あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るろうに使い魔-16



 その晩、ラ・ロシェール最後の見納めということで、ギーシュ達は酒場で大盛り上がりをしていた。明日はいよいよアルビオン。そこに乗り込む前祝いというわけだ。
 キュルケやギーシュは、美味しそうにその店一番の美酒を堪能しており、タバサはこれまた豪勢な料理と格闘中。
 剣心は、デルフの未だに続くボヤきを聞きながら、そんな様子を眺めていた。
「なあ相棒…俺は寂しいんだよ…艱難辛苦…手に取る奴ばっかが口だけ達者な馬鹿ばかりでよ…やっと相棒と巡り合えたかと思いきや…そいつはコブつきと来たもんだ…」
 酒を飲んでるわけではないのに、誰よりも酔っ払った様子で、デルフは言った。
 ギーシュやキュルケも、そんなデルフの話を。面白そうに聞いていた。
「へ~え、あんたも苦労してんのねぇ」
「何ということだ! 君も一緒に乾杯しようじゃないか!」
 そうして意気投合する二人と一振りは、楽しそうに談笑する。それを横目に、剣心は見守っていると、ふと隣にタバサがやって来た。
「いい?」
「大丈夫でござるよ」
 相変わらずの仏頂面で、タバサはしばらく目の前の食事を平らげていると、ふと草の葉のようなサラダを、剣心の皿に盛り合わせた。
「食べてみて」
「…何でござる?」
「はしばみ」
 心無しか、自信あり気に目の奥を輝かせてそう言うタバサを見て、剣心はひと摘み、掴んでそれを口に入れて―――
 それに気付いたキュルケが、悲鳴に近い叫びを上げた。
「だっ…駄目よダーリン!! それは――」
 言い切る前に、剣心は既にはしばみを飲み込んでしまった。刹那、口の中が苦味で一杯になる。目が回る。吐き気がする。頭が朦朧とし始める。
 幼い頃に、一度ワライタケを食べて笑い死にしかけたことがあったが、今回はそれに通じる酷さだ。
 気がついたら、どこに地で足を立っているのかすら分からなくなり、大仰に倒れたまま、そして気絶した。慌てたキュルケ達の声を、遠くで聞きながら。



     第十六幕 『襲撃』



「大丈夫…?」
「酷い目に遭ったでござる…」
 気絶して数分後、ようやく立ち直った剣心だったが、まだ完全には抜けきっていないのか、目は回ったままだった。
 隣では、タバサが申し訳なさそうに顔を覗かせていた。
「御免なさい」
「へーき……でござるよ」
 務めて平静に、そう返す剣心だったが、まだ少し苦しそうだった。改めて、剣心は不思議そうにタバサを見た。
「良く食べられるでござるな…それ…」
「好物」
 一枚だけでもこの苦味なのに、タバサは相変わらず美味しそうに、何枚ものはしばみのサラダを口に運んでいる。
 薫の料理が恋しく思えるほどの酷さなのに、よく平然としていられるなあ、と剣心は思った。
 と、ここで今更気づいたかの様な感じで、キュルケが聞いた。

「そう言えば、ルイズはどうしたの? 子爵もさ」
 よくよく見れば、そこにルイズ達の姿がない。ギーシュも、言われて初めて気付いた。
「ワルド殿は、明日のアルビオン行きの船の予約確認に出ているでござる。ルイズ殿は…」
 そう言って、剣心は上を見る。何故か彼女は降りてこようとはしなかった。まるで自分を避けるかのように。
「部屋で、何か考え事をしているようでござる」
「ふーん、そ」
 特に興味が惹かれたわけでもなく、キュルケはワインを口に入れる。タバサははしばみの苦味を味わっている最中だ。
 そんな二人を見計らって、何やら悪い顔をしながら、ギーシュがこっそり耳打ちした。
「彼、二十九だってさ」
 ブッ!! とキュルケの口からワインが思い切り吹き飛ばされた。タバサも、口からはしばみの葉がこぼれ落ちる。ギーシュは、予想通りといった笑みをした。
 一変して卓上はワインとはしばみの葉まみれになったにも関わらず、二人はそれよりも驚いた顔で剣心を見た。

「え…十歳も違うの、あたしと?」
「……嘘…」
 あまりに驚愕している二人を見て、剣心はやはり首をかしげる。
「そんなに変でござるか…?」
「だってぇ、その顔で二十九は詐欺でしょ?」
 タバサとギーシュ、あとデルフもウンウンと頷く。キュルケ達も、剣心は二十代前だとすっかり思っていた節があったのだ。
 ふと、師匠のことを剣心は思い出した。そう言えば、師匠も自分と同じくらいの顔作りで、確か……
「師匠も、四十三で拙者と同様だったから、そんなに疑問はなかったのでござるが…」
「し、四十三!!!」
 再び、キュルケ達の驚きの声で、辺りは包まれる。
「師って、もしかしてケンシンの師匠かい?」
「何、若作りの秘訣でも飛天御剣流にはあるの? あたしも習いたい!!」
「尚更興味ある」
 と、三者三様に反応を見せながら、剣心に詰め寄った。そんな風に楽しく会話する中で、剣心はふと上を見やる。――やはり、彼女は降りてこなかった。


 所変わって、その頃のルイズは―――。
 自室に籠って、憂鬱げに空の月を窓から眺めていた。
 ワルドと剣心が決闘した後から、ルイズの心境はかなり複雑だった。
(何で、ケンシンは引き分けにしたんだろう…?)
 ルイズだって、あれが剣心の強さの全てでは無いことを知っている。なのに、あんなあからさまとも言える手加減に、尚且つご丁寧にわざと魔法を喰らってまで引き分けに持ち込んだ。
 それを見てから、ルイズの心は変に渦巻いていた。
(ケンシンは、あんなものじゃない…もっと…)
 ワルドも、「彼は中々の使い手だ」と褒めてくれたが、何でだろう…その感想を素直に受け取れなかった。
 剣心は強い。ギーシュの時も、フーケの時も、それを教えてくれた。
 でも、だからといってワルドがボコボコにされるのを見たいかというと、そうじゃない。
 なんて言うんだろう――――。

 剣心の実力は、あの程度だとワルドに思われたくない。もっと強いんだって言いたい。

(何でわたし、こんなことで悩んでるのよ……)
 そう思うと、急に怒りというかなんというか、そう言ったものが沸ふつと湧き上がってくる。
 元はといえば、決闘なんて引き受けた剣心が悪い。そしたらこんなに悩むことなんてなかったのに……。
 そして、悩んでいる私に声の一つぐらい掛けてもいいはずなのに、こういう時に限っていないんだから…っ。
 理不尽なのは分かってる。でも一旦火がつくともう止まらない。
「ああもう!! 馬鹿馬鹿しいわ! こんなことでウジウジしたってしょうがないってのに!!」
 一人大声を出しながらルイズは立ち上がる。
 今は姫直々の任務を、手紙を受け取るという重要な任務の真っ最中だ。いつまでも私情にかまけている立場ではない。
 気持ちを切り替えて、私も下に降りよう。そうしようとした時―――。

 急に、窓の外が黒い影で覆われた。

 何だろうと、ふと振り向いてみて…ルイズは驚きに目を見張った。
 そこには、あの巨大なゴーレムが、窓から自分をのぞき込んでいたのだ。そして、その肩にいるのは……。
「…フーケ!」
「感激だわ、覚えててくれたのね」
 口元を歪ませてフーケが嗤った。よく見るとその隣には、何やらもう一人誰かいる。
 黒マントに、白い仮面を被った正体不明の人物だ。
「何で…あんたがこんなとこに…」
「親切な人がいてね。私みたいな美人はもっと世のために役立たなくてはいけないと言って、出してくれたのよ」
「それで…一体どうしてここに…?」
 ルイズの声が震える。もしかしてフーケが姫の言ってたアルビオンの刺客なのだろうか。それとも別の目的が…?
 何にせよ、友好的な雰囲気ではないのだけは確かだった。
「決まってるじゃない」
 そう言ってフーケが杖を振り上げる。それを合図にゴーレムも腕を上げた。
「素敵なバカンスをありがとうって、お礼を言いに来たんじゃないの!!」
 そしてドゴンと、ルイズの目の前のテラスを粉々にした。



 その一刻ほど前。
 相変わらず呑気に酒を煽るギーシュ達だったが、ふと気付いたように剣心に質問した。
「そう言えば、子爵との決闘を見せてもらったけどさ、何であんな戦い方をしたんだい?」
 その疑問に、タバサとキュルケも剣心を見る。
 剣心の実力だったら、あの程度の剣術しかしてこないワルドに一方的に勝つことだって出来たはずである。それを何故、引き分けにまで持ち込んだのか。
「婚約者のルイズ殿の手前、恥をかかせるのは余りにも酷でござろう」
 剣心は分かっていた。あの決闘は、ワルドがルイズに良いところを見せようとして企図したのを。その彼女の前で不本意に倒してしまっては、彼の面子は丸潰れもいいとこだ。
 だから、わざわざ引き分けに引っ張っていけるように挑発し、魔法の一つを喰らって終了と、闘う前からそう想定していた。
 負けじゃなく引き分けにしたのは、「やる気がない」と思われて再戦されないようにするため、後そっちの方が後腐れが無いだろうと思って決めた事だった。

 しかし、彼等の反応を見る限り、全くの逆効果になってしまったらしい。手加減も難しいな……と思いながら剣心はギーシュ達を見た。
「へぇ、ちゃんと子爵の事考えてたんだね」
「ふーん? あたしだったら面倒なこと考えずにちゃっちゃと倒すんだけどなあ」
 と、そんな風に話している中、剣心は不穏な気配を再び感じた。
 昼間の時と同様、大勢でこちらを取り囲んでいる。やはりあの時の連中はただの物取りではなかったようだ。
 何人かが、扉の前で構えている。いつでも突入出来ると言いたいように。
 剣心は、ゆっくりと席を立った。そして、奴等が扉を開ける瞬間―――。
「皆伏せろ!!!」
 そう叫んで、まるで閃光の様に刀を抜いた。
 呆気にとられるギーシュ達をよそに、剣心は石で作られた卓の足を全て切断する。そして端をつかんで盾にするかのように傾けた。
 先程まであった料理は地面へと吸い込まれ、代わりに何本か矢が突き刺さった。
 ここに来てようやく状況を把握出来たギーシュ達は、何とか卓の後ろに隠れ、魔法で応戦を始めるが、今度の相手はかなり多い。メイジがいないとはいえ、かなり戦い慣れているようだった。
「い、一体何なんだい!!?」
 慌てた様子でギーシュが叫ぶ。ここで剣心は上を見る。―――まだルイズが取り残されている。
(――ルイズ殿!!)
 剣心は、矢がとまる隙を狙い、卓を抜け出し素早く二階への階段を目指した。キュルケやタバサは援護しようと杖を上げるが、その必要はない程の速さで――――。


「あ…ああ……」
 ルイズは、力なく腰を抜かす。
 目の前には、陥没した床や壁。そしてそれを見下ろすかの様にゴーレムが佇んでいる。
 一度、その拳で生死をさ迷いかけたルイズは、トラウマを呼び起こされて固まってしまったのだ。
 そして今、無慈悲にもう一度ゴーレムの腕が上がる。
 逃げなきゃ…そう思うけど足に力が入らない。そうしている内に、真上に上げた腕がピタリと止まる。その影は、完全に自分を射程距離に入れていた。
 やられる、そう思ったとき――――。
「ルイズ殿!!」
 奥から聞こえるその叫びに、自然と顔が安心で綻ぶ。気が付けばちゃんと足に力が入る。
拳が降り下ろされる前に、ルイズは思いっきり地を蹴った。頭から突っ込むような姿勢になってしまったが―――。
 その先にいた剣心が、それをちゃんと抱きとめてくれた。
「もう、今まで何してたのよ……怖かったんだからっ…」
 そう言って、ルイズは剣心の胸を小突く。お礼を言いたかったのに、何とも素直になりきれなかった。
 剣心は、そんなルイズに微笑み返しながら、見覚えのある石の巨人に目を向けた。
そして、ゴーレムと肩にいるフーケ達を一瞥すると、そのままルイズを抱えて下へと降りていった。


 再び、一階の酒場に戻ってみると、卓の影で応戦しているギーシュ達の姿があった。
また、いつの間に来ていたのか、ワルドもその中にいた。
 飛んでくる矢を器用に回避しながら、剣心も素早く卓の後ろへと潜り込んだ。
「皆、無事なようだな」
 一通り揃ったようで、ワルドが確認する。
「いいか諸君、このような任務は、半数が目的地にたどり着けば成功だ。つまり――」
「囮…でござるな」
 ワルドの言葉を、剣心が引き継ぐ。その雰囲気には、先程までの飄々としたものが一切感じられない、歴戦の戦士の風格をしていた。
 卓の上で、敵の数を確認しながら、剣心は言った。
「あの程度なら、拙者一人で充分でござる」
「ちょ…ちょっと待ちなさいよ! そんな勝手な真似―――」
 慌てて止めるルイズを、ワルドが制止した。
「彼の実力なら、間違ってもあんな奴等に遅れは取らんさ」
「で、でも…」
 ルイズは心配だった。そりゃあ剣心は強いのは知っている。でも万が一ということもある。何せ、相手の中にはあのフーケもいるのだ…と。
「私も残る」
 そんな中、ふと隣でタバサが言った。それを聞いて皆キョトンとするが、それに構わず続ける。
「もし船を出ても、シルフィードで追いつける」
「ダーリンとタバサが残るなら、もうここは大丈夫ね」
 頼もしそうな目で二人を見ながら、キュルケが笑った。むしろ相手に同情をしてしまうくらいだろう。
 しかし、ルイズはまだ不安…というか不満げな表情をしている。私の使い魔なのに勝手に決めて…とそう思っていたからだ。
 私も残る、と言おうとした矢先、ワルドに先を越された。
「ではここは君たちに任せる。僕等は直ぐに船に向かってアルビオンへ行くつもりだ。追いつけるようなら、追ってきたまえ」
 そう言って、裏口のドアをワルドが指差した。そして剣心とタバサの二人を残して、ワルド達は素早く外に出る。
 ルイズは、名残惜しそうに、そして悔しそうに、そんな二人を見つめていた―――本当なら、彼の隣にはタバサではなく自分が居るはずなのに…と、何だか剣心をタバサに取られたようで嫌だった。
 けど、これも任務のため…任務のため…と自分に言い聞かせて、その場を後にした。


「…んで、どうするよ相棒?」
 間髪いれずに矢を打ち続ける傭兵たちを見据えていた剣心を見て、デルフが聞いた。
 タバサも、お手並み拝見とばかりに剣心の顔を見つめている。
 やがて、逆刃刀を抜きながら、「やっぱ俺は使ってくれねえのか…」と泣き声を上げるデルフとタバサに向き直って言った。
「正面突破、でござるな」
 限りなく矢を飛ばしてくる傭兵達を見て、剣心は思った。どうやら彼等は、さっきから矢しか撃ってこない。何故突入してこないのだろうと。
 それについては、相手にメイジがいるという理由からそうしているのだろうと考えた。
 接近戦じゃ分が悪いと見ているからこそ、精神力を削って消耗戦を誘っているのだ。
 ならば、その隙をついてこちらから奇襲をかけてやろうと、そう剣心は思案していた。
「……できるの?」
 それを聞いて、タバサが不安げな表情をする。これには根本的な問題として、「矢の雨をくぐり抜ける」という条件が絶対必須。無理なら即蜂の巣にされる。メイジならともかく、人間にそれが可能なのかと。 
 しかし、剣心は相変わらずの口調でこう言った。
「これくらいの事、昔の頃に散々やってきたでござるよ」
 何の気がねもなく、そう剣心は微笑むと、卓の端に身を乗り出して―――次の瞬間、傭兵達目掛けて駆け抜けた。
 一瞬動揺が傭兵達の間を駆け巡ったが、血迷ったか、と直ぐに冷静になり、向かってくる男、剣心に矢を撃とうとして弓を引いた。
 だが―――。


「ぎゃあああ!!!」
「な、何だコイツはぁ!!!」
「ひぃいいい、化物ォ!!!」
 卓の上から、そんな悲鳴が飛んでくるのをタバサは聞いていた。
何が起こっているんだろう、と顔を上げようとしたが、丁度その横を矢が掠めたため、慌てて身を隠した。
 しばらく時間を置いて、もう大丈夫だろうと思い、改めてタバサが身を乗り出すと――。
「た、助けてぇぇ!!!」
「こ…こんな奴が居るなんて聞いてねえよぉぉ!!」
 傭兵の大半が打ち倒され、残りは慌ただしく逃げ出す兵の背中がその目に写った。


その中心…気絶した兵たちの真ん中に、剣心はいた。相変わらず、何でもないような風貌を漂わせながら。
 タバサは悔しそうに目を伏せた。彼の剣術を見れなかった。飛天御剣流の技の一つでも目に焼き付けたかったのに、これではそれも叶いそうもない。
結局彼が全て倒してしまったのだから。
「…大丈夫?」
 剣心に隣に近づいて、彼の表情を伺いながらタバサは尋ねた。
一応聞いては見たものの、別に傷なんてないし、それどころか息切れ一つしてないのだが。
「まあ、この程度なら」
 剣心はそう返して、デルフを担いで玄関を出る。まだ残党が残っているかと思い気を引き締めていたが、どうやらその必要はなく、全員恐れをなして逃げたようだった。
「何したの?」
 タバサはどうしても聞きたかった。あれほどの数の傭兵を、魔法も使わずに、ものの数秒でどうやって追い払ったのだろうかと。
「うーん、何したって言われてもなあ……」
 困った様子で言い淀む剣心だったが、ズシンと轟く音に、一旦その思考を中断する。
見れば待ってましたと言わんばかりに、石で造られし巨人と、その造り手フーケが見下ろしていた。
 剣心は、それを見て逆刃刀を構える。タバサも、今度は杖を持ち直して戦う仕草をとった。
 そしてそれを確認したフーケが、ニヤリと笑いかける。
「あの時は不覚にもやられちゃったけど、今度はそうはいかないわ…あんたら全員踏み潰してやる!!」


新着情報

取得中です。