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ウルトラ5番目の使い魔、第二部-94


 第九十四話
 アディール最終決戦! 最強怪獣を倒せ!! (前編)

 友好巨鳥 リドリアス
 古代暴獣 ゴルメデ
 高原竜 ヒドラ
 古代怪獣 ゴモラ
 古代怪獣 EXゴモラ 登場!


 誰が、こうなることを予想しただろうか。

「ウワァァッ!」

 誰が、あれほどまでに輝いた希望の光が、また闇に塗りつぶされると思っただろうか。

「ヌワァァァーッ!」

 二人のウルトラマン、エースとコスモスは今、絶対絶命のピンチの中にいた。
 壊滅させたはずの超獣軍団。しかし、ヤプールは超獣軍団よりもはるかに強い、一匹の怪獣をこの世に誕生させた。
 圧倒的なパワーは二人がかりで挑んだエースとコスモスを上回り、軽く体をよじっただけで跳ね飛ばされてしまう。
 鎧のような体は攻撃を一切受け付けず、渾身の力を込めて放ったパンチやキックもかすり傷すらつけられない。

〔なんという強さだ。まるで歯が立たない!〕
〔これはもう、ゴモラのレベルを超えている。ヤプールめ、なんというものを生み出してしまったんだ!〕

 コスモスのコロナモード、そしてエースの全力をも軽くいなしてしまう眼前の強敵。それは、ヤプールが膨大な怨念のパワーを
使い、ゴモラの遺伝子を元にして生み出した超怪獣。
 ゴモラの面影を強く残しつつも、全身が凶器であるかのような刺々しい様相。はるかに攻撃的に伸びた牙と爪、なによりも
瞳のない白目から発せられる眼光は、あまねく生物に狼を前にした子牛のような本能的な恐怖を植えつける。まさしく、
戦うためにのみ存在し、それ以外のものはすべて切り捨てた完全な戦闘生命の姿。そこから放たれる威圧感は、この怪獣が
身長四十メートル強と、ゴモラと変わらぬ標準的なサイズの怪獣であるにも関わらずに、これまでエースが戦ってきた
いかなる超獣をもしのぐ圧倒的な巨大さを誇っていた。
 腕の一振りで、石造りの建物が豆腐のように崩れる。体を動かすのに、抵抗などというものが存在しないかのような
絶対的な存在感。破壊を生み出すのではなく、それそのものが破壊である天災にも似た暴虐の行進。食い止めようとした
エースとコスモスをたやすく弾き飛ばし、軽く蹴り飛ばしただけなのに数百メートルを吹っ飛ばされる。
 いったいこれをゴモラと呼べるだろうか。生み出したヤプールでさえ、その圧倒的な威力に興奮していた。

「ファハハハ! これはすごい。まさか、ゴモラの遺伝子からこんな化け物を作り出せるとはな。さあて、これまでの恨みを
たっぷりと晴らさせてもらおうか。やれ! 最強のゴモラよ」

 有頂天となったヤプールの命ずるままに、異形のゴモラはエースとコスモスを痛めつける。ウルトラマンたちに倒された
怪獣や超獣の怨念は、再び実体と復讐の機会を与えられて荒れ狂い、どす黒い思念は破壊と暴力と恐怖の渦を作り出していった。
”死ね” ”壊せ” ”焼き尽くせ” ”滅ぼせ” ”復讐せよ!”
 憎悪の念はヤプールの邪念と共鳴しあい、晴れ渡っていた空をも再び暗雲に染め上げていった。
「そ、空が……」
 自然界にはありえない、黒一色の闇雲がアディールの空を覆いつくしていく。太陽はさえぎられ、熱は遮断されて
砂漠の都市を寒波が襲い始めた。
 寒い、単なる冷気ではなく、熱を奪っていくような凍える寒さ。砂漠の夜の寒さに慣れたエルフたちでも経験したことのない、
生命の存在を拒絶する、極地の永遠の冬が訪れようとしていた。さらに、大気温の急激な変化は乱気流を生み、アディールの
各所に落雷と竜巻を発生させていったのである。
「この世の、終わりだ……」
 誰かがそうつぶやいたとおり、それは終末の光景そのものだった。荒れ狂う雷と竜巻は容赦なく無事をかろうじて保っていた
街並みを破壊していき、海上にも襲い掛かる。もはや、エルフたちの守り神であった精霊たちでさえも、完全に暗黒の力に
飲み込まれて、美しかったアディールの風景は砂漠の一部へと同化しようとしていた。
 崩れ行く街と、荒れる海の中で人々は逃げ惑い、少しでも安全な場所を探して駆け回った。しかし、もうどこに安全な
場所があるというのか。東方号でさえも、すでに落雷でマストや銃座を破壊されて火を吹いている。人々は鋼鉄の壁の中で
身を寄せ合い、最後の時が来るのをおびえて待っていた。

 絶望を乗り越えて得る希望こそ強く輝く、だがその希望をすら打ち砕く絶望が襲ってきたとき、人の心はより深い闇に堕ちる。
 ヤプールの執念が生み出した暗黒の舞台劇は、今まさに完成されようとしていた。
 闇の劇場の主役たる漆黒の魔獣、その目に映るのは敵、その胸に宿るのは闘争のみ。 
 目障りな光の戦士を葬ることで完成する絶望の戯曲のエンドへ向けて、超ゴモラの暴走は続く。
 鋭い三日月角でコスモスをかち上げて投げ飛ばし、フラッシュハンドで殴りつけてきたエースの攻撃をものともせずに
腕を軽く振るだけでなぎ倒してしまう。地面に叩きつけられたコスモスを巨大な足で踏みつけ、助けようとしたエースの
首を片手でわしづかみにして吊り上げてしまった。
「ヌォォォーッ!」
「グォォォ……!」
 振りほどけないっ! 二人のウルトラマンの全力を持ってしてもゴモラの体はビクともしない。踏み潰され、締め上げられて
苦しむコスモスとエースの苦悶の声が、つい先ほどまで歓喜に沸いていた人々の心に霜を降らせ、ウルトラマンの強さを
よく知っているはずの水精霊騎士隊ですら激しく動揺させ、ギーシュはレイナールにうろたえるあまりかみついていた。
「ウ、ウルトラマンがふたりがかりで手も足も出ないなんて。いったいどうなってるんだい!」
「ぼ、ぼくに言われても。あの、あの怪獣がウルトラマンより強いってことだろ!」
「そんなバカな! 十匹近い超獣たちをみんな倒したのに、そいつらより強い怪獣が出てくるなんて。こんなのってないだろ!」
 理不尽だと叫んでも、現実は変わらずに残酷であった。あれだけの努力が、皆が流した血や涙はなんだったのか?
全力の全力を出し切って、ようやく奇跡を起こしたのに、それすらもあざ笑うように悪魔は次々と手を打ってくる。いくら
努力をしたところで、強大な力の前には結局無力なのか……
 絶望感が、精も根も使い果たした少年たちを覆い始め、黒い感情の波が人々に急速に拡大していく。
 このままではまずい! このままでは、ヤプールの思う壺だ。それだけはなんとしても防がなければと、ふたりのウルトラマンは
渾身の力を振り絞った。
「デヤァァーッ!」
 一瞬に、力を爆発させてふたりは脱出に成功した。ゴモラの爪が食い込んでいた箇所がひどく痛み、脱出にエネルギーを
大きく消耗してしまったが、とにもかくにも窮地は脱した。しかし、とどめの一歩手前でまんまと逃げられてしまったというのに
ゴモラは特に動揺した様子はなく、平然と喉を鳴らしている。
〔余裕……いや、こちらを嬲り殺す気か〕
 エースは、まるでヤプールが化身したかのように恐怖を撒き散らしながらゆっくりと歩いてくるゴモラを睨んでつぶやいた。

 ウルトラマン二人を同時に相手にして、この圧倒感……声だけはオリジナルと変わらないが、その強さは完全に別物と
呼んでよかった。これは単なる強化ゴモラや、改造ゴモラなどと呼んでいいレベルではあるまい。超獣化ゴモラ、もしくは
暗黒化ゴモラ……いや、それも違う。こいつは、ヤプールがゴモラの遺伝子から再現したゴモラのフェイクであるが、
それゆえにゴモラの真の姿の一形態ともいえる。
 ヤプールは最強のゴモラと呼んでいたが、これがゴモラの中に眠っていた潜在的な戦闘能力が解放された姿なら、
それは『ゴモラにあってゴモラにあらず』。ゴモラを超えた特別なゴモラ、英単語では特別なものを意味することを
《extra(エクストラ)》と呼ぶが、ゴモラextra、extraゴモラ……略して、EXゴモラとでも言うべきか。

 EXゴモラ……自分でひらめいておきながら、才人はその名前に不思議な神秘性を感じた。英字がたったふたつ
加えられただけなのだが、どこかに魔力のような魅力がある。昔から、言葉には言霊といい、特別な言葉には人の
感情に訴えかける魔力が宿るとされているが、科学的に実証できなくともなるほどと思わされた。
〔最強の超怪獣、EXゴモラか。へー、なかなかかっこいいじゃねえか!〕
 才人の心の中に幼稚園の頃から根付いてきた少年の心が、本能的に始めて見る怪獣に喜びの声をあげていた。
またも、状況をわきまえずに不謹慎だといってしまえばそれまでなのだが、これは本能なのだからしょうがない。ましてや、
相手はフェイクといってもあのゴモラなのだ。才人といっしょにスケッチブックに落書きをしたり、ソフビ人形で遊んだ
幼稚園や小学生時代の友達は多くいた。矛盾するようだが、ヒーローと並んで怪獣という存在は子供たちの心をがっちりと
掴んでいるものだ。
 そして、目の前のゴモラはそんな中でも、元々のゴモラを書き写すだけでは飽き足らずに、「ゴモラがこんなふうだったら
最強じゃないか?」と、角を付け足したりトゲをつけたりして友達とわいわい言いながら落書きした、心の中の「スーパーゴモラ」
そのものではないか。このうれしさは、そんな子供の日の夢が形はともかく実現したからかもしれない。

 だが、そんな感慨とは別に、このEXゴモラの正体はヤプールがゴモラに似せて作った邪悪なフェイクなのだ。本来のゴモラは、
当人の意思はともかくとして、才人をはじめとする子供たちの胸にワクワクした思い出とともにある。その思い出を汚させない
ためにも、こいつはなんとしても倒さなければならない。
〔こい! ニセモノめ!〕
 才人は、思い出を心にしまってエースとともに叫んだ。EXゴモラ、こいつは確かに子供のころの夢を思い出させてくれた。
しかし、ゴモラの未来の可能性を無理矢理形にしただけのモノであるならば、どれだけ強く取り繕ったところで所詮ニセモノ
でしかない。
 EXゴモラの本物を見られる機会は、才人の生きている時代にはやってこないかもしれない。それでも、ニセウルトラマンを
許せないのと同様に、このゴモラは許せない。
 一方のルイズにとっては、EXゴモラはただの怪獣だ。しかし、ヤプールに対する怒りは同じくらい深い。貴族は国や王家の
ために命がけで戦うことを名誉とする。人間は、愛する人や故郷のために命を懸けることを誇りとできる。守るべきものを
守って死ねれば、その魂は死後の英雄の楽園に導かれると信じているからこそ、戦いという矛盾そのものである行為に
我が身を送り出すことができるし、なによりも、目的は違えども戦って散った敵に対しても敬意を持つことが出来る。
 それが、戦う人間の誇りというものだ。しかし、怨霊を集めて作り出されたこの怪獣は、たとえ存在は悪であったとしても、
死力を尽くして戦い抜いた怪獣たちの存在を汚すものではないか。眠りにつくことさえ許さずに、なおも道具として利用しようとは、
あまりにも怪獣たちがかわいそうだ。
〔生きるためでも、なにかのためでもなく、ただ破壊するためだけに生き返らせられるなんて……そんなやり方絶対に認めない!〕
 ヤプールの卑劣で残酷なやり口は、他者の命を奪うことを生業とする戦士としての最低限のルールすら踏み越えている。
戦士の誇りなど、それそのものが偽善であるかもしれないが、偽善さえも踏みにじる残酷さ。何度も見たヤプールの卑劣な手口だが、
今度という今度は堪忍袋の緒が切れた。死んでいった超獣たちを、もう誰にも利用されない安らかな眠りにつかせてやるためにも、
こいつには絶対勝たなくてはならない。
 才人とルイズの燃えるような闘志を受けて、エースは立ち上がり、コスモスも一歩遅れて両の足で大地を踏みしめる。
「シュワッチ!」
 ウルトラマンはまだあきらめていない。ウルトラマンは、まだ戦える。彼らの立つ姿が、再び絶望に侵食されかけていた人々の
心に希望の灯火を残した。

 見ていてくれ、俺たちはこの命がある限り戦う! だから、君たちも最後まであきらめないでくれ!

 エースの無言の言葉が、確かに人々の胸に届いた。そう、戦って倒すべきはヤプールや超獣だけではない。むしろ、
誰の心にでも巣食い、隙あらば心を闇に染めようとする”絶望”という魔物こそが一番怖いのだ。
 あきらめなければ、命ある限り戦える。あきらめなければ、ほんの少しでも希望を見ることができる。しかし、あきらめて
絶望に心をゆだねてしまっては、そのすべては消えてなくなる。エースからのメッセージを受け取ったギーシュたちは、
弱気になっていた自分たちを叱咤し、ティファニアはエルフの人々に呼びかける。

「皆さん! あきらめないでください! ウルトラマンは、これまでにも何度も大変なピンチの中で負けそうになりました。
でも、彼らはどんなピンチでも最後まで立ち続けて、どんな強い怪獣にも勝ってきたんです。今度もきっと、あいつを
やっつけてくれます! だから、わたしたちが先にあきらめちゃだめなんです」

 この戦いは、単にウルトラマンとヤプールの戦いではない。人間とエルフたちの持つ、希望と絶望の戦いでもあるのだ。
何度追い払ってもやって来る心の闇に負けないために、終わらない心の戦いがここでも繰り広げられている。ティファニアは、
何度も何度も同じはげましを、絶望に立ち向かう言葉の剣として振り続けた。
 しかし、悪の威力は強大で残酷だ。まだ揺るがない二人のウルトラマンの闘志に呼応したように、猛烈な勢いで突進してくる
EXゴモラ。それをエースとコスモスは二人がかりで受け止めた!
「ヌォォォォッ!」
「ファァァッ!」
 小惑星を受け止めるにも匹敵する衝撃が二人のウルトラマンを襲う。足元の石畳の道が紙ふぶきのようにはがれて舞い散り、
それでもEXゴモラは止まらない。今まで二人のウルトラマンが戦った、いかなる怪獣とも違うケタ違いのパワーは、やはり
どうあがいても止められないのか!?
 抵抗むなしく、EXゴモラの頭の一振りでエースとコスモスは軽く吹っ飛ばされてしまった。数件の建物を巻き添えにして
地面に叩きつけられて粉塵が舞う。やはり、とてつもなく強い……だが、遠く弾き飛ばされてしまったことは幸いとも言えた。
ゴモラには飛び道具はない! 今なら攻撃を受ける恐れはない。
 今だ! 真っ向からの肉弾戦ではかなわないなら、光線技で一気に勝負を決める。エネルギーの出し惜しみなどをしていて
どうこうなる相手ではない。エースとコスモスは、最大出力の必殺光線を同時に放った!

『メタリウム光線!』
『ネイバスター光線!』

 アントラーとアリブンタにとどめを刺した光の矢がEXゴモラに炸裂した。進化してもバリアーを張る能力などはなかったようで、
二人の光線はまともに直撃し、並の怪獣なら破片も残さず木っ端微塵にしてしまうほどのパワーが飲み込まれていく。
 だが、光の奔流は、そのエネルギーを求められた対象に届けることはできていなかった。加減などはまったくなしで、
全力で放たれたはずの光線は、まるで雨が傘ではじかれているかのようにゴモラの皮膚で拡散し、撃ち切ったときにも
傷ひとつない無事な姿を保っていたのだ。
〔俺たちの合体光線でも無傷だっていうのか! バケモノめっ!〕
 恐ろしいまでの耐久力にエースは舌を巻いた。まるで、以前戦った強化ドラコの生体反射外骨格のようだ。いや、あれも
すごかったが、EXゴモラのそれはドラコのそれを確実に上回っている。しかも、あのときは才人の捨て身の攻撃で装甲に
亀裂を作ってやったから突破口が見つかったが、EXゴモラには死角はない。
 大量のエネルギーを消費し、がくりとエースとコスモスはひざをついた。カラータイマーの点滅も始まり、体から力が抜けていく。
まずい、今の一撃に、勝負を賭けるつもりであっただけに、余剰エネルギーの大半を使い尽くしてしまった。もう、光線技は
撃てて数発が限界、それもウルトラギロチンのような大技は使えない。
 EXゴモラは完全に無傷で、痛くもかゆくもないといわんばかりに余裕で喉を鳴らしている。
 しかし、あきらめるわけにはいかない。何度失敗しても、どれだけ無様でも立って戦う。それが、ウルトラマンの義務なのだ。
 勝負は、まだこれからだ! 希望をつなごうと、エースとコスモスは気力を奮い立たせた。
 そういえば……この戦いが始まってから、もう何回倒されて立ち上がっただろうか。五回か六回か、もう正確に思い返せないほど
繰り返してきたが、あと何回でも起き上がってやろう! 俺たちは、ウルトラマンなのだから。
 だが、暴風雨が数年をかけてやっと高く伸びた若木を無情にへし折ってしまうように、力の差はさらに残酷に敗北への
一本道を指し示してきた。

「ウワァァーッ!?」

 突然、なんの前触れもなくエースが垂直に跳ね飛ばされた。一瞬にして百メートル近くを打ち上げられ、そのまま受け身を
とることもできずに地面に叩きつけられる。
 なんだ! 今のは? ゴモラの攻撃なのか!? しかし、攻撃の形跡なんかなかったぞ。
 事態を飲み込めずに立ち尽くすコスモスに、今度は明確な形で攻撃が襲い掛かった。コスモスの足元の地面が突如
はじけたかと思うと、地中から槍のようなものが飛び出してきてコスモスの胸を打ち、その身を大きく跳ね飛ばしたのだ。
〔なんだっ! 今のは〕
 地中からの突然の奇襲は、コスモスといえども避ける暇もなかった。エースと同じく地面に叩きつけられ、苦しそうな声が
漏れ聞こえる。だが今はそれよりも、あの攻撃がなんだったのかを突き止めることが先だ。EXゴモラとの距離は、たっぷりと
三百メートルはあり、光線でも使わなければとても攻撃が届く距離ではない。
〔まさか、もう一体怪獣が!?〕
 ルイズは、地底に別の怪獣がいて、そいつが不意打ちを仕掛けてきたのではと推測した。確かに客観的に見れば、
それが一番率直で確実性の高い答えだ。だが、正解は違っていた。目に見えない地中から、三回目の奇襲をかけて
こようとする謎の敵の存在を、わずかな振動で察知したコスモスは、狙われているのがエースだと知るととっさに突き飛ばした。
「フアッ!」
 間一髪、エースはコスモスの機転のおかげで串刺しにされるのを免れた。そして、空振りして空に向かって伸び、
すぐさま土中に引っ込んでいったそれの形を、確かに見た。
〔今のは、ゴモラの尻尾!?〕
 信じられないが間違いはなかった。慌てて振り返ってみると、EXゴモラはこちらを凝視しながらもその場から動かずにいた。
そして、さらによく観察してみると、EXゴモラの尻尾が土中に潜り込んでいた。本当に信じられないが、EXゴモラはこの距離から
土中から尻尾を伸ばして攻撃してきたらしい。尻尾を伸ばして!?
〔まずい、動くんだ!〕
 コスモスの声にエースもはっとして飛びのいた。エースのいた場所の土中から、槍のような尻尾が飛び出して襲ってくる。
コスモスも同様で、EXゴモラの尻尾は一瞬で出現と退避を繰り返して、神出鬼没に地中からの攻撃を続けてくる。これでは
まるでモグラ叩きの逆だ。
 いけない、このままでは一方的に攻撃を受け続けてしまう。EXゴモラ相手には距離をとって戦う作戦は通じないのか!
 危険なことに変わりはないが、一方的に叩かれ続けるよりはましだと判断したエースとコスモスは、距離を詰めようと
EXゴモラへ向けて走り出した。するとEXゴモラも土中からの攻撃をやめて、尻尾を引き上げると、今度はサソリが毒針で
威嚇体制をとるときのように持ち上げてきた。
 来るか! その瞬間、EXゴモラはゴモラから受け継いだ必殺武器をついに白昼にさらした。鋼鉄の槍のように太く
鋭い尾の先がウルトラマンAを狙ったかと思ったとき、尾全体がまるでゴムで出来ているかのように伸びて襲いかかってきた。
「ヘヤァ!」
 間一髪、かわしたエースのすぐ後ろで道路がえぐられて、地割れのような巨大な裂け目ができた。
 危なかった。ゴモラの尾が伸びるかもと事前にかんぐっていなかったら直撃を食らっていた。いや、この破壊力……
まともに食らっていたら、土中を進んできたときとは違う勢いに、一気に胴を貫かれてもずのはやにえのように
されていたかもしれないと思うと、血が凍りつくような思いさえした。
 だが、これで間違いない。EX化したゴモラは、最大の武器である尻尾を振り回すだけでなく、自在に長さを操って
伸縮自在の槍のように使うことができる。しかも、必殺の威力をもかねそなえた強力無比なテールスピアーとして!
 槍衾のように繰り出されてくるテールスピアーの連撃を、エースとコスモスは紙一重でかわしながらEXゴモラに接近し、
全力の一撃をそれぞれ放った。超獣ドラゴリーの胴体を貫いたエースパンチと、巨大ロボット兵器のボディすら揺るがす
コスモスのサンメラリーパンチが同時に放たれてEXゴモラのボディがぐらりと揺れた。
”効いたのか!?”
 が、淡い希望は一瞬で消え去った。EXゴモラの鎧のような皮膚は二人のウルトラマンの同時攻撃をものともせず、
白目がむかれたと同時に尻尾がなぎ払うように振られ、エースとコスモスはまとめて吹っ飛ばされてしまった。
「ウワァァッ!」
 だめか……打撃でも光線でも、戦いが始まってから一度もダメージらしいダメージを与えられていない。攻撃力、防御力ともに
ケタ違いでつけいる隙がどこにもない。どうすればいい……どうすれば。時間と共に打てる手は減っていき、エネルギーは
確実に減っていく。このまま打開策がなければ、確実に負けてしまう。
 エースも、才人やルイズもEXゴモラを倒す手段が思いつかず、絶望はしなくとも無力感が心に漂い始めた。こいつは、
かつて戦ったどんな怪獣や超獣とも違う、本当に無敵で、倒す手段などないのではないか……そんな後ろ向きな考えが
頭をかすめかけたときだった。コスモスがエースに手を差し伸べて語りかけたのだ。

「さあ、立とう。私たちはまだ負けたわけではない。あの怪獣を止める方法は必ずあるはずだ。それを見つけよう」
「ウルトラマン……コスモス」
「ウルトラマン……エース。君も、よい仲間を持っているのだな。私もかつて、魂を共有した友がいた。その友が教えてくれた。
敵と戦って勝つことに固執することは、より大きな争いの呼び水になってしまう。敵と戦わねばならなくとも、その目的は
人々の平和を守り、失われようとする命を守るためであるべきだ」
 コスモスの言葉に、エースは心の霧が晴れたような気がした。確かにそうだ、どうしても勝てそうにない敵を相手にしたら、
つい勝つための方法ばかりを模索してしまいがちだが、勝利は目標であって目的ではない。倒すのではなく守ること、
ウルトラ戦士の心得をうっかり失念するところだったと、エースは自らを戒めて礼を述べた。
「すまない、私たちは大事なことを見失ってしまうところだった。ここで勝利に目を奪われて倒されてしまえば、見守ってくれている
大勢の人たちの期待を裏切ってしまうところだった。ありがとう」
 差し伸べられた手をとってエースは立ち上がった。その眼差しの先には、ゴモラとコスモスのほかにも、アディールを襲う
天変地異にも負けずに応援してくれている人々の姿がある。彼らがいる限り、みっともない姿は見せられないと、エースは
才人とルイズとともに気合を入れなおした。

 EXゴモラは確かに強い。しかし、ただ強いだけではウルトラマンを倒すことはできない。
「俺たちを倒したいのなら、この銀河系ごと消滅させてみろ!」
 自分に負けない限り、敵に負けることもないと、エースは健在な姿を見せつける。相変わらず勝機はなきに等しいが、
最後まで希望であり続けること、人々の光であり続けること、それがウルトラ戦士の使命なのだ。人間やエルフたちも、
立ち上がって勇敢に構えをとる二人のウルトラマンに勇気を分け与えられて、仲間同士で励ましあって声を出す。

 だが、邪悪の化身にとって、どうやっても絶望に染まらない者ほど忌々しいものはない。思うとおりにならないのならば
死んでしまえ! 幼児のわがままじみた、わめきちらす悪辣な暴君、気に入らない対象への理不尽な怒りをつのらせた
ヤプールは、EXゴモラの精神と同調して、超エネルギーを集め始めた。
「いつまでも希望などというくだらないものにすがる愚か者どもよ。そんなに現実から目を背けたいのなら、今すぐ抗いようのない
力の差というものを見せてやる。受けてみるがいい、我らの怨念を込めた破滅の業火を! そして知るがいい、この世界には
希望などないのだということを!」
 マイナスエネルギーが膨大な破壊エネルギーに変換されてEXゴモラに充填されていき、巨体が赤く染め上げられていく。
そのケタ違いのエネルギー量は到底計測などは不可能。エースとコスモスは戦慄した。ヤプールめ! どうあっても
力ですべてを決しようというのか。
 超エネルギーがEXゴモラの体に収束していき、周辺の建物がその余波だけで吹き飛ばされていく。
 あれは、あんな能力がゴモラにあったのか!? いや、ゴモラには地底掘削用に超振動波を放つ能力がある。元になった
ゴモラは振動波をそのまま相手に叩きつけるくらいまでしかできなかったが、もし超振動波をさらに増幅したら光線のように
放つことができるとしたら、それをEX化したことにより極大化したとしたら!
 まずい! 今あんなものを食らったら。しかし、避けようにも、背後にはまだ避難できていない大勢の市民がいる。
 避けられない! 来る!
 その瞬間、超極大化された超振動波、『EX超振動波』がエースとコスモスを目掛けて放たれた!

「くっ! コスモス!」
「ああ、我々の全エネルギーをこれに込めるんだ!」

 この一撃をまともに食らったら、たとえウルトラマンといえどもあとかたもなく消滅する。かといって、避けたら後ろにいる
数千のエルフたちが代わりに殺されてしまう。選択は、するまでもない! エースとコスモスは体に残った全エネルギーを
使って、渾身のバリアーを作って迎え撃った。

『サークルバリヤー!』
『サンライト・バリア!』

 光の鏡と金色の光の壁がEX超振動波を受け止めて、激しく火花を散らした。しかし、圧倒的勢いを誇るEX超振動波の
圧迫力は、ふたり同時に張ったバリアの防御力をも超えて押し切ろうと迫ってきた。
〔とんでもない威力だ! 抑え切れんっ! くそっ〕
 ダブルバリアの壁を超えて、超振動波のエネルギーが押してくる。バリアにもろくもひびが入り、漏れ出てきたエネルギーが
エースとコスモスの体を焼き始めた。だめだ、あと数秒も持たない! だがそのときルイズと才人が、己の生命エネルギーを
エースに託した。
〔サイト、いいわね!〕
〔ああ、おれたちの命、ここで使ってくれ!〕
 ふたりとも迷いはなかった。二人の精神体から一気に力が抜けていき、実体だったら立ち上がることさえできないほどの
疲労感と鈍痛が二人を包む。それは二人にとって、本当に命を失うかどうかというギリギリでの付与だった。エースが事前に
二人がやろうとしていることを知ったら、なにを置いても止めたであろうほど危険な賭けであったが、二人ともそれでもいいと
思っていた。
 エースが、みんなが命を賭けて戦っている。なのに、自分たちだけリスクを避けようとは思えない。
 二人ともバカだ。年相応のこともできない大バカ者だ。しかし、二人の命そのものといえる生命エネルギーを得たエースは、
寸前のところで力を盛り返した。
〔エース、あとは、頼んだ、ぜ〕
〔二人とも、この戦いが終わったら説教だぞ! くっ、うぉぉぉーっ!〕
 バリアに全身全霊のパワーを注ぎ込み、エースは持ち直した。コスモスのぶんも合わせ、EX超振動波がはじき返されていく。
 そして、カラータイマーの点滅も限界に達し、もうこれまでかと思った瞬間、ついにEXゴモラも力尽きて超振動波の波がやんだ。
「やった、か……」
 バリアを解除し、エースとコスモスはひざをついた。恐ろしいパワーだった。もしエースかコスモスかどちらかひとり、さらに
才人とルイズの暴挙がなければ、この世に一辺の痕跡すら残さずに消し去られていたところだった。
 どこまでも恐ろしい怪獣、恐るべしはヤプールと暗黒の底力。EXゴモラはいまだかすり傷ひとつなく、白目に怒りを込めて
吼え猛っている。

 しかし、あきらめることだけはできない。あきらめたら、それですべてが終わる。
「コスモス、立てるか?」
「もちろんだ。さあ、勝負はこれからだ」
 励ましあい、エースとコスモスは再び立ち上がった。
 まだ、戦える。まだ、負けたわけではない。しかし、その意志を込めた勇姿に、勝ち誇るヤプールは冷笑を送った。
「フハハハ、これだけの実力差を見せ付けられて、まだ立ち向かおうというのか。より絶望が深くなるだけだというのに、
まったくお前たちのあきらめの悪さは見苦しいことこの上ない。何度立ち上がろうと無駄だ。このゴモラには、絶対に勝てん!」
 破壊と殺戮の喜びに狂奔するヤプールの声は、明らかに勝利を確信していた。それだけではない、その負の感情を
込めた声によって、人々の恐怖心をあおろうとしているのは明白であった。ヤプールらしい、陰湿で陰険なやり口は昔から
少しも変わるところはない。
 凶暴な雄たけびをあげる無傷のEXゴモラと、満身創痍のウルトラマン。誰がどう見ても、どちらが勝者かというのは
一目瞭然の光景であろう。奇跡を望むにしても、超獣軍団を倒し、いまやこの超怪獣を相手にほとんどのエネルギーを
使い切ってしまった今となっては、どんな奇跡が起こせるというのだろう。
 だが、勝ち誇るヤプールに対して、エースは毅然として言い放った。
「ヤプール、絶対に勝てないとは大した自信家ぶりだが、あまり調子に乗ったことばかり言っていると、後で後悔することになるぞ」
「フッハハハ! とうとう負け惜しみか。ウルトラマンAも堕ちたものだなぁ!」
「負け惜しみか、貴様にはそう聞こえるのだろうな。だが、戦いの決着とは終わってみないとわからないものだ。貴様は
まだ勝者ではない。知っているか? 地球人の童話では、油断したウサギが努力し続けたカメに負けるんだ」
「貴様ぁ! このわしを侮辱するか! 死にぞこないの分際で、あと一発殴られた程度で死ぬほど弱りきった貴様らに
いったいなにができるというのだ! おとなしく絶望しろ! そうすればせめて楽にあの世に送ってやる!」
 ヤプールの恫喝に、しかしエースはコスモスとともに首を振った。
「それは聞けないな。俺たちは、どんなことがあっても邪悪な暴力には屈しない。俺たちを信じて、力を託してくれた
仲間たちのためにも、決してあきらめはしない」
「そう、それに我々は負けはしない。お前のように、破壊にのみしか価値を見出せない者には、我々を支える大きな力の
意味はわからないだろう。それがある限り、我々に敗北はない」
 エースとコスモス、光の戦士の揺るがぬ意志の前にはヤプールの狂声などは無価値だった。
 激怒したヤプールは、もはや嬲り殺すのはかなぐり捨ててEXゴモラにとどめを命じた。

「やれぇ! もはやウルトラマンどもに抵抗するだけのエネルギーは残っていない。そいつらを叩き潰し、すべての愚か者どもに
絶望を思い知らせるのだぁぁーっ!」

 雄たけびをあげ、EXゴモラはエースとコスモスに向かった。
 もはや、二人のウルトラマンにはヤプールの言うとおり、一発の光線を撃つ力も、殴りあう体力も残されてはいない。
 ただ、立つだけで精一杯。抵抗する力などはほぼ皆無、殴られればカカシのように叩きつけられる運命しかない。
 逃れる力もなく、立って待ち構えるウルトラマン。もうだめなのか、希望は絶望に塗りつぶされてしまうのか。
 人間たち、エルフたちの眼前に、破滅の未来が刻々と迫る。

 だが、彼らはその光景を目にすることなく、奇跡をまぶたに焼き付けた。
 突進するEXゴモラの横合いから割り込んで激突し、猛烈なパワーで吹っ飛ばした土色の弾丸。
 吹っ飛ばされて、体勢を立て直そうともがいているEXゴモラを太い尻尾の一撃で再度跳ね飛ばす、荒々しい巨竜。
 そして、天空から舞い降りて、起き上がろうとするEXゴモラを蹴り飛ばす巨鳥。それに続いて、口から吐く光弾の雨で
EXゴモラを爆発の中に包み込む青い鳥。

「あっ、あれは!」
「怪獣たち……コスモスに救われた怪獣たちが!」

 人々は、口々に指差し歓声をあげた。
 ゴモラ、ゴルメデ、ヒドラ、リドリアスが蘇り、EXゴモラに立ち向かっていっていた。
 咆哮をあげ、突撃していくゴモラとゴルメデ。それを空から援護するヒドラとリドリアス。EXゴモラは思わぬ乱入者に
とっさに対応できず、ヤプールは目障りな奴らめと怒り狂う。
「なぜだ、なぜあと一歩のところで邪魔が入る! ええい、どけぇぇ! どかんかぁーっ!」
 ヤプールは、憎みても余りあるウルトラマンの最期を邪魔されたことで怒りの極致であった。それでも、邪悪な頭脳を
フル回転させて、誤算の原因を探ろうとする。なぜ、どうして完璧にエースを葬り去れるはずだった計画がこうも狂う? 
本来ならば、超獣軍団だけでエースは十分抹殺できるはずだったのに、なぜこうも想定外のことが連発するのだ?
 考えても考えても、ヤプールの思考は教科書の文字列を反復するだけの三流教師の思考のように、ゴールのない
環状路線を走り続けた。わからない……奇跡などというものはあるはずが、なにがウルトラマンどもに味方しているのだ。
 しかし、ヤプールには永遠にわからないことだとしても、エースたちにはわかっていた。

”ヤプールよ。お前にとってとるにたりない者でも、捨て駒として切り捨てた者たちにも、皆にこの星を守ろうとする
強い意志があるのだ。お前の眼中には我々しか映っていなくとも、お前が戦っているのは、この星の生命全てだ。
お前の思う通りには決してならない。怪獣たちも、この星を愛する仲間なのだから!”


 続く


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