あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのドリフターズ-24



「――全選手入場!!」

魔法の拡声装置により、ウェールズの噴き上がる情熱が会場中に伝播する。
アルビオン武技大会。本戦出場を決めた者達が、一人ずつ順番に入場口から歩いて来る。


「――さあ最初は、元平民にして現シュヴァリエ。トリステイン女王直下、銃士隊の隊長。
 魔法を使えぬ女身一つ、剣一本でのし上がった叩き上げの騎士"アニエス"!!」

 短めに切り揃えられた金色の髪。銃士隊服の上にサーコートを羽織っている。
無愛想な表情からは冷たさが滲み、喜悦と倦怠と羞恥と義務感と――様々な感情が混ざることなく回り続けている。
ご丁寧に鞘に入れられた刃引き剣を腰に。中央まで歩いていくと、隊式の礼を客席へと送る。

「ウェールズ王子――もうすぐ王様か、相当イメージが違うわね」
客席の一角でキュルケは落胆したように口を開く。
「わたしは会ったことあるけど・・・・・・以前の時と全然違うわ」
隣に並ぶルイズは単純に驚いていた。
堅苦しく頑固な武人の印象だったのだが、あんなに砕けた部分があったとは・・・・・・。


「続きまして――」
次々とウェールズに読み上げられては、舞台の上に入場していく役者達。
中には演舞のように見せて客席を沸かす者までいる。

「――それにしても、大口叩いといて予選落ちなんてね」
ルイズはキュルケへと毒づく。喧嘩を売っておいて負けたのを笑ってやる。
「一次審査にも通らなかった小娘が言うことじゃないわね」
武技大会の予選は単純なものであった。まずアルビオンの騎士と戦い、一定の水準を満たして認められるのが第一次。

「う~ん・・・・・・」
キュルケの言葉に、後ろにいるキッドは苦い顔で微妙な声色を漏らす。
「あら、サンダンスはしょうがないわ」
頭数は多い方がいいとブッチに誘われて出てみたものの、キッドは第一次審査も突破出来なかった。
魔道具なしではミョズニトニルンは役に立たないし、銃なしでは一次審査にも通る筈がなかった。

 そうしてふるいにかけられて残った者達の人数から計算し、第二次予選が決まった。
審査を通った者同士で一戦交えて、勝ったほうが本戦出場するという単純なもの。
そうして最終的に本選出場者16枠が決定した。

「そもそもね、この大会は『火』や『土』には不利なの、『風』系統の独壇場よ」
「なんでなのね!!?」
口を開けばやかましいだけのシルフィードがキッドの隣で叫ぶ。
子守は面倒だったが、リアクション大きく質問してくるのは説明する側として心地悪くない。
よくわかっていないようなルイズとキッドにもまとめてキュルケは説明する。

「この大会のルールでは『飛行』の魔法が重要だからよ」
攻撃魔法が使えないという制限下で、自分自身に使用可能な魔法は限られる。
『飛行』は"風の系統"である。
メイジであれば基本的に誰でも使えるものの、どうしたって得手不得手は出てしまう。
ここにいないシャルロットは、自身への回復はルール上抵触しないと分析していた。
しかし戦闘中に『水』系統の『治癒』を使うには殆ど不可能と言って良い。

 『飛行』中など魔法を使っている時に、別の魔法を同時行使するのは至難だからである。
されど回復の為に『飛行』をひとたび解いてしまえば、一方的に嬲られるだけ。
火も土も水も実際的に役に立たないのであれば、風が大いに優位なのは自明の理。

(わかってはいた筈だけど・・・・・・ね)
キュルケは歯噛みする。ツェルプストー家はなくなれど、軍人として教育を受けてきた自分。
選ばれた系統が『火』とはいえ、そこいらの『風』系統に負けない自信はあった。
それでも負けた。相手が悪かった・・・・・・が、いずれもただの言い訳にしかならない。

「風とくればシルフィなのね!! ジョゼ姉さまの所為で出られなかったけど」
「あなたメイジじゃないでしょうよ」
「うっ・・・・・・」
シルフィードは自分が韻竜で『精霊の力』なら使えると口走りそうになって黙り込む。


「――次はなんとも珍しい漂流者!! 魔法なしで本戦出場を決めた槍と剣の異色の二刀流。
 異世界の服をその身に纏い、圧倒的な実力で予選を勝ち上がった勇猛の士。"ブッチ"!!」

 ブッチはテンション高くギラリと笑みを浮かべながら会場を見渡し、武器を持った手を勢い良く上げた。
その度に気持ちが高まっている客達は喚声を上げる。ブッチも気分が良くなってそれを繰り返す。
元は武器として作られ使われていた刃引き槍を右手に、刃引き大剣を左手に。
ガンダールヴの力を存分に発揮して予選を勝ち抜いた。

「どうなることやら・・・・・・」と、キッドは心中で心配する。
シャルロットはブッチを一応止めていた。メイジでもない人間があまりに暴れるのはマズイと。
ガンダールヴが露見でもすれば面倒になると。それでもブッチは賞金の為に出場した。
手加減はすると言って今現在舞台に立っているが、実際どうなるかわかったものではない。

 とはいえ賞金額は魅力的だし、自分達の後ろ盾は大きい。
トリステイン女王直下で、次期アルビオン王とも知り合いだ。
多少の障害など揉み消せると、ブッチは計算しての行動であることをキッドに告げていた。

「ブッチはなんであんな得物を選んだのかしら?」
最近になってガンダールヴを説明され、知ることとなったキュルケが疑問を口にする。
「キッドは知ってる?」
ルイズはブッチの相方に聞いてみる。
本来であればそれぞれ両手で扱うような大きい武器を、片手ずつに持つなんて。

「・・・・・・あぁ、単純に手数とリーチで選んだって言ってたな」
「大きいことは強いことなのね!!」
極々単純な理屈。相手より遠間から一方的に攻撃するのは基本。
ガンダールヴゆえに膂力や速度は問題ない。なればこそ手数まで視野に入れた明快な結論。
今ここにいないシャルロット曰く「"昔のガンダールヴ"のスタイル」を、参考にしたのだろう。


「――その者に使えぬ魔法なし。火水風土の四系統全てに秀で、全てを掛け合わせ使いこなす英傑。
 トリステインにその人ありとも言われた竜騎士。"シャルル"!!」

 木棍を片手に、全方位の客に向かって爽やかな笑顔で手を振る。心なしか黄色い声援が大きい気がした。
竜騎士の服で、あくまで仕事と割り切って一人の戦士を演じている双子姉妹の父。
ブッチと戦えば勝敗はわからないな、などとキッドは眺めていた。
二人の実力は間近で見ていて良く知っているゆえの分析である。

 そしてルイズも感慨深げに眺めていた。
幼い頃の父母の武勇伝に聞いたおぼろげな記憶。シャルルと言うメイジの名が、最近になって符号した。
それがシャルロットとジョゼットの父親だったとは、驚きと同時に納得もした。
かつてトリステインで華々しく活躍した・・・・・・恐らくは最強の一人に数えられるであろうメイジ。
今でこそ落ち着いているようだが、昔の話では結構なイケイケだったと頭に残っている。
本当に今更ながら貴族というものは、どこで繋がってるかわからないなどと感じる。
いよいよ"あの母"とも比べられることがあるという実力を、この目で見ることが出来る。


「――さらに同じくトリステイン!! 三部隊ある魔法衛士隊の一つを若くして任せられたその男。
 彼に乗りこなせぬ幻獣はいないと言う。グリフォン隊の隊長、『閃光』の"ワルド"!!」

 長髪に加えて渋い口髭。魔法衛士の隊服に身を包んで羽根帽子を被った男。
ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵。
彼はレイピアのように細長い軍杖を携え軍人の礼をもって客席へ挨拶する。
アンリエッタの護衛ではあるが、シャルルと共に女王の願いによって参加している。

「あのハンサム、アンタの元許嫁だっけ?」
「元じゃないわ、なりかけたってだけよ。昔に何度かお会いして・・・・・・」
キュルケの疑問に対して、ルイズさらりと答える。
「ふ~ん、幼き日の淡い恋心――と」
「そんなんじゃ・・・・・・でも、少しくらいは憧れが・・・・・・あったかも」
詳しくは教えてもらえなかったが、まとまりかけたところで結局流れてしまいそのままだ。
そんなバツの悪さもあって、さらに年月も経っている為、正直顔見知り程度の域は出ない。


「――己より強い奴に会いに来た。夢は世界最強のメイジ。賞金もついでに頂くと豪語する風使い"ドゥドゥー"!!」

 黒い羽帽子を被りマントを羽織った、金髪で細目の少年。
体格は歳相応だろう。しかし出場登録に際してわざわざ持ち込んだ特注品――
――背丈の2.5倍ほどもありそうな長大な刃引き剣を軽々と肩に担いでいる。
屈託なく笑いながら、観客へと空いた手で適当に振っていた。

「・・・・・・ふんっ」
キュルケは不貞腐れるように鼻を鳴らす。あの少年こそ第二次予選での対戦相手だった。
魔法すら使う素振りなく、一瞬で懐まで飛び込んできたかと思いきや、柄頭で水月を一撃。
それで呆気無く自分は終わってしまった。まるで白昼夢でも見ていたかのよう。
ほんの一瞬だけ垣間見た、余裕綽々のあの男の笑みが今でも瞼の裏に焼き付いている。


「今大会随一の巨漢にしてドゥドゥー選手の兄!! なんと武器は己の五体のみという最重量級メイジ、"ジャック"!!」

 強靭な骨の上に筋肉の鎧を纏い、浅黒めの皮膚が覆った大きな体格。
一体どういう鍛え方をすればあれほどの筋骨を有し得るのか。およそメイジの肉体には見えない。
そして徒手空拳で本戦出場を決めたとなれば、もはやその四肢は凶器にまで昇華されているに相違ない。
ジャックは観客席には見向きもせず、無骨な雰囲気のまま真っ直ぐに待機場所へと歩いて行った。

(アイツの兄・・・・・・似てないわね)
あれほど強かったドゥドゥーの兄ともなれば、さらに強いのかも知れない。
あの底の見えぬ強さをしてさらに強いとなるともう、人外の領域としか思えない。
いよいよもってキュルケは胸騒ぐような波乱の予感がしてくる。


「名門トリステイン魔法学院の若き英才! トライアングルメイジとしての実力が光る大会最年少、『雪風』の"ジョゼット"!!」

 首都ロンディニウムで揃えた割かしボーイッシュな私服。
使い慣れた長杖をくるくると回してパフォーマンスを魅せる。
遠目には緊張など一切感じられず、今の状況を精一杯最大限に楽しめる胆力。
満面の笑顔を振り撒いてアピールする少女は、今までで最大の歓声を一身に受けていた。

「ジョゼ姉さまーっっ!!」
大歓声に混じってシルフィードも声援を送る。

(・・・・・・ジョゼットは勝ち上がりか)
ルイズは柔らかな笑顔を浮かべた。シャルロットと一緒にいれば自然とジョゼットとも知り合う。
ジョゼットは偏見もなく付き合ってくれたし、"何故か"どうにも馬が合った。
ただ――ジョゼットの思慮による心の距離だけが少し寂しく感じる。
「今はもう虚無の担い手になったから気兼ねすることはない」なんてことも言えない。

 キュルケは腕を組み、豊満な胸を強調しながら悔しさを秘めた声音で言う。
「どこまで行けるか見物ね」
大会で有利な風系統とはいえ、ライバルが勝ち上がり、己は進めなかった敗北感は内にしまう。
「絶対優勝なのね!!」


「そしてそして、遠くロマリアからはこの少年。月目が印象的な彼の本職はなんと歴とした『神官』。
 今大会三人目の非メイジにして、古くはロマリアの大王と同じ名を名乗る、"ジュリオ・チェザーレ"!!」

 中性的な面も感じられるその容姿。美しい金髪を輝かせ、高貴な白い神官装束の上にマントを羽織っている。
木剣を腰に下げ、四方八方に愛想を振り撒く仕草の一つ一つは女性を射止める為のもの。
全てが計算ずくとわかっていても、ついつい陶酔に甘んじてしまうほどの色っぽさを演出している。

「あら、美形」
「・・・・・・確かにそうね」
ルイズもあっさり同意し、話に乗ってくるほどの顔立ち。シャルルの時以上の黄色い声援が耳に残る。
わざわざロマリアの神官がこのような大会に出るなんて一体どういう了見なのか。
ロマリア教皇は、大会後の戴冠式までいらっしゃられない筈で、つまり一人だけ先に来たようである。
いずれにせよ魔法を使えない中で勝ち上がってきたのだから、その実力が本物なのは確かであろう。


「出自不明! 経歴不明! 名前も偽名! 謎が謎を呼ぶ少女剣士"タバサ"!!」

 灰色にくすんだストレートロング、動き易い服装に短剣と木剣をそれぞれ両手に。
ジャック同様、特に反応らしい反応をせずにさっさと立ち位置へと着く。

「あれってやっぱり・・・・・・シャルロットよね?」
なんとなくわかるものの、ルイズは一応キュルケに聞いてみるがシルフィードが先に答える。
「シャル姉さまなのね、おんなじ顔なのね」
「ここから見えるの?」
「当然なのね、目も耳も人間の何倍もいいのね」
独特の言い回しだが、つまりは視力・聴力に優れていることなのだろうとルイズは思う。
リボンと眼鏡をはずしていて、一見しただけじゃ誰かわからない。

「まったく・・・・・・あの子らしいわ」
キュルケはやや呆れ気味に苦笑する。徹底した秘密主義。
情報を微塵にも明かさず、全力で大会に挑むという決意の顕れ。
他にも色々思惑はあるのだろうが、いずれにせよシャルロット"らしい"と言えた。
予選前に色々と買い込んでいた中に、髪色を変える魔法の染料もあったのだろう。
予選の際は皆がお互い手の内を晒さないようにと、運営側の配慮で会うこともなかった。
本戦出場したのは当然聞いていたが、まさか偽名で姿まで変えていたとは・・・・・・。


「次なるは――」

 ウェールズがさらに選手紹介を進める中で、キュルケ達は話す。
「知人はこれで全員出揃ったかしら。それで、誰にする?」
選手入場兼紹介が終わり対戦トーナメント表が発表されれば、いよいよ賭けの開始となる。

 誰でもわかりやすく参加できるよう、限度額有りで単純に優勝する者を予想するだけ。
倍率も単純で一律固定。第一回戦から決勝戦まで、倍率は変わるが都度賭け続けられる。
接収した土地や収入分を充てているので、仮に親が大負けする結果となっても問題はない。
お祭りついでに還元する意味も込められているのだろう。

「お姉さま達に賭けるのね!!」
シルフィードは主人とその姉をこれ以上ないくらいに信頼している。
理屈はない、ただの感情のみであった。
シルフィード自身、フーケ事件の際の褒賞金が残っている。

 次いでキッドが答える。
「順当にブッチだな。あとシャルルにも」
ガンダールヴの強さがある。相棒としての情を差し引いても極々普通の選択だ。
一点賭けで充分とも思ったが、スキルニルシャルルの強さを間近で見たので少し日和ってしまう。
ウェールズ王子はシャルル達が優勝しても構わないと言っていた為に遠慮しない可能性も考えて。
いくらブッチが強化されようと根は銃士。素人とまでは言わないまでも、本物とは比べられない。

「まぁ・・・・・・一応、使い魔にでも賭けといてあげようかしら」
ルイズはやや照れ隠しでもするかのように言う。
金には困っていないし、ただ単純な賭け事では面白味もない。
ただ一応主人としては、使い魔に少しだけ期待してやろう程度の気持ち。

「なるほどね」
予想通りと言えば予想通りとキュルケは薄く笑う。実力をよく知る身内に賭けるのは当然。
ルイズもサンダンスはいかにも順当で――しかして真っ当過ぎる
「で、キュルケは誰にするのよ」
「わたしは・・・・・・ドゥドゥーとジャックにしとくわ」
「はぁ? どうして??」
ブッチの実力をキュルケは知らぬまでも、シャルルやワルドと言った強者でもなく。
よりにもよってイロモノ兄弟の名を挙げたことには、目を丸くするしかなかった。

「なんとなくよ」
キュルケは軽くあしらう。自分が実際に戦って負けたことを言えば、突っ込んで聞かれるだろう。
「あっさりと手加減されて倒された」などと、プライドが許さない。
魔法を使わずしてあの強さ。未だに信じられないし、信じたくないくらいだ。
そんな半信半疑なこと、しかもまるで狂ったようなことを軽々しく言えるわけもない。


「あなた見る目あるわよ」
それは全然別の誰かの、女の子の声。
突然話しかけられた方向へ目を向けると、二人の人物がいた。
「あらそう、ありがと。それで、アナタどなた?」
「わたしの名前はジャネット」
黒白のコントラストが独特で派手な衣装に、レースがあしらわれたケープ。
美しい人形を思わせる容姿の少女で、年の頃は自分と同じくらいかとルイズは見る。

「"弟"のダミアンです」
もう一人は金髪が映える少年、10歳くらいだろうか。良くも悪くも歳相応な感じだ。
全体の雰囲気は悪戯小僧のようだがその態度は利発。意外と将来有望かも知れないともキュルケは見る。

「キュルケよ」
「わたしはルイズ・・・・・・ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール」
「キッドだ」
「シルフィード、シルフィードなのね!!」
それぞれ自己紹介を終えるとジャネットは話を続ける。

「でもドゥドゥー兄さまには賭けなくていいわ、ジャック兄さまの方が強いから。賭け金の無駄無駄無駄無駄ァ!! ですわ」
「兄妹なの?」
話の流れを聞けばわかるもののルイズは一応尋ねてみる。
「そうよ――・・・・・・ん、あなたなんだか可愛らしいわね」
話の流れを止めて、ジャネットはルイズを見つめる。
何故だろうか、本能的に気に入ってしまった。
フィーリング――感覚的な相性が良いと、唐突にジャネットはルイズを観察しだす。
ルイズは何やらこそばゆさを覚えつつ、初対面を邪険に扱うわけにもいくまいと強張るのみ。

「気に入ったわあなた、私の人形に――」
「駄目だよジャネット姉さん」
「うっ、そうね。そうよね、今は・・・・・・」
ルイズは疑問符を浮かべる、着せ替えごっこでもする気だったのかと。
見た目そのままの、可愛い趣味なんだななんて思う。
それが人間相手となるとちょっと特殊ではあるものの。
てゃいえ、ちい姉さまはたまに可愛らしい服を着せてくれたりしたっけ。と、子供の頃を懐かしむ。

 ジャネットは少しだけ考える素振りを見せると、閃いたように言い出す。
「あなたわたしに興味ない?」
「えっ?」
「あらあら、アナタ"そっち"なの?」
ジャネットのおかしな物言いにルイズは呆け、キュルケがすぐさま口を出す。
「なっ・・・・・・わたしにはないわよ!」

 キュルケの言葉の所為で、ルイズは変に邪推してしまい答える。
友達になりたいと、純粋な興味で聞いているだけなのかも知れないのに。
もしそうだとしたら失礼なことを言ってしまったとルイズは内心焦る。
が、当のジャネットは特にショックを受けているようでもなかった。
表情は一切変わらず首を傾けて、揺らぎないその瞳は一瞬人形のそれをそのまま連想させた。

「ほんと? 興味ない?」
「え・・・・・・あ、その・・・・・・」
しどろもどろになる。もしもそういう意味だったらどうしようと。
異性ですらそういうのはいないのに、だからって同性なんてもっとありえない。

「ふ~ん」
するとジャネットは唐突に顔を近づける。あまりの素早い身のこなしでルイズは面食らった。
「ひゃっ」
ルイズは頬をぺろっと舐め上げられて、油断しかない小さな悲鳴をあげてしまう。
「キス!!  キスしたのね!!」
「ちっ、違うわよ!!」
叫ぶシルフィードの言葉を全力で否定する。対照的に冷静に見ているキュルケが不穏だった。

「この味は! ・・・・・・ウソをついている"味"ね。匂いでもわかる」
ルイズはドキリとする、たしかにジャネットは女の自分でも感じるほどの妙な魅力がある。
顔が紅潮してるんだろうなと、心のどこかで思いつつルイズはこうなれば遠慮はいらぬと叫ぶ。
「馬っ鹿じゃないの!! そんなわけないわ!!」
「ふふっ狼狽えると余計に怪しくなるわよ、それにわたしにはわかってるから安心して」
キュルケが玩具を見つけた子供のような瞳で言う。
「ぐぬぬ」
ルイズは詰まる。羞恥心も相まってもう言い返す気力がなくなった。

 そうこうしている内に、円形闘技舞台の上には殆どの出場者がズラリと並んでいた。

「そろそろ行こうジャネット姉さん、順番がつかえて時間はとられたくない」
「わかりましたわ、それじゃみなさんごきげんよう、またね」
ルイズにとっては台風一過とばかりの少女は、弟と共に去っていく。
最後に残していったウィンクが、ルイズを少しだけ何とも言えぬ心地にさせた。

「・・・・・・っもう笑わないの、キュルケ」
真っ先にからかってきそうなキュルケが大人しいことにルイズは訝しむ。
「そうね私に出来ることは今のやり取りを、シャルロットとジョゼットに面白おかしく伝えること。
 そしてそれを今夜の酒の肴にすることくらいかしらね。それまで楽しみはとっておくのよ」

 ガクリとルイズは肩を落としてうなだれる。キュルケとは何度も闘り合う中。
もうこうなっては言っても無駄だ。弱味を握られた以上は一方的に嬲られる。
甘んじて受け入れるしかないのだ・・・・・・。


「――さぁ、いよいよ最後に紹介するは、なんと四人目となる非メイジ。ロマリアよりもさらに遠く。
 なんと東方はロバ・アル・カリイエからやって来たという。嘘か真か、『もののふ』"シャナオウ"!!」

 布を幾重にも重ね合わせたような服装に、黒く長い髪をバックに伸ばした少年。
鞘付きの反りのある特殊な刃引き剣を腰に、マイペースに闘技舞台の上まで歩いて行く。
その足取りは軽やかで、重力を感じさせないようなイメージが飛び込んでくる。

「なんか不思議な感じね・・・・・・でもいい男」
「はぁ・・・・・・、ホントそればっかねアンタ」
とは言うものの、ルイズもキュルケと近い印象は感じていた。
まるで漂流者のように珍しい格好をしている、というだけでなく持っている雰囲気そのものが。

「"シャナ"・・・・・・か」
何気なく引っ掛かってルイズは呟く。全く関係ないようで、なんとなく関係あるような響き。
「どうかして?」
「・・・・・・いや、なんでもないわ」
本当に大したことではない。懐かしさのようなナニカを感じたが気の所為だ。

 ――いよいよ役者が揃い舞台は整った。
観客でしかないのに、何故か不思議な緊張感にルイズは身を震わせる。


「――以上16名によって、本戦を行いますッ!!」



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