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ウルトラ5番目の使い魔、第二部-93


 第九十三話
 地上の太陽

 友好巨鳥 リドリアス
 古代暴獣 ゴルメデ
 高原竜 ヒドラ
 古代怪獣 ゴモラ
 地底エージェント ギロン人
 宇宙同化獣 ガディバ
 大蟻超獣 アリブンタ
 磁力怪獣 アントラー 登場!


 人間とエルフ、対立するふたつの種族の融和の願って出発した新・東方号の旅は、その目的を果たせないまま終わろうとしていた。
 ふたつの種族の和睦を嫌い、ヤプールの起こしたアディール壊滅作戦。それは、手段を選ばないヤプールの勝利に終わるかと思われた。

 だが、あきらめない心は、はるか数百万光年の距離を超えて奇跡を起こし、光の巨人を呼び寄せた。
 マイナスエネルギーに囚われたリドリアスとゴルメデを救い、エースを復活させた、月の光のごとき慈愛の青き輝き。

 ヤプールの軍団は、ギロン人、アリブンタ、アントラー、そしてゴモラ。すでに送り込んだ怪獣・超獣・星人のうち、ゴーガ、バルキー星人、
サメクジラ、オイルドリンカー、ダロン、マザリュースは倒され、洗脳したリドリアスとゴルメデは解放されて、その戦力は三分の一にまで
減少してしまっている。本来ならば、残った四体でじゅうぶんにエースを倒せる算段だったのだが、新たなウルトラマンの参戦は
ヤプールにとっても完全に想定外であった。
「この世界に、まだウルトラマンがいおったとは! おのれ、どの世界でもわしの邪魔ばかりしおって……ならば、仕方がない。
宇宙警備隊との決戦に備えて温存しておきたかったが、超獣どもよ、新たなパワーを受けとれぇ!」
 この世界で溜め込んできたマイナスエネルギーの、さらなる波動が闇の雷のように超獣たちに降り注ぐ。ギロン人の目に
どす黒い光が宿り、アリブンタとアントラーはダメージが完全に回復してさらなるオーラに包まれている。
 そして、ゴモラは本来茶褐色の肉体が有り余りすぎるエネルギーのためか、赤く変色してしまっている。天をも震わすような
凶暴な叫び声をあげて、鋭い牙を鳴らしている。完全に理性は消滅し、破壊衝動のみに支配されてしまっているようだ。
ただでさえ強いゴモラが、さらに……
 だが、それにしても、あれだけの超獣軍団を繰り出して、あれだけのパワーを使ってなおこれだけの余力があったとはと、
才人やルイズはそら恐ろしいものを感じた。この世界は、確かに多くのゆがみを抱えた苦行の世界だが、それほどまでに
人々の心の底には巨大な闇が眠っていたのか。
〔わたしたちのやってきたことは、本当に正しかったの!? これほどの闇を内包してる世界……本当に救う価値がある、の?〕
 光を信じていても、この圧倒的な闇の力を目の当たりにしてはそう思ってしまう。特に、ルイズは小さい頃から魔法を使えないことで
いじめられてきた経験を持つので、なおのこと闇の力の強大さに恐れを抱いてしまった。
 だが、迷うルイズにエースは優しく諭した。
〔ルイズくん、君が疑うのは正しい。人は、その心の内に大きな闇も持ち合わせている生き物だ。悪の力は強大で、底知れない。
しかし、だからこそ人の心に宿る光は、この宇宙のなにより強く輝くことができるのだと私は思う。思い出してみるんだ。君も、
最初から今ここにいる君だったわけじゃない。私は見てきた。君は、君自身の中に宿る怒りや憎しみ、悲しみや葛藤をひとつずつ
乗り越えて、自分を強く鍛え上げてきた。悪と戦い、勝利することで人はより強い光になれるんだ!〕
〔わかったわ……アレは単なる敵じゃなくて、わたしたちが乗り越えるべき壁だってことね。いいわ、逆境上等じゃない! 
わたしがこれまで耐えてきた逆境に比べたら、闇の力ごとき束になってかかってきてもお釣りがくるわ!〕
 立ち直ったルイズは気合を入れなおすように叫んだ。その後姿に才人は、ルイズほどではなくとも同じ疑問を抱いていた自分と、
今のルイズを比べて、正直にルイズはたいしたやつだと思った。どんな障害に足元をすくわれても必ず立ち上がり、前が見えなくとも
しゃにむに突き進んで道を切り開いてしまう。貴族としての気高さと、泥臭いしぶとさを併せ持っている。
〔人間は、いくらだって強くなれる。か〕
 人間、頭ではわかっていたつもりでも、それを心から理解するのは難しいらしい。ルイズの姿に、また教えられた気がした。
本当に、ルイズは少しのあいだにどんどん成長していく。成長することを恐れず、ひたむきなまでの前向きさがルイズの何よりの
強さの秘密なのだろう。毎日を漫然と学校の行き帰りに費やしていただけの才人には、それがとほうもなく大きく見えて、そして
うらやましかった。
 だが、このまま置いていかれて黙っていられるほど才人はおとなしい性格ではなかった。
〔ようし! じゃあもう一丁いってやるか。ヤプールをこの街から叩き出してやろうぜ!〕
〔気合を入れなさいよサイト! わたしより先に倒れたら一週間食事抜きだからね〕
 ルイズが前へ進み続けるなら、俺も走って追いかけよう。あいつはお姫様だっこされて男についていくような魂ではない。
二人三脚のひもが切れるほどに自分の足で走り続けていないと気がすまない暴れ馬だ。だが、だからこそ毛並みは美しく、
気高く大地を踏みしめる優美さに満ちている。
 才人は思う、ルイズとならいつまでだって走っていける。
 若者たちにとっては、生きることそのものが試練だ。しかし、その試練がときに重くなりすぎるとき、大人は道を指し示して
守ってやらなくてはならない。

 希望を失わない人々から希望を奪おうと、悪魔は怒声をあげる。
「叩き潰せ超獣どもよ! 街も人もウルトラマンどもも、形あるものはすべて破壊しつくしてしまえ!」
 これを迎え撃つは、我らのウルトラマンAと、新たな戦士ウルトラマンコスモス!
「これ以上、誰ひとりたりも傷つけさせない。ヤプール、お前の悪事もここまでだ!」
「平和を壊し、命をもてあそぶ権利は誰にもありはしない。戦いは望まないが、ここより先へは一歩も進ませない」
 今、決戦の幕は切って落とされた!

「シュワッ!」
「トォォッ!」

 二対四の圧倒的に不利な状況にも関わらず、ふたりのウルトラマンは憶さずに飛び込んでいった。
 ウルトラマンひとりに対して敵は二体ずつで迎え撃ってくる。エースにはゴモラとアントラー、コスモスにはギロン人とアリブンタが
それぞれ相対し、激闘の火蓋は切って落とされる。
「がんばれ、ウルトラマン!」
「まけるなーっ! ウルトラマーン!」
 今ではエルフの人々も、大きな信頼をウルトラマンに寄せるようになっていた。それはほかでもない、彼らの命をかけた戦いが
認められたということだ。整然と組み立てられた百の言葉よりも、目の前で起こされる一の行動のほうが大きく心を動かすのは
大昔から変わらない不変の原理のひとつだ。
「テェェーイッ!」
 エースの水平チョップがゴモラの首筋に叩き込まれ、続いてジャンプし胴体にキックをお見舞いする。
 もちろんゴモラもこんなものではまいらず、自慢の尻尾をふるって反撃してくるが、今のエースはエネルギーに満たされて
元気百倍! それに、二度も三度も同じ攻撃でやられるエースではない。尻尾を掴んで、逆にジャイアントスィングのように
思いっきり振り回してやった。
「トァァッ!」
 五回、六回、七回と、やんちゃが過ぎた子供へのおしおきのように振り回し、最後は遠心力のまかせるままに投げ捨てた。
落下地点にいるのは当然アントラー、磁力光線を使ってもこれはかわしようがなく、押し倒されて二匹は仲良くサンドイッチになった。
「いいぞーっ! その調子だぁーっ!」
 むろん、東方号でもティファニアやギーシュたちをはじめ、いるだけのメンバーが集まって声を張り上げている。彼らもうれしいのだ。
自分たちはできるだけの努力をした。その努力に、ウルトラマンは応えてくれた! 自分たちがあきらめずに戦い抜いたからこそ、
ウルトラマンは来てくれた!
 甲板で戦っていた者たちだけではない。負傷して運ばれ、手当てを受けてまた上がってきた者たちも加わって手を振っている。
それだけではない。東方号の甲板や舷窓などには避難してきたエルフたちが詰めかけ、外の戦いを歓声をあげて応援していた。
「頑張れ! 負けるな!」
 絶望の中で希望を捨てずにいたからこそ、奇跡は起きた。ならば、その奇跡を絶対に逃すわけにはいかない。戦いはまだ
これから! 自らが戦うことができないならば、そめて心だけでも共にあろう。
 ウルトラマンは人を守るために戦う。だが、決してひとりではない。人々がウルトラマンを信じて応援する限り、その心は
ウルトラマンと常にあり、人々の応援を背にしたウルトラマンは何倍ものパワーを発揮することができるのだ。
「デャァァッ!」
 ゴモラとがっぷり四つに組んだまま、エースはゴモラの巨体を持ち上げた。本来なら、赤く変色した暴走ゴモラはエースが
手に負えないほどのパワーを発揮するのだろうが、今のエースには正しい心のエネルギーを与えてくれる人々が大勢いる。
何万というエルフの人々の思いを力に変えて、エースはウルトラリフターでゴモラを地面に叩きつけた。
「ヘヤッ!」
 よしっ! ゴモラは頭から地面に激突して、脳震盪を起こしたらしくふらついている。いくらパワーを上げたとて、脳までも
強化することはできなかったようだ。
 だが、アントラーがまたエースの背後から不意打ちをかけてきた。エースは反射的に振り向いてキックで押し返す。
アントラーもマイナスエネルギーでパワーアップし、自慢の大アゴの切れ味もぐんと増している。ギチギチと不快な音を
鳴らすあれに今度挟まれたら体を真っ二つにされてしまうかもしれない。
 それなのに、エースは真っ向から立ち向かっていった。武器は向こうのほうが強力で、光線技も通じない。だが、
エースには戦う手段はいくらでもある。彼と魂を共有する才人の得意とした剣のように、エネルギーをまとわせた手刀を振り上げた。
『フラッシュハンド!』
 一撃! 乾いた音を立てて、アントラーの右の大アゴが途中から叩き折られて宙を舞った。
 これでもう、大アゴは役に立たない。最大の武器を失ってうろたえるアントラーに、エースの攻撃がさらに続く。
 悪の力が強大でも、光はそれを乗り越えて先へ行く。それを証明するためエースは戦う!


 さらに、コスモスもギロン人とアリブンタを相手に立ち向かっていく。
「侵略者よ、この星から去れ。どんな理由があろうと、他者を傷つけ奪う権利は何者にもありはしないのだ」
「黙れぇ! 貴様さえ現れなければ、われらの勝利は完璧だったものを。生かして返しはせんぞ」
「わかっていないようだな。私がやってきたのは偶然ではない。お前たちが虐げた者たちの、生きようとする意志が私をこの星に
導いたのだ。お前たちはすでに、この星の生命に負けていたのだ」
「戯言を、その口永遠に閉じさせてくれる!」
 ギロン人の命令で、アリブンタが目を爛々と光らせながら向かってくる。コスモスは、可能な限り戦いは避けたいと思っていたが、
どうしても侵略をあきらめないというのであれば、邪悪な野望を通させるわけにはいかない。
 この地にお前たちはいるべきではない! 善なる者の盾となるよう、邪悪を食い止めるために身構えて相手取り、コスモスは
二匹の攻撃をさばき、間隙を縫って攻撃を当てていく。
「ハァッ!」
 パワーアップしたアリブンタの両腕のハサミ攻撃を、コスモスは手刀ではじき、掌底で押し返してさばいていく。
 力を受け流し、いなすコスモスの前には力任せの攻撃は無駄にエネルギーを浪費するだけで、いきり立てば立つほど当たらない。
 対してコスモスは蹴り技ルナ・キックで相手のバランスを崩させ、背負い投げに似たルナ・ホイッパーで転ばせてダメージを与えた。
体の重心の高いアリブンタは一度転ばされると容易には起き上がれずにもがいている。そして、コスモスは胸元から手を上げて
光を集め、浄化の光を手のひらから放った。
『フルムーンレクト』
 ゴルメデを浄化して沈静化させた光のシャワーがアリブンタに降り注いでいく。コスモスは、たとえ怪獣とはいえ侵略者によって
操られているだけの存在であるなら、殺す必要はないと思っていた。
 光の粒子に包まれて、アリブンタの動きが止まる。やったのか、と……ゴルメデのときのようにおとなしくさせられたのかと、
人々は、コスモスは思った。
 だが、彼らはまだ超獣の恐ろしさをわかっていなかった。
 コスモスが歩み寄っていったとたんのことだった。突然、おとなしくなっていたと思われたアリブンタが頭を上げて、その口から
白煙のような蟻酸を吹きかけてきたのだ。
「イアァァーッ!」
 鉄でも一瞬で溶かす強酸の霧をまともに浴びせられてはコスモスでもたまらない。皮膚を溶かされることはなかったものの、
大きなダメージを受けてのけぞり苦しんだ。そこを狙ってアリブンタは体当たりを仕掛けてきた。
「ウワォォッ!」
 重量六万二千トンの激突を受けてコスモスが吹っ飛ばされる。蟻酸で受けたダメージは簡単にはぬぐえず、体をしびれさせている
コスモスをアリブンタは蹴り飛ばし、そこを狙ってギロン人が足蹴にしてきた。
「バカめ! アリブンタにそんなものが効くか。さんざん我らをコケにしてくれたぶん、その身で味わわせてくれるわ!」
「ウォォッ!」
 いままでほとんど戦闘に参加してこなかったぶん、ギロン人には余裕が大きくあった。アリブンタと組んで、マウントポジションから
連続でコスモスを殴打する。動けないところを二体がかりで殴られてはかなわない。
 そのとき、コスモスにエースからテレパシーでメッセージが届いた。
〔無理だ。そいつらに浄化は効かない! その怪獣は超獣、侵略のために合成されて作り出された生物兵器だ!〕
「ッ!?」
 その瞬間、コスモスの心に怒りが湧いた。破壊や侵略など、利己的な目的で命をもてあそぶ権利は誰にもない。それは家畜にも
劣る最低の奴隷ではないか! コスモスは渾身の力でギロン人とアリブンタを跳ね飛ばし、立ち上がって敵を見据えた。
〔邪悪な意思によって、間違った目的で生み出された命……本来、生けるものにはすべて生き続ける権利があるが……〕
 コスモスは意思を決めた。生命を、自らの生存目的を超えて奪う権利は誰にもない。しかし、その存在そのものが他者に
害を与え続けるようなものであったならば……
 立ち尽くすコスモスに向けて、アリブンタが両手の爪から火炎を放ってきた。ギロン人も、両手のハサミから黄色の破壊光線・
ギロン光線を放って攻撃してくる。爆発が巻き起こり、蟻酸に引火してコスモスの周囲を炎が包み込む。
 ああっ! 人々から悲鳴があがり、ヤプールとギロン人は哄笑する。だが、コスモスは微動だにしない。
 本来、命はいたずらに奪ってよいものではない。しかし、例えば人間の味を覚えてしまった熊が人里に入り込んだり、
生態系を一方的に破壊する外来生物が侵入してきた場合、これをそのままにしては壊滅的な被害が出てしまう場合がある。
そんなときは、誰かが駆除しなくてはならない。まして、侵略という絶対許されない行為を前にして、迷いはすでにない!
「ムウンッ!」
 炎の中でコスモスは左腕を引き、右腕を高く掲げた。その瞬間、コスモスの全身が太陽のコロナのような新円の赤い炎の
リングに包まれて真っ赤に輝いた。コスモスの体を包んでいた青いラインが、燃える炎のような赤に変わっていき、柔和な
表情を漂わせていた頭部も、鋭角で勇ましさをかもし出す兜のような猛々しい形に変化した。
「あっ! あれは!」
 炎を吹き飛ばし、コスモスの新たな姿が現れる。太陽が人の形に化身したような、勇ましい戦いの赤き巨人、ここに降臨!

『ウルトラマンコスモス・コロナモード!』

 強く拳を握り、前に突き出すファイティングポーズをとり、コスモスは威圧するような強い声と共にギロン人とアリブンタを見据えた。
「ハアッ!」
 先ほどまでの青い姿とは打って変わった闘志をみなぎらせた威圧感が、ギロン人を圧迫した。あれはまさに、戦いに望む
戦士の姿。邪悪な者たちだけでなく、戦いを見守っている人々も息を呑んでコスモスを見つめた。
 しかし、ひるみはしたものの、ギロン人は引き下がることなく攻撃をアリブンタに命じる。あんなものはこけおどしだ、やってしまえと。
コスモスも前に出て迎え撃ち、必殺の一撃をアリブンタに見舞った!
「フゥアッ!」
 強烈な鉄拳、コロナ・パンチがアリブンタの胴を打ち、大きくのけぞらせた。さらに、次の瞬間垂直ジャンプしたコスモスの
猛スピードで放たれた回転コロナ・キックがアリブンタの頭を打って見事に吹っ飛ばした。
 轟音と地響き、動体視力の弱い者はなにが起こったのかすらわからないであろうはやわざを決めたコスモス。さらに、
ギロン人がはっと気づいたときにはコスモスはその眼前に現れていた。
「ハッ! イヤァ!」
 防御をとる暇さえない、至近距離の正拳打からのアッパーカットを受けてギロン人の視界が一瞬真っ白になる。
 馬鹿な! 速過ぎる! 全方位への視野を可能としているギロン人の複眼でも、コスモスの動きはまったく把握できなかった。
反撃の態勢をとろうとしたのもつかの間、側面に回りこんだコスモスによって片腕を掴まれて投げ飛ばされてしまった。
「そ、そんな……!?」
 さっきまでの青い奴とはまるで違う。ギロン人は、ウルトラ戦士の中にはメビウスのように姿を変化させることによって
パワーアップする者もいるというデータを持ってはいたが、このウルトラマンは変身前と後では戦闘スタイルからして違う。
「くそぉっ! アリブンタ、やれぇ!」
 一対一ではかなわないと見たギロン人は、アリブンタに援護を求めた。爪先からの高熱火炎が放たれ、コスモスを
焼き尽くそうと迫る。さらに自身も倒れこみながらもギロン光線を放つが、コスモスは金色に輝く光の盾を作り出してこれを防いだ!
『サンライト・バリア!』
 火炎も光線も跳ね返されて、向こう側のコスモスはノーダメージだ。二体はそれでも、バリアのエネルギーが切れるまで
攻撃を続行しようとしたが、コスモスはバリアーを張ったまま飛ばしてアリブンタにぶっつけた!
「ファァーッ!」
 自分とギロン人の光線も加算されたバリアーをぶつけられ、アリブンタは全身から火花を散らして倒れた。
 愕然とするギロン人。だが、コスモスはギロン人に次の命令を与える暇さえ与えなかった。砂煙をあげながら猛烈な勢いで
突進し、アリブンタの肩から生えている大きな突起を掴むと、コスモスは超パワーで持ち上げて振り回した。
『コロナ・スゥィング!』
 アリブンタの巨体が軽々と宙を舞い、見ている誰もが度肝を抜かれた。そして、コスモスが手を放した瞬間、アリブンタは
遠心力のおもむくままに空を舞い、体重とスピードによって生まれた衝突エネルギーのままに地面に叩きつけられた。
「ダアッ!」
 二対一というハンデをコスモスはものともしない。見守っている人々からは、なんて強さなんだと驚嘆の声が数多くあがった。
スピード、パワー、すべてにおいて青かったときを大きく上回っている。
 これが、コスモスのもうひとつの姿、コロナモードの力。コスモスは通常はルナモードと呼ばれる青い姿で、その持てる
戦闘能力の大半を封印しているが、ルナモードではどうしようもないくらい強力な怪獣と戦わねばならないときや、邪悪で
説得に応じない侵略者と対峙するときは、この姿に変身して敵を粉砕する。
 ルナモードを命を救い慈しむ、月の光のごとき優しき慈愛の巨人としたら、コロナモードは邪悪を焼き尽くす戦いの赤き巨人。
一線を越えてしまった侵略者に対して、コスモスは怒涛のごとき攻めを繰り出す。パンチ、キック、チョップ、動きの鈍重な
アリブンタは手も足も出ない。その強さは、コスモスの背中に守る人々を絶対に守り抜かんとする決意が表れているようであった。
 そして、コスモスの戦う姿に、人々は心に浮かんだ伝説の続きを思い返していた。
「あるときは慈愛の姿、またあるときは、燃える太陽のごとき勇敢なる戦いで悪魔のしもべを粉砕した……あの巨人こそ、
六千年前に大厄災から我々を救ったという、伝説の!」
 遠い昔の、語り継がれてきた記憶の名を彼らは唱えた。しかし、それは彼の本当の名ではない。そのとき、戦う巨人へと
向かって、洋上の巨大戦艦から放たれた少女の声が大気の精霊を通じてエルフたちの耳へと届いた。

「がんばってーっ! ウルトラマンコスモスーっ!」

 コスモス、コスモス、それがあの巨人の名前なのか。エルフたちは口々につぶやき、そして自らも、眼前の優しさと
強さを併せ持つ、奇跡の巨人の名前を叫んだ。
「がんばれーっ! ウルトラマンコスモスーっ!」
 幾千、幾万の応援がコスモスの背を押す。そうだ、戦っているのはウルトラマンだけではない。声を限りに叫び、
心の光を輝かせ続ける限り、ウルトラマンの力は無限大! 誰もが皆戦っている。この街にいるエルフたちみんなが
力を貸してくれる。負けるはずが、ない!
「テヤァァーッ!」
 コスモスの強力なチョップがギロン人の頭を打ち、緑色の複眼が不自然に点滅した。頭が重心を失ったように
フラフラと揺らめいて、目の前にいるコスモスに反撃する様子もない。頭部への激しい打撃によって意識を失いかけている。
コスモスはギロン人の真正面から、両手の拳を合わせて叩き込んだ。
「ムアァァッ!」
 無防備なところへ大打撃を受けて、ギロン人は吹っ飛ばされて失神した。
 だが、コスモスはギロン人にとどめをさすことはせずに、もう一度アリブンタに挑んでいった。理由はひとつ、自然にあっては
いけない歪んだ生命であることと、人の血をのみ食料とする凶悪な性質ゆえ。こいつだけはなんとしても逃がすわけにはいかない!
 コスモスの猛攻が再びアリブンタに炸裂する。またこの街で人々が平和に暮らせるように、命が正しい形で星に息づいていくために、
邪悪な侵略者の陰謀は、断固として打ち砕く。

 そのころ、エースもまた二大怪獣を相手に勝利を収めようとしていた。
「ヘヤァァッ!」
 アントラーを抱え上げたまま空中へ飛び上がり、垂直にエースは大回転した。天地がひっくり返り、重力が消滅して
どちらが上か下かわからない感覚がアントラーを襲う。平衡感覚もなにもかも麻痺して、完全に無抵抗となったところで
エースはアントラーを放り投げた。
『空中回転落とし!』
 地上に激突し、大ダメージを受けるアントラー。いかに外皮を頑強に覆おうとも、感覚器官までは強靭にしようがなかった。
いくら怪獣といえども、地上で生きる生物である以上は頭が上で足が下という生まれ持った感覚からは逃れようがない。
それを狂わされてはまともに立って歩くこともままならず、自慢の虹色磁力光線も狙いが定まらない。
 しかし、エースもまたアントラーへのとどめをこの場で刺そうとはしなかった。理由はコスモスとは真逆で、いまだに
暴走を続けているゴモラを止めるためであった。
〔エース、お願いだ。ゴモラを、なんとか助けてやってくれ〕
 才人はエースに懇願した。ゴモラには悪意はなく、ただ眠っていただけのところをヤプールに無理矢理起こされて
利用されているにすぎないのだ。このまま倒してしまってはあまりにも不憫……それに、才人はかつての初代ゴモラの
最期をよく知っていた。
 昭和四十二年初頭……万国博覧会への展示を目的に南太平洋ジョンスン島から連れてこられたゴモラは、その途中で
逃げ出して大阪の街で大暴れし、大阪城をも破壊するほど猛威を振るった。しかしそれはゴモラにとっては見知らぬ土地に
無理矢理連れてこられたがために自分を守ろうとして暴れたに過ぎない。すべての非は人間にあって、ゴモラにはなんの
落ち度もありはしない。本来、ゴモラは危険な怪獣ではないのだ。
〔わかった。やってみよう!〕
 エースも了承した。ウルトラ戦士の使命は怪獣を殺すことではない、宇宙の平和を守ることなのだ。怪獣とて命には変わりない、
悪意あって破壊を好むものであるならば容赦はしないが、殺さずに済ませられるなら迷わずにその方法を選ぶ。
 手段はひとつ、ゴモラを暴走させているヤプールのマイナスエネルギーを除去することだ。それさえなくなれば、ゴモラは
正気を取り戻してくれるはず。なら、多少荒療治だが、戦ってエネルギーを浪費させることで減らしていく。
〔今、楽にしてやるぞ。もう少しだけ我慢してくれ〕
 エースはゴモラを傷つけないように気をつけながら戦った。戦いが長引いたおかげで、ゴモラの攻撃パターンのだいたいは
見切ることに成功している。これが知性の高い怪獣だったら、こちらの回避にあわせて攻撃パターンを変えてくるなり
するだろうが、正気を失って暴走している今はがむしゃらな攻撃をしてくるしかできない。
 冷静に、ゴモラの気迫に惑わされずに、行動を先読みしてかわす!
 散々苦しめられた突進や尻尾連打も、動きに慣れてしまえば大振りで単調な攻撃に過ぎない。エースはゴモラの攻撃に
あわせてチョップやキックを組み合わせて打撃を与えつつ、いわゆるヒットアンドウェイで戦い、じわじわと削っていった。
いかに強大なマイナスエネルギーといえども無尽蔵ではない。後先を考えずにフルパワーで発揮し続ければ、どれだけ
豊富にあろうとも短時間で底をつく。
 案の定、暴走を続けたゴモラのパワーはみるみる減少していき、赤色変化していた体色も元の土色に返った。
 ようし、あと一息だ。ゴモラには、もうエネルギーはたいして残っていない。
〔でもサイト、わかってるんでしょう? わたしたちの力じゃこれ以上は〕
 経過を見守っていたルイズが言った。彼女も、大きく口に出しこそはしないが才人と同じく救える命は救いたいと思っている。
しかし、頭の回転も人一倍速いルイズはじっと見守りながら確信していた。ウルトラマンAの力では、ゴモラに食いついた
マイナスエネルギーを弱めることはできても完全に除去することはできない。
 このままでは、ゴモラを救うことはできない。だが、才人にはルイズとは違う強さがある。それは、自分の弱さを知って認めていることだ。
自分には、そのための力はない。なら、それができる人に頼ればいいと、つまらないこだわりなどは持たず、できないことはできないと、
人を頼れる素直さだ。
〔ウルトラマンコスモス! 頼む、ゴモラを助けてやってくれ〕
 才人はエースのテレパシーを借りてコスモスに頼んだ。それを聞き届けたコスモスは、追い詰めていたアリブンタを投げ飛ばして
昏倒させると、エースとゴモラの戦いを振り返ってうなずいた。
 コスモスは意識を集中させ、浄化光線の構えをとる。しかし、弱ったとはいえゴモラはまだなお激しく暴れていた。このままでは
光線を当てることができない。ウルトラマンAは、暴れるゴモラを抑えるために、その後ろに向けてジャンプした。
「タァーッ!」
 空中一回転、太陽を背にして降りてきたエースは、見上げて目をくらませていたゴモラの背後に着地すると、背中からゴモラを
羽交い絞めにした。もちろん、ゴモラは抜け出そうと激しくもがく。さすがは怪獣界でも屈指のパワーファイターとして知られるゴモラ、
エースの力でも完全には押さえ切れずにあおりを受けて周囲の建物が倒壊する。

〔注射を嫌がる子供を押さえつける母親の気分だな〕
 こんな状況ながら、才人は妙なことで内心苦笑した。小学校低学年の学年予防接種のとき、嫌がる生徒を女先生がなだめるのに
ずいぶん苦労していたのが、うっすらと記憶に残っている。将来はルイズも似たようなことになるのだろうか? ルイズのことだから、
まあなだめるというよりは男のくせにだらしないわねと叱り飛ばす気がする。まあ、ハルケギニアに注射があったかは知らないが。
 戦いの最中にこんなことを考えるとは、自分も戦いに慣れてきたということであろうかと才人は思った。もっとも、ミシェル……
姉さんに言わせれば、たるんでるだけだと叱られるだろう。まったく、姫さまが無茶な戸籍を設定してくれたおかげで、なにかと
気を使ってしまって苦労する。もっと、あの人とはなにもなく付き合いたいのだが、戦いが終わったら、ゆっくりと話してみたい……
今もこの街のどこかで戦っているだろうが、無事でいてくれと才人は強く願った。

 戦いの中のつかの間の感慨。今は夢に過ぎないが、平和の中で、愛する人と過ごすこと以上の幸せがあるだろうか。
 しかし、世界の幸福なくては自分たちの幸せもない。救うべきものを救うため、才人は意識を戦いに戻した。

 エースに押さえつけられて動けないゴモラに向けて、コスモスは手のひらを掲げてカラータイマーにエネルギーを集中させた。
輝く光が集まっていき、コスモスは光を手のひらで押し出すようしてゴモラに向けて照射した。
『コロナ・エキストラクト』
 ルナモードのときよりも強化された浄化光線がゴモラの体内に浸透していく。そのパワーは、取り付かれていたゴモラにも
少なからぬ負担を強いるほど強力なものであったが、ゴモラの生命力ならば耐えられた。細胞のひとつひとつにまで染み渡っていた
マイナスエネルギーは除去されていき、マイナスエネルギーの媒体として寄生していたガディバはついに体外へと追い出された。
〔やった!〕
 ゴモラの体から黒いもやが吹き出るようにはじき出されたガディバを見て、才人は歓声をあげた。
 ガディバの寄生から解放されたゴモラは、ため息をつくように弱く鳴くと倒れこんで目を閉じた。やはり、いかなゴモラとはいえ
相当な疲労が蓄積していたのだろう。
 ようやく悪の手から解き放たれて、元の姿に戻ったゴモラをエースはそっと横たえた。ガディバに寄生されて早いうちだったから、
なんとか助け出すことができた。長引けば、ゴモラはひたすら傷ついた体で暴走を繰り返す、生きた屍のようになっていたかもしれない。
 やはり、倒すべきはヤプール! 命をもてあそび、人々の悲しみを喜ぶ悪魔だけは絶対に許せない。
 エースはコスモスと目を合わせ、その意思を互いに確認した。この世界の人々の幸せを守るために、この悪魔たちの野望は打ち砕く!

 二大ウルトラマンは、復活してきたアントラーとアリブンタに最後の戦いを挑んでいった。

「フッ!」
「ヘヤァッ!」

 エースのチョップがアントラーの首を打ち、コスモスのキックがアリブンタの牙をへし折る。ゴモラを浄化して、ふたりとも少なからず
消耗しているとは思えない強さだ。負けるわけにはいかないという使命感、なによりも背中に守る大勢の人たちが彼らに力を
与えてくれている。
 東方号で勝利を祈るティファニア、ルクシャナ、水精霊騎士隊の少年たち。エレオノールも平静を装っているが頬は興奮で
紅潮しており、海から引き上げられたコルベールも医務室のベッドで勝利を願っている。
 海では、ミシェルたち銃士隊が溺れていたエルフたちをボートに引き上げて介抱しながら、ときおり横目でウルトラマンの
戦いを見ていた。任務に没頭する彼女たちの働きで、多くのエルフたちが命を救われている。声を発することはなくとも、
彼女たちも心の中では同じところに立って戦っていた。
 そして、いまやアディールのエルフたちは、その目で見た真実を受け入れて声をあげていた。
「ウルトラマン、がんばれ!」
 子供から大人まで、彼らの叫ぶ声は同じ。その濁りのない声のひとつひとつが、エースとコスモスに力を与えてくれる。

 さあ、とどめだ! エースは体を大きくひねり、アントラーに向けて腕をL字に組んだ。
 コスモスも、その両手に赤く光る宇宙エネルギーを集中させ、円を描いて増幅させる。狙うのはアリブンタ、悪しき命と魂を
持って生まれたものに、今度は正しい命として生まれ変わってくれることを願い、同じく腕をL字に組んで同時に必殺光線を放った。

『メタリウム光線!』
『ネイバスター光線!』

 三原色の光芒と赤色の光撃がアントラーとアリブンタを貫いた。そして、二匹はゆっくりと全身を発光させながら倒れこむと、
次の瞬間大爆発がその身を包み込み、紅蓮の炎と火花を残して吹き飛んだのである。
「やっ、たぁーっ!」
 街を、人間とエルフの割れんばかりの大歓声が包み込んだ。アディールを襲っていた、二匹の凶悪な怪獣は二大ウルトラマンの
前に敗れ去り、ここにヤプールの超獣軍団は壊滅した。
 エースとコスモスはともにうなずきあい、互いの勝利を祝福する。見れば、東方号や海、街のいたるところでも手を振っている
人間やエルフの人々が見える。ふたりは彼らに、心の中でありがとうと感謝した。

 しかし、戦いはまだ終わっていない。超獣軍団は壊滅させたが、まだ指揮官が残っている。
 コスモスの一撃で気を失わされていたギロン人。そいつが意識を取り戻したときに見た光景は、敗北の二文字以外では
表現できないものであった。
「な、なんだとぉ……!?」
 緑色の複眼が動揺を隠し切れないというふうに不規則に点滅する。だが、いくら現実を否定しようとしたところで、
超獣軍団の全滅は変えようのない事実として目の前に存在していた。
 ふたりのウルトラマンを前に、二言目を発することのできないギロン人にコスモスが語りかける。
「この星から去れ。ここに、お前はいるべきではない」
 それは、コスモスからの最後通告であった。命まではとらないから去れ、さもなくば今度こそ容赦はしないという
断固とした意思表示である。エースも、戦意を喪失した相手に追い討ちはしないと、コスモスに同調して見守っている。
「くっ、くぅぅ……」
 しかし、ギロン人は退却はできなかった。逃げれば、役立たずとしてヤプールに粛清されるのは間違いない。かといって、
ふたりのウルトラマンを相手にしては万に一つも勝ち目はなく、玉砕にもならない自滅しか待っていない。
 引くも攻めるもならず、進退窮まったギロン人。残された道は特攻しかないかと、投げやりになりかけたそのときだった。
空に暗雲と雷鳴が轟き、ヤプールの怨念がこもった声がアディールに響き渡った。

「おのれウルトラマンどもめ。よくも、よくもわしの超獣軍団を全滅させてくれたな! 忌々しい、まったく忌々しいぞ!」

 空にヤプールの赤黒いのっぺらぼうの幻影が浮かび上がり、そのおぞましい姿に人々は震え上がった。しかし、エースは
怨念を跳ね返すように叫び返した。
「ヤプール、お前がいくら人々に絶望を与えようとも、彼らにはそれを乗り越えていける力がある。超獣どもは全滅した。
お前の負けだ、消えるがいい!」
「おのれウルトラマンA! もう勝ったつもりかぁぁ……よかろう、こうなったら最後の手段を見せてやる。我らヤプールの
生み出した暗黒の魂よ、ここに集まれ! 今一度、悪魔の力をこの世に示すのだ!」
 暗雲が渦巻き、膨大なマイナスエネルギーがあふれ出す。ヤプールの怨念の深さを示す、触れるものをすべて腐らせる
絶対的な暗黒のパワーが異次元世界からこの世界にやってこようとしていた。
「こ、これは!?」
 まだ、あれだけのエネルギーを隠し持っていたのかとエースは思わずたじろいだ。超獣軍団を相手に、あれほどの
エネルギーを使っておきながら、以前にも勝るとも劣らないこの膨大なエネルギー量は、かつての究極超獣にも匹敵する。
 この世界で集めたものではなく、ヤプール自身の怨念と復讐心から生まれたマイナスエネルギー。ウルトラ戦士と
人間たちに対する恨みが、連敗を重ねたことでついに臨界を超えた。ウルトラ戦士の光とは対極の、底なし沼のような
ドロドロしたどす黒い闇の感情エネルギー。
 これがヤプールの本当の力……これまでのものは前座に過ぎなかったとでもいうのか。戦慄するふたりのウルトラマンと、
何万もの人々の見守る前で、ヤプールは呪いの言葉をつむいでいった。

「戦場に散った暗黒の同胞よ! その怨念を晴らすべく再び蘇れ。ひとつとなって、新たなる命となるがいい!」

 怨念によって生まれた闇の引力が、戦場に散った悪魔の怨霊を呼び集めていく。
 廃墟からゴーガが、海底からダロンが、サメクジラが、オイルドリンカーが、バルキー星人が亡霊となって現れる。
 闇の中からはマザリュースが出現して、アディールの上空を不気味な声をあげながら旋回した。
 そして、超獣たちの怨霊は結集すると、次々とギロン人の体へと飛び込んでいった。
「な、なんだお前たち! う、うがぁぁぁーっ!」
 ギロン人の口から苦悶の声が轟き、その体がどす黒い闇のオーラで覆われていく。
 なんだ! いったいなにが起ころうとしているのだ!? 愕然と見守るエースとコスモスの前で、ヤプールの闇の儀式は
最高潮を迎えつつあった。
「ハッハッハッハ! ギロン人よ。お前もそいつらが憎かろう。だからお前に、復讐を果たすための究極の力をくれてやる。
超獣軍団のすべてのエネルギーを結集して、我が最強のしもべとなって生まれ変われぇ!」
「グォォォ! 力が、力がみなぎってクルぞ。信じられないヨウな、すさまじい力だダダダダダダ!」
 常軌を逸した怨念の力がギロン人に人知を超えた変化をもたらしつつあった。無数の怨念のエネルギーが、パワーアップなどと
いうものとは次元の違う何かを起こそうとしている。
 闇の渦の中で、人型をしていたギロン人の肉体が溶ける様に輪郭を失っていく。有り余りすぎるマイナスパワーに、生身が
ついていけなくなっているのだ。このままでは、エネルギーの過負荷で自己崩壊するか爆発する! ヤプールはいったい
なにを考えているのだ!? エースはこのままではまずいと、ギロン人に向けて光線を放った。
『メタリウム光線!』
 エース必殺の一撃がギロン人を襲う。だが、ギロン人を覆う闇の渦はメタリウム光線を軽々とはじき返してしまった。
〔効かない!〕
 なんてパワーだ。エースの妨害がまったく通じないとは!
 さらに、闇の渦はアントラーとアリブンタの怨霊も取り込んで増大する。すでにエネルギー量は計測可能な値を超えていた。
だが、いくらエネルギーが余ろうとも、それを制御できなくてはなんの意味もない。ギロン人では到底無理だ。ヤプールも、
逆上して失敗したのかと思われた、そのときであった。
〔あれはガディバ! そうか、そういうことだったのか!〕
 ギロン人に、マイナスエネルギーとともにガディバが憑依したことで謎が解けた。ガディバには取り付いた怪獣の遺伝情報を
書き換えて、まったく別の怪獣に変えてしまう能力がある。それを利用すれば、ギロン人の肉体を作り変えることも可能。
そういえば、あのガディバはゴモラの遺伝情報を記憶していたはず……まさか!
 闇の中で、一度分解されたギロン人の肉体が再構築されていく。人型が、恐竜型の前傾姿勢になり、特徴的な三日月形の
角を持つ頭部が生まれ、鋭い爪が生えた太い腕と足が現れ、長大な尻尾が生えた。
 あのシルエットは! 才人は、最悪の予感が当たったことに戦慄した。だが、その最悪はまだ真の最悪ではなかった。
 闇の竜巻を振り払い、ギロン人から完全変貌したゴモラが現れる。しかし、その容姿は……
〔やっぱりゴモラ……いや! な、なんだよあれは!〕
 それは、才人の知っているゴモラではなかった。全身はまるで金属の鎧をまとっているかのように刺々しくなり、
手に生えた爪も大きく長く伸びている。頭部も同様で、瞳のない白目は悪鬼のように鈍く輝いていた。
 もはやゴモラとは思えないそいつは、単なるフェイク体とはとても思えなかった。いうなれば、『ゴモラにあってゴモラにあらず』
まさしく魔獣……すでにギロン人の意識は消え去ったのか、凶暴な叫び声をあげて、アディールのすべての人々に恐怖を植え付けた。

 遺伝子の奥に隠されていた、ゴモラ自身さえも知らなかった未知の姿。
 最強怪獣の降臨。ここに、アディールをめぐる二大ウルトラマンとヤプールの戦いは、ついに最終ラウンドを迎える。


 続く


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