あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

デュープリズムゼロ-32

第三十二話 『夏期休暇は割と大忙し』

「トレビア~~~ン!!と~ってもよく似合っていてよミントちゃん!」

「はいはい、どうも…」

心底げんなりとした表情でミントは自分のウェイトレス姿を褒めてくれた酒場『魅惑の妖精亭』のマスタースカロンを軽くあしらうと足早にカウンターに向かい、客の待つテーブルに運ぶべきお酒と料理の乗ったトレーを両手と頭の上に器用に乗せてみせた。

その様子を厨房から見ていたスカロンの娘ジェシカが感心した様子でミントに声をかける。

「ミントほんと、あなたって器用ね~。それ、全部6番テーブルだから溢さないようにお願いね。」

「オッケー」
今日も返事は朗らかに、足取りも軽くミントは魅惑の妖精亭でウェイトレスとしてのアルバイトに精を出す。全ては自分に会えるのを楽しみにしてお店に足を運んでくれるお客様の為に…



等と言う事は無く、ミントがこんな事をしているのにはきちんとした経緯があったのだった…



____ 数日前 魔法学園

「ミント、姫様から指令が下ったわ。貴女も協力しなさい。」

唐突に一枚の指令書らしき羊皮紙をミントの眼前にルイズが突きつけたのはあのアンリエッタ誘拐の夜から数日が経過し、学園が夏期長期休暇に差し掛かると同時だった。

ミントが得ている風の噂で聞けばアンリエッタはあれから積極的と評するよりは取り憑かれたかのように王女として魔法、政治、兵法あらゆる学問を学びんでいるそうだ。
そんなアンリエッタからの指令書には城下での市井に流れている噂、情報、それら女王という立場からは直接には得がたい物をどうか自分に届けて欲しいという物であった。

溜息混じりにミントはルイズを見やる…ルイズの瞳はまさに今使命に燃えていた。

(駄目だわ…完全にやる気満々ね…仕方ない…)
「ねぇルイズ、この指令書には諸々の費用として400エキューが用意されてるって書いてるけど少なくとも半分はあたしが貰って良いのよね?いっとくけどただじゃあたしは動かないわよ。」

「仕方ないわねー…まぁ、とにかくこれからしばらくは街で身分を隠して情報収集よ!!姫様の期待に応える為に!!」

張り切るルイズの様子にミントは一抹の不安を抱く…
ミントの知る限りルイズはべらぼうにプライドが高くて我が儘だ。それに加えて世間知らずな癖にその事実を認めようとすらしないのだから手に負えない。

(ハァ~…面倒な事になりそうね…)




案の定、ミントの不安は的中した…

アンリエッタから支給され、ミントと折半した結果の400エキューに対し、ルイズがまず言った一言は
「これじゃあ足りないわ。」
だった。曰く服は絹をふんだんに使った仕立てでは無いと嫌だの、宿泊する宿は最高級じゃないと寝られないだの、挙げ句何に使うつもりかは分からないが馬を買う必要を説いたり…

「だったらあそこで増やせば?」

そう言って、ルイズの様子に呆れ果てたミントが世間の厳しさをルイズに教える為に進めたのは『絶対勝てる』を謳い文句にしているカジノだった。



___ 城下町 噴水広場


黄昏を受けて町並みは美しい緋色に染まる。そこには全ての資金をすり尽くし、酷く憔悴した様子のルイズが両手で顔を覆って項垂れていた…

「絶対勝てるって書いてたのに…」

「最初は勝ってたじゃない、そんな物よ。で、これからどうするの?」

「ねぇ…ミントォ…あなたまだ陛下から頂いた200エキュー持ってるのよね…」

「えぇ、持ってるわよ。でもこのあたしが貸すと思う?まぁそりゃルイズとも長い付き合いだし、考えてあげないでも無いけどあたしからお金を借りると言う事がどういう事かはあんたは分かってるとあたしは思うけど?」

「うぅ…」
ミントをよく知る人物ならばここでルイズがミント金融に手を出そうとしたならば「絶対に止めろっ、破滅したいのか!??!」と全力で止めるだろう…誰だってそうする。ルイズだってそうする。

「まぁ、一回位野宿してみれば?この季節なら死にゃしないわよ。」

そう言って良い笑顔を浮かべるミントに対してルイズは今にも泣きそうな表情を浮かべてただひたすらに恨めしげな視線をミントにぶつける。


「あらん、イヤだ~そこに居るのはミントちゃんじゃないの!!」
と、そんな二人に妙にねっとりとした男の声がかけられた…声のする方に注目した二人の視界に映ったのはこちらに向かってやたらナヨナヨとしたステップであるいてくる一人の男性…

その者紫のレオタードを纏い、鍛え抜かれたその逞しい身体はレオタードによってより見る物を圧倒する…
トリステインでは珍しい黒色の頭髪はポマードによってガチガチに固められ、香水の香だろうか、その身体からはギーシュと同じく薔薇の体臭が放たれていた…

「お、お久しぶりね…スカロン店長。」

「いや~ん、スカロンじゃなくてミ・マドモワゼル、よ!!」

「ちょっと、まさかとは思うけどミントの知り合い?」
不意打ち気味の登場によるそのインパクトに軽く引きながらも律儀に挨拶を返したミントに、しばらく呆然としていたルイズが耳打ちするように小声で問い掛ける。
少なくともルイズはミントにこんな妙ちきりんな知り合いが居る事は知らない。

「まぁね…良く遺産とかお宝の色んな情報集めるのに世話になってる酒場のマスターなのよ…こんなだけど色々とやり手なのよ。」

「そういえばあんた、頻繁に私に黙って授業サボってトリスタニアに何かしに行ってたもんね…」
ルイズは言ってミントをジト目で睨む…

「所でミントちゃんと、お隣の子はお友達?見た所何か困ってるみたいだけど?」
いちいち腰をクネクネと振りながらミントに問いかけるスカロンにやはりミントは眉を寄せ、ルイズは込み上げる吐き気のような物を何とか堪えた…

「うーん…まぁ、ね…事情があって何日かこの辺で宿を取ろうと思ってたんだけどこの娘が宿代含む全財産ギャンブルで全部すっちゃってね…」
「ちょっとっ!!?」
ルイズは慌ててミントの言葉を止めようとするがそんな事は知った事では無いとミントはルイズの失態を当然の様にスカロンに暴露する。
「あらあら、それは困ったちゃんね~…それなら丁度良いわ、二人とも私のお店に来なさいな。ミントちゃんとそのお友達ならお部屋を用意して上げるわよん。」

「本当!?」

スカロンのこの申し出に沈んでいたルイズの表情に光が戻る。そしてミント自身も元々情報収集という目的の為にスカロンの元は訪ねるつもりでいたのだから都合も良い…


そんな訳でルイズは野宿という最悪の事態を避ける為、ミントはまぁカローナの街の時みたいでこれも良いかと言う軽いのりでスカロンことミ・マドモアゼルの提案に乗る事にしたのであった。



____ 魅惑の妖精亭

「で、なんであたし達までこんな恰好をしなきゃならない訳?」
そんな訳でスカロンに招かれて開店準備で忙しそうな店内にホイホイと通された二人はなんやかんや気が付けばホールスタッフである妖精さんの際どい衣装を身に纏っていた。
ひらひらとした極めて短いスカートからはミントの程良い肉付きの健康的な足とルイズの細身の美脚が並び、身体のラインを強調させ露出が多い特製のビスチェの二人はそれはもうトレビアーンの一言に尽きた…

「あらん、何も私もタダで泊めてあげるだなんて一言も言っていないわよ。働かざる者食うべからず。
うちの妖精さんが一人急にお店を辞めちゃって実は今大忙しなのよ~、勿論お給金だって弾むし忙しい夕方から夜の間だけで構わないから手伝ってよ~。」

「嫌よ!!何でこの私がこんな下品な恰好でよ、よ、よ、よりにもよって平民に給仕やお酌をしないといけない訳!?」
スカロンの頼みにルイズはにべも無く首を横に振った。最近ミントに散々振り回された影響でルイズの視野は大分広がったし心のあり方にも変化はあった。それでもこんな扇情的な恰好で平民のおっさんの相手などルイズに出来よう筈も無い…

「……………………」
ミントはここでしばらく黙して思案する…
別に少々過激な恰好ではあるがウェイトレスの真似事など大した苦では無いし、この魅惑の妖精亭はミントが持っている情報源でもかなり有益な部類だ。
それより何よりこのまま何も考え無しのルイズの任務の手伝いをする方が間違いなく気苦労等は圧倒的に多いだろう。今更ほっぽり出してしまうのも憚られるし。

しばしの思考を終えてミントが出した結論は…

「…理由は詳しく言えないけどあたしとこのルイズは色々と情報や市井の噂なんかを集めたいの。その辺りも協力してくれるならしばらくお世話になるわ。」

「ちょっとっ!?ミント!!」

まさかあの我が儘なミントがこんなアルバイトの様な真似をするとは思っていなかったルイズは驚愕のあまりヒステリックに声を上げる。
「しょうが無いでしょ、あんたがアンがくれたお金を全部ドブに捨てたんだから。それに、情報を集めるのにこれ程適した仕事も無いもの。」

「でもっ!!」

「それとも今日のあんたの失態をあたしがアンやキュルケに伝えて欲しいのかしら?あたしの口は軽いわよ~…」
「………………お世話になります。ミ・マドモワゼル。」
ミントから簡潔な理由の説明を受けながらも尚、抗議の声を上げようとしたルイズであったがミントの無慈悲な一言に覚悟を決める。なまじプライドが高いとこういう時に困る物だ。
と、ここで話は纏まったと言わんばかりにスカロンが一度大きく手を叩く…

「お話は決まったわね、う~ん…実にトレビア~ン、二人とも色々と複雑な事情があるみたいだけどこれからよろしくね。」



____

「納得いかないわ…」

早速魅惑の妖精亭での仕事を始めて数時間、忙しくホールを走り回るミントに対してルイズはホールでの接客では無く、キッチンの奥で乱暴且つ不器用に皿洗いに勤しみながら早速不満を溢す。
それというのもプライドの高いルイズにはそもそも平民相手の接客等まともに出来るはずも無く、胸が小さいだの言ってきた客にはワインボトルを叩き付け、小ぶりなお尻に手を出してきた客には罵声と平手打ちをetc.…

「そりゃああんだけお店やお客さんに迷惑かけたら迂闊に表には出せないわよ。それよりももっと手を動かすスピード上げて、接客が出来ないならこれ位は完璧にこなして貰うわよ。」
ルイズを叱責するのはルイズへの指導を買って出たジェシカである。そのジェシカの手の動きは凄まじく速く、口を動かしながらでも一瞬で汚れた食器類が綺麗になっていく。その綺麗になった皿をルイズに見せつけてジェシカは悪戯な微笑みを浮かべた。
ジェシカのその露骨な挑発にルイズの表情はますます不機嫌になっていく。
「まっ、お皿洗いなんてやった事すら無いでしょうからこんな事すら出来なくてもしょうが無いんですけどね~。貴女、かなり良いとこの貴族なんでしょう、ルイズ?」

皮肉たっぷりなジェシカの言葉にルイズの皿を拭く手が停止する。
「なっ…」
「何でこんな事してるのか詮索するつもりは無いけど貴女を見てれば隠してるつもりなんだろうけど色んな仕草でバレバレよ。それにあのミントの友達ならそう考えた方が自然だしね~。」
ルイズのその分かりやすい動揺する姿にジェシカはニヤニヤと笑みを浮かべる。
「あんた、私が貴族だって分かっててさっきからそんな態度取ってるだなんて…どういう神経してんのよ?」
「あら、このお店で働いている限りはあなたがどんな人間かだなんて関係ないわ。それにミントが連れてきたならそんな事を気にする人じゃ無いって思ってたんだけど違うかしら?」
悔しいがジェシカの言う通りだ。最近のルイズは色々と型破りなミントの影響なのか以前程身分の差という物に捕らわれなくなっている…相変わらずジェシカの皿洗いの手は止まる事無く動き続けるのでそう考えながらルイズもそれにならって皿を洗う。

「う~……て言うかあんたもそうだけどスカロン店長もやたらミントに親切だけどさ~、あいつ一体ここで何した訳?」
ルイズはそもそもミントがやたらとこの店の店員に馴染んでいる事が疑問だった。それどころか接客態度は普段と変わらず不遜な態度でありながら一部の客からは既に指名が入り、何やら仲よさげに談笑している。
どうやら元々顔見知りの客なのだろうか…遠目に見ても話は弾んでいる様子で確かに情報収集という任務と接客をミントは苦も無くこなしているようだった…

「ま、ミントは元々ちょくちょく家のお店には顔を出してたのよ。儲け話やお宝の情報は無いか~。ってね…他にも人の捜し物を手伝ったり、店の子にブローチをあげたり。
私達も最初はミントをただの凄い性格の平民だと思ってたんだけど、ある日この一帯の徴税官っていう立場を悪用して好き放題してる貴族が来てる所に偶然ミントがやって来てねー、一悶着あってお付きの兵隊共々その貴族を魔法でボコボコにしちゃってさ…」

「はぁっ?!そんな話私聞いてないわよ!!」
ルイズが思わず声を上げる。話を聞く限りその徴税官に非がありそうだがまさか自分のあずかり知らない所でそんな騒動が起きていただなんて…

「いやっ、私達も最初これは不味い事になるなーって青い顔してたんだけど何かミントがそいつ等に書類を見せつけてさ、その途端そいつ等がもう、もの凄い勢いで謝り始めて…あれは傑作だったわ。
それ以来ミントはこのお店じゃ有名人なの。それにミントってば書類一つで徴税官を振るい上がらせるような凄い貴族なのに私達にも他の平民のお客さんにも今までと全然変わらない態度で接してくれてさ…
正直、やっぱり私達平民は貴族の事をあんまり良くは思ってないのよ。それでもミントみたいな素敵な貴族がいつか国を動かしてくれたらきっと今よりも毎日が楽しくなりそうだなって私は正直思うよ。」

先程までの意地悪な笑みでは無く、ジェシカは屈託の無い笑みでミントの事をルイズに語る。貴族としては到底聞き逃せない様な際どい言葉も聞こえた気がするがルイズは気にしない事にした。
まさか自分の知らない所でミントがこんな風に他人に思われていたなんてと気恥ずかしいような誇らしいような何とも言えないが悪くない気持ちとそんなミントに負けたくないという気持ちになる。

「ルイズ、これ、洗い物追加よ!!」

と、両の手にトレーを持って厨房に戻ってきたミントがルイズの脇に設置された水の張られた桶にドチャドチャと皿や器を置いていく。その表情は疲れた様子ながら生き生きとしていた。

「うへ~…」
それに対してルイズはうんざりとした表情でミントによって運ばれてきた洗い物の山を見つめ、そのまま恨めしそうな視線をミントにぶつけようとしたが既にミントは新たなトレーを手にホールへと向かおうとしていた。
「ちょっと!ミントもこっちを少しは手伝ってくれたっていいでしょっ!!」

「こっちだってあんたと代わりたいわよ!!「ミントちゃ~ん。」は~い、今行くわ~!」
ホールからの呼び声に答えてミントはルイズの相手もそこそこに、短いスカートを翻して厨房を後にする。
(何よ…ミントったら。)
「ほら、ルイズ手を動かさないといつまで経っても終わらないわよ!!ほら、半分こっちに回して。」
そんなルイズにいつの間にか自分の桶を空にしていたジェシカがルイズの洗い物を掠め取る…

「……………………ぁりがと…」
ごく小さな声でルイズはジェシカに礼を言って固く絞った布巾を皿に押し当てた。



(それにしても…姫様が知りたかった情報…街の人達の声…か…)


意外な形ではあったがルイズは平民の声を聞いた…こうして思えば平民の陰口等では無い正直な言葉というのを聞かされたのは初めてかも知れない…
意外な事にミントは愛されていた。思えば学園でも、アルビオンに行った時にも、ミントの周りには気づけば人が集まっていた…

従えるのでは無く、慕われる…そういう人の上への立ち方もあるのだと言う事をルイズは皿の洗い方以上にその日学んだのだった…



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