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第七話「王女の来訪」


ウルトラマンゼロの使い魔
第七話「王女の来訪」
銀河皇帝カイザーベリアル
帝国猟兵ダークロプス
暗黒参謀ダークゴーネ
暴れん坊怪獣ベキラ 登場



 ルイズは自分のベッドの上で、夢を見ていた。舞台は生まれ故郷のラ・ヴァリエールの領地にある屋敷。
幼い頃のルイズはしばしば、デキのいい姉たちと自分を比べて叱責する母から逃げるために、
あまり人の寄りつかない中庭の池に身を隠していた。
 その日も小船の中に忍び込み、用意してあった毛布に潜り込んでしくしく泣いていると、
中庭の島にかかる霧の中から、一人のマントを羽織った立派な貴族が現れた。
「泣いているのかい? ルイズ」
 尋ねてきた貴族の顔は羽根つき帽子に隠れて見えないが、ルイズは彼が誰だかすぐにわかった。
子爵だ。最近近所の領地を相続した、年上の憧れの貴族。そして、父と彼との間で交わされた約束……。
「子爵さま、いらしてたの?」
「今日はきみのお父上に呼ばれたのさ。あのお話のことでね」
「まあ!」
 ルイズは子爵の言葉で頬を染めて、俯いた。
「いけない人ですわ。子爵さまは……」
「ルイズ。ぼくの小さなルイズ。きみはぼくのことが嫌いかい?」
 子爵がおどけた調子で聞くと、ルイズは首を振った。
「いえ、そんなことはありませんわ。でも……。わたし、まだ小さいし、よくわかりませんわ」
 子爵はにっこりと笑って、手をそっと差し伸べてくる。
「ミ・レィディ。手を貸してあげよう。ほら、つかまって。もうじき晩餐会が始まるよ」
「でも……」
「また怒られたんだね? 安心しなさい。ぼくからお父上にとりなしてあげよう」
 ルイズは頷いて、立ち上がり、大きな憧れの手を握ろうとした。
 そのとき、風が吹いて貴族の帽子が飛んだ。
「あ」
 現れた顔を見て、ルイズは当惑の声を上げた。同時に、姿も現在のものに変わる。
 帽子の下から現れた顔は、憧れの子爵などではなく、使い魔の才人であった。
『デュワッ!』
 その背後には、天高くそびえる青と銀の巨人、ウルトラマンゼロがこちらを見下ろしている……。

 そして気がつけば、ルイズはラ・ヴァリエールの屋敷とは全く異なる、見知らぬ場所に立っていた。
「えッ!? ここどこ!?」
 そこは、両脇に多数のモニターが宙に浮いている、無機質な金属で出来上がった部屋。
奥の一面がガラス張りになっている窓からは、先日ゼロに宇宙へ連れていった時に見下ろした、
ハルケギニアと似た惑星が見える。だがその星は、信じられないことだが、鉤爪の生えた
手のようなものに掴まれている。あの手は、一体どれほどの大きさなのか。
 大きさといえば、今いる部屋もルイズと比較して異常に大きい。魔法学院や王宮のホールの何十倍もある。
そしてルイズはその部屋の中央に置かれた、半球形の透明な円蓋の中に閉じ込められているのだ。
非常に狭苦しく、部屋との対比もあって、籠の中の鳥になった気分である。
「ここは!?」
 捕まっているのは自分だけではなかった。気づけば、すぐ横に白い見慣れぬ装束を纏った青年がいて、
自分と同じように外の光景に驚いていた。
 青年の顔は見たことのないものだったが、ルイズは何となく、直感でそれが誰なのかを理解した。
「……ゼロ……?」
 その青年は、どう見ても才人ではないが、中にいるのはウルトラマンゼロだ。それがルイズには分かった。
「ねぇ、あなた、ウルトラマンゼロよね? ここはどこなの?」
「ナオ……エメラナ……」
 尋ねるルイズだが、青年はルイズに視線も寄越さなかった。いや、気づいてすらいない。
きっと向こうからこちらは見えていないのだ。
 よく考えれば、これは夢で、到底現実とは思えないような光景が広がっているのに、妙なリアリティがある。
恐らく、これは自分の夢ではなく……。
『やっと会えたな……』
 その時、窓の反対側にある階段の上から、玉座に腰掛ける者が青年に呼びかけてきた。
『ダークロプスを送り込んだ甲斐があったぜ……』
 毒々しい赤色のマントを羽織った巨人の姿をひと目見たルイズが、目を見張った。
「え……!? ウルトラマン……!?」
 その漆黒の巨人の顔つきの特徴と、胸部にあるカラータイマーは、彼がウルトラマンであることを示していた。
だがルイズは、漆黒の巨人がウルトラマンであるとは一概に信じられなかった。巨人は、ぶっきらぼうながらも
温かい雰囲気のゼロとは正反対の、背筋が凍えるほど冷たく邪悪なオーラを纏っていたからだ。
『疼く……疼くぜ、この傷が……!』
 巨人は顔面の右半分、目頭から顎に掛けて走る大きな傷跡を撫でた。その巨人の名を、青年が口にする。
「ベリアル……!」
「ベリアル……」
『フフフフ……』
 ルイズが復唱している間に、巨人ベリアルが玉座から一気にルイズたちの前へと降り立ってきた。
『見ろ……これはお前につけられた傷だ……! ウルトラマンゼロッ!』
 傷を見せつけたベリアルに、青年=ゼロが叫ぶ。
「俺と戦え!」
 すると、ベリアルはゼロをこれでもかとばかりに嘲笑した。
『何言ってやがる! そんな虫けらみてぇにちっぽけになっちまって。もうエネルギーがないんだろう?』
 ベリアルは、今のルイズと同等の肉体のゼロを、限りなく見下していた。その態度は、
どんな命も大切なものだと説いたゼロとは真逆だった。
『こいつが欲しいか』
 と言ったベリアルの爪先には、ウルトラゼロアイがあった。
「ウルトラゼロアイ! こいつ! それを返しなさい! それはゼロのものよ!」
 思わず叫ぶルイズだったが、その声は誰にも届かない。当然だろう。これはきっと、過去に起きた出来事なのだ。
『お前はそこで見物していろ』
「何をする気だ!」
 ベリアルが壁際に浮かぶモニターの一群を指す。それらは、奇怪な形の宇宙船団が緑色の光に包み込まれ、
どこかへ高速で飛ばされているところを映していた。
『今のでちょうど百万体目だ。光の国をぶっ潰してやるぜ!』
 別のモニターは、その宇宙船に、ゼロに酷似しているが色合いと単眼という点が異なる巨人たちが
入れられるところを表示していた。
「な……何あれ……? もしかして、あのゼロみたいなのが、百万も……!?」
「やめろテメェ!」
『フッフッフッフッ……挨拶状はとっくに送ってやったぜ』
 そしてまた違うモニターは、前にゼロの見せたビジョンにあった彼の故郷、光の国に、
ベリアルの数え切れないほどの宇宙船団が迫る場面をルイズたちに見せていた。
「あっちには親父がいる! 仲間もいる! お前の軍隊なんかに負けはしない!」
 ゼロは懸命に言い放つが、ベリアルは更に彼を見下す。
『どんだけダークロプス軍団を造ったと思ってる! これからが見物だぜ!』
 既に光の国には大軍団が押し寄せているのだが、宇宙船とダークロプスは今も送り込まれ続けられていた。
『いくらウルトラ戦士でも、この数は無理だなぁ』
 モニターの中で、光の国から飛び立ってきたウルトラ戦士たちがダークロプス軍団と宇宙船団に立ち向かうが、
圧倒的に勢力が足りていない。彼らは四方からの宇宙船団の攻撃に晒される。
「ひどい……!」
「やめろぉー!! おいッ!!」
 ゼロは必死で円蓋を叩くが、今の彼の力では、それを破ることも出来なかった。
『もうお前には何もない。絶望の恐怖を、味わうがいい……!』
「ベリアル、テメェ……!」
 嘲笑うベリアルに、ゼロは怒りを露わにする。その彼の心情をおもんばかり、ルイズは胸を痛めた。
『カイザーベリアル陛下』
 その時、ベリアルの背後に控えていた四つ目の巨大怪人が呼びかけた。その怪人も、
ベリアルと同質の禍々しい空気を纏っている。
『あぁ?』
『あれを』
 怪人がモニターの一つを指し示すと、そこには、移動の用意をしている宇宙船団に攻撃を加える、
鳥のような形状の紅白の宇宙船の姿が映っていた。
「ジャンバード! みんな無事だったのか!」
 ゼロの言葉で、その宇宙船がゼロの味方であり、仲間であることをルイズは知った。
『我々の侵略部隊を邪魔しております』
『ふんッ。撃ち落とせ!』
『はッ!』
 怪人にベリアルが命令を下すと、ゼロはモニターの中の仲間へ向けて叫ぶ。
「逃げろ! 逃げるんだ! バラージの盾はまだ見つかってないんだぞ!」
 その時、仲間からゼロへの呼びかけが来た。
『兄貴! 聞こえる!? ベリアルの思い通りにはさせないよ! 今助けるからね!』
『ゼロ! 気をしっかり! 必ず助けますから!』
「ナオ……エメラナ……」
 少年と女性の声を聞いたゼロの瞳から、感涙がこぼれ落ちる。
「あれが……ゼロの仲間……」
 ルイズがつぶやいた、その時、落涙から強い輝きが発せられて、円蓋が突然砕け散った!
「え!? 何が起きたの!?」
 驚いていると、閃光は十字型の紋様に変化し、そこから緑と銀の腕が飛び出てきた!
『随分探しましたよ……』
 紅白の宇宙船が窓を突き破って部屋に乱入したと同時に、優しい声がしたところで、その夢は途切れた……。

 帝政ゲルマニア。それはトリステインの北東に位置する、キュルケの祖国。ゲルマニアは
他のトリステイン、ロマリア、ガリア、アルビオンと異なり、政治を司る首長の血統が
始祖ブリミルの系譜ではなく、そのこともあってか他国とは社会制度や気風が大きく異なる。
形式よりも実質を優先し、メイジでない者でも財力と実力次第で貴族に成り上がれる。
これらのことから他国はゲルマニアを「野蛮」と侮蔑するが、その姿勢がゲルマニアを
トリステインの10倍以上の面積を持つ大国へ成長させたのは紛れもない事実である。
 またゲルマニアは、ハルケギニアで最も工業が盛んである。魔法の技術はガリアに及ばないが、
平民でも扱える銃や大砲などの火器の開発力は他国を大きく突き放しているので、
軍事力の観点ならガリアと肩を並べる。ゲルマニアもトリステインと同じように
何度か怪獣が出現しているが、基本的に歯が立たないトリステインと違い、抱える火力を駆使して
怪獣を倒す実績を築き上げている。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
 しかしある日の早朝に、その火器を造り出す大切な工場の一つを襲っている怪獣は、それまでの怪獣たちと異なり、
ゲルマニアの火力を以てしても暴虐を止められなかった。怪獣の正体は暴れん坊怪獣ベキラ。真ん丸とした目を持った
愛嬌のある面構えからはちょっと想像できないが、その実異名通り怪獣の中でも非常に凶暴な性質で、見境なく暴れて
周辺の大地を荒野へ変えてしまう。
 恐ろしいのは性格だけではない。戦闘力も侮れないものがある。筋力は言わずもがな強力で、
口から吐く火花状の火炎は街を簡単に焼き払う。そして一番厄介なのが防御力で、その皮膚は
並大抵の攻撃では突き破れないほど頑強なのだ。
 そんなベキラにも弱点がない訳ではない。皮膚が固いのは正面だけで、そちらに防御を集中しているからか、
背面は嘘みたいに脆弱。ここが急所となっているのだが、また厄介なことにベキラはそれを熟知している。
弱点の背後には徹底的に気を配り、攻撃は必ず正面から受けるようにする、難攻不落の怪獣なのだ。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
 そして何より、ハルケギニアの人間がベキラの弱点を知っているはずがない。ベキラが必ず
正面を向くように動いていることにゲルマニア軍は気づかず、攻撃を受け止め続けられて、
反撃と消耗で弱っていく。
 既に工場の半分はベキラによって目も当てられないほど破壊されてしまっていた。必死に抵抗する
ゲルマニア軍だが効果が出ず、戦意がくじけかけていた、その時、
「セリャァァァァァァァッ!」
 空の彼方から、ウルトラマンゼロが赤熱する飛び蹴り、ウルトラゼロキックを放ちながら
ベキラの背面目掛け飛んできたのだ! はるか遠方から高速で飛んでくるゼロの存在を、
さしものベキラも認知できず、接近に気づいて振り返ろうとした時には遅かった。
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
 必殺のキックは弱点の背中に深々と突き破り、ベキラは背中から火花をまき散らしながら倒れ込んだ。
そして間を置かずに爆散する。
『よっ……とぉッ! 一丁上がりッ!』
 着地してすぐに工場の火災を消火したゼロに、ゲルマニア軍が大歓声を送るのだが、当のゼロには、
怪獣を瞬殺したにも関わらず、それに構っている余裕がなかった。カラータイマーが点滅しているのだ。
わざわざ隣国トリステインからここまで飛んできたので、到着した時点でもう制限時間が近かったのである。
『あーもうッ! うるせぇな! 分かったよ、帰ればいいんだろ帰ればッ!』
 若干キレ気味のゼロは、両手を空高く掲げて空に飛び立ち、はるばる飛んできたトリステイン魔法学院へと、
とんぼ返りで帰っていった。

「はぁ~……」
 魔法学院本塔の玄関前に立ち並ぶ生徒たちの列の後ろで、才人が大きくため息を吐いた。
それをルイズが咎める。
「ちょっと、みっともないからシャンとしなさい。もうすぐ姫殿下がいらっしゃるのよ」
「そうは言われてもなぁ……こちとら疲れてるんだよ」
 ルイズたち生徒が玄関前で今か今かと待っている相手は、トリステインの王女アンリエッタ。
授業中にゲルマニア訪問の帰りに急遽魔法学院に立ち寄ることをコルベールが知らせてきたので、
授業は全て中止され、教師生徒総出でアンリエッタを迎えることとなったのだ。
 しかしそれと才人の疲労は別の話。彼は今日の朝、ゼロが遠くの地ゲルマニアでベキラが暴れていることを
超感覚で察知し、戦況からして人間の手に余ると判断して洗濯の途中だった才人に変身をさせて、
退治に向かった。怪獣退治自体には何の問題もなかったのだが、才人とゼロは現在一心同体、
彼の消耗はそのまま才人の体力に響くのである。これまでにも遠出をすることは何度かあったが、
今回は今までで一番長い距離を往復した。だから今日は一段と疲れているのだ。かつて地球を護っていた
ウルトラ戦士は、防衛隊に所属することで現場での変身が出来ていたようだが、この世界には
国家を超えた対怪獣組織は今のところ存在しない。
 ちなみに怪獣退治で才人の雑務が放り出される時は、メイドのシエスタが助けてくれる。
才人は彼女に深く感謝しているが、このことは何故かルイズを苛立たせるのだった。
『悪いとは思ってるが、こればっかりはどうしようもねぇんだ。すまんが我慢してくれ』
「あッ、別にゼロを責めてる訳じゃ……」
 ゼロに謝られて逆に気が引ける才人だが、ゼロの方はそれを聞いておらず、こんなことをぼやいた。
『せめてミラーナイトがいれば、移動に時間を掛けることはなくなるんだがなぁ……』
「ミラーナイト?」
 才人も聞いたことのない名前に、ルイズと一緒に首を傾げた。
「そのミラーナイトっていうのは、もしかしてゼロの仲間?」
 ルイズは今日見た夢の終わり間際で、その名前を一瞬だけ聞いたような気がしたのを思い出して尋ねた。
『あぁそうだ。俺の結成したウルティメイトフォースゼロの一員だぜ。……っと、
ウルティメイトフォースゼロのことは教えてなかったな』
 ちょうどいい機会だと、ゼロは二人に「ウルティメイトフォースゼロ」のことを説明し出した。
『俺はこのハルケギニアに来る前、故郷光の国がある宇宙とは別の宇宙を守る役目をしてた。
そうなった経緯は長くなるんで省くが……。で、俺は任に就くに当たり、その宇宙の戦士たちを
仲間に引き入れて、新宇宙警備隊を結成したんだよ。メンバーは炎の戦士グレンファイヤー、
鋼鉄の武人ジャンボットとジャンナインのジャン兄弟、そしてさっき言った鏡の騎士ミラーナイトだ』
 才人とルイズの脳裏に直接、ウルティメイトフォースゼロのメンバーの姿が映し出される。
『ミラーナイトは鏡から鏡へ移動する、とても便利な能力を持ってる。あいつがいれば、
俺も移動に貴重な変身時間を費やす必要がなくなるって訳だ。あいつらは俺と違って、
制限時間ってものもないしな』
「そんな便利な能力がある人を、どうして連れてこなかったの?」
 ルイズの素朴な疑問に、ゼロはこう答えた。
『いや、連れてきたんだぞ』
「えぇ?」
『どれだけの期間と規模の任務になるか分からなかったから、人手はあった方がいいと思ってな。
元の宇宙も平和になってたし、留守はジャンナインに任せて、四人でこのハルケギニアに旅立ったのさ』
「って、ちょっと待てよ。俺たち、そのミラーナイトたちを一度も見てないんだけど」
「そうよ。一体どこ行っちゃったの?」
 当然その疑問が出てくる。それに対するゼロの回答は、とんでもないものだった。
『それが、宇宙を移動してる最中に運悪く次元嵐に遭っちまって、バラバラになったんだよ。
何とかまっすぐたどり着けたのは俺だけだったんだ。才人と激突したのも、それが原因の一つなんだ』
「えぇぇ―――――――――!?」
 急にルイズと才人が大声を上げて周囲が怪訝な目を向けてきたので、慌ててごまかした。
「ちょっと! それってすごくまずいんじゃないの!? 仲間が行方不明になったんじゃない!」
「そうだよ! 探しに行った方がいいんじゃ……!」
 血相を抱えるルイズたちだが、ゼロはあっけらかんとしたものだった。
『なぁ~に。あいつらがそう簡単にくたばるかよ。今は時間が掛かってるだけで、自力でこのハルケギニアに
たどり着けるはずだ。その時俺がどこかに行ってたら困るだろうし、こうして待ってるだけでいいさ』
「そ、そんなものなの……?」
 思わず呆れ返るルイズ。どうもゼロは、良い意味でも悪い意味でも、楽観的なきらいがある。
それが悪い方向に転ばないといいのだが……。
 それと、ミラーナイトの名前を聞いて、今日の夢の内容を思い返す。あれはきっとゼロの記憶……それを見たのだ。
その中に出てきた、あの漆黒のウルトラマンは一体……。きっと終わったことなのだろうが、
あの「ベリアル」という存在が、ルイズの心に強く刻み込まれていた。
「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおな――――り――――ッ!」
 なんてことを考えていたら、とうとうアンリエッタの到着が告げられた。それにより、
玄関前の全員がたたずまいを直した。
 そして正門をくぐった王女の乗る馬車が、玄関前で停止する。緋毛氈のじゅうたんが敷かれると、
最初に枢機卿マザリーニ、そして彼が手を取りながらアンリエッタが降りてきた。生徒の間から歓声が上がる。
「あれがトリステインの王女? ふん、あたしの方が美人じゃないの」
 気の強いキュルケがつまらなそうに呟く。
「ねえ、ダーリンはどっちが綺麗だと思う?」
 才人に尋ねるが、その才人はルイズの方に集中していた。
 ルイズは何やら真面目な顔をしてアンリエッタを見つめている。その様はなんとも清楚で、
美しく、華やかである。
 その表情に見とれていると、不意にルイズがはっとした顔になった。それから顔を赤らめる。
表情の変化が気になって同じ方向を見ると、その先には王女の従者の一人、見事な羽帽子をかぶった、
凛々しい貴族の姿があった。
 ルイズがその貴族をぼんやり見つめていると、才人は何だか非常に不愉快な気持ちになった。

 そしてそれからずっと、ルイズは様子がおかしかった。立ち上がったと思ったら、再びベッドに腰かけ、
枕を抱いてぼんやりしている。
「お前、ヘンだぞ」
 たまらなくなった才人がそう言ったり、目の前で手を振ったり、髪を引っ張ったりと色んなことをしたのだが、
全く反応がなかった。普段ならこんなことをしようものなら、即刻張り倒されるのだが。
 何にも反応を示してくれないので、才人が一人で落ち込んでいると、ドアがノックされた。
初めに長く二回、それから短く三回……。
 それでようやく、ルイズが反応をした。急いでブラウスを身につけ、立ち上がると、ドアを開いた。
 そこに立っていたのは、真っ黒な頭巾をすっぽりとかぶった、少女だった。
「……あなたは?」
 ルイズが問いかけるが、少女は口元に指を立て、魔法の杖を取り出すと軽く振った。光の粉が、部屋に舞う。
「……ディティクトマジック?」
 ルイズが尋ねると、頭巾の少女が頷く。
「どこに耳が、目が光ってるかわかりませんからね」
 調べ終わってから、少女は頭巾を取った。その下の顔は、紛れもないアンリエッタ王女その人だった。
ルイズは慌てて膝を突く。
「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ」
 アンリエッタは涼しげな、心地よい声で言った。



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