あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのドリフターズ-27



 首都ロンディニウムの大通りを歩いて行く一人の少年。
彼――平賀才人は、昼間に散々遊び回って疲れた子供達を寝かしつけて持て余した暇。
眠気もなく、テファもシャルロットも当分帰っては来ない。
慣れぬ街だが折角のお祭りということもあり、外へ出て気ままに夜を楽しむことにしたのだった。

 結構な人の波と熱気ではあるが、東京住まいのサイトにとっては特段珍しいことでもない――


 ――東京でも、日本でも、地球ですらない。
ハルケギニアと呼ばれ、さらに空に浮遊しているらしいアルビオン大陸。
全くもってわけがわからない。フィクションでありファンタジーであった。

 トンネルを抜けると雪国――どころか、光る扉をくぐればそこは異世界だった。
最初はドッキリか何かとも思った。けれど月が二つ、言い知れぬ不安が襲うくらいに大きく不気味に浮かぶ。
鳶色と碧色に彩られる双子のような衛星を見て、才人はそのうち考えるのをやめた。

 楽観主義的な才人にとって、少し思っていたのとは違ってはいたが、これもまた求めていた刺激。
一時の長い夢なのだと・・・・・・そう自己完結することにした。
とはいえ開き直りつつも時間が経つにつれて、やはり色々と考えてしまう。望郷の念にも駆られる。
しかしいつまでもクヨクヨしても仕方なく・・・・・・留学――ホームステイでもしている気分に浸っている現状。

 しかもある意味、異世界そのものの存在よりも己が目を疑った胸革命たるティファニア。
可愛い女の子との――正確には子供達とも――同棲生活は最高の一言に尽きる。
見たこともないくらいに綺麗な容姿。悶絶したくなるほど可愛い性格。
脳味噌を直接ガツンと叩くような、暴力的プロポーションを備えるパーフェクト美少女と一つ屋根の下。

 思春期真っ只中で女っ気の無かった男子としては、麻薬も同然の陶酔感である。
彼女の姉であるマチルダと会った時にはあやうくゴーレムに殺されかけ、また、他に寄る辺もない孤立した状況。
何よりテファの穢れ無き清純さと、聖女が如き心根の前では、才人とて欲望よりも理性が勝る。

 そうは思っても、狭い村の中で一月以上も暮らしている年頃の男女。
お互いに意識しないわけもなく、甘酸っぱい生活を才人は存分に堪能していた。
そう、例えば、あくまで例えば、万が一にでも。家に帰るついでに婚約者を連れて行く。
それは男にとって夢のシチュエーションだと妄想も膨らむ。


 そんな折、一人の少女が村へとやって来た。
テファからもよく話に聞いていた、シャルロットという名の友達だった。

「はじめまして、こんにちは。シャルロットです」
地球にはない天然の青く美麗な、流水を思わせるような長髪。
それを赤いリボンでポニーテールにまとめて、活発らしさが演出されている。
幼さを僅かに残し、綺麗さと可愛さが同居した顔立ち。赤い眼鏡も何か引き立たせるものを感じる。
均整がとれていてバランスの良い肢体はモデルのようで、テファとはまた違った色気が才人の全身を打った。

「あぁ、はじめまして。聞いてるとは思うけど平賀才人だ、よろしく」
「はい、よろしくお願いします。サイトさん」
「呼び捨てでいいよ、年も近いみたいだし、話し方も普通で」

「・・・・・・そう、わかった。サイト」
声のトーンもやや下がって、シャルロットは力を抜く。
無駄なく簡潔に淡々と省エネ志向なのが、他所行きではないシャルロット本来の性分。
その後に二、三ほど世間話を終えてから、シャルロットは本題へと入る。
「それじゃあそろそろ、貴方の世界とやらの物を見せて」

「はいよ」
サイトは床に置いておいた鞄を机に置き、電源の切れたノートパソコンと携帯電話を見せる。
既に電池が切れて無用の長物と化しているが、画面が点かなくても機器の精密さに驚いているようだった。
実際にやって見せることこそ出来ないものの、とりあえず才人は使い方を説明する――


「――その・・・・・・"でんぱ"や"ねっと"を使うことで、同じ物を持つ人と"繋がる"と」
「そうそう、こっちでは電気もないから役立たずだけど」
テファには何度説明しても遂に理解してはくれなかったが、シャルロットは話半分程度でもわかってくれている。
わざわざ説明のした甲斐もあったと才人はちょっとだけだが喜んだ。

「聞きたいことがある。"あめりか"を知ってる?」
「おぉ~知ってる知ってる。俺は日本人だけどね」
地球の国名に才人はとても懐かしく感じ入る。

「蒸気機関車は?」
「もちろん知ってるよ。でも今はあるのかなあ・・・・・・?」
「"今"は? どういうこと?」
「う~ん。どこか地方へ行けば残ってるのかも? 今は"電車"や"地下鉄"だよ」

「"でんしゃ"? "ちかてつ"?」
「このパソコンや携帯にも使われてる電気を使って走るんだけど、今はどこも大体そうだと思うよ。
 地下鉄ってのはその名の通り、地面の下・・・・・・地下にレールを敷いてそこを走ってるんだ」
「地下・・・・・・鉄道・・・・・・」
呟きながらシャルロットはしばし考え込む。そして今度は腰から何かを取り出した。
ゴトリと置かれた"それ"は、男の子ならきっと誰もが一度は憧れを抱く物の一つだろう。

「は? "ピストル"? これって本物?」
「偽物があるの?」
「いやまぁそりゃ、モデルガンとかエアガンとか――」
「よくわからないけど本物・・・・・・」

 サイトはどこか年季の入ったそれを恐る恐る手に取る。
「重っ・・・・・・いな」
想像していた感覚との違いに驚いて、そう才人は叫んでしまう。
「弾薬入ってるから、気をつけて」
サイトの背筋がゾクリとする。重厚感あふれるデザインと、確かな重み。
今自分の手の中にある"銃"は、紛れもなく人を殺す為の物なのだと。

「おおぉ、これって確か・・・・・・"ピースメーカー"だっけ? 西部劇とかでよく見る――」
「西部劇?」
あぁ知る筈もないかとサイトは思いつつ、拳銃へ視線を戻す。
よくあるオーソドックスな六連装のリボルバー。
ただ日本の警察が使う小さいのではなく、二回りくらいは大きいんじゃないかと思う。
さらに大きくなるとマグナムとかかな? などと考える。

「コルト、シングルアクションアーミー。サイトも言ったように"ピースメーカー"という名称もあるらしい」
「これもその、"漂流物"・・・・・・とかってやつ?」
「うん、知り合いから貰い受けた」
シャルロットはコクリと頷きながら肯定する。

「へぇ~、貰ったんだ・・・・・・」
"こんな古そうな銃"を? そんな疑問が湧き上がり、シャルロットも同じようなことを考えていた。

「恐らくそれ・・・・・・"古い銃"、でしょ?」
「あっ・・・・・・あぁ。多分かなり古い」
今は例えばアサルトライフルとか、もっと発達した銃だ。
ピースメーカーなんてそれこそ骨董品の類なのではないだろうか。
もちろん今だって生産こそされているかも知れないけど、銃そのものの型は西部劇の時代だ。
そして同時に形を為していく、才人中の嫌な予感をシャルロットが口にする。

「サイト、貴方は異世界でも・・・・・・かなり未来の異世界から来ていると思われる」


 異世界――地球――から来る漂流者。
ハルケギニアにおいて異邦人であり異端たる存在。それゆえに自身の行動には注意が必要である。
とはいえあまり気にし過ぎても仕方ないので、才人はフィーリングでピンときた店へと入る。

 わいのわいのと喜色喧騒の中で、空いているカウンター席に座った。
「何になさいますか?」
「適当に食事と飲み物を・・・・・・」
才人は言葉が通じて本当に良かったと安堵する。なにせメニューは全く読めなかった。

(やっぱ勉強くらいした方がいいかな・・・・・・)
漂流者は基本的に、文字はおろか言葉すら全く通じないらしい。
召喚されたからこそ問題なく意思疎通が出来ているのだろうと、シャルロットは推論を語っていた。
それに被召喚者に限って言えば、文字の覚えも恐ろしく早いらしいとも。
いつ帰れるのか見込みがつかない以上、ここは最低限勉強した方が良いと実感する。

 そんなことを考えていると、店員がゴトリと飲み物を置く。
泡立ちながら鼻に届いた香り、ビールが思い浮かぶが少し違う。
恐らくは麦酒<エール>というやつか、いずれにせよアルコールだ。
適当にと言ったばかりにお酒が出てくるとは・・・・・・。なにせ自分は未成年である。
とはいえ海外では20歳未満でも大丈夫なところがあるとも聞く。
まして異世界ともなればどうなんだろうと考えつつ、自制すれば問題ないだろうと才人はあっさり結論した。
どちらにせよ店員は忙しなく動き回っていて、こちらのミスでキャンセルするのは躊躇われた。

 食事が出てくるまでの間することもなく、グイッと一口あおって思わず眉を顰めた。
初めて飲んだ酒。はっきり言って美味くない。むしろ不味いとさえ。
「ふぅ・・・・・・」
とりあえず飲みかけのグラスを置いて、何気なく店を見渡してみる。
武技大会からそのまま引っ張ってきたような熱気は、今なお衰える様子は見えない。
明日の二回戦から決勝までは、さぞ今以上の盛り上がりを見せることだろうと。

 ――その時、"一人の男"と眼が合った。
"男"だと思ったのは、周囲に女を何人か侍らせていたからだった。
もし一人であり顔立ちのみに注視すれば女と見紛ってたかも知れない。
(・・・・・・あれ?)
視線をグラスに戻してから、才人は頭に引っ掛かった記憶を手繰り寄せた。

 さっきの"オッドアイ"、見たことある。そう、丁度昼間に見たばかりの大会出場者だ。
比較的近くで観戦していたし、服装含めてもほぼ間違いないだろう。
たしかシャルロットの妹らしい子に負けた、なんとかって昔の王様の名前の――

「やあ、一人かい?」
突然の声にビクリと顔を向ける。たった今思い出した件の人物が、なんといきなり隣の席へと腰掛けてきた。
「な・・・・・・なんなんっすか」
「ははっ、さっきぼくを見つめただろう?」
「それを言うならアンタだって俺のこと見てたでしょ」
「そうさ、だから興味をそそった」

 才人の背筋がゾワゾワっと凍る。もしかして俺ってば今、貞操の危機?
「あ、あっちの女の子達はいいのかよ」
「大丈夫、どうせ今夜は深く遊ぶ気はない」
才人はちらりと女の子達の方を覗くと、こっちを見つめてヒソヒソと話し合っていた。
何故だかキャーキャーと黄色い声まで聞こえてくる。

「俺は一人で楽しみたいんだ、他所へ行ってくれませんか」
引きつったような中途半端な敬語で、お断り願う。
昼間の試合を思い出せば、あんな化物みたいな戦いをした人間に力ずくじゃ勝てっこない。
想像したくはないが、もしこの男がいわゆる"両刀"であったなら――何よりも関わらないのが一番である。

 と、男はいきなり耳元まで顔を近づける。遠く女子達の心底楽しそうな悲鳴。
ヤバイヤバイと脳内で回っていた時、男――ジュリオが耳元で囁いた一言で、全てが吹き飛んだ。

「君さ、"漂流者"だろう?」


「俺って、そっちから見ると未来の地球からの漂流者なの?」
才人は半ば頭の中で予想していた中途の驚きを、シャルロットにそのまま吐き出す。
「間違いないと思う。少なくともその銃はかなり新しい物で、私の知る漂流者とは話していることが全然違う」

「もしかしてその人がアメリカ人?」
話の流れから至った才人の問いに、シャルロットはただ神妙に頷いた。
発展途上国ならいざ知らず、日本以上の先進国――世界一の先進国だろうUSAでは・・・・・・。
才人は静かに銃を机に置いて嫌な考えをまとめようとすると、シャルロットが慮るように付け加える。

「でも安心していい。サイトが危惧しているようなことは・・・・・・大丈夫な筈」
「へっ・・・・・・?」
「漂流物の時代や出身はまちまちらしい。だから私の知る人が昔の人で、サイトが未来の人でもおかしくはない」
「えっと、じゃあ――」

「時間の流れというものが、一体どこを基準にしているのかはわからない。
 だからもしサイト達の元いた地球? という所に帰るとしてもあまり悲観的になる必要はない」

 シャルロットはその後に小さく「恐らく」と付け足す。
あっちとこっちで時の流れが違っていて、俺が帰ったら遠い未来。そんな浦島太郎さながらの状態は御免被る。
「そっ、そうだよな! そもそも空間? が違う場所にいるんだし、時間くらい――」

 SFなら余裕と才人は自分自身に言い聞かせる。ワープがあるんだから、タイムマシンくらい問題ないだろう。
「実際にこの世界へと漂流物がバラバラで漂着している以上、逆に向こうへもバラバラに行けると考えるべき」
シャルロットの希望的観測にすぎないが、才人は強引に納得する。
どうせもう既にハルケギニアにいるんだから、ジタバタしても仕方ない。
そんな割り切り方は、平賀才人という人間の楽天的な部分を如実に表していた。

「帰る方法は・・・・・・まだよくわかっていない、少なくとも私には。でもサイトも会ったんでしょ?  変な男に、変な場所で」
「えっ」
「えっ」
才人の疑問符に対して、シャルロットも揃ってポカンと見つめ合う。
レンズの奥にある薄青の水晶のような瞳。
「吸い込まれそうだな」などと、どうでもいいことを才人は心に浮かべた。

「扉が数え切れないほど並ぶ廊下に、眼鏡を掛けた無愛想な男がいて・・・・・・――」
「どういうこと?」
「いや私は聞いただけの話で、ハルケギニアに来る際に、その変な男と会ったって漂流者の人が・・・・・・」
「いやぁ知らない。俺は家に帰る途中で光る鏡があって、飛び込んだらもうこっちにいたよ?」
そう告げるとシャルロットは考えこむ。何かマズかったのだろうかと才人は内心不安になった。

「いえ・・・・・・でも、そもそも漂流者の話には諸説あるから、サイトのような場合もあるのかも。気にしなくていい」
「あぁ、うん。わかった」
才人は腑に落ちぬ感じで曖昧に首を縦に振った。

「とりあえず、サイトの世界のことを教えて。情報は多い方が色々と統合しやすい」
「オッケー、けどどこから話せばいいんだ?」
「どこでもいい。きっと全てが参考になる」
「そんなもん?」

「そんなもの。漂流者の知識とはそれほど貴重で・・・・・・重要なものだから」


(やばい・・・・・・)
ジュリオの耳打ち。シャルロットとの会話が強制的に思い出されながら才人は冷や汗をかく。
漂流者は保護される立場であると同時に、狙われる立場でもあると。
しかも俺の持ってる知識は、特に危険過ぎるかもとシャルロットは言っていた。

「は? 漂流者? 冗談だろ」
才人はなんとかそう絞り出した。声が震えなかったのは奇跡だったかも知れない。
「ふ~ん、そうかい。確かに流暢な言葉だ。失礼した、僕はジュリオ。ジュリオ・チェザーレ」
才人はほっと胸を撫で下ろす。普通の漂流者は言葉も通じないらしいのが逆に幸いした。

「あ、あぁ知ってる。試合を見てたからな。俺は・・・・・・サイトだ」
平賀才人と名乗ろうとも思ったが、テファやシャルロットにおかしな名前と言われたのでサイトと一言名乗ることにする。
名前だけならば、そこまで不審に思われることもないだろうと。

「あぁよろしく、サイト。まっ、試合はあっさり一回戦負けだったがね」
「いや十分凄ェと思うよ」
才人は素直に賞賛する。少なくとも己には到底出来ない芸当であることは確かだ。

「ありがとう。・・・・・・そうそう漂流者と言えば――」
まだ引っ張るのかと才人は緊張が解けないまま、ボロを出してはいけないとどこか身構える。

「――最後の試合の勝者がいただろう?」
「ん? あぁ・・・・・・」
確か"シャナオウ"だったか、なんだか日本人っぽく感じたが、東方ってとこからきたんだっけか。
ハルケギニアはなんだかヨーロッパっぽいし、日本みたいな文化が東にあっても不思議は感じない。
ただ何が「漂流者と言えば」なのか、話題の皮切りの意味がわからない。

「試合後に彼を探したけど、いつの間にかいなくなっててね」
「へー、そうか」
「そうなんだよ。ところでサイト、君はシャナオウ選手とどことなく似ているね」
「別にそんなことはねぇよ」

 やんわりと否定する才人にジュリオはグッと体を近付けると、周りに聞こえないように小さく告げる。

「その混じりっ気のない濃い黒髪と黒瞳は、ハルケギニアには存在しないんだよ」
才人はガタッと立ち上がって驚愕の色でジュリオを見据えるが、涼しい顔で「まぁ座れよ」と促される。

「ふむ、やはりその様子だと昔の漂流者の子孫ってわけでもないようだ」
「くっ・・・・・・」
「とはいえ、その服装も含めて、多様な漂流者の特徴をいちいち知っている人間は少ないがね」
才人はしてやられた感で一杯になる。せめて動揺を表に出さなければ押し通せたかも知れないのに。

「不思議なのが"機関"が把握してないことだ。明らかに漂流者であるにも拘わらず、完璧に言葉を話す。
 でもぼくに知らされてないってことは、"機関"も把握していない筈だ。ということは"札"も無しだろう?」
「わけわかんねえよ、お前は俺をどうしたいんだよ・・・・・・」

「あぁ、別にとって食おうってわけじゃない。だからそんな不安そうな顔をしないでくれ」
やれやれと肩を竦めるジュリオを見て、奥歯を噛み締めながら才人は席へと座り直す。
「まあさっき言ったことは別にいい。君の態度を見ていれば大体わかった。疑問は残るけど些細なことさ」

 ジュリオは一人で納得したかと思えば、改めて才人に語りかける。
「さて、大会でも紹介にあったように、ぼくはロマリアの神官だ。――実はロマリアは漂流物を密かに集めている。
 ただ漂流物や漂流者はそれ自体が異端ともされかねないもので、表立って動くのはなかなか難しくてね。
 だからこうして地道に勧誘もしているわけだ。そして相応の待遇を用意する準備は当然ある」

 一旦気持ちを落ち着けた才人は一言も漏らさずに考える。
ロマリアってのは確かこの世界で一番普及している宗教の総本山だったか。
日本で言うならバチカンとかそんな感じかと思いつつ、そこに保護されるというのがどういうことになるのだろうか。
――恐らく不自由はないんだろうとは思う。しかし才人はキッパリと言い切る。

「いらん世話だ」
「・・・・・・君の所属は?」
「どこだっていいだろ。それとも拉致でもする気か?」
相手の慇懃無礼な態度に、特に後ろ盾や備えすらもないのに喧嘩腰になってしまう。
ジュリオの飄々とした上から目線に対して、一転して感情が昂ぶってくる。

 ロマリアってのが実際にどの程度のものかはわからない。
それにシャルロットからも、望むならトリステインで面倒を見てくれるよう取り計らうと言ってくれた。
しかし俺は断った。少なくとも今は必要ない。
何よりテファとの生活を捨てるなんて・・・・・・一人の男子として勿体無くて出来ない!!
きっと俺がいなくなれば、テファも寂しいくらいは思ってくれる・・・・・・と思う。

「身柄を抑えるなんて乱暴で強引な手段はとらないさ。無理強いもしない。
 あくまて条件を提示し、利益を考えて貰った上での交渉に留まるよ」
「・・・・・・そうかよ」
才人が視線を前に戻した時、丁度料理が運ばれてきた。
もう話すことなどはないと言わんばかりに、才人はジュリオを無視して食事を始める。


 無下に扱われるジュリオは暫し才人を眺めつつ、何か考えに至って口を開いた。
「ぼくらロマリアは、元の世界に帰れる方法を知っている」
そのたった一言で才人の食事の手が止まる。
帰れる・・・・・・? 地球に? 日本に? 俺の家・・・・・・に?
ジュリオは才人の横顔に浮かんだ表情に手応えを感じ、返事を待たずに続ける。

「"興味"が出たらいつでも来てくれたまえ。ロマリアはいつでも君を迎え入れる準備があるからね。
 漂流者としてどこでも、寺院を訪ねてくれれば、ロマリア本国まで連絡が来ることになっている。
 漂流物の判断は本国において厳重に行うという名分だから、多少の不自由くらいは被るかも知れないが・・・・・・」

 漂流物を見つければ『補助』と言う名の資金が、その寺院へ支払われる。
長い年月が経過して、腐った体制も思わぬところで役に立ってくれている現状にジュリオは内心で苦笑した。
異端かも知れない。が、未来を迎える為には確実に必要な"力"なのだ。漂流物と漂流者というものは。

「"決心"がついたなら、いつでも利用してくれたまえ。それじゃまた、いずれ会おう」

 "興味"を"決心"と言い換えてジュリオは席を立ち元のテーブルへ戻ると、時を経ず店からさっさと出て行ってしまった。

 熱かった料理が冷め切ってしまうまで・・・・・・。
才人の頭の中では――ジュリオの言葉が――延々と回り続けていた。



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