あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るろうに使い魔-20


「ここは、どこ?」
 気付けば、ルイズは闇の中にいた。辺り一面真っ黒な世界。何も見えない、何も聞こえない。そんな場所。
 いきなりそのような所に放り込まれたルイズは、一瞬戸惑いながらも歩き始めた。
 このまま真っ直ぐに行けば、ここから抜け出せる、何となくだったがそう直感で思ったのだ。
 事実、ルイズの目の前に、小さな光が見え始める。それは段々大きくなり始め、今度は眩い光が、ルイズの視界を覆った。

 その先にあったのは、夢の続き。あの使い魔の、始まりとも言える過去。

「…これは……」
 次にルイズが見たものは、紅く染まる太陽と、幾多にも並ぶ木の墓標。
 枝を折って作り上げた簡単な十字架は、日に当たって大きな影を作っていた。
 その中心には……子供の頃の剣心…心太が後ろ姿で立っていた。
「驚いた、親だけでなく、野盗共の墓まで作ったのか」
 不意に、後ろから声が聞こえた。ルイズが振り返るとそこには、あの夜、野党の群れを一瞬で片付けた、伝説の衣を纏った男が立っていた。
「親じゃなくて人買い。親は去年コロリで死んだ」
 男がゆっくりと心太の傍まで来たとき、おもむろに心太は淡々とそう告げた。
「でも、野盗だろうと人買いだろうと、死ねばただの骸だから……」
 ルイズもまた、幼い心太の前まで来ると、そこには三つ、小さな石が並んでいた。
「……その石は?」
 ルイズの今思った疑問を代弁するかのように、男は聞いた。
「霞さんに、茜さんに、さくらさん」
 ルイズはハッとした、あの時、心太を庇って死んでいった女の人たちだと、直ぐに分かったのだ。
「会ってまだ一日だったけど、男の子は自分一人だったから…命を捨てても守らなきゃと思ったんだ。でも…皆自分を庇って…この子だけは…って。自分が子供だったから…」
 そう言う心太の頬には、枯れた涙の跡が残っていた。家族でないとはいえ、さっきまで親しい人の骸を運ぶのはどんな気持ちだったのか、想像するに余りあるものだった。
「だから…せめて墓くらいは…と良い石探したんだけど…こんなのしかなくて…添える花も無いんだ…」
 消え入りそうな声で俯くの心太に、男が墓の前に出ると、おもむろに酒瓶を開けて、それを石の墓にかけ始めた。
「上手い酒の味も知らんで成仏するのは不幸だからな。俺からの手向けだ」
「あ、ありがと…あの…」
「俺は比古清十郎、剣を少々やる」
 男―――比古はそう答えると、今度は厳しい眼で心太を見下ろした。
「坊主、お前はかけがえのないものを守れなかっただけではなく、その三人に命を託されたんだ。お前の小さき手は、その骸の重さを知っている。
 だが、託された命の重さは、その比ではない。お前はそれを背負ってしまった。自分を支え、人を守れる強さを身につけることだ。お前が生き抜くために…大切なものを守り抜くために」
「……守り抜くために…」
 思い返すように呟く心太に、比古は続けた。
「坊主、名は?」
「心太」
「優し過ぎて剣客にはそぐわないな、お前は今から『剣心』と名乗れ」
「…剣…心?」
 心太、改め剣心は、思わず比古を見上げた。あどけない、歳相応の子供のような瞳。だけど、その中には、はっきりとした『意思』が宿りつつあった。
 それを見抜いた比古は、どことなく嬉しそうに口元を緩ませた。
「お前には、俺の『飛天御剣流(とっておき)』を、くれてやる」
 これがすべての始まり。欠かせない彼の原点。紅の朝日が昇る中、その光が二人の影を大きく照らしていた。



     第二十幕 『結婚』


「…はっ!」
 ルイズはここで目を開けた。そこは昨日就寝についた、目的地であるアルビオンの一室。
 毛布から出て、ルイズはゆっくり体を起こす。
「私…ケンシンの過去の続きを見てたんだ…」
 そんなことを思いながら、ルイズは今一度、夢で見た光景を思い返す。
 繋がってゆく…剣心という名前、比古と呼ばれた男。そして、剣心のあの強さとその意味。
 ルイズはそんな事を考え、ベットから降りると、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「…ケンシン?」
 何だろうと思い扉を開けてみると、恐らく残ることに決めたのだろう、女性の仕官が何人か入ってきた。
「今日祝言を挙げられるヴァリエール嬢に、お粗末ながら衣装の準備をさせていただきます」
「えっ…!」
 そう言って、まだ頭がついていけないルイズを他所に、仕官達はせっせと準備を始めた。

「なあ…相棒?」
「おろ?」
「ホントにそれでいいのか?」
 朝、ルイズと同じ時間に、剣心も目覚めた。
 いつもの様に普段着に着替えると、デルフが自分から鞘から抜き出てきたのだ。
「多分結婚なんかしたら、相棒はお払い箱にされてしまうと思うぜ? 貴族ってもんはそういうもんさ」
「まあ、その時はその時でござるよ」
 自分の言葉に嘘はつかせない。もしワルドと本当に結婚したら、ルイズの気持ちが落ち着くのを見届けてから、ゆっくり元の世界に戻る手掛かりでも考えようと思っていた。
「相棒が言うなら、まあ俺もいいんだがね……それより何か引っかかるんだよなあ…」
「…何が気掛かりでも?」
「いやそっちじゃねえんだ。相棒に振るわれたときな、何か思い出しそうだったんだが…」
 そんな時、おもむろに扉が開いた。相手はワルドだった。
 ワルドは、剣心を見るなり早々出し抜けに言った。
「聞いているとは思うが、今日僕はルイズと結婚する」
「…おめでとうでござる」
「君も参加する気かい?」
「それは、是非出席したいものでござるな」
 ワルドは、少し顔を顰めると、誰も聞こえないのを確認して、ひそひそ声で言った。
「実はだな、栄えある貴族の祝言に、平民である君が参加するというのは、余り無いものなのだよ」
「…では、どうすれば?」
「安心したまえ、君はルイズの使い魔君だからね。必ず出席できるように取り計らうさ。だからそれまで、別の部屋で待機してもらってもいいかな?」
 そう言うと、ワルドは後ろにいる二人の従者を指す。彼等が案内人のようだった。
「構わないでござるよ」
「そうかい、では早速」
 剣心は、そのまま従者達に案内され、その部屋へと移動した。彼の姿が見えなくなるのを見届けてから、フッとワルドは嗤った。
「どうぞ、死出の旅路を…『人斬り抜刀斎』」



「なあ、相棒」
「…何でござる?」
「とぼけんじゃねえ、俺が気付いてんのによ」
 茶化すようにデルフがカチカチと鍔を鳴らす。一室に案内されたが、どうにも空気がおかしい。どこか殺気を含んでいる。
 案内してくれた二人の従者も、そのまま帰ろうとはせず、じっと剣心を睨めつけるように佇んでいる。まるで監視しているみたいに…。
 そんな剣呑な雰囲気を知ってか知らずか、何でもないような風に剣心が呟く。
「ざっと二十…でござるな」
「二十二だろ? 後ろ後ろ」
 最早殺意を隠そうともせず、背後の従者が突然杖を引き抜いた。
 しかし、唱えるより先に、振り向いた剣心の鞘から、銀色の閃光が杖を吹き飛ばした。
 慌てた従者の一人が、笛のようなものを使って、潜んでいる仲間を呼んだ。
 一変、辺りはメイジや傭兵たちで一杯になった。その数ピッタリ二十人。
「相手はたかが平民だ、始末しろ!!」
 従者の叫びと共に、傭兵たちはこぞって剣心に襲いかかった。



 始祖ブリミルの礼拝堂にて、ウェールズは壇上に立ち、二人の到着を待っていた。
 周りは、誰も彼もが戦の準備で出ており、閑散としたものだった。
 その中で、キュルケ、タバサ、ギーシュの三人は、同じように席についていた。
「しかし、子爵と結婚かあ…」
 どこか惚けた感じで、ギーシュは呟く。タバサはいつも通り本を読んでいて無表情だったが、キュルケもどことなく上の空だった。
「どうかしたのかい?」
「んー、いやねえ…」
 キュルケは今のルイズが結婚を受けるなんて、思ってなかった。どうにもこの式自体、何かきな臭い感じがしているのだ。
 タバサも何か感じることがあるのか、視線を本から放してどことなく周りを見渡していた。
「そう言えば、ケンシンは?」
「あれ? 今日は見てないわね…タバサは?」
「…見てない」
 そんな風に会話をしていると、大きな扉が開けられ、二人の婚約者の来訪を告げた。


 気付けば、ルイズは式場の道を、ワルドと共に歩いていた。
 いつも通りの制服姿に、アルビオンの由緒ある冠を被り、一点の汚れのない白いマントで着飾っていた。
 ルイズの美貌も相まって、それはかなり完成度の高い美しさを誇っていたが、逆に表情は婚約者にあるまじき無表情だった。
 ワルドに、これから結婚すると告げられた時、剣心はどうなったかを彼に尋ねた。
 するとワルドは、彼に対し冷たい様子を隠さずにこう告げた。
「彼か? 君によろしくと言って一足先に帰ったよ、あの男も薄情だな」
 そう言われたとき、ルイズは頭の中が真っ白になった。

 嘘だったの? あの夜の言葉は…まやかしだったの…と。

 そんな考えが頭をもたげている内に、ワルドはとっととルイズを婚約者に仕立てる準備をしていた。
 そして、いつの間にか本当に結婚する一歩手前まで来ていたのだ。
 相手はワルド子爵、幼い頃からの憧れの存在。
 優しく、強い。貴族の理想ともいえる男性。
 なのに、どうしてこんなにも気分が沈んでいるのか。
(…ケンシン…)
 本当に、彼は帰ってしまったのだろうか? ルイズは考えた。
 ふと思い出すのは、今朝見た夢の出来事。
『命を捨てても…守らなきゃ…って思ったんだ』
『……大切な…もの…?』
 心太は、誰かを守る力が欲しかった。失った事への辛さや悔しさを知っていたから。
 ワルドは、何のために力を欲しているのだろう…? 彼は、高みへと近づきたいというようなことを言っていた。
 そこに、剣心とワルドの決定的な違いがあるんじゃないか、とルイズは思った。

「では式を始める。新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻にすることを誓いますか?」
「誓います」
 そんなルイズを置いて、式はいつの間にか進行していた。ウェールズが詔を読み上げ、ワルドがそれに応える。
 ウェールズは次に、ルイズの方を見て同じように読み上げる。
「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」
 ルイズは、ぼんやりとウェールズの顔を見た。結局、私は何で結婚するんだろう…?
 こんなことをしている場合じゃない、早くウェールズを説得しなくちゃならないのに。
(そうよ…こんな事に時間を割いている場合じゃないのに…)
 ルイズは、ずっと考えていた。誰かのために、結婚はするものなのかと。ずっとそう思っていた。でも、それは違うんじゃないかと思い始めてきた。
 自分が、心から許せる人じゃないと、そこに幸せはないんじゃないかと。それがワルドとは言わないが、少なくとも今は、まだ早い。
(まさかあんたに感謝する時が来るなんてね…)
 チラっと、横目でキュルケを見ながら、ルイズはゆっくりと、しかしはっきりした口調でウェールズ達に告げた。

「私は、この結婚を望みません」

 この言葉に、ウェールズとワルドは唖然とした。
 ギーシュも、これには負けず劣らず驚いている。キュルケとタバサは、何となく予測できていたのか余り驚きは無かった。
「新婦は、この結婚を望まぬと?」
「はい、お二方には、大変迷惑を致すことになりますが…」
 ルイズの心からのお詫びに、本気と受け取ったウェールズは、少し寂しい顔をしたが、ここはルイズの意思を尊重してくれた。
「子爵、誠に気の毒だが、花嫁の望まぬ式をこれ以上続ける訳にはいかぬ」
 ここで、ウェールズは放心しているワルドを見て、気付いた。
 ショック、というのもあるのだろうが、その感じにどこか嫌な予感を抱いた。
「緊張しているんだ、そうだろルイズ。君が!! 僕の結婚を!! 断るはずがない!!」
 肩を掴んで揺さぶってくるワルドに対し、ルイズはきっぱりと言い切った。
「ワルド、御免なさい。憧れだったのは確かよ。でも…それは恋じゃない。だから―――」
 しかし、ワルドはルイズの言葉に耳を貸さず、掴む手をさらに強くする。

「世界だ!! ルイズ、僕は『あの方』と共に世界を盗るんだ!!」
「…誰よ…『あの方』って…姫さまはそんな事望まないわよ…私も…」
「そんなことは関係ない!! 僕には君の力が必要なんだ。君のその才能が!!」
 ワルドが目を見開いて叫んだ。ルイズは恐ろしくなった。そして悟った…これが…彼の本性なのだと。
 ようやく分かった。ワルドと剣心の姿が、被らない理由が。
 ワルドは、自分の事しか考えていない。彼が求めているのは、有りもしない魔法の力であって、ルイズ自身ではない。だから、心の底から拒絶してしまう。
 被るわけないのだ…人のために自分を顧みない剣心と、自分のために他人を顧みないワルドが…被るはずないのだ。
「子爵、君はフラれたんだ。潔く―――」
「黙っておれ!!」
 仲介に入ろうとしたウェールズだったが、激高したワルドに突き飛ばされた。ワルドは、なおも食い下がらない。
「ルイズ、これだけ言っても分からないのか!?」
「嫌よ!! 誰が貴方なんかと!!」
 ルイズはもう、嫌悪感を隠さずに叫んだ。そしてワルドの手から逃れようともがいた。
 異様な空気を感じたウェールズが、再度ルイズからワルドを引き離そうとしたが、今度も思い切り突き放された。
 ウェールズも、これには遂に激怒し、懐から杖を引き抜いた。
「何たる無礼! 何たる侮辱! 子爵、今すぐにラ・ヴァリエール嬢から手を離したまえ!
さもなくば我が魔法の刃が君を切り裂くぞ!!」
 ウェールズだけじゃない、キュルケとタバサも、憮然とした顔で杖をワルドに向けた。
ギーシュは、未だにこの事態についていけないのか、躊躇った感じで見守っていた。
 ワルドは、一旦辺りを見渡して、小さくため息をついた。
「ならば仕方ない…取り敢えず目的の一つは諦めるとしよう」
「目的…?」
 その言葉に、疑問符を浮かべるルイズ達を置いてニヤリとワルドは笑った。
「この旅には目的が三つあったんだ…一つはルイズ、君なのだがこの様子だと無理なようだな」
「当たり前じゃない!!」
 怒って叫ぶルイズに対して、ワルドは特に気にせず続ける。
「二つ目は、君の持つ手紙…アンリエッタの手紙だ。しかしこれはもう、手に入ったも当然。最後は―――」
 そう言って、ワルドはゆっくりと片手を上げた。
言葉の意味を、誰よりも早く理解したウェールズは、いち早く呪文を唱えようとして、ワルドに杖を向けた。しかし……。
「…がっ…!」
それより先に背後から風の刃が、ウェールズの肩を切り裂いた。
「ウェールズ、貴様の命だ」
 呆気にとられるルイズ達の周りに、突如何人かの人影が舞い降りた。そいつらは、素早くキュルケ達を押さえつけ、取り囲むように周囲に立ちはだかった。
「き…貴様ら…『レコン・キスタ』か…いつの間に…」
 心底憎たらしそうに、呟くウェールズは、そのまま血を流して倒れ込んでしまった。
 気付けば、敵方の兵士たちによって、ルイズ達は包囲されていたのだ。
ここでワルドは、ルイズが今まで見たこともない、邪悪な笑みを浮かべた。
「昨日はあれほどの大きなパーティーだったからね。秘密裏に何人か忍び込ませることぐらい簡単なことさ。王を打倒するには中から崩すに限る」
「宣戦を無視して…裏から攻めいるとは…貴様らには、貴族としての誇りをも失ってしまったのか!!?」
「フン、今更負け惜しみにしか聞こえんな。どんなことをしても勝てばいいのだよ!!」
 怒りで顔を歪ませるウェールズに、ワルドは見下すように嘲笑う。
 ルイズは、ただ呆然とした顔をするしかなかった。
「ワルド…どうして…何が貴方を変えたの…?」
「『あの方』に巡り合えたおかげさ。おかげで僕は更なる高みというのを知った。…だが、今はそれを語ってなんになるんだい? さて、それでは改めて聞こう、ルイズ」
 ワルドは、取り押さえているキュルケ、タバサ、ギーシュの三人を指して言った。
「黙って僕に付いてきて欲しい、断れば…分かるな?」
 押さえつけてるメイジ数人が、杖をキュルケ達に向ける。
 ルイズは、驚きと恐怖で体を震わせた。今、まさに自分の言葉が三人の命を左右することになっているのだ。
 重責とプレッシャーに、心が押しつぶされそうになる。
「そんな…私…」
「今決めるんだ、僕に従くか、それとも見捨てるか」
 これ以上ない程の、冷たい声でワルドが告げる。怖い…ただ、怖い。
 本心から言えば、絶対にワルドなんかに付いて行きたくない。でも、そのせいで皆を見殺しになんて、出来る訳がない。
「騙されるな…ヴァリエール嬢…奴は…そんな約束を守るような男じゃない…」
「貴様は黙っていろ!!!」
 ワルドは、ウェールズの腹を思い切り蹴飛ばした。苦しそうなうめき声を上げながら、ウェールズは吹っ飛ばされる。
 慌ててルイズが駆け寄ろうとしたが、その前をワルドに阻まれた。
 とっさに杖を取り出すが、ワルドがいち早くそれを見切り、杖を持つ手を弾き飛ばす。
 とうとう何もできなくなってしまったルイズに対して、ワルドはどこまでも冷淡に告げた。
「さあ、どうするかね? それとも、誰か一人の首を飛ばさないと分かってくれないかな?」
 ワルドが顎でしゃくると、メイジの一人が、杖をキュルケの首筋を指す。
「え……? やめて!!」
 とルイズが叫んだが、メイジはゆっくりとルーンを唱え始める。
(いや…やめて…)
 ルイズは、ポロポロと涙を流す。キュルケとは親しい間柄ではないのに…むしろ憎たらしい関係だったのに…。でも、死んで欲しいまで思ってはいなかった。
「やめて…やめてよ…」
 しかし、そのか細い願望も、今は聞き届けてくれる人はいない。今の自分ではどうすることは出来ない。
「助けて…誰か…」
 ふと蘇るのは、自分の使い魔の過去。次に出てきたのは、いつも優しくニコニコしてくれた彼の顔。最後に思い出すのは、昨晩誓ってくれた、あの約束だった。
『拙者は離れたりしないでござるよ―――約束でござる』
 ルイズは、気付けば叫んでいた。彼の事を。彼の助けを。
「助けて、ケンシン!!!」


 バァン、と衝撃音が轟いた。
 それは、魔法の力では無く、大ホールの入口が無造作に開けられた音だった。
 そこに立っていたのは、ワルドが秘密裏に送り込んだ、あの従者のメイジだった。
「何事だ、騒々しい…」
 不躾の来訪に、軽く舌打ちをしながらワルドは振り向く。
 しかし、メイジは虚ろな表情をしながら、目を空に泳がせており…そして、今度は震えるような声で呟いた。

「つ…強過ぎる……」

 それを最後に、メイジはバタリと倒れた。
 その後ろに立っていたのは、見慣れた着物に緋色の長髪。そして頬には十字傷。
 それを見たルイズは、喜色の声を上げて叫ぶ。
「…ケンシン!!!」
 そう、あの緋村剣心が、憮然とした表情でワルド達を見据えていたのだった。


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