あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るろうに使い魔-10



「それで、さっきの技は何なのよ?」
 乗ってきた馬車の中で帰る途中、ルイズは出し抜けにそう言った。
 土くれのフーケを捕まえ、秘宝を取り返したルイズ一行は、悠々と今魔法学院へと帰る途中だった。
 フーケはまだ気絶していたが、念のためにと縄でグルグル巻きに縛り上げている。そんな中発したルイズの言葉にキュルケとタバサも興味深気に剣心を見た。
「そういえば、ケンシン言ってたわよね。ヒテン……なんちゃらって、もしかして、ケンシンの戦い方ってその流派?」
「是非教えて欲しい」
 好奇心を抑えない三人組が、目をキラキラさせて剣心を見つめた。余程知りたいのだろう。
 隠すのも何だな、と思った剣心は、簡単に説明することにした。



     第十話 『飛天の剣』



 『飛天御剣流』。
 それは戦国時代に端を発する、日本より古くから伝わる古流剣術の一つ。
 一対多数の斬り合いに優れた、実質本位の殺人剣。
 正式な伝承者は、その名のごとく天にも昇る跳躍力と、地をも駆け抜ける強靭な脚力、そして予知能力に近い勘を持って、戦場を走り抜けて敵を斬る。
 知る人とぞ知る秘密の流派だが、未だ敗北を知らない比類なき絶対無敵で最強の豪剣。
 それが、剣心の扱う飛天御剣流なのである。

「とまあ……そんな感じでござるが」
 剣心の説明に、ルイズ達は首をかしげた。当然である。住む世界が根本的に違うのに、そんな流派見たことも聞いたこともないのは当たり前だ。
 だが、一つだけ分かることがある。剣心は強いということだ。
 なら、彼の持つ飛天御剣流も、自然とルイズ達の中で価値を上げてくる。実際にその目で見て、強さを実感しているのだから、その言葉も鵜呑みにできるというものだ。
 何より、この世界の強さは魔法のレベルと相場は決まっていた彼女達にとって、己の鍛えた体一つでメイジに立ち向かうという彼の戦い方は、かなり斬新だったのだ。
「まあ、凄いってことだけは分かった」
「そうね、むしろケンシンの強さに納得がいったわ」
「………」
 ここでタバサが、何か言いたそうに剣心を見つめていたが、そろそろトリステイン魔法学院の姿が見え始めてきた。
 それに気づくと結局タバサは何も言わず、再び本に視線を落とした。


「何と、ミス・ロングビルが土くれのフーケだったとは!」
 学長室にて、一通り報告を聞き終えたオスマンが、嘆くように天を仰いだ。
 よくよく考えると、彼女はオスマンの秘書を務めていたのだ。ならば事の発端は彼にあるといえた。
「一体、どういった理由で採用なされたのですか?」
 コルベールが聞くと、オスマンは遠い目をしながら語り始めた。
「街の居酒屋でな、客として訪れた私を、給仕としてもてなしてくれたのが始まりじゃ。あまりに美人でのう……ついつい尻を――うん、いい触り心地じゃった」
 隣のコルベールが、冷めたような目でオスマンを見た。
「それで、それでも怒らないので、秘書をしてみんかと、そう言ったんじゃ」
 今度はルイズ、キュルケ、タバサが白い目でオスマンを睨んだ。剣心も、呆れたように腕を組んで首を振った。
「おまけに魔法も使えるというもんでな」
「……死んだほうがいいのでは?」
 ぼそりと呟くコルベールをよそに、さも自分は悪くないというようなで口でオスマンはまくし立てた。
「今思えば、あれも魔法学院に潜り込むためのフーケの手じゃったに違いない。だって…」
「要は、オスマン殿がしっかりしていれば、こうはならなかった――でござろう?」
 グウの音すら出させない剣心の言葉が、オスマンの胸に深々と刺さった。コルベールも、どこか申し訳なさそうに顔を赤くした。その理由は彼のみぞ知る。
 ウンウンと頷くルイズ達を見て、もう弁解の余地は与えてくれんだろうなと思ったオスマンは、仕切り直しとばかりに話題を変えた。
「ま、まあそれは置いといて、君たちはよくぞフーケを捕まえて『破壊の剣』――」
 と来たとき、ルイズはバツの悪そうな顔をして俯いた。
 あの剣は、ゴーレムに思いっきり叩きつけられて粉々にされたからだ。
 ルイズの表情を見て、オスマンは嫌な予感を覚えながらも、とりあえず言葉を続けた。
「と、『英雄の外套』を取り返してくれた。礼を言いたい、ありがとう」
 そう言うと、オスマンはルイズ達の頭を撫でさらにこう告げた。
「君たちに、『シュヴァリエ』の爵位申請を、宮廷に出しておいた。追って沙汰があるじゃろう。ミス・タバサには、精霊勲章の授与も申請しよう」
 それを聞いたルイズ達は、ぱあっと顔を輝かせる。しかし……。
「あ、あの…ケンシンには、何もないのですか?」
 ルイズが、不憫そうな目で剣心の方を向いた。今回の騒動は、彼の活躍なくしてはありえない。特に終盤は、もしかしたら命を落としたかもしれない戦いだった。
 一番頑張った剣心が、何にも授与されない。爵位は喜ばしいルイズ達だったが、これには納得いかないような目でオスマンを見つめた。
 しかし、オスマンは静かに首を振った。
「残念ながら…彼は貴族ではない」
「別に拙者、名誉とか権威欲しさに赴いたのではござらん、ルイズ殿達を危険な目に遭わせないために行っただけでござるよ」
 剣心は、特に気にしない様子でそう言った。
 剣心のその言葉に、少し嬉しそうに、けどどこか不服そうな表情をしたルイズだったが、ここでオスマンがパンパンと手を叩いた。
「さて、今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。このとおり、秘宝も戻ってきたし、予定通り執り行う。今回の主役は君達じゃ、用意してきたまえ。せいぜい着飾るのじゃぞ」
「そうでしたわ! フーケの件ですっかり忘れておりました」
 キュルケは、そう言ってタバサを連れ出すと、オスマンに礼をしてその場を後にした。
 剣心は、「話したいことがある」と、ルイズに言ってその場に残り、オスマンもコルベールを下がらせた。



 剣心は、改めてオスマンの方を向いた。
「聞きたいことがある、という顔じゃな? 出来るだけ力になろう。せめてものお礼じゃ」
「あの、秘宝と呼ばれる二つのものですが」
 剣心も、年長者ということでどこか畏まった口調でオスマンに告げ、そして持ってきた黒い箱を開けた。
 原型の留めていない『破壊の剣』を見たとき、一瞬悲しそうな目をしたオスマンだったが、それは直ぐに元に戻った。
「剣はまだいい、これはただの刀です。だけどこちらの方は――」
 剣心は、『英雄の外套』と呼ばれるマントを手に取った。
 初めて見たときは、状況が状況なだけに混乱していた節があったが、改めて間近で見ると、これはもう間違いない。
「飛天御剣流継承者が、代々受け継いできた白外套です」
 自分を鍛えた師匠が、いつも身に付けていた、あのマントそのものだった。
 飛天御剣流は、その強大すぎる力故に、それを平時抑えるため、常にそれを身に纏う。
 重さ十貫の肩当てに、筋肉を反るバネを仕込んだそのマントは、奥義継承と共に、それを受け継いでいく。

 そして、飛天御剣流の理と共に、剣を振って生きることを誓うのだ。

 剣心は、自分の身の上の出来事を全て話した。こことは全く違う異世界から来たこと。飛天御剣流のこと、このマントの意味のことも。
 そして、一つの疑問をぶつけた。一体これをどこで見つけたのかと。
 飛天御剣流の飛の字も知らないような世界に、突如現れた見慣れた『秘宝』。その所在を知れば、もしかしたら帰る手がかりになるかもしれない。そう思ったのだ。
 オスマンは、剣心の話を興味深そうに静聴すると、やがてその重い口を開いた。
「あれを私にくれたのは、私の命の恩人じゃ」
 そしてどこか、遠い昔を思い出すように剣心に語り始めた。
「今から三十年程前、森を散策していた私は、ワイバーンに襲われたことがあってな、それを救ってくれたのが、そのマントと剣の持ち主じゃった。彼は、人間とは思えぬ素早さとジャンプ力で、ワイバーンと互角の死闘を繰り広げた…今でも目に焼き付いておるよ。あれほどの激闘は、そうそう見れんじゃろうて」
 一旦間を置いて、息をつくと、オスマンは再び口を開いた。
「永遠とも思える瞬間じゃったが、決着は直ぐだった。一瞬の隙を付いて、彼は死角に回ると、その見事な剣捌きでワイバーンの首を吹き飛ばしおった。…そして糸が切れたように、彼もその場に倒れ付した。
 どうやら彼は、戦う最初から大きな怪我をしていたようでな、斜めに思い切り裂かれたような傷跡があった。私は彼を学院に運び込み、看護したのだが……まもなくしてな…」
 オスマンは言葉を伏せた。剣心もその意味はわかる。だから何も聞かずに待った。
「私は、彼を手厚く弔うと、使っていた剣とマントはそれぞれ『秘宝』として、宝物庫に仕舞い込んだのじゃ。恩人の形見として……」
 それだけ言うと、オスマンは深いため息をついた。やや一拍置いて、剣心は聞いた。
「それで、彼はどこから来たとかは……」
「わからん、どうやって来たか、出身はどこか、その謎は解明されぬままじゃった……だけど…そうか、通りで君の動きは、彼に似とると思っとったよ」

 剣心は、ゆっくりと頭の中を整理し始めた。もう疑いようのない。オスマンを救った恩人は間違いなく、飛天御剣流伝承者『比古清十郎』だ。
 と言っても、自分の師匠のことでは無いだろう。おそらく師匠の師、先代『比古清十郎』の事だ。
 そもそも、『比古清十郎』という名自体、飛天御剣流の開祖から取ったもので、世間から身を隠すための隠し名としてマント共に受け継がれるものである。
 そして、死の原因となったという、大きな傷跡は間違いなく、奥義習得による最後のやり取りによるものだということは見当がついた。
 飛天御剣流は、その力の強さゆえに技の習得も命懸けだ。それの奥義ともなると、互いの命を懸けた全力勝負になるのは必死。
 剣心自身も、それで一度は師の命を奪いかけた。
 剣心はふと、あの自信満々な笑みを浮かべる師匠の顔を、思い出した。
(師匠も、やはり拙者と同じように加減はしたのかな…)
 傲岸不遜、唯我独尊という言葉がよく似合う人だ。だけどやはり情はあったのだろう、すぐには死なないように、無意識に抑えていたのかもしれない。
 そして余命を与えられた先代の師も、この異界の地でその命を全うした。恐らく、最後まで飛天御剣流の理を貫いて。

 しかし、これで帰る手掛かりが見つかると思ったら、結局それらしい情報は手に入らなかった。自分もまた、彼と同じようにこの地でその生き様をしていかなければいけないのだろうか。
「お主のこのルーン、これなら知っておるよ」
 と、オスマンが剣心の左手のルーンに手を触れて言った。
 確かに、これについても聞きたかった。時々力が湧いてくる現象は、このルーンのせいだということは、薄々感づいていた。
 そしてそれは、ルイズに関することで引き出されるということも。
「これは『ガンダールヴ』。伝説の使い魔の印じゃ」
「……伝説の使い魔?」
「そうじゃ。一説によれば、その伝説の使い魔はありとあらゆる『武器』を使いこなしたという噂じゃ」
 何故それが自分に…? と剣心は首をかしげたが、やはりオスマンはわからん、とだけ言った。
(……分からないことばかりだな)
 と剣心はため息をついたが、そんな彼にオスマンは笑いかけた。
「お主がどういった理屈で、ここに来たかは、私もできる限り調べようとも思う。でも分からなくても、恨まんでくれよ。なあに住めば都じゃ。嫁さんも探してやるぞ」
「いえ、それは遠慮願います」
 丁重に断りながら、剣心も学長室から去っていった。結局、有意義な情報は何一つ得られぬまま。


 その日の夜。
 魔法学院は、着飾った生徒や教師たちが、賑やかに歓談している最中だった。その外れのバルコニーで、剣心は月のある空を見上げていた。
「どうしたよ相棒? こんなに大盛り上がりだってのにしんみりしやがって」
 隣に立て掛けたデルフが、不服そうに言った。キュルケは、何人もの男と一緒に笑っており、タバサは美味しそうに料理を平らげている。
 そんな彼女達と交われないのは、やはり遠くに置いてきた『仲間』を思ってのことだった。
 気づけば、ここに来てかなりの日数が経った。向こうは、今頃どうなっているだろう……?
 流浪人だった頃の自分だったら、こんなこと考えなかったかもしれない。
 でも今は、帰るべき場所と、共に闘った仲間がいる。
 苦しいこともあったけど、最後まで一緒にいてくれた。楽しいことも辛いことも含めて、支え合ってくれた頼りになる友人達。


(俺は負けねェ! 絶対に負けられねェ!!)
 直情的で喧嘩っ早いが、誰よりも頼りになる親友。

(ちくしょう…強くなりてえ…)
 強さにひたすら純粋で、成長が楽しみな愛弟子。

(最期の最期であなた達に出会えて、本当に良かった)
 悲しい過去を持ちながらも、気丈に振舞う優しき女医。

(せめて最強というあでやかな華を御庭番衆に添えて、誇りに換えてやりたかった)
 寡黙で無愛想だが、心に熱い信念を持つ御庭番衆の御頭。

(一番想っている人を忘れることの、一体どこが幸せなのよ!!)
 その彼を心から慕う、無邪気でも強い芯のある少女。

(『悪・即・斬』 それが俺達新撰組と人斬りが、ただ一つ共有した真の正義だったはず)
 最後まで相容れなかった、共に灼熱の時代を生き抜いた強敵。

 今は殆どが、それぞれの道を歩んで離れ離れになってしまったが、それでも一緒にいて欲しいと願ってくれる人だっていた。



             (私は…剣心と一緒にずっと居たい)



 そう、置いてきてしまった。彼女を――何の知らせもなく。
 それが、今の剣心の心に影を落とす。
「せめて、何とかこの事を伝えられれば……」
 自分の身の上だけでも、向こうに伝われば――剣心はそう思った。
 でも、今はその手段すら分からないまま。オスマンも探してくれるとは言ってくれたが、正直あてにはできない。
 だけど、オスマンの話を聞く限り、他にもこの世界へ来る人は、いないとも限らない。そういった人に上手く接触できれば、あるいは……その可能性はゼロではない。
 また明日から、探してみよう――そう剣心が意を決すると、後ろで声が聞こえた。
「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢のおな~~~り~~~!」
 振り向くと、そこには綺麗なドレスに身を包み、高貴な上品さが漂う、美しさを見せるルイズがいた。
 そんな彼女に、いままで馬鹿にしていた生徒達でさえ、すっかり見惚れてしまったのか、盛んに群がり我こそは、とダンスを申し込んでいた。
 しかし、というかやはり、ルイズはそんな男共には目もくれず、その足でバルコニーまで行くと剣心を見た。
「楽しんでる感じじゃないけど、どうかしたの?」
「生憎、こういった所は初めてでござってな、どう楽しめばいいか、よく分からんのでござるよ」
 困ったような顔を見せる剣心に対し、ルイズはふーんと言うと、何も言わずに剣心に向けて手を差し出した。
「だったら、どうやって楽しめばいいか、私が教えてあげるわ」
 そして、今度はドレスの裾をつまんで、恭しく礼をした。
「わたくしと一曲踊って下さいませんこと? ジェントルマン」
 剣心はどうするか考えた。ダンスなんて生まれてこの方やったことなんてない。
 断ろうかとも考えたが、他の男と断ってまで、せっかく誘ってくれているのに、それはあんまりにも可哀想だろう。
 悩んだ末、剣心はルイズの手を取った。
「拙いダンスでも良ければ、お相手するでござるよ」
 流れるような音楽の中、剣心とルイズは踊っている。
 ダンス初心者の剣心は、最初はルイズに合わせてステップを踏んだ。
 最初はどこかぎこちない動きだったが、そこは飛天御剣流、的確な読みと動きでルイズの行動を予測し、上手くルイズにリードしている。

「ねえケンシン、私信じるわ。あなたが別の世界へ来たってこと」
 急に、ルイズはそう言った。
 無論、全てを鵜呑みに出来たわけじゃない。異世界なんて自分にはまだピンとこない。
 でも、剣心は嘘をつく人間じゃない。それだけは、この暮らしの中で分かっていた。
 そして、彼の強さ、優しさにも直に触れて、少しずつ剣心のことを分かり始めてきた。
 だからこそ、今聞きたい。
「やっぱり、帰りたい?」
「…そうでござるな」
 一瞬、ルイズの掴む手が、ギュッと強くなった。まるで手放したくないように。そんなルイズの心情を察してか、剣心は小さな声で続けた。
「拙者には、確かに帰るべき場所がある。だけどそれだけが理由じゃない。向こうには、何も告げずに置いてきてしまった人がいる。だから連絡だけでも取りたいのでござるよ」
 それを聞いて、ルイズは俯いた顔のまま、呟くように言った。
「………ごめん、急に喚んじゃったりして」
「何、気にしてないでござるよ」
 剣心は優しい笑みを浮かべた。その笑顔に、ルイズも思わず微笑んでしまう。
「私も、元の世界に帰る手伝いをするわ。出来るだけ、力になる。だから……」
「それまでなら、拙者もルイズ殿の世話を務めるでござるよ」
 言葉を引き取るように、剣心はそう言った。それを聞いて、ルイズの心の中が暖かくなるのを感じた。
 彼の笑顔には、何ていうか、そういった安らぎを送ってくれる。だから、ルイズの顔にも自然と笑顔が浮かんだ。
「―――ありがとう」
 その言葉と共に、音楽が鳴り止み、ダンスは終了を告げた。


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