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ゼロのしもべ第3部-8

8話


 日もとっぷり暮れて、翌日に近いヨルー!
 なぜか谷岡ヤスジっぽく夜がやってきた。緊迫感が欠片もないのはどういうことだろう。
 理由は簡単。昼間の幽霊騒動のせいで、女衆は襲撃者よりも幽霊のほうに怯えているからだ。モンモンなぞギーシュの腕にすがり
つき、ガタガタと震えている。「大丈夫。僕がついてるじゃないか。」と慰めるのはギーシュ。増水した湖さえ干上がりそうだ。
 一方ルイズはというと、
「ゆ、幽霊なんて、こ、こ、怖いわけないじゃないの。モ、モンモンモンモランモンシーも、た、たいしたことないわねっ!」
と精一杯虚勢を張っていた。誰だ、そいつは。
「ひ、昼に見張りましょうよ!昼に!」
 こんな意見も出たのだが、当然却下された。襲撃者は夜来るというのに昼見張ってどうするのだ。そういうと、
「おっちょこちょいな襲撃者がいて、間違えて昼に来るかもしれないじゃない!」
 断言する。そんな襲撃者はいない。このカシオミニを賭けてもいい。
 見張り始めて1時間経ったころだろうか。岸辺に2つ、人影が現れた。漆黒のローブを身に纏い、深くフードをかぶっているので男か女かもわからない。アボット&コステロを思い出させる凸凹コンビだ。つまりノッポとチビである。
 でっきるっかな、でっきるっかな、と凸凹コンビが杖を掲げ、呪文を唱え始めた。間違いなく、襲撃者だ。
「……どう、ビッグ・ファイア?」
 襲撃者の心を読んでいたバビル2世にルイズが訊ねる。訊かれたバビル2世は当惑した表情を浮かべていた。
「いや、なんであの2人が?」
 その言葉に疑問符を浮かべるルイズ。バビル2世がスックと立ち上がった。
「あっ!こら!」
 無防備に姿をさらすバビル2世を諌めるルイズ。ギーシュとモンモンのあわてている姿も見える。
「いや、大丈夫だよ。なぜならあの2人は―――」
 バビル2世に凸凹コンビが気づいた。慌てて杖を掲げて構える。が、すぐに構えを解いて、首を捻りながらフードを取り払った。
「あなたたち、どうしてこんなところにいるの?」
 ノッポのほうの、フードの下から現れたのはキュルケの顔であった。

 真実とは、問いかけることにこそその意味もあれば価値もある。
 托塔天王晁蓋こと、ガリア王ジョゼフにとって、それは魂の叫びであった。
『この世界には、なぜ真実を知ろうとしない人間がこれほど多いのだ。』
 ジョゼフの半生は、みじめの一言に尽きた。
 ブリミル直系の4王家の嫡子として生まれながら魔法が使えない。すぐ下には天才と呼ばれる弟。性格が歪んでいくには、これ以上ない環境といえた。このような設定を与えられて、まっすぐに育つ人間がいるものか。ブスはブスと罵られるため、性格もブスになるというが、ジョゼフはまっすぐに育つ機会を得ることなく長じたのである。
 そんな彼が熱中したのは、魔法を必要としない詰めチェスや、ボードゲームなどの1人遊戯であり、あるいは世の中を呪うことであった。
『この世界にはなぜ真実を知ろうとしないのだ』
という思いはそんな彼の青春時代に培ったものである。魔法が使えないゆえに、彼は逆に「なぜこの世界に魔法などが存在するのだろう」ということを考えた。ガリア王家に伝わる古文書を読み漁り、あらゆる学者に問い、メイジたちを観察した。
 だが、何一つその理由はわからない。当然だ。メイジにとって魔法ははじめからあるべくしてあるものであり、なぜ使えるのかなどということを今までに考えたものはいないからだ。あえていうならば、メイジであるからだという観念論的な答えに終始するだろう。
 いや。ただ唯一、そのことを考えていた人間たちがいた。
 職人である。
 ご存知のようにいくら錬金という魔法技術があるといっても、精密な細工や精巧な仕掛けに限っていえば、魔法は職人の持つ技術に勝ち目はない。メイジがいくら努力をしようとも作れぬ芸術作品を作ることのできる人種。それが職人である。
 そのため職人の中にはメイジなにするものぞという気風があった。職人にとってメイジは「偶然妙なことができる家に生まれた人間」であり、魔法というものは「便利な技術」に過ぎない。なぜ使えるのかと問われれば、彼らはこういうだろう。
「ノミの尻をハンマーで叩けば、刃先が木に潜り込む。魔法というのは目に見えないノミの尻を、呪文で叩いてるだけでしょう。」
 人間不信に陥りかけていたジョゼフにとって、この答えは天啓であった。なんという理論的な答えだ。使えるから使えるのだ、というだけの国有数の学者だというメイジよりも、市井に住む職人のほうが賢いではないか。
 そう考えるならば自分が魔法を使えない理由もおぼろげにわかる。自分は単に目に見えないノミを叩く技術を身につけていないだけなのだ。あるいは自分のノミは他のメイジが使っているノミとは別種のものなのかもしれない。
 以降、ジョゼフは職人の持つ技術理論にのめりこんでいくこことなる。
 職人の技術は嘘をつかない。職人の技術にはごまかしがない。職人の技術は理論的だ。
 また、こうも考えた。メイジの中には、職人が天職と言ってよいほど手先が器用なものがいる。そんな連中の中には、こっそり職人の真似事をしたり、偽名を使って金銀細工を作っているものすらいるという。ならば逆に、平民の中にメイジが天職と言ってよいほど魔法技術に秀でたものがいてもおかしくないではないか。今、メイジになるものがメイジの血筋なのは、そういった連中を見つける努力を放棄しているからではないのか。
 そんなとき、彼は王に出会った。
 王を呼び出したのだ。
 王はメイジではなかった。だが不思議な力を持っていた。なにより、人を区別しなかった。差別しなかった。あらゆる人間を平等に扱い、愛していた。
 それはすさまじいカルチャーショックであった。頭の中では平民にもメイジになる可能性のあるものがいると思っていても、身体が拒絶していた。王族に生まれたというプライドが、平民と貴族を分けて考えさせていた。
 なにより、王の部下は自分の理論を実証するように平民でありながら不思議な力を持っていた。生まれながらの力ではなく、懸命な努力とたしかな技術体系によって身につけた能力。天才ではなく、努力の人々。
 王は、王を統べる王を見つけたのだった。
 王という字を分解するとヨミとなる。ジョゼフが見つけた王を統べるもの、その名をヨミと言った。

 ジョゼフは充実したときを過ごしていた。
 彼はうまれてはじめて友を得ていた。傍にいるのはメイジではない。かといって平民でもない。不思議な力を努力で手に入れ、実力を身につけた英傑・好漢である。偶然力を行使できる立場におかれて生まれただけで、使えない人間を虫けらのように扱うような野蛮きわまりない生き物ではない。確立された技術体系を持ち、メイジをはるかに凌駕する力を持つ男たちである。
 ジョゼフは夢を見ていた。それはハルケギニアにおいて、図法もない夢である。
 メイジであるとか、平民であるとか、亜人であるとかそういったすべての垣根をなくして、平等とする国をこのハルケギニアに建国するという夢である。すなわち、あらゆる身分差を消失させて、あらゆる人間を平等とし、それぞれの持つ人格や技術によってのみ評価を行う国を打ち立てるという夢だ。
 梁山泊を建立したのはその伏線であった。ここにあらゆる技術に秀でた英傑好漢をエキスパートとして集結させ、全ハルケギニアを統一するという大計画を打ち立てたのであった。そして別の世界をも侵略し、ヨミの名の下にあらゆる差別や垣根を取り払うという夢を抱いたのだった。
 だが、それを邪魔しかねない懸念がバビル2世以外に一つあった。
 実弟、オルレアン公シャルルである。
 一般的に世間では天才魔法使いの名で通っている。事実、わずか12歳でスクウェアクラスに到達したほどであった。頭脳明晰で人望厚く、善良にして高潔。周囲からはジョゼフを廃してむしろオルレアン公こそが王位を継ぐべきと囁かれた人物であった。
 が、それはあくまで現支配階級であるメイジの目から見ての話である。幼少期からの体験でメイジと平民という身分差について疑問をもち、ヨミとの出会いで近代的人権の思想に出会ったジョゼフにとっては、メイジと平民という階級差別に何の疑問も持たず、与えられた力を振りかざすだけのオルレアン公は守旧的な抵抗勢力でしかなかった。
 ジョゼフは兄としての直感で、もし自分がメイジ制度を廃してガリア国に平等という概念を持ち込もうとすれば、オルレアン公こそが率先して杖を自分へ向けてくるだろうことを確信していた。守旧派に担ぎ上げられて自分には歯向かう急先鋒となるだろうことを予想していた。
 それを取り除くには一つの方法しかなかった。
 そのことは充実したときをすごす托塔天王晁蓋の心に突き刺さったトゲとなっていた。
 だがやるしかなかった。それ以外に夢を現実とし、理想を形とする手段はなかった。
 家族をも皆殺しにしようとした。それは今後の改革で、守旧派がオルレアン公の血筋のものを担ぎ上げぬようにするためであった。
この国には自分のシンパよりもよほど公派の人間のほうが多いのだ。苦渋の選択であった。
 だが、失敗した。
 確実に姪を始末するつもりであったが、公妃の命をかけた嘆願によりそれを中止せざるを得なかった。
 それだけではない。自分へも多額の援助を行っている、大口スポンサー『幻惑のセルバンテス』が、姪を始末せんと開いた会食場に突如として現れ、公妃の嘆願の見届け人となったのだ。ガリアだけでなく、いくつもの国に強い影響力を持つセルバンテスが見届け人となっては、約束をたがえるわけにはいけない。
 あとで知ったことだが、セルバンテスが駆けつけたのは公妃最後の策略であった。自分が死ぬ、もしくは死んだも同然となった後、娘を守る盾がいる。そこで烈々たる庇護を願った文章を手紙として送ったのである。セルバンテスはそれに応え、オルレアン公の娘シャルロットの庇護者にして保護者となったのであった。

 キュルケが昨晩セルバンテスから説明を受けたのはあくまで『王弟を憎んでいた現国王ジョゼフが卑劣にもオルレアン公を闇討ちにし娘シャルロットの命までも奪おうとした。しかしそのことを察知した公妃によってセルバンテスが呼ばれ、暗殺は防がれた。だが、娘の身代わりとなった公妃は正気を失い、この屋敷に閉じ込められた』ということである。
 また同時に、なぜタバサなどという猫にでもつけるようなものを名乗っているのかということ。ときどき学院を抜け出し、帰国していたのかということを知った。
「ジョゼフ王は、なんとしてでもシャルロット君を抹殺する腹積もりなのだ。そのために、幾度となく生還困難な任務を与えたのだ。もし任務を果たせず殉職するのならば、『シャルロット君には以降絶対に手出しをしない』という私が見届けた誓約を破ることなく、目的を果たすことができるからねぇ……。」
 悔しげに言うセルバンテスの姿が強く印象に残っている。聞けばこの屋敷の維持費、唯一残る使用人、正気を失った公妃の治療費や生活費などはすべてセルバンテスが用立てているのだという。ジョゼフは目的を達成するために屋敷を完全に閉ざし、収入を一切消滅させ、不名誉紋まで刻んだのだという。
『そういえば、門に×印が刻んであったわね…』
 この屋敷へやって来たときのことを思い出すキュルケ。王族の証である杖を交差させた紋章に刻まれた、紛れもない傷痕を。
「わたしはあくまで庇護者でしかない。王がシャルロット君へ危害を加えないようにするための防波堤だ。だが、防波堤はあくまで波を防ぐための堤に過ぎない。シャルロット君には、波をものともせぬための支えが必要なのだ。キュルケ君。君という友達があの子にいてくれてよかった。シャルロット君のあんなに嬉しそうな顔を見たのは公が死んで以来だ。」
 強くキュルケの手を握り締めるバンテス。
「きみが信用できる人物だと思ったからこそ、全てを隠さず話した。あの子を……シャルロット君をよろしく頼む。」
 バンテスのゴーグルが、白く曇ったようであった。

 そのタバサは今、キュルケの横にちょこんと座っている。相変わらず無表情だ。
「なんであなたたちは水の精霊を守っているの?」
 場面は変わって深夜。湖のほとり。つまり襲撃者の正体がキュルケとタバサと判明した後である。
「説明すると長くなるんだが。」
 かくかくしかじかと説明する4人。
「ふーん、惚れ薬ね。ま、アタシには無縁よね。」
 胸を強調した、色っぽいポーズをとるキュルケ。思わず愚息がご立派になりそうだ。
「でも世界には特殊な趣味の人がいるし。わからないんじゃないかな?」
 あー、そうね。と思わず納得するキュルケ。脳裏にゴーグルをつけ、ドジョウ髭を生やした男の姿が浮かぶ。
「誰を想像しているのだね、キュルケ君。」
「きゃー!」
 ずざざざざ、とフナ虫が真っ青になるような速度で後ずさるキュルケ。いつの間にかセルバンテスが横に立っていたのだ。ふっふっふ
と笑みを浮かべるセルバンテス。
「バンテスおじさん。」
 4人が尋ねる前に、タバサが紹介した。紹介しなければあっというまに警察を呼ばれるような怪しい風貌だ。
 ギーシュとモンモンはセルバンテスと知ると、目を輝かせた。
「え、あの幻惑の?」
「フッフッフッ。その通り。君はたしか、グラモン卿の四男で、名前はギーシュ・ド・グラモン君だったね。そちらのレディはモンモランシ家
の、モンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ君。あちらのピンクブロンドの女性はヴァリエール家のルイズ・フランソワ
ーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール君……。」
 いずれもパーティで大昔に1度紹介されたかされていないかという人間だろう。それをすべて完璧に記憶している。これほどの人間でなければ、一代で財産を築けぬということなのだろうか。
 グラモン家、モンモランシ家ともにセルバンテスから多額の借金がある。ヴァリエール家は借金こそないものの、いくつかの事業を共同で行っている。たしかに知っていてもおかしくはないが、異常な記憶力と言ってよいだろう。
「ふむ。そちらの少年は?」
 バビル2世について訊ねるセルバンテス。ルイズがかしこまって
「わたくしめの使い魔、ビッグ・ファイアでございます。」
と答える。使い魔にまで丁寧にお辞儀をするセルバンテス。
「今までの話を失礼とは思ったがすべて聞かせてもらったよ。人類は滅亡する!ではなくて、だ。水の精霊は襲撃者がいなくなれば満足するというのだろう?」
「ええ、そうですね。」
 と言ってももう一つのほうが精霊にとっては大切そうなのだが。
「ならばこれで解決だ。私が責任を持って、密売ルートと話をつけておこう。これで襲撃者は現れぬはずだ。明朝にでも精霊を呼び出して、襲撃者はいなくなったと言えばよい。」
「昼じゃないと納得しない気がするわね。」
「ああ。」
 ルイズの言葉に頷く残る3人。よくわかっていないキュルケたちは疑問符を浮かべる。
「ふむ。なにか理由があるようだねぇ。昼に呼び出すほうがよいというのならばそうすればよいだろう。今日はもう遅いし、屋敷にでも泊めてあげたらどうだい、シャ……タバサ君。」
 セルバンテスの言葉にシャルロットが頷いた。この男、タバサにこんなに多くの友達がいると知ってほっとしたらしい。内気な子供を
持つ母親のようだ。
「フッフフ。それじゃあ行こうじゃないか、諸君。」
 マントを翻し歩き出すセルバンテス。その後を全員がついていく。

 深夜。
 ラグドリアン湖を望む、オルレアン公の屋敷のバルコニー。
 二つの月に照らされる、1人の男の姿あり。
 ワイングラス片手に、遠い世界を見つめてる。
「いくつもの並行世界を渡り歩き、ようやく辿り着いたこの世界。ついに、望みを見つけた。バビル2世様を、見つけたのだ。」
 セルバンテスは双月めがけ高々と右手を掲げた。

「 すべては 我らがビッグ・ファイアのために! 」

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