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とある魔術の使い魔と主-35


「あの……これ、トウマさんにと思って!」
シエスタが顔を伏せながらも勢いよく、手に持っている包みを前に出す。

ここはあまり人が来ないヴェストリの広場。当麻達は無事魔法学院へと戻ったきたのだ。
と言っても、学院はいたって普通であった。戦争など無縁と言わんばかりの雰囲気を持っていて、帰ってきた当麻らを驚かせた。
ハルケギニアの貴族にとって、戦争は年中行事と言っていい程多々起きている。
なので、戦況が落ち着いた今は別に騒ぐ必要がないらしい。

そんな次の日、シエスタにこの広場のベンチに呼ばれた当麻は、こうしてプレゼントを貰う事になったのだ。
彼自身あまりそういったのを貰った事がないので嬉しい。嬉しいのだが……、
やはり別世界から来た人間としては、ちょっと後ろめたさが残る。
彼女が送る笑みは本当に自分なのだろうか? この世界の、どこか別のいる人間に向けられるものではないのだろうか?
しかし、思ったとしても今は仕方がない。せっかくシエスタが渡してくれたものを、断ってしまうのもどうかと思う。
当麻は素直な笑みを浮かべながら、包みをシエスタから貰う。

「これ、開いたらびっくり箱でしたーっていうオチはないですよね」
「もう! そんな事ないですー」

シエスタは、プクーと頬を膨らませてそっぽを向く。しかし、ちらりとこっちを見るのはやはりと言うべきなのだろうか。
当麻はそんなシエスタに、内心笑みを浮かべながらも包みを開いた。
ガサゴソっと、中に入っている物を取り上げて内容を確認する。
見ると、それはマフラーであった。しかも、見た感じなのだが、どうやらお手製の物のようだ。

「うお!? こりゃ凄いな!」

シエスタの事だからまさか……とは思ったが、本当に手作りのプレゼントをしてくれるという行為に対して、当麻も純粋に喜ぶ事ができた。
シエスタの表情が明るくなって、頬を朱に染め、恥ずかしがるように答えた。

「タルブ村での……せめてものお礼です。えと、ほら、竜に乗るとき寒いでしょ?」
「だなー、というか寒い日に全然使っても問題ないですよ」
雪みたいに、柔らかいイメージを与える真っ白なマフラー。シエスタのイメージがそのまま反映しているようだ。


今は初夏、どちらかというと温度は上がっている。しかし、高度二千メイルともなれば話は別だ。黒の学生服が体を温めるが、首周りは冷える。
なので、こういった防寒具は本当に色々と嬉しい。もっとも、普段飛行するのにはもっと低い位置で飛行するのだが、
そんな些細な事実は気にしない――もとい、わからない二人であったりする。

当麻は早速マフラーを拡げてみた。予想外に大きかったのか、一人両手を広げても長さが余ってしまう。
そんな中、真っ白なマフラーに、模様が施されているのに目に入った。
「えーと、なんて書いてあるだ?」
多分文字だと当麻は思うのだが、いかんせんなんて書かれているかはわからない。
シエスタはちょっと教える立場になったのが嬉しいのか、エヘヘと笑みを浮かべた。

「えーとですね。これはこっちの文字でトウマと書くんですよ」
へえ~、と感心しながらももう一度目をやる。なるほど、これが俺の名前なんだなー
「んじゃまあ早速着てもいいですかね?」
はい、と満面の笑みを浮かべてくれるので、遠慮なくそれを首に巻く。
と、気付く。どう考えてもこれは少し長いのでは?
後一人分の量が残っている。丁寧に作られているので考えにくいが、単純に間違えたのだろうか?

「シエスタ? これ、ちょっと長くないか?」
待ってましたと、言わんばかりな表情を浮かべたシエスタは、マフラーの片端を持つ。
「これはですねー。こうするんですよ~」
そう言って、自分の首にもマフラーを巻いた。なるほど、確かにこれならちょうどよい長さである。……ある?

「って二人用!?」
「はい。あ……もしかして迷惑……でしたか?」
しゅんとうなだれるシエスタに、当麻は慌てて両手を振った。
「いやいや、ちょっとびっくりしただけで全然問題ないですよー。ん、じゃあこの文字は……?」
当麻は気付く。シエスタに巻かれた方に、何やらもう一つ単語が縫ってある。大体は予想できるが……

「はい。わたしの文字も縫っちゃいました」
はにかんだような笑みをシエスタは浮かべる。いや、そしたらこれ二人で乗らなきゃ意味ないでしょーが! と突っ込みたくなった。
でも、と考える。二人用というのならば、倍手間がかかるのでは?
「あー、これ編むのそうとう苦労したんじゃ?」


そんなことないですよと、小さく笑うと視線を当麻から外した。

「トウマさんは私たちの命の恩人なんです……。それに、全然苦労しなかったですよ? むしろトウマさんが喜んでくれるかなーって思ったらあっという間に終わっちゃいました」
テヘッと笑うシエスタに、不覚にもドキッとしてしまった。ここまで何の意図もなく素直に言われると、逆にこっちが照れてしまう。
そんな照れを隠すかのように、当麻は話を進めた。

「あー、じゃあなんか代わりにお礼の品あげるよ。何がいい?」
へ? と、シエスタは当麻の言葉がわからずきょとんとした目になった。
「お礼……ですか?」
ああ、と頷く少年。凍り付いたシエスタの思考がゆっくりと溶かされていく。
しばらくの沈黙後、ボンッ! と爆発したかのように顔全体が真っ赤に変わった。慌てて否定の意を示すため、両手を左右に振る。
「そそそそんな! トトトトウマさんからプレッ、プレゼントをももも貰うなんて、だだだ大丈夫ですよ?」
「いや、やっぱり貰っただけはよくないだろ? なんか欲しいものはないのか?」
この少年もまた、素で言っている発言なのだから困ったりする。
シエスタは、う~~~~と困りながら視線が泳ぐ。言うべきか言わないべきか凄く悩んでいるようだ。
やがて、小さく小さく顔を俯かせて、ぽつりと呟いた。

「か、可愛いお洋服が、欲しいかな……」
「ん、洋服かー。オーケーじゃあ今度――――」
ガァン! と鈍い音が響いた。
キャッ、と小さい悲鳴をあげ、シエスタは思わず目をつむった。
辺り一帯沈黙が場を支配する。
少年から何も言葉が発せられない。どうしたんだろ、と思い恐る恐る目を開けると、
少年が倒れて気絶していた。

「トトトトウマさん!?」
驚きながらもシエスタは当麻を抱き抱えるが、意識が戻るのにはしばらく時間がかかるようであった。

「なによなによなによ! なに二人であんないい雰囲気を生み出してるのよ!」
プロ野球選手並のコントロールを用いて、ルイズは当麻の頭に石をぶつけたのであった。
ここは当麻達がいる場所から後方十五メイル程離れた地下。なぜ地下にいるかというと、ギーシュの使い魔であるヴェルダンデに穴を掘らせたからだ。
ルイズは自分の使い魔が気絶した事を確認すると、再び穴の中に隠れた。
「トウマさん!? トウマさん!?」と聞こえてくるが、気にしない事にする。
そして思い出す。あのマフラーの出来の良さを。
正直勝てないと、わかってはいるが、女の子として認めるわけにはいきたくない。

「なによ! わたしよりちょっと上手いからって調子に乗って!」
ポカポカと壁を叩くが、しばらくしてむなしい事に気付いたルイズは、結局愚痴を吐くしかない。
「そ、それにわたしよりむむむ胸があるからって生意気よ!」
そう言って気付く。自分はあのメイドと比べて何が勝っているのだろう?
確かに虚無という魔法が使えるが、それじゃあ当麻は振り向いてくれない。
二人がタルブの村で、誰にも話してはいけない会話を思い出すと、頬を染めた。
負けてはならない。負けてはならないのだ。
絶対にあのメイドだけには負けたくないと誓ったではないか、でも……
どうすればいいんだろ?

少女は、自力では解けない問題にただ、悩むしかなかった。



朝を迎えて、ワルドは目を覚ました。
太陽の日差しが心地よいのだが、彼自身の心は曇っていた。
それもそのはず、勝てる戦であったはずなのに敗れたのだ。一軍の兵士であるワルドでも事の重大さがわかる。
そして、とある少年に再び敗北してしまった事。
ギリッと奥歯を噛み締める。『閃光』という二つ名が廃る。あの少年の強さは一体どこから出て来るのだろうか?

「おや、起きたかね」
「土くれか」
ノックもせずにずかずかと部屋に入ってきたのは、ここまでを案内してくれたフーケである。
ワルドは怒りの感情を押さえ込み、平然とした態度に戻った。

ここはアルビオンにあるロンディニウム郊外の寺院。敗軍の将となった二人は、トリステインの者に捕まることなく、なんとか戻る事ができたのだ。
フーケは朝ごはん用のスープをワルドに手渡すと、壁に寄り掛かった。


「しっかしまあ、あの使い魔と主にまんまとやられたね」
フーケの言う通りであった。順調に進んでいた作戦に、イレギュラーが起こったのは彼らによるもの、それもたった二人の。
ワルドはイレギュラーである、あの小さな光り輝く太陽を思い出す。
あれは一体なんだったのだろうか?
あれがルイズの才能……、手に入れたいと願った才能なのか?
何もかもが謎に包まれて、ワルドは舌打ちをした。

「ほら、スープが冷めちまうよ」
せっかく持ってきたフーケの身としては飲んでほしい。考え事をしているワルドにそう促した。
ああ……、とワルドはあまり乗り気でなかったが、朝食を食べないわけにはいかない。
少し間を置いた後、手と口を動かし始めた。

「しかし……こちらの野望が初手から躓いたのだから、閣下はどうするおつもりなんだ?」
確実とも言える勝利を覆す力を、トリステインは何らかの形で手に入れたのだ。これから戦う際にも、重要視しなければならない問題である。
すると、フーケは何かを思い出したかのように、あっ、と呟いた。
スプーンを動かす手を止め、ワルドは視線を向けた。

「そういえばさっきクロムウェルの使者が来てね、どうやらアンリエッタ王女を狙うことになったらしいよ」
フーケはさらに続ける。
「んで、どうやらその役目にウェールズが抜擢されたらしいね。死んだ恋人を餌に残された恋人を釣り上げるなんてどうかと思うけどね……っておい」
ワルドは既に立ち上がっていた。スープを直接一気に飲み干して、いつでも出発できると言わんばかりの状態である。

「どうする気だい?」
「じっとしていられんタチでね。死人なんぞに仕事をとられたままってのは許せないんだ」
不敵な笑みを浮かべて、彼は部屋を出た。呆然と見ていたフーケははっとなり、慌てて後を追いかけた。


甲高い口笛が耳に入る。見ると、ワルドは既に寺院を出てグリフォンに跨ごうとしている。

「待ちな!」
「止めようとしたって無駄だぞ。俺は――」
「全く……誰が止めると言った?」
これだから男は自分勝手なのよね、と文句を言いながらワルドの目の前へと歩み寄る。

「あんたは弱い男なんだ。一人で立ち向かおうとするな」
そう言うと、にっこり笑いワルドを抱きしめた。
我ながら積極的だね……と、内心苦笑する。
「あんたは一人じゃないんだ。あんたが抱えたものがなんなのかはわからんけど、一緒に立ち向かうことぐらいしてやるよ」
それから、ワルドの唇に、自分の唇を重ねた。これからずっと戦うと、約束するかのように。

キスは一瞬で終わった。どちらも顔を赤める事なく平然としている。

「後悔してもしらんぞ」
「あんたのそういうとこ、嫌いじゃないよ」
二人は出発する。再び、トリステインへと向かう為に。


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