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ゼロのアトリエ-24


アルビオン大陸のサウスゴータ地方、シティオブサウスゴータと港町ロサイスを結ぶ街道の枝道。
普段は誰も通らないその枝道を、土くれのフーケが歩いていた。
顔や手足につけられた無数の傷、それに対する応急処置が未だ生々しい痕としてその姿を晒している。
「さて、あの娘は元気にしてるかね」
ようやく森の中の集落にたどりつき、フーケはいつものように遊んでいる子供達に挨拶した。
「よう」
しかし、帰ってきた答えはフーケの触れてはいけない傷に触れてしまう。
「マチルダのおばちゃん!」
フーケの全身が一瞬固まり、しかるのちにゆっくりと手が伸びて、
その許しがたい発言をした子供の頬が掴まれ、愉快な顔が形成される。
「私はまだ二十三よっ!言ってあったよねえ?今度言ったらコロスってさあ」
あまりの迫力に恐怖を感じたその子供は、驚愕に目を見開く。
「あーごめんごめん、お姉ちゃんちょーっとやりすぎちゃったかなー?」
穏やかな笑みを浮かべるフーケだが、子供は目の端にいっぱい涙を溜めて、
フーケが手を離すと同時に大声を上げて火のついたように泣き始めた。
「うえ゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!」
「あー…その、何だ…」
さすがに後悔して何とか泣き止ませようとしたフーケだったが、
あやせばあやすほど泣くばかりでちっとも要領を得ない。

泣き声を聞きつけたのであろうか、誰か一人、駆けてくる姿があった。
草色のワンピースに流れるような金色の光をのせて必死に駆けてくるその少女は、
まるで絵画の世界から飛び出してきたような、凄絶なまでの美しさを放っている。
その少女はフーケに気付き、花咲くように破顔してその胸に飛び込んだ。
「マチルダ姉さん!」
フーケの頬にかかったその耳が、彼女にエルフの血が混じっている事実を思い出させる。
「ティファニア」
フーケもようやく、外に向けての『土くれのフーケ』としての鎧を解いた。

「もう、マチルダ姉さんったらまた無茶したの?」
「ああ、ちょっとドジっちまってね」
傷だらけのその様子に、ティファニアは咎めるような調子で指をさす。
「だから使い魔を使ってってアレほど言ったのに」
「言ったろう?あんたの『お友達』が見つかるまでは、私も使い魔を使わない、ってね」
「もう、変なところで律儀なんだから」
ティファニアはマチルダ姉さんを心配して、ことあるごとに使い魔を使うように忠告してきたのだが…
マチルダ姉さんは『自分が使い魔を召喚するのはティファニアの後』という幼い日の約束を守り続けている。
「けど、無事でよかった」
「使い魔が必要なのは私よりも、あんたの方だと思うけどねえ…」
「いいんです、何も憶えてないなんて、きっと大切な事じゃなかったんです」
マチルダ姉さんの勧めに、きっぱりと答えるティファニア。

ティファニアは、召喚したはずの使い魔と、使い魔に関する記憶を全て失っていた。
『マチルダ姉さん』とて、ただ、ティファニアの書いた一通の手紙で知っているだけだ。
『お友達』を召喚しようとしたら、平民を召喚してしまった事。
その左手に、見たこともないルーンが刻まれた事―――そしてその手紙の後、
ティファニアの使い魔などまるで初めから存在しなかったかのように消えてしまった事。
「私は、ただここでひっそりと生きていければいいんです」
「そうかい。まあ、私はあんたが良ければそれでいいんだけどね」
状況がそれを許してくれる限り、この娘には平穏の中で生きていて欲しい。
『マチルダ姉さん』は、柄にもなく始祖ブリミルとやらに祈りたい気分になった。


ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師24~


「ちっ!」
不利を悟ったワルドが、ヴィオラートたちから距離をとり始める。
「今日の所は引こう。だが勝利を収めるのは我々『レコンキスタ』だ」
ワルドは素早く『フライ』のルーンを詠唱し、礼拝堂のステンドグラスをぶち破って…逃げた。
「逃がさないよっ!」
ヴィオラートが反応し神聖文字を飛ばすが、わずかに届かず…ワルドは、礼拝堂の外へと逃れる。
「おのれ!待て!」
ウェールズが後を追おうとするが、
「待ってください」
ヴィオラートがそれを引き留めた。
「ウェールズさんには、これから果たすべき義務があるでしょう?」
ウェールズは我に返り、ヴィオラートに向き直る。
「それに…『遍在』を追っても、あまり意味がないんじゃないですか?」
「そうだった。裏切りに目を奪われ、我を忘れていたようだ。礼を言う、ヴィオラート殿」
落ち着いたウェールズに、ヴィオラートは三つほどのケーキが入った袋を渡し、
「あたし特製のケーキです。何て言ったらいいのか、わかりませんけど…」
そこで言葉に詰まり、心の底から搾り出すように言葉をつむぎ出す。
「憶えてますから。それで、ちゃんと伝えますから」
ウェールズは悟りきった目線をヴィオラートに贈り、
「アンリエッタには、ウェールズは最後まで勇敢に戦って死んだと。そう伝えてくれ」
それだけ言い残し、ヴィオラートたちの元を去っていった。

これをもって、ようやくヴィオラートの策全体が完全なる終焉を迎えることとなる。
もしこのワルドが本体で、なおかつ十分な行動力を保持したまま捕まるような事があった場合、
ヴィオラートの嘘が証明される…このワルドが本体である事が証明される確率が万分の一でも発生する。
そのリスクを、ほんのわずかな綻びを作らぬために、ワルドはここで取り逃がす必要があった。
一度取り逃がせば、ヴィオラートが、ルイズが、ウェールズが次に会うワルドが本体であっても、
今現在取り逃がしたワルドが本体である事を証明する機会は永遠に失われる。

ヴィオラートの完全勝利が確定した瞬間であった。

「ルイズちゃん」
結婚式を挙げようとした婚約者が『遍在』で、皇太子の暗殺を企んでいた。
放心するルイズに、しかしヴィオラートは声をかける。急ぐ必要がある。
「ヴィオラート…」
ルイズは何もかもがないまぜになった顔でヴィオラートに振り返った。
「ルイズちゃん、色々お話したい事はあるけど、今は時間がないの」
「時間?」
本当は時間を取ってあげたいが、ここで時間をかけると全てが水泡に帰してしまう。
とりあえずルイズを生きながらえさせるために、ヴィオラートは渾身の力を込めてまくし立てる。
「そう。ワルドさんが敵で、罠を仕掛けたとすると、もうすぐ敵がやってくるんだよ」
「え?え?」
「だから、早く出ないと。アルビオンを」
「どうやって…グリフォンは使えないし、船はないし…」
「大丈夫!これがあるじゃない!この小ささなら、敵も見つけられないと思うよ!」
そう言って取り出だしたる物体は、ああ、見慣れたホウキとフライングボードではないか。
「え、いやでも、それじゃあアルビオンを出るなんて…」
「フライングボードはともかく、ホウキでこんな高い空を飛んだことはないけど…」
「ちょ、ないって、それじゃあまるで実験飛行ってことに…」
「大丈夫!あたしがホウキに乗るから、ルイズちゃんはフライングボードにつかまってればいいよ!」
「そ、そう言う問題じゃ…」
「滑空するだけなら全然問題ないよ!むしろ楽しいかも!」
ルイズの命を守る為、ヴィオラートは半ば強制的にルイズをフライングボードに乗せ、
思いっきり加速度をつけて押し出した。黄ばんだ部分を押されたフライングボードは勢い良く飛び出し、
あっという間にアルビオンの蒼空の中の黒い点となって消える。
「さて、あたしも行こうっと」
ヴィオラートはホウキに乗って思い切り駆け、そして飛んだ。いや、発進した。

「ひーーーーーーーーーーーーえーーーーーーーーーー」
「わー!たのしーなー!ねえ、ルイズちゃん!こんな体験めったに出来るものじゃないよ!」
人間の体感する速さではない…少なくともこの時代の人間が体感したことのない速さに、
完全に恐慌状態に陥るルイズと、レアな体験とばかりに大はしゃぎで、
見たものがそれだけで癒されるような満面の笑みを浮かべるヴィオラート。
「あっちがラ・ロシェールって街かな!樹が見えるよ!ねえ、ルイズちゃん!」
高揚するヴィオラートは、とりあえず相手が話を聞いているかどうかは関係ないようで、
見たものや感じた事をいちいちルイズに報告し始めた。
「いーーーーーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーー」
ルイズの悲鳴が、いつまでもアルビオンの空にこだまする。

「あら?」
「どうした?何かあったのかい?」
シルフィードに揺られ、アルビオンを目指していたキュルケは、
何か凄く速くて小さい桃色のものとすれ違った事に気付いた。
「ちょっと、あれヴァリエールじゃないの?」
「?」
そう言った時には既に、ルイズは空の彼方へと吸い込まれていた。
「何か小さい点が見えるけど…これじゃ何なのか判別できないね」
「何かあったのかしら。ヴァリエールだけがあんな…」
キュルケの発言を遮るかのように、今度は錬金術師の能天気な声が空から降ってきた。
「うわーい!皆来てくれた…」
全部言い切らぬ間に、そのホウキも遥か彼方へと消えてゆく。
「なんにせよ、合流した方がいいでしょうね…」
キュルケはタバサを促し、二人の消えた方角…ラ・ロシェールへと進路を向ける。

今回。ルイズは体を張って、二つの教訓を得た。
まず一つは、ヴィオラートの楽しいと他の人の楽しいはかなり違ったものである、という事実。
もう一つ、ヴィオラートには二度と逆らわないでおこう、という真理。
この二つの教訓はルイズの深い深い心の底に刻み込まれ、生涯上書きされる事はなかった。


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