あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るろうに使い魔-36



「ふうっ…やっと出来た…しっかし苦労したわ…」
 トリステイン魔法学校、その女子寮にて、モンモランシーが精根尽き果てたかのように、大きく椅子の背もたれに体をあずけた。
 テーブルの上には、今しがた完成した解除薬が置いてある。
「これでこの悪夢もようやく終わるのね…」
 隣のルイズと剣心も、やっと一安心したように胸をなでおろす。勿論、油断は最後まで厳禁だ。まだそうなると決まったわけじゃない。
「とにかく、ホラ、飲みなさいよギーシュ」
 そう言って、モンモランシーは解除薬の入った壜をギーシュに渡す。しかしギーシュは不思議そうな顔をして尋ねたのだった。



     第三十六幕 『翔ぶが如く』



「…何でそんなもの飲まなくちゃいけないんだい? 得体の知れないものは飲みたくないんだが」
 それを聞いて、ビシリ、とモンモランシーの額に青筋が立った。壜を持つ手は震え始めている。
何やら嫌な予感がしたルイズは、それとなく解除薬をモンモランシーから掠め取った。
「こんな臭い薬を作って、一体何をしたいのかよく分からないけど、これが君の趣味ということだけは分かった―――ぶるぁ!!!」
「アンタっ…マジっ…ホントっ…後悔するんじゃないわよっ…!!」
 解除薬を持っていた手で、躊躇いなくギーシュの顔面目掛け渾身のストレートをぶち込んだモンモランシーは、息も絶え絶えにそうまくし立てた。
 もしルイズが取ってなかったら、今頃薬はギーシュの顔面に派手に飛び散っていたことだろう。
 やっぱり油断しちゃいけない。飲ませるまでが終わりなのだ。
「いいから飲みなさいよ!! あんたの病気を治す薬よ!!」
 ルイズはそう言ってギーシュに薬を突き出した。口から出まかせだったが、そうでも言わないとコイツは飲みそうもない。
 しかしそれでもギーシュはまだ渋っている様だった。
「分からないなあ。僕の何処に病気があると言うんだい? 僕はこのとおり至って健康そのものさ。僕は気付いたんだ…真の愛情というものは、分け隔てない、あのラグドリアン湖のように大きな存在であることを。それを悟った僕の、一体どこがびょうき―――」
「「いいから飲めやぁぁぁあああ!!!!」」
 シンクロした叫びを上げたルイズのモンモランシーの、巧みなコンビネーションにより、ギーシュは有無を言わさず解除薬を口の中に放り込まれた。
 ゴクン、と確かに薬が喉を通っていく音を聞き届けたルイズ達は、それでも油断なくギーシュの動向を監視していた。
 やがて、ひっく…と一つのしゃっくりをした。それから憑き物がとれたかのように、ギーシュはフラフラした表情で辺りを見回した。

「あれ…ここは…僕は…何を…」

 そうして見ているうちに、まず視線が剣心へと移り、そして悪魔を見たかのような驚愕の表情をした。
「そっ…そうだ…僕は…」
 ヨロヨロと立ち上がり、今度はおぼつかない足取りで少し歩いた後、そしてモンモランシーの方を振り向いた。
 すると先程の剣心の時より、恐ろしいものを見たかのように顔が恐怖で歪む。
「あ……あっ…」
 『惚れ薬』の効果は確かに消えた。だが、その時にした記憶まで都合良く消してはくれない。ちゃんと、自分のしたこと言ったことはハッキリと覚えているのだ。
 剣心に言った痴態ともいえる恥ずべき行為。更には恋人であるモンモランシーに放った罵詈雑言の数々。
 遂にギーシュは、その精神が限界へと達した。

「ぎいいやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 はち切れんばかりの金切り声を上げた後、ギーシュは白目をむいたまま、ぽっくりとそのまま倒れ込んだ。
 全くどこまでも騒がしい男である。
「終わったわね…」
 色んな意味を含めながら、ルイズはふうっ、と安堵のため息をつく。あの反応を見る限り、まず間違いなく戻ったことだろう。
流石にその後の精神状況までは面倒見切れないが。
「…もういいわ…。わたしも…何か疲れた…」
 モンモランシーは遣る瀬無さそうな視線をギーシュに向けながらも、それでも仕方なさそうに杖を振り、ギーシュをベットに運んで寝かせてあげた。
「ホラ、これで終わったからいいでしょ? 少し一人にさせて頂戴」
 ぐったりと椅子に寄りかかりながら、疲れたような目でルイズ達にそう言った。特に留まる理由も無かったので、ルイズ達はそそくさとその場を後にするのだった。



「はぁ…わたしも疲れたわぁ…」
 部屋を出て早々、ルイズも深いため息をついた。剣心もはは…と乾いた笑いをする。
「まあ、無事元に戻ったようだし、これで一件落着でござるよ」
「でもホント、笑える話よね。ケンシンには悪いけどさ」
 そう言ってキュルケは未だに思い出しては面白そうに笑いながら、真っ赤な髪をかき揚げる。
言ったら殺すわよ…。とルイズが殺意の視線を送った。
 それを気にする様子はなかったが、キュルケはまだ何か引っかかりがあるのか、うーんと首をかしげた。
「でもまあ、相変わらず綺麗だったなぁ…ラグドリアン湖…」
 と、ふと思い出すかのようにルイズが呟いた。
「前に行ったことあるでござるか?」
「うん、十三の頃、姫さまのお供で行ったことあってね。とっても盛大な園遊会が開かれてて…すっごく賑やかで、華やかで、楽しかったなあ」
 昔を懐かしむ様子で、ルイズは続けた。
「実はあのラグドリアン湖はね、ウェールズ皇太子と姫さまが初めて出会った場所なんだって。夜中に姫さまに頼まれて、身代わりになって欲しいって言われてさ。今考えると、二人はその時逢引でもしてたのかなぁ…」
 切なそうな表情をして語るルイズを他所に、ここで何か思いついたようにキュルケは叫んだ。
「あっ…そうよ!! ウェールズ皇太子よ!!」
「な、なによ急に!」
 折角の余韻を邪魔されてルイズは口を尖らせたが、それに構わずキュルケは続ける。
 なんでも、ラグドリアン湖に向かう道中、ウェールズそっくりの男を見かけたというのだ。
「そうよそう!! あぁやっと思い出せたわ! あの色男はウェールズ皇太子さまじゃないの!」
「……どういうことでござる?」
 剣心が、伺うような視線でキュルケに尋ねた。
「…ウェールズ殿は、確かにあの時亡くなったでござる。それはキュルケ殿も見てたでござろう?」
「ええ、見てたわ。今まで全然思い出せなかったけど…でもあれは確かにウェールズ皇太子よ。わたしがあんな色男、見間違えるわけないわ」
 今まで忘れていたのに、断言するかのような口調でキュルケは言い切った。それを聞いて、剣心の中で嫌な予感が膨れ上がる。
(『アンドバリの指輪』…死者に偽りの生命…レコン・キスタ…)
そして、ワルドが言った『ウェールズを亡き者にする』という真相…。
 全てが、剣心の脳裏で繋がっていく。まるでパズルのピースをはめ込むかのように…。それはルイズ達も同様だった。
 そして、そこから答えを導き出すのに、さして時間は掛からなかった。
「しくった、奴らの狙いは姫殿だ!!」
「…――!!?」
 剣心が叫ぶと共に、ルイズ達も弾けるように反応する。剣心達は急いで学院の外に出ると、タバサに向かって剣心は言った。
「タバサ殿、シルフィードを呼んでもらっても―――」
「もう呼んだ」
 阿吽の呼吸が如く、既にタバサは口笛を吹いていた。ひと足遅れて、シルフィードがばっさばっさと翼を羽ばたかせて飛んでくる。一行は素早く風竜の背中へ乗り込んだ。
「トリステイン王宮、急いで」
 タバサはそれだけをシルフィードに告げた。その声の様子から尋常でないことを察したシルフィードは、急いで飛び上がり全速力で空を駆けた。



 夜の風が静かに吹くトリステイン王国。しかしその王宮は、喧騒や怒号で昼間より騒がしかった。
 剣心の読み通り、事はもうすでに起こっている…いや、起こってしまったと表現するのがいいだろう。
 王宮の中庭で慌ただしく動いている護衛隊らしき一団は、降り立とうとしているその風竜の姿を見て、再び混乱が巻き起こった。
「こんな夜更けに一体何だ!!」
王宮預かるマンティコア魔法隊の隊長は、大声で怒鳴り込んだ。
「何奴!! 現在王宮は立入禁止だ、下がれ!!」
 しかし風竜は下がろうとせず、そのまま着陸して来た。隊長は、その風竜と背中に乗る一団に見覚えがあった。
 数日前、白昼堂々と王宮に乗り込んできた一行だ。アンリエッタ女王の友達と言ってはいたが、今は非常事態。
「またお前たちか! 面倒なときに限って姿をあらわしおって!!」
「姫さまは…いえ、女王陛下ご無事ですか!?」
 風竜の背中から桃髪の少女――ルイズが飛び降りると、せきを切って隊長に詰め寄った。隊長は、鬱陶しそうな顔を隠そうともせず言った。
「貴様らに話すことではない。ただちに立ち去りなさい」
 それを聞いたルイズは、怒りで顔を真っ赤にすると、懐から一枚の羊皮紙を取り出し、それを隊長に見せつけた。
「私は女王陛下直属の女官です!! この通り陛下直筆の許可証もあるわ! わたしには陛下の権利を行使する権利があります! ただちに事情の説明を求めるわ!!」
 これには、流石の隊長も目を丸くした。成程、確かにルイズが持っているのは、アンリエッタの執筆による許可証だ。
 なぜこんな少女が女王のお墨付きを…そう思ったが、彼も軍人。上司だと分かった以上、無粋な対応をするわけにもいかない。敬礼をして、隊長は経緯を説明した。
「今から二時間程前、女王陛下が何者かによってかどわかされたのです。警護のものを蹴散らし、馬で駆け去りました。現在ヒポグリフ隊がその行方を追っています。我々は何か証拠がないかと、この辺りを捜索しておりました」
 やっぱり…ルイズはそう思った。こうしている内にも、段々と嫌な予感は膨れつつある。
「それで、一体どこへ向かったの?」
「賊は街道を南下しております。どうやらラ・ロシェールの方面に向かっているようです。間違いなくアルビオンの手のものかと…」
 不安は嫌な程的中していく。こうしてはいられない。ルイズはそれだけ聞くと、素早くシルフィードの上に乗った。
「夜明けまでが勝負でござる。それまでに追いつけないと…」
 剣心の言葉に、一同は緊張感を覚える。彼がそこまで言うということは、それほど事態は重い状態だというのが分かったからだ。
「低く飛んで、敵は馬に跨っているわ!! でも速くお願い。時間は無いわ!! 行動は迅速に。翔ぶが如く!!」
 翔ぶが如く。それに反応するようにシルフィードは、翼を羽ばたかせ急加速した。


 森の中、その一つの生い茂る広い草原―――そこは燃えていた。
 そこここに飛び散る血と、死体と、ヒポグリフ達幻獣の死骸と一緒に……。
 彼らは麗しき女王を取り返そうと躍起になっていたヒポグリフ隊の連中だった。
奸賊を見つけ、その一向に容赦なく制裁を与えるべく魔法を放った彼等だったが、突然の事態により形勢は逆転。
あっという間に全ての隊員達が薙ぎ倒され、鮮血が辺り一面に巻き散っていった。
その中心に立っていたのは、常人なら死んでもおかしくないほどの傷を追ったウェールズと、生気の無い目で立ち上がる奸賊の面々だった。
「う、ん………」
アンリエッタは目を覚ました。ふと起き上がれば、そこは血と煙が燻る世界。周りを見れば、見知ったヒポグリフ隊の死体がいたるとこれで倒れており、立っている連中も、全員死人のような表情をしていた。
そして目の前には…これほどの事態が起こっているというのに、相変わらず笑っているウェールズがいた。
「ウェールズさま…貴方…一体なんてこと…」
「やあ、驚かせてしまったようだね」
 いつもの様な屈託の無い笑顔。それに怖気を感じたアンリエッタは、本能的に杖をウェールズに向ける。
「貴方は…誰なの…?」
 震える声で、アンリエッタは問うた。未だに信じられないといった目で。
「何を言っているんだい? 僕はウェールズだよ」
「嘘よ! よくも魔法衛士隊の隊員達を…」
 アンリエッタは叫んだ。声だけでなく杖を突きつける腕も震えてくる。容姿は確かにウェールズなのに…まるで別人のようだった。
「仇を取りたいかい? いいとも。君は僕を殺す権利がある。さあ君の魔法で僕をえぐってくれたまえ。君の手で殺されるなら本望さ」
 仰々しく手を広げながら、ウェールズは言った。アンリエッタは震える手で杖を突きつけたまま固まっていた。

 出来るわけない…あれほど好きだった皇太子を…殺すことなんて…。

 アンリエッタは崩れ落ちた。涙を流し、子供のようにただうずくまった。
「何で…こんなことに…」
「今は僕を信じてほしい。それだけさ」
「でも…でも…」
 ウェールズの声を、アンリエッタの僅かばかりの理性が押し止める。違う…彼はこんなこと…わたしが望んでいたのは…こんな…。
 しかし、今の彼女の心にはウェールズの言葉はよく響く。
「覚えているかい? ラグドリアンの湖畔で交したあの約束を。君が口にしたあの誓約の言葉を」
「…忘れるわけありませんわ。それだけを頼りに、今日まで生きて参りましたもの」
「言ってくれ。アンリエッタ」
 まるで悪魔のような甘い囁き。しかし、アンリエッタの精神は、徐々に彼を受け入れつつあった。そうしないと…自分が保てなくなりそうだったから…。

「トリステイン王国王女アンリエッタは、水の精霊の御許で誓約いたします。ウェールズさまを…永久に愛すると…」

 一言一句、間違えることなくアンリエッタは誓約の言葉を口にすると、ウェールズは満足そうな笑みを見せた。
「その誓約で以前と変わったことがあるとすればただ一つ。君は今では女王ということさ。でも、ほかの全ては変わらないだろう? 変わるわけがないだろう?」
 ウェールズの熱弁に、アンリエッタはうんうんと頷く。もう止まらない、この気持ち。
ずっと今まで、こうやって抱かれたかったと夢見て来た自分だったのだから。
「どんな事があろうとも、水の精霊の前でなされた誓約がたがえられる事はない。君は己のその言葉だけを信じていればいいのさ。後は全部僕に任せてくれ」
 優しく思えるウェールズの言葉、その一つ一つがアンリエッタの心を刺激する。今の彼女はただの無垢な少女だった。
 アンリエッタは何度も頷いた。まるで自分に言い聞かせるかのように…。


「…非道いわ」
 街道を飛んでいく道すがら、ルイズは眼下にある無残な死体の山を見て思わずそう呟いた。
 血の臭い、煙の臭い。そして悪臭を放つ人間『だった』モノの数々。その中には最早原型を留めていないものも幾つかあった。
 シルフィードを着陸させ、ルイズ達は地に降り立つ。何か手がかりになるものはないか、探していると、幸運なことに生存者がいた。
「生きてる人がいるわ!!」
 キュルケの声に、皆が一斉に反応する。
 駆け付けて様子を見れば、腕に深い怪我を負っていながらも、確かに生きながらえている人間がいた。
「大丈夫でござるか?」
「ああ…あんたたちは…?」
「わたしたちも、貴方達と同じ、女王を誘拐した一味を追ってきたのよ。一体何があったの?」
 味方だと知って少し安心したのか。その騎士は不可解、といった感じながらも話してくれた。
「分からないんだ…けど、あいつら…確かに致命傷を負わせた筈だったのに…」
「…それは一体?」
 しかし、騎士の言葉はそれきりだった。安心感が極限にまで達したのか、そのまま眠るように気絶してしまった。
「どういう意味…?」
 疑問符を浮かべて考えるルイズ達だったが、そうさせる暇はもうないようだった。
 それに真っ先に気づいたのは剣心だった。彼の反応でピンと来たように、次いでタバサも勘付く。
 囲まれている…いや、最初から待ち伏せのつもりだったようだ。剣心は、ゆっくりとデルフの柄を手にかけた。
 刹那、魔法が四方八方から飛んでくる。剣心は素早くデルフを抜刀すると、振り向きざまに横一閃。その沿線上に入った全ての魔法をかき消した。
「おお、久しぶりのこの感触!! テンション上がってくるぜ相棒!!」
 漸くまともな出番が来て嬉しかったのか、デルフが半狂乱になって叫ぶ。それに構わず剣心は、返すひと振りで遅れて飛んでくる第二波目を完全に防ぎきった。

 遅れてタバサが反撃の呪文を唱える。氷の矢や風の槌が、先程飛んできた魔法の場所へと向かっていった。
 着弾と同時に、何人かが吹き飛んで行き、氷の矢で串刺しになる。
 だが何より驚いたのは、そんな状態になりながらも平然としている彼等の姿だった。
「…『アンドバリの指輪』とやらの効力でござるか」
 タバサの攻撃を受ける前から既にボロボロだった彼等を見て、剣心は瞬時にそう考察した。あの様子で生きてるなんて普通じゃ考えられない。
 剣心達は油断なく構えた。しかし、何故か敵はそれ以上攻撃をしてはこない。何かを伺っているのだろうか…それとも…。
 そう考えていた剣心達の前に、ふとその影は現れた。生気のない人間の群れを押し分けて、悠然とやってくるその人影…。
 それは間違いなく、剣心達が知っている、そしてもう会うこともないだろうと思っていた人物だった。
「…ウェールズ…殿…」
「やあ、また会えて嬉しいよ。『ガンダールヴ』…いや、ここは『人斬り抜刀斎』君と呼んだほうがいいのかな?」
 ウェールズは、邪悪な笑みを隠そうともせずに、そしてそれを剣心に向けてそう言った。


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