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糸色望の使い魔-5



ゴトゴトと馬車が揺れる。
私たちは学生からロングビルが向かったという証言を得て、大体の方向へと進んでいた。
さらにすれ違う人々、道沿いにある建物はすべて尋ねてロングビルの目撃証言を得た。
それによると今走っている森の中にいるらしいことが分かった。
これだけ簡単に見つかるというのに騎士団は何をしているのだろうか。
盗賊一人程度と軽く見られて誰も動いていないのかもしれない。

「あのー」
「何よ?」
隣に転がしているイトシキを見る。
「何故、わたしはロープでグルグル巻きにされて馬車に乗せられているんでしょうか?」
「逃げるからに決まってるじゃない」
「くっ……絶望した! 使い魔の扱いに絶望した!!」
「はいはい」
その言い回しも聞きなれた。
「しかし、そろそろロングビル……いやフーケと出会ってもおかしくない。解いてあげないと危ないのではないかね?」
とギーシュが言った。彼の足元には使い魔であるジャイアントモール、隣にはコルベール先生が座っている。
キュルケとタバサは風竜で上空を飛んでいる。運がよければ見つけてくれるはずだ。
私はロープを解きながらギーシュに聞いた。
「そう言えば、なんでアンタが居るの?」
「なぁに、友人の危機とあれば火の中にも飛び込むのが貴族というモノさ」
「友人……って誰が?」
「君が」
とギーシュの指が私に向けられる。私がギーシュの友人?
いつのまにそんな事になったのだろうか。
「偶然とはいえ、君のおかげで僕のカワイイ妖精たちを泣かせることが無かったからね。借りは返すさ」
モンモランシーと下級生のケティとか言う子の事だろう。
なるほど、そう言われると納得できる。
「ベルダンディー君、主人を交換しませんか?」
解いたロープを首にかけると思いっきり引っ張った。

「おや、シルフィード君が降りてきますよ」
イトシキの言葉に空を見上げると、青い鱗の竜がゆっくりと降下してきた。
大きな翼で砂や木の葉を巻き上げながら、馬車の横に着地した。
その背からタバサとキュルケ、それと意外な敏捷さでキュルケの使い魔が飛び降りてきた。
「何か見つかったかね?」
「ぇえ、この道をまっすぐ行ったところに小さな小屋が一軒」
コルベールの問いにキュルケが答える。
「人が居たかどうかまでは分からなかったわ」
「そうか、ならココからは馬車を降りよう。出来れば気づかれずに近づきたい」
その意見に誰も異論は無く、馬車を降りる。
ここでまた行かないとか言うかと思ったのだが、イトシキも素直に馬車を降りた。
やっと覚悟を決めたのだろうか。と思ったらおもむろに口を開いてこう言った。
「みなさん、ここで一つ確認したい事があります!」
「言っておくけど、ここで兵士を呼びに帰るってのは却下よ」
言いそうな事を先回りして言った。だがイトシキは首を振って話を続けた。
「いくら私でも、ここまで来れば引き返せないことは分かります。それよりも確認したい事はこの中の誰がリーダーかと言うことです」
「コルベール先生じゃないの?」
残りの三人にも視線を送った、ギーシュは首を縦に振り、タバサは無言で肯定を示した。キュルケは微妙な顔をしているが口に出しては何も言わないので、まあ文句は無いのだろう。
「そうです、私たちはそれを絶対に心に刻み付けなければならないのです。戦場において一人の身勝手が全員を危険に巻き込むなんて事はよくある事。
 これから私たちはコルベール先生がカラスの色は白と言えば白だと言わなければなりませんし、ネコの鳴き声がワンだと言えばワンだと思い込まなくてはならないのです!」
そう言ってコルベール先生を見た。つられて私たちもコルベール先生を見る。
「えぇ、皆が認めてくれるのであれば、私の指示には従って欲しい」
と自らが指揮を執ることを了承した。しかしイトシキの熱弁は止まらない。
「キュルケ君も了承してくれますか?!」
「ぇ、えぇ」
「本当ですか、もしもコルベール先生がその場で三回まわって『ワン』と言えと言えばやりますか?」
「なんで私がそんな事をしなくちゃいけないのよ!」
あまりの例えにキュルケは顔を赤くしとっさに否定した。私に言われてたのであれば同じ言葉を返したと思う。
「それはいけません、ここから先は貴女が『ワン』と言わなかったせいで誰かが死ぬかもしれないんです。コルベール先生の言うことならばその場に残って一人で死力を尽くし戦う覚悟すらしなければならない、分かりますか?!」
「……死の覚悟はしてるわ、でも誇りを捨てる気は無いわよ」
大体イトシキの言いたいことが伝わったのか、キュルケはいつもの余裕の表情に戻った。
そう、この任務はもしかしたら死ぬかもしれないのだ。
でも私たちは貴族だ、死はとうに覚悟している。それはタバサやギーシュも同じだろう。
対してイトシキの顔が真っ青に染まっていく。
「イトシキ、どうしたの?」
今までの強気なフリから急に弱弱しい雰囲気になっている。
「今の理論からいくと、もしコルベール先生が私に死ねをおっしゃったら私は死ななくてはいけません」
「そういう事になるわね」
「絶望した、軍隊の規律に絶望した!!」
「いや、アンタが言い始めたんでしょう?!」
再び「帰る」と言い始めたイトシキを押さえ付け、ギーシュが帰してやればいいじゃないかと無責任に言い放つ。
ギーシュもタバサもほぼ同意見、だけど使い魔として主人の危機に逃げ出すなんて許されない。
結局はコルベール先生の
「生徒たちにそんな危ないことはさせない、もし一人で戦うなら私が残るよ」
という台詞でなんとか収まった。

小屋の周りの木陰に隠れ、コルベール先生とタバサの様子を見守る。
小屋に突撃するのがコルベール先生とタバサ。シルフィードは上空で待機。小屋の左方の木陰に私とイトシキにギーシュ、右方の木陰にキュルケが隠れて犯人の逃亡を阻止する予定だ。
人数の偏りは戦力の関係らしい。自分が魔法を使えないのがとても悔しかった。
だが、小屋に入って数分、扉からタバサが出てきてこちらに手招きをする。
「どうしたの? フーケは?」
草群から飛び出すとタバサに問いかける。
「居ない、でも破壊の杖はあった」
「どういうこと?」
ドアが開いてコルベール先生も出てくる。
「どうやらフーケが留守の時に来たようだね」
何か大きく円筒状の鉄の塊を持って出てきた。
「それが破壊の杖ですか?」
「杖には見えないわねぇ」
集まってきたギーシュとキュルケが各々に感想を漏らす。
私の目からもそれは到底杖とは言い難い物に見えた。
「まるでロケットランチャーみたいな形ですね」
とイトシキが手を顎にあてて言った。ろけっとらんちゃー?

その時、地面が大きく揺れた。



木が揺れて葉がザワザワと音を立てる。驚いた鳥たちが一斉に空へと飛んでいった。
大きな足を振り下ろし、無骨な岩の胸板を張り、学園に居たゴーレムは再び私たちの目の前に現れた。いや、森の土を使ったせいか学園のゴーレムよりは少し赤みを帯びているかもしれない。
見上げると、あらためてその大きさに気が挫けそうになる。
「タバサ君とわたしは前へ、他のみんなは後方支援」
事前の打ち合わせどおり、コルベール先生が指揮をとりゴーレムへと駆け出していく。
フーケの姿が見えない、だがゴーレムが居る以上はそう遠くない位置にいるはずである。
「何ぼーっとしてんのよ、行くわよ!」
キュルケの声にはっとなって私も動く。
「イトシキ、あんたは破壊の杖を持って離れてなさい」
そこに置かれた杖を指差し、キュルケの後を追った。
何か言っていたようだったが今は構ってる場合ではない。私にだって失敗だけど爆発させることぐらいはできる。
いや、この戦いの中で何かひとつでも呪文を使いこなして見せる。
杖を取り出すとぎゅっと握り締めた。

ゴーレムはすでにボロボロに見えた。
コルベール先生とキュルケの炎に焦がされ、タバサの放った氷の矢が何本も体に刺さっている。私の魔法もゴーレムの体に複数の穴を空けている。ギーシュのゴーレムは……ほぼ大人と同じ程度の大きさのせいであまり役に立ってないけど。
だが、あまりの大きさに体の芯まで攻撃が届かず、ゴーレムはまったく衰えることなく動き続ける。
これでは埒があかない。フーケ本人を見つけたほうが――
そう考えていると、ゴーレムがある一点を見てぴたりと動きを止めた。チャンスとばかりにタバサの風が襲い掛かり左手首を切断した。
だが落とされた手に目もくれず、ゴーレムは急に走り始めた。走るといってもその動きは歩いてるようにしか見えないが、一歩が大きいためすごい速度だ。
「逃げろ!」
コルベール先生の声でゴーレムの進路上に居た私とギーシュは間一髪で振り下ろされた足から身をかわした。
それでもゴーレムは止まらず、まっすぐに走っていく。
どこへ?
そう思ったのもつかの間、ゴーレムの進路上には必死に走っているイトシキが見えた。
しまった、破壊の杖を持たせたのは失敗だった。破壊の杖を取り返すことを優先するのは考えれば分かることなのに。
ゴーレムがイトシキまであと一歩のところまで迫った。
「イトシキぃ!」
私は叫んでいた。

踏み潰された、そう思ったのだけどイトシキは生きていた。
ゴーレムはイトシキを超えるとその進路を塞ぐように止まっていた。そうか、破壊の杖を持っている以上は彼ごと潰すわけにもいかないのだ。
今、ゴーレムに一番近いのは私とギーシュ。行くしかない。
近いといってもその距離はゴーレムが8歩も歩いた先だ。人間の足ではかなり遠い。間に合うだろうか?
「止まりなさい、ミス・ヴァリエール」
コルベール先生の指示だったが無視して走り出した。
私の使い魔だ、私が助ける。

イトシキは体の震えを抑えながら杖をゴーレムに向けていた。
だがメイジではないイトシキがいくら杖を構えようが魔法が出るわけが無い。
杖は何も反応しない。
「ロケットランチャーの使い方なんか知るかぁ!!」
こんな時にまで訳の分からない事を。
まだ距離がある、でもこの距離なら魔法がなんとか届く。ともかくゴーレムの注意をこちらに向けないと。
炎の魔法を唱える、だけど失敗してゴーレムの左肩が爆発する。ゴーレムはこちらを向きもしなかった。それどころか穴がどんどん塞がっていく、切り落とされた左手も再生した。
だめだ、私の失敗魔法じゃあゴーレムの気を惹くことすらできない。
ゴーレムは無事な右手をイトシキへと伸ばす。そして手のひらを上にするようにして彼の目の前で止めた。破壊の杖を渡せと言うことだろう。
「ダメよ! イトシキ!」
渡せばイトシキを殺さない理由が無くなる。他のみんなもすぐ傍まで走りよってきている。数秒でいいから時間を稼いでくれれば……
「どうぞ」
とあっさりとゴーレムの手に破壊の杖を渡していた。
「ば、バカぁ!!」
素直に渡せば何もされないとでも思ったのか、そんな甘い相手ではない。
ゴーレムは破壊の杖を握りしめ、右手の中に覆い隠すと。
次の瞬間、左手を振り下ろしてイトシキを潰した。

「……ぁ」
と、まぬけな声が喉から漏れ出た。
死んだ、私の使い魔が
まだ出会ってから一ヶ月も経ってないのに。やっとアイツとの生活も慣れてきたところなのに。
なのにあっさりと。簡単に死んでしまった。
連れてこなければ良かった? 帰りたいといった時に返せば良かった? いや、使い魔は主人とあるもの。
それじゃあ破壊の杖なんか持たせなければ良かった?
もしもを考え、そんな事を考えても目の前の現実は何も変わらなかった。
いや、そもそも……
「あなたなんかが居なければ!」
杖を振る、ゴーレムの頭の一部が欠け飛んだ。
それでも私には彼の仇に一矢報いる力すら無い。
悔しい、なんで私は魔法を使えないのよ。
足から力が抜けてその場に座り込んだ。
情けない、自分が心底なさけなかった。
「下がってなさい」
そこへコルベール先生たちが駆け寄ってくる。そのまま私を追い抜きゴーレムへと接近した。
「あとは任せたまえ」
ギーシュが真剣な顔をして走っていく。
「……」
タバサが無言で駆け抜けていった。
「ルイズ、そんなところに座り込んだら邪魔よ!」
キュルケが追い抜いていく。火トカゲのフレイムが私の横で止まってキュルケを一緒に見送った。
目を向けるとギュルギュルと喉を鳴らした。護衛ということだろうか?

コルベール先生の杖から放たれた炎が蛇のようにゴーレムの左腕に絡み付いて、肘から先を落とした。
さらにタバサとキュルケの魔法がゴーレムを襲う。ギーシュの青銅人形がゴーレムに剣を突き立てる。
コルベール先生の魔法だけがさっきと比べて上がっているような気がする。
再び先ほどと同じような形へと戦況がスライドしていた。
ただ違うのはゴーレムの右手に破壊の杖が握られていて、イトシキがもう居ないこと。それと私がその場に座り込んで動かないこと。
あの馬鹿、なに勝手に死んでるのよ。
これからあのネガティブな根性を叩きなおしてあげようと思ってたのに、死んでしまったらそのままじゃない。
そのままじゃあ絶対に死後は始祖ブリミルの御許になんか行けないわよ。
イトシキの辛気臭い顔が頭に浮かんでは消えた。

「あ~、死ぬかと思いました」

そしていきなり目の前の地面からその顔が生えてきた。
「……へ?」
首が生えている、もといイトシキの顔が地面から生えていた。
なんだろうコレは、死んでから転生したイトシキの生まれ変わりの植物だろうか?
とりあえず頬を引っ張ってみた。
「いたいいたい……なにをするんですか!」
イトシキの頭はそのまま身をよじらせて地面から這い出てきた。
着ている服もイトシキそっくり。というよりもイトシキ本人だった。
あまりに信じられなくてさきほどイトシキが潰されたと思われる方を向く。
そこには焦げて崩れた岩と人が一人入りそうな黒い穴が空いていた。
イトシキが出てきた後ろから、ギーシュのモグラが出てきた。この子が助けてくれたのか。
「い、生きてる?」
「あまり無事とは言えませんが。正確に言うと全身あざと擦り傷だらけです」
あの状態から言えば奇跡的だ。
「ばかっ! 心配させるんじゃないわよ!」
「ぇ、心配してくれたんですか?」
真顔で聞き返された。
「う……」
そのあまりの言葉に頭に血が上った
「うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!」
あまりに頭に血が上って他に言いたいことが浮かんでこない。
「ともかく、アンタはこの火トカゲの横でじっとしてなさい」
杖を掴んで立ち上がる。ゴーレムはまだ倒れてないのだ。当の本人のフーケもどこかでこの状況をみてほくそえんでいるに違いない。
イトシキが無事なら、ここで座り込んでいる理由なんか無い。私も参戦しなくては――

「え……はぁ、そうですか。なるほど」
駆け出そうとしたところでイトシキのよく分からない台詞が私の足を止めた。
「え? 何か言った」
振り向くとイトシキは私ではなくギーシュのモグラと顔を突き合わせていた。
そのままボソボソと会話を交わすとモグラは再び地面に潜っていった。
「何してるのよ? もしかして頭でも打った?」
「突然失礼な事を言わないで下さい。ベルダンディー君から作戦を聞いただけです」
「へ?」
ギーシュのモグラから? 使い魔は主人とは意思を疎通できるけどその他の人間とは話すことはできないはずだ。
本当に頭でも打っておかしくなってしまったのだろうか。おかしいのは元々な気もするけれど。
「あんた、本当にだいじょ――」
そこで彼の右手が光ってる事に気がついた。
イトシキの使い魔のルーンが光っている。
「フレイム君、今からベルダンディー君がゴーレムの動きを止めてくれます。君なら……悪く見積もってもゴーレムの腕を吹き飛ばせますよ」
フレイムの背中に手をのせた。ますます右手のルーンが強く輝き始める。
「火は沢山溜めるのではなく、最小限に、喉で絞るように集めるんです。そう、上手いですよ」
まるで教師が教え子に勉強を教えるのように、やさしく力強い声で語りかけている。
その時、ゴーレムが大きな音を立ててバランスを崩した。
それは誰かが魔法で足を崩したからではない。ゴーレムの足は大きな穴に捕らわれて居た。近くの地面からギーシュのモグラがひょっこりと顔を出す。まさかあの大穴をこれだけの短時間で掘ったというのか。
そのときキュルケが驚いた様子でこちらを見て、その目が信じられないものを見たように見開かれた。そして慌てて叫ぶ
「みんな、離れて!!」
その剣幕に危険を感じた、ゴーレムの近くに居たコルベール先生とタバサはゴーレムから離れる。
「今です!」
イトシキの言葉と同時に、フレイムの口から小さな、木の実ほどの大きさの火の玉が飛び出した。
それは銃弾のように曲がらず、真っ直ぐに飛んだ。あまりの速さに私にはオレンジ色の線にしか見えない。
それがゴーレムの胸に突き刺さる。一瞬だけの間。吸い込まれるようにゴーレムの胸に収まった。ゴーレムの体を貫くこともなく橙色の線が途切れる。失敗か?
そう思ったその直後にゴーレムは内部から大爆発を起こした、ゴーレムの体はいく百にも分解され、四方に飛び散り、まるで太陽のように強い光が私たちを襲った。
最後に残ったのは、突然胴体を失って立ち尽くす足と、爆発の勢いで飛ばされた両腕だけだった。

破壊されたゴーレムはその後破片も全て土へと還った。
幸いな事に右手に包まれていた破壊の杖は爆発の直撃を避け、無事に回収することが出来た。
フーケは、結局最後まで姿を見せずにそのまま行方知れずになった。まあ、あれほどの強力なフレイムの火球を見たら姿を出す勇気は無かっただろう。
学院に戻り、破壊の杖を取り戻したこととフーケを取り逃したことを告げた。
コルベール先生が居たとはいえ、ほとんど学生だけの、しかも決め手がギーシュとキュルケの使い魔と言うことで学院長はフーケを取り逃がしたにも関わらず手放しに私たちを褒めてくれた。
破壊の杖は再び宝物庫へ収められ、今後は複数の先生が同時に呪文を唱えなければ開けられないように変更するらしい。そう言えば学院長が宝物庫を不用意に開けなければ今回の事件は起きなかったのである。

この話はいっきに学院全体へと広がった。
目立ちたがり屋のギーシュがここぞとばかりに自分たちの活躍を広めたせいだろう。多少ギーシュの美化がすぎる話があったが、そこはご愛嬌。実際ゴーレムに最大の隙を作ったのは彼の使い魔なのだから特に文句は無い。
だけど珍しいことにキュルケはこの騒ぎにあまり参加せず、適当にクラスメートをあしらっていた。私は結局最後まで活躍らしい活躍はしていないし、タバサは無口で喋らないので結果ギーシュに人が殺到することになった。

そして今夜は舞踏会。
やはり話題の中心になってるのはギーシュとキュルケだ。主に女生徒がギーシュに男子生徒がキュルケに集まってる感じになっている。
ギーシュに関してはモンモランシーとケティが両腕を占領して周りの女生徒と険悪な状況になってるので、舞踏会を楽しんでいるという状況ではなくなっているが。
タバサにも人は集まってる、当然のごとく無視しているので何人もの男子生徒が涙を飲んだようだ。さらにコルベール先生にも人が集まっている、ダンスの誘いまで受けていたのは少し驚いた。まあ深い意味は無いのだろうが。もちろん私にも誘いは来たけれど全て断った。
確か先に来るように言っておいたのだけど、イトシキの姿が見えない。
そう思って探し回っているとバルコニーに一人立って居た。ロープを木に括りつけて、手すりの上に立っている。
無言で近寄ると、スカートの端を持って前足蹴りで突き落とした。

「うわぁああ!!」
下を見ると、まだ首にひっかけていなかったようで。手でロープに必死にしがみついていた。
「探したじゃない、何してるのよ」
「あなたに突き落とされて墜落死寸前なんです!!」
二階から落ちた程度じゃ死なないだろう。

「死んだらどうする!」
なんとかバルコニーに這い上がって来た彼が言った。
「ゴーレムに潰されて死なない人間がバルコニーから落ちた程度じゃ死なないわよ」
「それはベルダンディー君が助けてくれたからで、私自身はどこにでも居るひ弱な一般市民です!」
いつもどおりの言い合い。
だんだんこの関係に慣れ、居心地がよくなってるような気がする。
「あら、ここに居たのね」
「キュルケ」
真っ赤なドレスを着たキュルケがバルコニーに現れた。
「ダンスの相手はほったらかしでいいの?」
「いいのよ、それよりアンタの使い魔……えっとイトシキだっけ?」
とイトシキの目の前まで近寄った。
「はい、なんでしょうか?」
「盗賊退治のときは助かったわ、ありがとう。それだけが言いたかったの」
それだけ言うとそうそうと踵を返して行ってしまった。
キュルケも気がついて居たみたいだ。それもそうか、使い魔とは感覚を共有できる。フレイムにイトシキが何をしたかについては私よりも詳しく知っているだろう。
そしてキュルケの言葉で確信した。あまり信じられなかったのだけれども、イトシキは何か特別な力を持っていると。そしてその力でフーケのゴーレムを退治したのだと。
「……私、盗賊退治のときには何も役に立ってなかったと思うのですが」
「あんた、自覚ないの?」
もしかして、この男は自分が他の使い魔と会話できるだけだとでも思っているのだろうか。
フレイムのあの炎は明らかに野生のサラマンダーに出せる力ではない。
「まさか、これが舞踏会の罠!? 上っ面で笑顔と賛美を送りながら腹の中ではいかに相手が何を考えて、どう利用できるかを考え続ける舞踏会の手管……」
「あんたねぇ」
もしかして、それがさっき自殺しかけてた理由か。あいかわらずバカバカしい。
「ところでイトシキ、何か言うことは無いの?」
せっかく私が他の男のダンスの誘いを蹴ってここまで来たのだ。
服が似合ってるとかカワイイとか言うとか、ダンスに誘うとか。
それが男の役目というものじゃないだろうか。
「絶望した、舞踏会の裏側に絶望した!!」
「違うでしょ!!」
今度こそバルコニーから完全に突き落とした。
まあ、死なないわよね。



――完――

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●あとがき
えっと、いろいろとごめんなさい。
急にはじまって急に終わってしまいました、絶望した方は絶望したと叫んでください(汗
見切り発進の思いつきではじめたもので、今は勢いで進んでますが、これは長編になると途中で間違いなく失速すると言うことに気がつき。フーケ編で終わらせてしまいました。
ツッコミどころ満載ですが、それでもこの凸凹コンビが好きだと言ってくれた人に感謝を。
ワルドとの絡みを期待していたかたに謝罪を
それでは・・・

ちなみに次も弱キャラでやりたいなぁ・・・弱キャラ大好きです。



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