あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロニスター-09


 トリスタニア郊外のとある空き地。
 マスクで口元を隠した1人の少年が、得物を手にした少年達に進路を塞がれていた。
「どいてくれないか。主人に借りた本を返しに行かないといけないんだ」
 マスクの少年の言葉に立ちはだかる少年達は、
「聞いたか? 本返しに行きてーんだとよ」
「じゃあボコるのはまた今度にしといてやるか」
「……なんて言うとでも思ったかーっ!!」
「やっちまえーっ!!」
「いくらてめーが気合の入った奴だろーが、この人数にはかなうめー!!」
 とときの声を上げてマスクの少年に襲いかかる。
「むうん!!」
「ぐえっ!」
 マスクの少年の左ストレートが眼帯をした少年の顔面に炸裂した。
「ギャア!」
 今度はモヒカン頭の少年を小脇に抱える形で締め付けたまま、左腕で坊主頭をつかんだ少年の腹部に膝蹴りをお見舞いする。
「く……、くそっ!! 本当に強えぞ、こいつ!!」
 圧倒的実力差ではあるものの圧倒的物量差に嫌気が差して、迂回すべくマスクの少年は方向転換する。
「ちっ、いちいち相手してられないぜ!!」
「逃がすんじゃねーっ、捕まえろーっ!!」
「うらあっ!!」
 走り去ろうとするマスクの少年に、逃がしてなるかとばかり何人もの少年達がしがみつく。
 しかしそれでもマスクの少年は足を止める気配を見せない。
「うおおおお、こ……こいつ!! 歩くのをやめねーぞ!!」
「もっと乗っかれーっ!!」
 しがみついている少年の数が3人になり4人になり、とうとう後方からはマスクの少年の姿が見えなくなったが、まだマスクの少年の歩みは止まらない。
「意地でも行かせねー!! ちゃんと勝負しろ、サイトー!!」
「うるせー、降りろこら!! 前見れないだろ。それと人の名を気安く呼ぶな」
 マスクの少年・才人がそう言いつつ空き地の外の道に足を踏み出した時、
「!!」
 ――ゴオオオ……
 大型馬車が少年達に向かって突進してきた。
「うおおおおお!!」
「あ?」
 少年達が驚愕の叫び声を上げ、才人も訝しげに馬車の方向に視線を向けるが時既に遅し。
 ――ブチャブチャブチャ……
「ぎゃっ!」
「がふぁ!」
「おげえ!」
 馬車は生々しい音を立てて才人も少年達もまとめてひき潰した。

 トリスタニアの住宅街にあるアパートの一室。
「サイト君、遅か……」
 そう言いかけて、部屋から顔を出した中年男性は言葉を失った。
 玄関先に立っている才人の体は頭の右側が割れて脳髄が露出し、ちぎれた右腕の断面からは肋骨が、腰に空いた大穴からは内蔵が飛び出ているという悲惨な状態だったからだ。
「………!! ちょっと待ってください、サイト君……!!」
「すいません、コルベールさん……。本……、汚れちゃいました……」
 そう言って血みどろになった本を差し出した直後、才人はその場に倒れ込んだ。
「サイト君っ!!」
 決して助かる怪我ではなかった。才人の人生はここで終わる……はずだった。
 だが才人を召喚した主人・「コルベール」は……、使い魔の悲惨な運命を黙って受け入れるような男ではなかった。
 そしてさらにコルベールは……、ある研究において天才的な頭脳を持ち合わせていた。その研究の発想はあまりに子供じみていたため、コルベールにとっての真の理解者は才人1人だった。
「サイト君……。私は子供の頃によく人造人間ごっこをやっていたのですよ……。私はメイジ役で幼馴染みは……。くっ……、現実になってしまいました……!!」

 ハルケギニア最強殺人鬼決定戦会場・才人の控え室。
 部屋に通された才人に、スタッフの少女が本選の概要を説明していた。
「ハルケギニア最強殺人鬼決定戦、間も無く本選でございます……。こちらはミスタ・サイトの控え室となります。対戦の順番はその都度くじで決まるので、名前がコールされて10分以内には試合場へ……」
「聞きたい事がある。本選には何名が出場する?」
 解説を遮っての才人の質問に少女が答える。
「ミスタ・サイトを含め、計13名でございます。凶悪な殺人鬼揃い……」
「『首にチャンネルが付いている奴』はいなかったか?」
「は?」
 才人の質問の意味が理解できず少女は首を傾げる。
「円盤型で出っ張りのあるチャンネルが首に付いている奴で……、体格はお前と同じくらい小柄だ。見なかったか?」
「さあ……? なぜその者にこだわるので?」
「『コルベール』さんっていう俺の主人が……、『そいつに殺された』。敵を討たないと申し訳が立たねえ。コルベールさんは俺の命の恩人でもある人だからな」

『「虚無壺の会」主催による「ハルケギニア最強殺人鬼決定戦」、間も無く始まりまーす!! お集まりいただきましたハルケギニア各国のセレブの皆様!! あんたも好きね~っ!! なんちゃって!! 「虚無壺の会」が古代闘技場(コロッセオ)に倣って建設しました本会場は、標高1200メイルの険しい山岳地帯に位置しております!! つまり部外者の介入は心配無用でございます!! 飛び散る鮮血に心置きなく歓喜の声をお上げくださいませーっ!!』
 古びて見えるように細工が施された山中の円形闘技場に、マジックアイテムで増幅された女性スタッフの声が響いた。
『なお、皆様より大会についてのご質問が幾つかございました!! 大会を心から楽しんでいただくためにも!! この場を借りてあらかじめお答えしたいと思いーす!! では質問その1!!』
 客席に座っているルイズ・ナックルスター・シエスタは、体をすっぽり覆う白い服に目の部分だけが空いた白い三角頭巾の集団に囲まれていた。
「早く始めろーっ!」
「高い金払ってんだ!! 楽しませろよーっ!!」
(おかしい……!! この人達完全におかしいです……!!)
 どこ吹く風という態度のルイズ・ナックルスターとは対照的に、白装束達の剣呑な野次にシエスタは完全に怯えていた。
『「ほぼ全員の観客が白装束なのはなぜ?」 これは「作者が描写するのが簡単だから」ではございません!! 本大会は闇ルートの映像商品として撮影・記録されるため、(カメラ)に映る皆様方の社会的立場を安全なものとするためでございます!!』
 見ると、確かに会場内各所に映像記録用と思しき大型のマジックアイテムが設置されている。
『その2!! 「普段隠れてるはずの殺人鬼達をどうやって見つけたの?」 お答え致します!! まず初めにハルケギニア中の衛兵機関内部の人間から情報を「買う」のでございます!! 「盗む」場合ももちろんございます!! それらに加えて衛兵機関が「胡散臭い」と敬遠する技術!! 例えば占星術等のオカルト的手段!! 施術者の人選さえ誤らなければ、これらの方法も有効なのでございますよ!!』
「……どうしたの、シエスタ。気分悪いのかしら?」
 顔色を悪くして説明を聞いているシエスタに、ルイズが声をかけた。
「言っとくけど、これ以上は戦いたくなければ降りてもいいんだよ」
「え……?」
 続いてナックルスターからかけられた予想外の言葉に、シエスタは目を丸くした。
「あたし達があんたを連れてきた理由はね……、……まあ『パシリがいてくれるといいな』ってのもあったけど……、あんたに自身を付けさせてやりたかったのさ」
「予選だけでも相当な修羅場だったでしょ? あれを思えばシエスタはこの先どこで誰に挑まれてもやっていけるはずだわ」
「ミス・ヴァリエール……」
 そこまで言うと、ルイズはくわえた葉巻に火を点け真剣さを増した口調で続ける。
「でもね、シエスタ。逆に言えばここから先は……、流石に私も保障できないわ。おそらく予選とは次元が違う……!! それに加えて、バトルは基本的に1対1になる」
「……つまり、わかるわね? あんたが敵に殺されそうになっても、あたし達は助けてやれない……!!」
「……!!」
 2人が語る本選の過酷さに思わず息を呑むシエスタ。
「対戦はくじ引きで戦う人間が決定されるらしいから、自分の名前が呼ばれるまでに『参加』か『辞退』かを考えておきなさい。私は一応後者を勧めるけどね……」
「う~……」
 進むべきか退くべきか、シエスタは頭を抱えて思い悩む。
(どうしましょう……!! 自分の力を試したい気持ちが無いと言えば嘘になります……。でも、参加すれば殺されるかも……!! それに普通の夢からも遠ざかりそうな気が……)
 そうこうしているうちに、第1試合参加者を決める抽選が行われていた。
『それでは皆様、お待たせしました!! 第1試合参加者のくじ引きを行いまーす!! 誰かな♪ 誰かな~♪』
 そんな事を言いながら箱の中から取り出したボールに書かれていた参加者名は……、
『えー……、まずは「暴走メイド・シエスタ」ーっ!!』
「げーっ!!」
『どはははははは!!』
 読み上げられた第1試合対戦カードの片割れの名に、シエスタは驚愕の絶叫を上げ、ルイズ・ナックルスターは爆笑した。
「おお!! お嬢ちゃんが戦うのか!!」
「頑張って殺されろーっ!! ぎゃははは!」
 さらに周囲の観客からも無神経な野次が飛ぶ。
「何でお二人とも笑うんですかあーっ!!」
「いや……、この流れはある意味離れ技だと思って……」
「とりあえずこうしなさい。試合開始と同時に『参りました』って言えばいいのよ。これなら恥はかいても死にはしないわ」
「シエスタ様、どうぞこちらへ!」
 女性スタッフに先導されて闘技場に下りていくシエスタ。
「頑張れよーっ!」
「死ねーっ!」
「………」
 そんなシエスタの姿を才人は無言で眺めていた。
 続いてシエスタの対戦相手抽選に入る。
『えー、対しましては……、「アサッシン・バリー」!!』
 言葉と共に、会場の奥に続くゲートから小さな人影が現れた。
 その身長は彼から上着を受け取った女性スタッフの腰より高いかどうかという程度だ。
『彼の名のスペル「Bully」とは、「いじめ」を意味します!!』
「……!!」
 バリーの姿に才人ははっとした。
「アサッシン……!? ……のわりに随分小柄だな。120サントぐらいか」
「何だ、『Bully』って。昔いじめられていたとか?」
「おい! 奴の首を見ろ」
「あれは……?」
「旧式『遠見の鏡』のチャンネルのような……」
 その言葉を聞いて、才人はバリーを目の部分にはめ込まれているガラスに亀裂が入らんばかりに睨みつける。
 闘技場の地面に描かれた線上に立つシエスタに視線を向けつつ、バリーももう1本の線に向かう。
「ほお……、そっちも素手か。いい度胸をしている」
 するとその時、
「ちょっと待てえ~っ!! うおーっ!!」
「きゃーっ!!」
 叫び声と共に才人が闘技場に乱入し、シエスタは悲鳴を上げた。
「サイト……!!」
「今度は何やらかす気だ、あの馬鹿……!!」
(あいつ……、どこかで見た事が……)
 才人の乱入にルイズ・ナックルスターは思わず声を漏らし、バリーはどこか既視感を覚えていた。
「譲ってくれ!! 俺に譲ってくれ!! 頼む、シエスタ!!」
「!? !?」
「奴と戦うのを俺に譲ってくれ!! 俺が奴と戦う!!」
 大変な剣幕で自分に詰め寄る才人に訳ありの匂いを感じ、シエスタは尋ねる。
「あの……、サイトさん、意味が……」
「俺は奴に主人を殺されたんだ……!!」
「え……?」
「俺の命の恩人でもある主人……、『コルベール』さんを……!!」

 馬車にひかれた才人が目覚めた時、彼の肉体は全身金属鎧と言うべき姿になっていた。
「ちょっとコルベールさん、何ですかこれは……!?」
「サイト君の元の体から抽出した脳のデータを、私の自作人造人間にそっくり転送しました。サイト君を助ける前提で作った物ではありませんから、デザインが気に入らなかったらすいません。まあ次を作るまでの仮のボディーと考えてください」
 マグカップ片手にコルベールがそう説明した。
「もう1度言いますよ。何ですかこれは……!?」
 才人の困惑・憤怒がない混ぜになった言葉を後目に、コルベールはマグカップの中身を飲みつつ説明を続ける。
「毎日1時間専用アダプターでエネルギーチャージする必要があります。水はなるべく浴びないでください」
「コルベールさんっ!!」
 万力のごとき鋼鉄の腕でコルベールの胸倉をつかみ締め上げる才人。
「痛いですよ、サイト君」
「俺を……、俺を実験台に使ったんですかーっ!?」
「これを見てください」
 そう言ってコルベールが指差した先には、ぼろ雑巾という比喩が生易しいほど損傷して瞳の光が無くなった才人の肉体が横たわっていた。
「部屋に戻ってきた時のサイト君の体です。冷静に考えてどちらがましですか!?」
「………」
 自分の体だった物の惨状に才人は言葉を失った。
 ──新しい体に慣れるため、俺は夜の闇に乗じてしばしば外出するようになった。
 ──けどある夜、コルベールさんの部屋に戻った時……、
「………!!」
 才人が扉を開けると室内は炎上していた。
 滅茶苦茶に荒らされひっくり返された家具の横には血まみれのコルベールが倒れていて、部屋の窓にはこちらを振り向く小さな人影が見えた。
 その人影が消えたのを確認して、才人はコルベールに駆け寄る。
「ぐ……、サイト君……ですか……」
「コルベールさん!!」
「私はもう駄目です……、出血が致死量です。今逃げた奴は……、おそらくプロの殺し屋……」
「殺し屋……ですって!?」
「雇い主は心当たりが多すぎて見当がつきません……。名を変え姿を変えて教師になる前は、軍でいろいろ汚れ仕事をしていましたからね……」
「待っててください!! 医者を呼びます!!」
「君の修理やメンテナンスはもうできませんが……、方法はデータとして君の体内に保存してありますから心配しないでください。最期に……、サイト君に見せたい物があります」
 と言って、コルベールは1枚の古びた紙を才人に差し出す。
 紙には子供っぽい字で「さいきょうのじんぞうにんげん」と書かれていて、今の才人の姿に似ていなくもない絵と様々な設定が書き込まれていた。
「子供の頃に私が描いた『人造人間設計図』です。『最強』という設定です。いかにも子供の発想ですが。ですがねサイト君……、考えてもみてください。もしも今のあなたが本当に最強の存在なら、その設計図を子供の頃既に描き上げていた私は……まさしく天才だったという事になりませんか?」

「………!!」
 才人の過去にシエスタは驚愕の色を隠せなかった。
「では……、サイトさんが……、殺人鬼達から恐れられていたミス・ナックルスターに奇襲をかけたのは……」
「『最強』を証明するためだ!! コルベールさんの設計図に嘘は無い!!」
 そう力説して拳を握り締めた才人に、観客席のルイズ・ナックルスターは納得の表情を浮かべる。
(納得だわ……)
(道理であたし達にボコられても絶対に負けを認めないわけだ)
 そこへ女性スタッフが1人シエスタの所に歩み寄ってくる。
「シエスタ様、いかがなさいます? サイト様に譲られますか? シエスタ様は予選でメダル10枚を得たシード選手、多少の要望は通りますが……。とはいえ、シエスタ様がくじに当たった事に変わりはありません。サイト様とバリー様がまず戦い……、勝者がシエスタ様と対戦していただく形になります」
「俺は別にかまわんぜ。どっちでもいい。『2人連続で戦う事に』なろうが問題無い……」
「………」
 そう横槍を入れてきたバリーに激しさを増した才人の怒りのオーラに気圧される形でシエスタは、
「譲ります!! サイトさんに!!(2回戦目で降参しましょう)」
 と宣言して闘技場の隅に退場する。
「恩に着るぜ」
 すれ違いざまシエスタにそう声をかけ、才人は先程まで彼女が立っていた線に向かっていく。
『試合時間は無制限!! どちらかが降参・意識喪失・あるいは死亡するまでとする!! 周囲の手出し・物理的干渉はこれを禁止とし、破った者は処刑も辞さない!! なお敗北者の身の安全については、「虚無壺の会」は一切関知しないものとする!!』
 才人・バリーが睨み合う中、会場にはルール説明のアナウンスが流れた。
「……てめえの首に付いてるチャンネル、アクセサリーにしちゃ間抜けだな」
「これか? これは精神的なスイッチさ……」
 才人の挑発を薄笑いを浮かべつつ受け流し、チャンネルをひねるバリー。
 次の瞬間、バリーの背中から指のように見えなくもない5本の肉の柱が生えてきた。
「俺は……『多重人格者』ならぬ……たっ……たじゅ……、『多重体格者』……!! そっ……外に出る体格を……チャンネル……で……切り替え……!!」
「え……!?」
 シエスタも彼女に試合順の変更が可能だと伝えた女性スタッフも、呆然とバリーの変貌を眺めている。
『そ……、それでは、だ……だ……第1試合……』
 そうアナウンスしている間にもバリーの変化は進み、背中からは指だけでなく肘まである腕が1本、さらにもう1本の手首が生えてきていた。
『はじめーっ!!』
「オオッ!!」
 と声を上げつつ才人に迫るバリーは、歪ながらも巨大な人型になっていた。
「!? こ……、こいつ!?」


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