あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

るろうに使い魔-01



 時は幕末―――――。
 黒船来航から端を発した一つの時代。明治維新が訪れるまでの十五年間。
 尊王、佐幕、攘夷、開国―――様々な理想野望が渦巻く最中。
 徳川幕府と維新志士――剣を持つものは二つに別れて戦いを繰り広げた。

 その幕末の動乱期、その渦中であり激戦区となった土地、京都にて、『人斬り抜刀斎』と呼ばれる志士がいた。

 修羅さながらに人を斬り、その血刀を以って新時代『明治』を切り拓いたその男は、動乱の終結と共に人々の前から姿を消し去り、時の流れと共に『最強』という名の伝説と化していった。

 そして時代が進み、今や刀や侍は過去のものへとなっていった明治の東京にて、その男は人知れず姿を現した。新しい『信念』と『刀』を携えて。
 数々の出会いと死闘に身を投じながらも、男はその信念を持って剣を振るい、明治の時代にその名を残さなかったまでも、関わった人々からは確かな『英雄譚』となって語り継がれることとなった。

 その、確かな居場所を見つけた男は、ある日再び姿を消すこととなる。誰にも知れず、ひっそりと――――。

 そして新たな浪漫譚は別の世界。この世界とは根本的に別な『どこか』。刀と侍ではない、魔法と幻想が栄える世界の『どこか』。そんな世界から話は始まる。



      るろうに使い魔
   ――ハルケギニア剣客浪漫譚――



「次、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
「はい!」
 そう呼ばれて、ルイズは立ち上がり、皆の前から一歩前へ出た。
今日は自身にとって大切な儀式、自分の一生の召使いである使い魔を呼ぶ神聖な日だ。
「おい、ルイズの奴何を召喚するかな?」
「どうせボンボン爆発して終わりさ、賭けたっていいぜ」
 などとざわつく周囲の言葉をなるべく無視して、今はこの瞬間に全身全霊を尽くす。
 生まれてこの方16年、あらゆる魔法を爆発という形で失敗させ続け、未だに系統魔法どころか基礎的な魔法まで扱うことができない。
 家族からは才がないと言われ、生徒たちからは『ゼロのルイズ』という不名誉なあだ名が通ってしまい、その屈辱に耐える日々。
 そんな生活から、一転して変えることのできる重大な日。それがこの召喚の儀である。

(見てなさい、立派な使い魔を呼んでアッと言わせてやるんだから!)
 周りの生徒たちは、あらかた使い魔を召喚し終えた後だった。
皆それぞれサラマンダーやモグラ、タコやカエル、中にはドラゴンまで召喚しており、今は一体何を呼び出すのか……と好奇の目でルイズの方を注目していた。
 段々とざわめきが薄くなり、静かになっていく中、ルイズは杖を掲げて朗々と唱えた。

「宇宙の果てにある私の僕よ、神聖で美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えよ!」
 刹那、ボンッと大きな音と共に煙やら埃やらが宙を舞った。
失敗したの…?と不安が頭の中に過ったが、煙の向こう側になにやら影みたいなものを見つけると、今度は期待で胸が弾んだ。
(せめて、みんなから馬鹿にされないくらいの使い魔が出てきて!)
 そう心の中で願うルイズをよそに、次第に視覚を遮る邪魔な煙が晴れていく。そして……。
「これが…私の使い魔…?」
 ルイズの目の前に現れた『もの』。それはこの世界ハルケギニアでは見かけない不思議で異形な服を着ていた。
そして緋色の長い髪を一括りに纏めており、腰に刺さった知らない得物と頬についた十字傷が特徴の―――。

 そう、それは紛れもない『人間』だった。



     第一幕 『世界を越えた流浪人』



「……おろ?」
 その日、この異世界にやってきた人間、緋村剣心はこの不思議な光景にすっかり目を丸くしていた。
 先程まであった見慣れた神谷道場の姿はそこにはなく、あるのはただっ広い草原とそびえ立つ、城とも屋敷とも取れる異形な建物。
 周囲には明らかに日本人じゃない――夷人とも言うべき髪の色をした少年少女が、これまたマントを羽織って好奇の目でこちらを見ていた。
 その中で目の前に立つ人物、桃色の髪を長く伸ばした少女が、自分と同じくらい呆れた表情で自分を見つめていた。
「これが……私の使い魔…?」

 その声を皮切りに、周囲からどっと笑いの歓声が響いた。明らかに嘲笑を含んだ笑いだ。
「おい、ルイズが人間を召喚したぜ!」
「しかも平民じゃん! ゼロのルイズにはお似合いだな!」
「おまけになんだあの服、貧乏人じゃねえの?」
 周りが口々にそう囃し立てると同時に、桃髪の女の子――ルイズと呼ばれた少女は顔を真っ赤にして叫んだ。
「ミスタ・コルベール、今のは失敗です! もう一度チャンスを…」
「残念だが、それは出来ない」
 ルイズの願いも虚しく、コルベールと呼ばれた、真ん中が禿げた中年の男性は、静かに首を振った。
「一度サモン・サーヴァントで召喚した以上、例外は認められない」
「そ、そんな…」
 がっくりとうなだれたルイズは、しばらく悩み込んだまま動かないでいたが、やがて顔を上げると、意を決したように立ち上がり剣心の方へと寄って行った。

「あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
 そう言うと、未だに状況をつかめていない剣心をよそに、ルイズは杖を振りかざし、何やら変な呪文を詠唱し始める。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 そしてそのまま、杖を剣心の額に当てると……。

「……おろ!?」
なんと口元に向かってキスをした。
さすがの剣心も、これで我に帰ったのか、目を丸くし慌ててルイズのもとから後ずさる。
「い、一体何を……っ…?」
 と同時に、焼けるような痛みが剣心の左手に襲いかかった。何かと思い見てみると手の甲当たりに文字のようなものが刻まれ始めていたのだ。
 象形文字の類なのだろうか、一通り焼きあがると痛みも徐々に消えていった。
「ふむ、これは珍しいルーンだな」
 ふと気づくと、いつの間にかコルベールが剣心の左手に刻まれた文字を見て、なにやら書き込んでいた。どうやら記録しているらしい。
 やがて書き終えると、未だにどよめきが上がっている周囲に向かっていった。


「さてと、じゃあ皆教室に戻るぞ」
 そう言うなや否や周囲の子供たちは杖を取り出し、何か短く唱えるとふわりと宙に浮き、そのまま上へと飛んでいった。
 先程のキスで、幾拍か頭がはっきりとしていた剣心だったが、この出来事に再び理性がフィードバックした。
「ルイズ、お前は歩いてこいよ!」
「あいつ『フライ』はおろか、『レビテーション』さえまともにできないんだぜ!」
 そんなことを言いながら去っていく彼らを見て、剣心はただただ呆然とするしかなく、やがて二人きりになったところで、ようやくルイズを見て口を開いた。
「あのー、ここ……どこでござる?」
「はぁ? 『ここ』をどこか知らないなんて、あんたどこの田舎から来たのよ!」
 至極真っ当な質問のはずなのに、なぜかルイズは呆れながらため息をついた。

 ルイズの説明を簡潔にするとこうだ。
 まず、自分は『コモン・サーヴァント』なる儀式として、使い魔としてここ『トリステイン魔法学院』に呼び出されたこと。ルイズと契約(さっきのキスがそうだったらしい)したため、彼女を主人として――要は従者となって仕えること。この世界には魔法なるものがあって、それを行使できるメイジが一番偉いということ。

「ファーストキスだったのに、もう!」
 顔を真っ赤にして叫ぶルイズに対し、剣心はかつてない程脳みそをフル回転させ、これまでの状況を整理する。
 考えてみれば、あまりに突飛すぎる。いきなり外国と思われる所へ移動させられ、そこで使い魔をやれ? おまけに貴族と呼ばれる種族は魔法なんて力をもって、空を飛んだりすることだってできるだって?

 夢物語は夢の中にして欲しいものだが、あの時感じた左手の火傷や、今感じる風を打つ感触は、紛れも無く本物だった。状況が状況だけに、まだモヤモヤした部分があるが、とりあえず今、ハッキリと分かることはただひとつ―――。

 とりあえず自分は飛ばされてきたのだ。このどことも知れない異世界に。

「…それで、どうやったら帰れるでござるか?」
 一縷の希望をのせたこの質問もルイズの言葉にあっさりと砕けてしまう。
「何言ってんのよ、そんなもんあるわけないじゃん」
 元々サモン・サーヴァントで呼び出したものを、送り返す手段はない。この学院で進級するための大事な伝統であり儀式のため、召喚したものはたとえどんなものだろうと、それこそ人間だったりしても異例は認められない。
 仮にあったとしても、最早契約まで済ませてしまった使い魔をみすみす返したりなどしないだろう。

 駄目元での質問だったとはいえ、あっさり返された答えを受け止めるとなると、やはり剣心としてはくるものがあった。
 ルイズはルイズで、なぜ理想の使い魔を呼べなかったのだろうと肩を落としていた。
(ドラゴンとか、サラマンダーなんて高望みはしない、せめて犬とかフクロウでもよかったのに…よりによって人間……しかも平民…)

 また大きなため息が出そうになったとき、ふと思い出したように剣心の方を見た。
「そういえば、まだあんたの名前聞いてなかったわね」
「あぁ……そう言えばまだ名乗ってなかったでござるな」
 剣心も、一度立ち上がって、改めてルイズを見た。
 身長は自分とあまり変わらないかちょっと下当たり、綺麗な桃髪を流し、太ももまで見える程の短い着物に膝まである長い足袋みたいなものをつけている。
 釣り上がった目や攻撃的な気性からあまりそうは見えないが、黙っていれば中々に美しい容姿をしていた。

「拙者は剣心、緋村剣心でござるよ」
「ケンシン? 変な名前ね。……まあいいわ、私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。仕方ないからあんたのご主人様になってあげるわ。感謝しなさいよね」
 そう言ってルイズは、平坦な胸を大きくそらしてふんぞり返った。未だコトを把握しきれない剣心としては色々と待って欲しい事が多かったが、どうやら使い魔になったという状況を認めなければ話が進まなさそうである。
 とうとう観念して苦笑いを浮かべながらも、剣心は優しい微笑みをルイズに見せた。

「まあ、こちらこそよろしくでござるよ、ルイズ殿」
 かくして、その昔『人斬り抜刀斎』としてその名を残し、多くの人々から伝説とまで謳われた男、緋村剣心は、通称『ゼロのルイズ』ことルイズ・フランソワーズの使い魔と相成ったのであった。


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