あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Neverwinter Nights - Deekin in Halkeginia-06b



その後も、契約しなかった場合に考えられる細々とした問題点を並べ出し、それに対する解決策を提案し合い、
折に触れてディーキンの話を聞き……、と言った具合で、議論が続けられた。
ようやく全員がひとまずこれでよしと合意したときには、既に夕食の時間も過ぎてしまっていた。
そこで皆で食堂へ向かって余ったものを適当に食べさせてもらった後、
コルベールが図書館の鍵を開けて古いルーンの本を探し出し(ディーキンは図書館の大きさと、そこにある物凄い本の数とに感嘆していた)、
最後に議論の結果を簡単に再確認して、解散となった。

話こそ長引いたものの、結論としては、
『正規の使い魔と同様に働き問題を起こさない限りは、いくつかの点で口裏を合わせたりルーンを偽装したりさえすれば何とかなるだろう』
ということで無事にまとまり、皆ほっとしていた。

なおディーキンは図書館へ寄った際、自分はこのあたりの事に疎いので勉強したいからと説明して入館許可をオスマンから取り付けておいた。
本も早速十数冊ほど借りて背負い袋に収め、至極ご満悦である。
今は、ルイズの私室に2人揃って戻ってきたところだ。

「いろいろあったけど、どうやら片付いたわね。……にしても、今日は疲れたわ」
「ゴメンなの。お詫びにディーキンは、ルイズの肩を揉むよ。
 ……ウーン、でも背が届かないみたいだから、ルイズがちょっとしゃがんでくれたらね」
「ありがと、でも別にいいわ。あんたが悪いわけじゃないし、謝ることもないわよ。
 ……ところで。契約してないとはいえあんたは使い魔になったんだから、いい加減に私の事はちゃんとご主人様って呼びなさいよ」
「ウーン……、それなんだけど、ディーキンには昔“ご主人様”って呼んでた相手がいたの。だからどうも、ルイズの事はそう呼びにくいんだよ。
 どうしても昔のご主人様を思い出すからね」
「ああ……、そういえば、ドラゴンに仕えてたとか言ってたわね。
 あんたがどこに住んでたのかは知らないけど、韻竜がまだ生きてて亜人の子がそれに仕えていたなんていまいち信じられないわね。
 いや、別にあんたのことを疑うわけじゃないんだけど、想像できないっていうか……」

ルイズは先ほどの議論の際にディーキンから、『冒険に出る前のご主人様は白いドラゴンで、自分は彼からバードの技を教わった』という話を聞いていた。
だとすればそれは、ハルケギニアの基準から言えば韻竜(言語を理解し先住魔法を操る、知能の高いドラゴン)ということになるが……。
既に絶滅したという韻竜がまだ生きていて亜人の子に楽士の手ほどきをするなどとは、あまりにも荒唐無稽でとてもではないが信じる気にはなれなかった。

かといって彼が悪い亜人で無い事は確信しているし、総合的に見ればいい使い魔を引いたとも思う。故意に嘘をついているとも思わない。
では先ほどからの“ありえない”話は何なのかと考えてみて……、
英雄と冒険したなどという話といいもしやこの亜人の子は自覚なしに嘘をついている、つまり妄想の気でもあるのではないか、とルイズは思い始めていた。

まあ、妄想というだけでは実際に素晴らしいマジックアイテムを持っている事などは説明がつかないし、一部は真実もあるのかもしれない。
先ほどの呪文やその見た目からは大して強いとは思えなかったものの、ドラゴンの血を引いているとか英雄と冒険したというのがもし事実だとしたなら。
自分の予想に反して、実は強いのだろうか。
そう期待して、尋ねても見た。

だが、ボスの方が自分よりずっと強く、彼はいろいろな事が出来るが主に武器を持って戦う戦士だという返答を聞くと、やはり大したことはないと諦めた。
主に武器で戦うという事は平民か、メイジだとしても剣より頼りにならない魔法しか使えない程度の腕前ということ。
魔法の力に比べれば、武器に頼って戦うものの強さなどたかが知れている。
例えそのボスとやらがよほど強い戦士で、俗にいうメイジ殺しの類だったとしても、せいぜい経験の浅い並みのメイジになら勝てる程度が関の山のはずだ。
英雄だというのも、世間知らずの亜人の子どもが抱いた憧れからくる過大評価に違いあるまい。

だがディーキンとしても、今はまだ嘘だとしか思ってもらえないであろう大きな話をするのは控えようと事前に考えていた。
それで心酔する偉大なボスの活躍や自分のわくわくするような経験の数々を語り明かしたいのをぐっとこらえ、内容を選んで話したつもりだったのだ。
しかるにルイズにとっては、それでもなお信じられるレベルではなかったようだ。
ここでもまた、お互いの認識の違いによる誤解が発生していたのである。

ディーキンとしては、フェイルーンのコボルドがドラゴンの血を引いていることは既に話したのだから、昔の主人のことくらいは話してもいいと考えていた。
フェイルーンでは竜と言えば通常は真竜(トゥルー・ドラゴン)の事を指す。
彼らは主に善なる金属竜(メタリック・ドラゴン)と邪悪なる色彩竜(クロマティック・ドラゴン)とに分かれるが、稀にはそれら以外の真竜もいる。
ワイヴァーンやドレイク、ドラゴン・タートルなどの真竜でないドラゴンは通常、亜竜と呼ばれている。
そしてホワイト・ドラゴンは色彩竜の中で最も小柄で知能の低い、真竜の中では最弱の種のひとつとして知られている。
ゆえに、今ならば、主人がホワイト・ドラゴンだったという程度のことは話が大きすぎるとは思われまい……、と踏んだのだ。

もっともディーキン自身は、今でも彼……タイモファラールは自分より強いと思っているし、ましてや弱いとか愚かだとは全く考えていないのだが。
彼は比較的若く怒りっぽい竜だが、単に力があるとか頭が切れるということだけでは測れない強さ・賢さを持っていることを、傍で見て知っているからだ。
ディーキンは今でも彼を恐れているが、同時に自分にただのコボルドとは違う道へ進むきっかけを与えてくれた主として感謝してもいる。

一方、ルイズの認識はそれとはまったく違う。
ハルケギニアにもドラゴンはいるが、フェイルーンのそれとは種類や性質が全く異なっている。
フェイルーンでいうところの真竜として扱われている火竜や風竜にせよ、ワイバーンなどの亜竜にせよ。
それらはハルケギニアでは、使い魔でもない限りは普通の獣並みの知能しか持っておらず、当然言葉も解さない。
言葉を話すのは既に絶滅したと言われている韻竜と呼ばれる種だけで、それは最強の妖魔とされるエルフと同等かそれ以上と目される存在である。
そんなとんでもない、しかも既に滅びたはずの伝説上の存在に師事したなどと言われても誇大妄想かホラ話の類としか思われないのは無理もない。

ハルケギニアの基準で見れば、フェイルーンの真竜は例外なくみな韻竜ということになるだろう。
ホワイト・ドラゴンでさえ、誕生直後のワームリング段階で既にドラゴン語を話せるだけの知能がある。
それがアダルト段階に達すれば少なくとも並みの人間程度には賢くなり、更に年を経れば、人間ならば天才的と呼びうるほどの知性を得るのだ。
最も知能が高いゴールド・ドラゴンともなれば、誕生直後でさえ既に並みの人間の賢者を凌駕するほどに高い知性を有する。
それどころかワイヴァーンなどの亜竜でさえ殆どの種が通常の動物とは明らかに一線を画する知性を備えており、言葉を解することも多い。
ついでに言えば、フェイルーンではエルフも人間の街を普通に歩いているし、別に人間と敵対などもしていない。

先程の話し合いで相互の認識の食い違いはいくらかは改善されたものの、まだまだ互いに確認しなければならないズレは多いようだ。
もしディーキンが自制せずに、ボスはドロウ(ダークエルフ)の軍勢を破り、地獄へ送られて悪魔の群れと一戦交え、
さらには巨大なドラゴンや、ゴーレムの群れや、ヴァンパイアの教団などとも戦った、まさしく神話級の英雄である……、などと正直に話していたら。
間違いなく、完全な妄想狂だと断定されてしまっていただろう。

さておき、そんなお互いの認識のズレやルイズの内心などは露知らず。
ディーキンは首を傾げて、あれこれ思案していた。

「いや、ディーキンはルイズにウソなんかつかないの。
 ……ウーン、それで、ルイズの事はなんて呼べばいいかな?
 ディーキンにはボスももういるしね……、髪が桃色だから“ピンクレディー”とか?
 ああそうだ、“ステキ女性”っていうのはどうかな。いいと思わない?」
「……あ、あんたねえ……」

ルイズはこめかみを抑えて首を振ると、内心で溜息を吐いた。
見た目に反して賢いかと思っていたが、やっぱりこの亜人は何かずれている。

(妄想じみたことも言うし……、それともフェイルーンとかいう場所のコボルドは、こういうのが普通なのかしら?)

「……やっぱりルイズでいいわ。忘れてちょうだい。
 もういいから、話を変えましょう。……ねえ、そういえばほら、あの帽子、貸してくれる?」
「アア、そうだったね……。
 でも別にディーキンはその帽子をそんなに使わないから、必要なときだけ貸してくれるならルイズにあげてもいいよ?」

ルイズは帽子を受け取ると、もじもじしてディーキンを見つめた。
彼女が変装帽子を貸してほしがったのは、単に平面を増量してみたいとか、憧れの下の方の姉の姿に……、とかいったごくありきたりな理由である。
とはいえ、いくら相手が使い魔で亜人の子どもとはいっても、そんな姿を見られるのは気恥ずかしかった。

今すぐしたいのは山々だが、見られたくはないし……彼もこういってくれているのだからいつでもできるだろう。
それに今はもう眠いし、明日一人になった時にしようとルイズは決めて、一旦帽子を返す。

「こんな凄いもの……、いえ、あんたの故郷では凄くないのかもしれないけど、とにかくちゃんと契約したわけでもないのに受け取れないわ。
 ちょっと興味があって使ってみたいだけだし、こっちから頼んだ時に少し貸してくれればそれでいいわよ」
「そうなの? ウーン、ルイズがそういうなら。
 じゃあ、もう遅いから明日の朝また来るね。おやすみなの、ルイズ」

ディーキンはそういうと、ルイズにちょこんとお辞儀をしてから部屋を出ていこうとした。
ルイズはそれを見て、目を丸くする。

「ちょ、ちょっと。どこいくのよ?」
「ン……? ええと、ディーキンはここに来たばかりだから、部屋が無いのは知ってるよね。
 もう遅いしこのあたりは宿もなさそうだから、どこか外で寝るところを探すの」

それを聞いたルイズは、呆れたような顔をした。

「……何言ってんのよ、あんたは私の使い魔になったんだからここで寝ればいいじゃないの。
 まあそりゃ、ベッドは空きが無いし、翼とかが生えてるあんたが使うのかも知らないけど……、部屋の床でも野宿よりはいいでしょ?
 毛布はもし無ければ貸してあげるけど、あんたは冒険者だとか言ってたし、背負い袋の中に持ってそうね」

ディーキンはその言葉を聞くと、驚いたようにまじまじとルイズの顔を見つめた。
次いで、自分が今いる部屋をきょろきょろと見回す。
非常に豪華な内装が施された貴族的な私室だ。
ウォーターディープでもこんな高級そうな宿には泊まったことがない。
今では英雄の身になったとはいえ、ウォーターディープは未だメフィストフェレスによる破壊から立ち直りきっておらず、難民があふれかえっている。
そのためボスは宿を難民に譲って街道で野宿することも多く、ディーキンもそれに従っているのだ。

フェイルーンでは大体2sp(銀貨2枚)も払えば、粗末な宿になら泊まれよう。
その場合は暖炉の傍の床で他の客と並んで寝ることになる……、まあ宿の主人に気に入られれば、ノミだらけの毛布くらいは貸して貰えるだろうが。
5spほど払えば、もっと身分のいい客と同室で一段高い暖房された床に、毛布と枕を使って眠れる。
寝台のある個室が欲しいのならば、一泊当たりまず2gp(金貨2枚、銀貨20枚相当)は払わなければならない。
今いるような豪奢な部屋で、しかも床とはいえ上等の毛布までつけてもらうのには、一体いくらかかるだろう。

自分は使い魔にされるとは知らなかったとはいえそれと知って召喚に応じたのであって、別に異世界から拉致されたとかいうわけではない。
つまりルイズに養ってもらって当然という立場ではないし、むしろ先程無理な要求を受け入れてもらった分負い目がある。
よって当然、使い魔として貢献し、対価として最低限日常の糧くらいは要求していい立場になれるまでは野宿をし、食事も自分で用意するつもりでいた。
使い魔になるということで互いに合意したとはいえ、まだ彼女のために何の仕事をしたわけでもないというのに。
彼女はこんな良いところで、薄汚れたコボルドの自分を寝泊まりさせてくれるというのか?
自分は、ウォーターディープの英雄になる以前には金のあるなしに関わらず追い回されて、まともな宿など望みようもない生活が続いていたというのに。
加えて先程も、食堂で自分にも無償で高級そうな食事をさせてくれたし……。
貴族にとっては余り物とのことだったが、あの食事だって宿で食べれれば一日あたり軽く5spかそこらは取られるだろう。

ディーキンの中で、ルイズに対する評価がグングン上昇する。
今のところ彼にとってルイズは性格のキツイ高慢な少女などではなく、文句なしで優しい良い女の子であった。
いや彼女に限らず、自分のために夜遅くまで話し合い続けてくれた2人の教師といい……、
本当にここはなんていいところだろう、とディーキンは軽く感動していた。

「……本当に、その、こんないいところで寝てもいいの?
 ありがとうなの、ルイズ。あんたはすごく、すごーく優しい人だよ!
 ディーキンはルイズのために仕事するし、歌を作るし、まだどんな筋書きになるかわからないけど、きっと本にも書くからね!」
「ふ、ふふん? そんなに感謝しなくても、主人として使い魔に当然与えるべきものを与えただけよ?
 まあその、あんたの気持ちはありがたく貰っておくけど、働くのは明日からでいいわ。
 ……ふぁ……、もう遅いし眠いわ、あんたももう寝なさいよ」

ルイズの方は、使い魔からの過剰なほどの感謝にやや当惑しつつも得意げに胸を張ると、ひとつ欠伸をする。
それからディーキンに洗濯ができるかを問い、明日の朝自分の下着を洗うように言いつけるとネグリジェに着替えて明りを消し、ベッドにもぐりこみ……、
じきに、すやすやと寝息が聞こえ始めた。

ディーキンはそれを見届けると、物音でルイズを起こさないよう気を付けながら、暗闇でこれからの思案と作業を始めた。
ルイズの気遣いは嬉しかったが、せっかくこんなに面白そうな場所に呼び出されたのに、まだろくに何も分かっていないうちから寝るつもりはなかった。
コボルドには暗視能力があるので、たとえ明りが消えていても問題なく作業ができるのだ。


そのころ、オスマンは自身の寝室で酒を傾けながら、物思いにふけっていた。
今酒を入れているのは、かつて出会った奇妙な魔術師からもらった、不思議な器だ。
指で強く押すと簡単にへこむ薄い金属の円柱形の容器で、読めない文字らしきものが描かれている。その魔術師が言うには、異界の文字であるらしい。
もらった当初は酒ではなく、奇妙に舌を刺激する、それまでに味わったことのない美味な甘い飲料が入っていたのだ。

「……あの亜人は、お主と同じ世界から来た者なのか?
 さりとて、お主の使いというわけでもないようだったが……。
 彼に聞けば、お主の事が少しは知れるかの……、なあ、エルミンスターよ」


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