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デュープリズムゼロ-26

第二十六話『虚無のルイズ』

静寂…


そう…それはまさに静寂…


戦場にいた全ての人間の視線を釘付けにする眩い閃光が残したのは唯、絶句と静寂だけだった…


どれ程その静寂が続いたのだろうか?ミントはライトニングクラウドをも飲み込んで空を走った雷光に焼き尽くされ、跡形も無く消滅したワルドがつい先程までいた空間を見つめてツインテールの髪を掻き上げ、風に遊ばせる。

「アルビオンじゃルイズが近くにいたから使わなかったけど。これがこのミント様の切り札よ。」

『黄色』の魔法タイプ『ハイパー』『まばゆき閃光』と呼ばれるそれはミントの習得している魔法の中でまさに切り札と呼ぶに相応しい、ミントを中心として優に半径100メイルを軽く超える凶悪なまでの破壊力を誇る雷の魔法。
消費する魔力はそれに伴い、掛け値無しの残魔力の全放出という極端な仕様…


「………流石に疲れたわね…一旦下がろうかしら…」

疲労を顔に浮かべ、げんなりとした表情でミントは呟くと背中のリュックから飲料水の入った瓶を取り出してそれを口につけると一つ安堵の溜息を漏らしたのだった…
一息ついてミントはヘクサゴンを戦域からゆっくりと後退させることにした。


そしてその直後…ミントの目の前で戦域全てを包み込むとてつもなく巨大な爆発が起きたかと思うとそれはレキシントン含むアルビオン艦隊を一瞬の内に焼き尽くしたのだった。




____

それは遡る事数分前…

ルイズはとにかく馬を走らせていた。

「ミント…」

勢いよくアンリエッタの元から飛び出したのは良いが情けない事に空を行くヘクサゴンにルイズは辿り着く術を持ち合わせていなかった。すぐにその事には気が付いたのだがルイズはそれでも愚直にミントの直下目指して馬を走らせていたのだった。

と、そこへまるで導かれるように上空から何かがルイズ目掛けて一直線に落下してきた。

「ぎゃあぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!!!」
「………………え?」
それは太陽光を反射しながら絶叫を上げるデルフリンガーに間違いなかった…

デルフリンガーはそのままルイズの駆る馬の脇を掠めるように地面に突き刺さり、馬はその事に驚き嘶きを上げると取り乱したように暴れ始める。

「ちょっ…ちょっと、良い子だから落ち着いて!!……って、あっ!!!」

ルイズは慌てて手綱を捌き、馬を落ち着かせようと奮闘するがその最中懐からポロリと『始祖の祈祷書』が地面に転がり落ちた…
ルイズは慌てながらもある程度馬を落ち着かせるとその背から軽やかに飛び降り、始祖の祈祷書を拾い上げると自然とその視線は地面に突き刺さったままのデルフリンガーへと向けられる。

「あ~…よう、嬢ちゃん元気にしてた?」

「元気と言えば元気よ…残念ながら空から飛び降りる程じゃ無いけど…」

「ま、それ位が丁度良いぜ…」

「ところであんたがここに居るって事はやっぱりあれは…」

「あぁ、相棒だぜ、今はワルドの野郎と戦ってるが…まぁ心配ねぇだろうな…」

ルイズは開口一番に軽口を叩くそんなデルフリンガーに呆れたた様子でやり取りを行いながら始祖の祈祷書に付着した土汚れを払って、中身が無事かとパラパラとそのページを適当にめくる。

「ワルドとですって……ん?何これ?」
と、ここでルイズは白紙であった筈の祈祷書に何やら長ったらしく文章が綴られている事に気が付いた。
何とは無しにその文章に視線をむける。間違いなくさっきまでこんな文章は存在していなかった筈だ…

序文。
これより我が知りし真理をこの書に記す。
この世のすべての存在は、虚ろを宿る。
四の系統はその虚ろに干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり。
その四つの系統は、『火』『水』『風』『土』と為す。


ルイズはその祈祷書に記された文章が何であるかを理解するとその文章を食い入るように熟読し始める。

神は我にさらなる力を与えられた。
四の系統が影響を与えし虚ろは、虚ろなる闇より為る。
神が我に与えしその系統は、四の何れにも属せず。
我が系統は虚ろなる闇に干渉し、影響を与え、かつ変化せしめる呪文なり 。
四にあらざれば零。
零すなわちこれ『虚無』。
我は神が我に与えし零を『虚無の系統』と名づけん。


「おい、嬢ちゃんどうした?」
デルフリンガーはそのルイズの様子が明らかにおかしい事に気が付いて、ルイズに声をかけるがとうのルイズは祈祷書から視線を外す事無くデルフに震える声で答えた…

「…デルフ…どうしよう…私選ばれちゃったみたい…」

「何だそりゃ?」
ルイズの物言いに疑問符を浮かべたデルフがそう言った次の瞬間、上空でとてつもない轟音と雷光が発生した。と同時にルイズの馬が怯えたように何処かへ走り去る。

「何だ?何だ!?」
突然の事に困惑しながらデルフリンガーがルイズを見るとどういう事だろうか?ルイズは先程の雷光と雷鳴にまるで気が付いていないかの様に祈祷書を見つめたまま小さく唇を動かし、ひたすらに長い長い詠唱を行っていた…

これを読みし者は、我の行いと贖罪と器を受け継ぐ者なり。
またそのための力を担いし者なり。
志半ばで倒れし我とその同胞のため、『異界の亡霊』を『聖地』に封じるべき努力せよ。
『虚無』は強力なり。
また、その詠唱は永きにわたり、多大な精神力を消耗する。
詠唱者は注意せよ。
時として『虚無』はその強力により命を削り、器に潜みし虚ろなる闇を増幅させる。
したがって我はこの読み手を選ぶ。
たとえ資格なきものが指輪を嵌めても、この書は開かれぬ。
選ばれし読み手は『四の系統』の指輪を嵌めよ。 されば、この書は開かれん。
           ブリミル・ル・ルミル・ユル・ヴィリ・ヴェー・ヴァルトリ
  以下に、我が扱いし『虚無』の呪文を記す。
  初歩の初歩の初歩。『エクスプロージョン』


祈祷書の持つ魔性に取り込まれでもしたのか…そのうつろな瞳からは輝きが失われており、ルイズがある種のトランス状態である事がデルフには読み取る事が出来る…

「おいっ!おいっ嬢ちゃん!!………クソッ駄目か…それにしてもこの呪文は一体…?聞き覚えがあるのか?俺様に…」

そして…ルイズの歌うようなその詠唱は未だ錆び付いたままのデルフリンガーの記憶を激しく揺さぶった…そうそれは確かに遙か昔、何処かで聞いた事がある不思議な詠唱だった。

その詠唱の完了と共にルイズは意識を覚醒させると自身の中に眠る『虚無』の力を理解する…同時にこんな非合理的な封印を施していたブリミルへの不満も湧いたのだが…
淀みなく練り上げられた桁違いの魔力の奔流、ルイズはそれを完全に制御する術をしる。

(すごい…解る、狙える…これなら!!)

魔法の射程は視界の全て、対象はルイズの意識一つで取捨選択さえできる。後は魔力の解放の為、呪文と共に杖を振るうだけ…
ルイズは狙う…対象は上空に群がるアルビオン艦隊。その動力たる風石と船体を支える竜骨とマストのみを焼き尽くす。

ルイズは瞳を閉じると大きく一度深呼吸を行い大きくその瞳を見開いてその小さな肺に収まった空気を身体に渦巻く魔力と共に一息に吐き出すように…全身全霊、万感の思いを込めて『虚無』を解き放った…


「エクスッ…プローーーージョンッッ!!!!!!!」

レキシントン号を中心に、ルイズの解き放った魔力は光となって艦隊を包み込む、それはさながら突然太陽が現れたかのようで…音の無い爆発と閃光が再び空を覆った。
全てが終わった後の光景は、艦隊の全てが炎上する姿。
それら全部が、火の玉となって一斉に地上へと墜落していく。途中、小型の脱出艇が戦艦から統率など一切取れぬ様子で幾つも飛び出してはいた。
その光景はまるでこの世の物とは思えぬ大惨事でありながら、だがしかし、トリステインにとっては何よりもの奇跡の光景だった…

「フヘヘ……ざまぁみなさい…」
スッカラカンになった精神力で辛うじてルイズは言ってほくそ笑むと草原に受け身も取らず清々しい勢いで大の字に倒れる…
「ミント…は…無事かしら…」

今まで生きてきて魔法が使えないというコンプレックスから溜まり続けていた膿を全て吐き出したかのような晴れやかな気分のままルイズはその意識をゆっくりとまどろみの中へと落としていった…




____

「何よアレ…?」

ミントは口を開いたまま閉口出来ず、唯々先程目の前で起きたデタラメな威力の爆発の後を見つめていた…
魔力の回復の為と落下したデルフリンガー回収の為、戦域を離れ高度を落としていたミントは何とか爆発を免れていたがあのままあの場に留まっていたと思うとゾッとする。

「誰の仕業か知らないけど、このミント様もろとも吹き飛ばそうだなんて…見つけたら唯じゃ置かないわ…」
無論、ヘクサゴンはエクスプロージョンの対象から外れていたのだがミントはそれを知るよしも無い。
そんな事を考えながらもミントは取り敢えず恐らくはデルフリンガーが落ちているであろう場所へと向かうのであった…

大爆発を引き起こした犯人兼、ご主人様が満足そうに倒れているその場所へと…




数日後____________ 

トリステイン城下町、ブルドンネ街では派手に戦勝記念パレードが行われていた。
狭い街路にはいっぱいの観衆が詰めかけている。
聖獣ユニコーンにひかれた馬車から覗く王女アンリエッタの姿を一目見ようと人々は通り沿いの窓や屋上からパレードを見つめ、口々に歓声を投げかけた。
「アンリエッタ王女万歳!」 「トリステイン万歳!」
群衆達は熱狂していた。

あの後、奇跡の戦勝を飾ったトリステインはゲルマニアとの婚姻を伴った条約を白紙へと戻し、新たに同盟協定を結ぶ運びとなった…
理由は言わずもながらアルビオンがトリステインへと攻め入った際、ゲルマニアは未だ条約が不締結であったとはいえまるでトリステインを見捨てるかのように軍を動かさなかった…
故に、ゲルマニアは強硬には出られずまたトリステインとの同盟は絶対不可欠であった。アルビオンの脅威に怯えるゲルマニアにとって、トリステインはいまやなくてはならぬ強国であるのだから。


馬車の中でマザリーニはアンリエッタの民達へと笑顔を向けるその姿に内心驚いていた…
ウェールズの死を伝え聞いて以来悲しみに暮れていたアンリエッタ…ほんの二月前まで蝶よ花よと愛でられるだけの『王女様』。それがマザリーニの知るアンリエッタだった。

それが何か今までとは全く違う…そう…それは一言で表すならば…

「お強く…なられましたな。」
アンリエッタは観衆に手を振りながら、マザリーニに答える。

「いいえ、わたくしは未だ弱く情けない小娘です。しかしわたくしは彼女達の友人として恥じる事無く生きる為に戦う事を決めました。ですからマザリーニ、これからもこの無知で愚かな『女王』を支えて下さい。」

「…御意に。」
マザリーニはアンリエッタの覚悟の言葉に喜色を浮かべて傅いた…
未だ次の戦乱を感じさせぬ程トリステインは勝利に湧いていた。


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