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Ruina 虚無の物語-09


シエスタに文字を教わりながら時が過ぎていき、気付けば窓には夕日が映っていた。
「それにしても、みなさん文字を覚えるのが早いですね。」
同意である。
文字の1つ1つは初めて見る物だが、一度説明されると言葉の意味が頭の中に浮かび上がる。
その結果、陽が落ちる前には皆が日常会話レベルの文章が難なく読めるようになっていたのだ。
その事を伝えると
「あら、フィーもそうだったの?」
「フィーもそうだったんだ。」
「エンダもおなじだ。」
どうやら彼女達にも同じ現象が起きているようだ。
「不思議ですね。もしかして使い魔になった事が原因でしょうか?って、それこそまさかですよね。」
シエスタが冗談半分に笑いながら返事をした。
「まぁ、悪い事ではないようですし、そのまま続けましょう。」
シエスタが笑いながら新しい単語を木の板に書こうとした所で、叫び声が響く。
「フィー、何やってるのよ。もうとっくに授業は終わったわよ!」
長い間待たせてしまったらしい。
「あ、申し訳ありません。こんな遅くまで……」
謝ってきたシエスタを宥めてから礼を言い、小走りでルイズのいる場所へ向かう。
どうやら宿舎の前で大声を張り上げていたようだ
「もう、こんな時間まで何やってたのよ!部屋の掃除とかはちゃんとしてたから仕置きはなしにしてあげるけど。」
素直に謝ってから、使用人のシエスタに皆で文字を教わっていた事を伝える。
「へえ、平民なのに文字が読めるというのは珍しいわね。」
「同感。」
ルイズの背後からキュルケとタバサの声が聞こえた。
「な、ツエルプストー、なんであんたがこんな所にいるのよ!」
「なんでと言われても、貴女が叫んでるから何事かと思って来ただけよ。」
タバサが無言で頷く。
ルイズは深く溜息をつき
「ああもう、部屋に帰るわよ!」
会話を打ち切り、部屋に帰ろうとするルイズ。
それを
「あそこに立ってるのって誰かしら?」
キレハの質問が遮った。


広場で誰かの叫び声を聞いてまだいけると思ったのが間違いだったようね……
黒いローブで自分の顔を隠しながら自分の失態を振り返る。
陽が落ちる前から外壁で一番脆い箇所を探そうとしてこの有様である。
しかも、ツイてない事に自分に気付いた者の中にはこの学院でも数少ないトライアングルが2人もいた。
(さて、ここは逃げた方が得策か?)
そう思い、実行しようとした所ですぐ近くの壁が前触れなく爆発した。
見た事のない魔法とその威力に戦慄するが、壁に罅が入った事に気付くと戦慄は感謝にとってかわった。
すかさず30メイル程度の大きさのゴーレムを作り出し、罅の入った箇所にゴーレムの拳を叩きつける。
当たる瞬間、拳を錬金の魔法で鋼に変えておく事を忘れない。
罅の入った壁は見事に打ち砕かれ、人が通れる大きな穴をあけていた。
そこから先はスムーズに事は進んだ。
目標まで迷わず進み、石でも金属でもなく柔らかいようで硬くもある不思議な半透明の素材でできた箱を手に取り、ルーンを口ずさむ。
箱の中身が動いた気がしたが気のせいだろう。
壁に仕事の証を残してからゴーレムの肩に乗り、そのまま逃げだす。
途中、身を隠すためにゴーレムを土くれに戻して土煙を作り、あらかじめ用意した隠れ家へと急いだ。
(見つかった時はどうしようかと思ったけど、かえって上手くいったのは幸運って奴だろうね。)
自分の運の良さに思わず笑みを浮かべながら、手に入れた精霊の箱に手をかけて蓋を開け、そして中身を見てしまった。

人里離れた森の中で悲鳴が上がった。


翌日、騒然とした学院長室の中で8人は待たされていた。
自分達4人とその主であるルイズ、共に目撃したキュルケとタバサ、そしてシエスタである。
先日の出来事に対しての質問に答えるべく、頭の中で情報を整理してから学院長室に入ったのだが
「土くれのフーケ!貴族達の財宝を荒らしまわっていると言う盗賊か!魔法学院にまで手を出しおって!随分と舐められたものじゃないか!」
「衛兵は一体何をしていたんだ!」
「衛兵などあてにならん!所詮は平民ではないか!それより当日の当直は誰だったんだね?」
拍子抜けである。
ふと隣を見るとシエスタが恐縮していた。
小声で尋ねてみると
「騒がしいと思って出たら巨大なゴーレムがいたのを見ただけで、犯人なんて見てないのに私がここにいていいのでしょうか?」
目撃者は少しでも多い方が良いのではと答えると安心していた。
女性教師に責任を問おうとしている流れを話半分に聞いていると、学院長が戻ってきた。
学院長は責任を問おうとしている流れを打ち切ると、こちらに向かい尋ねてきた
「で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」
「この3人です。」
禿頭の男教師――確かコルベールと言ったか――がすかさず答える。
自分達は平民だから数に入れていないのだろうか、少し不満に思いつつも何も言わないでおく。
「ほう、君たちか……」
すると、学院長がどこか興味深げな視線を此方に向けてきた
「さておき、説明を願えるかの」
学院長が説明を求めると、ルイズが進み出て先日見た事を説明した。
「ふむ、黒いローブを纏ったメイジが壁を壊して宝物庫に入ったと。そしてゴーレムを崩すことで目くらましして逃走、追うにも手掛かりは残っておらぬと言う事じゃな。」
学院長は髭をなでながら確認し
「申し訳ありません。」
ルイズが心底申し訳なさそうに項垂れた。
「おっと、責めてなどおらぬよ。無事でなによりじゃ。ところでミス・ロングビルはどうしたね?」
言われてから助手の女性がいない事に気付く。
「それが、その……朝から姿が見えませんので……。」
「何所へ行ったのでしょうか?」
そんな話をしていると、噂に影と言わんばかりに本人がやってきた。
所々濡れているが、何があったのだろうか。
「ミス・ロングビル!一体どこへ行っていたのですか!大変ですぞ!事件ですぞ!」
興奮して捲し立てるコルベールとは対照的に、ミス・ロングビルは落ち着き払って言った。
「申し訳ありません、朝から調査をしていました。」
「調査とな。成果はあったかの?」
「はい、フーケの居場所が分かりました。」
皆がミス・ロングビルの迅速な仕事に歓声を上げる。
学院長のオスマンはその中落ち着いて質問を続ける。
「何所で知ったのかね?」
「はい、近在の農民に聞きこんだところ、近くの森の廃屋に黒いローブの男が入るのを見たそうです。
恐らくは彼がフーケで、そこが隠れ家ではないかと。」
「そこは、ここから近いのかね?」
「はい。徒歩で半日、馬で四時間といった所でしょうか。」
続く報告にここまで詳細に調べてくるとはさすがミス・ロングビルだと皆が褒め称える。
「すぐに王宮へ報告しましょう!王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわねば!」
コルベールが叫んだが
「ばかもの!その間に逃げられたらどうするんじゃ!その上、自分に降りかかる火の粉を振り払えんで何が貴族か!魔法学院の宝が盗まれた!これは我らの責任じゃ!当然我らで解決する!」
真っ向からオスマンが反対した。
そしてふとミス・ロングビルの方へ振り返り
「ところでミス・ロングビル、何でそんなに濡れておるのじゃ?」
「調査途中で汚れてしまいまして、そのまま出るのは無作法かと思い体を洗っておりました。」
「なるほどの。……ともかくじゃ、これより捜索隊を結成する。我と思う者は、杖を掲げよ!」
志願者を募るが、誰も反応しない。
「おらんのか?おや、どうした?フーケを捕まえて名を上げようと思う貴族はおらんのか!」
すると、一人が杖を掲げた。

「え、ルイズ様?」
「大丈夫なの?」
御主人様ことルイズが、その細い腕で、しかし杖を掲げていた。
「ミス・ヴァリエール!貴女は生徒ではありませんか!ここは教師に任せて……」
ミス・シュヴルーズがルイズを止めようとしたが
「杖を掲げないじゃないですか!」
真っ向から強く言い返され、黙り込む。
すると続くように
「ミス・ツエルプストーとミス・タバサではないか、何事かね?」
「ヴァリエールに負けてはいられないわ。」
「心配。」
キュルケとタバサも共に行く意思表明をした。
こちらも主人だけ行かせるわけにはいかないので杖を掲げる。
するとネルとキレハとエンダ、そしてシエスタの四人も参加の意思を示した。
教師陣からは反対意見が湧きあがるが、なら自分が行くかと聞かれると黙り込んだ。
「お主らは相手の容貌だけを見て判断しておらんか?ミス・タバサはこの年にしてシュヴァリエの称号を持つ騎士と聞いておるぞ」
オスマンの発言に、キュルケは思わず
「本当なの?タバサ。」
と確認し、それにタバサが頷いた。
すると皆がざわめいた。
「シュヴァリエってなんだ?」
例外も数人いるが。
オスマンは次にキュルケを見つめて言葉を続ける
「ミス・ツエルプストーはゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、本人も炎のトライアングルと聞いておる。」
その言葉に、キュルケは得意げに自分の赤い髪を掻きあげた。
そしてオスマンはルイズを見つめ
「それにミス・ヴァリエールは、その……数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール家の息女で、将来有望なメイジじゃ。」
そしてこちらに視線を向け
「しかも使い魔は東方から召喚されたメイジで、マジックアローで岩に穴をあけるほどの腕前じゃ。」
視線が集まる。
「彼女らに勝てると思う者がいるのなら、一歩前に出たまえ。」
誰も前に出ない。
オスマンはしばらく辺りを見渡してからルイズ達に向かい、杖を掲げた。
「魔法学院は、諸君らの働きに期待する!」
「杖にかけて!」
ルイズ、キュルケ、タバサの三人がそれに応えて唱和する。
「それと馬車はこちらで用意しよう。ミス・ロングビル、案内してさしあげなさい。」
ロングビルは頭を下げた。
「もとよりそのつもりですわ。」

田舎道を二頭曳きの大きな馬車が進む。
空は少し曇っており、まるで皆の不安を代弁しているかのようだ。
馬車にはルイズとキュルケとタバサそして自分とネルとエンダとシエスタの7人が乗っており、特に貴族でない4人は距離を詰めて座っている。
御者は案内を命じられたロングビルが勤めており、キレハが隣でそれを補佐しつつ周囲に気を払っている。
そんなロングビルにキュルケが話しかける。
「ミス・ロングビル、手綱引きなんて付き人にやらせればいいじゃないですか。」
ロングビルは微笑みながら答える。
「いいのです。私は貴族の名をなくした者ですから。」
「え、でも貴女はオールド・オスマンの秘書なのでしょう?」
「ええ、でもオスマン氏は心の広い方ですから。平民や貴族だと言う事にはあまりこだわらないお方です。」
「差し支えなければ事情をお聞かせ願いたいわ」
キュルケが興味を持ったらしく話の続きを促すが、ロングビルは笑顔を浮かべたまま黙って首を横に振る。
「いいじゃないの、教えてくださいな。」
リングビルへにじり寄るキュルケをルイズが咎める。
「キュルケ、よしなさいよ。昔の事を根掘り葉掘り聞くだなんて。」
「暇だからおしゃべりしようとしただけじゃないの。」
「あのー、お聞きしたい事があるのですが……。」
ネルがタイミングよく割り込む
「何かしら?」
「先程タバサさんがシュヴァリエだと言う話を聞いて驚いていた様ですが、シュヴァリエっていったいどんな称号でしょうか?」
「爵位としては最下級の物だけど、他の爵位と違って領地を買う事では手に入れる事が出来なくて、純粋に業績に対して与えられる爵位よ。」
「なるほど。実力の証ということですね。」
ネルはそう言いながらタバサを見る。
この歳で爵位に相当するような功績があるのは確かに相当珍しい事なのだろう。
心強いと思いつつ、外を眺める事にした。



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