に彼女の左手が何もない空間を掻き毟る。
 鳶色の瞳に怒りの色を滲ませたルイズを見て、寸での所で助けてくれた衛士に、霊夢は感謝の意を送った。
「何から何まで…本当今日はアンタに助けられてるわね」
「お世辞なんかよりもまずは仲直りした方が良いんじゃないか?傍から見るとかなり嫌悪な仲だぞ」
 アニエスの助言じみた苦言にすかさずルイズが「余計なお世話よ!」と怒鳴り返し、今度は右手も振り回し始める。
 もはや手がつけられない彼女に霊夢は肩を竦めつつ、これからどうしようかと悩む。

 ルイズがここにいるなら何か知っているだろうが、今の状態で近づくと痛い目を見るだろう。
 ただでさえ負傷しているのにこれ以上傷が増える事は遠慮願いたいので、知りたい事を聞けない。
 さてどうしようかと悩もうとした直前、アニエスが先程呟いていた事を思い出した。
「そういえば、ちょっと聞きたいことが一つあるんだけど良いかしら」
 彼女の口から出ていた言葉の内に気になるモノが一つだけあった霊夢は、彼女に話しかけてみる。
「お前、今の私が人の話を真面目に聞ける状態だと思っているのか?」
「別に良いじゃないの。もうルイズだって私に殴り掛かる気もなさそうだし」
「…アンタって相も変わらず、そんな性格だから私が頻繁に怒るのを分かってないみたいね」
 二人のやりとりを耳にしていたルイズは、さっきまで宙を掻いていた両手をぷらぷらと揺らしつつ毒づいた。
 本気で襲うつもりは無かったのだろう。ジト目で巫女を睨みつける今の彼女は、まるで人見知りの激しい飼い猫のようだ。
 相手に襲う気が無いとわかったのか、ため息をつきながらもアニエスは「で、聞きたい事って何だ?」と霊夢に話しかける。

「そういえばアンタ、私たちを連れてきた云々の話で゛とんでもない御方゛って言ってた人間がいるけど…それって誰なのよ?」
「御方…?御方――あぁッ!」
 彼女が質問を口に出した直後、アニエスの腕に抑えられていたルイズが突然大声を上げる。
 いきなりの事に多少驚きつつも二人がそちらの方へ目を向けると、ハッとした表情を浮かべる彼女がいた。 
 まるで朝一番にすべき事を忘れ、さぁ昼食を食べようという時間に思い出したかのような、取り返しのつかない焦燥感に包まれた顔。
 一体何なのかと思っていた時、先程飛びかかった時の様な俊敏な動きでもって、ルイズはアニエスの近くから離れた。
 突拍子もない動きにアニエスが軽く驚くのを無視しつつ、ルイズは少し慌てた様子で少し乱れた服を直してから霊夢にこんな事を聞いた。
「あんた、もう歩けるのよね?昨日は見た目よりも結構な重傷で焦っちゃったけど…」
「えっ?ん、んぅ…まぁね。完治って言えるほどでも無いけど」
 唐突な質問に霊夢は言葉を詰まらせかけながらも、包帯を巻いた頭を左の人差指でさしながらそう答える。
 多少不格好さが目立つ白いソレを鳶色の瞳で見つめつつも、ルイズはまぁ大丈夫だろうと判断した。
 調子が悪そうなのはすぐにわかるが、それ以外はいつもの厚かましい博麗霊夢だ。
 一つ間違えればケンカに発展していたであろうやり取りでそれが分かった彼女は、その場で踵を返した。
「じゃあすぐにここを出ましょう。入り口の方で、馬車とマリサ達を待たせてるから早く行かないと」
 やや早口で捲し立てる彼女に多少戸惑いながらも、霊夢は首を傾げて言葉を返す。
「馬車?という事は何よ、これから学院に帰るっていう事?」
 突然出てきた知り合いの名を聞いてそんな事を言った巫女に対し、ルイズは「違うわよ」と首を横に振る。


「王宮よ。昨日私達が街で大騒ぎした事を知って、姫さまの使いが迎えに来てくれてるの」




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