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第九話「泥まみれ少年ひとり」


ウルトラマンゼロの使い魔
第九話「泥まみれ少年ひとり」
凶獣ルガノーガー 
カプセル怪獣ミクラス 登場



 魔法学院を訪れたアンリエッタ王女から、内乱の続くアルビオンから彼女がウェールズ皇太子にしたためた、
ゲルマニアとの軍事同盟に破局をもたらす危険な手紙の回収を命じられたルイズと才人。盗み聞きをしていたギーシュと、
アンリエッタの遣わしたグリフォン隊隊長でルイズの婚約者であるワルドも加えた四人でアルビオンに向け
旅立つこととなったが、ルイズは久しぶりに会うワルドに戸惑い、才人はそんな彼女の様子に不機嫌さを隠せない。
だが二人の思いを置いて、事態は突然急展開を見せる。港町ラ・ロシェールを目指す道の途中で、空から
凶獣ルガノーガーが一行の前に立ちふさがったのだ! ルガノーガーのおぞましき牙が、ルイズたちに襲いかかる!

「アオ――――――――ウ!」
「ワルド! 怪獣よ! こんな時に、よりによって私たちの目の前に出てくるなんて!」
「まずいな……私だけでは、到底太刀打ちできない」
 前兆もあったものではないルガノーガーの出現に、魔法衛士隊の歴戦の戦士のワルドも冷や汗を垂れ流した。
彼がそうなのだから、地上のギーシュは哀れなくらい恐慌状態にあった。
「き、きみ! 大変だ! 大変だよッ! 危険な任務だとは分かってたが、怪獣が立ちはだかるなんて聞いてないよ!? 
あわわわ、早く逃げないと! しかしラ・ロシェールは怪獣の向こう……いやしかし、命を拾えなかったら
そもそも任務はぁ!?」
「落ち着けよッ!」
 あまりに取り乱すギーシュに、才人は思わず一喝した。すぐにゼロに変身して立ち向かいたいところだが、
隣のギーシュの目がある。いきなりいなくなっては、彼に怪しまれるに違いない。
「ゼロ、ここは……」
『ああ。カプセル怪獣の出番だな』
 ゼロの許可が下りたので、才人はギーシュに気づかれないように銀色の小箱から青いカプセルを取り出し、
素早く投げ飛ばした。
 するとカプセルから、ウインダムと同じカプセル怪獣が現れて大地に立つ。バッファローのような角を持つ
怪力自慢、ミクラスだ!
「グアアアアアアアア!」
「むッ!? もう一匹の怪獣が!」
 ワルドが身構えるが、ルイズは出現のし方から、ミクラスがカプセル怪獣であることを察した。
果たしてミクラスは、ルガノーガーへと突進してルイズたちを攻撃しないように食い止め出す。
 ミクラスのお陰で幾分か落ち着いたルイズがワルドに提案する。
「ワルド、一旦地上へ、サイトたちの下へ降りましょう」
「うむ、そうだね。怪獣相手に単騎で飛んでいては、逆に危険だ」
 ワルドはすぐに従い、騒いでいるグリフォンを落ち着かせると、地上へと降下させた。そして才人とギーシュに向かって告げる。
「怪獣たちが戦っているのに乗じて、林に身を隠しながら先に進もう。馬もちゃんと連れてこいよ」
 その言葉の通りに、四人は林の間に身を投じた。

 ルガノーガーを差し向け、ルイズたちのことを観察している一団は、ミクラスがルガノーガーに
挑むところもしっかり見ていた。すると丸い頭の影が命ずる。
『そんな怪獣など、お呼びではないのだ。ルガノーガー、さっさと始末してしまえ!』

「アオ――――――――ウ!」
「グアアアアアアアア!」
 ルガノーガーは左腕の首で自分を押さえつけているミクラスの腕に噛みついた。激痛を感じた
ミクラスがひるんでいると、右腕の首に脚を噛みつかれる。
「グアアアアアアアア!」
「アオ――――――――ウ!」
 ミクラスはそのまま持ち上げられ、放り投げられた。横に倒れたミクラスが地面に叩きつけられると、
それにより発生した震動でルイズたちは足を取られる。
「きゃあッ!」
「ルイズ! 大丈夫かい?」
 よろけるルイズをすかさずワルドが支えた。
「え、ええ。ごめんなさい……」
「気にすることはない。婚約者を助けない男はいないのだからね」
 こんな時にも甘い台詞を吐くワルドを、才人がじとっとにらんだ。
「アオ――――――――ウ!」
 一方で、ルガノーガーは三つの口から青白い熱線を吐き、倒れたままのミクラスを攻撃した。
「グアアアアアアアア!」
 三条の光線の威力はすさまじく、タフネスが売りのはずのミクラスをたちまち瀕死の状態にまで追い込んだ。
「! 戻れミクラスッ!」
 それに気づいた才人がすぐにミクラスをカプセルに戻した。
 ミクラスをあっさりと破ったルガノーガーは、ルイズたちの方へ振り返る。彼女たちは、
ルガノーガーからほとんど離れていない。
「うわぁー! こっちを見たぁッ!」
「アオ――――――――ウ!」
 そしてルガノーガーの両肩の赤い角から、赤い稲妻がほとばしってルイズたちを林の木々ごと吹き飛ばす!
「きゃあああああああああああッ!」
 大規模な爆発で四人が散り散りに吹き飛ばされる中、才人はこの混乱に乗じてウルトラゼロアイを装着した。
「デュワッ!」
 瞬時にウルトラマンゼロの巨体が大地に立ち、ルガノーガーの前に立ちはだかった!

「きゃあああああああッ!」
 爆風で吹き飛ばされたルイズだが、地面に叩きつけられる前に、ワルドが『レビテーション』を掛けて救った。
助けられたルイズは、ゼロの姿を目にすると、ワルドに尋ねかける。
「ギーシュはどうなったの!? ……後、サイトも!」
 怪しまれないように、才人も居所を知っていながら聞いておく。
「分からない。君を助けるだけで精一杯だったから……」
「そんな……!」
 さすがにギーシュの身を案じていると、いきなり場違いな女性の声がした。
「ギーシュ、しっかりしなさいよ。『フライ』くらい使いなさいな」
「め、面目ない。あまりにも恐ろしい目に遭ったから、気が動転してね……」
 ゆっくりと宙に降ろされたギーシュが言い訳している相手は、何とシルフィードに乗ったキュルケだった。
もちろんタバサも一緒だ。いるはずのない二人の姿に、ルイズは思い切り面食らった。
「キュルケ!? あんた、何でここにいるのよ!?」
「はぁいルイズ。実は朝がた、窓からあんたたちが出かけようとしてるのを見て、タバサを叩き起こして
後をつけてきたのよ。そしたらいきなり怪獣が出てきて、ギーシュが危なかったから助けてあげたの。
感謝しなさい、ギーシュ」
 短く説明したキュルケは、ルイズ、そしてワルドに目配せをした。
「あなたと、おひげが素敵な殿方と……ダーリン、サイトはどうしちゃったの? タバサ、あなた知ってる?」
「知らない」
 二人がいるはずのない才人を捜して辺りを見回すので、ルイズがすぐにごまかす。
「サイトは遠くに飛ばされちゃったみたいだけど、多分大丈夫だわ。あれでかなり頑丈だし」
「そうよね。何だかんだでいつも、ひょっこり帰ってくるものね」
「彼はこのぼくに勝利したんだ。自分の身くらい自分で守る力があって当然だろう」
「それは関係ないと思うけど」
 才人を捜すのをやめさせると、五人でゼロとルガノーガーの戦いの巻き添えを食わないように
急いでその場から退避していった。

 ゼロは宇宙空手の構えを取ったまま、ルガノーガーと対峙している。
『ミクラスを簡単に倒すとは、かなり手強い怪獣のようだな。だが、負けるつもりはねぇぜ!』
 唇を親指でぬぐっていると、ルガノーガーが再び熱線を放射して攻撃してきた。
「アオ――――――――ウ!」
 それを飛びすさってかわしたゼロは、着地と同時にワイドゼロショットを発射する。
「セアッ!」
 光線はルガノーガーの真正面に直撃したが、その胸部には少しも吸い込まれていかず、
四方八方へ弾かれて霧散した。
『何ッ!』
 ルガノーガーの胸部の装甲は反射板のような構造になっており、光線を弾く仕組みになっているのである。
そして優れているのは防御だけではない。三つの口からは強力な熱線を吐き、肩の角からは赤い稲妻を放つなど、
全身に武器が存在するのだ。野生の怪獣とは思えないほどの能力の高さに、ルガノーガーは何者かが作り出した
怪獣だと言われることがある。
「アオ――――――――ウ!」
 再度ルガノーガーの攻撃する番となる。肩の角から赤い稲妻を走らせる。その攻撃はゼロだけを狙っておらず、
辺り一面へ見境なく飛んでいく。もちろんルイズたちの方にも、だ。
『させるかッ!』
 するとゼロは広大な面積の光のバリアー、ウルトラゼロディフェンサーを張り、自分のみならず
ルイズたちのことも稲妻から守った。稲妻がやんだところで、すかさずゼロスラッガーを飛ばす。
「ジュワッ!」
 ゼロスラッガーは見事角を切り落とした。これで厄介な稲妻攻撃はもう使えない。
「アオ――――――――ウ!」
『へッ! 来やがれ!』
 怒り狂ったルガノーガーが三つの口にズラリと生えた牙を剥き出しにしながら、ゼロへ走っていく。
ゼロはそれを素手で迎え撃ち、肉弾戦での勝負となる。
「ドリャアッ!」
「アオ――――――――ウ!」
 ルガノーガーの両手の牙を払いのけ、横拳を入れるゼロ。ルガノーガーは恐竜型らしく接近戦でも強い怪獣だが、
ゼロだってレオから授かった宇宙空手をマスターしている。力はあっても技のないルガノーガーの攻撃をさばくことは
簡単なことだった。
『おらおらおらぁッ!』
 強烈なパンチを連続で叩き込んでどんどん押していく。だがその時、先端が針のように鋭くなっている
ルガノーガーの尻尾が持ち上がり、素早くゼロの肩に突き刺さった!
『うぐッ!?』
「アオ――――――――ウ!」
 ただ刺さっただけではない。尻尾からゼロのエネルギーが吸い取られていく! すぐにカラータイマーが
点滅を始め、ゼロは片膝をついた。
「グッ……セアァッ!」
 しかしすぐにゼロスラッガーを片手に持ち、尻尾を切断してどうにか難を逃れた。一旦距離を取るも、
消耗したエネルギーは回復しない。
『ゼ、ゼロ! 大丈夫か!? 戦えるのか!?』
 才人が焦って聞いてくると、ゼロは息を切らしながらもうなずく。
『当たり前だぜ! ……って言っても、これだけエネルギーを失ったら、強力な光線技を撃つのは難しいな……』
『それってまずいんじゃないのか!? あの怪獣はまだまだ余力あるのに!』
『心配するなって! 光線技が使えないのなら、武器を使うまでだ!』
 とゼロが言うと、ウルティメイトブレスレットのランプ部分が強く光り、そこから赤と青に彩られた石突の槍が現れた!
『うおッ!? こんなすげぇの持ってたのか!』
『ウルトラゼロランスだ! 見てろよぉーッ! ぜりゃあああッ!』
 ゼロはすぐにそのウルトラゼロランスを、力一杯に投擲する。すると槍はルガノーガーの胸部に命中し、
反射板となっている装甲を易々と貫通した!
「アオ――――――――ウ……!」
 大ダメージを受けたルガノーガーはたちまち活力を失い、ダラリと腕を垂らした。だがまだ息はある。
『すっげぇ威力ッ!』
『へへッ! そしてこいつで、フィニッシュだぁーッ!』
 ゼロはとどめとして、ゼロスラッガーを空中に固定すると、ふた振りとも回し蹴りで勢いをつけて飛ばした! 
父親ウルトラセブンの大技、ウルトラノック戦法を応用した、ウルトラキック戦法である。
 いつもよりも更に速く宙を切り裂いていったゼロスラッガーはルガノーガーの胴体を突き抜け、
仰向けに倒れさせると、その身体が大爆発を起こした。
「ジュワッ!」
 ルガノーガーに勝利したゼロは、いつものように大空へと飛んでいった。

 戦いをながめていたキュルケは、ゼロの勝利に感嘆してため息を吐いた。
「相変わらずすごい強さねぇ、ウルトラマンゼロ。あんなに恐ろしい怪獣まで、あっさりやっつけちゃうんだもん。
武器まで使うなんて、むしろずるいくらいだわ」
「色んなことが出来る……」
 タバサも感心してつぶやいた直後に、林の中から才人がひょっこり顔を出した。
「おッ、いたいた! 何でキュルケとタバサまでいるんだ?」
「あーん、ダーリン、どこ行ってたのよぉ! いっつも心配ばっかりさせるんだからぁ!」
「キュルケ! すぐ引っ付こうとするんじゃないわよ! サイトは私の使い魔なの!」
 才人がキュルケたちのいる理由を説明されてから、ラ・ロシェールへの移動を再開しようとするのだが、
ここでギーシュが渋面を作った。
「怪獣が倒されたのはいいんだが、困ったことが起きたよ。さっき吹っ飛ばされたせいで、
馬がダメになってしまったんだ。次の駅はまだ遠いのに、ぼくとサイトの足がなくなってしまったよ」
「あら、そんなこと、何も問題ないわ。シルフィードがいるじゃない。シルフィードなら
グリフォンと並走も出来るし。ねッ、タバサ、いいわよね?」
「構わない」
 キュルケの提案とタバサの許可により、才人とギーシュはここからシルフィードで向かうこととなった。
「ルイズ、タバサと連れてきた私にちゃんと感謝しなさいよね」
「何でわたし限定なのよ!」
 相変わらずキュルケにからかわれるルイズの背後で、シルフィードを一瞥したワルドが小さく、
憎々しげに舌打ちした。

 ……ルガノーガーはゼロの手によって撃破されたが、この戦いはルガノーガーを差し向けた者たちに
一部始終を監視され、同時にゼロの能力が分析されていた。
『ウルトラマンゼロ、予想以上の強さだ。まさかルガノーガーまで圧倒するとは……』
『しかも奴はこのハルケギニアで、まだ能力の全てを見せていない。他にも隠された力があるはずだ。
奴が浮遊大陸に来る前に、それを出し切らせなければ……』
 角張った頭の影と丸い頭の影が話し合うと、それを受けて、細身の影が腕を上げた。
『ではもう一体、怪獣をぶつけるとしよう。次の襲撃場所は、空だ!』

 ルガノーガーの襲撃後は、ルイズたち一行はすんなりとラ・ロシェールに到着した。
入り口で怪しい男たちがこちらに矢を飛ばしてきたりもしたが、空を飛んでいるこちら側の敵ではなかった。
ひっ捕らえた男たちは自らを物取りだと主張し、特に問題もないようだったので放置することにした。
 しかし到着してから一つ問題が発生した。アルビオンに向かう船は、トリステインとアルビオンが
最も近づく明後日の朝、ハルケギニアの二つの月が重なる『スヴェル』の月夜の翌日にならないと出航しないという。
しかしこればかりはどうしようもないので、ラ・ロシェールの宿で二泊を過ごすことが決定された。
 そしてひと晩過ごした後の、宿のギーシュとの相部屋で、才人は物思いに耽っていた。
そこに、鞘から少しだけ刀身を出したデルフリンガーが尋ねかけてくる。
「どうした相棒。悩み事かい?」
「別に、何でもねえよ」
「そうかあ? そんな風にゃ見えねえけどね」
 デルフリンガーの言う通り、才人はワルドのことを、もっと言えばワルドと比べた自分のことを考え込んでいた。
 ワルドがルイズに親しそうに接しているところを目にする度に、どうも不快な気分になる。
ルイズにベタベタするな、と言いたくなる。だが、向こうは仮にもルイズの婚約者で、自分は使い魔。
立場的にもそんなことは言えないし、仮に言ったところで、自分がワルドに勝っている部分など一つもない。
 今の才人はウルトラマンゼロ。だがそうなったのは単なる偶然で、ゼロの力は断じて才人のものではない。
ゼロがどれだけ強くても、八面六臂の活躍をしても、それは才人自身の評価には何ら影響されないのだ。
才人個人は、異世界に放り出されたただの人。何の因果か『ガンダールヴ』という伝説の使い魔の力を手にしたが、
それはおおっぴらには宣伝できない。れっきとした軍人で貴族のワルドに、身分で敵うはずがなかった。
 自分をワルドと比較して気を落としていると、扉がノックされた。ギーシュはまだ隣のベッドで
グースカ寝ているので、しかたなく才人がドアを開けた。
 そこに立っていたのは、ワルドその人であった。
「おはよう。使い魔くん」
「おはようございます。でも、出発は明日の朝でしょ? こんな朝早くにどうしたんですか」
 自分を悩ませる相手が実際に目の前に現れたことで、より気分を害した才人がとげとげしく聞くと、
ワルドは反対ににっこり笑った。
「きみは伝説の使い魔『ガンダールヴ』なんだろう?」
「え?」
 いきなりそのことを言い当てられ、才人はきょとんとした。するとワルドは、なぜか誤魔化すように、
首をかしげて言った。
「……その、あれだ。フーケの一件で、僕はきみに興味を抱いたのだ。さきほどルイズに聞いたが、
きみは異世界からやってきたそうじゃないか。おまけに伝説の使い魔『ガンダールヴ』だそうだね」
「はぁ」
「僕は歴史と、兵に興味があってね。あの『土くれ』を捕まえた『ガンダールヴ』の腕がどのぐらいのものだか、
知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」
「手合わせってつまり、殴りっこ?」
「そのとおり」
 ワルドの挑戦に、才人は闘志を燃やした。ワルドはギーシュなんかよりもずっと強いようだが、
こっちだって『ガンダールヴ』の力がある。勝負にならない、なんてことはないはずだ。
『ガンダールヴ』の腕の冴えをルイズの婚約者に見せつけてやる、と才人は思った。
「どこでやるんですか?」
「この宿は昔、アルビオンからの侵攻に備えるための砦だったんだよ。中庭に練兵場があるんだ」

 そして才人とワルドは、今はただの物置き場になっている練兵場に足を運んだ。
 才人がデルフリンガーを引き抜いて戦闘態勢に入るが、それをワルドは左手で制した。
「どうした?」
「立ち会いには、それなりの作法というものがある。介添え人がいなくてはね」
「介添え人?」
「安心したまえ。もう、呼んである」
 ワルドがそう言うと、物陰からルイズが現れた。ルイズは二人を見ると、はっとした顔になった。
「ワルド、来いって言うから来てみれば、何をする気なの?」
「彼の実力を、ちょっと試したくなってね」
「もう、そんなバカなことやめて。今は、そんなことしているときじゃないでしょう?」
「そうだね。でも、貴族というヤツはやっかいでね。強いか弱いか、それが気になるともう、
どうにもならなくなるのさ」
 ワルドの説得が無理なようなので、ルイズは才人を見た。
「やめなさい。これは、命令よ?」
 しかし才人は答えない。ただ、ワルドを見つめた。
「では、介添え人も来たことだし、始めるか」
 ルイズの思いをよそに、決闘が始まる。ワルドは剣のような拵えの杖を引き抜き、前方に突き出した。
 そして才人とワルドが激突する。だがその戦いは、当初の才人の予想とは裏腹に、終始ワルドが優勢だった。
才人の剣戟は、ワルドに容易くいなされていた。
「きみは確かに素早い。ただの平民とは思えない。さすがは伝説の使い魔だ」
 ワルドには戦いながらしゃべる余裕まであった。才人の突きをかわしたところで、後頭部に杖の一撃を叩き込む。
「しかし、隙だらけだ。速いだけで、動きは素人だ。それでは本物のメイジには勝てない。
つまり、きみではルイズを守れない」
 ワルドの突きが才人に襲い来る。才人はやっとの思いで突きを受け流していくが、それが一定のリズムと
動きを持っていることに気づくのはあまりに遅かった。
「相棒! いけねえ! 魔法がくるぜ!」
 デルフリンガーが叫んだときには、空気のハンマーが才人を吹き飛ばした。才人は積み上げた樽に激突し、
その拍子にデルフリンガーを落とした。拾おうとするが、ワルドに踏みつけられ、杖を突きつけられた。
「勝負あり、だ」
 勝敗が決し、ルイズがおそるおそる近づいてくる。
「わかったろうルイズ。彼ではきみを守れない」
「……だって、だってあなたはあの魔法衛士隊の隊長じゃない! 陛下を守る護衛隊。強くて当たり前じゃないの!」
「そうだよ。でも、アルビオンに行っても敵を選ぶつもりかい? 強力な敵に囲まれたとき、
きみはこう言うつもりかい? わたしたちは弱いです。だから、杖を収めてくださいって」
 反論したルイズだが、ワルドの指摘に何も言えなくなった。せめて才人の額から流れる血をぬぐおうと
ハンカチを取り出すが、それもワルドに止められる。
「行こう、ルイズ」
「でも……」
「とりあえず、一人にしといてやろう」
 ルイズは躊躇ったが、ワルドに引っ張られて去っていった。
 残された才人は、地面に膝をついたまま、じっと動かない。ルイズの前で負けたことが、
才人を激しく落ち込ませていた。
「気にすんな相棒。あいつは相当の使い手だよ。スクウェアクラスかもしらんね。負けても恥じゃねえ」
 デルフリンガーが慰めるが、才人はそれでもしゃべらなかった。
「惚れてる女の前で負けたのは、そりゃあ悔しいだろうけど、あんまり落ち込むなよ。俺まで悲しくなるじゃねえか。
ところで相棒、さっきの戦いの中で、また何か思い出しそうになったんだが……うーん、なんだっけかな……。
なにせ、随分大昔のことだからな……」
 話し続けるデルフリンガーを、才人は問答無用で鞘に納めた。
 ウルトラマンゼロは無敵の戦士。どんな敵にも負けたことがない。それに対し、自分は一端の人間にも勝てない。
その事実が、泥だらけの才人をよりみじめな思いにさせた。


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